以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
〔第1実施形態〕
本発明に係る画像形成装置の実施形態について、図面に則して詳しく説明する。
[画像形成装置の全体構成]
まず、図1を用いて画像形成装置の全体構成について説明する。図1は画像形成装置の全体構成を示す断面図である。図1に示す画像形成装置Aは、カラー画像を形成することが可能な画像形成装置である。この画像形成装置は、装置本体に送信される画像情報信号に応じて、電子写真方式により記録用紙、OHPシートなどの転写材にフルカラー画像を形成することができる。
図1に示すカラー画像形成装置Aは、略鉛直方向に並設された4個の像担持体としての感光ドラム1(1a,1b,1c,1d)を備えている。この感光ドラム1は図12に示す駆動手段(後述)によって図1の図面中で反時計回り方向に回転駆動される。
感光ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に、帯電装置2、スキャナユニット3、現像装置4、ベルトユニット5、クリーニング装置6(6a,6b,6c,6d)等が配設されている。帯電装置2(2a,2b,2c,2d)は感光ドラム1表面を均一に帯電する。スキャナユニット3は画像情報に基づいてレーザビームを照射して感光ドラム1上の静電潜像を形成する。現像装置4(4a,4b,4c,4d)は、静電潜像にトナーを付着させて現像する。ベルトユニット5はベルトユニット上の転写材Sを感光ドラム1の対向位置へ搬送する。クリーニング装置6(6a,6b,6c,6d)は転写後に感光ドラム1表面に残った転写残トナーを除去する。
感光ドラム1と帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置6はプロセスカートリッジ7(7a,7b,7c,7d)を構成し、プロセスカートリッジ7を一つのユニットとして画像形成装置Aに抜き差し可能な構成になっている。プロセスカートリッジ7(7a,7b,7c,7d)はそれぞれ異なる色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像を形成する。図2は、プロセスカートリッジ7の断面図である。ここで、以下の説明において、画像形成装置Aの前側とは、プロセスカートリッジ7を装置本体Aに挿入する側、即ち、図1の図面中で右側をいう。また、画像形成装置Aの左右を表現する場合には、装置前側から見た場合の方向を示しているものである。すなわち、図1の紙面の表面側が左側であり、紙面の裏側が右側である。
感光ドラム1は、直径25mmのアルミシリンダの外周面に有機感光体層(OPC感光体)を塗布して構成したものである。感光ドラム1は、その両端部を回転自在に支持されている。また、一方の端部側から駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達され、図1中で反時計回りに回転する。
帯電装置2は、円柱状に形成された導電性ローラである。この帯電装置2を感光ドラム1表面に接触させるとともに、帯電装置2に帯電バイアスを印加すると、帯電装置によって、感光ドラム1表面が帯電される。
スキャナユニット3からは、結像レンズ10(10a,10b,10c,10d)を介して帯電済みの感光ドラム1表面を露光する光が照討し、静電潜像を形成する。またスキャナユニット3は、図4に示すように長手方向において左右側板32間ピッチより短く形成され、左右側板32の間に立ち、位置決めされた中間フレーム32Xに取り付けられる。
現像装置4は、トナー容器41内のトナーを搬送機構42によってトナー供給ローラ43へ送り込む。更に、図2の中で時計回り方向に回転するトナー供給ローラ43及び現像ローラ40の外周に圧接された現像ブレード44によって、時計回り方向に回転する現像ローラ40の外周にトナーを塗布する。また、現像ローラ40の外周にあるトナーを帯電させる。そして静電潜像が形成された感光ドラム1と対向した現像ローラ40に現像バイアスを印加することにより、静電潜像に応じて感光ドラム1上にトナー現像を行うものである。
ベルトユニット5は、ベルト部材としての静電転写ベルト11を有している。この転写ベルト11は、すべての感光ドラム1a,1b,1c,1dに対向している。また、感光ドラム1a,1b,1c,1dと接触可能な位置を移動する。転写ベルト11は1011〜1014Ω・cmの体積抵抗率を有する厚さ約110μmのフィルム状部材である。この転写ベルト11は、3本のローラに支持され、図1の中の左側の外周面に転写材Sを静電吸着して上記移動する。転写材Sは転写ベルト11によって転写位置まで搬送され、感光ドラム1上のトナー像の転写を受けることができる。
この転写ベルト11の内面に接触し、かつ、4個の感光ドラム1a,1b,1c,1dに対向した位置に転写部材である転写ローラ12(12a,12b,12c,12d)が配置されている。これら転写ローラ12にトナーの正規極性とは逆極性のプラス極性の電圧が印加され、転写ローラ12と感光ドラム1との間で形成される電界により、感光ドラム1上のトナー像が転写材Sに転写される。
ここでは、転写ベルト11は周長約560mm、厚さ110μmのベルトであり、駆動ローラ13、従動ローラ14、テンションローラ15の3本の支持ローラにより支持されている。転写ベルト11は、駆動ローラ13によって、図1におけるの矢印の方向に回転する。これにより、上述した転写ベルト11が循環移動する。そして、先述のように転写材Sが従動ローラ14側から駆動ローラ13側へ搬送される間に転写材Sにトナー像が転写される。なお、ジャム等の原因によって、転写ベルト11上に直接トナーが付着した場合には、転写ベルト11を感光ドラム1よりも早く回転させるとともに、転写ローラに転写時とは異なる極性の電圧を印加することで、転写ベルト11上のトナーを感光ドラム1に転写する。これによって、転写ベルト11に付着したトナーを転写ベルト11から除去することができる。感光ドラム1に転写されたトナーは、クリーニング装置6によってクリーニングされ、プロセスカートリッジ7内に回収される。
