JP4651889B2 - 発熱または吸熱不均一反応のための等温反応器 - Google Patents

発熱または吸熱不均一反応のための等温反応器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、略円筒型の、好ましくは垂直な外側シェルと、このシェル内に設けられ、反応物からなるフローの入口用・反応済物質からなるフローの出口用としての穴がそれぞれに形成されている対向位置に配置された各側壁からなる少なくとも1つの触媒床と、少なくとも1つの触媒床内を通り、冷却または加熱流体の通路用の少なくとも1つの管とを備えた、発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器に関する。
【0002】
以下の説明及び請求項における「等温反応器」の意義は、反応が起きる触媒床(1つまたは複数)の内部の温度が本質的に一定に維持されている反応器を意味するものであり、このような反応は発熱反応あるいは吸熱反応のどちらでもよい。
この種の反応器は、例えば、メタノールやホルムアルデヒド(強度の発熱反応)あるいはスチレン(強度の吸熱反応)などの化学製品の合成で採用されている。
【0003】
発熱または吸熱不均一合成の分野において周知のように、一方において製作することが容易で信頼性がありかつ設備および保守費用が掛からず、他方において圧力損失およびエネルギー消費の少ない運転が可能であり、反応物と冷却または加熱流体の間の熱交換効率が高い高能力の等温反応器を実現する必要性が強くなってきている。
【0004】
【従来の技術】
上記の要求に応じるために、内部に熱の抜き出しまたは供給用の多数の垂直な直管を含む半径方向型の触媒床を設けた等温反応器が提案された。
例えば、ドイツ特許A−3,318,098は、ガス反応物が触媒床内を半径方向に通過し、前記触媒床内部に配置された複数の垂直管と接触する発熱または吸熱不均一合成反応を行なうための等温反応器を開示している。
【0005】
図示していない実施形態からは、熱排出または熱供給用の管が、反応したガスの反応器からの出口である中央のコレクターを中心として螺旋状に伸張していることも予測される。
特に、螺旋状管のバンドルは、このような管がお互いの回りに捩れている対向した上部および下部の各管板の間を垂直に伸張している。
【0006】
熱排出または熱供給用の管を螺旋状に配置することは軸方向触媒床を設けた等温反応器においても公知であることは注目される(例えば、米国特許A−4,339,413やA−4,636,365を参照)。
ある一定の態様(例えば、半径方向配置の触媒床を用いれば軸方向触媒床よりも少ない圧力損失およびエネルギー消費で高い製造能力を容易かつ経済的に得ることが可能である)の下では有利であるが、ドイツ特許A−3,318,098に開示された螺旋管バンドルを備えた等温反応器は、以下に示すような数個の欠点を有している。
【0007】
第一に、らせん管バンドルとしてのこの管の配置は、直管の垂直配置よりは良好であるが、触媒床内を半径方向に動いて通過するガス反応物の流れの温度曲線とは効果的に整合しない。
実際、垂直に伸長したらせん状管に対して垂直に流れるガス流は、異なった管と異なった温度で接触する(触媒床を通過する)ことになり、ガス反応物と冷却または加熱流体間の熱交換効率の低下を引き起こす。
【0008】
言い換えると、触媒床を通り半径方向の中心に向かって流れるガス反応物による発熱反応の場合は、外側のらせん状管は反応が開始したばかりのガスが横切りそのため比較的温度が低く、一方中心に近いらせん状管は、ガス反応物と交換する熱量がガス反応温度の最大点に達するまで増え続け、温度がどんどん高くなるガスが横切る。それ以降は温度が低下し、そのため触媒床のガス出口壁近くに配置されたらせん状管によって吸収される熱量は段々に小さくなる。(ドイツ特許A−3,318,098:図3参照)。
【0009】
この結果、それぞれのらせん状管は異なった熱量を受け取り、したがって異なった熱負荷に耐えなければならない。これによって、熱交換効率にとって有害な触媒床内の温度分布の悪化を引き起こす。
