JP2017148176A - 成長因子を含む神経再生誘導チューブの製造方法 - Google Patents

成長因子を含む神経再生誘導チューブの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】神経再生の促進のための成長因子を含む神経再生誘導チューブの製造方法を提供する。【解決手段】生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させ、乾燥させる工程を含むことを特徴とする、神経再生誘導チューブの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、事故や手術などで切断あるいは切除された末梢神経を神経細胞の伸長を利用して繋ぎ直すための神経再生誘導チューブの製造方法に関する。より具体的には、生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブに成長因子を含有されるための神経再生誘導チューブの製造方法に関する。
事故や災害あるいは疾患により、ヒトの神経、腱などの組織または器官が損傷し、自己の回復力により損傷部を治癒できない場合には、知覚、感覚、運動能力等に障害が発生している。このような患者に対して、近年の顕微鏡下で損傷部位を接続する技術の発展にともない、切断された部位を接続する外科縫合手術や、自己の神経・腱などを他の部位から採取し、移植することにより失われた機能を回復する自己神経移植などの治療が効果をあげている。
しかしながら、欠損した領域が大きすぎる場合は上記接続による修復は不可能であり、ある程度の障害が発生してもその損傷部分の障害よりも重要度が低いと思われる他の部分から神経を採取し、損傷部位へ移植することが必要であった。このような場合、最初に発生した部位の障害よりも重要度が低いとはいえ、損傷を受けていない健常な他の部分の神経を採取するので、その部位には知覚、感覚、運動能力などの障害を発生させることになる。
末梢神経の再生に関し、1982年に報告されたLundbergらによるシリコーンチューブモデルの発表以来、シリコーンチューブを用いて再生可能な断端間距離を延長するための試みがなされてきた。しかしながら、シリコーンチューブには毛細血管が生成することができず、また、シリコーンチューブの壁は栄養分が透過することができないため、神経細胞には栄養分が十分に補給されない。よって、シリコーンチューブでは満足のいく神経再生は得られておらず、さらに神経が再生した後も異物として残るため、臨床では成功していない。
これに対して、シリコーン管の代わりに生分解性ポリマーからなる管を用いた末梢神経の再生が試みられている。生分解性ポリマーからなる神経再生管を用いれば、神経が再生された後には生体内で加水分解又は酵素の働きにより徐々に神経再生管は分解、吸収されることから、改めて手術等の手段により取り出す必要もない。
実際に米国では、コラーゲンを用いた神経組織を連結するための管及びポリグリコール酸(PGA)を用いた神経組織を連結するための管が既に市販されている。これらの神経連結管は、いずれも内部に何も充填されていない中空の管であって、神経の欠損部の長さが2cmまでの末梢感覚神経の再生に使用することができる。神経の欠損部にこれらの中空管を埋設すると、欠損部に神経線維が再生される。しかし、末梢感覚神経の欠損部が2cmより長い場合、中空管では神経の再生を促進する力に乏しく、再生前に連結管が分解されてしまう等の課題があり、これらの神経連結管の使用は制限される。
また、一般に、神経線維が切断されると、ワーラー変性によりシュワン管という細胞柱が形成され、中枢側からの軸索が伸びやすい環境が形成される。すなわち、神経損傷の再生には、断端間を貫通する空間が必要とされるが、体には屈曲運動や筋肉活動などにより外部から圧迫を受けやすい部位が多数存在する。例えば関節は外部から屈曲作用を受ける部位であり、このような体の部位は、神経線維が再生するまでの間に、外部から屈曲作用を頻繁に受ける環境となる。中空管の場合、断端間を貫通する空間を持っているものの、外部からの圧迫に対して十分な強度を有しているとは言えない。よって、これらの生体吸収性基材を関節など外部から圧迫を受けやすい部位に供した場合、基材がキンキング(折れる現象)を起こして閉塞部位が生じ、神経細胞の伸長に必要な貫通空間の確保が困難となり、神経の十分な伸長が起こらなくなることが懸念される。
