ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOxを還元除去するためのNOx触媒について種々の研究や提案がなされている。その中に、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒としてNOx吸蔵還元型触媒やNOx直接還元型触媒等があり、有効に排気ガス中のNOxを浄化できる。
このNOx吸蔵還元型触媒は、アルミナ(Al2 O3 )、ゼオライト等の酸化物担持層に、酸化・還元反応を促進する触媒貴金属と、NOx吸蔵機能を有するNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)を担持した触媒である。この触媒貴金属としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等が用いられ、NOx吸蔵材には、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Ce)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類等の中の幾つかが用いられる。
このNOx吸蔵還元型触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーン(酸素過多)状態であって雰囲気中に酸素(O2 )が存在する場合には、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が貴金属類により酸化されて二酸化窒素(NO2 )となり、この二酸化窒素はNOx吸蔵材に硝酸塩(Ba2 NO4 等)として蓄積される。
また、流入する排気ガスの空燃比が、理論空燃比やリッチ(低酸素濃度)状態になって雰囲気中に酸素が存在しなくなると、バリウム(Ba)等のNOx吸蔵材は一酸化炭素(CO)と結合し、硝酸塩から二酸化窒素が分解放出され、この放出された二酸化窒素は貴金属類の三元機能により排気ガス中に含まれている未燃炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等で還元され窒素(N2 )となり、排気ガス中の諸成分は、二酸化炭素(CO2 ),水(H2 O),窒素(N2 )等の無害な物質として大気中に放出される。
そのため、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵能力が飽和に近くなると、吸蔵されたNOxを放出させて触媒を再生するために、理論空燃比より燃料を多くして排気ガスの空燃比をリッチにして、流入する排気ガスの酸素濃度を低下させて、還元組成排気ガスを触媒に供給する必要がある。このNOx吸蔵能力回復用のリッチ制御を行うことにより吸収したNOxを放出させて、この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させる再生操作を行っている。
そして、NOx吸蔵還元型触媒を効果的に機能させるためには、リーン状態で吸蔵したNOxを還元するのに必要十分な量の還元剤をリッチ状態時に供給する必要があり、ディーゼル機関では、リッチの状態を燃料系のみで実現しようとすると、燃費が悪化するので、還元排気ガスを発生させるために、吸気を絞り弁で絞ると共に、EGR弁を開いて、EGRガスを大量に供給し、吸気量を減少すると共に、リッチ深さを深くするため燃料を追加し、シリンダ内燃焼をリッチ燃焼に切り替えている。
一方、NOx直接還元型触媒は、β型ゼオライト等の担体に触媒成分であるロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の金属を担持させたものである。更に、金属の酸化作用を軽減し、NOx還元能力の保持に寄与するセリウム(Ce)を配合したり、下層に三元触媒を設けて酸化還元反応、特にリッチ状態におけるNOxの還元反応を促進するようにしたり、NOxの浄化率を向上させるために担体に鉄(Fe)を加える等しているものもある。
このNOx直接還元型触媒は、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスの空燃比が、リーン状態の排気ガスのような酸素濃度が高い雰囲気では、NOxを窒素(N2 )に直接還元するが、この還元の際に、触媒の活性物質である金属に酸素(O2 )が吸着して還元性能が悪化する。そのため、排気ガスの空燃比が理論空燃比やリッチ状態になるように、排気ガス中の酸素濃度を略ゼロに近い状態にして、触媒の活性物質を再生して活性化する必要がある。
そして、NOx吸蔵還元型触媒と同様に、通常のエンジン運転状態である排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを浄化し、この浄化に際して、酸化した触媒をリッチ状態の場合に還元して、NOx浄化能力を回復する。
なお、NOx吸蔵還元型触媒やNOx直接還元型触媒等の排気ガス中の硫黄によってNOx浄化能力が低下する硫黄被毒からの回復に際しても、空燃比や触媒温度は多少異なるが、同様に、排気ガスをリッチ空燃比状態にする脱硫制御と呼ばれる再生制御が行われる。
この再生制御のリッチ空燃比制御においては、EGR制御や吸気絞り等の吸気系リッチ制御とシリンダ内燃料噴射におけるポスト噴射や排気管内直接噴射等の燃焼系リッチ制御によって、NOx浄化触媒の上流側の排気ガスの空燃比がリッチ空燃比になるように、かつ、NOx浄化触媒の下流側の排気ガスの空燃比がストイキ空燃比(理論空燃比)になるように制御している。
このリッチ期間の間、NOx浄化能力の回復に際してNOx浄化触媒から酸素が放出されるので、下流側の排気ガスの空燃比は酸素濃度換算で0.2%程度となっているが、NOx浄化能力の回復が終了すると、NOx浄化触媒からの酸素の放出が終了するので、下流側の排気ガスの空燃比は酸素濃度換算で0%程度となる。この現象を利用して、下流側の排気ガスの空燃比(酸素濃度)をモニターして、この変化を捉えて、再生制御のリッチ空燃比制御を終了している。