たとえば、冷却手段として管内を高温の水が流れ、水蒸気に変換される場合はいつも、ドイツ特許A−3,318,098に示唆されるようにらせん管バンドルの各管がそれぞれ量の異なる水蒸気を発生することは明らかである。
【0010】
このことは前記管内の水と水蒸気の分配の悪化と同様、管板における冷却流体の制御および供給/排出に関連した問題があることを暗示している。
この点、ドイツ特許A−3,318,098に示される等温反応器の管はすべてお互いに平行になっている、すなわち流体が同一の供給源から供給され同一の場所に排出されるということは注目に値する。したがって、個々の螺旋管が利用できる圧力損失は同一である。
【0011】
ドイツ特許A−3,318,098において、低温のガス反応物と接触している螺旋管が受ける熱負荷は小さく、このことは水の蒸発程度が低くて出口速度が低下しこの結果水の流量(質量流量計算値)が大きくなることを意味する。高温のガス反応物と接触している螺旋管が受ける熱負荷はこれと反対に大きく、このことは水の蒸発程度が高くて出口速度が上昇しこの結果水の流量(質量流量計算値)が小さくなることを意味する。
【0012】
その結果、反応器が運転している場合、最大の熱負荷を受ける螺旋状コイル管は水の供給が少ない管になり、常に水の蒸発程度が増加し熱の抜き出し能力が低下しがちであるという状況が起きる。このことは、メタノール合成などのわずかな発熱反応の場合には、触媒床内の最適な温度分布とは程遠いものになり、一方、ホルムアルデヒドの合成のように反応速度が速く強度の発熱反応の場合には温度の急上昇すら招く可能性がある。
【0013】
さらに、過剰に蒸発を行なうと、この管自体の熱交換効率にとって害になる、水中に存在する残留物の析出物の管内形成を助長する。
これらの不利益はすべて、触媒床内部のガス反応物の温度プロフィールにしたがって各管が異なった間隔で配置されているという事実とは無関係である。
来技術による反応器の他の不利益な点は、多額の設備および保守費用が必要ならせん配置の管バンドルに由来する非常に複雑な構造によってもたらされている。
【0014】
さらに、(ガス反応物と冷却または加熱流体間の差圧のために厚みを非常に厚くする必要がありその結果費用も掛かる)管板を備えることは、配置できる管の本数に関する限り制約となり、結果としてさらに反応器の熱交換効率が害される。
これらの不利益のために、半径方向触媒床を備えた発熱または吸熱不均一合成反応を行なうための等温反応器およびらせん状管バンドルは、高能力反応器を有する分野ではその必要性がさらに増加しているにも係わらず、今日では全くと言っていいほど使用されなくなった(垂直な管バンドルを備えた反応器について特にこのことが言える)。
【0015】
【発明の解決使用とする課題】
本発明の根底にある問題は、実施することが容易で信頼性があり、設備および保守費用が掛からず、圧力損失およびエネルギー消費の少ない運転が可能であり、反応物と冷却または加熱流体の間の熱交換効率が高い、発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器を提供することである。
【0016】
【発明の概要】
本発明によれば、前記の問題は、熱を抜き出すかあるいは供給する前記少なくとも1つの管が前記少なくとも1つの触媒床の内部にこの触媒床の側壁に対しておおむね垂直な平面に沿って伸張することを特徴とする上述のタイプの反応器によって解決される。
【0017】
本発明によれば、転化効率およびエネルギー消費にとってすべて有利になる高い熱交換係数の等温反応器を(簡単にかつ経済的に)実現できることは有利である。
実際、ガス流の供給および抜き出し用の穴が開いた側壁に対しておおむね平行な方向に向けて触媒床の一端から他端に伸張する従来技術によるらせん状管とは異なり、本発明によれば熱を抜き出すかあるいは供給する単一の管がそれぞれその触媒床の内部に反応物が通過する側壁に対しておおむね垂直な触媒床内の平面に沿って伸張している。
