JP4640533B2 - 神経再生誘導管 - Google Patents

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Description

本発明は、事故や手術などで切断あるいは切除された末梢神経を神経細胞の伸長を利用して繋ぎ直すための神経再生誘導管の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、神経再生誘導管を構成する生分解性ポリマーからなる管状体と、管状体の外部表面に塗布されるコラーゲンとの密着性を高め、神経再生誘導管全体の初期強度及び柔軟性などを向上させるための方法に関する。
事故などによる末梢神経の損傷は修復しきれない例が多い。また、一般的手術に伴って末梢神経を切除せざるを得ない臨床例も多い。末梢神経の損傷では、直接吻合以外に自家神経移植が唯一の対策であった。しかし、その成績は決して満足できるものではなく、知覚、運動能力の回復も悪く、過誤支配による後遺症もみられた。また、痛みや知覚の欠損などの後遺症ばかりでなく、患部の知覚異常、特に疼痛に悩まされている患者が多い。
人工的な材料による接合管を用いて末梢神経のギャップを連結して神経を再生させようという試みは1980年代初め頃から盛んに行われてきた。しかし、非吸収性の合成人工材料による接合チャンネルの研究は、ことごとく失敗に終わっている。その解決のためには、神経束の再生の間、外部からの結合組織の侵入を防ぐこと、チャンネル内外の物質交流あるいはチャンネル壁に毛細血管の新生が必要であること、チャンネル内の軸索やシュワン細胞の増殖に適した足場となる物質が必要であること、再生後、使用材料は分解吸収されることなどを考慮しなければならない。これらの条件を考慮してその後、生体内分解吸収性材料による人工神経接合管の研究が行われるようになった。
末梢神経の再生に関しては、1982年にシリコーン管モデルの発表以来、シリコーン管を用いて再生可能な断端間距離を延長するための試みがなされてきた。しかし、シリコーン管の壁は栄養分が透過することができないため、神経軸索に栄養分が充分に補給されない等の問題点があって、シリコーン内には毛細血管が生成することができず、シリコーン管を用いても満足のいく神経再生は得られていない。さらに、仮に神経が再生できたとしても、いずれは異物であるシリコーン管を再手術等により除かなくてはならないという問題点もあった。
これに対して、シリコーン管の代わりに生分解性ポリマーからなる管を用いた末梢神経の再生が試みられている。生分解性ポリマーからなる神経再生管を用いれば、神経が再生された後には生体内で加水分解又は酵素の働きにより徐々に神経再生管は分解、吸収されることから、改めて手術等の手段により取り出す必要もない。
このような生分解性ポリマーからなる神経再生管として、例えば、特許文献1には、ラミニンとフィブロネクチンとをコーティングしたコラーゲン繊維の束からなる神経再生補助材が開示されている。特許文献2には、生体分解吸収性材料の管状体と、その内腔に該管状体の軸線にほぼ平行に沿って該管状体を貫通する空隙を有するコラーゲン体からなり、該空隙がコラーゲン、ラミニン等を含むマトリックスゲルで充填されている人工神経管が開示されている。特許文献3には、生体分解吸収性材料の管状体と、その内腔に該管状体の軸線にほぼ平行にラミニンで被覆されたコラーゲン繊維束を挿入した人工神経管が開示されている。特許文献4には、生体内吸収性材料よりなる繊維を束ねた構造を有する神経再建用基材が開示されている。特許文献5には、コラーゲンからなるスポンジ、チューブ、コイル等の支持体が開示されている。特許文献6には、生体分解性材料又は生体吸収性材料からなるスポンジ状の微細なマトリックスと、直線状の生体組織誘導経路又は器官誘導経路とからなる支持体が開示されている。さらに、特許文献7には、生分解性ポリマー材料からなるスポンジと、該スポンジより分解吸収期間の長い生分解性ポリマーからなる強化材を含み、その内面がスポンジからなる神経再生管が開示されている。
