JP4648269B2 - 排ガス中粒子状物質除去フィルタ、該フィルタを用いた排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法 - Google Patents

排ガス中粒子状物質除去フィルタ、該フィルタを用いた排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法 Download PDF

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Description

本発明は、排ガス中粒子状物質除去フィルタおよび該フィルタを用いた排ガス浄化装置に係り、特にディーゼルエンジン等から排出される排ガス中のばいじん、PM(Particulate Matter、粒子状物質)を除去するためのフィルタ、および上述のばいじん等とともに、排ガス中のNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)を処理するための排ガス浄化装置に関する。
特許文献1には、図12に示すように、例えばペーパハニカムで構成された、多孔質波板1、2と多孔質平板3の対を基本単位とし、該多孔質波板の波板稜線が少なくとも1対以上ごとに交互に交差するように積層されたフィルタ成形体を有し、該成形体の前記波板稜線と交差する側面4Cがシール材4でシールされ、前記多孔質平板3を介して前記多孔質波板1、2との間にそれぞれ排ガスの流入経路aと流出経路bが形成される排ガス浄化装置が示されている。このフィルタ成形体には、ディーゼル排ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素NOに転換させる触媒が含有されている。ただしシール材4は、開閉可能な弁、板などで代用することもできる。
排ガス中のばいじんは、炭素などの有機化合物が主成分であり、通常、式(1)で示される炭素の酸化反応は500℃以上の高温領域で進行するが、ディーゼルエンジンの排ガスは高くても500℃程度、通常は400℃位となるため、他に熱源がなければ、反応に必要な温度に到達しない。
C+O2 → CO2 ―――(1)
そこで、上記の触媒をフィルタに担持することにより、反応温度を350℃程度まで抑え、追加熱源無しでばいじんを捕集・燃焼しながらフィルタの連続再生運転が可能になる。すなわち、図12において、フィルタ成形体の流路aに流入したガスは、図に示すように該流路aの出口面4Cがシール材4でシールされているため、多孔質平板3内の気孔を通過し、該多孔質平板3とこれに隣接する他の多孔質波板1、2により形成される流路b(排ガス排出経路)に移動し、その際に平板3上にばいじん5が捕集される。
ここで多孔質波板1、2、及び平板3には酸化触媒が担持されており、この酸化触媒による作用により、排ガス中のNOが式(2)のようにNOに酸化される。
NO+1/2O2 → NO2 ―――(2)
このNO2が、フィルタ(平板3)に捕集されたばいじんと式(3)、(4)に示すような反応を行い、ばいじんを酸化燃焼させる。
C(ばいじん)+2NO2 → CO2+2NO ―――(3)
C(ばいじん)+NO2 → CO+NO ―――(4)
通常のエンジンオイルには1〜2wt%程度の金属添加剤に起因する灰分が含まれており、燃料中の硫黄分と反応してCaSO4を主成分とした灰が形成される。この灰は、該酸化触媒面を被覆して触媒活性を低下させることが知られている。
そこで特許文献1においては、前記排ガスが流入する面4Aと交差する側面4B、4Dに排ガスを排出させる手段を設け、また流入面4Aと反対側の面4Cへの排ガスの通過を遮る手段を設け、通常は上記排ガスの流入面4Aと反対側の面4Cへの排ガスの通過を遮り、排ガスが流入する方向と交差する側面4B、4Dへ排ガスを通過させて排ガスをろ過し、所定時間経過後に排ガスの流入面4Aより排ガスを流入させ、その反対側の面4Cへ排ガスを通過させ(波板稜線方向)ることにより、堆積した灰を除去するようにしている。このように上記操作を一定時間ごとに繰り返し、触媒活性の低下、及びばいじんによるフィルタの閉塞を防止している。
