JP4636971B2 - グラウト工法 - Google Patents
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Description
このような性状、機能を有する可塑性注入材(可塑性グラウト材)が従来より提案され、実用に供されている。
たとえば、セメントミルクと、ベントナイトミルクとを混合攪拌して得られる空洞充填、軽量盛土、及び埋立用の可塑性注入材が提案されており(特許文献1参照)、流動性モルタルに、モンモリロナイト粘土鉱物を混入した流動性の膨潤液を加えることにより非流動性の可塑状のグラウト材を得ることが提案されている(特許文献2参照)。
このため、従来、可塑性グラウト材の硬化を遅延させるには、コンクリートなどで使用されている遅延剤が用いられ、所定の遅延効果を得るには遅延剤量を調整することによって対応していた。この場合、室内試験では所定の遅延効果が発揮できるが、実施工においては現場の状況(温度、水中・気中の養生条件、負荷圧の有無)によって、遅延剤の効果が予定通り発揮できないことが多く、粘土の凝集を利用した可塑性グラウト材の場合、粘土が遅延剤を吸着することから、通常の添加量より、多量に添加しなければならない等、遅延剤による硬化時間の調整は極めて煩雑である。また、日々の施工終了時や製造プラントのトラブルなどにより、数時間から数日間注入が中断する場合など、遅延剤の効果が期待できない場合があり、毎回ホース内を洗浄してセメントミルクを取り出す必要がある。その上、洗浄した廃水の処理も必要となり手間がかかってしまう。
この可塑性注入材では、高炉スラグなどの潜在水硬性物質とベントナイトなどの可塑化材を混合した硬化液は、刺激液と接触して硬化が起こり強度が発現し始める。しかし、グラウト工法の様々な適用場面、適用環境において、これら両液の混合液は、その可塑性発現、強度発現が時間的、物性的に必ずしも一定せず、調整が難しいために、計画的な作業を確保できない場合が少なくなかった。
可塑化材は、ベントナイト、アタパルジャイト、メタカオリンから選ばれる1種以上であることが好ましく、石膏は無水石膏が最も好ましく用いられる。
そして、本発明は、施工箇所にあらかじめ注入され、未硬化状態である可塑性グラウト材マトリックス中にCaイオンを溶出させる刺激剤を注入して、該グラウト材マトリックスを硬化させることを特徴とするグラウト工法を提供する。
すなわち、本発明の可塑性グラウト材は、可塑状態を保持したまま、強度発現を必要とする時点まで硬化を遅延させることが可能となる。このため、亀裂などへの逸脱などもなく、限定注入が可能であり、計画的な施工管理が行える利点がある。
また、本発明によれば、使用する液材(A液、B液)及び混合液が短時日のうちに硬化したり、流動性の低下が発生することがないため、日々の施工終了時や施工中断時にミキサー、ホースなどの洗浄が必要なくなり施工の省力化となり、洗浄水の排水処理問題もなくなる。
本発明のA液(遅硬性硬化液)は、潜在水硬性物質である高炉スラグ等に石膏および水を含有させたものである。
本発明において、石膏は無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれをも使用することができる。このうち、無水石膏がグラウト材の硬化後の発現強度が大きくなる点で最も好ましく用いられる。
遅延剤は、潜在水硬性材料と石膏との混合物に対し質量比で0.4〜2.0%含有させることが好ましい。
B液中のベントナイトなど可塑化材は水中で膨潤し、マイナスイオンに帯電している。これにA液を混合するとA液に含まれる石膏中のカルシウムイオンなどにより、ベントナイト粒子表面のマイナス荷電をカルシウムイオンが中和することにより、ベントナイト粒子の分子間引力による急激な凝集反応が発生し、瞬時に可塑性を生じる。
可塑化材としては、粘土鉱物が好適に用いられるが、なかでも、ベントナイト、アタパルジャイト、メタカオリンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
B液は、可塑化材と水を質量比1:3〜1:20、好ましくは1:5〜1:10で含有する。
また、B液には、その流動性を高めるために、混和剤としての減水剤を添加することができる。かかる減水剤としては、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系、およびポリカルボン酸系などコンクリートにおいて用いられる減水剤が使用できる。減水剤の添加量は、減水剤の種類や製品により異なるが、通常、可塑化材に対して質量比で0.5〜2.0%である。