これらの神経再生管は一般に、生分解性ポリマーからなる極細繊維で編まれた管状体の外部表面にコラーゲンを塗布し、さらに管状体の内部にコラーゲンを充填することにより製造されるが、管状体の外部表面に塗布されるコラーゲンと管状体の生分解性ポリマーの密着性に劣るため、使用時の強度や柔軟性などに問題があった。
特開平5−237139号公報 WO98/22155号公報 WO99/63908号公報 特開2000−325463号公報 特開2001−70436号公報 特開2002−320630号公報 特開2003−19196号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は生分解性ポリマー繊維からなる極細繊維で編まれた管状体の外部表面にコラーゲン溶液を塗布し、管状体の内部にコラーゲンを充填する神経再生誘導管において、耐圧性、形状回復性、耐キンク性、耐膜剥がれ性、外部組織進入防止性、及び耐漏れ性に優れたものを製造する方法を提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために生分解性ポリマー繊維から編成された管状体と、その外部表面に塗布されるコラーゲンの密着性を高める方法について鋭意検討した結果、管状体の外部表面に最初に塗布されるコラーゲン溶液を低粘度(低濃度)のものにし、その後の塗布においてコラーゲン溶液をそれより高粘度(高濃度)のものにすることにより、耐圧性、形状回復性、耐キンク性、耐膜剥がれ性、外部組織進入防止性、及び耐漏れ性に優れた神経再生誘導管を効率良く製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、複数本の生分解性ポリマーからなる極細繊維で編んだ管状体の外部表面をコラーゲン溶液で複数回塗布することにより被覆し、さらに前記管状体の内部にコラーゲンを充填することを含む神経再生誘導管の製造方法において、管状体の外部表面に最初に塗布されるコラーゲン溶液の粘度が2CPS〜800CPS、好ましくは5CPS〜200CPSであることを特徴とする方法である。
本発明の方法の好ましい態様では、コラーゲン溶液の粘度を最初の塗布に比べてその後の塗布において高くし、さらに好ましくは2段階以上で高くし、また、管状体の外部に最初に塗布されるコラーゲン溶液の粘度でコラーゲン溶液が複数回塗布される。
また、本発明の方法の好ましい態様では、生分解性ポリマーがポリグリコール酸、ポリ乳酸、及び乳酸−カプロラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のポリマーである。また、本発明は、上記の方法によって製造されることを特徴とする神経再生誘導管である。
本発明の製造方法は、生分解性ポリマー繊維から編成された管状体の外部表面に最初に塗布されるコラーゲン溶液を低粘度(低濃度)のものにしているので、生分解性ポリマー繊維からなる管状体とコラーゲンが均一に密着し、耐圧性、形状回復性、耐キンク性、耐膜剥がれ性、外部組織進入防止性、及び耐漏れ性に優れた神経再生誘導管を提供することができる。
耐圧性の評価方法の説明図である。 形状回復性の評価方法の説明図である。 耐キンク性の評価方法の説明図である。 耐膜剥がれ性の評価方法の説明図である。 実施例の管状体のSEM像(50倍)である。
本発明の方法において、神経再生誘導管は、複数本の生分解性ポリマーからなる極細繊維で編んだ管状体の外部表面をコラーゲン溶液で複数回塗布することにより被覆し、さらに管状体の内部にコラーゲンを充填することによって製造される。