また、再生制御の開始時期に関しては、実験等のように、NOx濃度センサを用いることができる場合には、NOx浄化触媒の前後のNOx濃度の差から算出したNOx浄化率を基に、再生開始を判断する。この場合には、NOx浄化触媒の劣化に係わらず、再生開始時期を正確に検知できる。
しかしながら、このNOx濃度センサは、未だ高価であるため、量産品に使用するのは難しいため、前回の再生制御から次回の再生制御までのリーン制御時間が所定のリーン期間を超えた場合に再生開始としたり、エンジンの運転状態からリーン空燃比状態の間に浄化されるNOxの量を推定し、これを累積計算して、この推定NOx累積量が所定の限界値を超えたときに再生開始としている。
しかしながら、NOx浄化触媒の劣化が進むと、NOx吸蔵還元型触媒では触媒内のNOx吸蔵材の減少やシンタリング(焼結)によって吸蔵効率が低下するため、NOx吸蔵可能量が低下したり、また、NOx直接還元型触媒では触媒の活性物質の還元能力が低下したりして、NOx浄化能力が低下し、再生制御が必要になるまでのリーン期間(リーンインターバル)が短くなったり、限界値が小さくなってくる。
なお、このNOx浄化触媒の劣化の主なものは熱劣化であり、これは徐々に進行し回復は見込めない。また、NOx浄化触媒の劣化の原因の一つに硫黄被毒による劣化があるが、これは硫黄パージによる再生制御で回復できる。
そのため、この触媒劣化によるリーン期間の短縮を考慮せずに、固定した判定用リーン期間の間隔で再生制御を行う場合には次のような問題が生じる。つまり、実際のリーン期間が判定用リーン期間より短くなると、実際のリーン期間を経過してから判定用リーン期間になるまでの間は、NOx浄化率が低下した状態のままとなる。また、判定用リーン期間が実際のリーン期間がより短く設定されていると、判定用リーン期間から実際のリーン期間になるまでのNOx浄化能力を利用できず、再生制御の際のリッチ空燃比にするための燃料や排気ガスを昇温するための燃料を効率良く利用できない。そのため、燃費が悪化する。
このNOx浄化触媒の劣化判定方法の一つとして、図13に示すように、NOx吸蔵還元型触媒の上流側の第1酸素濃度センサの出力値(触媒入口空気過剰率λin)がリッチ空燃比を示す値に変化した時点から、下流側の第2酸素濃度センサの出力値(触媒出口空気過剰率λout )がリッチ空燃比を示す値となるまでの時間trm(計測遅れ時間:計測リッチ期間)を用いて、NOx吸収剤の劣化を判定している(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかしながら、特許文献1の劣化判定方法では、計測遅れ時間が、所定判定時間より短いとき、NOx吸収剤が劣化していると判定しているが、所定判定時間を、例えば、NOx吸収剤のNOx吸収能力が新品の50%程度になったときの遅れ時間に対応するように実験により決定している。このように、特許文献1では、劣化しているか否かの判定のみであり、再生制御におけるリッチ制御時間の設定等に使用することはできない。
また、特許文献2では、計測遅れ時間とNOx吸収量の推定値との相関から、より詳細には、計測遅れ時間と、触媒温度を加味したNOx吸収量の推定値に見合った遅れ時間との比較からNOx吸収性能の劣化度合いを診断している。また、始動後初回のリッチ反転時に計測された遅れ時間のみに基づいて劣化度合いを判定することにより、触媒温度が高温から低温に移行する時に劣化診断が行われることを回避して劣化診断の精度を向上させている。
しかしながら、本発明者らは多くの実験により、この遅れ時間は、NOx吸蔵材に吸収されたNOx吸蔵量(NOx吸収量)と触媒温度だけに依存するものではなく、リッチ空燃比状態におけるリッチ深さ、排気ガスの流量、排気ガスの温度とも複雑に絡み合っており、特許文献2の図7のような遅れ時間と触媒温度とNOx吸収性能の劣化度合いとの単純な関係だけではないとの知見を得た。
例えば、リッチ深さが変わるとNOx還元速度が変化し、深い方が早く還元が終了する。また排気ガスの流量が多くなると早く還元が終了するので、触媒の劣化を判定する場合、上記要素を加味しないと劣化の判定ができない。このため、前記特許文献2では正確な劣化状態の判断はできない。
特開平10−299460号公報
特開平11−62562号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気ガス中のNOxの浄化のために、流入する排気ガスがリッチ状態の時にNOx浄化能力を回復するNOx浄化触媒を備えた排気ガス浄化システムにおいて、NOx濃度センサを使用しなくても酸素濃度センサの検出値からNOx浄化触媒の劣化状態を判断し、次回の再生制御開始までのインターバルであるリーン期間を的確に設定することができ、NOx浄化率の低下を防ぐことができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
以上のような目的を達成するための排気ガス浄化方法は、NOx浄化触媒の上流側の酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻から、前記NOx浄化触媒の下流側の酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻までの計測リッチ期間から前記NOx浄化触媒の劣化状態を判定し、前記NOx浄化触媒上流の空気過剰率と前記計測リッチ期間との関係から、触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から、次回の前記NOx浄化触媒の再生制御開始までのインターバルを決定する排気ガス浄化方法において、前記再生制御中における、前記NOx浄化触媒の上流側の酸素濃度から算出される空気過剰率と、排気ガスの流量と、排気ガスの温度とから、予め設定された空気過剰率と