以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の一実施形態を図1〜図25により説明する。本実施形態は、縫製装置の一例として、被縫製物Cに形成する鳩目状の穴の周囲をかがり縫いする鳩目穴かがりミシンに本発明を適用した場合の実施形態である。
図1は、本実施形態の縫製装置(鳩目穴かがりミシン)の全体概略構造を表す側面図である。この図1において、この縫製装置Mはミシンテーブル1上に載置されており、略矩形箱状をなすベッド2と、このベッド2の後方部上部から前方に連続して延びるアーム3と、アーム3の前方側の頭部3Aの下方に設けた針棒4と、縫針9(後述)に糸駒等の上糸供給源(図示せず)から供給される縫製材としての上糸t1(後述の図2参照)に張力を付与する糸調子機構41(同)と、糸調子機構41から縫針9へと延びる上糸t1の途中部が掛けられる天秤(図示せず)と、ベッド2のうち上記アーム頭部3Aの下方に位置する部分に針棒4に対向するように設けたルーパー土台5と、ベッド2のうちルーパー土台5の後方側に配設されたカッタ(下メス)6と、このカッタ6に対して上方より接離して揺動可能に設けた打ち抜き用ハンマー7と、ベッド2の上面部に設けられ被縫製物(=加工布、その他布以外にも皮革製品、エアバッグ等もありうる)Cがセットされる送り台8とを有している。なお、縫製装置Mのうち通常取り外し不可能に設けられる部分(例えばミシンテーブル1、ベッド2、アーム3、送り台8等)を、以降適宜、縫製装置本体M1と称する。
針棒4は、ミシンテーブル1上に設けたミシンモータ20(後述の図5参照)の駆動力により上下動可能に設けられ、この針棒4の下端には上記上糸t1が通される縫針9が取り付けられている。また針棒4の下方側の領域には針板(図示せず)が設けられ、この針板の針棒4の真下の位置に針孔(図示せず)が形成されている。そして、詳細な図示は省略するが、上記ミシンモータ20の駆動により回転される主軸10の回転力がカム機構(図示せず)により伝達され、所定幅分だけ左右に揺動しながら上下動される。この場合、主軸10の一回転により、針棒4は左側揺動位置と右側揺動位置とに2回上下動するようになっている。
図2は、上記糸調子機構41の詳細構造を表す拡大正面図である。図2において、糸調子機構41は、例えば上記アーム頭部3Aの機枠に植設された軸部材42に外嵌固定された固定糸調子皿43Aと、上記軸部材42に軸方向に移動自在に外嵌された可動糸調子皿43Bと、この可動糸調子皿43Bを固定糸調子皿43Aに向かって(図2中右側へ)押圧付勢する圧縮コイルバネ44と、可動糸調子皿43Bを固定糸調子皿43Aから離間するように(図2中左側へ)押動可能な押動部材45と、ラック・ピニオン機構46を介して押動部材45を略水平方向(図2中左右方向)へ移動するように駆動する糸調子用ステッピングモータ35と、軸部材42の図2中左端部に設けたバネ受け部47とを有している。
コイルバネ44は、上記バネ受け部47と可動糸調子皿43Bとの間において、上記軸部材42に外装されている。糸調子用ステッピングモータ35により押動部材45が図2中左側へ移動駆動されるほど、圧縮コイルバネ44との協働により可動糸調子皿43Aが固定糸調子皿43Bにより密着して圧接し、それらの間を通る上糸t1に張力が付与される。一方、糸調子用ステッピングモータ35により押動部材45が図2中右側へ移動駆動されるほど、1対の糸調子皿43A,43Bが離れた状態になり、上糸t1へ付与される張力が小さくなる(若しくは解放される)ようになっている。
図1に戻り、ルーパー土台5は2個のルーパー5Aを備えており、主軸10の回転がカム機構(図示せず)を介しルーパー5Aにも伝達され、上記針棒4の上下動と同期して駆動されるようになっている。
なお、これら針棒4及びルーパー土台5は、ベッド2内に設けられたθ方向駆動モータ(例えばステッピングモータ、後述の図5参照)22及びギヤ機構11からなる回動機構12により、それぞれ水平面において、鉛直軸回りに一体的に回動するようになっている。
ハンマー7は、ベッド2内に設けられたエアシリンダ24(後述の図5参照)及びこのエアシリンダ24への供給空気を制御する電磁切換弁25(同)を備えたハンマー駆動機構13(同)により駆動され、上記カッタ6との協働により、鳩目穴部とこれに連なる直線状の足穴部とからなる鳩目穴DH(後述の図19参照)を被縫製物(加工布)Cに形成するようになっている。
図3は送り台8付近の詳細構造を表す上面図である。
この図3及び図1において、送り台8は、全体として薄形の矩形箱状で、その下面のうち上記ルーパー土台5及びカッタ6に対応する部位が開放され、その上面には、開口部14aを有する金属製のクロスプレート14が設けられている。このクロスプレート14上には、開口部14aの左右両側に位置して被縫製物Cを押さえるための布押さえ(図示せず)が設けられている。
ここで、上記布押さえは、その被縫製物Cへの押圧力(押さえ圧)を調整可能となっている。図4は、その押さえ圧調整機構の詳細構造を表す断面図である。
図4において、布押さえを下端に装着した押さえ棒(図示せず)上にばね部材としての押えばね37が配設され、布押さえを常には下方に向かって付勢して被縫製物Cに対し押え圧力を付与するようになっている。
また、アーム頭部3A内の上記押さえ棒の上方領域の機枠には、略水平方向に(図4中左右方向に)進退移動可能なラック38aと、このラック38aと噛合するように回転可能に支持されたピニオン38bとが配設されている。ピニオン38bの中心にはねじ孔38cが形成され、このねじ孔38cには調節ねじ38dが上下動可能に螺合されるとともに、その一側のキー溝38dAに係合したキー38eによって回り止めされている。そして、上記押えばね37に挿通したピン38fの頭部が上記調節ねじ38dの下端に当接されている。またアーム頭部3A内の機枠にはラック38aに対応してサーボソレノイド(比例ソレノイド、あるいは圧電素子等でもよい)33が配設されており、このサーボソレノイド33のアーマチャ33Aの先端が上記ラック38aの図4中右側端部に固定されている。
そして、このサーボソレノイド33のアーマチャ33Aが図4中左側へ突出動作されるほど、ラック38a及びピニオン38bを介して調節ねじ38dが下方に移動され、押えばね37が圧縮されて布押さえを介して被縫製物Cに押え圧力が付与される。一方、サーボソレノイド33のアーマチャ33Aが図4中右側へ没入動作されるほど、ラック38aおよびピニオン38bを介し調節ねじ38dが上方に移動され、押えばね37が伸長されて被縫製物Cに対する布押さえ4の押え圧力が軽減(若しくは解放)されるようになっている。
なお、アーム頭部3A内にはラック38aに対応して検出器としてのポテンショメータ39(後述の図5も参照)が配設され、その作動軸39aの先端にはラック38aに噛合するピニオン39bが固定されている。そして、上記サーボソレノイド33のアーマチャ33Aの突出・没入動作に伴い被縫製物Cへの布押さえの押え圧力が変更される際には、ラック38aの左右動によりピニオン39bを介しポテンショメータ39の作動軸39aが回動され、そのポテンショメータ39からアーマチャ33Aの運動量に応じた検出信号が出力されるようになっている。
図3に戻り、送り台8は、ベッド2内に設けられたX方向駆動モータ28及びY方向駆動モータ30などからなる送り機構27(後述の図5参照)により、鳩目縫目DNの足部Fと平行なY方向(前後方向)と、このY方向に直交するX方向(左右方向)とに独立に水平移動可能になっている(後述の図5参照)。なお、上記X方向駆動モータ28及びY方向駆動モータ30はそれぞれ、例えばステッピングモータで構成されている。
なお、縫製装置Mはまた、図1には示していないが、後述するような縫い目ピッチなどを設定するための操作パネル15(後述の図5及び図6参照)と、足踏み式の起動・停止スイッチ(ペダル)16(後述の図5参照)と、各機構の作動を制御する例えばマイクロコンピュータよりなる制御装置17(同)と、縫製装置Mの上記主軸10に連係させて設けられ、主軸10の回転位相を検出して位相信号を出力するタイミング信号発生器18(同)と、無線タグ(詳細は後述)Tに記憶された無線タグ情報を非接触の無線通信を介して読み込むリーダ/ライタ(詳細は後述)50とを備え、これらもまたミシンテーブル1上に配設されている。
図5は、制御装置17を含む制御系を表す機能ブロック図である。
図5において、縫製装置Mの制御装置17は、CPU17Aと、ROM17Bと、RAM17Cと、それらにデータバス等の各種バスを介して接続された入力インターフェース17D及び出力インターフェース17Eとを有している。