しかし、上記の従来方法では以下の問題点があった。
特許文献1のフィルタでは、図12に示すように、波板と平板で形成される流路はガス流入面方向Aと、それに直交する面B方向に互い違いに形成されるため、排ガスは、例えば図13中のa0)〜d0)のように通過し、その流通経路は入口面Aからその直交する出口面Bの接合部に近いa0)が最も短いため、通過抵抗が少なく、a0)近傍に流れるガス量が最も多くなり、最も遠いd0)側に比べれば、ばいじん処理負荷が多くなる傾向にある。また、波板と平板で形成される流路は、入口面4Aと、それに直交する面4B、4Dに互い違いに現れるため、入口面4Aの開口率は50%未満であり、特にばいじん濃度が多い条件ではその入口面のばいじん処理負荷が上がることが懸念される。
特開2005−177733号公報
上記した従来技術は、PMの捕集効率が高く、灰の堆積を防止し、例え不適切な操作により多量な煤が発生した場合にも、排ガスの流入面4Aより排ガスを流入させ、その反対側の面4Cへ排ガスを通過させ(波板稜線方向)て、差圧の回復を図ることができ、逆洗や煤の加熱燃焼など閉塞対策が不要という、優れた性能を有するものであるが、(i) 局所的にばいじん処理負荷が高い箇所がある、(ii)入口の開口率が低く、入口面のばいじん負荷が上がる懸念がある等の問題点を有している。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、目詰まりや灰分の閉塞にさらに強く、煤の加熱燃焼など特別の手段を必要とせず、排ガス中の粒子状物質を除去することができるフィルタ、これを用いた排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することにある。
本願で特許請求される発明は次の通りである。以下の説明に記載した方法を用いることで達成される。
(1)多孔質波板と多孔質平板の対を基本単位とし、これらを交互に積層して多面体に形成した積層体と、該積層体の前記波板の稜線方向と交差する一面に形成されたガス流入面と、これと平行な他の一面に形成されたガス流出面とを有し、前記多孔質平板を介して前記多孔質波板との間にそれぞれ排ガスの流入経路と流出経路が形成されるフィルタであって、前記ガス流入面から前記ガス流出面に到るガス流路の長さがそれぞれ等しくなるように、前記波板の稜線方向に対して平面から見て45°の角度で交差するように前記多面体の排ガス流入面と流出面が形成されていることを特徴とする排ガス中粒子状物質除去フィルタ。
(2)前記多面体が八面体であることを特徴とする(1)に記載のフィルタ。
(3)前記多面体が六面体であることを特徴とする(1)に記載のフィルタ。
(4)前記六面体は、平面から見て波板の稜線方向が該六面体の対角線の方向になるように構成されていることを特徴とする(3)に記載のフィルタ。
(5)前記積層体のガス流路に、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する機能を有する触媒成分を担持させたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のフィルタ。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載のフィルタのガス流入面と流出面にそれぞれ連通するガス流路と、前記フィルタのガス流入面及び流出面とそれぞれ交差する側面に連通するバイパス流路と、前記ガス流出面に連通する流路及び前記バイパス流路に設けられた該流路の開閉手段を有することを特徴とする排ガス浄化装置。
(7)(6)に記載の排ガス浄化装置において、前記開閉手段に信号を送り、上記ガス流入面に交差する側面への排ガスの通過を遮り、ガス流入面の対向面へ排ガスを通過させ、パージを行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
(8)(6)に記載の排ガス浄化装置において、前記開閉手段に信号を送り、排ガス流入面の対向面への排ガスの通過を遮り、排ガス流入面に交差する一方の側面へ排ガスを通過させ、該ガス流路の片側パージを行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