【0018】
このようにして、管13(1本または複数本)は反応物から成る流れが触媒床を横切る方向に対しておおむね平行に有利に配置されている。
このことは各単一管が反応物の同じ部分と接触すること、即ち、すべての熱的変化である触媒床の入口から出口に及ぶ反応物の同じ部分の温度プロフィールに、個々の管が有利に対応できることを意味する。
【0019】
結果として、この触媒床の内部に、複数の管が本発明によって配置される場合はいつでも、管が耐える熱負荷はすべて同じである。たとえば、冷却流体として高温水を用いる発熱反応の場合、すべての管は同じ量の水蒸気を生成する(管の内部は水と水蒸気が均一に分布)。
換言すれば、本発明によれば、各管は同じ量の熱を排出・供給することができ、よって、強度の発熱または吸熱の反応に対しても最適な触媒床内の温度分布を得ることができる。このことは触媒床の熱交換係数、したがって触媒床自体の内部の転化効率および各エネルギー消費にとってすべて有利になる。
【0020】
従来の技術を参照した前述の等温反応器に対して、本発明による反応器ではより高い温度レベルでの熱の回収または供給が可能になり、この結果熱交換効率および転化収率の増加が起きる。あるいは、さらに転化収率が従来技術と同じでも、熱交換効率の増加によって必要な触媒の量を減少させることができ、結果として必要なスペースおよび設備費用の面で節減を図ることができる。
【0021】
本発明の他の利点は、複数の管が触媒床の内部に配置される場合、これらの管すべてが、冷却/加熱流体の供給と抜き出しに対して制御上の問題がまったく無いようなひとつの同じ供給源から供給することができ、これらの管はすべて同一の熱負荷を受けることである。
最後に、本発明による反応器は実施するのが特に容易であり管板を必要とせず、結果として設備および保守費用の面で関連するコストが削減される様子は注目されるはずである。
【0022】
本発明の特徴および利点は、上述のものに限定するものではないが、図面を参照する以下の本発明の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1〜5において、発熱または吸熱不均一反応を行なうための本発明による等温反応器は、参照数字「1」で示されている。
この反応器1は略円筒型の外側シェル2を有し、その内部には一般的に参照数字「3」で示される触媒床が収容される。
【0024】
この触媒床3は、反応物質からなるフローの入口用・反応済物質からなるフローの出口用のとしてそれぞれに穴を開けた対向位置にある各側壁4,5によって、その両側の境界が定められている。
一般的に、発熱または吸熱不均一合成を行なうために反応器1に供給される物質は気相である。
【0025】
したがって、以下の説明において、「反応物質からなるフロー」および「反応済物質からなるフロー」の語句に関しては、それぞれガス状反応物質のフローおよび反応済のガスのフローを意味するものである。もっとも、本発明による反応器は、それぞれ液相または液相/気相の混相で起きる反応にも採用することができることは明らかである。
【0026】
よって、以下に説明する実施例において、この穴を開けた各壁4、5は、ガス状の反応物質のフローの触媒床3における入口と反応済ガスのフローの出口のそれぞれにおいてガスが浸透できる。
この触媒床3はさらに、図1の実施例の反応器1の底部6に対応する穴の開いていない底部(ガスが浸透しない)によってその下側部分の境界が定められており、その上側部分においては、穴の開いている壁7(ガスが浸透する)によってガス反応物の少量部分が触媒床3内を軸方向に移動する通路の境界が定められている。
【0027】
触媒床3を軸−半径方向に正しく横切ることができるように、径方向部分は軸方向部分より優勢であり、側壁5はその上端から伸びる穴の開いていない部分5´(ガスが浸透しない)を多少有している。
このガスが浸透する壁7はいずれにせよ全体的に任意であり、触媒(図1には表していない)を触媒床3内に保持する機能が主な特色でありこの結果触媒を十分隔離しておくことができる。
【0028】