給送部16は、転写ベルト11に転写材Sを搬送するものである。転写材Sは給送カセット17に収納されている。給送ローラ18により、給送カセット17内の転写材Sを1枚毎に給送すると、搬送された転写材Sの先端は、レジストローラ対19に一旦、突き当たる。レジストローラ対19に突き当たった転写材Sは、ループを形成した後、感光体1上に形成されるトナー像と重ね合わせることができるタイミングで、搬送が再開される。
転写材Sは静電吸着ローラ22と転写ベルト11との間で挟まれる。そして、転写ベルト11と静電吸着ローラ22との間に電圧を印加すると、誘電体である転写材Sと転写ベルト11の誘電体層に電荷が誘起され、転写材Sが転写ベルト11の外周に静電吸着される。これにより、転写材Sは転写ベルト11によって最下流の転写部まで搬送できる。
転写材Sには、各感光ドラム1と転写ローラ12との間に形成される電界によって、各感光ドラム1のトナー像が順に重ねて転写される。4色のトナー像を転写された転写材Sは、ベルト駆動ローラ13の対向位置において転写ベルト11から曲率分離されて、その後に定着部20に搬入される。定着部20で上記トナー像を熱定着された転写材Sは、排出ローラ対23によって、排出部24から画像面を下にした状態で本体外に排出される。
定着部20は、転写材Sに転写された複数色のトナー画像を定着させるものであり、回転する加熱ローラ21aと、これに圧接して転写材Sに熱及び圧力を与える加圧ローラ21bとからなる。即ち、各感光ドラム1上のトナー像を転写した転写材Sは定着部20によってトナー像が転写材Sの表面に定着される。
[プロセスカートリッジ]
プロセスカートリッジについて図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2、図3はそれぞれトナーを収納したプロセスカートリッジ7の主断面、斜視図を示している。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各プロセスカートリッジ7a,7b,7c,7dは相互に同一の構成である。
プロセスカートリッジ7は、ドラムユニット50と現像装置4に分離可能となっている。ドラムユニット50は、像担持体であるドラム状の電子写真感光体すなわち感光ドラム1と、一次帯電手段2及びクリーニング手段6を備えている。現像装置4は、感光ドラム1上の静電潜像を現像する現像手段である現像ローラ40を有している。
感光ドラム1は、クリーニング枠体51に回転自在になるよう、軸受31(31a,31b)を介して取り付けられている。感光ドラム1上に残ったトナーを除去するためのクリーニングブレード60によって感光ドラム1の表面から除去されたトナーは、トナー搬送機構52によってクリーニング枠体に設けられた廃トナー室53に送られる。
現像装置4は、感光ドラム1と接触して矢印Y方向(時計回り)に回転する現像ローラ40及び、トナーが収容されたトナー容器41と現像枠体45とから構成される。現像ローラ40は軸受部材を介して回転自在に現像枠体45に支持される。また、現像ローラ40の周囲には、現像ローラ40と接触して矢印Z方向(時計回り)に回転するトナー供給ローラ43と現像ブレード44がそれぞれ配置されている。更にトナー容器41内には収容されたトナーを撹拌すると共にトナー供給ローラ43にトナーを搬送するための搬送機構42が設けられている。
そして現像装置4は、現像枠体45の両端に取り付けられた軸にそれぞれ設けられた支持軸49を中心に、ピン49aによって現像装置4全体が感光ドラムユニット50に対して吊り下げられているような構造となっている。そして、現像装置4はプリンタ本体に装着していない状態においては、支持軸49を中心に回転して現像ローラ40が感光ドラム1に接触するよう、加圧バネ54によって現像装置4が常に付勢されている。現像装置4のトナー容器41には、現像ローラ40を感光ドラム1から離隔させる際に装置本体Aの離隔手段が接触するためのリブ46が設けられている。
[駆動装置]
次に図4から図8を参照して、プロセスカートリッジ7の動作機構について説明する。なお、図4においては、構成をわかりやすく説明するため、帯電手段2、現像装置4、クリーニング装置6を一体的に構成したプロセスカートリッジ7を感光ドラム1と軸受31のみで簡略して示した。
前述したように、プロセスカートリッジ7は単体の状態では図2のように現像ローラ40が感光ドラム1に接触するように付勢されている。プロセスカートリッジ7の装置本体Aへの装着は、図4に示すように矢印方向から第1のガイド溝34(34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34h)に沿って、感光ドラム1を支持する軸受31を挿入することによって装置本体Aへ装着する。プロセスカートリッジ7を装置本体Aへ装着する時には、転写ベルト11は、装置本体Aの前側の扉と共に退避させる。このことによって、プロセスカートリッジ7の挿入部が開放される。プロセスカートリッジ7を装置本体Aに挿入すると、図6に示すように感光ドラム1の軸受31がガイド溝34の突き当て面37,38に押しつけられることで装置本体Aに対するプロセスカートリッジ7の位置が決まる。
装置本体A内でのプロセスカートリッジ7の押圧方法は次のようにする。図5(a)に示すように、左右側板32には軸39があり、軸39には押圧レバー70が回動可能なように支持されている。その押圧レバー70には引張りバネ30の一端が接続されており、引張りバネ30の他端はロッド71に固定されている。ロッド71は、左右側板32のガイド部分32aに沿って移動可能であり、装置本体Aの扉の開閉と連動する。装置本体Aの扉が開かれる場合には、図5(b)に示すごとく、ロッド71により、押圧レバー70が図の破線矢印のように動き、プロセスカートリッジ7挿入部が開かれるので、プロセスカートリッジ7が抜き挿しできるようになる。
