これにより、慣性力や空気から受ける力などによって、液滴吐出面に付着した液滴をノズルから遠ざけることができる。その結果、液滴吐出面のワイプ実行頻度を低下させることができる。したがって、液滴吐出面を長寿命とすることができると共に、シリアルプリンタに用いる場合に、印字速度を高速にすることができる。
また、ノズルに対してどの方向に対しても液滴をノズルから遠ざけることができる。
また、本発明の液滴噴射装置においては、第2の領域と同じ撥液性を有し且つ第2の領域よりもノズルに近い第3の領域をさらに備えており、第2の領域と第3の領域との間に第1の領域が存在していてもよい。これによると、ノズル周辺に第3の領域が存在していることによりノズル周辺に液滴が残らなくなる。
このとき、第1の領域と第3の領域との境界が、直線又はスムーズな曲線で画定されていてもよい。これによると、液滴がノズルに近づく方向に移動するときにおいて、第3の領域に液滴が進入しにくくなる。
また、本発明の液滴噴射装置においては、第2の領域の前記ノズルに近い側の区域に、第2領域の他の部分よりも撥液性の低い部分が設けられているとともに、撥液性の低い部分と、他の部分との境界がジグザグ線で画定されており、第2の領域のノズルから遠い側の区域と第1の領域の境界が直線又はスムーズな曲線で画定されていてもよい。これによると、液滴がノズルから離れる方向に移動するときにおいて、液滴の立ち上がり角度が第1の領域から第2の領域に進入するときの限界角度に達しやすくなる。そのため、液滴をノズルから離れる方向に移動させやすくなる。また、液滴がノズルから近づく方向に移動するときにおいて、第2の領域に液滴が進入しにくくなる。
また、本発明の液滴噴射装置においては、第2の領域には、対応するノズルに近い側から当該ノズルから離れる方向に向かって撥液性が段階的に向上するように、第1の領域よりも撥液性が高い複数の区域が設けられていることが好ましい。
また、本発明の液滴噴射装置においては、第2の領域のノズルに近い側の区域に、第2の領域の他の部分より撥液性が低い部分が多数形成されており、第2の領域内における撥液性が低い部分の平均密度が、ノズル列から離れる方向に向かって徐々に減少していてもよい。これによると、液滴がノズルから離れる方向に移動するときにおいて、第1の領域から第2の領域にインク滴が進入しやすくなり、且つ液滴がノズルから近づく方向に移動するときにおいて、第2の領域に液滴が進入しにくくなる。そのため、液滴をノズルから離れる方向に移動させやすくなる。
また、本発明の液滴噴射装置においては、第2の領域のノズルに近い側の区域に、第2の領域の他の部分より撥液性が高い部分が多数形成されており、第2の領域内における撥液性が高い部分の平均密度が、ノズル列から離れる方向に向かって徐々に増加していてもよい。これによると、液滴がノズルから離れる方向に移動するときにおいて、第1の領域から第2の領域に液滴が進入しやすくなり、且つ液滴がノズルから近づく方向に移動するときにおいて、第2の領域に液滴が進入しにくくなる。そのため、液滴をノズルから離れる方向に移動させやすくなる。
また、本発明の液滴噴射装置においては、液滴吐出面において、第1及び第2の領域よりもノズルから遠い位置に液体吸収体が配置されていてもよい。これによると、ノズルから離れる方向に移動した液滴を液体吸収体に吸収させることができる。そのため、液滴吐出面から液滴の滴下を防止することができる。
また、本発明の液滴噴射装置は、液滴吐出面に複数のノズルが二次元配列されており、1のノズルに対応する第2領域と、当該ノズルに隣接するノズルに対応する第2の領域とが、その一部分において、第1領域よりも撥液性の高い連結部によって連結されていてもよい。また、このとき、複数の前記ノズルが一方向に沿って配列されることによってノズル列を形成しており、複数の連結部が、液滴吐出面においてノズル列を形成する一方向に沿って配列された複数のノズルを取り囲む複数の第2の領域同士を連結していてもよい。あるいは、複数の前記ノズルが一方向に沿って配列されることによってノズル列を形成しており、複数の連結部が、液滴吐出面においてノズル列を形成する一方向に沿って配列された複数のノズルを取り囲む複数の第2の領域同士、及び、この一方向と交差する方向に沿って配列された複数のノズルを取り囲む複数の第2の領域同士をそれぞれ連結していてもよい。これによると、連結部によって、ノズルを取り囲む第2の領域間に液滴が存在しにくい領域を形成することができる。
また、本発明に係る液滴噴射装置は、1のノズルに対応する第2の領域と、当該ノズルに隣接するノズルに対応する第2の領域とを連結する連結部が、これらのノズルを結ぶ方向と直交する方向の一方から他方に向かって撥液性が向上するように形成されていてもよい。
また、本発明に係る液滴噴射装置は、キャリッジは、キャリッジの移動に伴って発生する慣性力によって液滴吐出面に付着した液滴をノズルから遠ざかる方向に第1の領域から第2の領域に移動させるが、ノズルに近づく方向に第1の領域から第2の領域に移動させない速度で移動してもよい。これにより、キャリッジ段を利用して液滴に所定の風力を与えることができるとともに、液滴に風力をあたえる特別な構成を追加する必要がないので、液滴噴射装置の製造コストが上昇しない。
本発明の液滴噴射装置は、所定方向に往復走査するキャリッジと、キャリッジに搭載され、液滴を吐出する複数のノズルを備えた液滴吐出ヘッドを備えた液滴噴射装置において、液滴吐出ヘッドは、複数のノズルが所定方向に離隔して設けられた液滴吐出面を有し、複数のノズルは、液滴吐出面の所定方向における一方側の第1ノズルと、一方側と反対側の第2ノズルとを含み、液滴吐出面には、第1ノズル及び第2ノズルの、所定方向の両側にそれぞれ位置する複数の第1領域と、2つの前記第1領域の間に、これらの第1の領域に隣接して位置する第2の領域と、第1ノズルと第2ノズルとの間に、所定方向と交差する交差方向に配列された複数の第4の領域と、第4の領域の間にこれらの第4の領域に隣接して位置する、第4の領域よりの撥液性の高い第5の領域とが形成されており、第2の領域は、対応するノズルから離れる方向に向かって撥液性が向上するように形成されており、第5の領域は、交差方向における一方側から他方側に向かって撥液性が向上するように形成されており、さらに、キャリッジの所定方向への走査に伴って発生する所定方向の空気の流れを、液滴吐出面の所定方向における第1ノズルと第2ノズルとの間の領域において、交差方向に変える風向板を備えている。
これにより、複数のノズルが互いに離隔して延在している場合であっても、各ノズルから液滴を遠ざけることができる。
また、本発明において、第2の領域が複数設けられ、複数の第1の領域と複数の第2の領域とが、互いに隣接しつつ交互に形成されていることが好ましい。これにより、液滴をノズルからより遠ざけることができる。
また、本発明において、ノズル列を構成するノズルが第2の領域と同じ撥液性を有する第3の領域内に形成されており、第3の領域は2つの第1の領域の間にこれらの領域に隣接して位置することが好ましい。これにより、ノズル周辺にほとんど液滴が残らなくなる。
また、このとき、前記複数のノズルは、前記交差方向に沿って配列されることによって前記所定方向に離隔したノズル列を複数列形成しており、前記第1の領域と当該第1の領域に対して前記ノズルから近づく側に隣接した前記第3の領域との境界線が、前記ノズル列の延在方向に平行な直線であってもよい。
また、本発明において、第1及び第2の領域が、ノズルを取り囲むように環状に延在していることが好ましい。これにより、ノズル列の延在方向とは交差する方向へも液滴を遠ざけることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態によるカラーインクジェットプリンタの内部構成を描いた概略斜視図である。図1において、カラーインクジェットプリンタ1内にはヘッドユニット63が配置されている。ヘッドユニット63の本体フレーム68には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4個の圧電式のインクジェットヘッド6a,6b,6c,6dが固着されている。さらに、本体フレーム68には、カラーインクがそれぞれ充填される計4個のインクカートリッジ61が脱着可能に取り付けられている。本体フレーム68は、駆動機構(往復移動手段)65により直線方向に往復駆動されるキャリッジ64に固着されている。記録媒体たる用紙62を搬送する搬送手段としてのプラテンローラ66は、その軸線がキャリッジ64の往復移動方向に沿うように配置され、インクジェットヘッド6a〜6dと対向している。