入力インターフェース17Dには、上記起動・停止スイッチ16と、上記布押さえに連結された布押さえスイッチ19と、上記タイミング信号発生器18と、上記操作パネル15と、タグリーダ/ライタ50と、上記押さえ圧調整機構のサーボソレノイド33の動作を検出するポテンショメータ39とからの信号が入力される。
出力インターフェース17Eからは、上記ミシンモータ20の駆動信号を生成して出力する駆動回路21と、上記θ方向駆動モータ22の駆動信号を生成して出力する駆動回路23と、上記エアシリンダ24を駆動する上記電磁切換弁25の駆動信号を生成して出力する駆動回路26と、上記送り機構27の上記X方向駆動モータ28の駆動信号を生成して出力する駆動回路29と、上記Y方向駆動モータ30の駆動信号を生成して出力する駆動回路31と、上記操作パネル15と、上記サーボソレノイド33の駆動信号を生成して出力する駆動回路34と、上記糸調子ステッピングモータ35の駆動信号を生成して出力する駆動回路36と、タグリーダ/ライタ50とに対応する制御信号(駆動制御信号、表示制御信号等、詳細は後述)が出力される。
ROM17Bは、鳩目穴かがり縫いを実行するために予め複数個設定された基本プログラムとしての鳩目穴かがり縫い制御プログラムを格納したプログラム格納領域と、各かがり縫い制御プログラムを実行して鳩目穴かがり縫いの縫目DN(後述の図19参照)の縫製を行うときにその基準(標準)として各制御プログラムごとに予め設定された複数の縫目データ(縫製条件データ)を格納した縫目データ格納領域(縫目データメモリ)と、本実施形態の要部である後述の図9に示す制御手順を実行するためのメイン制御プログラムを格納したメイン制御プログラム格納領域とを備えている。
RAM17Cは、操作パネル15での設定に基づき上記複数の基準縫目データより選択され読み込まれた(詳細は後述)縫目データを、今回用いるデータとして格納するデータメモリ等を含む、各種のメモリやバッファ等が設けられている。
操作パネル15は、上記入力インターフェース17D及び出力インターフェース17Eを介して各種制御信号や操作信号の授受を行う。図6は、この操作パネル15の構造を表す正面図である。図6において、操作パネル15は、前述した鳩目縫目DNに関する「縫目長さ(足部Fの長さ寸法、以下単に縫目長さFと表記する)」選択表示ランプ15a及び「縫目ピッチ」選択表示ランプ15bと、鳩目部DEに関する「針数」選択表示ランプ15cと、上記布押さえを介し被縫製物Cに付与される押えばね37の押え圧力を(被縫製物Cの厚み等に応じて)設定する布押さえの「押さえ圧」選択表示ランプ15dと、上記糸調子機構41を介し上糸t1に付与される糸張力(テンション)を設定する「糸調子」表示ランプ15eと、針棒4の上下動速度に対応する「縫製速度」選択表示ランプ15fと、送り機構27による布送り速度に対応する「布送り速度」選択表示ランプ15gと、送り機構27による布送り時に関する「縫製領域寸法(縦)」「縫製領域寸法(横)」選択表示ランプ15h,15iと、それら9つの項目に対する数値を入力設定するにあたりそれぞれを順次切換えて指示するためのセレクトキー15jと、各項目に入力する数値を変更するための数値アップキー15k及び数値ダウンキー15m(例えば数値ダウンキー15mはエンターキーを兼ねる)と、設定された数値を含む各種表示(詳細は後述)を行うための表示部(例えばLEDディスプレイ)15Aとが設けられている。
ここで、本実施形態の最も大きな特徴の1つとして、縫製装置Mの縫製対象である被縫製物C(あるいは上糸t1やこれと協働する下糸t2(=両者合わせて縫製糸t)にも設けてもよい))に、その縫製作業時における縫製条件に関する各種設定値(この縫製装置Mでは操作パネル15によって設定される)を記憶可能な無線タグT1が備えられている。この無線タグT1は、例えば被縫製物Cに直接添付されており、具体的には、被縫製物Cに貼り付けられたラベルに設けられている。
また、縫製装置本体M1に着脱可能に設けられ、交換されて使用される少なくとも1つの取り付け(着脱)部品(この例では、カッター6、ハンマー7、布押さえ32)に対し、各部品に対応する無線タグ情報(例えば各部品の種類を表す種類識別情報、あるいは同一種類でも個体ごとに付される個体識別情報等)を記憶した無線タグT2が備えられている。この無線タグT2も、上記無線タグT1同様、例えば上記部品6,7,32に直接添付されており、具体的には部品6,7,32に貼り付けられたラベルに設けられている。
図7は、これら無線タグT1,T2の構成の一例を表す機能ブロック図である。図7において、無線タグT1,T2は、タグリーダ/ライタ50に備えられたアンテナ40(詳細は後述)とUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行うアンテナ部101と、このアンテナ部101に接続されたIC回路部100とを有している。
IC回路部100は、アンテナ部101により受信された搬送波を整流する整流部111と、この整流部111により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部112と、上記アンテナ部101により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部113(後述)に供給するクロック抽出部114と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部115と、上記アンテナ部101に接続された変復調部116と、上記整流部111、クロック抽出部114、及び変復調部116等を介して上記無線タグ回路素子10Aの作動を制御するための制御部113とを備えている。
変復調部116は、アンテナ部101により受信された上記タグリーダ/ライタ50のアンテナ40からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部113からの返信信号に基づき、アンテナ部101より受信された搬送波を反射変調する。
制御部113は、上記変復調部116により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部115において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部116により返信する制御等の基本的な制御を実行する。本実施形態では、IC回路部100は、制御部113を介しメモリ部115に記憶された情報の読み出し及び書き込みの双方が可能に構成されている。
図8は、上記タグリーダ/ライタ50の全体構成を表す機能ブロック図である。図8において、タグリーダ/ライタ50は、上記被縫製物C又は縫製糸T1,T2に添付された無線タグT1,T2のIC回路部100との間で例えばUHF帯等の高周波を用いて無線通信により信号の授受を行う上記アンテナ(装置側アンテナ部)40と、このアンテナ40を介し無線タグT1,T2のIC回路部100の情報(無線タグ情報)へアクセスする(読み出し及び書き込みを行う)ための高周波回路51と、無線タグT1,T2のIC回路部100から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに無線タグT1,T2のIC回路部100へアクセスするためのアクセス情報を生成するアクセス情報生成部としても機能する信号処理回路52と、上記高周波回路51及び信号処理回路52等を含むタグリーダ/ライタ50全体の動作を制御するための制御回路60とを備えている。
制御回路60は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。また制御回路60は、入出力インターフェイス61により上記縫製装置Mの制御装置17に接続され、制御装置17との間で情報のやりとりが可能となっている。
高周波回路51は、アンテナ40を介し無線タグT1,T2に対して信号を送信する送信部53と、アンテナ40により受信された無線タグT1,T2からの反射波を入力する受信部54と、方向性結合器55とから構成される。
送信部53は、無線タグT1,T2のIC回路部100の無線タグ情報にアクセスする(読み出し及び書き込みを行う)ための搬送波を発生させる搬送波発生部として機能する水晶振動子56、PLL(Phase Locked Loop)57、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)58と、上記信号処理回路52から供給される信号に基づいて上記搬送波発生部により発生させられた搬送波を変調(例えば「TX−ASK」信号に基づく振幅変調)する搬送波変調部として機能する第1ミキサ71と、その第1ミキサ71により変調された変調波を増幅する変調波増幅部として機能する第1アンプ72とを備えている。そして、上記搬送波発生部により発生される搬送波は、好適にはUHF帯の周波数を用いており、上記第1アンプ72の出力は、方向性結合器55を介してアンテナ40に伝達されて無線タグT1,T2のIC回路部100に供給される。