(9)(6)に記載の排ガス浄化装置において、前記排ガス流入面の対向面へ排ガスを通過させて行なうパージ操作及び排ガス流入面に交差する側面へ排ガスを通過させて行なうパージ操作を一定期間ごとに行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
本発明のフィルタ及び排ガス浄化装置によれば、入口開口面積が従来よりも大きくなるため、高濃度のばいじんを含む排ガスを処理することができる。 また、ガスの流路長はどの部位でも一定となるため、ガスの偏流が少なく、反応式(2)、(3)、(4)によるNO2の発生、PMの燃焼反応がフィルタ全体で均一に起こり、排ガス中のPMを効率よく燃焼、除去できる。すなわち、従来よりも低温条件でもPMを効率よく燃焼できるため、いわゆる差圧バランス温度(BPT:Balance Point Temperature)が低く、例えば運転(発電)負荷下限を低くしても、PMの燃え残りによる差圧上昇が回避でき、エンジンをより柔軟に運用することが可能となる。さらに本発明のフィルタのガス入口部分は主にNO2生成反応に使われるが、このとき入口部の平板を挟んで隣接する流路にはそれぞれガスが流入し、挟まれた平板はその両面からガスが接触することになるため、平板内部にはPM、およびその燃焼灰が堆積する割合が低くなり、PM、およびその燃焼灰の作用で触媒が劣化しにくく、長寿命となる。
図1は、本発明のフィルタの基本形状を示す説明図で、(a)は平板の平面図、(b)、(c)は、その上下にそれぞれ配置される波板の平面図、(d)は積層された波板と平板の斜視図である。図1において、フィルタは、多孔質波板1及び2と多孔質平板3の対を基本単位とし、該多孔質波板1、2の稜線が少なくとも1対ずつ交互に交差するように積層された形状を有する。この基本形状の各辺の寸法は図に示すようにA≧B、C≦D、E≧F、G≦Hであり、波板稜線と交差する面の辺Aに対し、辺Bは45°傾いている。同様に辺Eに対し、辺Fは45°傾いている。平板3を挟んで波板1、2を貼り合わせたものが交差フィルタの基本形状となる。
図2は本発明フィルタ(DPFブロック)の一例を示すもので、図1に示した波板1、3を、その稜線方向が平板2を挟んで互いに交差するように多数積層させて多面体(八面体)を形成し、該八面体の前記波板の稜線と交差する一側面4B及びこれと平行な他の側面4Fをそれぞれガス流入面及び流出面とし、これらの側面に隣接する他の側面を閉止物4で閉止したものである。図中、A、Bはそれぞれガスの流入及び流出方向を示す。
図3(a)、(b)は、それぞれ図2のフィルタを排ガス煙道7に組み込んだ反応器の例を示す説明図である。排ガスの流入面4Bと煙道7(排ガス方向7A)の位置関係は、図3(a)のように例えば45°傾けてもいいし、図3(b)のように流入面4Bと直角方向になるように流入させてもよく、その他様々な角度を取ることができる。流入面4Bから入った排ガス(7A)は、交差する両方の波板の流路からフィルタ内に入り、フィルタ6内を図4に示すように通過し、フィルタ内の如何なる排ガス流路を通っても、ガスの通過距離が同じ(a = b = c = d = f )になる。そのため交差フィルタ6内における粒子状物質の負荷の分布が均一になり、フィルタ3内において均一に粒子状物質を燃焼させることができる。
図5は、本発明のフィルタの他の構成の実施例を示す説明図である。多孔質波板1、2は平板3を介して交差するように積層されて六面体を形成するが、該六面体は、波板1、2の稜線方向が該六面体の平面から見た対角線方向になるように形成される。また該六面体のガス入口の開口面4Aと、これと対向する、ガス入口面と平行なガス出口開口面4B以外の側面には閉止物4が設けられる。排ガスは、矢印Aで示すようにガス入口開口面4Aからフィルタ内に導入され、ガス出口開口面4Bから排出され、前記平板3を介してガス流入径路aとガス出口径路bが形成されるが、図6に示すように、フィルタ内のどの流路を通っても排ガス通過距離が等しくなるようにガスが通過し(図中の流路a'=b'=c'=d' )、処理される。