管状体を構成する生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体及びグリコール酸−カプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸−トリメチレンカルボン酸などを挙げることができる。入手のし易さや取扱い性の面から、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体、特にポリグリコール酸を用いることが好ましい。生分解性ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、生分解性ポリマーからなる極細繊維の直径は1〜50μmであることが好ましい。繊維直径が小さすぎると、繊維間隙が密になるため、コラーゲンが浸透しにくかったり、管状体の柔軟性が低下することがある。逆に、繊維直径が大きすぎると、コラーゲンの保持量が少なくなり、神経成長速度が上がらなかったり、管状体の強度が不足することがある。より好ましくは、極細繊維の直径は3〜40μmであり、さらに好ましくは6〜30μmである。
管状体を成形するには、前記繊維直径を有する生分解性ポリマーからなる極細繊維を5〜60本束ねて、経糸及び緯糸として交互に編むことが好ましい。極細繊維を束ねる本数が少なすぎると、管状体の強度が不足したり、十分なコラーゲンの保持量を確保できないことがある。逆に、極細繊維を束ねる本数が多すぎると、細径の管状体を作成できなかったり、管状体の柔軟性を確保できないことがある。より好ましくは、極細繊維は10〜50本であり、さらに好ましくは20〜40本である。
前記極細繊維束を交互に編んで管状体を成形する際、網目の孔径は、好ましくは約5〜300μm、より好ましくは10〜200μmである。網目の孔径が小さすぎると、毛細血管の侵入や水透過性の低下により細胞や組織の増殖が阻害されることがある。約300μmを越えると組織の進入が過剰となり、細胞や組織の増殖が阻害されることがある。
管状体の内径、外径は、接合する神経の太さに合わせて設定することが好ましいが、生産コストや時間の制約などを考慮すると、予め大きさを変更した多種類の管状体を準備しておくことが好ましい。管状体の大きさは、再生する神経の部位や必要な強度にもよるが、一般に、内径0.1〜20mm、外径0.15〜25mm、膜厚0.05〜5mm、長さ1.0〜150mmである。膜厚が厚すぎると生体組織の再生の障害となることがあり、逆に膜厚が薄すぎると管状体の分離吸収が早過ぎて、神経が再生し終わるまでその形状を維持できないことがある。また、接合する神経に対して内径が大きすぎると、神経の伸長が適切になされない可能性がある。
本発明では、管状体の外部表面は、当業者に公知の方法でコラーゲン溶液を複数回塗布することにより被覆され、管状体の内部(内腔)はコラーゲンを充填することにより満たされる。管状体の外部表面の塗布や内部の充填に用いるコラーゲンとしては、従来から神経再生の足場として使用されるコラーゲンを用いればよく、例えばI型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲンなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。また、コラーゲンは、塩化ナトリウム含有濃度を乾燥状態で2.0重量%以下、好ましくは0.1〜1.5重量%に精製したものを使用することが好ましい。また、コラーゲンはラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクティン及び成長因子を含んでいても良い。成長因子としては、EGF(上皮増殖因子)、βFGF(線維芽細胞増殖因子)、NGF(神経成長因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子)、TGF−β(トランスフォーミング成長因子)などが挙げられる。また、コラーゲン溶液は、塩酸溶液の形で刷毛又は毛筆を用いて1回塗布するごとに完全に乾燥してから次回の塗布をするようにして複数回塗布することが好ましい。