別の方法として、単に触媒床を半径方向に横切ることが要求される場合はいつも、穴を開けていないかまたはとにかくガスが浸透しない壁7を設ける。
粒度の小さなより活性の高い触媒を利用することにより、ガス状反応物質に対し高転化収率と同時に低圧力損失を得ることができるので、径方向型の触媒床及びさらに顕著に軸−半径型の触媒床は双方とも特に有利である。
【0029】
シェル2と側壁4との間には、触媒床3内にガス状反応物資を供給可能にまたガス状反応物質の分布を最適にするように環状の空間部8が設けられる。手前の端部でこの空間部8はガス入口ノズル9とフローが連絡している。
次に、側壁5が、反応したガスの流れを集め反応器から排出するためのダクト10との境界を定め、側壁内部をダクトとしている。手前の端でこのダクト10はガス出口ノズル11と流れが連絡し、その上側はガスが浸透しないようにバッフル12で閉止されている。
【0030】
反応器1を等温に維持するように触媒床3の内部を流れるガスから熱を抜き出すあるいはガスヘ熱を供給することを可能にするために、触媒床3を、それぞれ冷却または加熱流体の通路でありすべて参照数字13で示す複数の管が横切る。
この冷却または加熱流体は1個または複数の入口ノズル15と流れが連絡しているダクト14を通して各管13に供給され、また1個または複数の出口ノズル17と流れが連絡しているダクト16を通して各管13から抜き出される。
【0031】
ノズル15および17の数はそれぞれ(この例に関する限り2個に等しい)冷却または加熱流体の流量にしたがって選択される。流量などに関連したものが増加すればするほどノズル15および17の数が増加することが好ましい。
ダクト(1つまたは複数)14は、環状のコレクター14aを介してノズル(1つまたは複数)15とフローとが連絡しており、ダクト(1つまたは複数)16は、環状のコレクター16aを介してノズル(1つまたは複数)17とフローとが連絡している。
【0032】
本発明の特に有利な態様によれば、熱を抜き出すかあるいは供給する管13が触媒床3の内部でこの触媒床の側壁4および5に対しておおむね垂直な平面に沿ってコイル状に伸張している。
以下の説明および添付された請求項において、「コイル状管」の語句に関してはおおむね曲線をなすまたは曲線と直線が交互に設けてある管を意味するものである。
【0033】
このようにして、反応ガスの同じ部分がおのおのの管13の管長全体をいろいろ異なった温度で横切り、こうすることで各渦巻き部分は触媒床3の入口から出口に及ぶそのようなガス部分のすべての熱的変化、即ち、その温度プロフィールをたどることができる。
さらに、お互いにおおむね平行な各平面に沿ってコイル状に形成された管13は、すべて同様の熱負荷を受けしたがって同じ様に動作する。
【0034】
このことは結果として、温度が急激に上昇する危険を伴わずに触媒床3内の最適な温度分布をもたらし、転化効率およびエネルギー消費にとってすべて有利になるガス反応物と冷却または加熱流体の間の効率的な熱交換をもたらす。
図1の実施例において、シェル2は垂直に配置され、各管13は触媒床3内部で好ましくはおおむね水平な平面に沿ってコイル状に伸張する。
【0035】
いずれにせよ、この各管13を、たとえば垂直な平面に沿って伸張するお互いに重なり合った各管を群にして配置するなどの異なったやり方で配置することを妨げるものは何も無い。
どちらの実施例においても、各管は垂直な反応器のシェル2の縦軸18に対するのと同様にこの側壁4および5に対して垂直になっており、いっぽう、ガス反応物の流れが触媒床3を横切る方向に対しておおむね平行になっている。
【0036】
反応の発熱の程度および/または触媒床の寸法にしたがって本数が変えられる(少なくとも1本)管13が横切ることのできる複数の触媒床3を含む反応器1も、本発明の範囲内で予測されることは明らかである。
中心部(ダクト10)から外周部(空間部8)に向かって主に半径方向に移動する反応物の流れが横切る1つまたは複数の触媒床を含む反応器1も同様に本発明の範囲内で構成される。
【0037】