装置本体Aのプロセスカートリッジ7の挿入方向奥側には、図1に示すように現像装置4の付勢力に抗して現像ローラ40を感光ドラム1から離すための離隔手段としての離隔カム80が配置されている。イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック各色の現像装置4(4a,4b,4c,4d)に設けられたリブ46a,46b,46c,46dを押し上げるために離隔カム80(80a,80b,80c,80d)がそれぞれ設けられている。
図7に示す駆動手段(以下、ステッピングモータ81を例とする。)により離隔カム80が回転し、離隔カム80がリブ46押すことによってプロセスカートリッジ7の現像装置4が揺動される。これにより、現像ローラ40が感光ドラム1に対して、接触・離隔をするのである。ここでは、以下の3つの状態のモードが選択可能である。1つは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの全色の離隔カム80(80a,80b,80c,80d)の最大半径でリブ46と接し、全現像ローラ40と感光ドラム1が離隔する待機状態(第3モード)である。もう1つは、同じく全色の離隔カム(80a,80b,80c,80d)の最小半径でリブ46と離隔し、全現像ローラ40と感光ドラム1が接触するフルカラー状態(第1モード)である。最後の1つは、イエロー、マゼンタ、シアンのみが現像ローラ40が感光ドラム1と離れ、且つ、ブラックのみが現像ローラ40が感光ドラム1と接触するモノカラー状態(第2モード)である。これらの3モードの選択が可能である。フルカラーモードにおいては、イエロー→マゼンタ→シアン→ブラックという順番で、所定の時間差をもって順次、現像ローラ40が感光ドラム1に接触して画像形成を行う。なお、現像ローラ40が感光ドラム1から離隔する場合も同様に所定時間差をもって順次行うことが可能となっている。
プロセスカートリッジ7の装置本体Aへの装着の際には、図7のように、4色すべての離隔カム80が最大半径でリブ46に接触した状態となっている。従って、プロセスカートリッジ7を挿入すると現像装置4に設けられたリブ46が離隔カム80に乗り上げ、現像ローラ40は感光ドラム1から離れた状態となる。この離隔状態は電源オフ時および現像が行なわれていない時に維持される。従ってプロセスカートリッジ7を装置本体Aに装着した状態でプロセスカートリッジを使用しない間は、現像ローラ40は感光ドラム1に対して常に離隔された状態になる。これにより、現像ローラ40が感光ドラム1に長時間に渡って接触されることにより発生する現像ローラの変形を抑止することができる。
続いて、画像形成モードについて説明する。図1に示すカラー画像形成装置は、転写ベルト11が感光ドラム1と接触する動作(接触動作)及び離れる動作(離隔動作)が可能な構成となっている。以下、これらの動作を接触・離隔動作と称する。さらに、記録に際しては複数色を重ね合わせて多色記録を行うカラーモード(第1モード)と、単色のみで記録を行うモノカラーモード(第2モード)を選択し得るようになっている。
[フルカラーモードとモノカラーモードの画像形成動作と転写部材の移動機構]
次に、図8及び図9を参照してフルカラーとモノカラーのプリントモードの動作について説明するとともに、図10〜図12を用いて転写部材の移動機構について説明する。
まず、駆動系全体に関する概要を図8に示す。図8に示すように、2つのモータ100a,100bは4つのプロセスカートリッジ7を駆動する。
モータ100aはドラム駆動列101に沿って、モータ100aの次段のアイドラギア104、前段ギア108、ドラム駆動ギア107a,107b,107cを駆動する。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンに相当するプロセスカートリッジの感光ドラム1a,1b,1cが回転する。同時にモータ100aは、現像ローラ駆動列102に沿って、アイドラギア105を介し、クラッチCLaを有するクラッチギア106に接続する。そして、最終的にイエローのプロセスカートリッジの入力ギア(不図示)に噛合い、現像ローラ40aを駆動する。
もう1つのモータ100bもモータ100aと同様にドラム駆動列101に沿って、モータ100bの次段のアイドラギア104、前段ギア108、ドラム駆動ギア107dを駆動する。これにより、ブラックに相当するプロセスカートリッジの感光ドラム1dが回転する。同時にモータ100bは、現像ローラ駆動列102に沿って、2つのアイドラギア105を介し、クラッチCLb,CLc,CLdを各々有する各クラッチギア106に接続する。そして、最終的に前記マゼンタ、シアン、ブラックのプロセスカートリッジの入力ギア(不図示)に噛合い、現像ローラ40b,40c,40dを駆動する。
記録動作をフルカラープリントと、モノカラープリントに分けて以下説明する。
フルカラーのプリントモード(第1モード)の場合、プリント信号により記録動作が開始されると、プロセスカートリッジを駆動する2つのモータ100a,100bと転写ベルトの駆動モータが回転する。このとき、全ての現像駆動のクラッチCLが切れており、現像ローラ40はいずれも回転しない。
次に、図9のように、ステッピングモータ81が回転すると、離隔カム80(80a,80b,80c,80d)が反時計回り方向に回転する。その時に、現像ローラ駆動列に設けられた第1のクラッチCLaがONとなり、第1の現像ローラ40aが回転する。そして、その直後に、現像ローラ40aと感光ドラム1aが接触し、画像形成が開始される。以下同様に、所定のラグ(図中のカム位相差θ)を持ち、第2、第3、第4のクラッチCLb,CLc,CLdがONとなり、第2、第3、第4の現像ローラ40b,40c,40dが回転する。そして、各現像ローラ40b,40c,40dと各感光ドラム1b,1c,1dが順次接触し、図9(c)のフルカラープリントモードとなる。この時、図11のように、転写ベルト11は全感光ドラム1と接触する。また、全転写ローラ12が移動して転写ベルト11と接触する。