本発明の方法の最大の特徴は、管状体の外部表面をコラーゲン溶液で塗布する際に、最初に塗布されるコラーゲン溶液として2CPS〜800CPS、好ましくは5CPS〜200CPSの低粘度溶液を使用することにある。この低粘度溶液を塗布する回数は1〜10回、好ましくは1〜5回が望ましい。最初にこの範囲の低粘度溶液を塗布することにより、管状体の生分解性ポリマーの極細繊維間にコラーゲン溶液が十分に浸透し、生分解性ポリマーとコラーゲンの接着性や一体感を格段に向上させることができる。最初に上記の粘度より高い高粘度溶液を塗布した場合、コラーゲン溶液が極細繊維間に浸透することができないため、乾燥後にコラーゲンが皮膜状態になり、管状体から剥離するおそれがある。このような神経再生誘導管を使用すると、管状体への血管侵入や神経細胞の成長を阻害することにつながる。
本発明の方法では、最初に低粘度のコラーゲン溶液を複数回塗布して管状体の外部表面にコラーゲンの薄膜を形成した後、それより高い200〜30000CPSの粘度のコラーゲン溶液をその上から塗布することが好ましい。低粘度溶液での塗布だけでは、一定の膜厚を達成するために極めて多い回数の塗布が必要となり。作業効率が悪いからである。この高粘度溶液を塗布する回数は1〜50回、好ましくは1〜30回が望ましい。高粘度溶液を塗布する回数が多すぎると、神経再生誘導管の形状回復性が低下する原因となり、例えば術後に患部を物にぶつけた際に管に生じた歪みが回復せず、神経成長進路を塞いでしまうことがある。さらにコラーゲンは生分解速度が比較的速いため、あまり塗布回数を増やしてもメリットは少ない。
実際には、コラーゲン溶液の粘度は最初の低粘度溶液の塗布後において2段階以上の多段階で高くすることが好ましい。例えば塗布されるコラーゲン溶液の粘度を2〜200CPS、200CPS〜3000CPS、3000CPS〜30000CPSのように3段階で上昇させることができる。この場合、最初の低粘度溶液で管状体の極細繊維間への浸透と表面の薄膜の形成を行い、次の中粘度溶液でこの薄膜に接着して網目の目止めを行い、最後の高粘度溶液でこの目止めされたコラーゲン膜に接着して強度を強化させることにより、初期強度が強い被覆を効率的に行なうことができる。また、このように段階的に塗布する粘度のギャップを少なくすることによって、塗布作業の操作性を向上させたり、塗りムラや塗り残しを低減させることができる。
コラーゲンを被覆および充填した管状体は、凍結、凍結乾燥、架橋処理を施してコラーゲンを架橋することが好ましい。凍結は好ましくは−10〜−196℃で3〜48時間の条件で行うのが好ましい。凍結することによって、コラーゲン分子の間に微細な氷が形成され、コラーゲン溶液が相分離を起こし、スポンジ化する。次に、前記凍結させたコラーゲン溶液を、真空下、好ましくは約−40〜−80℃で、好ましくは約12〜48時間凍結乾燥する。凍結乾燥することによって、コラーゲン分子間の微細な氷が気化するとともに、コラーゲンスポンジが微細化する。架橋方法としては、γ線架橋、紫外線架橋、電子線架橋、熱脱水架橋、グルタルアルデヒド架橋、エポキシ架橋、及び水溶性カルボジイミド架橋が挙げられるが、架橋の程度をコントロールしやすく、架橋処理を行っても生体に影響を及ぼさない熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋処理は、真空下、例えば約105〜150℃、より好ましくは約120〜150℃、さらに好ましくは約140℃の温度で、例えば約6〜24時間、より好ましくは約6〜12時間、さらに好ましくは約12時間行う。架橋温度が高すぎると、生体内分解吸収性材料の強度が低下する可能性がある。また、架橋温度が低すぎると十分な架橋反応が起きない可能性がある。
上記のようにして製造された神経再生誘導管は、生分解性ポリマーからなる管状体とコラーゲンが密に接着しているので、それぞれが有する強度の総和以上の初期強度や弾性を有する。具体的には、本発明の神経再生誘導管は、直径方向に側面から100N/mの負荷をかけて圧縮したときの管の歪み率(耐圧性)が15%以下、さらには0.1〜10%であり、50%の管の歪みが発生するように(管の直径が半分になるまで)同様に圧縮したときの歪んだ50%のうちの回復率(形状回復性)が60%以上である。耐圧性は、神経接続時の医療器具による作業や術後の処置による神経再生誘導管への負荷に対する抵抗性を想定したものであり、一般にコラーゲンの膜厚が大きいほど向上する。しかし、管状体とコラーゲンが密着せずに皮膜が分離している場合は耐圧性をあまり期待できない。また、形状回復性は、神経接続時の医療器具による作業(例えばピンセットによる必要以上に強いつまみ)や術後の患部への衝撃などによる歪みに対する形状の回復性を想定したものであり、この形状回復性が低ければ管に歪みが残ってしまい神経成長進路を阻害してしまう。