さらに、図示していないが、本発明の他の実施形態によれば、熱の排出または供給用の管が横切り、ガス反応物の入口および出口になっているガス透過性の各壁に対して垂直な平面に沿ってコイル状に伸張する1つまたは複数の触媒床から成る横型の外側シェルを予測することが可能である。この場合も同じく、この触媒床(1つまたは複数)の穴の開いた各側壁はシェルの縦軸に対して平行になっている。
【0038】
この各管13は単独でノズル15およびノズル17に接続することができ、したがっておのおのの管13は冷却または加熱流体の供給用ダクト14および排出用ダクト16にそれぞれ接続される。これらの各管を少なくとも2本の管をひとつの群として接続する、すなわち、管13のおのおのの群がダクト14およびダクト16に接続する、あるいは単一のダクト14または16をそれぞれ経由し、その結果すべての管13がお互いに接続することも可能である。
【0039】
この各管13は(各自由端において)少なくとも2本の管が群となってお互いに接続され、この各群は冷却または加熱流体の供給用ダクト14と抜き出し用ダクト16にそれぞれ流れが連絡していることが好ましい。この各種のダクト14、16は、次にノズル15およびノズル17にそれぞれ流れが連絡している。
ひとつになった隣接管の間の接続は、図2、3に示すように、すべて参照数字19で示した連結配管を用いることによって達成される。
【0040】
ダクト14および16が複数の場合、これら複数のダクトは各管13と同様、各コレクター14a、16a内に、好ましくはお互いに角度をずらした位置でつながっている。
図1の実施例においては、触媒床3内に具備される管13の最初の群と最後の群が示されている。
【0041】
冷却または加熱流体はおのおのの群の下側の管13の一端に対応する各ダクト14によって供給され、本質的に同じ熱交換が起きるおのおのの群の管13を通過するようになされ、最終的には、おのおのの群の上側の管13の一端から各ダクト16によって抜き出される。
別法として、下に向かって流れる冷却または加熱流体が触媒床を横切るように管群を設けることが可能である。この場合、この流体はダクト16を通して各管13に供給され、ダクト14から排出される。
【0042】
結果として得られる構造は、いかに実施および運転が容易であり、また管板を必要とせず、結果として設備および保守費用の面で従来技術に対してコストが削減されるかが注目されるだろう。
図1に示す実施形態は1本の管13がおのおの個別にノズル15および17に接続しているものより、特に多数の管13が設けられた長い反応器に対して有利である。実際、ダクト14および16の数が減少する(それぞれの管群を構成する管13の数に応じて)。
【0043】
さらに、図1に示す実施形態は、各管13がすべてお互いに接続し、この各管が上端および下端のそれぞれにおいて単一のダクト14およびダクト16にそれぞれ接続しているものより、冷却または加熱流体の圧力損失が少ないので有利である。
一方、これらの各管13すべてがお互いに接続している構造は、冷却または加熱流体用の供給ダクト14と抜き出しダクト16はそれぞれ1つ有ればよいので実施することが特に容易である。
【0044】
触媒床3を横切る熱排出用または供給用の各管13は、図4および5に示すように渦巻き形のコイルで実施することが好ましい。
実際に、この渦巻き形の管13は特に熱交換効率の点および組み立ての簡便さと柔軟性の点の両方において有利であることがこれまでに分かっている。
この渦巻き形の管13は寸法が異なるほとんどの触媒床3にそれ自体を適合させることができ、特に同じ寸法の部分はすべてカバーする事ができ、したがって触媒床内のあらゆる場所で熱交換が有効に行なわれることが可能になる。
【0045】
さらに、抜き出されるかまたは供給される熱の量に従って、渦巻き形の管13は渦巻き状の間隔を接近させたり離したりさせて組み立てることができる。
図4の実施例において、この渦巻き管は巻きピッチを一定にして、すなわち隣接する各ひと巻きの間の距離を一定にして実施される。
