JP4636702B2 - 電子レンジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子レンジに関し、特に、マグネトロンの発振するマイクロ波を加熱室内に導く放射アンテナを備えた電子レンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子レンジには、特許第2894250号に開示されているように、マグネトロンの発振するマイクロ波を加熱室内に導くためのアンテナであって、回転されるアンテナ(回転アンテナ)を備えたものがあった。
【0003】
上記の電子レンジでは、回転アンテナを回転させながらマグネトロンを動作させることにより、加熱室に対するマイクロ波の放射態様を変化させて、加熱室内の食品を全体的にまんべんなく加熱させようとしていた。
【0004】
また、上記の電子レンジでは、加熱室の、食品が載置されている位置を集中して加熱させようとしていた。具体的には、赤外線検出素子を用いることにより加熱室内の食品の載置位置を検出していた。そして、検出された載置位置に対応した位置で上記の回転アンテナを停止させ、マグネトロンを動作させていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マグネトロンから発振されるマイクロ波を効率良く加熱室に放射するためには、回転アンテナの外形の寸法に制限を受ける。回転アンテナの外形の寸法への制限の内容としては、たとえば、マイクロ波の伝播距離に対する電界強度の変化を考慮すると、加熱室内に効率良くマイクロ波を放射するためには、回転アンテナの回転中心から外縁部までの長さを、所定の長さまたはそれにマイクロ波の波長の整数倍を加えたものとすること、および、回転アンテナの外形の寸法が長くなるほど回転アンテナにおけるマイクロ波の伝送ロスが大きくなるため、加熱室に対してマイクロ波を効率良く放射するためには、回転アンテナの外形寸法はより小さくすることが好ましいこと、を挙げることができる。
【0006】
したがって、従来の電子レンジでは、加熱室にマイクロ波を導くためのアンテナの外形の寸法に制限を受けるため、そのようなアンテナを回転させながら加熱動作を行なっても、さらに、そのようなアンテナを食品の載置位置に対応させて停止させた状態で加熱動作を行なっても、加熱室に対するマイクロ波の放射態様を十分には調整できなかった。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、加熱室内にマイクロ波を導くアンテナの外形寸法に対する制限を満たしつつ、加熱室に対するマイクロ波の放射態様を調整できる、電子レンジを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面に従った電子レンジは、食品を収容する加熱室と、マイクロ波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンの発振したマイクロ波を前記加熱室内に導く放射アンテナと、前記放射アンテナに、当該放射アンテナに対して電気的に絶縁されるように備えられた補助アンテナとを含み、前記放射アンテナは、所定の方向にマイクロ波を放射するよう構成され、前記補助アンテナは、前記所定の方向に交わる方向に長手方向を有するスリットを形成されている。
【0009】
これにより、マグネトロンが発振し放射アンテナの外周部から放射されたマイクロ波は、加熱室内に供給されると共に、補助アンテナと所定の壁面との間を伝わって補助アンテナの外周部から加熱室内へと放射される。
【0010】
したがって、放射アンテナの外形寸法に制限が加えられても、補助アンテナの形状を調整することにより、加熱室内に、所望の態様で、マイクロ波を供給できる。また、このことから、加熱室の大きさ等が、アンテナの外形寸法に制約を受けることもない。
【0016】
また、放射アンテナは、所定の方向にマイクロ波を放射するよう構成され、補助アンテナは、前記所定の方向に交わる方向に長手方向を有するスリットを形成しているので、放射アンテナから放射されるマイクロ波を、補助アンテナのスリットを介して、より強力に、放射できる。
【0017】
したがって、加熱室において、特定の位置に載置された食品を、集中して、加熱できる。
【0018】
また、本発明の他の局面に従った電子レンジは、食品を収容する加熱室と、マイクロ波を発振するマグネトロンと、前記マグネトロンの発振したマイクロ波を前記加熱室内に導く放射アンテナと、前記放射アンテナに、当該放射アンテナに対して電気的に絶縁されるように備えられた補助アンテナとを含み、前記放射アンテナは、当該放射アンテナの所定の位置から、当該放射アンテナの他の位置よりも強く、所定の方向にマイクロ波を放射するよう構成され、前記補助アンテナは、前記放射アンテナの所定の位置に対向する部分に、前記所定の方向に交わる方向に長手方向を有するスリットを形成されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、マグネトロンが発振し放射アンテナの外周部から放射されたマイクロ波は、加熱室内に供給されると共に、補助アンテナと所定の壁面との間を伝わって補助アンテナの外周部から加熱室内へと放射される。また、放射アンテナの所定の位置から放射されるマイクロ波を、補助アンテナのスリットを介して、より強力に、放射できる。
【0020】
したがって、放射アンテナの外形寸法に制限が加えられても、補助アンテナの形状を調整することにより、加熱室内に、所望の態様で、マイクロ波を供給できる。さらに、加熱室において、特定の位置に載置された食品を、集中して、加熱できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
1.電子レンジの構造
図1は、本発明の一実施の形態の電子レンジの斜視図である。