第1の画像形成終了後は、ステッピングモータ81がさらに回転し、それに伴い、離隔カム80(80a,80b,80c,80d)が回転する。まず、第1の現像ローラ40aが感光ドラム1aから離隔し、続いてクラッチCLaがOFFになり、第1の現像ローラ40aの回転が停止する。これも以降接触時と同様に、所定の時間差を有し、第2、第3、第4の現像ローラ40b,40c,40dが各感光ドラム1b,1c,1dから順次離隔し、図9(b)のフルカラープリントモードでの画像形成が終了となる。
モノカラーのプリントモード(第2モード)の際には、図9(b)から図9(c)への遷移と同様に、ステッピングモータ81が回転し、ブラックの離隔カム80dのみが図9(a)のように時計回り方向に角度θ'だけ回転する。なお、現像ローラの接触・離隔に係る駆動列のうち、イエロー、シアン、マゼンタの離隔カム80a,80b,80cへの駆動列には、モータ81から各離隔カムへ駆動力を伝達又は解除するためのクラッチ(不図示)を設けている。したがって、第2モードの際には、離隔カム80a,80b,80cへの駆動列に設けたクラッチをOFFすることにより、モータ81から各離隔カムへは駆動力が伝達されず、前記離隔カム80dのみに駆動力が伝達され回転する。これにより、第4の現像ローラ40dのみが感光ドラム1dに接触し、第1〜第3の現像ローラ40a,40b,40cが感光ドラム1a,1b,1cに接触することはなく、モノカラーでのプリントが可能となる。この時の転写ベルト11は、後述する移動機構により、図11のように、モノカラーモードで使用する色の画像形成部以外は、感光ドラム1a,1b,1cから転写ローラ12a,12b,12cを退避し、転写ベルト11を感光ドラムから離隔する。このようにして、モノカラー時に使用しない色に該当する箇所については、感光ドラムや転写ベルトの浪費を防ぎ、製品寿命末期まで高画質な画像出力を維持できるようにしている。そして、モノカラーモード終了時には、離隔カム80(80a,80b,80c,80d)を図9(c)に示す離隔位置まで更に正転(反時計回り方向に回転)させることで、4色とも離隔状態となる。
図10を用いて、転写部材(転写ローラ)を像担持体(感光ドラム)に近接または離隔させる移動機構に関し、以下詳細に説明する。
駆動源(不図示)から、必要な減速比を確保し、離隔ギア96を介して離隔ギア95へとギアトレインが構成されている。離隔ギア95の同軸上には、離隔軸93とその両端に離隔カム94l,94rが設けられている。離隔ギア95と離隔ギア96の小ギア側の歯数については、其々40歯、10歯とし、減速比を1/4にしてある。そして、離隔ギア96の同軸上に、不図示の欠歯ギアとソレノイドを設け、ソレノイドのON・OFFにより、離隔ギア96の1回転制御と、離隔ギア95の1/4回転制御を実現している。勿論、欠歯ギアとソレノイドという構成以外に、ステッピングモータによる回転角度制御や、電磁クラッチなどの駆動制御手段を用いても同等の機能を実現可能である。
離隔ギア95の回転制御により、離隔カム94l,94rを介して離隔ロッド92l,92rが感光ドラム1が並んでいる方向に略平行(図中矢印方向)にスライドする。これに追従する形で、転写加圧バネ90a〜90dの軸方向に対して順方向もしくは逆方向に転写ローラ軸受91a〜91dを移動させる。転写ローラが近接または、離隔する方向へ移動する。これにより、転写ローラ12a,12b,12c,12dが移動し、感光ドラム1a,1b,1c,1dと転写ベルト11の接触・離隔が可能となっている。
図11はフルカラープリント時(第1モード時)の状態を断面図で示している。また図12は、モノカラープリント時(第2モード時)の状態を断面図で示している。
今、図11の状態から図12へ変化させるには、図11の離隔ギア95を実線矢印方向(反時計回り方向)に270°回転させる。これにより、図12の点線矢印方向に離隔ロッド92がスライドし、感光ドラム1から、転写ローラ12及び転写ベルト11が遠ざかる。
上記転写ローラ12の移動時の離隔ロッド92と転写ローラ軸受91の関係を図13に示す。
離隔ロッド92にはフック部分92cが形成されており、これが、図13(b)から図13(a)もしくは図13(c)の点線矢印方向にスライドし、転写ローラ軸受91のボス部91tをそれぞれ実線矢印方向に移動させる。このようなフック部分92cの動作により、転写部材の移動を実現している。
次に、図14を用いて、転写加圧バネ90による転写圧力により、プロセスカートリッジ7を移動させる構成について説明する。転写加圧バネ90は転写ローラ軸受91及び転写ローラ12を介し、転写ベルト11を感光ドラム1に点Qの位置で接触させる。転写加圧バネ90により、感光ドラム1へは片側約2.45N(250gf)の加圧力があり、総加圧力Fは約4.9N(500gf)となる。なお、プロセスカートリッジ7は新品時1個当たり約9.8N(1kgf)の重量がある。
装置本体Aへのプロセスカートリッジ7の挿入方向は、図示した点線矢印方向であり、転写ローラ12の加圧方向とのなす角をβとすると、プロセスカートリッジ挿入方向への力Fの分力は、Fcosβ(>0)となる。なお、プロセスカートリッジ7を装置本体A に挿入する方向と転写ローラ12が感光ドラム1を押圧する方向の成す角βは鋭角である。カートリッジ7と装置本体の受け部との摩擦力を考慮しても、上記転写圧力は、プロセスカートリッジ7を装置本体Aへ押し込むことができるするだけの十分な力がある。
また、転写部材である転写ローラ12の移動方向に関し、転写ベルト11を介して対向するプロセスカートリッジ7が移動する方向(=挿入方向)のベクトル成分を有している。このため、前記転写圧によりプロスカートリッジ7を装置本体Aの内の所定の位置まで移動させることが可能である。