この点で、渦巻き管自体を触媒床3内部のガス反応物の温度プロフィールに適合させてすべての温度変化をたどるように、渦巻き形の直径の変化に従って巻きピッチを変えた結果、特に有利な結果が得られた。
【0046】
図5に示すこの例において、隣接する各ひと巻きの間の距離は渦巻き形の直径の変化に従って変化し、巻きピッチは渦巻き形の直径が増加するにつれて減少することが好ましい。
触媒床3内の不均一な分布のガス反応物の流れを最善の方法で考慮するために、特に軸−半径方向触媒に対して、各管13を有利になるように2つの隣接する管がなす各平面の間の間隔を変えて配置することができる。
【0047】
そうすることにより、排出されまたは供給される熱の量に沿うように管13の間隔を適合させる、言い換えると、転化収率およびエネルギー消費に影響する熱交換効率のレベルにとって有利になるように触媒床3内の温度プロフィールをなぞることが可能である。
この図示していない実施形態によれば、高流量のガス反応物、したがって大きな熱負荷が見られるようなより密集した各管13(2つの隣接する管がなす各平面の間隔がより狭い)、および流量が低いところの密集度の低い各管13(2つの隣接する管がなす各平面の間隔がより広い)を得ることができる。
【0048】
図6に本発明の他の実施形態による発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器が示してある。
このような図において、反応器1の詳細部で構造および運転の観点からみて図1に示したものと同等なものは同じ参照数字で示し、詳細な説明は行なわない。
図6の実施例において、図7に良く示されるように、所定の水平面に対応して並んで配置された2本の管13が設けられている状態に注目することは重要なことである。並んで配置された管13の内部では本質的に同じ熱交換が起きる。
【0049】
おのおのの系列20および21のすべての管13は、全般的に参照数字20、21で示される2つの平行な管13系列を形成するように、連結管19によって有利にそれぞれお互いに接続される。さらに、おのおのの系列20、21は各下側および上側の各管13によって冷却または加熱流体のただ1つの供給ダクト14および抜き出しダクト16にそれぞれ接続される。
【0050】
特に、各管13は中心域から周辺域に行くにしたがって長さが長くなる円弧の形をしたコイル状に伸張する。
おのおのの系列20および21の各管13はもちろん、図1の実施例のように図6の反応器の内部で群に分割して配置することができる。
図1の実施例に対する主な違いは、このような実施例においてはおのおの1本管13が触媒床3全部を端から端まで伸張し、一方、並んで配置された管13はそれぞれ扇型(2分の1の部分)をとるであろうという事実によって示される。このことは管の本数が2倍になることを意味し、また場合によっては連結配管の数と同様、冷却または加熱流体の供給および抜き出しダクト14および16の数もそれぞれ2倍になることを意味する。
【0051】
この各管の配列は、冷却または加熱流体に対し2つの供給および抜き出し部を持つことができ、その結果熱交換効率が増加するので、極度な発熱または吸熱反応にも十分適合できる。
この点で、同一の水平面に対応して3つ以上のコイル型管13を並べて配置した配列も有利なものとして予測できる。
【0052】
図8に、横に並んだ管配列の他の実施形態が示してある。
この場合、所定の水平面に沿って並んで配置された2本の管が、触媒床3の中心域近くおよびその周辺域近くにそれぞれ配置された長さの異なる円弧の形をした第1および第2の管部分(13a、13b)を含む。さらに、第2の管部分13bと第1の管部分13aを接続する複数の第3の管部分13cが設けられている。
【0053】
この第3の管部分13cは直線でありかつ第2の管部分から第1の管部分に放射状に伸張することが好ましい。
本発明によれば、必要な供給ダクト14と抜き出しダクト16はそれぞれ1つだけである。両方のダクト14と16は中央ダクト10内に配置され、並んだすべての管13とフローが連絡している。
【0054】
