JP4649597B2 - データ送信装置 - Google Patents
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Description
このシステムにおいては、電力線通信装置を屋内配線の任意の位置に配設し、この通信装置内の結合回路を介してデータ伝送を行うことにより通信装置間や通信装置と外部通信装置との間でデータ通信を行う。屋外の電力線は、例えば数百Hz以下の交流のみを通すフィルタを介して屋内配線に接続される。屋内配線には、親MODEMが接続され、親MODEMはルータ機能を備え、光終端装置、光ファイバ回線等を介してインターネット(サーバ)に接続されている。
屋内配線は任意の位置で分岐し、コンセントやスイッチを介して任意の負荷、例えばパソコン、テレビ、冷蔵庫、その他の電気製品に接続される。これらの電気製品の一部は子MODEMを備え、屋内配線を介し、例えば短波帯における所定の帯域を使用して親MODEMあるいは他の子MODEMとの間でデータ通信を行う。
そのため、屋内配線は、使用帯域中の広い帯域にわたって大きく減衰したり、特定の周波数(スペクトルヌル点)では信号が全く伝送されなかったりする。しかも、伝送路の周波数スペクトルは負荷の状態等によって頻繁に変化する。
また、屋内配線には、負荷から発生するノイズだけでなく、屋内配線がアンテナとなって空中の電磁波に共振して誘起される妨害信号やノイズが、信号電力と同程度のレベルで加わるという問題点があった。
しかし、このOFDM伝送方式は、周波数の利用効率を上げるために送信パルスのロールオフを小さくすると、ガードインターバル信号が長くなり、伝送効率が低下するという問題点があった。また、OFDM伝送方式は、ブロック伝送方式であり、伝送路の変動に対して、ブロックを再組立てしなければならず、速やかな対応がむずかしいという問題があった。
また、一般に、伝送チャンネルの特性が劣化してきた場合は、フォールバック・モードにしてデータ伝送速度を低下させる技術が知られている(特許文献2参照)。
しかし、1シンボルを構成する信号点数(ディジタル変調の変調多値数)を減少させるか、同じシンボルを複数回繰り返して送信するものであった。したがって、伝送品質が低下したときに、伝送チャンネルのスペクトル振幅を考慮しないでフォールバックをしていた。
より具体的には、上述したプリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとするものである。
上述した相関器は、前記プリコーダの出力シンボルデータと、該出力シンボルデータをその伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに通したものとを加算して当該相関器の出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものである。
ここで、伝達関数F1(D)は、送信信号のスペクトルエネルギのチャンネル通過率が上がるように設定される。
なお、上述したプリコーダで用いられるフィルタと、上述した相関器で用いられるフィルタとは、伝達関数が同一であるから、同じフィルタを共通使用することもできるし、異なるフィルタを使用することもできる。
より具体的には、上述したプリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がF2(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がF2(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、前記伝達関数F2(D)は、前記分数間隔等化器の帯域選択特性を制御することにより信号雑音比が向上するように設定される。
ここで、上述した伝達関数F1(D)は、上述した第1のデータ送信装置と同様に設定され、上述した伝達関数F2(D)は、上述した第2のデータ送信装置と同様に設定される。
なお、上述したプリコーダで用いられるフィルタと、上述した相関器で用いられるフィルタとは、伝達関数が部分的に同一であるから、一部のフィルタを共通使用することもできる。
このフォールバック制御手段は、上述した伝達関数F1(D)の絶対値|F1(D)|を、決定されたNの値が1に近いほど1に近づき、前記決定されたNの値が大きくなるほど前記伝送チャンネルの振幅特性|H(D)|に近づくように設定する。また、フォールバック制御手段は、上述した伝達関数F2(D)の絶対値|F2(D)|を、前記決定されたNの値が1に近いほど前記伝送チャンネルの振幅特性|H(D)|に近づき、前記決定されたNの値が大きくなるほど1に近づくように設定する。
また、上述した第1,第3のデータ送信装置において、ノッチフィルタの伝達関数をN(D)とし、上述したプリコーダおよび前記相関器における伝達関数F1(D)を伝達関数N(D)F1(D)に置き換えることにより、前記送信信号のスペクトルエネルギにノッチ特性を持たせることができる。
従って、伝送規格として送信信号の電力スペクトルに対して均一なピーク制限がある場合に適し、等化器の振幅等化特性を平坦にして等化能力を向上させることができる。
伝達関数F2(D)は、例えば、伝送チャンネルの伝達関数をH(D)としたとき、伝達関数F2(D)が、N(D)H(D)のスペクトル振幅|N(D)H(D)|が|N(D)||F2(D)|に近づくように、あるいは、伝達関数H(D)のスペクトル振幅|H(D)|が|F2(D)|に近づくように設定される。
従って、伝送規格として送信信号の電力スペクトルに対してピーク制限がある場合に適し、分数間隔等化器の振幅等化特性を平坦にして等化能力を向上させることができる。
伝達関数F1(D)は、例えば、伝送チャンネルの伝達関数をH(D)、送信信号のスペクトル振幅のピーク制限特性をP(D)としたとき、N(D)F1(D)のスペクトル振幅|N(D)F1(D)|が|N(D)||P(D)|に近づくように、あるいは、F1(D)のスペクトル振幅|F1(D)|が|P(D)|に近づくように設定される。
伝達関数F2(D)は、例えば、伝送チャンネルの伝達関数をH(D)としたとき、N(D)H(D)のスペクトル振幅|N(D)H(D)|が|N(D)||F2(D)|に近づくように、あるいは、伝達関数H(D)の振幅|H(D)|が|F2(D)|に近づくように設定される。