受信部54は、アンテナ40により受信された無線タグT1,T2からの反射波と上記搬送波発生部により発生させられた搬送波とを掛け合わせる第2ミキサ73と、その第2ミキサ73の出力をバンドパスフィルタ74を介し入力するとともに増幅して第1リミッタ75に供給する第2アンプ76と、上記アンテナ40により受信された無線タグT1,T2からの反射波と上記搬送波発生部により発生された後に位相が90°ずらされた搬送波とを掛け合わせる第3ミキサ77と、その第3ミキサ77の出力をバンドパスフィルタ78を介し入力するとともに増幅して第2リミッタ79に供給する第3アンプ80とを備えている。そして、上記第1リミッタ75から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ79から出力される信号「RXS−Q」は、上記信号処理回路52に入力されて処理される。
このとき、第1アンプ76及び第3アンプ80の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)81にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が信号処理回路52に入力されるようになっている。このようにして、本実施形態のタグリーダ/ライタ50では、I−Q直交復調によって無線タグT1,T2からの反射波の復調が行われる。
上記構成の無線タグT1,T2に記憶された上記無線タグ情報は、各被縫製物C又はカッタ6、ハンマー7、布押さえ32(以下適宜、部品6,7,32のように表記する)が縫製装置本体M1側(あるいは縫製装置本体M1に取り付けた部材側)に装着されたとき(又は装着させようと接近したとき)にタグリーダ/ライタ50によって読み出され、その読み出された情報が縫製装置Mの制御装置17へと出力される。
また、操作パネル15側の適宜の操作に基づき(詳細は後述)、タグリーダ/ライタ50によって、各被縫製物Cを縫製したときの縫製条件に係わる各種設定値が、縫製装置本体M1側(あるいは縫製装置本体M1に取り付けた部材側)に装着された状態(又は接近状態)の被縫製物Cから、上記構成の無線タグT1のIC回路部100へ書き込まれ、記憶保持される。
図9は、上記読み出した情報に基づき、縫製装置Mの制御装置17が実行する制御手順を表すフローチャートである。
図9において、まずステップS10で、上記のようにリーダ/ライタ50で読み出した被縫製物Cに添付された無線タグT1の無線タグ情報(縫製作業時における縫製条件に関する各種設定値情報)を取り込んで識別する。この場合、この被縫製物Cに対し既に他の縫製装置(上記縫製装置Mと同一機種の場合もあり得るし、縫製装置Mと同一メーカの他機種の場合もあり得るし、さらには他メーカの機種の場合もあり得る)によって既に縫製がなされている場合はそのときの各種設定値を取り込む(その意味では被縫製物でもあるが、既に縫製が行われた縫製物でもある)。この被縫製物Cに対しまだ縫製が一切行われていない場合は、何も取り込まないか、例えば0データを取り込む。
その後、ステップS20で、その識別した各種設定値を上記RAM17Cに格納し記憶させた後、ステップS30で、その記憶した各種設定値を表す表示制御信号を操作パネル15に出力する。
図10は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。この図10では、「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」の設定値をそれぞれ示しており、さらにこの設定を確認する「確認」ボタンを併せて表示している。
この表示を見た操作者が設定を確認入力する操作を行った(「確認」ボタンをクリックした)ら、次のステップS40の判定が満たされ、ステップS50に移る。
ステップS50では、上記のようにリーダ/ライタ50で読み出した無線タグT2の無線タグ情報(例えば各部品の種類を表す種類識別情報、あるいは同一種類でも個体ごとに付される個体識別情報等)を取り込んで識別する。
その後、ステップS60で、予めROM17Bに記憶されていた所定の組み合わせ適否参照テーブルを参照しつつ、上記ステップS50で認識した無線タグ情報より識別される部品6,7,32に関し、相互の組み合わせが適正であるかどうかを判定する。
図11及び図12は、上記組み合わせ適否参照テーブルの一例を表すものである。
図11は、布押さえ32とカッタ6とのサイズ(L,M,S)別の組み合わせの適否の一例を表すものであり、図12は、ハンマー7とカッタ6とのサイズ(L,M,S)別の組み合わせの適否の一例を表すものである。
図11において、相対的に小さなSサイズの布押さえ32(図13(a)参照)に対しては、相対的に小さなSサイズのカッタ6(図14(a)参照)のみが適合し、相対的に大きなLサイズ(図14(c)参照)及び中間のMサイズ(図14(b)参照)のカッタ6は適合しない。またMサイズの布押さえ32(図13(b)参照)に対しては、Sサイズ及びMサイズのカッタ6が適合し、Lサイズのカッタ6は適合しない。一方Lサイズの布押さえ32(図13(c)参照)に対しては、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズのカッタ6いずれもが適合する。以上をまとめると、S,M,Lの3段階サイズ表記において、カッタ6側からみて布押さえ32のサイズが同じかそれよりラージサイズである場合が適合し、布押さえ32のサイズが小さい場合には適合しない。これは、布押さえ32が相対的にスモールサイズであると、鳩目穴DHの形成時にカッタ6が布押さえ32に干渉してしまうからである。
図12においても同様であり、S,M,Lの3段階サイズ表記において、カッタ6側からみてハンマー7のサイズが同じかそれよりラージサイズである場合が適合し、ハンマー7のサイズが小さい場合には不適合となっている。
図9に戻り、上記のようにしてステップS60の判定が行われ、組み合わせが適正であった場合には判定が満たされ、ステップS70に移る。
ステップS70では、操作パネル15の表示部15Aに適正である旨の表示をさせるための表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介して出力する。図15は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。図15に示すように、この場合部品6,7,32相互の組み合わせに問題がない旨と、これに応じてそのまま縫製データの作成に移行してよいかどうかが表示され、これを確認するための「このままデータを作成する」「設定値を修正する」ボタンを併せて表示する。
この表示を見た操作者が設定値を修正する操作を行った(「設定値を修正する」ボタンをクリックした)ら、次のステップS80の判定が満たされず、ステップS90に移る。ステップS90では、操作パネル15におけるキー15j,15k,15mにより設定された上記縫製条件「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」の設定値を取り込んで識別する。その後、ステップS100でその修正・変更された設定値の表示をさせるための表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介して出力する。
図16は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。図16において、この例では、前述のステップS10において読み込んだ各設定値(10参照)のうち、縫目長さFについて操作パネル15によって修正・変更が行われ、その値が△△[mm]となったことを示しており、さらにこの変更に同意する「はい」ボタン、同意しない「いいえ」ボタンを併せて表示している。この表示を見た操作者が変更を了解する操作を行った(「はい」ボタンをクリックした)場合は、次のステップS110の判定が満たされ、ステップS120でその変更後の設定値を上記RAM17Cに格納し記憶させた後、ステップS130に移る。
なお、前述の図15の表示を見た操作者が設定を修正しないとする操作を行った(「このままデータを作成する」ボタンをクリックした)場合は、ステップS80の判定が満たされ、そのままステップS130に移る。