キャリッジ64は、プラテンローラ66の支軸と平行に配設されるガイド軸71及びガイド板72によって摺動自在に支持されている。ガイド軸71の両端部の近傍には、プーリー73,74が支持され、これらのプーリー73,74の間に無端ベルト75が架け渡されている。キャリッジ64は、この無端ベルト75の適宜の位置に固定されている。
このような駆動機構65の構成において、一方のプーリー73がモータ76の駆動により正逆回転すると、キャリッジ64がガイド軸71及びガイド板72に沿って直線方向に往復移動するため、これに伴ってヘッドユニット63も往復移動する。
用紙62は、インクジェットプリンタ1の側方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙され、インクジェットヘッド6a〜6dとプラテンローラ66との間の空間に導かれて、インクジェットヘッド6a〜6dから吐出されるインクにより印刷が施された後に排紙される。なお、図1においては、用紙62の給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
また、インクジェットプリンタ1内には、図1中左下方に示すパージ機構67が設けられている。パージ機構67は、各インクジェットヘッド6a〜6dの内部に溜まる気泡やゴミなどを含んだ不良インクを強制的に吸引して除去するためのものである。このパージ機構67はプラテンローラ66の側方に設けられている。パージ機構67の位置は、駆動機構65によってヘッドユニット63がリセット位置に至ったときに4つのインクジェットヘッド6a〜6dのいずれかに順次対向するように定められている。パージ機構67はパージキャップ81を備えており、各インクジェットヘッド6a〜6dの下面に設けられる多数のノズル109(図2参照)を覆うように、インクジェットヘッド6a〜6dのいずれか1つの下面に当接する。
この構成で、ヘッドユニット63がリセット位置にあるときに、インクジェットヘッド6a〜6dのいずれか1つのノズル109をパージキャップ81で覆って、そのインクジェットヘッド6a〜6dの内部に溜まる気泡などを含んだ不良インクを、カム83の駆動によりポンプ82によって吸引して廃インク溜め84へ廃棄することにより、インクジェットヘッド6a〜6dの復旧を行うようにしている。このような動作が4つのインクジェットヘッド6a〜6dに対して順次行われる。これにより、インクジェットヘッド6a〜6dに対するインクの初期導入時において気泡を除去でき、そして、印刷に伴う内部の気泡の成長などによって陥っていた吐出不良状態からインクジェットヘッド6a〜6dを正常状態へ復帰させることができる。なお、図1に示す4つのキャップ85は、印刷が終了してリセット位置に戻されるキャリッジ64上の対応するインクジェットヘッド6a〜6dの多数のノズル109を覆って、インクの乾燥を防止するためのものである。
図2に、ヘッドユニット63を上下逆さまにした状態の斜視図を示す。ヘッドユニット63の本体フレーム68は、図2に示すようにその上面側(図2においては下方を向くように描かれている)が開放された略箱状に形成されることにより、その開放された側から4つのインクカートリッジ61を着脱自在に装着できるような搭載部を形成している。
本体フレーム68の搭載部の一側部位には、本体フレーム68の底板5の下面(インクジェットヘッド6a〜6dが固着される側の面:図2においては上方を向くように描かれている)側から上面側まで連通しており、各インクカートリッジ61のインク放出部に接続できる4つのインク供給通路51が設けられている。底板5の下面には、各インク供給通路51に対応させて、各インクジェットヘッド6a〜6dのインク供給口(図示せず)と密接できるようにしたゴム製などのジョイント部材47が取り付けられている。
図2に示すように、底板5の下面側には、4つのインクジェットヘッド6a〜6dを並列に配置するための4つの支持部8が段付き状の凹部として形成されている。各支持部8には、対応するインクジェットヘッド6a〜6dをUV接着材にて固定するための複数の空所9a、9bが、上下に貫通するように形成されている。
図3に、インクジェットヘッド6aの部分断面図を示す。なお、4つのインクジェットヘッド6a〜6dはどれも同じ構成を有しているので、1つのインクジェットヘッド6aについて説明する。図3に示すようにインクジェットヘッド6aは、図示しない制御部からの駆動信号によって駆動されるアクチュエータユニット106と、インク流路を形成する流路ユニット107とが積層されている。アクチュエータユニット106と流路ユニット107は、エポキシ系の熱硬化性の接着剤によって接着されている。また、アクチュエータユニット106の上面にはFPC40が接合されているが、図3においては図を簡略にするためにFPC40を描いていない。
流路ユニット107は、金属材料からなる略長方形平面形状の薄板状の3枚のプレート(キャビティプレート107a、スペーサプレート107b、マニホールドプレート107c)と、インクを吐出するノズル109を備えたポリイミド等の合成樹脂製のノズルプレート107dとが積層されることによって構成されている。最上部のキャビティプレート107aは、アクチュエータユニット106に接している。
キャビティプレート107aの表面には、アクチュエータユニット106の動作により選択的に吐出されるインクを収容する複数の圧力室110が長手方向に沿って2列に形成されている。複数の圧力室110は、隔壁110aによって相互に隔てられ、その長手方向を平行に並べて配列されている。また、スペーサプレート107bには、圧力室110の一端をノズル109に連通させる連通孔111と、圧力室110の他端を図示しないマニホールド流路に連通させる連通孔(図示せず)とがそれぞれ形成されている。
また、マニホールドプレート107cには、圧力室110の一端をノズル109に連通させる連通孔113が形成されている。さらに、マニホールドプレート107cには、インクを各圧力室110に供給するマニホールド流路が複数の圧力室110がなす列の下方においてその列方向に長く形成されている。また、マニホールド流路の一端は、図2に示したインク供給通路51を介してインクカートリッジ61に接続されている。ノズルプレート107dには、図2に示すようにノズルプレート107dの延在方向に沿って千鳥状に2列に配列された複数のノズル109が形成されている。また、図3に示すようにノズルプレート107dの下面(インク吐出面)129には、フッ素系樹脂からなる撥水層130が形成されている。このような各プレート107a〜107dが、マニホールド流路から図示しない連通孔、圧力室110、連通孔111、連通孔113を経てノズル109に至る個別インク流路103を形成するように位置合わせされて積層されることで、ヘッドユニット63の往復移動方向に直交する方向(用紙搬送方向に平行な方向)に延在された矩形平面形状を有する流路ユニット107が構成される。
アクチュエータユニット106においては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる2枚の圧電セラミックスプレート106a,106bが積層されている。圧電セラミックスプレート106aの上面には、個別電極121が流路ユニット107の圧力室110に対応した範囲内に重なる位置に配置されている。圧電セラミックスプレート106aと圧電セラミックスプレート106bとの間には、共通電極122が流路ユニット107のすべての圧力室110に跨るように配置されている。
共通電極122は常にグランド電位に保持されている。一方、個別電極121は駆動信号が与えられる。共通電極122と個別電極121とによって挟まれた圧電セラミックスプレート106aの当該挟まれた領域は予めこれら電極によって電界が印加されることで積層方向に分極した活性部123となる。そのため、個別電極121の電位が正の所定電位になると、圧電セラミックスプレート106aの活性部123は電界が印加されて積層方向に伸びようとする。ところが、圧電セラミックスプレート106bの下面は、圧力室110を区画する隔壁110aの上面に固定されているので、結果的に圧電セラミックスプレート106a,106bは、圧力室110側に凸となるように変形する。このため、圧力室110の容積が低下して、インク圧力が上昇し、ノズル109からインクが吐出される。