低速の送信シンボル速度で伝送する際に、広い帯域を用いて送信信号を送信し、かつ、分数間隔等化器を用いることにより、等化器が伝送チャンネルの良好な帯域を自然に選択することによりSNRを向上させることができる。
また、本発明のデータ送信装置においては、さらに、以下のような効果がある。
相関器を用いて送信スペクトルを成形することにより、送信信号のスペクトルエネルギの伝送チャンネル通過率が向上する。
プリコーダを用いて、等化器の帯域選択特性を制御することによりSNRを向上させる。
加えて、要求される仕様、例えば、ノッチ周波数の設定に合わせて送信スペクトルを自由に成形できる。
伝送規格として送信電力スペクトルに対して均一なピーク制限特性、または、不均一なピーク制限がある場合にも、プリコーダの特性や相関器の特性を適合させることができる。
図1は、本発明のデータ送信装置が用いられるデータ伝送方法の一例を示すPLCデータ通信システムの全体構成を示すブロック図である。伝送路2(屋内配線)の両端に、データ伝送装置(親MODEM、子MODEM)が接続される。
図1の上段に一方のデータ伝送装置(PLC端末)を示し、下段に、同一構成の他方のデータ伝送装置を示す。各データ伝送装置は、伝送路2にハイブリッド回路4を介して送信回路1、受信回路3が接続された構成である。送信回路1の詳細は上段のデータ伝送装置について示し、受信回路3の詳細は下段のデータ伝送装置について示す。
以下の説明では、4QAM(Quadrature Amplitude Modulation)を用い、直並列変換/エンコーダ部11が、送信シンボル速度(シンボルレート)を22.5[Msymbol/s]として伝送するモードを「基点」とした場合を説明する。この場合、送信データは2ビットに並列化され、(1,1),(1,-1),(-1,-1),(-1,1)にエンコードする。データ伝送速度は45[Mbit/s]となる。
伝送路2が良好なときには、この「基点」から、シンボルの多値数を増やして、4QAM→16QAM→64QAMへとデータ伝送速度を上げる。これに対し、「基点」の伝送速度でも伝送できない劣悪な伝送路に対しても確実に通信できるようにするため、順次、送信シンボル速度を落として行く(それに伴ってデータ伝送速度も落ちる)という、フォールバック(Fall Back)制御を実行する。
この実施の一形態では、また、後述する「一般化相関シンボル伝送方式」(図2,図3)を利用することにより、送信信号のチャンネル通過率が大きくなるように送信信号のスペクトルを成形する。また、SNRが向上するように等化器の帯域選択特性を制御する。
この「一般化相関シンボル伝送方式」においては、プリコーダ/相関器13を用いる。その詳細は、図5を参照して説明する。
したがって、プリコーダ/相関器13は、予め定められた基点シンボル速度で動作するが、低減された送信シンボル速度で直並列変換/エンコーダ11からI相データ,Q相データを入力し、前置符号化および相関処理をした上で、ロールオフフィルタ14に出力する。前置符号化および相関処理は、低減された送信シンボル速度に応じて変更される。
変調器15は、乗算器18,19、移相器17、加算器20からなり、入力データをキャリヤ信号16と乗算することにより直交変調する。変調器15の出力信号はD/A変換器21によってアナログ信号に変換され、アンプ22によって増幅され、送信信号となってハイブリッド回路4を介し伝送路2に送出される。
復調器33は、乗算器36,37、移相器35からなり、入力データをキャリヤ信号34と乗算することにより直交復調し、I相データ,Q相データを等化器38に出力する。
レベル判定部39は、等化器38から送信シンボル速度で出力されるI相データ,Q相データを、それぞれ個別に、複数の閾値と比較することによりレベル判定し、雑音や伝送路歪みによるレベル変動の影響をある程度まで除去した上で、ノコギリ関数出力部40に出力する。レベル判定部39は、I相データ,Q相データに対して個別にレベル判定(2次元のレベル判定)する。なお、等化器38の出力をノコギリ関数出力部40を通した上で、レベル判定部39に供給してレベル判定をしてもよい。
通信を確立するために、確実に通信が可能な低速チャンネル(例えば数十から数百kbps程度)が設けてある。伝送制御処理部12は、このチャンネルを用いて伝送制御データを送受信することにより、初期設定プロトコルを実行する。
例えば、基点となる送信シンボル速度で、PN系列の繰り返し信号を送信し、受信側では等化器38の強制等化が成功(アイパターンが開く)したときには、通信開始要求をし、強制等化が不成功(アイパターンが開かない)であれば減速を要求する。
一方、通信中において、誤り率検出等の伝送品質検出により送信シンボル速度を変更しようとする場合、OFDM系の通信方式では、速度変更のたびに、サブキャリアのマスクやビット配分などの複雑なブロック再組み立てのプロトコルを必要とする。
これに対し、本願の発明では、受信側から送信側に減速または増速のコマンドを送る。送信側は、コマンドを受取り、受信側で速度切替時刻を認識できるコマンドをデータフレームに挿入するだけでよい。
そのため、データ伝送装置間で通信が行われていない空き時間(通信フレームが伝送路に存在しない時間帯)において、各データ伝送装置がラウンドロビン方式で平坦スペクトル信号(ただし、他の通信システムに妨害を与えないようにするには、他の通信システムが使用している帯域のスペクトルを除去するノッチフィルタに通す)を送出し、受信側データ伝送装置で、特定の送信側データ伝送装置との間のチャンネル振幅特性を推定し、送信側のプリコーダ/相関器13内のフィルタ特性を決定し、低速チャンネルを用いて、送信側データ伝送装置にフィルタ特性データを転送する。あるいは、可能であれば、送信データフレームのプリアンブル区間において、伝送路2のチャンネル振幅特性を推定してもよい。
また、また、等化器38は、参照信号を用いて、タップ利得を間欠的に修正する必要がある。そのために、送信データフレームのプリアンブル区間等において、トレーニング信号を送信し、等化器38は、このトレーニング信号を等化した出力と参照信号との誤差比較をすることにより、タップ利得を制御して強制等化をする。