近年、生体分解吸収材料から成るチューブ内にスポンジ状又はゲル状のコラーゲンを含む人工神経管が報告されている。例えば、特許文献1には、生体分解吸収材料から成るチューブ内にコラーゲン及びラミニンから成るゲルを含む人工神経管が開示されている。特許文献2には、生分解性ポリマー材料からなるスポンジと、該スポンジより分解吸収期間の長い生分解性ポリマーからなる強化材を含み、その内面がスポンジからなる神経再生管が開示されている。特許文献3には、生体分解性材料または生体吸収性材料から成る管状体の内部に、生体分解性材料または生体吸収性材料で形成されたスポンジ状マトリックスを含む神経再生誘導管が開示されている。特許文献4には、生体吸収性高分子から成る管状体の管腔内にファイバー状の合成生体吸収性高分子を含む神経再生チューブが開示されている。特許文献5および6には、管状の生分解性支持体の内側にコラーゲンから成る薄フィルム多房状構造体を有する組織再生用部材が開示されている。更に特許文献7には、複数本の生分解性ポリマーからなる極細繊維で編んだ管状体の外部表面をコラーゲン溶液で複数回塗布することにより被覆し、さらに管状体の内部にコラーゲンを充填することによって製造される神経再生誘導管が開示される。
これら先行技術に加えて、非特許文献1には、管状体に成長因子を混合したコラーゲンを充填することにより、神経軸索の再生が促進されることが報告されている。このように、神経再生誘導チューブにサイトカインを含むことで、より効率よく神経細胞を増殖させ、神経再生を促進できる点が示唆されている。
しかしながら、サイトカインを神経再生誘導チューブに含有させる場合、管状体の内腔面へのコーティングでは表面積に限りがあること、また、内腔に充填した繊維やゲル等にコーティングした場合でも、内腔表面積よりコーティング面積は広がるが、充填された繊維の容積があるために、内腔容積に対するサイトカインの量は減少してしまう。また、充填したサイトカインが早期に流出、拡散してしまうため、期待した効果が得られない。これらの問題を解消するようなサイトカインと神経再生誘導チューブの組み合わせや含浸方法についての具体的な検討はほとんどなされていない。
WO98/22155号 特開2003−019196号公報 特開2004−208808号公報 特開2005−143979号公報 特開2013−031730号公報 国際公開第08/001952号 特開2010−269185号公報
R Midha et al., Journal of Neurosurgery, 99(3), 555-565 (2003)
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、成長因子と神経再生誘導チューブの最適な使用形態や組み合わせ、及び成長因子を含む神経再生誘導チューブの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、かかる目的を達成するために、生分解性ポリマー繊維から編成された管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブと、そこに含浸させるサイトカインの保持性を高める方法について鋭意検討した結果、神経再生誘導チューブにサイトカインを含浸させた後、乾燥工程を経る方法により、効果的に管状体内部に充填されたコラーゲンにサイトカインを含有させることができ、かつサイトカインの溶出性及び徐放性に優れた神経再生誘導チューブを効率良く製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の製造方法により製造された神経再生誘導チューブは、PBS溶液中への成長因子の溶出試験において、成長因子の溶出率が30分間静置したときに20%以上であること、及び前記溶出率が360分静置後でも20%以上を維持していることを特徴とする。
本発明は、下記に代表される発明を提供する。
[1]生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させ、乾燥させる工程を含むことを特徴とする、神経再生誘導チューブの製造方法。
[2]前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、自然乾燥させる工程である、[1]に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
[3]前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、30〜40℃で乾燥させる工程である、[1]に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
[4]前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、−20℃以下で凍結後、凍結乾燥する工程である、[1]に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