次に、ノズルプレート107dのインク吐出面129について以下に説明する。図4は、図3に示すノズルプレート107dのインク吐出面129の拡大平面図である。図4に示すように、ノズルプレート107dのインク吐出面129には、撥水層130とインクを吸収することが可能なスポンジなど材料からなるインク吸収体125とが形成されている。インク吸収体125は、インク吐出面129の延在方向(図4中上下方向)に沿って平行に延在されており、インク吐出面129の図4中左右側の両端部に配置されている。
撥水層130は、ノズル8の近傍に形成された第1撥水層(第3の領域)141と、第1撥水層141の左右側に4つずつ配置されインク吐出面129の延在方向に平行に延在された8つの第2撥水層(第2の領域)142とからなる。第1撥水層141と第2撥水層142は、同じ撥水性を有している。第1撥水層141は、複数のノズル109がなす2列のノズル列方向に沿って延在しており、その内側には、千鳥状に2列に配列された複数のノズル8が存在する。つまり、第1撥水層141は複数のノズル8の周囲をすべて覆いつくすように形成されている。8つの第2撥水層142は、インク吐出面129の延在方向と直交する方向に互いに離隔して配列している。インク吐出面129には、撥水層130が形成されていない領域、すなわち、親水性領域(第1の領域)128a〜128eが複数形成されている。親水性領域128aは、第1撥水層141と第2撥水層142との間に存在し、親水性領域128b〜128dは、第2撥水層142間に存在し、親水性領域128eは、撥水層142とインク吸収体125との間に存在する。つまり、インク吐出面129には、ノズル109からインク吸収体125に向かって、第1撥水層141、親水性領域128a、第2撥水層142、親水性領域128b、第2撥水層142・・・というような順番で、第2撥水層142と親水性領域128a〜128eとが交互に配置されている。
図4に示すように、第1撥水層141の左右側の両端部は、第1撥水層141と親水性領域128aとの境界線151がインク吐出面129の延在方向と平行な直線になるように形成されている。第2撥水層142の第1撥水層141側の端部142aは、第2撥水層142と親水性領域128a〜128dとの境界線152がジグザグ形状になるように、流路ユニット107の延在方向に関して対称的に傾斜した傾斜部143がインク吐出面129の延在方向に沿って複数連続することで形成されている。これら傾斜部143は、第2撥水層142の端部142aの一部がレーザ加工によって切り欠かれることで形成されている。一方、第2撥水層142のインク吸収体125側の端部142bは、第2撥水層142と親水性領域128b〜128eとの境界線153が流路ユニット107の延在方向と平行な直線になるように形成されている。
次に、インク吐出面129に付着したインク滴のヘッドユニット63の往復移動に伴う移動について以下に説明する。図5は、図4に示すインク吐出面の拡大図であり、(a)はインク吐出面129にインク滴が付着した状況を示す図であり、(b)はヘッドユニット63の一方向の移動(図中右方向への移動)に伴ってインク滴が第2撥水層142上を通過する前の状況を示す図であり、(c)はヘッドユニット63の一方向の移動に伴ってインク滴が第2撥水層142上を通過した後の状況を示す図であり、(d)はヘッドユニット63の他方向の移動(図中左方向への移動)に伴ってインク滴が第2撥水層上を通過した後の状況を示す図であり、(e)はインク滴がインク吸収体125上に移動した状況を示す図である。
用紙62に対して印字するときは、駆動機構65によってヘッドユニット63が往復移動しながらノズル109からインク滴を吐出する。このときに、インク吐出面129には、用紙62からのインク滴の跳ね返りやインクミストなどによって、例えば、図5(a)に示すように、第1撥水層141と第2撥水層142との間の親水性領域128a上に2つのインク滴161,162が付着したとする。2つのインク滴161,162がインク吐出面129に付着した状態で用紙62に対して印字を続けた場合、図5(b)に示すように、ヘッドユニット63が図中右側に移動したときは、付着した2つのインク滴161,162が慣性力や空気などの力を受けてインク吐出面129上で図中左方向に移動し、インク滴161が第2撥水層142と、インク滴162が第1撥水層141と接触する。このとき、第1撥水層141と接触したインク滴162は、境界線151上で停止する。これは、インク滴162が撥水層141によってヘッドユニット63の移動方向と同方向にはじかれ、且つ境界線151が直線となっているので、境界線151上におけるインク滴162のインク吐出面129からの立ち上がり角度がどの位置でも同じ角度になるとともに限界角度(すなわち、インク滴のインクメニスカスがブレイクしてインク滴が撥水層上に移動できる角度)を超えないためである。
ここで、インク滴162がインク吐出面129上を移動するための力は、ヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度に関係している(すなわち、ヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度が速ければ、インク滴が受ける風力及び慣性力が大きくなり、ヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度が遅くなれば、インク滴が受ける風力及び慣性力が小さくなる関係)。本実施の形態においては、インク滴162のインク吐出面129からの立ち上がり角度が境界線151上において限界角度を超えない程度の角度になるように、そのヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度が調整されている。そのため、インク滴162は境界線151上でその移動が停止し、第1撥水層141上に乗り移ることはない。
一方、第2撥水層142と接触したインク滴161は、境界線152上を乗り越えようとする。これは、第2撥水層142の端部142aがジグザグ形状に形成されていることによって、境界線152上におけるインク滴161の限界角度が前述した境界線151上の限界角度に比べて大きくなる箇所と小さくなる箇所が混在するからである。つまり、本実施の形態においては、インク滴161が境界線152上に差し掛かってから、第2撥水層142に乗り移ろうとする左方向の力がインク滴161に加えられるにつれ、第2撥水層142の端部142aにおけるノズル109側に近い先端部において、インク滴161のインクメニスカスの立ち上がり角度が他の箇所よりも大きくなって限界角度に達し安いからである。また、本実施の形態における第2撥水層142の端部142aのノズル109側に近い先端部同士の間隔が5〜10μm程度となるように、境界線153が形成されている。これにより、インク滴の直径が少なくとも5μm以上のインク滴161,162であれば、上述のように境界線152上でそのインク滴161,162が端部142aの少なくとも1つ以上の先端部に接触し限界角度に達して第2撥水層142上に移動する。なお、インク滴の直径が5μm未満であってヘッドユニット63の往復移動に伴ってインク吐出面129上を移動するのであれば、そのインク滴が端部142aの先端部間に収まり、インク滴161,162が限界角度に達しにくくなる。しかしながら、インク滴161,162の直径が5μm未満であれば、ヘッドユニット63の往復移動によってほとんど移動しないし、そのインク滴の自重で用紙側に滴下したりしない。つまり、直径が5μm未満のインク滴であれば、そのインク滴はほとんど悪影響を与えない。
また、境界線152を乗り越えて第2撥水層142上にインク滴が移動するための力(第1の力)が、境界線151を乗り越えて第1撥水層141上にインク滴が移動するための力(第2の力)より小さい力になることで、はじめて境界線152を乗り越えず境界線152上でインク滴161を停止させることができる。