図2は、一般化相関シンボル伝送の説明図である。
図2(a)は機能ブロック図、図2(b)はノコギリ関数出力部を定義づける入出力特性図である。
図2(a)において、送信データシンボルAkのI相データをak、Q相データをbkとする。(ak,bk)を複素数として、複素演算処理を行う。
ここで、D(遅延オペレータ)はD=e-j2πfT,Tはフォールバックの基点となる送信シンボル速度に対応した基点サンプリング周期(基点サンプリング周波数の逆数)である。
本明細書において、「ノコギリ関数」とは、原点(0,0)を通る一定の傾きを有し、-P以上+P未満の出力値をとる直線関数を基本周期とする周期関数である。
上述した直線関数の傾きを1とすれば、入力値から、2P(範囲の幅)の整数倍を減算または加算して、出力値が±P(範囲)に収まるものを出力する。数学的には、モジュロ演算およびオフセットの加減算により関数表現されるが、実用的には、参照テーブルを用いてノコギリ関数出力を得る。
図2(b)の下に記載した例では、送信シンボルのI相データak,Q相データbkは、それぞれ、ディジタル変調方式の信号点を設定するI相成分の値,Q相成分の値に応じて、2Pの範囲内であって、ゼロでない整数値をとる。
ノコギリ関数出力部53の出力は、フィードバック・フィルタ54に供給されるとともに、プリコーダ51の出力となる。
図示のように、フィードバック・フィルタ54とフィルタ56の伝達関数が等しいとき、相関器55とプリコーダ51とは逆回路となる。その結果、相関器55の出力には、入力された送信シンボルデータA(ak,bk)に一致する受信シンボルデータZ(ak,bk)が出力される。
ノコギリ関数をfとし、プリコーダの出力をX、フィルタ54,56の出力をY、相関器55の出力をZとしたとき、
X=f(A−Y),Z=f(X+Y)となる。
ノコギリ関数の性質から、Zの式は、次のように展開される。
Z=f(X+Y)=f(f(A−Y)+Y)=f(f(A))−f(f(Y))+f(Y)=f(A)
ここで、Aが-P以上+P未満の範囲にあれば、f(A)=Aとなるから、Z=Aとなる。
なお、相関器55内にあるノコギリ関数出力部58の入力(X+Y)は、プリコーダ51側においては、図示の加算器59の出力と一致する。
加算器57の出力データは、加算器57によりレベルの変化範囲が増大するとともに、入力されたランダムなシンボルデータは、伝達関数C(D)に対応する形状にスペクトル成形される。
例えば、伝達関数C(D)として所望の周波数にノッチを有するノッチフィルタ特性N(D)を設定すれば、相関器55が出力するシンボルデータのスペクトル振幅は、特定の周波数にノッチ(スペクトルヌル点)がある信号となる。
更に加えて、相関器55における、ノコギリ関数出力部58の直前までの伝達関数がC(D)であればよいから、伝達関数C(D)を与えるものは、図示の相関器55に限られないし、C(D)に、伝送路のチャンネル特性が含まれていてもよい。
図1を参照して説明した実施の一形態は、このような一般化相関シンボル伝送方式を前提としたものである。
また、送信回路1において、送信信号の周波数スペクトルを、使用が認められた周波数帯域に制限するとともに符号間干渉がないようにするロールオフフィルタ14を挿入し、受信回路3において、雑音や等化されなかった符号間干渉等によるレベル変動を除去するために、ノコギリ関数出力部40の直前に、レベル判定部39を挿入している。
図中、61はプリコーダ、62は加算器、63はノコギリ関数出力部、64はフィードバック・フィルタ、65はノッチフィルタ(伝達関数N(D))、66はロールオフフィルタ(伝達関数R(D))である。
PLCデータ通信システムへの適用例では、使用周波数帯域中に含まれるアマチュア無線帯域に送信スペクトル成分がないように、例えば、IIRフィルタで構成され、出力が急激に低下する周波数(ヌル点)を作る固定のノッチフィルタ65を挿入している。
一般に、送信スペクトルを成形したいときには、波形スペクトルに対応したフィルタを挿入する。
H(D)=|H(D)|Exp[jθ(f)] (1)
と表す。
すなわち、伝送チャンネルのスペクトル振幅を有し位相がゼロのフィルタ67に、伝送チャンネルのスペクトル位相を有するフィルタ68を接続した構成によって表現する。
69は等化器であって、伝送チャンネルの位相特性のみを等化するように制御される。等化が完全であるとき、等化器69の伝達関数はExp[−jθ(f)]となる。70はノコギリ関数出力部である。
図2を参照すれば、フィードバック・フィルタ64の伝達関数が(N(D)|H(D)|-1)となるとき、相関器とプリコーダとが逆関数となるから、送信シンボルデータAkと受信シンボルデータZkとが一致する。
ここで、
|F(D)|=|H(D)| (2)
となる伝達関数F(D)であっても結果は同じであるから、フィードバック・フィルタ64は、|F(D)|=|H(D)|となるF(D)を用いて、F(D)N(D)−1とする。
図2を参照して説明したように、ノコギリ関数58の入力シンボルデータは、加算器59の出力シンボルデータに等しいから、送信シンボルデータをA(D)と表せば、A(D)F(D)N(D)となり、これが参照信号となる。
等化器69の振幅特性は平坦であるから、使用帯域において、送信信号振幅および雑音振幅が周波数に対して一定であるとすれば、等化器69は、符号間干渉を除去するだけで、その際、送信信号を強調したり雑音を抑圧したりすることはない。
図中、横軸は周波数[Hz]であり、使用周波数帯域(3.75MHz〜26.25MHz)の範囲を示す。縦軸は、信号減衰量、雑音レベル、信号平均減衰量[dB]である。
このグラフからわかるように、使用帯域において、信号減衰量が平坦でなく、部分的に雑音レベルよりも信号減衰量が小さな帯域もあるが、広い帯域にわたって信号が落ち込んでいるため、信号平均減衰量は雑音レベルよりも小さいが雑音レベルに近い。信号平均減衰量と雑音レベルとが同等の場合も考えられる。
したがって、フォールバック制御をする際には、このようなチャンネルの状態を前提に検討しなければ、送信シンボル速度の低減により単に符号間干渉を減らす以上の効果が得られない。