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第1の関係、排気ガスの流量と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第2の関係、排気ガスの温度と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第3の関係から、それぞれ第1、第2及び第3の触媒劣化度合いを算出し、該第1、第2及び第3の触媒劣化度合いから触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から、前回の再生制御終了から次回の再生制御開始までのリーン期間に関する再生開始判定用のリーン期間を、予め設定された触媒劣化度合いに対する判定用のリーン期間の第4の関係から算出し、該算出された判定用のリーン期間に現状の判定用のリーン期間を更新することを特徴とする。
ここでいうNOx浄化触媒にはNOx吸蔵還元型触媒やNOx直接還元型触媒等があり、NOx浄化能力の回復には、NOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵能力の回復や硫黄被毒からの回復、また、NOx直接還元型触媒のNOx還元能力の回復や硫黄被毒からの回復等を含む。
そして、本発明においては、リッチ期間は触媒上流側の空気過剰率(リッチ深さ:還元剤量に関係する。)や排気ガスの流量や排気ガスの温度に深く関係するので、触媒の新品状態から耐久性試験を行い、リッチ期間と、NOx浄化触媒上流の空気過剰率との関係をマップデータなどで求めておき、この関係と計測したリッチ期間との関係から、触媒劣化度合い推定値を算出する。そして、この触媒劣化度合い推定値に基づいて、次回の前記NOx浄化触媒の再生制御開始までのインターバルを決定すると、NOx濃度センサを使用しなくても、次回の再生制御開始までのインターバル(リーン期間)を的確に設定することができる。
そして、この方法では、触媒の新品状態から耐久性試験を行い、リッチ期間とNOx浄化触媒上流の空気過剰率をベースに触媒劣化度合いを示す第1マップデータM1(図3)、リッチ期間と排気ガスの流量をベースに触媒劣化度合いを示す第2マップデータM2(図4)、リッチ期間と排気ガスの温度をベースに触媒劣化度合いを示す第3マップデータM3(図5)の三つのマップデータを作成する。そして、ある程度の走行距離以上であれば、走行距離と触媒劣化度合いの関係は概ね線型(リニア)の関係になるので、数点の所定の走行距離毎に、この走行距離に対してそれぞれ数点のNOx浄化触媒上流の空気過剰率、排気ガスの流量、排気ガスの温度で実験を行い、この実験結果を用いて、これらのマップデータM1,M2,M3の一部を作成し、それ以上の走行距離に対しては線型の関係を利用して算出した計算値を用いて第1、第2及び第3のマップデータM1,M2,M1を完成する。
また、触媒劣化度合いと判定用のリーン期間との関係を示す第4マップデータM4 (図6), 第5マップデータM5 (図7)を作成する。この第4マップデータM4 と第5マップデータM5 は、触媒劣化度合いに応じて、それぞれのNOx浄化能力回復用再生制御または硫黄被毒回復用再生制御のための判定用のリーン期間(リーンインターバル)の関係を決めるが、この判定用のリーン期間は、NOx浄化率が低下した期間を含まないように短くして、NOx浄化率が低下するのを防止できるようにするが、一方で、短くし過ぎてNOx浄化率に余裕があるにも係わらず再生制御を開始して再生制御回数が増加することを回避して、再生制御による燃費の悪化を極力抑えるように設定される。
そして、この方法では、この判定用のリーン期間は、NOx浄化率が低下しないように、第1、第2及び第3の触媒劣化度合いから触媒劣化度合い推定値を求め、この触媒劣化度合い推定値に対する判定用のリーン期間を第4マップデータM4と第5マップデータM5を用いて算出し、現状の判定用のリーン期間をこの新たに算出された判定用のリーン期間に変更する。
また、参考となる排気ガス浄化方法は、NOx浄化触媒の上流側の酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻から、前記NOx浄化触媒の下流側の酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻までの計測リッチ期間から前記NOx浄化触媒の劣化状態を判定する排気ガス浄化方法において、前記NOx浄化触媒上流の空気過剰率、排気ガスの流量、および、排気ガスの温度との関係から閾値リッチ期間を求め、前記閾値リッチ期間と前記計測リッチ期間とを比較し、前記閾値リッチ期間が前記計測リッチ期間よりも大きい時は、前記計測リッチ期間に対する触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から次回の前記NOx浄化触媒の再生制御開始までのインターバルを決定することを特徴とする。
この方法では、NOx浄化触媒上流の空気過剰率、排気ガスの流量、および、排気ガスの温度の3つのパラメータの3次元のマップデータから閾値リッチ期間を求める。
この3次元のマップデータとは、NOx浄化触媒が劣化していない新品時のリッチ期間を実験的に求めて、このリッチ期間を閾値リッチ期間としてマップデータ化したものである。例えば、排気ガス温度別のNOx浄化触媒上流の空気過剰率と排気ガスの流量の2次元のマップデータを複数揃えて、3次元のマップデータを構成し、排気ガスの温度、及び、NOx浄化触媒上流の空気過剰率と排気ガスの流量から、これらのマップデータを参照して閾値リッチ期間を算出する。なお、排気ガスの温度がこれらのマップデータの排気ガスの温度の間になった時は、補間により求める。
そして、この閾値リッチ期間と、実測された計測リッチ期間とを比較することにより、NOx浄化触媒が劣化しているか否かを判断し、劣化していると判定されたときには、閾値リッチ期間と計測リッチ期間との差や比等から触媒劣化度合いを推定し、この触媒劣化度合い推定値に対応させて、再生制御開始までのインターバルを短くする。