しかし、本実施形態におけるヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度は、一方向及び反転した他方向においても同じ移動速度及び加速度となっており、インク滴161,162が受けるそれぞれの力は、ヘッドユニット63の往復移動によって生じる慣性力や空気などの力なので、ほぼ同じ力となっている。さらに、ヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度は上述したように調整されているが、境界線152上におけるインク滴161が第2撥水層142の端部142aにおける先端部において限界角度を超えるように、そのヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度が調整されている。これより、インク滴161,162がインク吐出面129上を移動するためにほぼ同じ力を受けるので、境界線152上であって端部142aのノズル109側の先端部において、インク滴161のインクメニスカスだけがブレイクして、図5(c)に示すように第2撥水層142上を超えて親水性領域128bに移動する。
そして、図5(d)に示すように、ヘッドユニット63が左側に移動したときは、付着した2つのインク滴161,162が慣性力や空気などの力を受けてインク吐出面129上で右方向に移動し、インク滴161が第2撥水層142と境界線153上で接触してその移動を停止し、インク滴162が第2撥水層142上を移動して親水性領域128bに移動する。インク滴161は、第2撥水層142によってヘッドユニット63の移動方向と同方向側にはじかれ、且つ境界線153が直線となっているので、境界線153上におけるインク滴161のインク吐出面129からの立ち上がり角度がどの位置でも同じ角度になるとともに限界角度を超えないため、境界線153上でその移動を停止する。一方、インク滴162は、第2撥水層142の端部142aがジグザグ形状に形成されていることによって、インク滴162が境界線152上に差し掛かってから、第2撥水層142に乗り移ろうとする右方向の力がインク滴162に加えられるにつれ、第2撥水層142の端部142aにおけるノズル109側に近い先端部において、インク滴162のインクメニスカスの立ち上がり角度が他の箇所よりも大きくなって限界角度に達する。その結果、インク滴162のインクメニスカスだけがブレイクして、図5(d)に示すように第2撥水層142上を超えて親水性領域128bに移動する。
そして、図5(e)に示すように、ヘッドユニット63が印字に伴って左右方向に繰り返し移動することで、インク吐出面129に付着した2つのインク滴161,162が次第にノズル109から遠ざかり、インク吐出面129の短手方向の両端部に配置されたインク吸収体125上に移動する。インク吸収体125上に移動した2つのインク滴161,162はインク吸収体125に吸収される。こうして、インク吐出面129からのインク滴161,162の滴下を防止することができる。
このようにインク吐出面129に形成された第2撥水層142には、ノズル109に近い側の端部142aにジグザグの境界線152が形成され、ノズル109から遠い側の端部142bに流路ユニット107の延在方向と平行な直線の境界線153が形成されているので、ヘッドユニット63の往復移動時において、付着したインク滴161,162がノズル109から離れる方向にしか移動しない。また、第1撥水層141がノズル109の周囲をすべて覆いつくすように形成されており、且つ第1撥水層141と隣接した親水性領域128aとの境界線151が流路ユニット107の延在方向と平行な直線となっているため、ノズル109にインク滴161,162が侵入しなくなる。なお、上述した本実施形態においては、境界線151、153が流路ユニット107の延在方向に沿った直線であり、境界線152が流路ユニット107の延在方向に沿って延在するジグザグ形状の線であるが、これらの境界線151〜153が全てジグザグ形状の線であってもよい。この場合、境界線151、153の挟み角(ジグザグ形状の線を構成する対称的に傾斜した2つの直線がなす角)が、境界線152の挟み角よりも大きな角度に形成されなければならない。
本実施の形態における第2撥水層142は、ノズル109に近い側の端部142aがジグザグ形状になっていることで、インク滴161,162がノズル109から離れる方向にだけ移動しやすくなっているが、図6〜図8に示すような第1〜第3変形例による第2撥水層182,192,198が形成されていてもよい。図6は、本発明の第1実施形態に係るヘッドユニットのインク吐出面に形成された第2撥水層の第1変形例を示す図である。図7は、本発明の第1実施形態に係るヘッドユニットのインク吐出面に形成された第2撥水層の第2変形例を示す図である。図8は、本発明の第1実施形態に係るヘッドユニットのインク吐出面に形成された第2撥水層の第3変形例を示す図である。
図6に示すように、第1変形例における第2撥水層182には、第1撥水層141側の端部からノズル109から離れる方向(図6中左右方向)に向かって段階的に撥水性が向上した第1〜第3撥水領域183a〜183cが形成されている。第1撥水領域183aは、第2撥水層182内において、ノズル109に最も近い側に形成されており、インク滴に対する撥水性が第2及び第3撥水領域183b,183cと比較して小さくなっている。第2撥水領域183bは、第2撥水層182内において、第1及び第3撥水領域183a,183cの間に形成されており、インク滴に対する撥水性が第3撥水領域183cと比較して小さくなっている。第3撥水領域183cは、第2撥水層182内において、ノズル109から最も離れた側に形成されており、インク滴に対する撥水性が第1及び第2撥水領域183a,183bと比較して大きくなっているとともに第1撥水層141と同じ撥水性を有している。
この構成により、第2撥水層182の第1撥水領域183aと親水性領域128a〜128dとの境界線171上におけるインク滴が、第2撥水層182の第3撥水領域183cと親水性領域128b〜128eとの境界線172上におけるインク滴や第1撥水層141と親水性領域128aとの境界線173上におけるインク滴よりも限界角度に達し安くなる。言い換えると、第1撥水領域183aの撥水性が第2撥水領域183b、第3撥水領域183c及び第1撥水層141より小さいので、境界線171上におけるインク滴の限界角度の上限値が他の境界線172,173上におけるよりも小さくなる。したがって、ヘッドユニット63の往復移動によって同じ力を受けたインク滴は、親水性領域128a〜128dから境界線171を超えるが、親水性領域128a〜128eから境界線172,173を超えない。このように、第1変形例における第2撥水層182も前述した第2撥水層142と同様にインク滴をヘッドユニット63の往復移動によってノズル109から遠ざけることが可能となる。
図7に示すように第2変形例における第2撥水層192には、円形形状の複数の親水性領域193が形成されている。これら親水性領域193は、第2撥水層192内において、第1撥水層141側の端部からノズル109から離れる方向(図7中左右方向)に向かって、親水性領域193の形成数が減少するように形成されている。つまり、第2撥水層192の複数の親水性領域193は、第1撥水層141に近い側から離れるに連れ、その平均密度が減少している。また、第2撥水層192の第1撥水層141側の端部には、複数の親水性領域193が第2撥水層192の延在方向に沿って配列された親水性領域列194が形成されている。親水性領域列194は、第2撥水層192と親水性領域128aとの境界線185に極めて近い位置に形成されている。
この構成により、第2撥水層192と親水性領域128a〜128dとの境界線185上におけるインク滴は、第2撥水層192と親水性領域128b〜128eとの境界線186上におけるインク滴や第1撥水層141と親水性領域128aとの境界線187上におけるインク滴よりも境界線185を超えやすくなる。つまり、第2撥水層192の第1撥水層141に近い側の端部に複数の親水性領域193がなす親水性領域列194が形成されていることで、親水性領域128a〜128dに存在するインク滴が、境界線185に移動して差し掛かったときに、親水性領域列194に属する親水性領域193とインク滴とが接触し、その親水性領域193がインク滴を第2撥水層192上に引き込もうとする。これより、境界線185上におけるインク滴が他の境界線186,187におけるよりも限界角度に達し安くなって、インク滴が第2撥水層192上をノズル109から離れる方向に移動する。なお、境界線186,187上のインク滴はその近傍に親水性領域193が存在していないので、第2撥水層192及び第1撥水層141上に移動できない。このように、第2変形例における第2撥水層192も前述した第2撥水層142と同様にインク滴をヘッドユニット63の往復移動によってノズル109から遠ざけることが可能となる。なお、本変形例において、親水性領域193は、境界線185近傍に形成されているが、境界線185上にその中心が位置するように配置されていてもよい。これにより、境界線185が親水性領域193の半円部分を有することになるので、上述した境界線152のジグザグ形状とほぼ同様な機能を有することになり、第2撥水層192上にインク滴を容易に移動させることが可能になる。
