JP4650380B2 - 電池状態検知システムおよびこれを備えた自動車 - Google Patents

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Description

本発明は電池状態検知システムおよび自動車に係り、特に、バッテリの充放電電流を計測する電流計測手段を備えた電池状態検知システムおよび該電池状態検出システムを備えた自動車に関する。
近年、エンジン自動車による排ガスの削減に対応するため、アイドルストップ・スタート(ISS、エンジン停止後のエンジン再始動)が行われており、アイドルストップ可能な状態にバッテリを保つ技術が望まれている。すなわち、アイドルストップ機能を有する自動車では、エンジン停止中のエアコン、カーステレオなどの負荷は、すべてバッテリからの電力で賄われる。このため、従来に比べバッテリの深い放電が増加し、バッテリの残容量が小さくなるケースが増加する。バッテリの出力はバッテリの残容量に依存するため、エンジン停止中にバッテリの残容量が小さくなると、エンジンを始動する充分な出力が得られなくなり、エンジン停止後再始動することができなくなるおそれがある。
従って、アイドルストップ可能な状態を保つためには、バッテリの残容量や充電状態(SOC)等の電池状態を算出(推定)してエンジン始動に必要な出力の有無を監視し、エンジン始動に必要な出力がある場合には、アイドルストップ可能の信号、エンジン始動に必要な出力がない場合には、アイドルストップを止めバッテリを充電する必要がある旨の信号を車両側のコンピュータに送信する必要がある。
鉛電池は、この種の用途に対応できる代表的なバッテリである。鉛電池の電池状態検知技術としては、電気量計測手段によりバッテリの充放電電気量を計測し温度補正することで鉛電池の残容量を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。電池状態検知システムでは、電流センサの選択が重要になる。バッテリの充放電電流は通常(走行)時100A以下の比較的小電流であるが、エンジン始動時のみ500〜1500Aの大電流が流れる。従来の電池状態検知システムでは、100A以下の電流を正確に測定できる電流センサを用いることにより、精度よくバッテリの電池状態を推定することができた。
特開平9−98504号公報
ところが、アイドルストップ・スタートを導入したシステムにおいては、上述した電流センサを用いても、精度よく電池状態の推定(算出)ができない。これは、従来のシステムではエンジン始動回数が少ないため、エンジン始動時の放電量が無視できるほど小さいのに対し、アイドルストップ・スタートシステムではエンジン始動回数が多いため、エンジン始動時の放電量が無視できないためである。一方、アイドルストップ・スタートシステムで、大電流を測定できる電流センサを用いて電池状態を推定しても、精度を得ることができない。これは、大電流を測定できる電流センサでは通常走行の100A以下の電流を精度よく測定できないためである。従って、アイドルストップ・スタートシステムにおいて、従来技術ではバッテリの電池状態を精度よく推定することができず、誤判定してしまう可能性がある。
本発明は上記事案に鑑み、バッテリの電池状態を精度よく推定可能な電池状態検知システムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、バッテリの充放電電流を計測する電流計測手段と、前記バッテリの電圧を測定する電圧計測手段と、前記バッテリの電池状態を算出する電池状態算出手段とを備え、前記電流計測手段は所定電流値まで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサを有しており、前記電池状態算出手段は、前記電流計測手段および前記電圧計測手段で所定時間毎に計測されたエンジン始動時の前記バッテリに流れる前記所定電流値未満の電流および前記バッテリの電圧から最小2乗法により電流、電圧間の直線関係式を求め、この関係式にエンジン始動時の前記バッテリの平均電圧を代入することで前記電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流の平均値を算出し、それにエンジン始動時間を乗ずることにより、エンジン始動時の前記バッテリの放電電気量を求めることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様は、バッテリの充放電電流を計測する電流計測手段と、前記バッテリの電圧を測定する電圧計測手段と、前記バッテリの電池状態を算出する電池状態算出手段とを備え、前記電流計測手段は所定電流値まで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサを有しており、前記電池状態算出手段は、前記電流計測手段および前記電圧計測手段で所定時間毎に計測されたエンジン始動時の前記バッテリに流れる前記所定電流値未満の電流および前記バッテリの電圧から最小2乗法により電流、電圧間の直線関係式を求め、この関係式にエンジン始動時の前記バッテリの電圧を代入することで前記電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流を算出し、それをエンジン始動時間、積分することにより、エンジン始動時の前記バッテリの放電電気量を求めることを特徴とする。