[5]前記成長因子が、NGF(神経成長因子)、BDGF(脳由来神経栄養因子)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、NT−3(ニューロトロフィン−3)、NT−4(ニューロトロフィン−4)、EGF(上皮増殖因子)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子)およびTGF―β(トランスフォーミング成長因子)からなる群より選ばれる一種以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記神経再生誘導チューブが、生分解性ポリマーからなる管状体の外部表面にコラーゲンを塗布し、管状体内部にコラーゲンを充填した後、凍結乾燥をすることを含む工程により製造される、[1]〜[5]のいずれかに記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
[7]生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブ並びに成長因子を含むキット。
本発明の製造方法は、生分解性ポリマーで編んだ管状体及び管状体の内部に充填されたコラーゲンを含む神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させた後、乾燥工程を経ているため、管状体やスポンジ状のコラーゲンと成長因子が密着しており、成長因子の溶出性及び徐放性に優れた神経再生誘導チューブを提供することができる。この神経再生誘導チューブにより、神経再生誘導チューブと成長因子との相乗効果による神経細胞の増殖、神経再生の促進が期待でき、さらに成長因子の徐放性による効果が比較的長時間に亘って持続することにより、神経再生促進の効果がより増大することを期待できる。
本発明において、神経再生誘導チューブとは、複数本の生分解性ポリマーの繊維で構成された管状体からなり、好ましくは管状体の外部表面がコラーゲンによって被覆されており、さらに好ましくは管状体の内部にコラーゲンが充填されている管状体である。
管状体の内径、外径は、接合する神経の太さに合わせて設定することが好ましいが、生産コストや時間の制約などを考慮すると、予め大きさを変更した多種類の管状体を準備しておくことが好ましい。管状体の大きさは、再生する神経の部位や必要な強度にもよるが、一般に、内径0.1〜20mm、外径0.15〜25mm、膜厚0.05〜5mm、長さ1.0〜150mmである。膜厚が厚すぎると生体組織の再生の障害となることがあり、逆に膜厚が薄すぎると管状体の分離吸収が早過ぎて、神経が再生し終わるまでその形状を維持できないことがある。また、接合する神経に対して内径が大きすぎると、神経の伸長が適切になされない可能性がある。
管状体を構成する生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体及びグリコール酸−カプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸−トリメチレンカルボン酸などを挙げることができる。入手のし易さや取扱い性の面から、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−カプロラクトン共重合体が好ましく、特にポリグリコール酸を用いることが好ましい。生分解性ポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
生分解性ポリマーからなる繊維の直径は1〜50μmであることが好ましい。繊維直径が小さすぎると、繊維間隙が密になるため、コラーゲンが浸透しにくかったり、管状体の柔軟性が低下したりすることがある。逆に、繊維直径が大きすぎると、コラーゲンの保持量が少なくなり、神経成長速度が上がらなかったり、管状体の強度が不足したりすることがある。より好ましくは、極細繊維の直径は3〜40μmであり、さらに好ましくは6〜30μmである。
管状体を成形するには、前記繊維直径を有する生分解性ポリマーからなる極細繊維を5〜60本束ねて使用することが好ましい。管状体は織物や編物からなるチューブ状であるか、生分解性ポリマーの繊維束を編組もしくは製紐して製造したチューブであることが好ましく、より好ましくは編組のチューブである。極細繊維を束ねる本数が少なすぎると、管状体の強度が不足したり、十分なコラーゲンの保持量を確保できないことがある。逆に、極細繊維を束ねる本数が多すぎると、細径の管状体を作成できなかったり、管状体の柔軟性を確保できないことがある。より好ましくは、極細繊維は10〜50本であり、さらに好ましくは20〜40本である。
前記繊維束を交互に編んで管状体を成形する際、網目の孔径は、好ましくは約5〜300μm、より好ましくは10〜200μmである。網目の孔径が小さすぎると、毛細血管の侵入や水透過性の低下により細胞や組織の増殖が阻害されることがある。約300μmを越えると組織の進入が過剰となり、細胞や組織の増殖が阻害されることがある。