これにより、NOx濃度センサを使用しなくても、次回の再生制御開始までのリーン期間を的確に設定することができる。この方法を採用すると、3次元のマップデータを用いるので、演算が早くなるという利点がある。
また、参考となる排気ガス浄化システムは、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを浄化し、かつ、リッチ状態の場合にNOx浄化能力を回復するNOx浄化触媒と、該NOx浄化触媒の上流側に設けられた上流側酸素濃度検出手段と、前記NOx浄化触媒の下流側に設けられた下流側酸素濃度検出手段と、該NOx浄化触媒のNOx浄化能力を回復するための再生制御を行う触媒再生制御手段とを備えて形成されると共に、前記触媒再生制御手段が、前記再生制御の時に、前記上流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻から、前記下流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻までの計測リッチ期間から前記NOx浄化触媒の劣化状態を判定する排気ガス浄化システムにおいて、前記触媒再生制御手段が、前記再生制御中における、前記上流側酸素濃度検出手段により決定される空気過剰率と前記計測リッチ期間との関係から、触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から、次回の前記NOx浄化触媒の再生制御開始までのインターバルを決定するように構成される。
また、上記のような目的を達成するための排気ガス浄化システムは、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを浄化し、かつ、リッチ状態の場合にNOx浄化能力を回復するNOx浄化触媒と、該NOx浄化触媒の上流側に設けられた上流側酸素濃度検出手段と、前記NOx浄化触媒の下流側に設けられた下流側酸素濃度検出手段と、該NOx浄化触媒のNOx浄化能力を回復するための再生制御を行う触媒再生制御手段とを備えて形成されると共に、前記触媒再生制御手段が、前記再生制御の時に、前記上流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻から、前記下流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻までの計測リッチ期間から前記NOx浄化触媒の劣化状態を判定する排気ガス浄化システムにおいて、前記触媒再生制御手段が、前記再生制御中における、前記上流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度から算出される空気過剰率と、排気ガスの流量と、排気ガスの温度とから、予め設定された空気過剰率と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第1のマップデータ、排気ガスの流量と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第2のマップデータ、排気ガスの温度と計測リッチ期間に対する触媒劣化度合いの第3のマップデータから、それぞれ第1、第2及び第3の触媒劣化度合いを算出し、該第1、第2及び第3の触媒劣化度合いから触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から、前回の再生制御終了から次回の再生制御開始までのリーン期間に関する再生開始用のリーン期間を、予め設定された触媒劣化度合いに対する判定用のリーン期間の第4の関係から算出し、該算出された判定用のリーン期間に現状の判定用のリーン期間を更新するように構成される。
また、参考となる排気ガス浄化システムは、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを浄化し、かつ、リッチ状態の場合にNOx浄化能力を回復するNOx浄化触媒と、該NOx浄化触媒の上流側に設けられた上流側酸素濃度検出手段と、前記NOx浄化触媒の下流側に設けられた下流側酸素濃度検出手段と、該NOx浄化触媒のNOx浄化能力を回復するための再生制御を行う触媒再生制御手段とを備えて形成されると共に、前記触媒再生制御手段が、前記再生制御の時に、前記上流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻から、前記下流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度がリーン空燃比状態からリッチ空燃比状態に変化する時刻までの計測リッチ期間から前記NOx浄化触媒の劣化状態を判定する排気ガス浄化システムにおいて、前記触媒再生制御装置が、前記再生制御中における、前記上流側酸素濃度検出手段で検出される酸素濃度から算出される空気過剰率、排気ガスの流量、および、排気ガスの温度とから、閾値リッチ期間を算出し、前記閾値リッチ期間と前記計測リッチ期間とを比較し、前記閾値リッチ期間が前記計測リッチ期間よりも大きい時は、前記計測リッチ期間に対する触媒劣化度合い推定値を算出し、該触媒劣化度合い推定値から次回の前記NOx浄化触媒の再生制御開始までのインターバルを決定するように構成される。
これらの構成の排気ガス浄化システムにより、それぞれ上記したような排気ガス浄化方法を実施でき、NOx濃度センサを使用しなくても、酸素濃度センサの検出値からNOx浄化触媒の劣化状態を的確に判定することができ、この判定結果に基づいて、次回の再生制御開始までのインターバル(リーン期間)を的確に設定することができる。