まず、フォールバック・モードにおいても、図1の送信回路1において、基点における離散信号処理のサンプリング周波数を変えない。受信回路3においても、基点における離散信号処理のサンプルレートを変えない。遅延オペレータDは、基点におけるサンプリング周波数22.5MHzに対応すするサンプリング周期に固定する。
図5(a)は図1のプリコーダ/相関器13側の説明図であり、図5(b)は、図1の等化器38側の説明図である。
図5(a)において、81はプリコーダの加算器、82はプリコーダのノコギリ関数出力部である。プリコーダのフィードバック・フィルタは、ゼロ挿入部83の出力端から、スイッチ91までの、伝達関数(N(D)−1)のフィルタ84、加算器85、伝達関数(F1(D)−1)のフィルタ86、加算器87、加算器88、伝達関数が(F2(D)−1)のフィルタ89、加算器90までの回路ブロックであり、その伝達関数は、N(D)F1(D)F2(D)−1となる。
この具体例では、プリコーダと相関器とでフィルタを共用することにより、演算処理を簡単にしている。伝達関数さえ同じになれば、回路構成は図示のものに限られない。
ここで、仮に、F1(D)=1,F2(D)=F(D)とおけば、図3に示した、基点におけるフィルタの伝達関数と等しくなる。
S=22.5/N [Msymbol/sec] N=1,2,3,… (3)
となる送信シンボル速度Sで、送信シンボルデータAk(ak,bk)を入力する。
すなわち、送信シンボルデータAkは、基点シンボルタイミング(基点サンプリングタイム)のN回に1回において、加算器81に供給される。一方、送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいては、ゼロ挿入部83により、ゼロシンボルデータ(0,0)を挿入する。
このゼロ挿入部83の位置については、後で説明することにする。
スイッチ91は、基点シンボルタイミングのN回に1回オンとなって、フィードバック経路(N(D)F1(D)F2(D)−1)の出力シンボルデータを、入力側の加算器81に供給し、その他の(N−1)回はオフとなる。スイッチ91がオフとなるとき、ゼロ挿入部83はゼロを出力している。
なお、スイッチ91がオフのときも、各フィルタはシンボルデータを入力して内部でフィルタ処理を続けている。
なお、送信データを送信していない期間において、伝送チャンネルのスペクトル振幅を推定する際には、平坦スペクトル信号を伝達関数がN(D)のノッチフィルタ84に通した上で、ロールオフフィルタ93から出力すればよい。ノッチフィルタ84を挿入することにより、使用周波数帯域内にある、アマチュア無線の帯域に妨害を与えないようにする。
一般的なデータ伝送方法であれば、送信側では、送信シンボルデータを入力しないサンプリングタイムにおいて、単に、送信シンボルデータに代えて、ゼロシンボルデータを入力すればよい。受信側では、送信シンボルデータを入力しないサンプリングタイムにおいて、単に、受信データを出力しなければよい。
しかし、本発明の実施の一形態のように、一般化相関シンボルデータ伝送の場合は、送信側でプリコーダを用い、受信側ではノコギリ関数出力部の直前(ここは、まだ、相関器の内部である)で、低速送信シンボル速度に応じたサンプリングタイムでサンプリングしなければならない。したがって、受信側でサンプリングする位置に対応した送信側の位置において、ゼロ挿入をしなければ、プリコーダと相関器との逆回路の条件を満たさなくなる。
したがって、入力位置71において、ゼロシンボルデータ挿入をすれば、プリコーダ、相関器の動作を乱さない。
なお、ノコギリ関数出力部63は、ゼロシンボルデータを出力するから、ノコギリ関数出力部63の出力位置72にゼロシンボルデータを挿入しても結果は同じになる。図5の回路構成では、ノコギリ関数出力部82の出力位置に、ゼロ挿入部を設けている。
すなわち、低減された送信シンボルタイミングのタップ間隔で動作し、送信シンボルタイミングで参照信号との誤差比較をし、タップ利得制御をする。
そこで、送信シンボル速度を低下させて伝送するフォールバック・モードにおいても、離散信号システムの各フィルタは分数タップ間隔(基点シンボルタイミング)で動作させる。従って、使用帯域を決めるロールオフフィルタの特性を、基点における広帯域にしたまま固定し、図1に示した等化器38は分数間隔等化器として使用する。
フォールバック・モードにおいて、基点サンプリング速度のN分の1(N>1)がフォールバック時の送信シンボル速度となる。
等化フィルタ部101は、基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミング(基点サンプリング周期、タップ間隔)で動作するが、参照信号を用いて送信シンボル速度に対応した送信シンボルタイミングで強制等化されている。等化フィルタ部101の出力は、スイッチ102において、低減された送信シンボル速度で出力される。
スイッチ102の出力が分数間隔等化器の出力であり、後続のレベル判定部(図1の39)でレベル判定され、ノコギリ関数出力部40に供給される。あるいは、スイッチ102の出力をノコギリ関数出力部に通した上で、レベル判定部に供給される。
(F1(D)N(D)H(D)+n0)E(D)=F1(D)N(D)F2(D) (4)
ここで、n0は雑音電力である。
分数間隔等化器においては、送信シンボルデータのインパルス応答の間隔が空くので、N個置きのタイミングでゼロ交差するように制御すれば、符号間干渉がなくなる。それ以外のタイミングでは受信信号がどのような値に定まってもよいという自由度がある。
その結果、符号間干渉を容易になくすことができる。その際、符号間干渉のない帯域選択が自然に行われていることになり、雑音を抑圧することになる。雑音があれば、雑音を抑圧するような帯域選択特性に自然に定まる。
符号間干渉がなくなれば、等化器の出力のレベル個数が少なくなり、レベル判定誤りも増加しない。
スイッチ102は、等化フィルタ部101の出力信号を基点シンボル速度よりも低い送信シンボル速度でサンプリングするため、等化フィルタ部101の出力は、(N-1)サンプルだけ間引かれる。
その結果、その出力信号スペクトルは、等化フィルタ部101の出力信号スペクトルを22.5/N[MHz]分、移動・重畳した、22.5/N[MHz]の周期関数になる。同様に、等化目標である参照信号も22.5/N[MHz]の周期関数である。