本発明の好ましい態様において、管状体の外部表面は、コラーゲン溶液を複数回塗布すること等の方法によりコラーゲンで被覆され、管状体の内部(内腔)はコラーゲンを充填することにより満たされる。管状体の外部表面の塗布や内部の充填に用いるコラーゲンとしては、従来から神経再生の足場として使用されるコラーゲンを用いればよく、例えばI型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲンなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。また、コラーゲンは、塩化ナトリウム含有濃度を乾燥状態で2.0重量%以下、好ましくは0.1〜1.5重量%に精製したものを使用することが好ましい。このようなコラーゲンを使用した神経再生誘導チューブは従来のコラーゲンを使用したものより極めて優れた細胞接着性、細胞増殖性、細胞分化誘導能を発揮する。管状体の外表面に被覆されるコラーゲンは、管状体をコラーゲン溶液に複数回浸漬するか、塩酸溶液の形で刷毛又は毛筆を用いて1回塗布するごとに完全に乾燥してから次回の塗布をするようにして複数回塗布することが好ましい。
コラーゲンを被覆および充填した管状体は、凍結、凍結乾燥及び架橋処理を施してコラーゲンを架橋することが好ましい。凍結は好ましくは−10〜−196℃で3〜48時間の条件で行うのが好ましい。凍結することによって、コラーゲン分子の間に微細な氷が形成され、コラーゲン溶液が相分離を起こし、スポンジ化する。次に、前記凍結させたコラーゲン溶液を、真空下、好ましくは約−40〜−80℃で、好ましくは約12〜48時間凍結乾燥する。凍結乾燥することによって、コラーゲン分子間の微細な氷が気化するとともに、コラーゲンスポンジが微細化する。架橋方法としては、γ線架橋、紫外線架橋、電子線架橋、熱脱水架橋、グルタルアルデヒド架橋、エポキシ架橋、及び水溶性カルボジイミド架橋が挙げられるが、架橋の程度をコントロールしやすく、架橋処理を行っても生体に影響を及ぼさない熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋処理は、真空下、例えば約105〜150℃、より好ましくは約120〜150℃、さらに好ましくは約140℃の温度で、例えば約6〜24時間、より好ましくは約6〜12時間、さらに好ましくは約12時間行う。架橋温度が高すぎると、生体内分解吸収性材料の強度が低下する可能性がある。また、架橋温度が低すぎると十分な架橋反応が起きない可能性がある。
本発明の神経再生誘導チューブにおいて、管状体の内部に充填したコラーゲンに細胞接着性因子を含有させることもできる。細胞接着性因子を含有することにより、神経軸索の接着・伸長を促進し、その再生を促すことができる。前記細胞接着性因子としては特に限定されず、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクティン及び神経細胞の特異抗体等が挙げられる。また別の例として、細胞接着性因子を管状体の内壁にコーティング等の方法等により接着させることができる。
本発明の神経再生誘導チューブは細胞成長因子を含有させることを特徴とする。細胞成長因子を含有することにより、神経軸索の成長を促進し、その再生を促すことができる。上記細胞成長因子としては、NGF(神経成長因子)、BDGF(脳由来神経栄養因子)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、NT−3(ニューロトロフィン−3)、NT−4(ニューロトロフィン−4)、EGF(上皮増殖因子)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子)、TGF―β(トランスフォーミング成長因子) が挙げられる。これらの成長因子は1種のみを用いても2種以上を任意に組み合わせてもよい。
本発明の神経再生誘導チューブの製造方法における特徴は、成長因子を含まない神経再生誘導チューブを作製後、該神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させ、その後乾燥させる工程を含むことである。神経再生誘導チューブの作製時に、コラーゲンに予め成長因子を含有させておき、成長因子を含むコラーゲンを内部に充填し、その後凍結、凍結乾燥及び架橋処理をさせて完成させる方法も取り得るが、本発明者らが検討した結果、成長因子の溶出及び成長因子の活性が検出できなかった。これは架橋処理に由来する工程により成長因子が失活したためであると考えられる。これらの検討結果を鑑みて更に鋭意検討した結果、まず成長因子を含まない生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブを作製し、その後成長因子を含浸させ、かつ乾燥工程を行うという製造方法の発明をするに至った。本発明の製造方法において、神経再生誘導チューブの構造の中でも特に、管状体内部に充填したコラーゲンに成長因子が含浸され、かつ徐放性を示すことが、神経再生の効果を増長するためにより重要であると考えられる。