上記第1および第2の態様において、電流センサはホール素子またはシャント抵抗であって、100Aまでの検出誤差が5%以下であることが好ましく、電流センサは検出可能な最大電流値が50〜200Aであることが更に好ましい。
そして、本発明の第3の態様は、上記第1ないし第2の態様の電池状態検知システムを備えた自動車である。
本発明によれば、電流計測手段は所定電流値まで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサを有しており、電池状態算出手段が、電流計測手段および電圧計測手段で所定時間毎に計測されたエンジン始動時のバッテリに流れる所定電流値未満の電流およびバッテリの電圧から最小2乗法により電流、電圧間の直線関係式を求め、この関係式にエンジン始動時のバッテリの平均電圧を代入することで電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流の平均値を算出し、それにエンジン始動時間を乗ずることにより、または、この関係式にエンジン始動時のバッテリの電圧を代入することで電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流を算出し、それをエンジン始動時間、積分することにより、エンジン始動時のバッテリの放電電気量を求めるので、バッテリの放電電気量を的確に捉えることができバッテリの電池状態を精度よく推定できる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明を車両に搭載された鉛電池の充電状態を検知する電池状態検知システムに適用した実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の電池状態検知システム12は、差動増幅回路等を有し鉛電池1の両端電圧を測定する電圧センサ3、100Aまで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下で鉛電池1に流れる充放電電流を検出するホール素子等の電流センサ4および鉛電池1の充電状態(SOC)を算出するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという。)10を備えている。
鉛電池1は、電池容器となる角型の電槽を有している。電槽の材質には、例えば、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の高分子樹脂を選択することができる。電槽には合計6組の極板群が収容されている。各極板群は、複数枚の負極板および正極板がガラス繊維からなるリテーナ(セパレータ)を介して積層されており、セル電圧は2.0Vとされている。従って、鉛電池1の公称電圧は12Vである。鉛電池1の上蓋には、外部へ電力を供給するためのロッド状の正極出力端子および負極出力端子が立設されている。
鉛電池1の正極出力端子は、電流センサ4を介してイグニッションスイッチ(以下、IGNスイッチという。)5の中央端子に接続されている。IGNスイッチ5は、中央端子とは別に、OFF端子、ON/ACC端子およびSTART端子を有しており、中央端子とこれらOFF、ON/ACCおよびSTART端子のいずれかとは、ロータリー式に切り替え接続が可能である。
電流センサ4は、ホール素子に流れる電流に応じて変化するホール電圧により電流を検出することが可能である。START端子はエンジン始動用セルモータ(エンジン始動用スタータ)9に接続されている。セルモータ9は、図示しないクラッチ機構を介してエンジン8の回転軸に回転駆動力の伝達が可能である。
また、ON/ACC端子は、エアコン、ラジオ、ランプ等の補機6および一方向への電流の流れを許容するレギュレータを介してエンジン8の回転により発電する発電機7の一端に接続されている。すなわち、レギュレータのアノード側は発電機7の一端に、カソード側はON/ACC端子に接続されている。エンジン8の回転軸は、不図示のクラッチ機構を介して発電機7に動力の伝達が可能である。このため、エンジン8が回転状態にあるときは、不図示のクラッチ機構を介して発電機7が作動し発電機7からの電力が補機6または鉛電池1に供給(充電)される。なお、OFF端子はいずれにも接続されていない。
電流センサ4の出力側は、マイコン10に内蔵されたA/Dコンバータに接続されている。このため、電流センサ4から出力されたホール電圧はA/Dコンバータでデジタル値に変換され、マイコン10は鉛電池1に流れる電流Iを取り込むことができる。また、鉛電池1の出力端子は、電圧センサ3に接続されており、電圧センサ3の出力側はマイコン10に内蔵されたA/Dコンバータに接続されている。このため、マイコン10は、鉛電池1の電圧をデジタル値で取り込むことができる。なお、マイコン10は、インターフェースを介して上位の車両制御システム11と通信可能である。