上記実施例によれば、フィルタ内の各流路を流れる排ガスの通過距離が等しくなるので、各流路の圧力損失が等しくなり、フィルタ全体に均一にガスが流れ、ガスの偏流が少なく、このため触媒の劣化、燃焼灰の堆積による差圧上昇を遅らせ、フィルタの長寿命化を図ることができる。またこのフィルタは、従来品と同じ六面体構造を有するので、従来と同じ外形寸法とすることができ、さらに入口面の開口面積は従来の2倍となるため、高濃度のPMを処理することが可能となる。
本発明において、多孔質波板1、2および多孔質平板3には、シリカアルミナ系セラミックス繊維を用いた不織布や織布、金属繊維織布、コージエライトなどのセラミックスの多孔質焼結体などが用いられる。これらのうち、多孔性に優れた軽量なDPFを得る点からは0.5〜0.1mm厚のセラミックス不織布(シート)の使用が特に好ましい。多孔質波板1、2の波板の形状には特に制限はないが、上記した板厚の場合には、波のピッチを2〜10mm、高さを1〜5mmの範囲とするのが好ましい。
例えば、波板1、2には、波の高さおよび幅がそれぞれ3.3mm及び1.9mmとなるセラミックス製ペーパーを用い、1枚ごとにその向きが交差するように積層できる。ただし、この波板1、2は常に1枚ごと向きを交差させる必要はなく、入口面Aに当たる波板2の方向に、より多く積層させるなど自由に調整が可能である。また山の高さ、幅も6.3mm、2.5mmなど様々なものが用いることができ、特に波板1、2のサイズは必ずしも等しくしなくともよい。さらに交差方向は直交である必要もないが、製造コスト、製造の簡便性等から直交にする方が望ましい。
多孔質波板1と多孔質平板2からなる基本形状は、単に積層されているだけでもよいが、無機結合剤等により互いに接着されているのが好ましい。
本発明に用いられる多孔質波板1、2および多孔質平板3には、少なくとも前述の排ガス流入側の排ガス流路において、排ガス浄化触媒、特に排ガス中のNOをNO2 に酸化する酸化触媒成分が担持されていることが望ましい。酸化触媒成分は、排ガス中の一酸化窒素を、ディーゼルエンジン排ガス中のPMを低温燃焼させる効果の高い二酸化窒素に酸化させる効果のある触媒全般を用いることができる。もちろん一酸化窒素の酸化活性がある触媒であれば、市販のどの触媒を用いてもかまわない。これらの触媒成分の内、例えば、白金(Pt)などの通常の貴金属をチタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの高表面積担体に担持させた公知の触媒が好ましく用いられるが、イオウ分の多い重油を燃料とした排ガスの処理には、耐酸性に優れたチタニアの使用が特に好ましい。チタニアを使用する場合、TiO2スラリは、その濃度を適切に変えることで、壁面の細孔分布を対象ばいじんの粒径にあったサイズに変えることが可能であり、その濃度はその条件によって変化させることが可能であるが、例えば5〜20%の間がより望ましい。なお、本発明において、酸化触媒は、成形体を構成する多孔質波板1、2および多孔質平板3の全てに担持されていてもよいが、排ガス流入経路を構成する流路a、具体的には排ガスの流入経路を構成する多孔質波板2の両面と該多孔質波板2と接する多孔質平板3の片面にのみ担持されていてもよい。
閉止物4は、多孔質波板1の波板稜線方向から流入する排ガスをその波板稜線と交差する反対側の面においてその排ガスの通過を阻止することができる機能を有するが、その素材やシール構造に特に制限はなく、例えば、シールする面の流路内に緻密な無機固化物を用いて栓をする方法、無機繊維マット状シール材を圧着する方法、金属板で蓋をする方法などの手段を採用することができる。シール材4は、例えば図1の八面体構造のフィルタの場合、図2に示すように、図1の辺A、H、DおよびEの側面部分に固着され、この部分では原則的にはろ過しかできないが、シール材を可動式にするなどの工夫で、これらの側面部分を開閉できるようにし、燃焼灰のパージ(吹き飛ばし)操作などを付与することができる。