そして、上記の排気ガス浄化システムは、前記NOx浄化触媒が、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出すると共に還元するNOx吸蔵還元型触媒、又は、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを還元浄化し、かつ、リッチ状態の場合にNOx浄化能力を回復するNOx直接還元型触媒である場合に適用でき、大きな効果を奏することができる。
本発明に係る排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムは、排気ガス中のNOxの浄化のために、流入する排気ガスがリッチ状態の時にNOx浄化能力を回復するNOx浄化触媒を備えた排気ガス浄化システムにおいて、NOx濃度センサを使用しなくても、酸素濃度センサの検出値からNOx浄化触媒の劣化状態を的確に判定することができ、この判定結果に基づいて、次回の再生制御開始までのインターバル(リーン期間)を的確に設定することができる。
従って、NOx浄化率の低下を防ぐことができると共に、再生制御による燃費の悪化を抑制できる。
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。
なお、ここでは、NOx浄化触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を例示して説明するが、本発明はNOx直接還元型触媒等でも適用可能であり、また、リッチ空燃比状態によるNOx浄化能力の回復として主に、NOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵能力の回復について説明しているが、NOx吸蔵還元型触媒の硫黄被毒からの回復や、また、NOx直接還元型触媒のNOx還元能力の回復や硫黄被毒からの回復等が含まれ、これらにも本発明は適用可能である。
また、ここでいう排気ガスのリッチ状態とは、必ずしもシリンダ内でリッチ燃焼する必要はなく、NOx吸蔵還元型触媒に流入する排気ガス中に供給した空気量と燃料量(シリンダ内で燃焼した分も含めて)との比が理論空燃比に近い状態(ストイキ状態)か又は理論空燃比より燃料量が多いリッチの状態であることをいう。
図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1では、エンジン(内燃機関)Eの排気通路3に酸化触媒21とNOx吸蔵還元型触媒22を有する排気ガス浄化装置20が配置される。
この酸化触媒21は、ハニカム状のコーディエライトあるいは耐熱鋼からなる担体の表面に、活性酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属からなる触媒活性成分を担持させて形成する。この酸化触媒は流入してくる排気ガス中のHC,CO等を酸化して、排気ガスを低酸素状態にすると共に燃焼熱により排気温度を上げる。
NOx吸蔵還元型触媒22は、コージェライト、炭化珪素(SiC)、極薄板ステンレス等で形成されたモノリス触媒に、酸化アルミニウム(Al2 O3 )、酸化チタン(TiO)等の触媒コート層を設け、この触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の触媒金属とバリウム(Ba)等のNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)を担持させて構成される。このモノリス触媒の構造材の担体は、多数のセルを有しており、また、このセルの内壁に設けられる触媒コート層は、大きな表面積を持っており、排気ガスとの接触効率を高めている。
このNOx吸蔵還元型触媒22では、酸素濃度が高い排気ガスの状態(リーン空燃比状態)の時に、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材が吸蔵することにより、排気ガス中のNOxを浄化し、酸素濃度が低いかゼロの排気ガス状態(リッチ空燃比状態)の時に、吸蔵したNOxを放出すると共に放出されたNOxを触媒金属の触媒作用により還元することにより、大気中へのNOxの流出を防止する。
そして、吸気通路2に、吸気量を測定するマスエアフローセンサ(MAFセンサ)5と吸気量を調整するための吸気絞り弁7が配設され、排気ガス浄化装置20の上流側の排気通路3に、排気ブレーキ用の排気絞り弁(排気スロットル)8が配設され、あるいは、下流側の排気通路3に、排気ブレーキ用の排気絞り弁(排気スロットル)9が配設される。また、EGR通路4にEGRクーラー10とEGR量を調整するEGR弁11が配設される。
そして、この酸化触媒21の上流側に第1酸素センサ25を配置し、NOx吸蔵還元型触媒22の下流側に第2酸素濃度センサ26を配置する。この第1酸素濃度センサ25はリッチ深さを制御するために必要な酸素濃度(空燃比、空気過剰率λ)を検出するので、広範囲λセンサが用いられる。一方、第2酸素濃度センサ26は、リッチ期間を計測するために空燃比がリッチ状態になったか否かを検出できればよいので、リーンとリッチの2値で検出されるバイナリーλセンサが用いられる。
また、排気ガスの温度を検出するために酸化触媒21の上流側に第1温度センサー27を配置し、酸化触媒21とNOx吸蔵還元型触媒22の間に第2温度センサー28を配置する。また、NOx吸蔵還元型触媒22の下流側に第3温度センサー29を配置する。
また、燃料系リッチ制御において排気管内直接噴射を行う場合には、排気ガス浄化装置20の上流側の排気通路3に、NOxの還元剤となる炭化水素(HC)Fを供給するHC供給弁(燃料噴射弁)24を設ける。このHC供給弁24は、図示しない燃料タンクからエンジンEの燃料である軽油等の燃料Fを排気通路3内に直接噴射して、排気ガスGの空燃比をリーン状態、リッチ状態やストイキ状態(理論空燃比状態)にするためのもので、排気管内噴射リッチ制御の手段となるものである。なお、燃料系リッチ制御を筒内(シリンダ内)燃料噴射におけるポスト噴射等で行う場合には、このHC供給弁24は不要となる。