ステップS130では、これまでの上記縫製条件に係わる各種設定値、タグリーダ/ライタ50による無線タグ情報(種類識別情報)、及びそれらによる適合性の判定結果に応じて、前述のROM17Bのプログラム格納領域に格納された複数の鳩目穴かがり縫い制御プログラムの中から最適なものを選択して読み出す(詳細には、CPU17Aが縫製制御信号として上記制御プログラムを選択する選択信号を生成してROM17Bに出力し、ROM17Bよりこれに応じた制御プログラムが読み出される)。また、それに対応して前述のROM17Bの縫目データ格納領域に格納された複数の縫目データ(縫目条件データ)の中から今回の縫製に最も適したものを適宜選択し(詳細には、CPU17Aが縫製制御信号として上記縫目データを選択する選択信号を生成してROM17Bに出力し、ROM17Bよりこれに応じた縫目データが読み出される。なお、読み出した縫目データにさらに加工を加えるようにしてもよい)、今回の鳩目穴かがり縫いにおける縫製データ(縫目データ)を作成する。この縫目データでは、例えば、所定の針数(この例では17針)のそれぞれについて内針に対する外針の針落ち位置を決定するために、X方向駆動モータ28とY方向駆動モータ30とθ方向駆動モータ22のそれぞれの駆動パルス数が設定される。
図17は、このステップS130における縫製データ作成の詳細手順を表すフローチャートである。この図17に示すように、ステップS131で先ず鳩目穴かがり縫い1針目の縫目データを作成して、この縫目データを例えばRAM17Cのデータメモリに新たに格納し、更にステップS132で2針目の縫目データを同様に作成して格納し、以降同様に3針目、4針目と進み、最終的に、所定の針数N+1(この例ではN=17)となるN+1針目の縫目データを作成して格納し(ステップS133)この手順を終了する。
図18は、以上のようにして作成した鳩目穴かがり縫いの縫目データの一例の内容を表す説明図であり、図19は、加工布に形成された上記鳩目穴かがりの縫目の詳細構成を表す上面図である。
これら図18及び図19において、この例では、17針のうち1針目1N〜5針目5Nが右側足部FRのかがり縫いのための縫目データであり、6針目6N〜13針目13Nが鳩目部DEのかがり縫いのための縫目データであり、14針目14N〜17針目17Nが左側足部FLのかがり縫いのための縫目データである。
なお、図19においては、例えば、1針目1Nの内針を〈1〉、1針目の外針を(1)で示している。また、送り台8の移動方向として、X方向のうち送り台8の左方向移動を「+」側として定義し、更にY方向のうち前方向移動を「+」側として定義して示している。
図9に戻り、上記のようなステップS130における縫製データ作成が終了すると、ステップS140に移り、上記図18で示した内容と同等の内容の表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介して出力し、操作パネル15の表示部15Aに対応する表示を行わせる。
その後、ステップS150に移り、起動・停止ペダル16からの操作信号を識別し、ペダル16が踏み込まれたか(ONされたか)どうかを判定する。判定が満たされたら、ステップS160に移り、RAM17Cのデータメモリに格納した縫目データを1針目ごとに読み出し、各縫目データを上記ROM17Bのプログラム格納領域から選択された読み出された鳩目穴かがり縫い制御プログラムに当てはめながら、モータ20,22,28,30,35、サーボソレノイド33、及び電磁切換弁25に対し縫製制御信号としての対応する駆動制御信号を生成して出力し、それぞれを駆動して縫製装置Mに対応する動作を行わせ、縫製処理を実行する。すなわち、先の図19に示したように、第1番目の針目1Nから第17番目の針目17Nまでの運針により、右側足部FRと鳩目部DEと左側足部FLとからなる鳩目穴かがり縫目DNが縫製される。このステップS160による縫製処理が終了したら、ステップS170に移る。
ステップS170では、上記縫製作業時の上記各種設定値を被縫製物Cに添付された無線タグT1に記憶させる(書き込む)かどうかを確認するための表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介して出力する。
図20は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。図20において、直前に終了した縫製作業についての各設定値、「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」の値を再び示すとともに、この値を無線タグT1に記憶させることに同意する「はい」ボタン、同意しない「いいえ」ボタンを併せて表示している。
この表示を見た操作者が記憶(書き込み)処理を了解する操作を行った(「はい」ボタンをクリックした)場合は、次のステップS180の判定が満たされ、ステップS190に移る。ステップS190では、上記各設定値(縫製作業時における縫製条件に関する各種設定値情報)を、リーダ/ライタ50によって、被縫製物Cに添付された無線タグT1へ送信し書き込み、このフローを終了する。
なお、上記図20に示す表示を見た操作者が記憶(書き込み)処理を了解しない操作を行った(「いいえ」ボタンをクリックした)場合は、上記書き込み処理を行わず、ただちにこのフローを終了する。
一方、先のステップS60で組み合わせが適正でないと判定された場合、ステップS200に移る。ステップS200では、ステップS50において認識した無線タグ情報より、取り付けられた(又は接近された)部品6,7,32が縫製装置Mの製造メーカの純正品であるかどうかを判定する。部品6,7,32のすべての無線タグ情報が純正品である旨が認識された場合、ステップS210に移る。
ステップS210では、上記不適合の回避を行うために部品交換を行うべきであることを明示するための表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介し操作パネル15へ出力する。図21は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。この図21では、一旦電源を切ってカッタ6をLサイズからSサイズに変えるべきであることを示しており、さらにこの設定変更に同意する「はい」ボタン、同意しない「いいえ」ボタンを併せて表示している。
この表示を見た操作者が設定変更を了解する操作を行った(「はい」ボタンをクリックした)場合は、次のステップS220の判定が満たされ、ステップS230に移って縫製装置M全体の電源をOFFにし、このフローを終了する。この電源OFFによって操作者は部品交換が可能となる。また操作者が設定変更を了解しないとする操作を行った(「いいえ」ボタンをクリックした)場合は、ステップS220の判定が満たされず、ステップS240に移る。
ステップS240では、予めROM17Bに記憶されていた所定の組み合わせ適否参照テーブルを参照しつつ、上記不適合が、部品6,7,32のいずれもについて交換を行わず取り付け対象として予め想定されたものでない部品用に予め設定された縫製装置M側の縫製動作制限を実行することのみによって回避可能であるかどうかを判定する(詳細な説明を省略するが、このような回避可能性の有無についての情報も上記適否参照テーブルに組み込まれている)。
上記動作制限のみによっては回避できない場合、部品交換を行うべきであることを操作者に報知するために上記ステップS210に戻り同様の手順を繰り返す。上記動作制限のみによって回避可能である場合、ステップS240の判定が満たされてステップS250に移る。
ステップS250では、上記回避を行うための方策を明示するための表示制御信号を生成して出力インターフェイス17Eを介し操作パネル15へ出力する。図22は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。この図22では、現在の設定のうち、縫製速度v1の設定を○○[mm/s]→△△[mm/s]に強制的に制限することを予告して示し、さらにこの動作制限を了解する「はい」ボタン、同意しない「いいえ」ボタンを併せて表示している。
この表示を見た操作者が動作制限を了解しないとする操作を行った(「いいえ」ボタンをクリックした)場合は、ステップS260の判定が満たされずステップS250に戻って同様の表示を行い、動作制限を了解したとする操作を行った(「はい」ボタンをクリックした)場合は、ステップS260の判定が満たされてステップS130に移り、前述と同様、前述のROM17Bのプログラム格納領域より当該動作制限に対応する動作制限下の縫製プログラム(動作制限プログラム)を選択して読み出す。また、それに対応して縫目データ格納領域に格納された複数の縫目データの中から対応するものを適宜選択し、今回の動作制限下の鳩目穴かがり縫い縫製データを作成する。すなわち、上述の例で言えば、縫製速度v1△△[mm/s]となるような修正を加えた縫製データを作成し、以降前述と同様のステップS140〜ステップS190の手順を実行する。