一方、プロセスカートリッジ7を装置本体Aの内に挿入する作業において、プロセスカートリッジ7が装置本体Aの所定の位置にきちんと入れきれない場合がある。リブ46が離隔カム80に引っ掛かる場合等があるからである。そこで、このようなケースに対しては、上述した離隔カム80による現像ローラの接触・離隔を行い、プロセスカートリッジに対する離隔カム80からの反力を解除するようにしている。このように前記離隔カム80をプロセスカートリッジ7から離隔させて離隔カムを解除することにより、前記転写圧によってプロスカートリッジ7を装置本体A内の所定の位置まで確実に移動させることができる。特に、後述する判別手段による検出開始前に行われる移動機構による離隔動作の際に、離隔カム80をプロセスカートリッジ7から離隔させることにより、前記転写圧によってプロスカートリッジ7を装置本体A内の所定の位置までより確実に移動させることができる。
以上のような構成により、ソレノイドのON・OFFにより、転写ベルト11を感光ドラム1に対して接触と離隔の2状態に変化させることは可能になるが、その2状態のどちらの状態であるかを画像形成装置本体が認識することはできない。そこで、ここでは、接触と離隔の2状態が形成されるイエロー、マゼンタ、シアンの転写部Ta,Tb,Tcのいずれか1個の転写部に電圧を印加した際に流れる電流を検知し、予め設定した値と比較することにより、その接触と離隔の2状態の判別を行えるようにした。
[転写電流の検出方法]
ここで、転写電流を検知することによって前記接触・離隔の2状態を判別する判別手段について、図15〜図17を参照して説明する。この判別手段は、後述するセンサーの検知結果に基づいて転写部材の位置を認識する認識部である。図15は転写バイアス配線略図であり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部に対し、それぞれ転写バイアス回路、転写電流検出回路を設けた一例を示している。また、図16は転写電流検出回路を、図17は転写搬送ベルト接触時における図15のイエロー、ブラックの転写部の略図をそれぞれ示している。
イエローの画像形成部について、転写電流の検出手順について説明する。尚、図15〜図17において、番号に付記している文字a、b、c、dはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部に係るものであることを意味する。以下、イエローの画像形成部に関して説明するが、同じ構成をマゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部も有する。
110aは電源としての転写バイアス回路であり、感光ドラム1a上に形成されたトナー像を、転写ベルト11によって搬送される転写材上に転写するために、転写バイアスを転写ローラ12aに供給する。転写バイアスは、負極性に帯電するトナーを利用した画像形成装置の場合では、一般に正極性の高圧電圧が用いられている。また、その電圧値は、機器の使用環境や転写材の種類等に応じて、画像形成を制御するエンジンコントローラ(不図示)上のCPU111からの信号U112aにより制御可能な構成となっている。転写ベルト11が感光ドラム1aに接触している場合、転写バイアスが印加されると、転写電流I113aの大半は、転写バイアス回路110aの負荷114aである転写ローラ12a、転写ベルト11、(転写材)、感光ドラム1a、ドラム軸の順に流れ、グランドを介してセンサーとしての転写電流検出器115aに流れ込む。転写電流検出回路に流れ込んだ転写電流I113は、図16に示す電流検出回路のオペアンプ116のグランドから出力端子、保護抵抗R1、抵抗R2と図中の矢印に示すように流れる。オペアンプ116の+端子は、インピーダンス整合用抵抗R3によりグランドに接続されており、オペアンプ116の+端子と−端子はイマジナリーショートであるから、−端子もグランドと考えることができる。転写電流I113が流れると、このオペアンプの−端子の仮想グランドを基準に、Viの電圧が生じる。この電圧Viは、転写電流をItr、抵抗R2の値をRaとすると、次式で現され、電流検出回路115aの出力信号U117aの値はこのViとなる。
Vi=Itr×Ra ………(式1)
つまり、電流検出回路は、転写電流I113を、電流の大きさに比例した電圧信号U117aに変換して、CPU111のA/Dポートへ出力する。CPU111は電圧信号U117aや、寿命情報等をもとに、信号U112aを介して、転写バイアス回路100aの出力電圧を補正し、感光ドラム上に形成されたトナー像が、最適に転写材に転写されるよう制御する。尚、ここでは、イエローの画像形成部を例示して転写電流の検出手順について説明したが、シアン、マゼンタ、ブラックの画像形成部も同様にして転写電流を検出できる。また、これに加えて、装置本体の雰囲気の温度や湿度を検出するための不図示の環境センサ(環境検出手段)から得られる環境情報を基に、転写バイアス回路100aの出力電圧を補正するシステムでもよい。
[転写搬送ベルトの接触・離隔時の転写電流]
次に図17及び図18を参照して転写ベルト11の接触・離隔時の転写電流について説明する。図17は転写ベルト11と感光ドラム1が接触している時におけるイエロー、ブラックの転写部を模式的に説明した図であり、図18は転写ベルト11が感光ドラム1と離隔している時におけるイエロー、ブラックの転写部を模式的に説明した図である。また、図17(b)及び図18(b)は転写部材近傍の詳細図である。ここでは、イエローの画像形成部に着目し、転写ベルト11の接触・離隔時の転写電流について説明する。
転写バイアスが印加されると、転写電流I113aの大半は、転写バイアス回路110aの負荷114aである転写ローラ12a、転写ベルト11、(転写材)、感光ドラム1a、ドラム軸の順に流れ、グランドを介して転写電流検出器115aに流れ込む。この電流経路について、以下詳細に説明する。
プリント時には、転写ベルト11と感光ドラム1aが接触し、その間に転写材が搬送されることになる。この転写材の電気的な抵抗値は転写材の種類や環境などによって変化し、転写電流の値を変動させるため、ここでは、転写材のない場合について説明する。