図8に示すタイプの管13は非常に良好な熱交換効率を可能にする。実際、図7の管配置に対して記述した利点に加え、冷却または加熱流体は、熱交換効率を改良するように各管13内を触媒床3内部の反応ガスのフローに対しておおむね純粋な併流または向流移動で流れる。
さらに、放射状に伸張する複数の管部分13cの存在は管13内を流れる冷却または加熱流体の圧力損失を有利に低減することを可能にする。
【0055】
本発明による反応器は本質的にすべての種類の発熱または吸熱反応を行なうのに有利に採用することができる。特に、本発明を以って実施するのによく適した発熱反応の例は、メタノール,アンモニア,ホルムアルデヒド,有機物の酸化(例えば、エチレンオキシド)などであり、一方、吸熱反応の例は、スチレンおよびメチルベンゼンなどであろう。
【0056】
この熱の排出のために、熱的に高いレベルの水蒸気に変換される高温の水などの流体、溶融塩、あるいは透熱性オイルなどが好ましく使用される(発熱反応の場合)。吸熱反応の場合に熱を供給するために類似の流体を使用することもできる。
本発明による発熱または吸熱反応を行なうための反応器1の運転について以下に説明する。
【0057】
いかにして、実施しようとしている特殊な反応に対して触媒床3に供給されるガス反応物の運転圧力および運転温度条件が、管13を通過する冷却または加熱流体の運転条件と同様、従来通りの条件になるかが注目されるであろう。この運転条件は上記の様に従来通りであるため、以下において詳細には説明しない。
一例として、メタノール合成の運転条件だけを挙げる。合成圧力は50〜100バール、合成温度は200〜300℃、発生する水蒸気の圧力は15〜40バールである。
【0058】
図1に関して、ガス反応物の流れがガス入口ノズル9を通して触媒床3に供給され、穴の開いた壁4および7を経由して触媒床の内部を流れる。その後、触媒床に入りこれと接触した時に反応するガス反応物が主に半径方向(軸−半径方向)に移動しながら触媒床3を横切る。
合成反応時に生成した熱あるいはこのような反応を行なうために必要な熱は各管13を通過する流体によってそれぞれ抜き出されるかまたは供給される。
【0059】
このような流体はノズル15を通して反応器1に導入され、ダクト14を経由して各管群の下側の管13に供給される。その後、この流体は自由端に対応して連結管19により接続される各群のそれぞれの管13を通過し、各群の上側の管13からダクト16を経由して抜き出され、次にガス出口ダクト11を経由して反応器1から排出される。
【0060】
最後に、触媒床3で得られる反応したガスの流れは穴の開いた壁5を通して触媒床を離れ、ダクト10に集められ、ガス出口ダクト11を経由して反応器1から排出される。
図6の反応器1の運転は、冷却流体が並んで配置された各管13の2つの系列20および21を通って同時発生的に流れることを除けば図1のそれと類似している。さらに、おのおのの系列の各管13はすべてお互いに接続されているので、冷却流体は下側の管13に対応するダクト14を通して供給され、ノズル17を経由して反応器1から取り出すために、管13を通過しながら触媒床3全体を通って上に移動しそれから上側の管13から出ていく。
【0061】
有利なことに、ガス反応物の流れが触媒床を横切る方向に対しておおむね平行な平面に沿って各管13が触媒床3内部で伸張していることに注目することは重要である。
以上の説明から、本発明によって達成される数多の利点、特に、実施することが容易で信頼性がありかつ設備および保守費用が掛からず、同時に転化収率が高くて圧力損失およびエネルギー消費の少ない運転が可能であり、ガス反応物と冷却または加熱流体の間の熱交換効率が高い発熱または吸熱反応を行なう反応器を供給するという利点が明瞭になっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器の縦断面における部分図を示す。
【図2】 図1の反応器詳細の拡大概略斜視図を示す。
【図3】 図1の反応器詳細の縦断面における拡大概略図を示す。