マイコン10は、中央演算処理装置として機能するCPU、電池状態検知システム12の基本制御プログラムやプログラムデータが格納されたROM、CPUのワークエリアとして働くとともにデータを一時的に記憶するRAM等を含んで構成されている。また、発電機7、セルモータ9および補機6の他端、鉛電池1の負極外部出力端子およびマイコンは、それぞれグランドに接続されている。
(動作)
一般に、バッテリの充電状態C(%)は下式(1)により算出することができる。なお、式(1)において、Qfは満充電時容量、Qoutは放電電流積算値、c1は電流係数、Qinは充電電流積算値、c2は充電効率を表している。鉛電池1の放電電流積算値Qoutは通常走行時の放電量とエンジン始動時の放電量との和である。
Figure 0004650380
マイコン10のCPUは、通常走行時の鉛電池1の放電量を(電流センサ4の測定値)x(サンプリング時間)として算出し、エンジン始動時の放電量を図2に示す放電量算出ルーチンを実行することにより算出する。
放電量算出ルーチンでは、まず、ステップ110において、エンジン始動開始か否かを判断する。エンジン始動開始の判断は、例えば、鉛電池1の放電電流が60A以上になったらエンジン始動開始と判断する。否定判断のときは、上述した通常走行時の鉛電池1の放電量の算出等の別処理を実行して放電量算出ルーチンを終了する。肯定判断のときは、ステップ112でエンジン始動時間をカウントする。
次に、次のステップ114でエンジン始動中の鉛電池1の平均電圧を算出し、ステップ116において鉛電池1に流れる電流Iが0<I<100(A)の範囲かを判断し、否定判断のときはステップ120に進み、肯定判断のときは次のステップ118で0〜100Aの範囲のI、Vデータを蓄積(RAMに格納)する。なお、ステップ112〜ステップ118での処理は1ms毎に実行する。
次のステップ120では、エンジン始動が終了したか否かを判断し、否定判断のときはステップ112に戻り、肯定判断のときはステップ122に進む。エンジン始動終了の判断は、例えば、鉛電池1に充電電流が流れ始めたらエンジン始動終了と判断する。
ステップ122では、エンジン始動中の電流I、電圧Vの近似直線を最小2乗法で算出する。図3は、1ms毎に測定した電流I(ただし、0<I<100(A))、電圧Vおよび近似直線を表したグラフである。
次のステップ124では、近似直線にエンジン始動中の平均電圧を代入して平均電流を算出し、ステップ126で平均電流にエンジン始動時間を乗じてエンジン始動時の放電量を算出して放電量算出ルーチンを終了する。
なお、図2において、ENGCkCountはエンジン始動時間、ENGVAveはエンジン始動中の鉛電池1の平均電圧、Iは電流センサ4を介して測定した電流測定値、Vは電圧センサ3を介して測定した電圧測定値、ENGIAveは平均電流、Rrepはエンジン始動中のI、Vの近似直線の傾き、OCVrepはエンジン始動中のI、Vの近似直線の切片、IntegM_Eはエンジン始動時の放電量を表している。
マイコン10のCPUは、放電量算出ルーチンで算出した通常走行時の放電量とエンジン始動時の放電量との和を算出し(放電電流積算値Qoutを算出し)、上述した式(1)により、鉛電池1の充電状態C(%)を算出して、車両制御システム11に報知する。この報知に基づいて、車両制御システム11は、鉛電池1のSOCが一定値以上のときはアイドルストップを行い、一定値未満のときはアイドルストップを止め、発電機7の発電電力を鉛電池1に供給して鉛電池1を充電する。
(効果等)
本実施形態の電池状態検知システム12は、100Aまで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサ4を有しており、エンジン始動中に、1ms毎に計測されたエンジン始動時の鉛電池1に流れる100A未満の電流Iおよび電圧Vから、エンジン始動終了後に、最小2乗法により電流I、電圧V間の近似直線を求め(ステップ122)、この近似直線にエンジン始動時の鉛電池1の平均電圧を代入することで平均電流を算出し(ステップ124)、それにエンジン始動時間を乗ずることにより、電流センサ4の測定範囲外となるエンジン始動時の鉛電池1の放電電気量を算出する(ステップ126)ので、充放電量を的確に捉え充電状態を精度よく推定でき、電池状態を誤判定してしまうことによるISS始動不能状態などを回避することができる。
下表1に本実施形態の電池状態検知システム12のエンジン始動時の放電量の推定値に対する実測値の検証結果を示す。エンジン始動時の放電(電気)量の推定値は実測値に比べ約5%小さい値だったが、ほぼ一致している。
Figure 0004650380