図8に示すように第3の変形例における第2撥水層198は、第1撥水層141よりも撥水性の低い低撥水部199aと、低撥水部199aよりも撥水性が高くほぼ第1撥水層141と同じ撥水性を有する円形形状の複数の高撥水部199bとを含んでなる。これら高撥水部199bは、第2撥水層198内において、第1撥水層141から離れた外側端部からノズル109に近づく方向(図8中左右方向)に向かって、高撥水部199bの形成数が減少するように形成されている。つまり、第2撥水層198の高撥水部199bは、第1撥水層141側から離れるに連れ、その平均密度が増加している。また、第2撥水層198の第1撥水層141から離れた外側端部には、複数の高撥水部199bが第2撥水層198の延在方向に沿って配列された撥水部列200が形成されている。撥水部列200は、第2撥水層198と親水性領域128b〜128eとの境界線196に極めて近い位置に形成されている。
この構成より、第2撥水層198と親水性領域128a〜128dとの境界線195上におけるインク滴は、第2撥水層198と親水性領域128b〜128eとの境界線186上におけるインク滴や第1撥水層141と親水性領域128aとの境界線197上におけるインク滴よりも境界線195を超えやすくなる。つまり、第2撥水層198の第1撥水層141に近い側の端部には、高撥水部199bが形成されていないので、境界線195上におけるインク滴よりも境界線196,197におけるインク滴の方がインク滴の限界角度の上限値が大きくなっている。そのため、境界線195上におけるインク滴が他の境界線196,197におけるよりも限界角度に達し安くなって、インク滴が第2撥水層198上をノズル109から離れる方向に移動する。なお、境界線196上のインク滴はその近傍に形成された高撥水部199bによって、第2撥水層198上に移動できない。このように、第3変形例における第2撥水層198も前述した第2撥水層142と同様にインク滴をヘッドユニット63の往復移動によってノズル109から遠ざけることが可能となる。
以上のような本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインクジェットヘッド6a〜6dによると、インク吐出面129に付着したインク滴161,162は、ヘッドユニット63の往復移動によって受ける慣性力や空気からの力などによって、ノズル109から遠ざけることができる。そのため、インク吐出面129に付着したインク滴161,162がインク吸収体125に吸収されるので、インク吐出面129からインク滴161,162を除去することができる。その結果、インク吐出面129を頻繁にワイプする必要がなくなり、またそのワイプ実行頻度を低下させることができる。したがって、インク吐出面を長寿命とすることができると共に、シリアルプリンタに用いる場合に、印字速度を高速にすることができる。
また、インク吐出面129に形成された第2撥水層142と親水性領域128a〜128eとが交互に形成されているので、第2撥水層142間の親水性領域128b〜128dで一旦インク滴161,162を保持することができる。そのため、ヘッドユニット63の往復移動方向が一方向から反転して他方向に変化しても、インク滴161,162が徐々にノズル109から遠ざかりやすくなる。また、インク吐出面129に第1撥水層141が形成されていることで、ノズル109周辺にインク滴が付着しにくくなる。
また、ヘッドユニット63の往復移動速度及び加速度が、境界線151,153上におけるインク滴161,162に対して限界角度を超えない程度の力が加わるように、且つ境界線152上におけるインク滴161,162に対して第2撥水層142の端部142aにおける先端部において限界角度を超える程度の力が加わるように調整されているため、インク滴161,162を強制的にインク吸収体125まで移動させるための力を与える特別な構成をインクジェットプリンタ1に備える必要がない。これより、インクジェットプリンタ1の製造コストが上昇しない。
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態のインクジェットヘッドについて、図9を参照しつつ以下に説明する。図9は、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド206のインク吐出面229を示す説明図である。なお、前述した第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
図9に示すように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド206は、インク吐出面229において、複数のノズル109がインク吐出面229の延在方向に沿って4列に配列されたノズル列209を有している。4列のノズル列209は、インク吐出面229の図9中右側及び左側の偏った位置に2列ずつ離隔して配置されており、各側の2列のノズル列209によってノズル列群210a,210bが構成されている。各ノズル群210a,210bに属する複数のノズル109は、インク吐出面229の延在方向に沿って千鳥状に配置されている。
インク吐出面229には、第1撥水層141と第2撥水層142と第3撥水層(第5の領域)243と第4撥水層(第5の領域)244とからなる撥水層230が形成されている。インク吐出面229には、撥水層230が形成されていない領域、すなわち、親水性領域228が複数形成されている。また、インク吐出面229には、その外周であって撥水層230を囲むように前述したインク吸収体125と同様なインク吸収体225が形成されている。
第1撥水層141は、第3及び第4撥水層243,244とを図9中左右側から挟むように2つ形成されている。これら第1撥水層141は、複数のノズル109の外周近傍を覆うようにノズル群210a,210b毎に形成されている。第2撥水層142は、インク吐出面229の延在方向に沿って形成されており、インク吐出面229の延在方向に直交する方向に互いに離隔されて8列形成されている。これら第2撥水層142は、1つの第1の撥水層141に対して図9中左右側に2列ずつ配置されている。なお、第1〜第4撥水層141,142,243,244は前述と同様にフッ素系樹脂からなる。
第3撥水層243及び第4撥水層244は、第2撥水層142と同じ構成のものが延在方向の長さが短くなってインク吐出面229の延在方向と直交する方向にその延在方向が平行になるように90°回転して配置されたものであり、インク吐出面229の延在方向に平行に互いに離隔して複数配置されている。これにより、インク吐出面229には、第3及び第4撥水層243,244と同方向に延在した親水性領域(第4の領域)228がインク吸収体225と第3撥水層243との間、第3撥水層243間、第3及び第4撥水層243,244間、第4撥水層244間及びインク吸収体225と第4撥水層244との間に形成されている。複数の第3撥水層243は、インク吐出面229におけるその延在方向に直交する中心線203を境に図9中上方に配置されており、第3撥水層243と親水性領域228とがインク吐出面229の延在方向に沿って交互に配置されている。複数の第4撥水層244は中心線203を境に図9中下方に配置されており、第4撥水層244と親水性領域228とがインク吐出面229の延在方向に沿って交互に配置されている。各第3撥水層243は、第3撥水層243と親水性領域228との境界線251がジグザグ形状になる方を図9中下方側に配置されている。各第4撥水層244は、第4撥水層244と親水性領域228との境界線252がジグザグ形状になる方を図9中上方側に配置されている。なお、第2撥水層142は、前述と同様に第2撥水層142と親水性領域228との境界線253がジグザグ形状になる方をノズル109に近い側に配置されている。