図4(a)は、排ガス煙道18内に、本発明の8面体構造のフィルタ20を設けた概略平面図を示し、フィルタ出口に開閉自在のバルブ(弁)20a、20bを設け、灰パージモードの際は該フィルタ20a、20bを閉じ、フィルタモードの際はフィルタ出口のバルブ20a、20bを開き、排ガス19を浄化するようにしたものである。19は排ガスの流れを示す。この場合のバルブ20a、20bは、支持部21a、21bに蝶番式に(または揺動可能に)設けられ、フィルタモードを灰パージモードの操作が交互に行なわれる。
一方、図5の六面体構造のフィルタでは、排ガス煙道内にフィルタ6(DPFブロックと称することがある)を設け、通常は排ガス入口面4Aから排ガスを流入させ、フィルタにより処理後、ガス出口面4Bから浄化ガスを排出するが(フィルタモード)、多孔質波板1の波板稜線方向と交差する他の側面(B方向とD方向の両側面)に設ける閉止物4の代わりに、バイパス煙道(灰パージ煙道)及びバイパス弁を設け、そのバイパス弁を開閉することによりフィルタのパージ運転(パージモード)を行なうことができる。
図5(a)は、排ガス煙道18内に、本発明の6面体構造のフィルタ22を設けた概略平面図を示し、該フィルタの3面をそれぞれバルブ(弁)22a、22bおよび22cによって開閉できる構成としたものである。フィルタモードの際は、バルブ22a、22bが閉、バルブ22cが開、灰パージモードの際は、バルブ22a,22bが開、22cが閉となって、これらの操作が交互に行なわれる。
本発明のDPFを用いて排ガスを浄化するには、図5において、DPFブロック6の入口開口面4Aから流路aに流入したガスは、該流路aの出口部がバイパス弁でシールされているため、多孔質平板3内の気孔を通過し、該多孔質平板3とこれに隣接する他の多孔質波板1および多孔質平板3により形成されるC方向(排ガス排出経路)に移動する。排ガスが多孔質平板3内を通過する際にはガス中に含まれるPMが、濾過・除去され、該多孔質平板3の表面に堆積する(フィルタモード)。
運転操作ミスやエンジントラブル、さらには低負荷運転を継続することにより、フィルタの煤酸化能を超えた煤(PM)で流路が閉塞した場合、図5のB方向またはD方向の煙道のバイパス弁を開放してガスを半量ずつ流出させ、堆積した煤を抜き出し、運転を迅速に復帰させることが可能となる(灰パージモード)。
なお、バイパス弁のみを開放した状態、すなわち流路aを貫通させた流れにした場合(以後、灰パージモードと記す)も、排ガスは酸化触媒が担持された該多孔質波板2、多孔質平板3からなる流路a内を通り、上記反応(3)(4)による燃焼反応が進行する。また、一部の排ガスは多孔質平板3を通過するため、フィルタモードよりも効率は下がるが、PMを一部捕集しながら燃焼除去するため、排ガス中のPMを例えば50%近く除去することができる。
また、図1、図5のいずれの発明ともガス入口部分は主にNO2生成反応に使われる。図10に示すようにこのとき入口部の平板を挟んで隣接する流路にはそれぞれガスが流入しているため、挟まれた平板はその両面からガスが接触することになる。そのため、平板に関しては、排ガスが互いに逆洗する方向に流れ、PM、およびその燃焼灰が堆積する割合が低くなり、担持した触媒がPM、およびその燃焼灰の作用で劣化しにくく、NO2生成能力が低下することなく、長寿命となる。
上述のように本発明のフィルタでは、流路a内の平板3は常にフレッシュな状態を維持するため、そこを通過するガス中のNOは、PMが堆積する多孔質平板3の前流に位置する多孔質波板2と長期間に亘り効率よく接触し、NO2 を効率よく発生させ、多孔質平板3の表面に堆積したPMを効率よく燃焼除去することができる。このため、多孔質波板2および多孔質平板3に担持させる触媒の量および高価な貴金属の使用量を大幅に削減しても、PMの酸化を十分に進行させ、堆積物の量を常に少なくすることができ、安定した運転が可能となる。また、従来よりも低温度でもPMの燃焼反応を安定に起こさせることができるため、エンジンの運転負荷下限(温度)を落とすことができ、より柔軟な運用が可能となる。また図7のように閉止物4を除去して燃焼灰を抜き出す手段を設けることにより、定期・不定期的に灰パージモードに切り替えて、燃焼灰を運転中でも抜き出すことができる。
