JP4643233B2 - 眼鏡用レンズ、及び、眼鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、眩しさを感じさせる可視光線の透過率が低く、受光することで眼が受けるストレスを減少させることができる眼鏡用レンズ及び眼鏡に関するものである。
眼鏡用レンズには、可視光線がレンズに反射することでレンズの光透過率が低下することを抑制するため、反射防止膜を形成することが行なわれている。反射防止膜を備えた眼鏡用レンズは、光透過率が高められるので、認知することができる光の明るさを高めることができる。
しかしながら、反射防止膜を形成しているレンズの場合、眩しさを感じさせる原因となる乱反射光、特に容易に乱反射する短波長光の透過率をも高めているので、認識される眩しさは、増大することとなる。郊外においては、乱反射した光がある程度遮られるものの、乱反射した光を遮る物が少ない都市部においては、特に眩しさを感じさせることになる。
また、波長が短い光は、高エネルギーの光であるので、眼にストレスを与え易い。太陽から発せられる自然光が無い状態であっても、室内に設置された照明器機によって短波長光が眼に入射する状況となっており、昼夜を問わず眼にストレスが与えられる。更に、液晶ディスプレイや陰極線管等の画像表示装置は、高輝度化に進んでおり、この装置から発せられる光量の増加に伴い、眼が受けるストレスは増加の一途を辿っている。そのため、眼精疲労を訴える者の増加の問題が生じている。また、眼が受けるストレスは、特に、老化により眼が衰退した高齢者や、白内障、緑内障等の症状を有する眼病患者にとっての重大な問題である。
500nm以下の波長の可視光線は、特に、乱反射することで眩しさを感じさせる。そして、この波長域においても短波長であるほど、人の目にストレスを与える光となる。500nm以下の波長光の透過率が低いレンズは、通常、500nmを超える波長の可視光線の透過率も低いレンズとなってしまう。このレンズ越しに外界を見た場合、眼の瞳孔が開いて眼内に入射する光量を増加させることになってしまう。つまり、レンズを透過する短波長可視光線量は、減少するものの、眼内に入射する短波長可視光線量は、増加することになる。
上述のような事情に鑑み、本発明は、500nm以下の短波長可視光線の光透過率が特に低い眼鏡用レンズおよびこのレンズを使用して製造された眼鏡を提供することを目的とする。
本発明者は、特定の金属及び金属酸化物を使用してレンズ表面上に蒸着膜層を形成させることで、600nm以下の波長光の透過率の光が短波長となるにつれて低下し、眩しさを感じさせる波長500nm以下の光の透過率が大きく低下する知見のもと本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、眼鏡用レンズの眼に近い裏面全体に、クロムとクロム酸化物との混合物を蒸着させ蒸着層を設けて、JIS T 7331に規定されている視感透過率が75%以上となり、且つ、波長600nm以下の可視光線光透過率が短波長光であるほど低下する単調減少特性となるよう構成したことを特徴とする眼鏡用レンズ、及び、これレンズを使用して製造された眼鏡である。前記レンズの波長500nm以下の可視光線透過率は、80%以下であることが好適である。
上記のように構成された発明によれば、レンズ表面上にクロムとクロム酸化物との混合物を蒸着させた層を形成することで、眩しさを感じさせる500nm以下の可視光透過率が500nmを超える可視光透過率よりも低いものとなるので、防眩性に優れ、更に、眼が受けるストレスを低減した眼鏡用レンズおよび眼鏡となる。また、視感透過率を75%以上とすることで、夜間に安全な自動車運転ができる等、夜間使用に支障のない眼鏡用レンズ及び眼鏡となる。蒸着膜層が接眼面となるレンズの裏面に形成されている場合には、表面方向から視認することができるレンズ表面が鏡面に近づいたものとなった、意匠性に優れたレンズとなる。
以下、本発明を実施形態に基づき説明する。本実施形態における眼鏡用レンズは、レンズに金属膜を形成した眼鏡用レンズである。
レンズは、一方の面が凸面で他方の面が凹面となったメニスカスレンズ等、その形状が問われない。また、近視用又は遠視用の視力矯正レンズであるかの有無を問わず、JIS T 7331に規定される視感透過率が75%以上のレンズが選択使用される。通常、視感透過率が90%以上のレンズが使用される。なお、本明細書において、視感透過率とは、JIS T 7331に規定されている視感透過率を意味する。また、レンズは、視感透過率が75%以上であれば、波長400nm以下の光透過率が低いサングラスを使用しても良い。
レンズは、ガラスレンズやプラスチックレンズ等、その材質が特に限定されるものではない。プラスチックレンズの材質としては、熱可塑性の樹脂を使用しても良く、ポリカーボネート系、ポリスチレン系、メチルメタアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートなどの単重合体および/または共重合体を含むアクリル系、塩化ビニル系、ポリスチレン・メチルメタクリレート系、アクリロニトリル・スチレン系、ポリー4−メチルペンテンー1、アンダマンタン環やシクロペンタン環を主鎖に持つ主鎖炭化水素系、フルオレン基を側鎖に持つポリエステル系、透明ナイロンなどのポリアミド系、ポリウレタン系、アセチルセルロース、プロピルセルロースなどのアシルセルロース系樹脂が例示される。熱可塑性樹脂をレンズ形状に成形する場合には、射出成形が行なわれる。また、プラスチックレンズには、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートとの共重合体であるCR−39(米国、PPG社の熱硬化性成型樹脂の商品名)等、キャスト法により得られるプラスチックレンズを選択しても良い。