図9中上部及び下部にあたるインクジェットヘッド206の側壁には、風向板261、262がそれぞれ設けられており、風向板261,262はそれぞれ設けられた側壁に近づくように傾斜している。これら風向板261,262は、ともにインク吐出面229から図9中紙面に対して垂直方向(ノズル109からのインク吐出方向)に若干突出しているとともに、インク吐出面229の中心点204に関して点対称になるように配置されている。このような風向板261,262は、ヘッドユニットの往復移動によりインクジェットヘッド206が図9中矢印A方向に往復移動したときにおいて、風向板261は、インク吐出面229内において、図9中上方から下方に向かう空気の流れBを作り、風向板262は、インク吐出面229内において、図9中下方から上方に向かう空気の流れCを作りだす。これにより、インク吐出面229内には、ヘッドユニットの往復移動によって作られる図9中左右方向(ヘッドユニットの往復移動方向)の空気の流れDと空気の流れB、Cとが存在することになる。(実際には、これらの流れが混在した流れが存在する。)なお、空気の流れBは、風向板261によって主に図9中上方から第4撥水層244が形成された領域を通って下方に向かい、空気の流れCは、風向板262によって主に図9中下方から第3撥水層243が形成された領域を通って上方に向かう。
このようなインクジェットヘッド206が用紙に対して印字するときも、第1実施形態と同様に駆動機構65によって往復移動しながらノズル109がインク滴を吐出する。このときに、インク吐出面229には、用紙からのインク滴の跳ね返りやインクミストなどによって、例えば、図9に示すように、第1撥水層141と第2撥水層との間の親水性領域228上に4つのインク滴271〜274が付着する。付着した4つのインク滴271〜274のうち、インク吐出面229内において、第1撥水層141より外側に付着したインク滴272,273は、インクジェットヘッド206の往復移動による空気の流れDによって外側に移動され、インク吸収体225に吸収される。これは、インク滴272,273の外側に形成された第2撥水層142において、第2撥水層142のノズル109側であって親水性領域228との境界線253がジグザグ形状となっていることにより、インク滴272,273が境界線253を超えるときにおいてのみ、その限界角度に達しやすくなっている。したがって、前述と同様に、インク滴272,273が第1撥水層141と第2撥水層142との間の親水性領域228から外側に向かって、第2撥水層142を超えてインク吸収体225まで移動する。こうして、インク滴272,273がインク吸収体225に吸収される。
一方、インク吐出面229内において、第1撥水層141より内側に付着したインク滴271は、インクジェットヘッド206の往復移動による空気の流れDによって、複数の第3撥水層243が形成されたインク吐出面229における中心線203より上方側領域の中央に向かって移動し、空気の流れCによって、第3撥水層243間の親水性領域228から図9中上方側に向かって移動してインク吸収体225に吸収される。これは、第1撥水層141より内側に形成された第2撥水層142において、第2撥水層142のノズル109側であって親水性領域228との境界線253がジグザグ形状となっていることと、第3撥水層243の図9中下方側の端部と親水性領域228との境界線251がジグザグ形状になっていることとにより、インク滴271が境界線251,253を超えるときにおいてのみ、その限界角度に達しやすくなっている。したがって、インク滴271が第1撥水層141と第2撥水層142との間の親水性領域228から内側に向かって、第2撥水層142を超えて第3撥水層243間の親水性領域228に到達し、そこから第3撥水層243を超えてインク吸収体225まで移動する。こうして、インク滴271がインク吸収体225に吸収される。
また、インク滴274は、インクジェットヘッド206の往復移動による往復移動方向に沿った空気の流れDによって、複数の第4撥水層244が形成されたインク吐出面229における中心線203より下方側領域の中央に向かって移動し、空気の流れBによって、第4撥水層244間の親水性領域228から図9中下方側に向かって移動してインク吸収体225に吸収される。これも、第1撥水層141より内側に形成された第2撥水層142において、第2撥水層142のノズル109側であって親水性領域228との境界線253がジグザグ形状となっていることと、第4撥水層244の図9中上方側の端部と親水性領域228との境界線252がジグザグ形状になっていることとにより、インク滴274が境界線252,253を超えるときにおいてのみ、その限界角度に達しやすくなっている。したがって、インク滴274が第1撥水層141と第2撥水層142との間の親水性領域228から内側に向かって、第2撥水層142を超えて第4撥水層244間の親水性領域228に到達し、そこから第4撥水層244を超えてインク吸収体225まで移動する。こうして、インク滴274がインク吸収体225に吸収される。
また、第2実施形態のインクジェットヘッド206のインク吐出面229に形成された撥水層230の第1撥水層141は、各ノズル群210a,210bに属するノズル109の外周近傍をすべて覆うように形成されているが、図10に示すような撥水層230´であってもよい。図10は、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド206のインク吐出面229に形成された撥水層230の変形例を示す拡大図である。図10に示すように、撥水層230´は、ノズル109毎の外周近傍をそれぞれ覆うように形成された第1撥水層141´と、第1撥水層141´を囲むように上述した第2〜第4撥水層が連続して形成された環状撥水層201とを含んでいる。このように環状撥水層201が形成されていることで、インクジェットヘッドが往復移動したときの空気の流れによって、例えば、第1撥水層141´と環状撥水層201との間の親水性領域に付着したインク滴202が往復移動方向に平行な方向のみならず、図10中上下方向にも移動することが可能になる。したがって、ノズル109からインク滴202を容易に遠ざけることが可能になる。
以上のように本実施の形態においても第1実施形態と同様に、インクジェットヘッド206によると、インク吐出面229に付着したインク滴271〜274は、インクジェットヘッド206の往復移動によって受ける慣性力や空気からの力などによって、ノズル109から遠ざけることができる。そのため、インク吐出面229に付着したインク滴271〜274がインク吸収体225に吸収させることができるので、インク吐出面229からインク滴271〜274を除去することができる。その結果、インク吐出面229を頻繁にワイプする必要がなくなり、またそのワイプ実行頻度を低下させることができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態のインクジェットヘッドについて、図11を参照しつつ以下に説明する。図11は、本発明の第3実施形態によるインクジェットヘッド306のインク吐出面339を示す説明図である。なお、前述した第1及び第2実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
図11に示すように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド306は、第2実施形態のインクジェットヘッド206とほぼ同様な構成を有しているが、インク吐出面329には、前述した第3撥水層243が形成されておらず、その換わりに第4撥水層244がインク吐出面329の延在方向に沿って互いに離隔して複数配置されている。また、前述した風向板261と同様な風向板361が、図11中上方において1つだけ設けられている。ただし、風向板361は、インク吐出面329に対して上部中央付近に配置されており、ヘッドユニットの往復移動により、インク吐出面329内において、図11中上方から下方に向かう空気の流れEを作り出している。空気の流れEは、風向板361によって主に第4撥水層244が形成された領域を通過する。また、インク吐出面329には、図11中上部以外の外周に前述したインク吸収体125と同様なインク吸収体325が形成されている。