このようなA液、B液の組成、混合割合の本発明の可塑性グラウト材は、シリンダーフロー値が80〜150mmの範囲の可塑性状を示すものである。
Caイオンを溶出させる刺激剤としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、エコセメント、セメント系固化材、水酸化カルシウムなどが例示できる。該刺激剤は、通常、水と混合したスラリー状態(濃度50〜200重量%)で用いられ、その添加量は、スラリーとして、グラウト材容積の5〜10%程度が好適である。
可塑性評価は、日本道路公団規格試験法であるシリンダー法フロー試験によった。フロー値は、80〜150mmが好ましく、80〜120mmがより好ましい。当該フロー値が150mm以上のものは限定注入等には適さない(80mm径のシリンダーを用いるので、80mm未満になることはない)。
硬化体の圧縮強度は、地盤工学会基準「一軸圧縮試験(JISA1216)」により測定した。グラウト工法におけるグラウト材硬化体の圧縮強度は、0.5N/mm2以上あれば十分である。
スラグとして高炉スラグ(JIS R5211「高炉セメント」に規定されるもの)と、石膏として無水石膏と、遅延剤(JETMS−A液用混和剤(ポリカルボン酸系)、住友大阪セメント(株)製)と、水とを、表1の組成で混練し、A液を調製し、可塑化材としてのアタパルジャイト(200メッシュふるい全通の粒径)又はベントナイト(膨潤度16;200メッシュふるい全通の粒径)と、減水剤(JETMS−B液用混和剤(ピロ燐酸系)、住友大阪セメント(株)製)と、水とを、表1の組成で混練してB液を調製した。A液、B液は材料分離がなく、ポンプ圧送性のよいものであった。この2液を混合攪拌し、可塑化(ゲル化)させた。
両液混合直後のシリンダーフロー値(可塑性)を表1に示した。また、表1の配合No.3〜5について、両液混合7日後、可塑化させた未硬化グラウト材に、刺激剤(W/C比=100%のセメントミルク:普通ポルトランドセメント、住友大阪セメント(株)製)を容積比で5%注入しハンドミキサーで混合攪拌し、強度発現性を確認した。刺激剤注入後のグラウト材の圧縮強度の経日変化を表3に配合No.3´〜5´として示した。(また、刺激剤無注入のままのグラウト材の両液混練後の固化状態、固化後圧縮強度の経日変化を表2に配合No.3〜5として示した。)
また、表2及び表3から、本発明の可塑性グラウト材は、A液とB液を混合しただけでは未硬化状態が7日以上であったが、刺激剤を注入することで強度発現が生じることが確認できる。
Claims (8)
- 施工箇所にあらかじめ注入され、未硬化状態である可塑性グラウト材マトリックス中にCaイオンを溶出させる刺激剤を注入して、該グラウト材マトリックスを硬化させるグラウト工法であって、該可塑性グラウト材が、潜在水硬性材料、石膏及び水を混練したミルク(A液)と可塑化材と水を混練したミルク(B液)とを混合、攪拌してゲル化させたものであって、硬化必要時まで未硬化状態を保持するように遅延剤を含有するものである、グラウト材マトリックスを硬化させるグラウト工法。
- 潜在水硬性材料と石膏との質量比95:5〜30:70の混合物と水とを質量比100:40〜100:200で含有するA液と、可塑化材と水を質量比1:3〜1:20で含有するB液を、容積比率1:1〜1:5で混合したものである、請求項1に記載のグラウト工法。
- A液中に遅延剤を潜在水硬性材料と石膏との混合物に対し質量比で0.4〜2.0%含有させたものである請求項1又は2に記載のグラウト工法。
- 潜在水硬性材料が高炉スラグ及び/又はフライアッシュである請求項1又は2に記載のグラウト工法。
- 可塑化材が、ベントナイト、アタパルジャイト、メタカオリンから選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のグラウト工法。
- 石膏が無水石膏である請求項1又は2に記載のグラウト工法。
- B液に減水剤を可塑化材に対し質量比で0.5〜2.0%添加した請求項1又は2に記載のグラウト工法。
- 刺激剤が、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、エコセメント、セメント系固化材、水酸化カルシウムから選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のグラウト工法。
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