一方、先のステップS200において、部品6,7,32のうちいずれか1つの無線タグ情報が純正品でない旨が認識された場合、あるいは無線タグ情報自体をタグリーダ/ライタ50で読み込めなかった場合(認識情報がない場合)は、ステップS200の判定が満たされず、ステップS270に移る。
ステップS270では、予めROM17Bに記憶されていた所定の組み合わせ適否参照テーブルを参照しつつ、上記不適合が、上記設定値の変更を行わず装着されている(認識できていない)部品を操作者が肉眼で確認するという条件で回避可能としてよいかどうかを判定する(詳細な説明を省略するが、このような回避可能性の有無についての情報も上記適否参照テーブルに組み込まれている)。
上記操作者側の確認によって回避可能としてよい場合、ステップS270の判定が満たされてステップS280に移り、その操作者側で行うべき確認の内容を明示するための表示制御信号(縫製時他に必要な準備作業をガイダンス表示するための信号に相当する)を生成して出力インターフェイス17Eを介し操作パネル15へ出力する。図23は、このときに表示部15Aに表示される画面表示の一例を表す図である。この図23において、この例では、カッター6の無線タグ情報が認識できていない場合で、そのカッター6の鳩目穴DH形成時に、布押さえ32と干渉しないかどうかを確認するよう要請する画面となっている。またこの確認要請を了解する「はい」ボタン、同意しない「いいえ」ボタンを併せて表示している。
この表示を見た操作者が確認要請を了解しないとする操作を行った(「いいえ」ボタンをクリックした)場合は、ステップS290の判定が満たされずステップS280に戻って同様の表示を行い、確認要請を了解したとする操作を行った(「はい」ボタンをクリックした)場合は、ステップS290の判定が満たされてステップS130に移り、当該確認によって上記干渉が生じないという前提で前述と同様にして縫製データを作成する。そして、以降、前述と同様のステップS130〜ステップS190の手順を実行する。
上記操作者側の確認によって回避可能とできない場合、ステップS270の判定が満たされずステップS300に移る。
ステップS300では、予めROM17Bに記憶されていた所定の組み合わせ適否参照テーブルを参照しつつ、上記非純正品に関する不適合が、当該部品(上記の例ではカッター6)の交換を行わず縫製装置M側において非純正品の部品用に予め設定された縫製動作制限を実行することのみによって回避可能であるかどうかを判定する(詳細な説明を省略するが、このような回避可能性の有無についての情報も上記適否参照テーブルに組み込まれている)。
上記動作制限によっては回避できない場合、部品交換を行うべきであることを操作者に報知するために上記ステップS210に戻り同様の手順を繰り返す。上記動作制限によって回避可能である場合、ステップS300の判定が満たされてステップS250に移り、前述と同様、その回避を行うための方策を明示するための表示制御信号を生成して操作パネル15へ出力し、以降同様の手順を行う。
以上において、被縫製物Cが、各請求項記載の被加工物を構成し、縫製装置Mが、被加工物を加工する加工装置を構成する。また、無線タグT1が、被加工物に添付した無線タグを構成し、無線タグT2が、装置本体に直接又は間接的に取り付けられる取り付け部品に関連づけて取り扱われるように設けられた無線タグを構成する。
また、タグリーダ/ライタ50の高周波回路51の送信部53が、被加工物に添付した無線タグに無線通信を介し非接触で送信し書き込み可能な加工情報書き込み手段を構成する。さらに高周波回路51の受信部54が、別の加工装置で加工された被加工物に添付した無線タグに記憶された当該加工時の加工条件に関する情報を、無線通信を介し非接触で読み込む加工情報読み込み手段を構成するとともに、取り付け部品に関連づけて取り扱われるように設けられた無線タグより、対応する取り付け部品の種類識別情報又は個体識別情報を読み込む部品情報読み込み手段をも構成し、さらに、被加工物としての被縫製物又は縫製材に関連づけて取り扱われるように設けられた無線タグより、対応する被縫製物又は縫製材の種類識別情報又は個体識別情報を読み込む縫製情報読み込み手段をも構成する。さらに、タグリーダ/ライタ50全体は、装置本体に直接又は間接的に取り付けられる取り付け部品を識別する検出手段をも構成する。
また、制御装置17(特に図9のフローのステップS160及びステップS170の手順)は、被加工物の加工開始後、所定の段階になったら無線タグへ加工条件に関する情報の書き込みを行うように加工情報書き込み手段を制御する書き込み制御手段を構成する。さらに制御装置17(特に図9のフローのステップS250、ステップS260を経てステップS130の手順)は、上記部品情報読み込み手段で読み込んだ種類識別情報又は個体識別情報が装置本体の取り付け対象として予め想定された取り付け部品に対応するものでない場合、装置本体の動作に対し、想定外部品用に予め設定された所定の制限を加えるための信号を生成する第1制限信号生成手段を構成する。また、制御装置17のRAM17Cが、上記加工情報読み込み手段で読み込んだ加工条件に関する情報を記憶する記憶手段を構成する。
また、操作パネル15の数値ダウンキー15mが、無線タグへ加工条件に関する情報の書き込みを行ってよいか否かの確認操作入力を行うための確認操作手段を構成し、セレクトキー15j、数値アップキー15k、及び数値ダウンキー15mが、加工情報読み込み手段で読み込んだ又は記憶手段に記憶した別の加工装置における加工条件に基づき変更操作入力を行うための変更操作手段を構成する。
以上説明した本実施形態の作用効果を以下に説明する。
本実施形態においては、縫製作業者が縫製装置Mを用いて被縫製物Cへの縫製作業を開始し、縫製が終了すると、操作パネル15からの手動操作入力に応じ、図9に示したステップS190においてタグリーダ/ライタ50によってそのときの縫製条件に関する各設定値情報(「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」の各値)が、被縫製物Cに添付された無線タグT1に書き込まれる。これにより、その後その無線タグT1を添付された被縫製物Cを他の者が入手した際、被縫製物Cの性状を実地に観察できるのみならず、例えば自己の作業する縫製装置Mに備えられたタグリーダ/ライタ50で先に書き込まれた縫製条件情報をその無線タグT1より読み込むことで、当該性状の被縫製物Cがどのような縫製条件で縫製されたのかを詳細に知ることができる。すなわち、縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解することができる。
この結果、例えば図24に示すように、メーカ(縫製装置Mmを所有)から遠く離れたユーザの縫製装置Muのもとで縫製不良が発生した場合であっても、縫製不良fdが発生したときの縫製条件情報がその縫製不良fdのある被縫製物Cu(以下適宜、縫製不良品という)に付随する無線タグT1に書き込まれていることから、メーカ側からわざわざ当該遠方ユーザのもとまでサービスマンが赴いたり縫製装置Mu全体をメーカに送ってもらったりしなくても、縫製不良品Cu及び無線タグT1(あるいは無線タグT1だけでもよい)をメーカに送付してもらうだけで(メーカ側縫製装置Mmで無線タグT1から縫製条件情報を読みとることで)その縫製不良fdの発生原因をメーカ側で容易に究明することができる。そしてさらに、その縫製不良品Cuに対しメーカ側の縫製装置Mmで正しい縫製条件にて正しい縫製fcrを施せば、その正しい縫製条件情報が付随する無線タグT1に書き込まれ教示される(正しい縫製条件のガイダンス)ので、メーカから送り返してもらった当該ユーザはその正しい縫製条件の教示を自己の縫製装置Muで無線タグT1から読みとって取得し改めて正しい縫製を行うことができる。なお、ユーザ側で全く縫製方法が不明な場合も、未縫製の被縫製物Cu(無線タグT1つき)をメーカ側に送付すれば、メーカ側で縫製を行うとともにその縫製方法を無線タグT1に書き込み、送り返すことで、縫製条件を教示する(新規縫製条件のガイダンス)ことも可能である。