【図4】 図1の反応器で採用されたタイプの、冷却または加熱流体の通路の間隔が一定なコイル状の管の断面における概略図を示す。
【図5】 図4において通路の間隔が異なっている場合の管の断面における概略図を示す。
【図6】 本発明の他の実施形態による発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器の縦断面における図を示す。
【図7】 図6の反応器で採用されたタイプの、冷却または加熱流体を通すために並んで配置された2本のコイル状管の断面における概略図を示す。
【図8】 本発明の他の実施形態による冷却または加熱流体を通すために並んで配置された2本の管の断面における概略図を示す。

Claims (5)

  1. 発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器であって、
    略円筒型の外側シェルと、
    前記シェル内に設けられ、反応物からなるフローの入口用及び反応済物質からなるフローの出口用としての穴がそれぞれに形成されている、対向位置に配置された各側壁を有する少なくとも1つの触媒床と、
    前記少なくとも1つの触媒床内を通り、冷却または加熱流体の通路用の少なくとも1つの管とを備え、
    前記少なくとも1つの管が、前記少なくとも1つの触媒床の内部において各側壁に対しておよそ垂直な平面に沿って伸張しており、前記反応物または反応済み物質が前記触媒床を半径方向に横切るときに前記反応物または反応済み物質の同じ部分が反応ガスの同じ部分が前記少なくとも1つの管の全体をいろいろ異なった温度で横切るようになっており、
    並んで配置された少なくとも2本の管が、前記側壁に対しおおむね垂直な、前記少なくとも1つの触媒床内の少なくとも1つの所定平面に対応して設けられており
    並んで配置された前記少なくとも2本の管が、前記触媒床の中心域からその周辺域に行くに従って長さが長くなる円弧型をしたコイル状に伸張している、反応器。
  2. 発熱または吸熱不均一反応を行なうための等温反応器であって、
    略円筒型の外側シェルと、
    前記シェル内に設けられ、反応物からなるフローの入口用及び反応済物質からなるフローの出口用としての穴がそれぞれに形成されている、対向位置に配置された各側壁を有する少なくとも1つの触媒床と、
    前記少なくとも1つの触媒床内を通り、冷却または加熱流体の通路用の少なくとも1つの管とを備え、
    前記少なくとも1つの管が、前記少なくとも1つの触媒床の内部において各側壁に対しておよそ垂直な平面に沿って伸張しており、前記反応物または反応済み物質が前記触媒床を半径方向に横切るときに前記反応物または反応済み物質の同じ部分が反応ガスの同じ部分が前記少なくとも1つの管の全体をいろいろ異なった温度で横切るようになっており、
    並んで配置された少なくとも2本の管が、前記側壁に対しおおむね垂直な、前記少なくとも1つの触媒床内の少なくとも1つの所定平面に対応して設けられており、
    並んで配置された前記少なくとも2本の管が、前記触媒床の中心域近くおよびその周辺域近くにそれぞれ配置された長さの異なる円弧型をした第1,第2管部分と、前記第2管部分及び前記第1管部分を接続する複数の第3管部分とを有する、反応器。
  3. 前記外側シェルは垂直であり、前記少なくとも1つの管が、前記少なくとも1つの触媒床内部でおおむね水平な平面に沿って伸張している、請求項1または2に記載の反応器。
  4. 前記少なくとも1つの触媒床内の管は複数の管からなり、この複数の管は相互に重なり合い各自由端に対応して接続されている、請求項1または2に記載の反応器。
  5. 前記管が少なくとも2本の管からなる複数のグループを構成しており、前記複数のグループはお互いに接続されており、それぞれのグループは、前記冷却または加熱流体の供給用・排出用ダクトとそれぞれの管とが流体的に連絡している、請求項に記載の反応器。
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