このようなインクジェットヘッド306が用紙に対して印字するときも、第1及び第2実施形態と同様に駆動機構65によって往復移動しながらノズル109がインク滴を吐出する。このときに、インク吐出面329には、用紙からのインク滴の跳ね返りやインクミストなどによって、例えば、図11に示すように、第1撥水層141と第2撥水層との間の親水性領域228上に2つのインク滴371,372が付着する。付着した2つのインク滴371,372のうち、インク吐出面329内において、インク滴271は、インクジェットヘッド306の往復移動による空気の流れDによって、図11中右側方向(第4撥水層244に近づく方向)に移動し、空気の流れEによって、第4撥水層244間の親水性領域228から図11中下方側に向かって移動してインク吸収体325に吸収される。一方、インク滴272は、インクジェットヘッド306の往復移動による空気の流れDによって、図11中左側方向(第4撥水層244に近づく方向)に移動し、空気の流れEによって、第4撥水層244間の親水性領域228から図11中下方側に向かって移動してインク吸収体325に吸収される。これらも、第2実施形態と同様に、第1撥水層141より内側に形成された第2撥水層142において、第2撥水層142のノズル109側であって親水性領域228との境界線253がジグザグ形状となっていることと、第4撥水層244の図11中上方側の端部と親水性領域228との境界線252がジグザグ形状になっていることとにより、インク滴371、372が境界線251,253を超えるときにおいてのみ、その限界角度に達しやすくなっている。したがって、インク滴371,372が第1撥水層141と第2撥水層142との間の親水性領域228から内側に向かって、第2撥水層142を超えて第4撥水層244間の親水性領域228に到達し、そこから第4撥水層244を超えてインク吸収体325まで移動する。こうして、インク滴371,372がインク吸収体325に吸収される。
以上のように本実施の形態におけるインクジェットヘッド306も第2実施形態と同様な効果を得ることができる。また、第3実施形態のインクジェットヘッド306の風向板361及びインク吸収体325を構成する部材数が第2実施形態のインクジェットヘッド206より減少しているので、第2実施形態のインクジェットヘッド206よりその構成が簡略化され、製造コストが減少する。
次に、本発明を車両のウインドガラスに適用した応用例について説明する。この応用例は、車両が走行したときに受ける慣性力や風力を利用して、車両のウインドガラスに付着した雨水などの液滴を所望の方向に移動させ、運転者の視界を良好にしようとするものである。例えば、ウインドガラスの表面に複数の透明な撥水層を所定方向に沿って間隔をおいて形成する。ここで、透明な撥水層は、フッ素系樹脂をスクリーン印刷することで形成された、ウインドガラスよりも撥水性の高い層である。これにより、撥水層よりなる撥水性領域(第2の領域)と撥水層の間のガラス面からなる親水性領域(第1の領域)とが、所定方向に沿って交互に隙間なく配列するように構成される。また、撥水性領域と親水性領域の境界線は、第1の実施形態の境界線152,153と同様に、所定方向に直交する直線と所定方向に直交する方向に延在するジグザグ形状の線とが交互に存在する。これにより、ウインドガラスに付着した液滴は、所定方向に移動しやすく所定方向と反対の方向には移動しにくくなる。従って、境界線の延在方向を所望の方向と直交するように設定すると、車両が走行したときに受ける慣性力や風力を利用してウインドガラスに付着した液滴を所望の方向に容易に移動させることができる。なお、液滴をより移動しやすくする観点でいえば、境界線の延在方向と慣性力及び風力の方向とは直交していることが望ましい。また、慣性力としては、車両の進行方向の変更や加減速時による慣性力のみならず、車両の外的及び内的要因から発生する振動に基づく慣性力も含まれる。以上説明した応用例に示されるように、本発明はインクジェットプリンタのインクジェットヘッドに限定されるものではなく、付着した液滴を移動させたいものに対して自由に適用可能である。
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態のインクジェットヘッドについて、図12、図13を参照しつつ以下に説明する。図12は、本発明の第4実施形態によるインクジェットヘッド406のインク吐出面429の底面図であり、図13は、図12に描かれた1つのノズル409の周辺の拡大図である。なお、前述した第1〜第3実施形態と同様の部材については、同符号を付すこととしてその説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド406のインク吐出面429においては、複数のノズル409がマトリクス状に二次元配列されている。
インク吐出面429には、ノズル409と同数の第1撥水層441(第3の領域)及び第2撥水層442(第2の領域)が形成されている。第1撥水層441及び第2撥水層442は、フッ素系樹脂からなる。第1撥水層441は、ノズル409の円形開口端に連続した内周縁を持つ環形状を有している。第1撥水層441と第2撥水層442とは互いに離隔しており、両者の間には、第1親水性領域428a(第1の領域)がそれぞれ形成されている。第1親水性領域428a及び第2撥水層442は、それぞれ環状形状を有している。第2撥水層442同士の間は、第2親水性領域428b(第1の領域)によって互いに隔てられている。第2親水性領域428bは、第1撥水層441、第2撥水層442及び第1親水性領域428aが形成された領域以外のインク吐出面429を被覆している。第2親水性領域428bの外周縁は、前述したインク吸収体125と同様の環状形状を有するインク吸収体425によって取り囲まれている。
第1撥水層441の外周縁、つまり第1撥水層441と第1親水性領域428aとの境界線431は、ノズル409と同心の関係にある円形(スムーズな曲線)となっている。したがって、第1撥水層441は、円環形状を有していることになる。第2撥水層442の内周縁、つまり第2撥水層442と第1親水性領域428aとの境界線432は、ノズル409と同心の関係にある円形を等ピッチで縫うように屈曲したジグザグ線となっている。第2撥水層442の外周縁、つまり第2撥水層442と第2親水性領域428bとの境界線433は、ノズル409と同心の関係にある円形となっている。
このようなインクジェットヘッド406が用紙に対して印字するときも、第1〜第3実施形態と同様に駆動機構65によって往復移動しながらノズル409がインク滴を吐出する。このときに、インク吐出面429には、用紙からのインク滴の跳ね返りやインクミストなどによって、例えば、図13に示すように、第1撥水層441と第2撥水層442との間の第1親水性領域428aにインク滴461、第2撥水層442の外側の第2親水性領域428bにインク滴462がそれぞれ付着することがある。付着したインク滴461は、インク吐出面429内において、インクジェットヘッド406の往復移動及びインクジェットヘッド406の振動による空気の流れ及び慣性力によって、ノズル409から離れる方向に第2撥水層442を越えて、第2親水性領域428bまで移動する。これは、インク滴461の外側に形成された第2撥水層442において、第2撥水層442のノズル409側であって第1親水性領域428aとの境界線432がジグザグ形状となっていることにより、インク滴461が外側に向かって境界線432を超えるときにおいてのみ、その限界角度に達しやすくなっているためである。したがって、インク滴461にノズル409から離れる方向(図13の右向き)に力が加わったとき、インク滴461は第2撥水膜442を越えて第2親水性領域428bまで移動しやすくなっており、それ以外の向きに力が加わったとき、インク滴461は第1親水性領域428a内を移動する。