本発明の製造方法において、神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させる方法として、チューブ全体を成長因子を含む水溶液に浸漬する方法、もしくは管状体の内部に充填されたコラーゲンにシリンジ等で成長因子を含む水溶液を注入する方法を行うことができる。管状体内部に充填されたコラーゲンは凍結乾燥によってスポンジ状となっているため、チューブを浸漬するか、もしくはチューブの一端から成長因子を含む水溶液を注入することにより、毛細管現象により内部まで成長因子を含浸させることができる。成長因子を含む水溶液は、成長因子が極度に希釈もしくは濃縮される濃度でなければ、いずれの濃度であってもよいが、代表的には0.1〜10mg/mLの範囲で調製することが好ましい。成長因子は、長さ50mmの神経再生誘導チューブの場合、10〜1000μg相当量を含浸させることが好ましく、50〜100μg相当量を含浸させることがより好ましい。成長因子の量が少ない場合、成長因子による神経再生の促進効果が小さいものとなるが、成長因子の量が多すぎる場合、成長因子による神経再生の促進効果が一定以上見込めないうえ、阻害効果その他の副作用が生じる可能性もある。
本発明の製造方法における成長因子含浸後の乾燥工程において、第1の好ましい態様は、室温で自然乾燥を行う。室温とは、当業者が通常取りうる温度範囲で、一般に1〜30℃の範囲を指している。自然乾燥とは、ヒーターによる加熱もしくは熱風による乾燥を行わない、ということであり、自然乾燥には放置の他、穏やかな条件の風速・風量を試料に当てる風乾も含まれる。乾燥時間は6時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。上限は特に定めないが、一般に48時間以内が好ましい。
本発明の製造方法における成長因子含浸後の乾燥工程において、第2の好ましい態様は、30〜40℃の恒温条件下で乾燥させる。乾燥には定温乾燥機を用いることができ、送風はあってもなくてもよい。乾燥時間は6時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。上限は特に定めないが、一般に48時間以内が好ましい。
本発明の製造方法における成長因子含浸後の乾燥工程において、第3の好ましい態様は、−20℃以下で凍結後、凍結乾燥を行う。凍結は冷凍庫で行えるほか、液体窒素やエタノール、メタノール等の液体冷媒を用いて行うことができる。凍結乾燥は、真空下で、好ましくは−40〜−80℃で好ましくは12〜48時間行う。
本発明の製造方法により製造された神経再生誘導チューブは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中への成長因子の溶出試験において、成長因子の溶出率が30分間静置したときに20%以上であること、及び前記溶出率が360分静置後でも20%以上を維持していることを特徴とする。具体的には、神経再生誘導チューブをPBS溶液3mlに浸漬し、37度の定温乾燥機に静置する。PBSに浸漬後、30分、360分後にPBS溶液から各125μlを採取し、ELASA等を用いて成長因子のPBSへの溶出量を測定する。神経再生誘導チューブに当初含有させた成長因子の量を100%として、溶出率を算出することができる。
本発明の神経再生誘導チューブは、事故や怪我等により断裂、欠損した神経の再生を促進させることができ、具体的な使用方法は、まず神経再生誘導チューブを10分から1時間程度生理食塩水に浸漬し、その後破断した神経の中枢側と末端側を神経再生誘導チューブを介して縫合する。数週間〜数か月で中枢側から神経が再生するとともに、神経再生誘導チューブの管状体を構成する生分解性ポリマー及びコラーゲンが生体内で分解され、吸収される。本発明の方法により製造される神経再生誘導チューブは、成長因子の溶出性及び徐放性に優れており、神経再生誘導チューブと成長因子との相乗効果による神経細胞の増殖、神経再生の促進が期待できる。
本発明の方法によって製造された神経再生誘導チューブの効果を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[コラーゲンの調製]
豚皮由来I型/III型コラーゲン(日本ハム社製)を蒸留水(日本薬局方 注射用水、大塚製薬工場社製)に溶解させ、さらに、このコラーゲン溶液をpH8以上9未満の等電点濃縮により精製し、凍結乾燥して、塩化ナトリウム含有濃度が乾燥状態で2.0重量%以下であるコラーゲンを調製した。
[コラーゲン溶液の調製]
プラスチックボトルに0.001mol/l塩酸(pH3)396gを入れ、これに上記で作製したコラーゲン4gを入れて、4℃でよく攪拌し溶解させ、コラーゲンの終濃度が1.0重量%となるコラーゲン溶液を調製した。さらに、このコラーゲン溶液を上記の塩酸で希釈して、コラーゲンの終濃度がそれぞれ0.2,0.5重量%となるコラーゲン溶液を調製した。
