JP4647405B2 - 土壌中有害物質含有量分析方法 - Google Patents
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Description
現状、汚染土壌の最終的な浄化確認は、計量証明事業所による公定分析法を用いた分析結果に基づく計量証明をもって行い、これにより浄化処理土壌の品質保証をする。従って、浄化土壌を再利用して汚染現場に埋め戻すような場合に、浄化後の土壌を、計量証明が出るまで埋め戻すことができず、浄化後の土壌を仮置きしておく必要がある。
しかし、都市部など敷地が狭い現場では、分析結果を待つ間、処理土壌の仮置き場所を確保することが困難であるため、現場内で浄化されたか否かを簡易に、迅速に、かつ、正確に判断し、浄化を確実視できた土壌から埋め戻しを行いたいというニーズがある。すなわち、公定分析法による分析結果が分かるまで7日前後も処理土壌を仮置きすることが困難な場合があり、公定分析法による分析結果と極めて近似する分析結果を公定分析法に比較して極めて短期間に出すことができる分析法が求められていた。
このような分析方法で使用される分析装置は、極めて微量の重金属等の有害物質を測定可能であるが、一般的に大型で可搬性が低く、さらに、機器によっては、希ガスや燃焼ガス等の供給が必要となり、電源を確保しただけでは設置できない可能性があり、この場合に、装置本体に加えてガスの供給装置等を必要とすることにより、より大型の装置となってしまう。また、これら分析装置は、取り扱いにある程度経験を積んだ測定専門のオペレータを必要とする。従って、これらの測定用の装置は、基本的に測定室に固定的に設置されることから、汚染土壌に対応して設置される土壌の浄化施設に持ち込んで、オンサイトで使用することは極めて困難であるといった問題がある。
また、測定用の分析装置が測定室に設置されることから、浄化土壌を順次サンプリングして測定する際などに、サンプルを測定室が設けられた場所まで搬送する必要があり、測定時間がさらに長くなる。
しかし、上述の公定分析法が溶出による分析であり、土壌中の被測定元素の量が同じでも、被測定元素の化学形態が異なることにより、元素の溶出量に大きな差が生じ、測定結果にも大きな影響がでる。
例えば、塩酸溶出を行う前記公定分析法では、有害物質の化学形態として主に吸着態と炭酸塩態が計測され、鉄・マンガン酸化物態、有機物態、ケイ酸塩態、硫黄化合物態、リン酸塩態といった化学形態の有害物質化合物は、1mol/l濃度程度の塩酸では十分に溶出されず評価が困難である。
そこで、蛍光X線分析で測定された値と公定分析法により測定された値との相関関係を求め、この相関関係(関係式)に基づいて蛍光X線分析から公定分析による測定値を推定することが考えられる。
しかし、土壌中に含まれる有害物質の化学形態によっては、公定分析法の測定結果の方が、蛍光X線分析の測定に基づく推定値よりある程度高くなる可能性がある。
従って、土壌中の有害物質を測定する場合には、溶出法を用いることがより現実的な測定となる。
また、液体の場合は蒸発ロスがあるため、試料の保存が困難である。
従って、土壌中有害物質含有量分析において、含有量基準値が150ppmの有害物質(鉛、砒素、カドミウム、セレン)については処理済みの汚染土の浄化の判定(十分に浄化されたか否かの判定)ができるものの、水銀の場合は含有量基準値が15ppmであるため、前記浄化の判定ができない。すなわち、蛍光X線分析装置では、固体試料での分析の方が、液体試料の分析より高精度での測定が可能となる。
採取された土壌を試料として蛍光X線分析により有害物質の含有量を分析する前分析工程と、
試料とされた土壌から有害物質を溶出するように前記土壌に水系溶媒を加えて混合した後に固液分離する溶出工程と、
前記溶出工程において固液分離されたうちの固体成分を試料として蛍光X線分析法により有害物質の含有量を分析する後分析工程と、
前記前分析工程で分析された有害物質の含有量から後分析工程で分析された有害物質の含有量を減算し、溶出された有害物質の含有量を算出する溶出量算出工程と、
を備えることを特徴とする。
次ぎに、前記土壌の試料に水系溶媒(例えば、塩酸水溶液等の酸性水溶液であるが、元素によっては、純水であっても良いし、アルカリ性の水溶液であっても良い)を加え、混合することで、土壌の試料から有害物質を溶出した後に、固液分離し、溶出液と固体成分としての土壌とに分離する。
すなわち、本発明によれば、小型で可搬性が高い蛍光X線分析装置により土壌の溶出液における有害物質の含有量を高精度で測定可能となる。また、溶出液を蛍光X線分析装置で直接測定するわけではなく、固体である土壌を測定するので高精度での測定が可能となるだけではなく、溶出液に含まれる有害物質を固体化する手間と時間を必要としない。また、煩雑な液体試料の取り扱いを必要としない。
従って、より迅速、簡易、かつ正確に土壌中から溶出される重金属の量を測定することができる。
また、土壌試料からの有害物質の溶出方法(溶出条件)は、公定分析法に近似する分析結果を出す上では、公定分析法における溶出方法と同様に行うことが好ましい。
また、元の土壌及び固液分離された土壌は、分析前に乾燥することが好ましく、乾燥においては、風乾ではなく、加熱や乾燥空気や熱風の吹き付け等により乾燥時間を短縮することが好ましい。なお、有害物質としての水銀の測定においては、加熱するものとしても乾燥時の試料の温度を比較的低温とすることが好ましい。
前記溶出工程で、有害物質を溶出する際に、試料とされた土壌に塩酸水溶液を加えるものとし、
分析される有害物質をカドミウム及びその化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物とすることを特徴とする。