一例として、N=7分の1にフォールバックした場合を示している。移動・重畳される等化フィルタ部101の出力信号スペクトルのうち、周期関数の単位周期(f0/7)113に落ち込む7個の成分のみを図示している。f0は、基点シンボル速度の値に等しい、基点サンプリング周波数22.5[MHz]である。
図中、111dは、等化フィルタ部101の出力スペクトルであり、112dはロールオフフィルタ93の帯域通過特性(f0)である。出力スペクトル111dは、22.5/N [MHz]の間隔で移動し、111a〜111c,111e〜111gに示す、スペクトル移動・重畳成分が発生する。
分数間隔等化器の出力信号には、ロールオフフィルタ66の通過帯域(f0)内の周波数スペクトルが均等に重畳している。したがって、信号出力が大きくSNRの良好な帯域が、通過帯域(f0)内のどの位置に存在していても、分数間隔等化器の出力に含まれている。その結果、分数間隔等化器は、自然に、SNRの良好な帯域を選択している。
先に説明した直観的な式(4)を、積分評価関数に置き換え、スペクトル移動・重畳を考慮すると次式のようになる。
なお、各フィルタの係数を求める計算は、受信側で実行し、解を低速チャンネルで送信側に送って設定する。
F1(D)は、プリコーダに入力される送信シンボルの速度低下(N分の1)に応じて、送信信号のスペクトル振幅を成形して、送信信号のスペクトルエネルギの伝送チャンネル通過率を上げるためのものである。すなわち、送信信号が通過しやすい帯域に送信スペクトルを集中させることにより、送信電力が最も効率よく伝送されるから、SNRを稼ぐことが可能になる。
しかし、これは送信波形が孤立パルスであるときの議論である。実際に、連続的にデータ信号を送っているときの送信波形では、各シンボルのインパルス応答が加算される。
とし、aを大きくすれば、信号の通過率は大きくなるものの、F1(D)を実現するFIRフィルタのインパルス応答が非常に長くなる。その結果、符号間干渉により、送信信号のとりうるレベルの個数、言い換えれば、参照信号のとりうるレベルの個数が増大する。送信電力は一定であるから、相互のレベル差が小さくなる。その結果、等化出力のレベル判定において、誤り率が急激に増加してしまう。
したがって、F1(D)は、ディジタル伝送の性能(例えば、誤り率)を考慮して連動的に調整可能とする。
雑音電力が信号電力に対して大きく、その伝送速度で通信できないとき、フォールバック制御により、送信シンボル速度を落とす。
Nを大きくするにつれて、|F1(D)|=|H(D)|へと近似させる。送信スペクトル振幅が強調されても、分数間隔等化器においては、既に説明したように、等化能力に余裕があるし、レベル判定誤りも増加しない。
右辺第2項は、FIRフィルタの応答の2次モーメントであり、高次の係数aiほど重みi2を大きくしている。
したがって、Nが大きくなるにしたがって、右辺第1項はチャンネル通過率を上げることにかかわり、右辺第2項は、送信レベル数を減らし受信側のレベル判定誤り率を改善することにかかわる。
F2(D)は、プリコーダに含まれる伝達関数であるから、送信信号のスペクトル自体は成形しない。しかし、一般化相関符号伝送を前提としているため、プリコーダは、後続する等化器を含む経路との逆回路とするから、等化器の特性は、F2(D)によって変更される。
基点送信シンボル速度における、上述した式(4)において、n0=0とすると、
H(D)E(D)=F2(D) (10)
となる。ここで、
|F2(D)|=|H(D)|b (11)
とすれば、等化器E(D)のスペクトル振幅|E(D)|は、bを1以上に大きくして行けば、信号レベルの大きい帯域を選択して出力することになるから、SNRが良好になる。
しかし、FIRのインパルス応答が非常に長くなり、レベル数も無限大になり、レベル判定誤り率は急速に劣化する。
したがって、F2(D)もディジタル伝送の性能(誤り率)を考慮して決定する。
したがって、Nが大きくなるほど、分数間隔等化器自体の動作に任せることとし、NmaxにおいてF2(D)=1とする。プリコーダは、送信スペクトル成形のためのF1(D)N(D)のみの逆回路となる。
F2(D)=1とすることは、送信信号のレベル個数、参照信号のレベル個数を低減させることにつながるから、受信側のレベル判定誤り率を改善することになる。
右辺第2項は、評価関数J1の右辺第2項と同様なものである。
したがって、右辺第1項はNが大きくなるにしたがって、等化器の信号帯域選択能力、雑音抑圧能力を向上させ、右辺第2項は、送信レベル数を減らして、受信側のレベル判定誤り率を改善する。
なお、参照信号の相関特性は、次式のように近似される。N(D)は無視した。
したがって、ベキ「P(N)+Q(N)」が大きいとレベル数が大きくなり、受信レベル相互のレベル差が小さくなって誤り率特性が不利となる。
図7(a)は、送信信号の電力スペクトルである。アマチュア無線帯域がノッチされている。
図7(b)は、伝送チャンネルのスペクトル振幅特性および等化器(E(D))のスペクトル振幅(|E(D)|)特性を示し、横軸は周波数、縦軸は振幅(リニア)である。アマチュア無線帯域のノッチが含まれている。
横軸はI相データ、縦軸はQ相データである。ノコギリ関数のPは、P=2である。
図中、分散しているシンボル点の分布中心は、送信シンボル点(1,1),(1,-1),(-1,-1),(-1,1)の各I相データ,Q相データの奇数倍のレベルに相当する点である。一般化相関符号伝送により、シンボル点のレベル数(各I相データ、Q相データについて)が増大するとともに、雑音によりシンボル配置が分散している。参照信号は、この雑音がない状態のシンボル配置をとる。
図1においては、レベル判定部39において、例えば、判定すべきレベルの中間に閾値を設けてレベル判定をすることにより、雑音の影響を軽減する。
したがって、2相PAMを基点としないで、2相PAMよりも変調多値数の大きな変調方式の段階、例えば、この4QAM(45Mbps)を基点とするフォールバック制御の方が、同じ送信データ速度(ビットレート)でも、良い結果を示した。また、軽い誤り訂正をすれば、16QAM(90Mbps)を基点とすることも可能である。
したがって、シミュレーション等により、変調多値数と送信シンボル速度との複数の可能な組合せの中から、予め、最適な組合せを選択しておいて、フォールバック制御をすればよい。