従来法では、図13に示すようにガス入口Aと出口Bが交差する側面であり、排ガス流路はa0<b0<c0<d0のようにフィルタの中心部を通ろうとするほど流路が長く、通過抵抗が大きくなるため、a0)に近い角部のみガスが良く流れやすくなるが、本発明では、図4及び図6に示すように、ガス出口面は、ガス入口面と平行な対向面であり、ガス流路は、例えば、a、b、c、d、a'、b'、c'、d'のようになるが、いずれの流路も、平面から見たフィルタの対角線(図4の場合は、平面から見た入口面と出口面との間の対角線、すなわちX、Yを結ぶ対角線)の長さと等しい距離となっており、全体的に均一にガスが流れる傾向にある。そのため、一部の触媒面が性能低下することが少なくなり、寿命が長く保たれる。
さらに、図7に示すように、灰パージ時の流路長al、bl、cl、dlは、図6のフィルタ時の流路a'、b'、c'、d'に比べていずれも短く、流通抵抗が小さいため、灰パージ時にはガスが流路外に行きにくく、付着した灰をより効果的に除去することが可能となる。また灰パージは、図5の片側の閉止物4を取り除くか、または排ガス煙道の弁を開にすることにより、図8、図9に示すように、ガス入口面に開口する流路の片側ずつパージを実施することができる。片側ずつ実施する場合、図8、9中の平板3(フィルタ面)の丸で囲った部分に示すように、図8の流れd3)では下から上向き、図9の流れb4)では上から下向きに流れるため、平板3(フィルタ面)を逆洗する効果が高まる。なお、図11に示すように従来法では、平板3に対するフィルタモード時のガス流れは図示する矢印12’、13’の方向であり、必ず図の上から下への流れになっているため、逆洗効果がない。
また図5に示す本発明の場合、フィルタモード時のガス流れは、図10に示すようにガス流れは矢印10’、11’の方向であり、これは平板3から見ると図の上から下の方向と下から上の方向の2種類と、互いに逆方向から吹込む形となり、平板3内に付着した灰を逆洗する効果を有するため、より望ましい態様であるといえる。なお、灰パージ時間は、1秒未満の短期間ではその効果が低下するため、1秒以上、望ましくは1分以上が好ましい。
以上、本発明の作用・効果をまとめると、以下のとおりである。
1) フィルタのガス流路長が一定であり、処理PM負荷を一定にし、フィルタ全体でPMを一様に処理することができる。
2) 差圧バランス温度(BPT)を低くすることができ、従ってエンジン運転負荷下限を従来品より低くできる(低温運転が可能)。
3) パージ時はフィルタ方向よりガス流路が短いため、流路抵抗が少なく、燃焼灰を従来よりさらに容易に除去できる。
4) 特にガス入口部では排ガスがともに平板を逆洗する方向に流れているため、平板部に担持した触媒機能が低下しにくく、フィルタの長寿命化を図ることができる。例えば従来のコージエライト製、SiC製等のセラミック製の市販DPFでは寿命は一般的に500〜2000hであったが、上記運転制御を用いた本フィルタの場合は、その10倍以上のの10000〜20000h程度の耐久性を持たせることが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
シリカアルミナ繊維の不織布からなる板厚0.2mmの多孔質波板と板厚0.2mmの多孔性平板との積層体(波板ピッチ3.3mm、平板平板間隔1.9mm、ニチアス社製、外寸300mm×300mm×300mm)に、15%のTiOゾル(石原産業社製)を含浸させ、エアーブローにより液切りし、150℃で乾燥し、その後、ジニトロジアンミン白金溶液(Pt濃度:1.33g/L)を含浸させ、再度乾燥後、600℃で焼成してPt担持量0.2g/Lの酸化触媒付フィルタ基材を作製した。
上記フィルタ基材を図1、2のように積層、成形し、調製したフィルタを用い、図3に示すように排ガス煙道内に設置し、基本的にフィルタモードで実ガスを処理し、差圧、及びNO濃度の経時変化を観察した。
シリカアルミナ繊維の不織布からなる板厚0.2mmの多孔質波板と板厚0.2mmの多孔性平板との積層体(波板ピッチ3.3mm、平板平板間隔1.9mm、、ニチアス社製、外寸300mm×300mm×300mm)を、図5に示すように、波板稜線方向が対角線方向となるように六面体(交差斜め積層体と称する)に形成し、これに15%のTiO2 ゾル(石原産業社製)を含浸させ、エアーブローにより液切りし、150℃で乾燥し、その後、ジニトロジアンミン白金溶液(Pt濃度:1.33g/L)を含浸させ、再度乾燥後、600℃で焼成してPt担持量0.2g/Lの酸化触媒付フィルタを作製した。これを図7に示すように排ガス煙道に設置し、排ガス浄化装置とした。