なお、分析においては、有害物質は、基本的に上述の各元素の化合物となるが、蛍光X線分析により、化学形態に関係なく元素としての含有量が測定されることになる。
また、公定分析法に近似する分析結果を得ることができる。ここで、公定分析法に分析結果を近似させる上では、塩酸溶液として塩酸の1mol/l溶液を用いることが好ましい。
また、溶出液を分析の試料として用いないことにより、上述のように、固体の分析を得意とする蛍光X線分析装置が使用可能となり、分析を容易にできる。また、蛍光X線分析装置で、溶出液を直接測定するために、精度が低下したり、溶出液を固体化するのに手間と時間がかかったりすることがない。従って、本発明では、土壌中から溶出される有害物質を簡易、迅速かつ正確に測定することができる。
本実施形態では、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素(これら元素の化合物)を測定するが、他の有害物質とされる元素を測定するものとしても良い。
この例の土壌中有害物質含有量分析方法においては、まず、土壌の試料を採取する。すなわち、採取工程として試料を採取する。なお、土壌の試料は、汚染土壌そのものであっても良いし、汚染土壌を浄化処理した浄化土壌であっても良い。
乾燥に際しては、高温乾燥機(ドライオーブン)を用い、温度設定を摂氏110度として、一時間乾燥する。なお、温度、乾燥時間は適宜変更可能であり、測定する元素毎に変更しても良く、水銀の測定に関しては、高温乾燥機の設定温度を摂氏40℃とすることが好ましい。また、現場で高温乾燥機を用意できないような場合は、試料が飛散しない程度の風量で家庭用のドライヤで試料を乾燥するものとしても良い。
ここで、均一に混合された土壌試料を前分析用試料と後分析用試料とに分割する。
蛍光X線分析装置としては、市販の装置を使用可能であるが、コンパクトで電源を確保するだけで液体窒素を必要とせずに分析が可能な可搬式のものが好ましく、オンサイト分析に適したものを用いることが好ましい。これにより、測定は、汚染現場や汚染土壌の浄化施設等の現場で行うことが可能となる。
また、蛍光X線分析装置においては、複数元素の同時測定が可能となっており、例えば、水銀と、その他のカドミウム、セレン、鉛、砒素とで試料作成時に乾燥温度を変えた場合には、水銀とその他の元素とを別々に測定(その他の元素は同時測定)するが、例えば、乾燥温度を水銀用に合わせた場合や、ドライヤを使って乾燥した場合などは、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素を同時に測定するものとしても良い。
前分析用試料を蛍光X線分析装置にセットしてから分析が行われてデータが出力されるまでの時間が蛍光X線分析装置によっても異なるが数分程度となる。
前記後分析用試料の所定量を溶出用容器に量り取る。また、予め用意した塩酸水溶液を重量体積比3%となるように溶出用容器に加える。
前記塩酸水溶液は、上述の公定分析法に合わせて1mol/l濃度、すなわち、1lの塩酸水溶液中に塩酸が1mol含まれるようにしたものである。
振とうに際しては、例えば、振とう幅を4〜5cmとし、毎分200回で2時間連続振とうする。
振とう終了後、遠心分離器により後分析用試料を含む塩酸水溶液を固液分離する。遠心分離は、例えば、毎分3000回転で20分行う。
なお、遠心分離後に、上述の塩酸水溶液を含む土壌に、上述の塩酸水溶液とほぼ同濃度となる水酸化ナトリウム溶液を加えてpHが6〜8程度になるように中和してから乾燥することが好ましい。
そして、分析結果が蛍光X線分析装置から出力されることになる。
なお、このような演算処理は、例えば、蛍光X線分析装置のデータ送受用の端子にノートパソコン等のパソコンを接続し、蛍光X線分析装置から出力されるデータをパソコンを用いて演算処理するものとしても良い。また、蛍光X線分析装置の演算処理機能を用いるものとして、蛍光X線分析装置に内蔵されるファームウエア等のプログラムに上述の溶出量算出工程で行われる演算を行うためのプログラムを追加し、蛍光X線分析装置から本実施形態における分析結果として有害物質の土壌からの溶出量が出力されるものとしても良い。
しかし、測定方法の違いによる相違が生じる可能性があり、予め、複数の含有量が異なる試料(標準土壌試料)を本実施形態の土壌中有害物質含有量分析方法と、公定分析法との両方で測定し、両方の測定結果同士の関係式を求め、この関係式に基づいて、上述のように求められた含有量を修正し、この実施形態の分析方法による分析結果をより公定分析法による分析結果に近づけるものとしても良い。
Claims (2)
- 土壌から溶出される重金属等の有害物質を蛍光X線分析により定量的に分析する土壌中有害物質含有量分析方法であって、
採取された土壌を試料として蛍光X線分析により有害物質の含有量を分析する前分析工程と、
試料とされた土壌から有害物質を溶出するように前記土壌に水系溶媒を加えて混合した後に固液分離する溶出工程と、
前記溶出工程において固液分離されたうちの固体成分を試料として蛍光X線分析法により有害物質の含有量を分析する後分析工程と、
前記前分析工程で分析された有害物質の含有量から後分析工程で分析された有害物質の含有量を減算し、溶出された有害物質の含有量を算出する溶出量算出工程と、
を備えることを特徴とする土壌中有害物質含有量分析方法。 - 前記溶出工程で、有害物質を溶出する際に、試料とされた土壌に塩酸水溶液を加えるものとし、
分析される有害物質をカドミウム及びその化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物とすることを特徴とする請求項1記載の土壌中有害物質含有量分析方法。
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