[管状体の作製]
ポリグリコール酸からなる極細繊維(直径約15μm)を28本束ねた繊維束を用い、編組機を用いて内径4mm、長さ50mmの円筒形の管状体を作製した。
[神経再生誘導チューブの作製]
上記の管状体の外部表面にテフロン(登録商標)製の刷毛を用いて上記のコラーゲン溶液を均一に一回塗布し、風乾させ完全に乾燥していることを確認してから、次の回の塗布を順に行なった。塗布されるコラーゲン溶液の濃度及び回数は、0.2重量%を2回、0.5重量%を1回、1.0重量%を17回とし、コラーゲン濃度が低い方から順に塗布した。塗布が完了した上記の管状体の内腔に、上記の1.0重量%コラーゲン溶液を充填した。充填後、コラーゲン分子のスポンジ化を施すために、凍結および凍結乾燥処理を実施した。凍結乾燥後、コラーゲン分子に架橋を施すため、1Pa以下の減圧下で140℃、24時間の熱架橋を行い、神経再生誘導チューブを作製した。
[bFGF溶液の調製]
bFGF(Human FGF-2凍結乾燥品、Miltenyi Biotec社製)1000μgに、蒸留水(日本薬局方 注射用水、大塚製薬工場社製)1mLを添加し、よく溶解させ、1mg/mLの濃度のbFGF溶液を調製した。
[実施例1]
上記の神経再生誘導チューブをbFGF溶液に含浸し、bFGF溶液50μLを吸収させた。次いで、遠心管にbFGF含有神経再生誘導チューブを入れ、12時間以上、室温で自然乾燥させた。その後、成長因子の徐放試験を実施した。
[実施例2]
上記の神経再生誘導チューブをbFGF溶液に含浸し、bFGF溶液50μLを吸収させた。次いで、遠心管にbFGF含有神経再生誘導チューブを入れ、12時間以上、37℃の定温乾燥器で乾燥させた。その後、成長因子の徐放試験を実施した。
[実施例3]
上記の神経再生誘導チューブをbFGF溶液に含浸し、bFGF溶液50μLを吸収させた。次いで、遠心管にbFGF含有神経再生誘導チューブを入れ、-35℃の冷凍庫で12時間以上凍結し、次いで12時間以上、凍結乾燥させた。その後、成長因子の徐放試験に使用した。
[比較例1]
上記の神経再生誘導チューブをbFGF溶液に含浸し、bFGF溶液50μLを吸収させた。次いで、遠心管にbFGF含有神経再生誘導チューブを入れ、-35℃の冷凍庫で12時間以上凍結し、次いで12時間以上、凍結乾燥させた。凍結乾燥が完了した神経再生誘導チューブはガラス瓶に入れ、140℃、24時間の熱架橋を行った。その後、成長因子の徐放試験を実施した。
[比較例2]
上記の神経再生誘導チューブをbFGF溶液に含浸し、bFGF溶液50μLを吸収させた。その後、乾燥工程を設けることなく、成長因子の徐放試験を実施した。
[比較例3]
上記で作製した1.0重量%コラーゲン溶液10gに、bFGF溶液を500μL添加し、よく撹拌した。次いで、コラーゲン容器の塗布が完了した前記管状体の内腔に、上記のbFGF含有1.0重量%コラーゲン溶液を充填した。充填後、コラーゲン分子のスポンジ化を施すために、凍結および凍結乾燥処理を実施した。凍結乾燥後、コラーゲン分子に架橋を施すため、1Pa以下の減圧下で140℃、24時間の熱架橋を行った。これを比較例3とし、成長因子の徐放試験を実施した。
[比較例4]
実施例1〜3及び比較例1,2で用いた神経再生誘導チューブについて、bFGF溶液に含浸させる工程及び乾燥工程を設けることなく、前記神経再生誘導チューブに対して成長因子の徐放試験を実施した。
[成長因子の徐放試験]
実施例1〜3及び比較例1〜4の各試料を、遠心管に入れ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)3mLに浸漬した。この遠心管は、生体温度を想定して、37℃の定温乾燥器で所定時間静置した。PBS浸漬後、5、15、30、60、180、360分時点で、遠心管からPBS溶液を各125μLサンプリングした。サンプリングしたPBS溶液は、エッペンドルフチューブに入れ、測定まで冷蔵保存した。測定にはHuman bFGF ELISA Kit(RayBiotech社製)を用いた。
[徐放試験の評価方法]
(1)bFGFのELISA測定
Human bFGF ELISA Kit(RayBiotech社)のプロトコールに従い、必要試薬を準備した。上記の各時間ごとにサンプリングしたPBS溶液は、キット付属の希釈用液で1500倍に希釈した。アッセイプレートに標準液および希釈したサンプルを100μLずつウェルに添加し、室温で2.5時間静置した。次いで、アッセイプレートを洗浄し、1次抗体を100μLずつウェルに添加し、室温で1時間静置した。1次抗体反応後、アッセイプレートを洗浄し、2次抗体を100μLずつウェルに添加し、室温で45分間静置した。2次抗体反応後、アッセイプレートを洗浄し、TMB溶液を100μLずつウェルに添加し、遮光して室温で30分間静置した。反応停止液を50μLずつウェルに添加後、速やかにマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