なお、本実施形態では、100Aまで電流検出が可能なホール素子の電流センサ4を例示したが、本発明はこれに限らず、検出可能な最大電流値が50〜200Aの電流センサを用いることができ、また、ホール素子に代えてシャント抵抗を含むシャント回路で電流を測定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、エンジン始動時の鉛電池1に流れる100A未満の電流Iおよび電圧Vから最小2乗法により電流I、電圧V間の近似直線を求め、この近似直線にエンジン始動時の鉛電池1の平均電圧を代入することで平均電流を算出し、それにエンジン始動時間を乗ずることにより、電流センサ4の測定範囲外となるエンジン始動時の鉛電池1の放電電気量を算出する例を示したが、エンジン始動時の鉛電池1に流れる100A未満の電流Iおよび電圧Vから最小2乗法により電流I、電圧V間の近似直線を求め、この近似直線にエンジン始動時の鉛電池1の電圧を代入することで電流を算出し、それをエンジン始動時間、積分することにより、電流センサ4の測定範囲外となるエンジン始動時の鉛電池1の放電電気量を算出するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、充電状態(SOC)により鉛電池1の電池状態を算出する例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、鉛電池1の残容量や放電深度等を算出することで鉛電池1の電池状態を算出するようにしてもよい。
また、本実施形態では、エンジン始動開始(ステップ110)、エンジン始動終了(ステップ120)を電流センサ4で検出した電流で判断する例を示したが、IGNスイッチ5または車両制御システム11から信号(報知)を受けるように構成してもよい。
本発明はバッテリの電池状態を精度よく推定可能な電池状態検知システムを提供するものであるため、電池状態検知システムないしこれを備えた自動車の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明が適用可能な実施形態の電池状態検出システムのブロック図である。 電池状態検知システムのマイコンのCPUが実行する放電量算出ルーチンのフローチャートである。 エンジン始動時に1ms毎に測定した鉛電池の放電電流、電圧および最小2乗法で算出した近似直線のグラフである。
符号の説明
1 鉛電池(バッテリ)
3 電圧センサ(電圧計測手段の一部)
4 電流センサ(電流計測手段の一部)
10 マイコン(電流計測手段の一部、電圧計測手段の一部、電池状態算出手段)
12 電池状態検知システム

Claims (5)

  1. バッテリの充放電電流を計測する電流計測手段と、前記バッテリの電圧を測定する電圧計測手段と、前記バッテリの電池状態を算出する電池状態算出手段とを備え、前記電流計測手段は所定電流値まで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサを有しており、前記電池状態算出手段は、前記電流計測手段および前記電圧計測手段で所定時間毎に計測されたエンジン始動時の前記バッテリに流れる前記所定電流値未満の電流および前記バッテリの電圧から最小2乗法により電流、電圧間の直線関係式を求め、この関係式にエンジン始動時の前記バッテリの平均電圧を代入することで前記電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流の平均値を算出し、それにエンジン始動時間を乗ずることにより、エンジン始動時の前記バッテリの放電電気量を求めることを特徴とする電池状態検知システム。
  2. バッテリの充放電電流を計測する電流計測手段と、前記バッテリの電圧を測定する電圧計測手段と、前記バッテリの電池状態を算出する電池状態算出手段とを備え、前記電流計測手段は所定電流値まで電流検出が可能であって検出誤差が5%以下の電流センサを有しており、前記電池状態算出手段は、前記電流計測手段および前記電圧計測手段で所定時間毎に計測されたエンジン始動時の前記バッテリに流れる前記所定電流値未満の電流および前記バッテリの電圧から最小2乗法により電流、電圧間の直線関係式を求め、この関係式にエンジン始動時の前記バッテリの電圧を代入することで前記電流計測手段の測定範囲外となるエンジン始動時の電流を算出し、それをエンジン始動時間、積分することにより、エンジン始動時の前記バッテリの放電電気量を求めることを特徴とする電池状態検知システム。
  3. 前記電流センサはホール素子またはシャント抵抗であって、100Aまでの検出誤差が5%以下であることを特徴する請求項1または請求項2に記載の電池状態検知システム。
  4. 前記電流センサは検出可能な最大電流値が50〜200Aであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電池状態検知システム。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電池状態検知システムを備えた自動車。
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