初期設定プロトコルにおいて、フォールバックをしているときは、図1に示した等化器38を分数間隔等化器として動作させていることから、A/D変換器32のサンプリング位相制御や、参照信号と等化器38との同期制御に際して、基点送信シンボル間隔(基点サンプリング周期)の精度で、タイミング合わせする必要がない。
したがって、等化器38の強制等化が収束しないことは、直ちに、「この通信速度では通信不可能」を意味している。その結果、通信速度を低下させるかどうかの判定が、強制等化の収束チェックという簡単かつ短時間(22.5[Msymbol/sec]換算で2000シンボル程度)でできる。このことが、初期設定プロトコルの簡潔さに寄与する。
上述した説明では、F1(D)による送信スペクトル成形と、F2(D)による等化器の帯域選択制御の両者を実行していたが、一方のみを実装してもよい。
PLCデータ通信システムにおいては、他の通信システムに対する干渉を考慮して、送信信号のスペクトルエネルギ、言い換えれば、各周波数の電力スペクトルにピーク制限を設けることが検討されている。
送信電力スペクトルに対するピーク制限特性を、以下、伝達関数で表現してP(D)とする。P(D)は実部のみであり、位相は全ての周波数成分についてゼロである。典型的には、ノッチ特性N(D)を別にして、周波数について均一として、P(D)=1とする。
従って、法規等に基づいた伝送規格として、送信電力スペクトルにピーク制限がある場合は、図1に示したプリコーダ/相関器13を説明する図5(a)において、伝達関数F1(D),F2(D)について、改めて最適設定を考える必要がある。
まず、アナログ送信信号のケースを考える。アナログ送信信号は伝送チャンネルの減衰特性を受け、白色ガウス雑音が加算されて、受信されるとする。ここで、「最適」とは、受信信号が送信信号に関する情報を最も多く含むことである。ここで、求める変数は送信電力スペクトルである。アナログ送信信号の送信電力スペクトルにピーク制限があるならば、ピーク制限値に等しい送信電力スペクトルが最適である。
厳密に言えば、上述した最適性は、ディジタル送信信号については非常に複雑であり、そのままは当てはまらない。しかし、最適に非常に近いと言える。
ここで、送信電力スペクトルを、固定ノッチフィルタを挿入した場合、伝達関数N(D)F1(D)(図2の加算器57の出力に対応する)で表現する。
従って、送信電力スペクトルにピーク制限特性P(D)があるときは、固定ノッチフィルタを挿入した場合のピーク制限特性N(D)P(D)に等しいスペクトル振幅を有する送信信号を送信するのが「最適」である。
区分的ピーク制限のとき、そのピーク制限特性P(D)をFIRフィルタF 1 (D)で近似するのが最適である。
この近似は次式の最小化によって求める。
右辺第1項は、送信信号のスペクトル振幅|N(D)||F1(D)|を、送信電力スペクトルのピーク制限特性|N(D)|P(D)に近づけることにかかわる。
ここでは、|N(D)|を消去して|F1(D)|をP(D)に近づけることにする。|N(D)|を考慮に入れる場合と入れない場合との相違は、伝達関数N(D)のスペクトル振幅が小さな帯域に限られる。従って、F1(D)の値はほとんど変わらない。
右辺第2項は、送信レベル数を減らし受信側のレベル判定誤り率を改善することにかかわる。式(8)と同様に、FIRフィルタの応答の2次モーメントであり、高次の係数aiほど重みi2を大きくしている。
なお、送信電力スペクトルに対するピーク制限特性が均一ピーク制限(P(D)=1)の場合はF1(D)=1として、平坦(フラット)スペクトルの送信信号とすることが最適となる。
いずれの場合でも、フォールバックの基点(N=1)の場合を含めて、送信シンボル速度(基点シンボル速度のN分の1)とは無関係にF1(D)を固定値として設定する。
図9(a)は均一ピーク制限の場合の送信電力スペクトルを示すグラフである。このとき、F1(D)=1である。
図9(b)は区分的ピーク制限の場合の送信電力スペクトルを示すグラフである。
先に説明した図7と同様に、基点を4相QAM(ビットレート45Mbps)とし、基点シンボル速度を22.5[Msymbol/sec]とし、N=10にしたときのものである。アマチュア無線帯域の送信電力スペクトルを小さくするために固定ノッチフィルタが実装されている。
図10(a)は、図9(b)に示した送信電力スペクトルを求める前提条件とした送信電力スペクトルのピーク制限特性P(D)および伝達関数F1(D)のスペクトル振幅|F1(D)|を示すグラフである。
横軸は周波数[Hz]、縦軸はスペクトル振幅(リニア)である。実線はピーク制限特性P(D)、破線は式(18)によってピーク制限特性P(D)に近似させたスペクトル振幅|F1(D)|を示すグラフである。伝達関数F1(D)を実現するフィルタのタップ数は32とした。
図10(b)は、伝達関数F1(D)のインパルス応答の実部、図10(c)は、伝達関数F1(D)のインパルス応答の虚部を示すグラフである。横軸は基点シンボル速度(サンプリング周波数)の逆数を1とおくことにより、基点シンボル数で表現した時間である。
先に説明した、送信電力を一定にする(全ての周波数における電力スペクトルを合わせた送信信号の平均電力を一定に制限する)前提条件下において、伝達関数F2(D)は、等化器の帯域選択特性を制御することにより信号雑音比が向上するように設定していた。
具体的には、式(13)を用い、送信シンボル速度(基点シンボル速度のN分の1)に応じた設定をしていた。この伝達関数F2(D)は、送信電力スペクトルを変更するものではないから、ピーク制限がある場合も、式(13)を用いることができる。
しかし、均一ピーク制限P(D)=1の場合、伝達関数F1(D)=1となるため、先に説明した参照信号の相関特性の式(15)において、フォールバック時(Nが2以上)においても、伝達関数F2(D)をフォールバックの基点(N=1)のときと同じ値にしても、レベル数がさほど大きくならない。
加えて、区分的ピーク制限特性P(D)を設けた場合でも、この制限が複雑な特性でなければ、伝達関数F1(D)は1に近いので、同様に、伝達関数F2(D)をフォールバックの基点(N=1)のときと同じにすることができる。