図17に示すように、転写ベルト11と感光ドラム1aが接触している場合は、イエローの転写バイアスのみが転写ローラ12aに印加されると、転写ローラ12aの抵抗R4a、転写ローラと転写ベルトの接触抵抗R5a、転写ベルトの厚み方向の抵抗R6a、転写ベルト11と感光ドラムの接触抵抗R7a、感光ドラムの半径方向の抵抗R8a、ドラム軸、転写電流検出器115aの順に流れる。その電流の大きさは、印加電圧や環境等の条件で変化するものの、数10μA〜数100μAの値である。
ここで、R9、R10及びR11は転写ベルト11の長さ方向の抵抗であり、次の関係が成り立っている。
転写ベルト11の長さ方向の抵抗R9、R10及びR11>>転写ベルト11の厚み方向の抵抗R6a+転写ベルト11と感光ドラムの接触抵抗R7a+感光ドラムの半径方向の抵抗R8a………(式2)なので、転写電流I113aのほとんどは、転写ベルト11の長さ方向へは流れずに、感光ドラム1a方向へ流れることになる。
一方、図18に示すように、転写ベルト11と感光ドラム1aが離れている時には、イエローの転写バイアスのみが転写ローラ12aに印加されると、転写電流I118aは転写ローラ12aから転写ベルト11へ流れる。ここで、転写ベルト11と感光ドラムの間の電気的な抵抗値がとても大きいので接、転写電流I118aは、転写ベルト11と接触しているブラックの感光ドラム1d方向へ向かって流れる。したがって、電流I118aは転写ベルト11の長さ方向の抵抗R10、転写ベルト11の厚み方向の抵抗R6d、転写ベルト11と感光ドラムの接触抵抗R7d、感光ドラムの半径方向の抵抗R8d、ドラム軸、グランド、転写電流検出器115aの順に流れるが、前記転写ベルト11の長さ方向の抵抗R10が大きいために、実際に流れる電流値は極めて小さい。
ここで、転写ベルト11と感光ドラム1が接触している場合と離隔している場合とで、流れる転写電流の大きさを比較してみる。転写ベルト11離隔時の転写バイアス回路110aの負荷は、転写ベルト11接触時の負荷よりも、ほぼ転写ベルト11の長さ方向の抵抗R10に相当する分、大きくなっている。
また、前記(式2)の関係より、転写ベルト11の長さ方向の抵抗R10は大きいので、転写ベルト11接触時の転写電流I113cと転写ベルト11が離隔してる時の転写電流I118aとの間には次の関係がある。
I113c>>I118a ………(式3)
(I118a=0A)
[転写搬送ベルトの接触・離隔の検出方法]
以上より、電流I113cと電流I118aの間に、閾値電流Iaをあらかじめ設定(I113c>Ia>I118a)しておけば、各感光ドラムと転写ベルト11の接触と離隔の検出が可能となる。
しかしながら、ジャム処理時やユーザがプロセスカートリッジ7を交換して装置のドアを閉めた時に、プロセスカートリッジが装置本体の所定の位置に完全に配置されていない場合がある。この場合には、転写ローラ12が感光ドラム1からより遠ざかるはずの位置にあったとしても、感光ドラム1が転写ローラ12側にずれているので、転写ベルト11と感光ドラム1との間に十分な空間が確保できないという事態が生じる。すると、転写ベルト11と感光ドラム1の間に電流が流れやすい状態となってしまう。すると、転写ローラ12の位置からすれば、本来「離隔」と判断されるべき条件にもかかわらず「接触」というような誤検知をしてしまう恐れがある。そのため、本実施の形態においては、前述の移動機構を利用して、上記の誤検知を防止した。接触・離隔動作を行うと、転写ローラ12が移動し、感光ドラム1側に移動する時には、転写ローラ12が感光ドラム1を有するプロセスカートリッジ7を押し込むことになる。前述のとおり、転写圧力が大きいからである。前述した判別手段による電流値(又は電圧値)の検出開始前に前述した移動機構を利用して接触・離隔動作を行うようにした。より具体的には、前記移動機構により4つの転写ローラ12の全てを転写ベルト11に対して接触・離隔動作を2回行った後に、前記判別手段による電流値(又は電圧値)の検出を開始するようにしている。このように検出前にプロセスカートリッジを装置本体Aの正しい位置に移動させることによって検知にの信頼性を向上するものである。
更に図19を用いて前述の動作の流れを具体的に説明する。図19のフローチャートに示すように、まず接触・離隔の検出開始前に、ステップS101にて移動機構を2回動作させて、プロセスカートリッジを所定の位置に押し込む移動動作を行う。このプロセスカートリッジの移動シーケンスの後に、転写電圧を印加し(ステップS102)、発生する電流値を検出する。なお、ここでは、転写電圧を印加する画像形成部としてイエロー、マゼンタ、シアンを例示している。そして、ステップS103にて、前述した閾値電流Iaとの比較を行い、転写ローラと感光ドラムが接触状態か離隔状態かを判別する。すなわち、転写ローラの位置を認識する。ここで、閾値電流Iaに対応する電圧信号U117aの電圧値Vaを決めておき、この電圧値Vaよりも電圧信号U117aが大きければ「接触」、小さければ「離隔」と判断する(ステップS104,S105)。この接触・離隔状態の検出後、転写電圧の出力を停止する(ステップS106)。
なお、前述したベルト移動機構を2回行うようにしたのは、停電時などの時には、「接触」「離隔」の間の遷移状態となる場合もあり、「モノカラーモード→フルカラーモード」もしくは「フルカラーモード→モノカラーモード」の動作が必ず入るようにし、少なくとも1回は全画像形成部において接触状態とし、全てのプロセスカートリッジ7を所定の位置まで移動させるためである。
以上のように構成することにより、ベルトユニット内に、転写ローラ12の位置を直接把握するような専用のセンサ等を設けず、より確実に転写ローラ12の位置を検出することができるようになった。これにより、画像形成装置が転写部材の位置を誤認することを抑止し、画像形成装置が誤ったシーケンスを実行することを抑止することができる。
尚、ここではイエローの画像形成部について説明をしたが、マゼンタやシアンの転写バイアスのいずれかを印加し、転写電流を検出することで、同様に転写ベルト11の接触解除を検出できることはいうまでもない。