また、本発明の神経再生誘導管は、10%以上の限界湾曲率(耐キンク性)や高い耐膜剥がれ性を有する。限界湾曲率は、キンクを生ずることなく曲げられる範囲を表すものであり、神経接続の際の可動域に係わる指標である。10%未満の限界湾曲率では、湾曲した神経成長進路が必要な症例には使用できなくなり、仮に使用したとしても神経にテンションがかかり、神経の成長の阻害や外組織の圧迫による炎症を起こすおそれがある。また、耐膜剥がれ性は、被覆したコラーゲンの剥がれや割れに対する抵抗性である。コラーゲンを管状体の外側表面全体に被覆する理由は、神経成長進路への外組織の進入防止(外組織進入防止性)や管状体内部のコラーゲンスポンジの外部への漏れ防止(耐漏れ性)のためであるが、被覆したコラーゲンに剥がれや割れが生じるとこれらの性能を確保できないおそれがある。本発明の神経再生誘導管は、管状体とコラーゲンがしっかりと密着し、分離した皮膜がないため、高い耐キンク性を達成できるとともに、このような剥がれや割れを生じる可能性がない。
さらに、本発明の神経再生誘導管は、生体吸収性の分解速度の調整にも大きな効果が期待できる。生分解性の管状体とコラーゲンスポンジ及び被覆コラーゲンから構成される神経再生誘導管を体内に埋め込んだ場合、コラーゲンが先に分解され、被覆していたコラーゲンの強度は失われる。しかし、本発明の方法を用いれば管状体繊維の隙間に接着しているコラーゲンの分解速度は遅くなり、長期的に管状体の強度を持続させることができる。また、管状体繊維の隙間を長期間に渡って目止めできるため、神経細胞の成長を阻害する恐れのある外組織の進入を防ぐことができる。分解速度が遅くなる理由については、管状体繊維の隙間に接着しているコラーゲンの体液及び外組織と接触する面積が小さいためであると考えられる。
本発明の方法によって製造された神経再生誘導管の効果を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で得られた神経再生誘導管の評価は以下の方法に従った。
評価方法
(1)耐圧性
下記測定条件で図1に示すように5mmの長さの試料の側面から直径方向に100N/mで負荷を与えた後の負荷方向の直径高さLを測定し、歪み率=(L/L)×100(但し、Lは負荷前の試料の負荷方向の直径の高さである)を計算した。なお、試料は、エージングなしの場合、生理食塩水にて1週間、2週間、3週間、4週間エージングの場合において測定を行なった。
測定条件
・温度200℃、湿度65.0%
・試験機:テンシロン(UTA−1t)
・試験速度:1mm/min
・ロードセル定格:5kgf
・試料数:N=3
(2)形状回復性
上記の(1)耐圧性と同じ測定条件で図2に示すように5mmの長さの試料の側面から直径方向に歪み率=50%になるまで圧縮した直後に加重を外して10分間静置したときの試料の負荷方向の直径の高さLを測定し、形状回復率=[(L−2/L)/(2/L)]×100(但し、Lは負荷前の試料の負荷方向の直径の高さである)を計算した。
(3)耐キンク性
温度20.0℃、湿度65.0%の下で図3に示すように50mmの長さの試料を1mm/秒程度の速度で手で折り曲げ、試料にキンクが発生したときの長さL(mm)を測定し、限界湾曲率[1−(L/50)]×100を計算した。なお、測定される試料数N=3とした。
(4)耐膜剥がれ性
温度20.0℃、湿度65.0%の下で5mmの長さの試料の側面を図4に示すようにハサミで裁断し、試料の外部表面のコラーゲンの皮膜が剥離して分離できるかを確認した。また、試料の外部表面をSEMで撮影し、部分的な膜の剥がれやクラックがないかを確認した。なお、測定される試料数N=3とした。