上記排ガス浄化装置を用い、起動時から30秒のみ図7に示すフィルタモードとし、それ以後は、図7に示すフィルタモードと図8に示す灰パージモードを繰り返して運転し、エンジン停止後にフィルタモードに戻すプログラムを設定して実ガスを処理し、差圧、及びNO濃度の経時変化を観察した。なお、フィルタモードでは経路b(図5)を閉止した。
ジニトロジアンミン白金の溶液(Pt含有量1.7g/L)にTiO2 粉末( ミレニアム製G5、表面積320m2 /g)300gを懸濁させたスラリを80℃で2時間保持し、TiO2表面にPt成分を吸着させた。本溶液1kgにコロイダルシリカ(日産化学社製シリカゾル−OS)1kgを加え、硝酸でpHを調整して図5の流路aに担持する触媒スラリを得た。
これとは別に、水700gにTiO粉末(石原産業社製CR50、表面積3m2 /g)300gを懸濁させたスラリ1kgにコロイダルシリカ(日産化学社製シリカゾル−OS、SiO 濃度20%)1kgを加え、硝酸でpHを調整して図5の流路bに担持する不活性酸化物スラリを得た。
シリカアルミナ繊維の不織布からなる板厚0.2mmの交差斜め積層体を用意し、図5のA方向から前記流路a用スラリを流し込み、反対面から排出する方法で流路a内面にのみ触媒成分を担持させ、エアーブローによる液切り後、150℃で乾燥した。その後、図5のB方向から前記流路b用スラリを流し込み反対面から排出する方法で流路b内面に不活性酸化物を担持させ、エアーブローによる液切り後、150℃で乾燥、600℃で焼成して酸化触媒付フィルタを作製した。これを図7に示すように排ガス煙道に設置し、排ガス浄化装置とした。上記排ガス浄化装置を用い、起動時から30秒のみフィルタモードとし、それ以後は、図7に示すフィルタモードと図8に示す灰パージモードを繰り返して運転し、エンジン停止後にフィルタモードに戻すプログラムを設定して実ガスを処理し、差圧、及びNO濃度の経時変化を観察した。なお、フィルタモードでは経路b(図5)を閉止した。
〔比較例1〕
図4のように調製した従来型フィルタを用い、起動時を含め、全てろ過モードで運転する様プログラムを設定して実ガスを処理し、差圧、及びNO酸化率を観察した。
これらの実施例、比較例について、以下の項目を調べ、結果を表1に示した。
(1)差圧バランス温度(BPT)
(2)100%定格発電時の差圧
(3)PM除去率
(4)100%定格発電時のフィルタ出口におけるNO濃度(NO酸化率)
Figure 0004648269
表1の結果から、本発明の酸化触媒付フィルタ(実施例1、2)は、比較例1と比べて、フィルタ全体に均一にガスが流れる傾向にあるため、一部の触媒面が性能低下することが少なくより寿命が長く持たせられる。また本発明の実施例1では、フィルタ全体に均一にガスが流れるため、低Pt担持量でもBPTが低い特徴が見られた。また、実施例2のフィルタモードと灰パージモードの併用方法では、燃焼灰を効率的に除去でき、NO酸化率(NO2濃度と相関)の経時低下を少なくでき、さらに酸化触媒付フィルタの寿命を向上できると考えられる。実施例3のフィルタでは、酸化触媒が流路b(排ガスの排出経路)に担持されていないため、NO酸化率が低く抑えられており、環境面でも優れていることがわかる。
比較例1では、従来発明のフィルタを使用している。差圧は初期2.0kPaと低いものの3〜4kPaに上昇した。フィルタの一部に排ガスが集中するため、その部分の劣化が早く進行し、NO酸化率の低下が起こっているものと推測される。BPTも本発明の実施例に比較すると高いことがわかる。
本発明によれば、特にディーゼルエンジンから排出されるガス中に含まれる粒状物質(PM)を低通風損失かつ高効率で除去でき、かつ灰や煤を大掛かりな装置を用いることなく除去できるため、灰や煤が堆積しにくい運転制御を行い易く、さらに長寿命で、環境汚染防止に有用な安価なフィルタを提供でき、社会的、経済的効果が大きい。