このとき、本実施形態においては、ユーザ側からのデータを図9のフローのステップS10で読み込んだ後、ステップS80〜ステップS120においてその読み込んだデータを修正する形で正しい縫製条件を作成できるので、上記教示作業をより容易に行うことができる(但し、本発明の本来の効果である縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解する、という効果を得る限りにおいては、このような読み込みデータ修正機能は必ずしも必要としない)。
また例えば、図25に示すような多数台の縫製装置Mを備えた縫製工場において、優れた縫製ノウハウを持つひとりの縫製作業者(縫製装置M−0を使用)がいた場合、そのノウハウを用いて縫製装置M−0にて優れた縫製fexを備えた被縫製物C−0(以下適宜、縫製見本品という)を製作すれば、縫製fexのある縫製見本品C−0を製作したときの優れたノウハウが縫製装置M−0において縫製条件情報としてその縫製見本品C−0に付随する無線タグT1に書き込まれている。この結果、他の縫製作業者(この例では縫製装置M−1,M−2,M−3を使用)はその無線タグT1つきの縫製見本品C−0(あるいは無線タグT1だけでもよい)を入手しその優れたノウハウによる縫製条件を自己の縫製装置M−1,M−2,M−3にて無線タグT1から読みとるだけで、その優れた縫製ノウハウを容易に会得し同様の優れた縫製fexを自己の縫製装置M−1,M−2,M−3で再現することができる。
なおこのとき、各縫製装置M−1,M−2,M−3と縫製見本品C−0が製作された縫製装置M−0との寸法誤差や取付精度誤差さらに摩擦や摩耗状況等の個体差によって、そのままでは微妙に同一の縫製完成度が得られない可能性があるが、本実施形態では、前述のようにステップS80〜ステップS120においてその読み込んだデータに対し新たに必要な加工条件の修正・更新・追加等を行うことで上記個体差により生じうる縫製完成度の低下を補えるので、確実に優れた縫製を行うことができる。
さらにこのとき、特に縫製装置M−0側と縫製装置M−1,M−2,M−3側とで距離が離れていたり普段の使用状況・態様等が異なっていたりあるいは同一メーカで似ているが違う機種であったりした場合等においては、縫製装置M−1,M−2,M−3側のすべてで縫製装置M−0側から縫製見本品C−0を直接取得しなくてもよい。すなわち、縫製装置M−1でまず縫製装置M−0からの縫製見本品C−0を直接取得し、無線タグT1の縫製条件を若干修正し縫製を行って無線タグT1に修正データを記憶し、その修正データを用いて縫製装置M−2でさらに若干修正し縫製を行って無線タグT1に修正データを記憶し…、といったように順次累積して修正を行うようにすれば、より修正の度合いが少なく済んで有効であり、また縫製装置M−2,M−3では既に一度修正等をしている分さらに確実に優れた縫製完成度が得られる効果もある(但し、本発明の本来の効果である縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解する、という効果を得る限りにおいては、以上のような読み込みデータ修正機能は必ずしも必要としない)。
また本実施形態においては、部品6,7,32として取り付け対象として予め想定されたものでない(非純正品又は同一メーカ品であるが取り付け想定対象外)ものである場合(無線タグT2の情報を認識できない場合を含む)には、ステップS240、ステップS300よりステップS250においてそのような部品用に所定の動作制限を加えるような動作制限下の制御プログラム及び縫製データを選択し、最終的な縫製データを作成してステップS130で縫製処理を行う。これにより、例えば純正品等の取り付け想定対象外の部品6,7,32が用いられても縫製が不能となることはなく、耐久性の低下による故障等の発生を招かないようにしつつ縫製不良を未然に防ぎ必要最小限の縫製性能を確保することができる。この結果、少なくとも縫製不能となる場合に比べれば、縫製作業効率の向上を図ることができる。
特に、上記動作制限を行う際、その動作制限を加える前に、ステップS250において、動作制限を加えてよいかどうかの確認入力を促す表示を行う。これにより、それ以降、動作制限を行い本来の性能は出にくくなる旨を予め操作者に確実に認識させることができる。この結果、縫製不良や耐久性の低下による故障発生を招くような無理な使用をなるべく回避させることができるので、縫製作業効率の低下を防止することができる。なお、本発明の本来の効果である縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解する、という効果を得る限りにおいては、上記のような動作制限機能は必ずしも必要としない。
なお、上記実施形態においては、縫製条件に関する各種設定値、すなわち「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」の各値を、被縫製物Cに添付された無線タグT1に書き込んだが、このときの無線タグT1のIC回路部100への書き込みの態様は、書き込みのたび上書き更新する(毎回初期化して新たに書き込む、あるいは各回蓄積するが最後のデータしか読めないようにする等)ようにしてもよいし、書き込みのたびにすべての情報を読み出し可能に無線タグT1に次々と蓄積格納するようにしてもよい。前者の場合は、最後に書き込まれた情報を、縫製条件に関する最新情報又は最良情報として自動的に無線タグT1に記録することができ、後者の場合は、書き込み順序や時期を問わず、書き込まれた縫製条件情報すべてをもらさず無線タグT1に記録することができる。
また、上記実施形態においては、縫製作業終了後に縫製条件に関する各種設定値情報を検出して無線タグT1に書き込んだが、これに限られず、それより前の縫製作業がほぼ終了した段階等であってもよい。要するに、当該被縫製物Cの性状が形成されたその原因となった縫製処理と明確に関連づけが可能な段階であればよいため、そのような関連づけが生じるように予め定められた縫製作業開始後の所定の段階であれば足りる。
さらに、以上においては、無線タグT1は被縫製物Cに貼り付けられたラベルに備えられていたが、これに限られず、被縫製物Cの梱包(包装)、あるいは被縫製物Cの付属書類等に貼り付けたラベルに備えられていてもよい。同様に、無線タグT2は部品6,7,32に貼り付けられたラベルに限られず、部品6,7,32の梱包(包装)、あるいは部品6,7,32の付属書類等に貼り付けたラベルに備えられていてもよい。またラベルを介さず直接貼り付けてもよく、さらに貼り付けに限られず被縫製物Cに縫目(糸)で固定したりホッチキスで固定する等でもよい。いずれにしても、被縫製物Cや部品6,7,32に付随する(付随して取り扱われるように)設けられていれば足りる。
また、以上においては、無線タグT1には、縫製条件に関する各種設定値情報のみが記憶されていたが、これに限られない。すなわち、その縫製条件情報が記憶されたときに用いられた縫製装置の取付部品情報(例えば上記縫製装置Mの部品6,7,32に関する種類識別情報や個体識別情報等)を無線タグT1が予め記憶されていて、これをタグリーダ/ライタ50で上記縫製条件情報と共に読み出すようにしてもよい(この場合タグリーダ/ライタ50の高周波発生回路51の受信部53は、別の加工装置で加工された被加工物に付随する無線タグに記憶された当該加工時に用いた取り付け部品に関する情報を、無線通信を介し非接触で読み込む加工時部品情報読み込み手段を構成する)。そして、そのような取付部品6,7,32に係わる情報に基づき、制御装置17が、別途縫製装置Mに設けた所定の報知手段にてその取り付け部品6,7,32に係わる報知を行うようにしてもよい。
具体的には、上記縫製条件情報書き込み時の取り付け部品6,7,32のラインナップを操作パネル15の表示部15Aに単に表示するだけでもよいし、無線タグT2より読み込んだ現在取り付けられている部品6,7,32の種類識別情報や個体識別情報と対比して足りないもの、種類や大きさ、規格が合致しないものを表示してもよいし、そのような場合に警告等を行ってもよい。またこれらの報知・警告等は、操作パネル表示部15Aに対応する表示を行うようにしてもよいし、ブザー等を駆動吹鳴するようにしてもよい。このような報知を行うことにより、例えば先に述べた縫製見本品C−0やメーカ側より送付された正しい縫製fcrつきの被縫製物Cuと同等の良好な縫製完成度を実現するため必要な取り付け部品6,7,32を確実に揃えることができる効果がある。また上記報知は、縫製装置Mの動作中においても実行可能となるように構成することが好ましい。この場合、縫製装置Mを停止させることなく縫製時に必要な取り付け部品6,7,32の報知を行うことができるので、生産性を向上できる効果がある。