そして、エンジンEの運転の全般的な制御を行うと共に、NOx吸蔵還元型触媒22のNOx浄化能力の回復制御も行う制御装置(ECU:エンジンコントロールユニット)30が設けられる。この制御装置30に第1及び第2酸素濃度センサ25、26や第1〜第3温度センサ27、28、29等からの検出値が入力され、この制御装置30からエンジンEの吸気絞り弁(吸気スロットル弁)7、EGR弁11、燃料噴射用のコモンレール電子制御燃料噴射装置の燃料噴射弁12等を制御する信号が出力される。
この排気ガス浄化システム1においては、空気Aは、吸気通路2の空気清浄器13、マスエアフローセンサ(MAFセンサ)5を通過して、ターボチャージャ6のコンプレッサにより圧縮昇圧され、吸気絞り弁7によりその量を調整されて吸気マニホールドよりシリンダ内に入る。そして、シリンダ内で発生した排気ガスGは、排気マニホールドから排気通路3に出て、ターボチャージャ6のタービンを駆動した後、排気ガス浄化装置20を通過して浄化された排気ガスGcとなって、図示しない消音器を通って大気中に排出される。また、排気ガスGの一部はEGRガスGeとして、EGR通路4のEGRクーラー10を通過し、EGR弁11でその量を調整されて吸気マニホールドに再循環される。
そして、第1の実施の形態の排気ガス浄化方法および排気ガス浄化システムでは、エンジンEの制御装置30に組み込まれた触媒再生制御手段により、図2に例示するような判定用リーン期間更新用制御フローに従って、再生制御開始を判定するための判定用のリーン期間tl1、tl2が更新される。この図2の判定用リーン期間更新用制御フローは、再生制御フローの一部として設けられるものであり、NOx吸蔵還元型触媒22の再生制御に伴って繰返し実行されるものとして示してある。
なお、再生制御におけるリッチ空燃比制御等は本発明の対象ではなく、このリッチ空燃比制御としては、周知技術のEGR制御、吸気絞り、排気絞り等の吸気系リッチ制御やシリンダ内燃料噴射におけるポスト噴射や排気管内直接噴射等の燃料系リッチ制御を有する再生制御を用いることができるので、説明は省略する。
また、このリーン期間更新用制御を有する触媒再生制御手段を制御装置30に組み込む前に、リッチ期間trと酸化触媒21の入口の空気過剰率(リッチ深さ)λinをベースに触媒劣化度合いDcを示す第1マップデータM1(図3)、リッチ期間trと排気ガス流量Qexhをベースに触媒劣化度合いDcを示す第2マップデータM2(図4)、リッチ期間trと排気ガス温度(第2温度センサ28で検出した温度)Texhをベースに触媒劣化度合いDcを示す第3マップデータM3(図5)の三つのマップデータが準備される。更に、触媒劣化度合い推定値DceとNOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間Tlc1との関係を示す第4マップデータM4(図6)と触媒劣化度合い推定値Dceと硫黄ひどく回復用再生制御の判定用のリーン期間Tlc2との関係を示す第5マップデータM5(図7)とが準備される。そして、これらのマップデータM1,M2,M3,M4,M5は触媒再生制御手段の一部として制御装置30に組み込まれる。
この図2のリーン期間更新用フローは再生制御フローと並行して実行されるが、このリーン期間更新用フローが再生制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、触媒劣化度合いを判定する触媒劣化判定を行うか否か、言い換えれば、リーン期間を更新するか否かを判定する。このステップS11の触媒劣化判定は、前回の触媒劣化判定からの走行距離Dd や走行時間td が所定の走行距離Ddcや所定の走行時間tdcを超えたか否か等で行う。このステップS11の触媒劣化判定で、触媒劣化判定が不要と判定された時には、リターンする。また、触媒劣化判定が必要と判定された時には、ステップS12に行く。
このステップS12では、図13に示すように触媒の上流側の空燃比λinがリッチ状態に変化した時点から、下流側の空燃比λout がリッチ状態に変化する時点までのリッチ期間tr を検出し、これを計測リッチ期間trmとする。
次のステップS13で、マスフローセンサ(MAFセンサ)5の検出値から排気ガスの流量Qexhを、第1酸素濃度センサ25の検出値から触媒入口の空気過剰率λinを算出する。また、第2温度センサ28の検出値である排気ガスの温度Texhを入力する。
次のステップS14で、計測リッチ期間trmと空気過剰率λinとから第1マップデータM1(図3)を用いて第1の触媒劣化度合いDc1を、計測リッチ期間trmと排気ガスの流量Qexhとから第2マップデータM2(図4)を用いて第2の劣化度合いDc2を、また、計測リッチ期間trmと排気ガスの温度Texhとから第3マップデータM3(図5)を用いて第3の劣化度合いDc3を、それぞれ算出する。
次のステップS15で、第1の触媒劣化度合いDc1、第2の触媒劣化度合いDc2、第3の触媒劣化度合いDc3から、触媒劣化度合い推定値Dceを算出する。この触媒劣化度合いの推定値Dceは、単純に三つの内の最大値Dcmaxにしてもよいが、第1の触媒劣化度合いDc1、第2の触媒劣化度合いDc2、第3の触媒劣化度合いDc3の平均値Dcmean としたり、触媒劣化度合いとの相関に強さを考慮して、これらの値の重み付き平均値Dcwmeanとすることもできる。
また、次のステップS16で、この触媒劣化度合い推定値Dceから第4マップデータM4 (図6)を用いて、NOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 を、また、第5マップデータM5 (図7)を用いて、硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 を算出する。