第2撥水層442は環状であるので、インク滴461が第1親水性領域428a内を移動したときも、さらにその移動方向に力が加えると、そのまま力が加えられた方向に第2撥水層442を越えて第2親水性領域428bに移動する。したがって、例えば、インク滴461に一方向からのみ風が吹いている場合であっても、液滴461を第2親水性領域428bに移動させることができる。このように、加えられる力がどの方向の力であっても、インク滴461を第2親水性領域428bに移動させることができる。また、インク滴462は、インクジェットヘッド406の片道移動及び振動によって発生する風及び慣性力によってインク吸収体425まで移動した場合にはインク吸収体425に吸収され、インク吸収体425に達しない場合は、第2親水性領域428b内を移動し、第2撥水膜442を越えて第1親水性領域428aまで移動することはない。こうして、インク滴461、462はノズル409から遠ざけられる。これによりノズル409から吐出されるインクがインク滴461、462と接触し、印字品質が低下してしまうのが防止されている。また、ノズル409近傍での液体の凝縮による固化物の発生も防止される。
また、第4実施形態のインクジェットヘッド406のインク吐出面429は、図14に示すようなインク吐出面429´であってもよい。図14は、本発明の第4実施形態の第1変形例に係るのインクジェットヘッド406のインク吐出面429´を示す拡大図である。図14に示すように、インク吐出面429´においては、マトリクス状に配列された複数のノズル409のうち一方向(図14の上下方向)に配列された複数のノズル409に対応する第2撥水層442同士が連結部453により連結されている。連結部453は、第2撥水層442と同じフッ素系樹脂からなり一方の第2親水性領域428bとの境界線(図14において各連結部453の左側の境界線)がジグザグ形状になっており、他方の第2親水性領域428bとの境界線(図14において各連結部453の右側の境界線)が直線形状となっている。このような連結部453が形成されていることで、第2親水性領域428bに付着したインク滴462は連結部453を越えてインク吐出面429の右側に移動するときにおいてのみ、インクジェットヘッド406の往復移動及び振動によって生じる空気の流れ及び慣性力によって、その限界角度に達しやすくなっているため、インク滴462はインク吐出面429の右方向に移動しやすくなる。したがって、ノズル409からインク滴を容易に遠ざけることが可能となり、インク滴は、インク吐出面429´の右端部においてインク吸収体425に吸収されやすくなる。
また、第4実施形態のインクジェットヘッド406のインク吐出面429は、図15に示すようなインク吐出面429´´であってもよい。図15は、本発明の第4実施形態の第2変形例に係るインクジェットヘッド406のインク吐出面429´´を示す拡大図である。図15に示すように、インク吐出面429´´では、一方向(図15の上下方向)に配列された複数のノズル409に対応する第2撥水層442同士が連結部454により互いに連結され、この方向と交差する方向(図15の左右方向)に配列された複数のノズル409に対応する第2撥水層442同士が連結部455により互いに連結されている。連結部454、455は、第2撥水層442と同じフッ素樹脂からなり、インクジェットヘッド406の中央部429´´aに近い側の第2親水性領域428bとの境界線がジグザグ形状になっており、インクジェットヘッド406の中央部429´´aから遠い側の第2親水性領域428bとの境界線が直線形状となっている。このような連結部454、455が形成されていることで、親水性領域428bに付着したインク滴462が連結部454、455を越えてインク吐出面429の外側(中央部429´´から離れる方向)に移動するときにおいてのみ、インクジェットヘッド406の往復移動及び振動によって生じる空気の流れ及び慣性力によって、親水性領域428bに付着したインク滴462がインク吐出面429の左右方向外側に加え、上下方向外側にも移動しやすくなる。したがって、ノズル409からインク滴を容易に遠ざけることが可能となり、インク滴は、インク吐出面429の周縁部においてインク吸収体425に吸収されやすくなる。
以上のように本実施の形態においても第1〜3実施形態と同様に、インクジェットヘッド406によると、インク吐出面429に付着したインク滴461、462を、インクジェットヘッド406の往復移動によって受ける慣性力や空気からの力などによって、ノズル409から遠ざけることができる。そのため、インク吐出面429に付着したインク滴461、462をインク吸収体425に吸収させることができるので、インク吐出面429からインク滴461、462を除去することができる。その結果、インク吐出面429を頻繁にワイプする必要がなくなり、またそのワイプ実行頻度を低下させることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、第1〜第3実施形態におけるインクジェットヘッドのノズル109の外周に第1撥水層141、141´が形成されていなくてもよい。また、第2実施形態における第3及び第4撥水層243,244が形成されていなくてもよい。また第3実施形態における第4撥水層244が形成されていなくてもよい。また、第4実施形態における第1撥水層441は形成されていなくてもよい。つまり、インク吐出面には、ノズル109の外周付近に第2撥水層のようなノズル109から外側に向かってだけインク滴が移動しやすい領域が形成されておればよい。これによって、インク吐出面に付着したインク滴は、ノズル109に近づくことが困難になる。したがって、インク吐出面のワイプ実行頻度を低下させることができる。また、インク吐出面には、第2撥水層が1つだけ形成されていてもよく、親水性領域と第2撥水層とがインク吐出面の延在方向に沿って交互に配置されていなくてもよい。これにより、第2撥水層を超えたインク滴は、ノズル109に近づきにくくなる。また、インクジェットヘッドには、インク吸収体125,225,325や風向板261,262,361が設けられていなくてもよい。
また、第1及び第2撥水層が同じ撥水性を有した材料から形成されているが、第1撥水層の撥水性が第2撥水層の撥水性より高ければ、異なる撥水性を有する材料から第1及び第2撥水層が形成されていてもよい。また、第2撥水層142のノズル109側であって、親水性領域との境界線がジグザグ形状になっているが、その境界線がなだらかな湾曲形状であってもよいし、一部にだけジグザグ形状となる部分を有していてもよい。また、境界線のジグザグ形状をなす傾斜部143は、インク吐出面129の延在方向に関して対称となっていなくてもよい。
また、第4の実施の形態においては、第2撥水層442の親水性領域428bとの境界線は円形であったがこれに限られず別の形状であってもよい。さらに、第2撥水性領域442は環状でなくてもよい。
さらに、第2撥水層442と第1親水性領域との境界は、境界線432のようにジグザグ線であることには限られず、図6の第1実施形態の第1〜第3撥水領域183a〜183cのように、第2撥水層442と第1親水性領域428aとの境界に第1親水性領域482aよりも撥液性の高い複数の撥水領域が形成されており、ノズル409から離れる方向に向かってその撥液性が段階的に向上するように配置されていてもよい。あるいは、図7の第1実施形態の親水性領域193のように、第2撥水層442と第1親水性領域428aとの境界に、多数の親水性領域が形成されており、ノズル409から離れるほど徐々にその平均密度が減少するように配置されていてもよい。また、図8の第1の実施の形態の高撥水部199bのように、第2撥水層442と第1親水性領域428aとの境界に、多数の撥水性領域が形成されており、ノズル409から離れるほど徐々にその平均密度が増加するように配置されていてもよい。これらの場合でも第1親水性領域428aから第2撥水層442を超えて第2親水性領域428bにインク滴が流れやすくなっており、インク滴をノズル409から遠ざけることができる。
また、連結部453、454、455のように一列に並んだノズル409に対応する第2撥水層442同士を連結することに限られず、任意の第2撥水層442同士を連結部により連結してもよい。さらに、連結部453、454、455と第2親水性領域428bとの境界線がジグザグ線で画定されている部分には、ジグザグ線の代わりに、前述の第2撥水層442と第1親水性領域428aとの境界に設けた親水性領域又は撥水性領域を設けてもよい。
さらに、第4実施の形態においては、インク吐出面429に複数のノズル409が形成されたインクジェットヘッドについて説明したがこれに限られず、本発明を1つのノズルを有するようなものに適用することも可能である。また、導電性液体を吐出して導電性パターンを形成する液滴噴射装置や、DNA溶液や試薬を吐出して分析を行う液滴噴射装置など、インク以外の液滴を噴射する液滴噴射装置に本発明を適用することも可能である。