さらに上記の場合には、今回使用した縫製装置Mにおける取り付け部品6,7,32に係わる上記種類識別情報や個体識別情報を、図9のフローのステップS190において縫製条件情報と共に無線タグT1に書き込むようにしてもよい。これにより、この後に当該無線タグT1より情報を読み込んださらに他の縫製作業者が、今回この縫製装置Mで縫製された被縫製物Cと同等の良好な縫製完成度を実現するために必要な取り付け部品6,7,32を確実に特定することが可能となる。
さらに、無線タグT2に種類識別情報や個体識別情報を記憶した取り付け部品6,7,32において、各部品6,7,32ごとの使用に係わる情報(使用履歴等)を管理するようにすることも考えられる。すなわち、無線タグT2が記憶した対応部品6,7,32の個体識別情報を縫製装置M側への装着時(又は接近時)にリーダ/ライタ50で読み出し、これに応じて、部品6,7,32の個体ごとに、その使用に関わる(使用されたことに関連する)情報(=当該部品が縫製装置Mにて使用された回数・使用時間等の使用履歴情報や、使用された時における各モータ20,22,28,30,35、サーボソレノイド33及びエアシリンダ24等の動作状態量の情報等)をリーダ/ライタ50により無線タグT2に書き込み記憶させる(この場合、高周波回路51の送信部53が、取り付け部品が装置本体に使用されたことに関連する情報を、取り付け部品に対応する無線タグに対し非接触で無線通信を介し送信し書き込む使用情報書き込み手段を構成する)。あるいは、無線タグT2側に書き込まず制御装置17のRAM17C等の適宜の記憶手段に記憶させてもよい。このときのデータの態様は、例えば使用履歴情報の例で言えば単位使用データを積み上げて累積していくようにしてもよいし、使用時間データを毎回更新するようにしてもよい。
この場合、図9のフローのステップS50において、上記部品6,7,32に関する種類識別情報や個体識別情報に加えて上記使用履歴情報を読み込み、上記のようにしてその累積、更新を行う。またその際、タグリーダ/ライタ50を介し無線タグT2より読み込んだ使用に係わる情報に応じ、制御装置17が、使用に関する情報が予め設定された時間的条件に達している(例えば部品6,7,32等の使用寿命が近い等)場合に、前述した図9のステップS250、ステップS260よりステップS130の手順と同様にして、縫製装置本体M1に所定の動作制限を加えるようにしてもよい。さらにその際、タグリーダ/ライタ50により無線タグT2より読み込んだ使用履歴情報に応じて、制御装置17が、例えば部品6,7,32の使用寿命が近い等の場合に所定の警告表示を行うための表示制御信号を生成し操作パネル15に出力するようにしてもよい。
なお、上記使用に係わる情報を用いる変形例では、制御装置17、(特に図9のステップS250、ステップS260よりステップS130の手順)が、装置本体の動作に対し、予め設定された所定の制限を加えるための信号を生成する第2制限信号生成手段を構成する。また、タグリーダ/ライタ50の高周波回路51の受信部54が、取り付け部品に関連づけて取り扱われるように設けられた無線タグより、対応する取り付け部品の使用履歴に関連する使用情報を読み込む使用情報読み込み手段を構成する。
この変形例においては、部品6,7,32ごとの使用に関わる情報を記憶することにより、同種類の部品6,7,32でも個体ごとにその品質寿命(特に耐久性)を使用状況に応じて個別かつ適切に管理し、耐久性低下を防止できる。また、使用に応じて部品6,7,32の品質寿命が近い場合、操作パネルに所定の警告表示を行うことでそのことを操作者に適切に認識させることができる。この結果、耐久性が低下する前に速やかに当該部品6,7,32を交換させることができるので、縫製作業効率の低下を防止することができる。
さらに、例えば使用寿命が到来した(又は近づいた)取り付け部品6,7,32の場合に予め設定された上記所定の動作制限を加えることにより、そのような耐久性に難のある部品が用いられても縫製装置Mが動作不能となることはなく、耐久性の低下による故障等の発生を招かないようにしつつ、必要最小限の装置性能を確保することができる。特に、上記動作制限を行う際、その動作制限を加える前に、ステップS250において、動作制限を加えてよいかどうかの確認入力を促す表示を行うこととなるので、それ以降、動作制限を行い本来の性能は出にくくなる旨を予め操作者に確実に認識させることができる。この結果、縫製不良や耐久性の低下による故障発生を招くようなあまり好ましくない状態の部品6,7,32を用いた無理な使用をなるべく回避させ、これによっても縫製作業効率の低下を防止することができる。
なお、前述した実施形態において部品6,7,32の組み合わせが適正でなく上記動作制限を行う場合、及び、前述の使用情報を管理する変形例において部品6,7,32の使用履歴等に応じて上記動作制限を行う場合における、動作制限の態様としては、例えば制御装置17が装置本体M1(詳細には、例えばモータ20,22,28,30,35、サーボソレノイド33及びエアシリンダ24の各アクチュエータ)の動作開始を禁止する信号を生成してそれぞれに出力したり、縫製速度を低下させるか若しくは縫製速度の上限を低下させるための信号を生成してミシンモータ20に出力したりする等が考えられる。前者の場合、取り付け対象として予め想定されない例えば純正品や海賊版の取り付け部品6,7,32、若しくは例えば使用寿命が到来した(又は近づいた)取り付け部品6,7,32が用いられようとした場合に、装置本体M1を動作させないようにすることにより、動作不良や故障等の発生を確実に未然防止できる効果がある。
また、上記においては、縫製装置M側に動作制限を行うに際し、ステップS250において、動作制限を行ってよいかどうかの確認入力を操作者に行わせる表示を行ったが、これにも限られない。すなわち、確認入力を行うことなくそのまま動作制限を実行するようにし、その実行する前に所定の動作制限を加える旨を単に表示部15Aや別途設けた表示・警報手段(ライト、ランプ等も含む)等に表示させるようにしてもよいし、実行前には表示を行わず、実行後にその動作制限中の間、動作制限中である旨を表示させるようにしてもよい。また、表示部15Aへの表示にも限られず、それに代えてブザーその他の音声警報手段の吹鳴等、他の警報発報を行うようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、無線タグT1のIC回路部100には、先に別の縫製装置Mで縫製を行ったときの縫製条件情報のみが記憶されていたが、これに限られず、当該縫製で用いた被縫製物C又は縫製糸tの種類識別情報や個体識別情報を記憶させ、これをタグリーダ/ライタ50で読み込むようにしてもよい(この場合、タグリーダ/ライタ50の高周波回路51の受信部54が、被加工物としての被縫製物又は縫製材に関連づけて取り扱われるように設けられた無線タグより、対応する被縫製物又は縫製材の種類識別情報又は個体識別情報を読み込む縫製情報読み込み手段を構成する)。そして、前述と同様、読み込んだ上記識別情報や個体情報が縫製時に用いる対象として予め想定されたものに対応するものであるかどうかを制御装置17で判定し、対応するものでない場合に上記同様の動作制限を行ってもよい。その態様としては、例えば制御装置17が装置本体M1(詳細には、例えばモータ20,22,28,30,35、サーボソレノイド33及びエアシリンダ24の各アクチュエータ)の動作開始を禁止する信号を生成してそれぞれに出力したり、縫製速度を低下させるか若しくは縫製速度の上限を低下させるための信号を生成してミシンモータ20に出力したりする等が考えられる。なおこの場合、制御装置17が、縫製情報読み込み手段で読み込んだ種類識別情報又は個体識別情報が縫製時に用いる対象として予め想定されたものに対応するものでない場合、装置本体の縫製速度を低下させるか若しくは縫製速度の上限を低下させるための信号を生成する第3制限信号生成手段を構成する。
この変形例においては、上記のようにして縫製装置本体M1の縫製速度を低下させるか若しくは縫製速度の上限を低下させるための信号等を生成し出力することにより、縫製対象又は縫製時の使用対象として予め想定されたものでない(例えば粗悪品や劣化品等)の被縫製物C又は縫製糸tが用いられても、縫製装置Mが縫製不能となることはなく、耐久性の低下による故障等の発生を招かないようにしつつ、必要最小限の縫製性能を確保できるという効果がある。