PLCデータ通信システムの現在の仕様に従って、アマチュア無線の帯域にスペクトル成分を持たないように、固定ノッチ特性は持たせている。
右辺第1項は、先に説明した等化後の出力と参照信号との等式(4)において、F1(D)=1,n0=0としたときの次式、
N(D)H(D)E(D)=N(D)F2(D) (21)
がスペクトル振幅に関して成り立つような|F2(D)|にすることにかかわる。ここで、図3に示した等化器69の伝達関数E(D)は、振幅特性が平坦な位相等化器として機能させることから、|E(D)|=1とした。
右辺第2項は、送信レベル数を減らし受信側のレベル判定誤り率を改善することにかかわる。式(13)と同様に、FIRフィルタの応答の2次モーメントであり、高次の係数biほど重みi2を大きくしている。
上述した式(19)は、フォールバックの基点(N=1)の場合を含めて、送信シンボル速度(基点シンボル速度のN分の1)とは無関係に設定する。
しかし、実際に受信側で計測されるのは、R(D)=N(D)H(D)である。従って、上述した式(19)の評価関数J2の方が、式(19)の右辺第1項を、{|H(D)|−|F2(D)|}2の積分とした、式(13)と同様な評価関数J2に比べて、R(D)=N(D)H(D)からH(D)を求める手順が必要ないから、数値的処理が少なくなる。
得られる値|F2(D)|は、2つの評価関数の間で少し異なることになるが、|N(D)|を考慮に入れる場合と入れない場合との相違は、伝達関数N(D)のスペクトル振幅が小さな帯域に限られるから、|F2(D)|の値、従って、参照信号の値N(D)F2(D)はほとんど変わらない。
先に説明した式(13)においても、N(D)を含めた評価関数とすることできる。この場合、式(13)の|H(D)|を|N(D)H(D)|に、|F2(D)|を|N(D)||F2(D)|に置き換えればよい。
図11(a)は、受信信号のスペクトル振幅|R(D)|と、|N(D)|・|F2(D)|の具体例を示すグラフである。実線は受信信号のスペクトル振幅|R(D)|、破線は式(19)に従って近似した振幅特性|N(D)|・|F2(D)|を示す。伝達関数F2(D)を実現するフィルタのタップ数は32とした。
図11(b)は伝達関数F2(D)のインパルス応答の実部、図11(c)は伝達関数F2(D)のインパルス応答の虚部を示すグラフである。横軸は、基点シンボル速度(サンプリング周波数)の逆数を1とおくことにより、基点シンボル数で表現した時間である。
その際、均一ピーク制限P(D)=1の場合に固定ノッチフィルタをなくすと、図5において、フィルタ84,86の伝達関数が0になって、フィルタ84,86が不要となる結果、送信装置側の相関器の構成が不要となる。
本発明のデータ送信装置が用いられるデータ伝送方法は、伝送チャンネルが広い帯域にわたって減衰し、かつ、雑音レベルが大きいような、品質の悪い伝送路に適用して大きな効果をもたらす。
Claims (6)
- 基点シンボル速度のN分の1(Nは2以上の整数)となる送信シンボル速度で送信シンボルデータを入力し、プリコーダおよび相関器により、前記基点シンボル速度の送信シンボル波形を作成し、該送信シンボル波形を前記基点シンボル速度に対応した帯域を有するロールオフフィルタを通して送信し、受信信号を、前記基点シンボル速度で動作し、参照信号を用いて前記送信シンボル速度で強制等化された分数間隔等化器に入力し、該分数間隔等化器から前記送信シンボル速度で出力される信号をレベル判定し、レベル判定されたシンボルデータのノコギリ関数出力を得ることにより受信シンボルデータを出力するデータ伝送方法に用いるデータ送信装置であって、
前記プリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、
前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、
前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとするものであり、
前記相関器は、前記プリコーダの出力シンボルデータと、該出力シンボルデータをその伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに通したものとを加算して当該相関器の出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、
前記伝達関数F1(D)は、送信信号のスペクトルエネルギのチャンネル通過率が上がるように設定される、
ことを特徴とするデータ送信装置。 - 基点シンボル速度のN分の1(Nは2以上の整数)となる送信シンボル速度で送信シンボルデータを入力し、プリコーダにより、前記基点シンボル速度の送信シンボル波形を作成し、該送信シンボル波形を前記基点シンボル速度に対応した帯域を有するロールオフフィルタを通して送信し、受信信号を、前記基点シンボル速度で動作し、参照信号を用いて前記送信シンボル速度で強制等化された分数間隔等化器に入力し、該分数間隔等化器から前記送信シンボル速度で出力される信号をレベル判定し、レベル判定されたシンボルデータのノコギリ関数出力を得ることにより受信シンボルデータを出力するデータ伝送方法に用いるデータ送信装置であって、
前記プリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、
前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がF2(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、
前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がF2(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、
前記伝達関数F2(D)は、前記分数間隔等化器の帯域選択特性を制御することにより信号雑音比が向上するように設定される、