(2)溶出bFGF量の算出
前記ELISA測定で得られた450nmの吸光度から検量線を用いて、bFGF濃度を算出した。この値に、サンプリング時のPBS溶液量を乗算し、溶出bFGF量(μg)とした。
(3)bFGF溶出率の算出
溶出率(%)は、各時間ごとのPBS溶液中の溶出bFGF量を吸収させたbFGF量で除算し、100を乗算して、算出した。なお、吸収させたbFGF量は、実施例1〜3及び比較例1,2においては50μg、比較例3においては20μg、比較例4においては0μgである。
[評価結果]
上記の実施例1〜3および比較例1〜4の各試料について、成長因子の溶液中への経時的な溶出率を評価した。その結果を表1に示す。
実施例1では、5分時点でのbFGF溶出率は14.8%であり、各測定点の溶出率も25%程度で推移した。さらに360分時点でも23.1%の溶出を認め、bFGFを定常的に徐放しており、溶出性と徐放性に優れていることが確認できた。一方、実施例2では、bFGF溶出率がどの測定点でも5%と定常的に推移しており、安定した徐放性に優れていて、長期に亘って定常的に成長因子を溶出できることが期待できる。実施例3では、浸漬直後の急激なbFGFの溶出はないが、30分時点で吸収させたbFGFの60%以上が溶出されることが確認された。180分以降でbFGF溶出率が低下しているものの、引き続きbFGFの溶出が確認でき、適度な溶出性と徐放性を有することが認められた。
比較例1においては、全ての測定点においてbFGFは検出されず、bFGF吸収後に熱架橋工程(140℃、24時間)を経たことでbFGFが失活したことが原因と推測された。比較例2では、浸漬直後から急激にbFGFが溶液中に放出され、5分時点で吸収させたbFGFの70%以上が放出されることが確認された。比較例3では、全ての測定点においてbFGFは検出されず、神経再生誘導チューブの作製工程で熱架橋工程(140℃、24時間)を経たことでbFGFが失活したことが原因と推測された。比較例4は、bFGF不含のため、全ての測定点においてbFGFは検出されなかった。
本発明の方法により作製された神経再生誘導チューブは、破断、欠損した神経線維の再生能に優れており、神経再生医療において極めて有用である。

Claims (7)

  1. 生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブに成長因子を含浸させ、乾燥させる工程を含むことを特徴とする、神経再生誘導チューブの製造方法。
  2. 前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、自然乾燥させる工程である、請求項1に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
  3. 前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、30〜40℃で乾燥させる工程である、請求項1に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
  4. 前記成長因子を含浸させ、乾燥させる工程が、成長因子を含浸させた後、−20℃以下で凍結後、凍結乾燥する工程である、請求項1に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
  5. 前記成長因子が、NGF(神経成長因子)、BDGF(脳由来神経栄養因子)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、NT−3(ニューロトロフィン−3)、NT−4(ニューロトロフィン−4)、EGF(上皮増殖因子)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子)およびTGF―β(トランスフォーミング成長因子)からなる群より選ばれる一種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記神経再生誘導チューブが、生分解性ポリマーからなる管状体の外部表面にコラーゲンを塗布し、管状体内部にコラーゲンを充填した後、凍結乾燥をすることを含む工程により製造される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経再生誘導チューブの製造方法。
  7. 生分解性ポリマーからなる管状体及びコラーゲンを含む神経再生誘導チューブ並びに成長因子を含むキット。
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