プラスチックレンズに使用される熱可塑性樹脂は、光学的異方性を防止するため、光弾性係数が30×10−13cm/dyne以下のものが選択されることが好ましく、より好ましくは20×10−13cm/dyne以下である。また、ガラス転移温度が85℃以上であるものが選択されることが好ましく、より好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度が85℃を下回ると、サングラス、ゴーグルや矯正用のレンズとしての実用性が低下するほか、ハードコートや反射防止加工などの加熱を要する高次加工において変形を起こしやすくなる。前記光弾性係数およびガラス転移温度を満足する熱可塑性樹脂として、ポリメチルメタクリレート樹脂、透明ナイロン樹脂、アンダマンタン環やシクロペンタン環を主鎖に持つ、JSR社の“アートン”、日本ゼオン社の“ゼオネクッス”、三井化学社の“アペル”などの主鎖が炭化水素系の樹脂、日立化成工業社の“オプトレッツ”などのフルオレン基を側鎖に持つポリエステル系樹脂、アセチルセルロース樹脂、プロピルセルロース樹脂が推奨される。
熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート系樹脂を選択することが、高透明性、高靱性、高耐熱性、高屈折率の観点から好適である。代表的ポリカーボネート系樹脂としては、ポリビスフェノールAカーボネートがある。その他、1,1´-ジヒドロキシジフェニル-フェニルメチルメタン、1,1´-ジヒドロキシジフェニル−ジフェニルメタン、1,1´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニル-2,2-プロパンなどを構造内に含むポリカーボネート系樹脂がある。
ポリカーボネート系樹脂は、流動性が高く、レンズ成形時に過度の剪断力を受け難くなってレンズの成形歪みや局所的配向が起こりにくい重合度が120以下であることが好適であり、重合度が100以下であることがより好適である。一般的なポリカーボネート系樹脂を使用した場合、レンズの成形歪みや局所的配向のために光学的異方性が生じて複屈折が大きくなる欠点があるが、前記好適な重合度のポリカーボネート系樹脂である場合、一般的なポリカーボネート系樹脂を使用したときの欠点を抑制することができる。
金属膜は、クロムおよびクロム酸化物の混合物が金属膜として選択される。クロム酸化物としては、CrO、及び/又は、Crが使用される。クロムとクロム酸化物の重量比率は、例えば、クロム:クロム酸化物=4:7の比率で混合すると良い。クロム及びクロム酸化物混合物を金属膜とした場合、レンズの波長600nm以下の可視光線透過率は、短波長光であるほど、低下する。
クロム及びクロム酸化物混合物をレンズに金属膜として形成するには、真空蒸着によって金属蒸着膜として形成すると良い。蒸着は、蒸着膜形成後のレンズを眼鏡に使用したときに目に近い側の面となるレンズの裏面全体に形成することが好適である。この場合、レンズの表面方向からみたときに意匠性に優れた鏡面となる。また、蒸着は、蒸着時間を長くすると蒸着膜層の厚みが増して視感透過率が75%未満となるので、夜間におけるレンズ越しの視認性を確保するためには、視感透過率が75%以上を維持するように蒸着時間を適宜設定することが好適である。このとき、500nm以下の光透過率が80%以下となるように設定される。
図1は、クロム及びCrOからなる蒸着膜層を形成する前後のレンズの光透過率の一例を表したグラフである。クロム及びCrOからなる蒸着膜層は、クロム:CrO=4:7の重量比率である混合物を使用して、レンズの裏面に真空蒸着したものである。図1のグラフにおいて、全般的に透過率の高い曲線は、蒸着膜形成前のレンズの透過率であり、他方の曲線は、蒸着膜形成後の透過率である。蒸着膜形成後のレンズは、視感透過率が75%以上、波長600nm以下の光透過率が短波長光であるほど低下し、波長500nm以下の光透過率が80%以下であって、波長500nm以下の光透過率が500nmを超える光透過率よりも低く抑えられていることを確認することができる。さらに、蒸着膜を形成したことによる、レンズの色の変化は、微細な色変化であったことが確認されている。
上記レンズは、眼鏡の製造に使用される。上記レンズにおいては、必要であれば、耐擦傷性を向上させるコーティング膜を形成させるハードコート処理を行っても良い。また、蒸着層を設けたレンズの裏面には、撥水性膜を設けても良い。また、レンズの表面には、ミラー膜や反射防止膜を選択的に設けても良い。
クロム及びCrOからなる蒸着膜層を形成する前後のレンズの光透過率の一例を表したグラフである。

Claims (5)

  1. 眼鏡用レンズの眼に近い裏面全体に、クロムとクロム酸化物との混合物を蒸着させ蒸着層を設けて
    JIS T 7331に規定されている視感透過率が75%以上となり、且つ、
    波長600nm以下の可視光線光透過率が短波長光であるほど低下する単調減少特性となるよう構成したことを特徴とする眼鏡用レンズ。
  2. 前記レンズは、波長500nm以下の可視光線透過率が80%以下である請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
  3. 前記クロム酸化物は、CrO 、及び/又は、Cr である請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズ
  4. 前記クロムと前記クロム酸化物は、4:7の重量比率で混合される請求項1〜3の何れかに記載の眼鏡用レンズ
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のレンズを使用して製造された眼鏡。
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