そして、次のステップS17で、NOx吸蔵能力回復用再生制御の所定の判定用のリーン期間tl1を判定用のリーン期間tlc1に、硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間Tl2を判定用のリーン期間tlc2にそれぞれ置き換える。つまり、再生制御の開始の判断にこれまで用いてきた判定用のリーン期間tl1、tl2を、ステップS16で新たに算出された判定用のリーン期間tlc1、tlc2に置き換え、それぞれの再生開始までのリーン空燃比期間を、ステップS12〜ステップS15で推定した触媒劣化度合いDc1,Dc2,Dc3に対応させて短縮する。そして、リターンし、このリーン期間更新用制御フローを終了する。
そして、この第1の実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、NOx吸蔵還元型触媒22の触媒劣化度合いDc1,Dc2,Dc3を計測リッチ期間trmのみならず、空気過剰率λin、排気ガスの流量Qexh、排気ガスの温度Texhを考慮に入れて推定し、この触媒劣化度合い推定値Dceに基づいて判定用のリーン期間tl1,tl2を更新するので、NOx濃度センサを使用しなくても酸素濃度センサ25、26の検出値からNOx浄化触媒22の劣化状態を的確に判定することができ、この判定結果に基づいて、次回の再生制御開始までのリーン期間tl1,tl2を的確に設定することができる。従って、NOx浄化率の低下を防ぐことができると共に再生制御による燃費の悪化を制御できる。
そして、第2の実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムでは、第1の実施の形態とは、触媒劣化度合いの算出方法が異なり、エンジンEの制御装置30に組み込まれた触媒再生制御手段により、図8に例示するような判定用リーン期間更新用制御フローに従って、再生制御開始を判定するための判定用のリーン期間tl1、tl2が更新される。
第2の実施の形態では、このリーン期間更新用制御を有する触媒再生制御手段を制御装置30に組み込む前に、排気ガス温度(第2温度センサ28で検出した温度)Texhiの所定の間隔毎に、酸化触媒21の入口の空気過剰率(リッチ深さ)λinjと排気ガスの流量Qexhkをベースに閾値リッチ期間tcrijkを示す第6マップデータM6(図9)と、閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmとの差Δtrm(=tcr−trm)と触媒劣化度合い推定値Dceを示す第7マップデータM7(図10)のマップデータが準備される。なお、差Δtrmの代わりに計測リッチ期間trmの閾値リッチ期間tcrに対する比R(=trm/tcr)や差Δtrmの閾値リッチ期間tcrに対する比P(=Δtrm/tcr)等を用いることもできる。
この第6マップデータM6 (図9)は、NOx吸蔵還元型触媒22が劣化していない新品時のリッチ期間を実験的に求めて、このリッチ期間を閾値リッチ期間tcrijk にしてマップデータ化することにより得られる。
また、閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmとの比較(図10では差Δtrm)から触媒劣化度合い推定値Dceを推定するための第7マップデータM7 (図10)と、触媒劣化度合い推定値DceとNOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 との関係を示す第8マップデータM8 (図11)と、触媒劣化度合い推定値Dceと硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 との関係を示す第9マップデータM9(図12)とが準備される。
この第8マップデータM8 と第9マップデータM9 は、図11と図12に示すように、それぞれが、排気ガス流量Qexh 別に、排気ガス温度Texh と触媒劣化度合い推定値Dceをベースにして、NOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 の値と硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 の値とを記載したものである。
これらのマップデータM6 、M7 , M8 、M9 は、触媒再生制御手段の一部として制御装置30に組み込まれる。
この図8のリーン期間更新用フローは再生制御フローと並行して実行されるが、このリーン期間更新用フローが再生制御フローから呼ばれて、スタートすると、ステップS21で、触媒劣化度合いを判定する触媒劣化判定を行うか否かを判定する。このステップS21の触媒劣化判定は、前回の触媒劣化判定からの走行距離Dd や走行時間td が所定の走行距離Ddcや所定の走行時間tdcを超えたか否か等で行う。このステップS21の触媒劣化判定で、触媒劣化判定が不要と判定された時には、リターンする。また、触媒劣化判定が必要と判定された時には、ステップS22に行く。
このステップS22では、図13に示すように触媒の上流側の空燃比λinがリッチ状態に変化した時点から、下流側の空燃比λout がリッチ状態に変化する時点までのリッチ期間tr を検出し、これを計測リッチ期間trmとする。
次のステップS23で、マスフローセンサ(MAFセンサ)5の検出値から排気ガスの流量Qexhを、第1酸素濃度センサ25の検出値から触媒入口の空気過剰率λinを算出する。また、第2温度センサ28の検出値である排気ガスの温度Texhを入力する。
次のステップS24で、空気過剰率λinと排気ガスの流量Qexhと排気ガスの温度Texhとから第6マップデータM6(図9)を用いて、閾値リッチ期間tcrを算出する。より具体的には、検出された排気ガスの温度Texhと同じ排気ガスの温度TexhiのマップデータM6iがある場合には、空気過剰率λinjと排気ガスの流量Qexhkベースの閾値リッチ期間tcrijkのマップデータを参照して、算出された空気過剰率λinと検出された排気ガスの流量Qexhに対応する閾値リッチ期間tcrを直接又は補間により求める。