また、ここでは、第1モードとして全ての色を用いたフルカラープリントを、第2モードとしてブラックのみを用いたモノカラープリントを例示したが、これに限定されるものではない。第2モードは、イエローとマゼンタのみの2色モードや、マゼンタとシアンの2色モード、イエローとマゼンタとシアンのみの3色モード等、いろいろな組み合わせが考えられる。また、ここでは4色の組合せを例示しているが、色数に応じて適宜組合せが自在であることは言うまでもない。このようなパターンを持つ画像形成装置においても、各色毎に電流検知手段を設けることによって、どの色が接触状態にあって、どの色が離隔状態にあるかを検知することも可能である。
また、図15に示す構成では転写電流検出器115を4つ有する構成を例示しているが、これに限定されるものではない。図20に示すように、コストダウンのために、転写電流検出器121を1つに削減した構成であっても良い。この構成においても、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかの転写バイアス回路を利用することで、同様に各色毎の転写ベルト11の接触・離隔を検出することは可能である。
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態として転写電流を定電流制御する系において、ベルトの離隔状態の判断をする例について説明する。特に説明をしていない構成については、第1実施形態に示す構成と同じである。以下に示す他の実施形態についても同様である。
図15の構成に、各負荷114に流れる転写電流を一定に制御する定電流制御を利用しても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。イエローの画像形成部において、電流検出器115aは、転写電流I113aを、電流の大きさに比例した電圧信号U117aに変換して、CPU111のA/Dポートへ出力する。CPU111はこの電圧信号が予め決められた電圧値V1とほぼ等しくなるように制御する。電圧制御信号U112aは周波数が一定の矩形の信号であり、そのオン時間を長くするほど転写バイアス回路110aの出力電圧を高く出力させることができる。所定電圧V1よりも電圧信号U117aが小さい場合には転写電流が少ないため、CPU111は転写バイアス回路110aの出力電圧を高めるように電圧制御信号U112aのオン時間を長くして送信する。また電圧値V1よりも電圧信号U117aが大きい場合には転写電流が多いため、CPU111は転写バイアス回路110aの出力電圧を低くするようにオン時間の短い電圧制御信号U112aを送信する。以上の制御を繰り返すことで転写電流を一定に制御することができる。なお、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部も同様に制御できる。
このような制御系においては、転写ベルトと感光ドラムが離隔した状態となると、転写ベルトと感光ドラム間に電流がほとんど流れなくなるため、転写電流I113aが正常動作時に比べて低くなる。このためCPU111は電圧制御信号U112aをオン時間を長くして出力するものの、この時には最大の転写電圧を印加しても所定の転写電流(所定電圧V1)を流すことができない。したがって、最大の転写電圧に対応したオン時間の電圧制御信号U112aを出力しているにも関わらず、転写電流I113aが所定の電流に達しない場合には、転写ベルト11と感光ドラム1が離れていると判断することができる。
また、図21に示すように構成することにより、転写電流と転写電圧の双方を検出してベルト11の接触・離隔状態を判断することも可能である。なお、図21は図15に示す構成に対して、各転写バイアス回路110の出力電圧に比例した電圧信号U120を追加している。このように、転写電流と転写電圧の双方を検出する構成は、CPUのA/Dポートが8層有する。
図21にあっては、例えばイエローの画像形成部において、電流検出器115aは、転写電流I113aを、電流の大きさに比例した電圧信号U117aに変換して、CPU111のA/Dポートへ出力する。CPU111はこの電圧信号があらかじめ決められた電圧値V1とほぼ等しくなるように制御する。電圧制御信号U112aは周波数一定の矩形波の信号であり、そのオン時間を長くするほど転写バイアス回路110aの出力電圧を高く出力させることができる。所定電圧V1よりも電圧信号U117aが小さい場合には転写電流が少ないため、CPU111は転写バイアス回路110aの出力電圧を高めるように電圧制御信号U112aのオン時間を長くして送信する。また電圧値V1よりも電圧信号U117aが大きい場合には転写電流が多いため、CPU111は転写バイアス回路110aの出力電圧を低くするようにオン時間が短い電圧制御信号U112aを送信する。以上の制御を繰り返すことで転写電流を一定に制御することができる。なお、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部も同様に制御できる。
このような制御系においては、転写ベルトと感光ドラムが離隔した状態となると、転写ベルトと感光ドラム間に電流がほとんど流れなくなるため、転写電流I113aが正常動作時に比べて低くなる。この時には最大の転写電圧を印加しても所定の転写電流(所定電圧V1)を流すことができない。
このためCPU111は電圧制御信号U112aをオン時間を最大として出力する。このとき、転写バイアス回路の出力可能な最大電圧値V3を、通常動作時の最大値V2よりも大きく設定しておけば転写ベルト11と感光ドラム1の接触・離隔状態を判断することができる。
すなわち、転写バイアス電圧検出信号U120cにより検出した転写バイアス回路110aの出力値が、電圧V2以上となった時には、転写ベルト11と感光ドラム1が離隔していると判断する。
このように、転写ローラ12に電圧を印加したときに発生する電流値だけでなく、転写ローラ12に電流を流している時の電圧値を検出することでも、ベルトの接触・離隔状態を判別することが可能である。
〔第3実施形態〕