本発明のフィルタを構成する基本単位の一実施例を示す説明図。 図1の基本単位を積層して構成された本発明のフィルタ(DPFブロック)の一実施例を示す斜視図。 図2に示す本発明のフィルタを煙道に組み込んだ反応器の実施例を示す平面図。 図3の(b)の反応器におけるフィルタ内のガス流れを示す説明図。 排ガス煙道内に、本発明の8面体構造のフィルタを設けた概略平面図。 本発明のフィルタ(DPFブロック)の他の実施例を示す説明図。 排ガス煙道内に、本発明の6面体構造のフィルタを設けた概略平面図。 図5のフィルタのろ過時(フィルタモード)のガス流れを示す説明図。 図5のフィルタの灰パージ時(パージモード)のガス流れを示す説明図。 図5のフィルタの一片側パージ時のガス流れを示す説明図。 図5のフィルタの逆片側パージ時のガス流れを示す説明図。 図5のフィルタのフィルタモード時の平板3付近のガス流れ(逆洗効果)を示す説明図。 図10と比較した従来技術のフィルタのガス流れを示す説明図。 波板と平板を積層させて構成した従来のフィルタの基本単位及び該フィルタのガス流れを示す説明図。 図12の従来のフィルタにおけるガス流れを示す説明図。

Claims (9)

  1. 多孔質波板と多孔質平板の対を基本単位とし、これらを交互に積層して多面体に形成した積層体と、該積層体の前記波板の稜線方向と交差する一面に形成されたガス流入面と、これと平行な他の一面に形成されたガス流出面とを有し、前記多孔質平板を介して前記多孔質波板との間にそれぞれ排ガスの流入経路と流出経路が形成されるフィルタであって、前記ガス流入面から前記ガス流出面に到るガス流路の長さがそれぞれ等しくなるように、前記波板の稜線方向に対して平面から見て45°の角度で交差するように前記多面体の排ガス流入面と流出面が形成されていることを特徴とする排ガス中粒子状物質除去フィルタ。
  2. 前記多面体が八面体であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
  3. 前記多面体が六面体であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
  4. 前記六面体は、平面から見て波板の稜線方向が該六面体の対角線の方向になるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ。
  5. 前記積層体のガス流路に、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する機能を有する触媒成分を担持させたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフィルタ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のフィルタのガス流入面と流出面にそれぞれ連通するガス流路と、前記フィルタのガス流入面及び流出面とそれぞれ交差する側面に連通するバイパス流路と、前記ガス流出面に連通する流路及び前記バイパス流路に設けられた該流路の開閉手段を有することを特徴とする排ガス浄化装置。
  7. 請求項6に記載の排ガス浄化装置において、前記開閉手段に信号を送り、上記ガス流入面に交差する側面への排ガスの通過を遮り、ガス流入面の対向面へ排ガスを通過させ、パージを行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
  8. 請求項6に記載の排ガス浄化装置において、前記開閉手段に信号を送り、排ガス流入面の対向面への排ガスの通過を遮り、排ガス流入面に交差する一方の側面へ排ガスを通過させ、該ガス流路の片側パージを行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
  9. 請求項6に記載の排ガス浄化装置において、前記排ガス流入面の対向面へ排ガスを通過させて行なうパージ操作及び排ガス流入面に交差する側面へ排ガスを通過させて行なうパージ操作を一定期間ごとに行なうことを特徴とする排ガス浄化方法。
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