なお、検出された排気ガスの温度Texhと同じ温度のマップデータM6iが無い場合には、検出された排気ガスの温度Texhの両側(Texhi<Texh<Texh(i+1))の排気ガスの温度Texhi,Texg(i+1)のマップデータM6iとM6(i+1)で、それぞれ、空気過剰率λinjと排気ガスの流量Qexhkベースの閾値リッチ期間tcrijk,tcr(i+1)を参照して、算出された空気過剰率λinと検出された排気ガスの流量Qexhに対応する閾値リッチ期間tcrとtcr(i+1)を求め、これを排気ガスの温度Texhで補間して、閾値リッチ期間tcrを求める。
また、この求めた閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmの差Δtrm( =tcr−trm)を算出する。
次のステップS25で、閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmとを比較する。図8では差Δtrm( =tcr−trm)から、閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmの大小関係をチェックする。差Δtrmがゼロより大きくない時(Δtrm=0,trm=tcr)は、劣化していないと判断し、次回の再生制御開始までのインターバルを変更することなく、リターンする。
また、ステップS25で、差Δtrmがゼロより大きい時(Δtrm>0,trm<tcr)は、劣化していると判断し、次のステップS26に行き、次回の再生制御開始までのインターバルを変更する。
ステップS26では、第7マップデータM7 (図10)を参照して、差Δtrmから触媒劣化度合い推定値Dceを求め、計測リッチ期間trmに対する触媒劣化度合い推定値Dceを算出する。
次のステップS27で、この触媒劣化度合い推定値Dceと、排気ガスの温度Texh 、排気ガスの流量Qexh とから第8マップデータM8 (図11)を用いて、NOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 を、また、第9マップデータM9 (図12)を用いて、硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 を算出する。
より具体的には、検出された排気ガスの流量Qexh と同じ排気ガスの流量QexhiのマップデータM8iがある場合には、排気ガスの温度Texhjと触媒劣化度合い推定値Dcek ベース のNOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1-ijk のマップデータを参照して、検出された排気ガスの温度Texh と算出された検出された触媒劣化度合い推定値Dceに対応するNOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 を直接又は補間により求める。
なお、検出された排気ガスの流量Qexh と同じ排気ガスの流量QexhiのマップデータM8iが無い場合には、検出された排気ガスの流量Qexh の両側(Qexhi<Qexh <Qexh(i+1))の排気ガスの流量Qexhi, Qexh(i+1)のマップデータM8iとM8(i+1)で、それぞれ、排気ガスの温度Texhjと触媒劣化度合い推定値Dcek ベースのリーン期間tlc1-ijk,tlc1-(i+1)jk を参照して、検出された排気ガスの温度Texh と算出された触媒劣化度合い推定値Dceに対応するリーン期間tlc1-i とtlc1-(i+1) を求め、これを排気ガスの流量Qexh で補間して、リーン期間tlc1 を求める。
また、硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 についても、第9マップデータM9 (図12)を用いて、同様に算出する。
次のステップS28で、NOx吸蔵能力回復用再生制御の所定の判定用のリーン期間tl1を判定用のリーン期間tlc1 に、硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tl2を判定用のリーン期間tlc2 にそれぞれ置き換える。つまり、再生制御の開始の判断にこれまで用いてきた判定用のリーン期間tl1、tl2を、ステップS27で新たに算出された判定用のリーン期間tl1、tl2に置き換え、それぞれの再生開始までのリーン空燃比期間を、ステップS22〜ステップS26で推定した触媒劣化度合いDceに対応させて短縮する。そして、リターンし、このリーン期間更新用制御フローを終了する。
この第2の実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、排気ガスの流量Qexh、空気過剰率λin、排気ガスの温度Texhから算出した閾値リッチ期間tcrと計測リッチ期間trmとの比較により、NOx吸蔵還元型触媒22の触媒劣化度合い推定値Dceを推定し、この触媒劣化度合い推定値Dceに基づいて判定用のリーン期間tl1,tl2を更新するので、NOx濃度センサを使用しなくても酸素濃度センサ25、26の検出値からNOx浄化触媒22の劣化状態を的確に判定することができ、この判定結果に基づいて、次回の再生制御開始までのリーン期間tl1,tl2を的確に設定することができる。従って、NOx浄化率の低下を防ぐことができると共に再生制御による燃費の悪化を制御できる。
なお、上記の説明において、第1の実施の形態のステップS16と第2の実施の形態のステップS27とで、触媒劣化度合い推定値DceからNOx吸蔵能力回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc1 と硫黄被毒回復用再生制御の判定用のリーン期間tlc2 を求める際に別々の方法を用いるようにしているが、同じ方法を用いることもできる。つまり、第1の実施の形態において、ステップS16の代わりに、ステップS27を用いることもでき、第2の実施の形態において、ステップS27の代わりに、ステップS16を用いることもできる。