(5)細胞進入防止性と耐漏れ性
温度25.0℃、湿度60.0%の下で5mmの長さの試料の内部に後述する方法で準備された1.0重量%コラーゲン溶液を充填し、10分毎に試料の側面から充填されたコラーゲンが漏れていないかを目視で確認し、漏れが確認できるまでの時間を記録した。コラーゲン溶液が完全に凍結するまでの時間を考慮すると、2時間以上、少なくとも1時間以上の耐漏れ性を有する必要がある。
コラーゲン溶液の準備
プラスチックボトルに0.001mol/l塩酸(pH3)392gを入れ、これにNMPコラーゲンPS(日本ハム(株)製)8gを入れて、よく攪拌し溶解させ、コラーゲンの終濃度が2.0重量%となるコラーゲン溶液を調製した。このコラーゲン溶液を上記の塩酸で希釈して、コラーゲンの終濃度がそれぞれ0.1,0.2,0.5,0.7,1.0重量%となるコラーゲン溶液を調製した。
コラーゲン溶液の粘度の測定
コラーゲン濃度0.1,0.2,0.5,0.7,1.0,2.0重量%のコラーゲン溶液を、10℃の冷却水を循環させた恒温槽を使用して10℃の温度に安定させた後、B型粘度計(製品名:Visco Basic plus,FUNGILAB製、使用ロータ:L3スピンドル、測定回転数:20rpm、試験数:N=3)を作動させ、作動後3分後、4分後、5分後の測定値を読み取り、その平均値を測定粘度とした。その結果を表1に示す。
管状体の作製
ポリグリコール酸からなる極細繊維(直径約15μm)を28本束ねた繊維束を経糸及び緯糸として交互に編んで内径3mm、長さ50mmの円筒形の管状体を作製した。
実施例1〜8、比較例1,2
上記の管状体の外部表面にテフロン(登録商標)製の刷毛を用いて上記のコラーゲン溶液を均一に一回塗布し、風乾させ完全に乾燥していることを確認してから、次の回の塗布を順に行なった。塗布されるコラーゲン溶液の濃度及び回数は表2の塗布法の記載に従い、コラーゲン濃度が低い方から順に塗布した。コラーゲン溶液の塗布完了後、コラーゲン分子に架橋を施すため、1Pa以下の減圧下で140℃、24時間の熱架橋を行い、これを実施例1〜8、比較例1の試料とした。なお、比較例2の試料はコラーゲン溶液の塗布を行なわなかった以外は他の試料と同じである。
評価結果
上記の実施例1〜8、比較例1,2の試料について、耐圧性、形状回復性、耐キンク性、耐膜剥がれ性、細胞進入防止性と耐漏れ性を評価した。その結果を表2に示す。
表2の結果から本発明の方法によって製造された神経再生誘導管は、従来のものに比べて耐圧性、形状回復性、耐キンク性、耐膜剥がれ性、細胞進入防止性と耐漏れ性の性能に優れていることが明らかである。
本発明の方法によって製造された神経再生誘導管は、上記の性能に優れているので、保管時や輸送時の品質維持、臨床使用時の取り扱い性や術後の安定性、安全性に優れ、神経再生医療において極めて有用である。

Claims (3)

  1. 複数本の生分解性ポリマーからなる極細繊維で編んだ管状体の外部表面をコラーゲンにより被覆し、さらに前記管状体の内部にコラーゲンを充填することによって得られる神経再生誘導管において、管の直径方向に側面から100N/mの負荷をかけて圧縮したときの管の歪み率(耐圧性)が15%以下であること、及び前記歪み率が50%になるまで管を圧縮した直後に加重を外して10分間静置したときの歪んだ50%のうちの回復率(形状回復性)が60%以上であることを特徴とする神経再生誘導管。
  2. 管の限界湾曲率(耐キンク性)が10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の神経再生誘導管。
  3. 生分解性ポリマーがポリグリコール酸、ポリ乳酸、及び乳酸−カプロラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の神経再生誘導管。
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