前述した実施形態では、転写材を担持する転写材担持部材としての転写ベルト(ベルト部材)を有する画像形成装置を例示した。しかしながら、本発明は転写ベルトを使用した画像形成装置に限定されるものではない。例えば、トナー像を一時的に担持する中間転写体としての中間転写ベルト(ベルト部材)を有する画像形成装置であっても良い。この画像形成装置は、第1モードのときは複数の感光ドラムに形成したトナー像を前記中間転写ベルトに順次重ねて転写し、前記ベルトに転写されたトナー像を転写材に一括して転写する画像形成装置である。このような画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
〔第4実施形態〕
前述した実施形態では、ベルトの接触・離隔に関し、多色記録を行うカラーモード(第1モード)と、単色のみで記録を行うモノカラーモード(第2モード)を例示した。しかしながら、ベルト部材と像担持体が接触した状態で長期間放置された場合は、ベルト部材や転写部材に関し、「クリープ」に代表される局所的な塑性変形などが生じる場合があり、放置後の画質が低下してしまう恐れがある。
この問題を回避するには、全色に対し、像担持体から転写部材を離隔させ、ベルト部材を離隔させるモード、すなわち全色離隔モード(第3モード)が有効である。以下、第1実施形態にこの第3モードを追加した構成について、その差分に相当する箇所についてのみ説明する。尚、この実施形態でも前述した第1実施形態と同一機能を有する部材については同一符号を付す。
図22は全色離隔モード(第3モード)に相当する要部の断面図であり、図23は全色接触モード(第1モード)に相当する要部の断面図である。前述したように、離隔ギア95はソレノイドのON・OFFにより、1/4回転制御を実現している。具体的には、離隔ギア95が図11の反時計回り方向に90°回転するごとに、図11→図22→図23→図12、という動作をする。即ち、離隔ギア95が90°回転するごとに、フルカラーモード(第1モード)→全色離隔モード(第3モード)→フルカラーモード(第1モード)→モノカラーモード(第2モード)、という動作をする。なお、モノカラーモード(第2モード)の後、更に離隔ギア95が90°回転すると、最初のフルカラーモード(第1モード)に戻る。このように、フルカラーモードが2箇所あることにより、モード間にフルカラーモードに切り替わる時間を低減でき、その結果、ファーストプリントアウトタイムなどの短縮を実現している。
全色離隔モード(第3モード)を追加した時の転写電流について、図24及び図25を参照して説明する。なお、それぞれの(b)図は転写部材近傍の詳細図である。図24は転写ベルト11接触時におけるイエロー、ブラックの転写部の模式説明図である。図24は、図17に対して、イエローと同様にブラックのステーションについても、信号U112d及び電流の大きさに比例した電圧信号U117dを介して、CPU111と通信可能な構成としている。図25は図18と同様に、転写ベルト11離隔時におけるイエロー、ブラックの転写部の模式説明図である。図25は、図18のモノカラーモード時に対して、ブラックの転写部においても感光ドラム1と転写ベルト11が離れており、この間では電流は流れない。このような構成にすることにより、第1実施形態と同様の判別手段を用いて、全色離隔モード(第3モード)を検知できるのである。すなわち、全ての感光ドラム1と転写ベルト11とが離れていることを検知できる。
この動作に関するフローチャートを図26に示す。検知のフローは次のようになる。
検知開始(ステップS2601)後、すぐに転写部材の移動機構を動作させる(ステップS2602、カートリッジ移動動作)。そして、ブラックの転写電圧を印加し、前述した閾値電流Iaとの比較を行い、ブラックに該当する転写ローラと感光ドラムが接触状態か離隔状態かを判別する(ステップS2604)。この判別結果で、ブラックの転写電流がIaよりも大きくなる場合は、イエロー、マゼンタ、シアンの何れかの転写電圧を印加し、ブラック同様に、閾値電流Iaとの比較を行う(ステップS2605、2606)。そして、以下のように3モードを判断している。
(1)ブラックの転写電流>Ia且つ、イエロー、マゼンタ、シアンの何れかの転写電流もIaより大ならば、第1モード(全色接触)と判断(ステップS2607)
(2)ブラックの転写電流>Ia且つ、イエロー、マゼンタ、シアンの何れかの転写電流圧もIaより小ならば、第2モード(限定色のみ離隔)と判断(ステップS2608)
(3)ブラックの転写電流<Ia且つ、イエロー、マゼンタ、シアンの何れかの転写電流もIaより小ならば、第3モード(全色離隔)と判断(ステップS2609)
そして、モード検知後、転写電圧の出力を停止して、検知終了となる(ステップS2610・S2611)。
また、上述したように、フルカラーモード(第1モード)が2箇所あったとしても、イエロー及びブラック各々の画像形成部において、その前後の転写電流を指標として感光ドラム1とベルト11の接触・離隔状態を把握することで、2箇所のうちのどちらのフルカラーモード(第1モード)のポジションにあるかについても、判断が可能となっている。
なお、前述した実施形態においては、転写部材として転写ローラを用いた画像形成装置の例を示したが、ローラ状部材に限らず、転写パッドなどのパット状部材や、転写ブレードなどのブレード状部材であっても、本発明を適用することで同様の効果を得ることができる。
また、前述した実施形態では、色の異なる4つの画像形成部を備えた画像形成装置を例示したが、この画像形成部の使用個数や色の種類はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。例えば、本発明は、ベルトを用いずに、感光ドラムから転写材Sに直接転写する転写ローラを用いるような画像形成装置にも応用可能である。感光ドラムと転写ローラのいずれかの位置がずれている場合に、一旦、接触・離隔動作を行ってから転写ローラの位置を検知すると、転写ローラの位置をより正確に認識できるものである。
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。