ことを特徴とするデータ送信装置。 - 基点シンボル速度のN分の1(Nは2以上の整数)となる送信シンボル速度で送信シンボルデータを入力し、プリコーダおよび相関器により、前記基点シンボル速度の送信シンボル波形を作成し、該送信シンボル波形を前記基点シンボル速度に対応した帯域を有するロールオフフィルタを通して送信し、受信信号を、前記基点シンボル速度で動作し、参照信号を用いて前記送信シンボル速度で強制等化された分数間隔等化器に入力し、該分数間隔等化器から前記送信シンボル速度で出力される信号をレベル判定し、レベル判定されたシンボルデータのノコギリ関数出力を得ることにより受信シンボルデータを出力するデータ伝送方法に用いるデータ送信装置であって、
前記プリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、
前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がF1(D)F2(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、
前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がF1(D)F2(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとするものであり、
前記相関器は、前記プリコーダの出力シンボルデータと、該出力シンボルデータをその伝達関数がF1(D)−1であるフィルタに通したものとを加算して当該相関器の出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、
前記伝達関数F1(D)は、送信信号のスペクトルエネルギの伝送チャンネル通過率が上がるように設定され、
前記伝達関数F2(D)は、前記分数間隔等化器の帯域選択特性を制御することにより信号雑音比が向上するように設定される、
ことを特徴とするデータ送信装置。 - ノッチフィルタの伝達関数をN(D)とし、前記プリコーダおよび前記相関器における前記伝達関数F1(D)を伝達関数N(D)F1(D)に置き換えることにより、
前記送信信号のスペクトルエネルギにノッチ特性を持たせた、
ことを特徴とする請求項1または3に記載のデータ送信装置。 - 基点シンボル速度のN分の1(Nは2以上の整数)となる送信シンボル速度で送信シンボルデータを入力し、プリコーダおよび相関器により、前記基点シンボル速度の送信シンボル波形を作成し、該送信シンボル波形を前記基点シンボル速度に対応した帯域を有するロールオフフィルタを通して送信し、受信信号を、前記基点シンボル速度で動作し、参照信号を用いて前記送信シンボル速度で強制等化された分数間隔等化器に入力し、該分数間隔等化器から前記送信シンボル速度で出力される信号をレベル判定し、レベル判定されたシンボルデータのノコギリ関数出力を得ることにより受信シンボルデータを出力するデータ伝送方法に用いるデータ送信装置であって、
前記プリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、
前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がN(D)F2(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、
前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がN(D)F2(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとするものであり、
前記相関器は、前記プリコーダの出力シンボルデータと、該出力シンボルデータをその伝達関数がN(D)−1であるフィルタに通したものとを加算して当該相関器の出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、
前記N(D)は、送信信号のスペクトルエネルギにノッチ特性を持たせるためのノッチフィルタの伝達関数であり、
前記伝達関数F2(D)は、前記分数間隔等化器が位相等化器となるように設定される、
ことを特徴とするデータ送信装置。 - 基点シンボル速度のN分の1(Nは2以上の整数)となる送信シンボル速度で送信シンボルデータを入力し、プリコーダおよび相関器により、前記基点シンボル速度の送信シンボル波形を作成し、該送信シンボル波形を前記基点シンボル速度に対応した帯域を有するロールオフフィルタを通して送信し、受信信号を、前記基点シンボル速度で動作し、参照信号を用いて前記送信シンボル速度で強制等化された分数間隔等化器に入力し、該分数間隔等化器から前記送信シンボル速度で出力される信号をレベル判定し、レベル判定されたシンボルデータのノコギリ関数出力を得ることにより受信シンボルデータを出力するデータ伝送方法に用いるデータ送信装置であって、
前記プリコーダは、ノコギリ関数出力部を有し、
前記基点シンボル速度に対応した基点シンボルタイミングのN回に1回において、前記送信シンボルデータを入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力をその伝達関数がN(D)F1(D)F2(D)−1であるフィルタに通したものを、入力した送信シンボルデータから減算して前記ノコギリ関数出力部に入力し、前記ノコギリ関数出力部の出力を当該プリコーダの出力シンボルデータとし、
前記送信シンボルデータを入力しない基点シンボルタイミングにおいて、ゼロシンボルデータを、前記その伝達関数がN(D)F1(D)F2(D)−1であるフィルタに出力するとともに、当該プリコーダの出力シンボルデータとするものであり、
前記相関器は、前記プリコーダの出力シンボルデータと、該出力シンボルデータをその伝達関数がN(D)F1(D)−1であるフィルタに通したものとを加算して当該相関器の出力シンボルデータとすることにより前記送信シンボル波形を作成させるものであり、
前記N(D)は、送信信号のスペクトルエネルギにノッチ特性を持たせるためのノッチフィルタの伝達関数であり、
前記伝達関数F1(D)の振幅特性は、前記送信信号の電力スペクトルのピーク制限特性に近づくように設定され、
前記伝達関数F2(D)は、前記分数間隔等化器が位相等化器となるように設定される、
ことを特徴とするデータ送信装置。
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