さらに、以上においては、取り付け部品6,7,32に無線タグT2を設け、それぞれの無線タグ情報を読み出すことで各取り付け部品6,7,32を識別(検出)したが、これに限られない。すなわち、他の検出手段、例えば通常のバーコード情報を各取り付け部品6,7,32に付しこれをバーコードリーダにて読みとる方式等であってもよい。あるいは、本発明の本来の効果である縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解する、という効果を得る限りにおいては、このような取付部品6,7,32の検出手段自体、必ずしも必要ではない。
また、以上においては、読み込んだ加工条件に関する情報を記憶する記憶手段として、制御装置17のRAM17Cを用いたが、これに限られず、不揮発性の記憶手段であるEEPEOM等を用いてもよい。但し、本発明の本来の効果である縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解する、という効果を得る限りにおいては、このような縫製条件に関する情報を記憶する記憶手段は必ずしも必要としない。
さらに、以上においては、タグリーダ/ライタ50を備えた縫製装置Mに本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、タグリーダ/ライタを備えない複数台の縫製装置M′(図示せず、タグリーダ/ライタ50以外は上記縫製装置Mと同一の構成)と、これら縫製装置M′とは別置きの加工情報書き込み手段としての(例えば1つの)タグリーダ/ライタ50′(=上記タグリーダ/ライタ50と同一の構成)と、各縫製装置M′の制御装置17と情報の授受を行いそれら縫製装置M′の統括制御を行ういわゆる縫製システムのホストコンピュータとしての中央制御装置200(図示せず)と、入力信号に応じ各種表示を行う表示装置210(図示せず)とからなり、例えば縫製工場に設けられる縫製装置の情報通信システムに本発明を適用してもよい。この場合、上記実施形態におけるタグリーダ/ライタ50のデータ読み出し/書き込み機能が縫製装置M′とは別体の上記タグリーダ/ライタ50′によって実行され、また操作パネル15の表示部15Aの各種表示機能が縫製装置M′とは別体の上記表示装置210によって実行される。
この変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。すなわち、ある縫製作業者が対応する縫製装置M′を用いて被縫製物Cへの縫製作業を開始し縫製が終了すると、操作パネル15からの手動操作入力に応じ、縫製装置M′と別置きのタグリーダ/ライタ50′によってそのときの縫製条件に関する各設定値情報が縫製装置M′で縫製された被縫製物Cに添付された無線タグT1に書き込まれる。これにより、その後その無線タグT1を添付された被縫製物Cを他の者が入手した際、被縫製物Cの性状を実地に観察できるのみならず、タグリーダ/ライタ50′で上記無線タグT1より読み込まれた縫製条件を上記他の者に対応する縫製装置M′へ取り込むことで、他の者は、当該性状の被縫製物Cがどのような縫製条件で縫製されたのかを詳細に知ることができる。すなわち、縫製作業者が縫製した被縫製物Cの性状とこれに対応する縫製条件を組として他の者が容易かつ正確に理解することができる。その他についても、タグリーダ/ライタ50の機能がタグリーダ/ライタ50′に置き換わり、操作パネル表示部15Aの機能が表示装置210に置き換わった(各種表示、警報等の報知が行われる)以外は、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、以上においては、いわゆる鳩目穴かがりミシン(例えば、本出願人による特許第2762696号公報等)において本願発明を適用したものであるが、本願発明の適用対象はこれに限られるものではない。すなわち、布が把持手段としてのワークホルダでその上下より把持又は挟持されて、互いに直交する2つの方向にその2つの部材及び布が移動されるミシン(例えば、本出願人による特許第3354330号等)、布が押圧手段としての布押さえによってその上方より下方のミシンテーブル(ベッド)側に押しつけられ、互いに直交する2つの方向に布押さえ及び布が移動されるいわゆる閂止め縫いミシン(例えば、本出願人による特開平8−84878号公報等)、布が布押さえによって所定の1つの方向に沿ってのみ往復移動されると共に、適宜、縫い針がその所定の方向に直交する方向に揺動される穴かがりミシン(例えば、本出願人による特開2003−53076号公報等)、布が布押さえではなく把持手段としての刺繍枠でその上下より把持又は挟持されて移動される刺繍ミシン(例えば、本出願人による特開平6−254272号公報等)、複数の布が布押さえによって押さえられ、布押さえと共に移動される玉縁縫いミシン(例えば、本出願人による特開平2003−181176号公報等)、布が水平方向には移動しない布押さえ(押さえ足)によって押さえられ、その押さえ足の下方の送り歯によって布が移動されるミシン(例えば、本出願人による特許第2658611号公報等)に関してリーダ/ライタ50を設けるとともに本願発明を適用して縫製装置(加工装置)用制御プログラムを適宜設け、上記縫製開始後の所定段階になったら無線タグT1に縫製条件に関する情報を書き込むようにしてもよい。
さらに、本願発明は上述したようないわゆる工業用ミシンに限らず、例えば特公昭57−26154号公報等に記載のような家庭用ミシンに関しリーダ/ライタ50を設けるとともに本願発明を適用して縫製装置(加工装置)用制御プログラムを適宜設け、上記縫製開始後の所定段階になったら無線タグT1に縫製条件に関する情報を書き込むようにしてもよい。
さらに、上記に関連して、取付部品としては、カッタ6、ハンマー7、布押さえ32に限られず、上記した針棒4、主軸10、被縫製物(布、皮革製品、エアバッグ等)を縫製する縫針(上記実施形態では縫針9)、(布押さえ32以外に)縫製時に被縫製物を押圧又は把持して保持する刺繍枠を含む布保持部材、縫製終了後に縫製糸を切断する糸切りカッタ等、ユーザ側による縫製の態様や縫製装置の仕様に応じ適したものに交換されて使われるもの(ゲージと称される場合もある)に本発明を適用してもよい。また、このような縫製態様や仕様に応じた交換以外に、上糸を引っかけて通し張力を調整するための天秤、縫針が被縫製物より下方に貫通したときにたるんだ上糸を引っかける釜の剣先部、主軸からの動力を上記釜に伝達するための下軸、布送り機構に備えられる送り歯、一部の布押さえの下端部に設けられる押さえ足、例えば縫製終了時に上糸又は下糸を切断する糸切りメス、被縫製物の布を切断する布切りメス、さらに広くは各種動作部材を駆動するモータ(上記実施形態ではミシンモータ20、θ方向駆動モータ22、X方向駆動モータ28、Y方向駆動モータ30等)、各種軸受等も取付部品に含まれ、これらの部品に本発明を適用してもよい。またこの場合、例えば上記縫針9等のように、縫製装置本体M1に対し直接着脱可能に設けられるものでなく縫製装置本体M1に設けた部材(この例では針棒4)に対し着脱可能に設けられるものも本発明の対象として含まれる。これらの場合も同様の効果を得る。
さらにこのとき、縫製条件の設定値についても、上記実施形態で例示した鳩目穴かがりミシンにおける「縫目長さF」「縫目ピッチP」「針数N」「押さえ圧p」「糸テンションs」「縫製速度v1」「布送り速度v2」「縫製領域設定」だけにも限られず、他の設定値も含まれ、また上述のように鳩目穴かがりミシン以外の他のタイプのミシンにおける各種設定値についても含まれる。またこのとき、そのような縫製条件設定値を入力する手段としては操作パネルに限られず、キーボード、マウス、ダイヤル等でもよい。さらに、これらのような縫製条件の各種設定値を記憶するのにも限られず、設定値をもとに作成した縫製データそのもの(図9のステップS130及びステップS140、図18参照)を無線タグT1に書き込み/読み出しを行うようにしてもよい。これらの場合も同様の効果を得る。
また、以上は、本発明を、縫製装置に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の加工装置、例えば工作物を工作する工作機械、研磨・洗浄等の表面処理を行う機械等に適用してもよい。また、広くは、紙やラベル等に対して印刷処理又はコピー処理を行う印刷装置(コピー機、ラベルプリンターを含む)、電子情報を加工して通信を行う(これに付随して紙に印字を行うものもある)通信装置(電話、ファックス、無線機を含む)、画像情報を加工可能なデジタルカメラ・ビデオ・TV、音声情報を加工録音可能な楽器・録音装置・カラオケ機器等も広い意味では加工装置に含まれ、これらに適用してもよい。さらに上記加工装置以外にも、自動車、バイク、自転車、鉄道車両、航空機、船舶等の運送機械、ゲーム機等の娯楽機器に適用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。