【0030】
図1を参照して、電子レンジ1は、主に、本体2と、ドア3とからなる。本体2は、その外郭を、外装部4に覆われている。また、本体2の前面には、ユーザが、電子レンジ1に各種の情報を入力するための操作パネル6が備えられている。なお、本体2は、複数の脚8に支持されている。
【0031】
ドア3は、下端を軸として、開閉可能に構成されている。ドア3の上部には、把手3aが備えられている。図2に、ドア3が開状態とされたときの電子レンジ1を左前方より見た、電子レンジ1の部分的な斜視図を示す。
【0032】
本体2の内部には、本体枠5が備えられている。本体枠5の内部には、加熱室10が設けられている。加熱室10の右側面上部には、孔10aが形成されている。孔10aには、加熱室10の外側から、検出経路部材40が接続されている。加熱室10の底面には、底板9が備えられている。
【0033】
図3に、外装部4を外した状態にある電子レンジ1を右上方から見た、電子レンジ1の斜視図を示す。図4に、図1のIV−IV線に沿う矢視断面図を示す。また、図5に、図1のV−V線に沿う矢視断面図を示す。なお、本体枠5の右側面には、加熱室10に隣接するようにマグネトロン12(図4参照)等の各種の部品が搭載されているが、図3では、省略している。
【0034】
図3〜図5を参照して、孔10aに接続された検出経路部材40は、開口を有し、当該開口を孔10aに接続された箱形状を有している。なお、検出経路部材40を構成する当該箱形状の底面には、赤外線センサ7が取付けられている。そして、検出経路部材40を構成する箱形状の底面には、検出窓11が形成されている。赤外線センサ7は、検出窓11を介して、加熱室10内の赤外線をキャッチする。
【0035】
外装部4の内部には、加熱室10の右下に隣接するように、マグネトロン12が備えられている。また、加熱室10の下方には、マグネトロン12と本体枠5の下部を接続させる導波管19が備えられている。マグネトロン12は、導波管19を介して、加熱室10に、マイクロ波を供給する。
【0036】
また、本体枠5の底部と底板9の間には、回転アンテナ15が備えられている。導波管19の下方には、アンテナモータ16が備えられている。回転アンテナ15とアンテナモータ16とは、軸15aで接続されている。そして、アンテナモータ16が駆動することにより、回転アンテナ15が回転する。
【0037】
加熱室10内では、底板9上に、食品が載置される。マグネトロン12の発したマイクロ波は、導波管19を介し、回転アンテナ15によって攪拌されつつ、加熱室10内に供給される。これにより、底板9上の食品が加熱される。
【0038】
また、加熱室10の後方には、ヒータユニット130が備えられている。ヒータユニット130には、ヒータ、および、当該ヒータの発する熱を加熱室10内に効率よく送るためのファンが収納されている。なお、図示は省略しているが、加熱室10の上方にも、食品の表面に焦げ目をつけるためのヒータが備えられている。
【0039】
2.赤外線センサの視野
赤外線センサ7は、複数の赤外線検出素子(後述する赤外線検出素子7a)を備えている。そして、各赤外線検出素子は、視野を有する。赤外線センサ7の視野は、各赤外線検出素子の視野を合わせたものと考えることができる。赤外線センサ7を、図4および図5に、総視野700として、模式的に示す。
【0040】
赤外線センサ7の視野は、底板9上の全体を覆う。これにより、電子レンジ1では、底板9上のいかなる場所に食品を載置されても、赤外線センサ7の視野を移動させることなく、当該食品を、赤外線センサ7の視野内に入れることができる。
【0041】
赤外線センサ7は、上述したように、複数の赤外線検出素子を備えている。図6に、該複数の赤外線検出素子の視野を模式的に示す。
【0042】
図6には、底板9と赤外線センサ7が模式的に示されている。なお、図6中で、両矢印xは、電子レンジ1の幅方向であり、両矢印yは、電子レンジ1の奥行き方向であり、両矢印zは、電子レンジ1の高さ方向である。両矢印x,y,zは、互いに直交している。
【0043】
赤外線センサ7は、y方向およびz方向に5個ずつ並べられた、(5×5)個、つまり、合計25個の赤外線検出素子7aを備えている。赤外線検出素子7aは、それぞれ、視野70aを有する。
【0044】
25個の赤外線検出素子7aの視野70aは、それぞれ、底板9上に投影される。底板9上では、y方向およびx方向に5個ずつ並んだ、合計25個の視野70aが投影されている。なお、y方向に赤外線検出素子7aが5個並んでいることに対応して、底板9上では、y方向に5個の視野70aが並んでいる。また、z方向に赤外線検出素子7aが5個並んでいることに対応して、底板9上では、x方向に5個の視野70aが並んでいる。
【0045】
なお、底板9上では、x方向について右側ほど、投影されている視野70aの面積が小さくなっている。これは、x方向について右側ほど、底板9と赤外線検出素子7aとの距離が短くなるからである。
【0046】
1個の赤外線検出素子7aの視野70aは、底板9全体を含むことはできない。しかしながら、図6に示すように、赤外線センサ7に備えられた25個の赤外線検出素子7aの、25個の視野70aを合わせると、底板9のほぼ全体が、視野70aに含まれることになる。なお、25個の視野70aを合わせたものが、図4または図5に示した総視野700である。
【0047】
3.制御ブロック図
図7に、電子レンジ1の制御ブロック図を示す。電子レンジ1は、当該電子レンジ1の動作を全体的に制御する制御回路30を備えている。制御回路30は、マイクロコンピュータを含む。
【0048】
制御回路30は、操作パネル6,赤外線センサ7から種々の情報を入力される。そして、制御回路30は、該入力された情報等に基づいて、冷却ファンモータ31,庫内灯32,マイクロ波発振回路33およびヒータ13の動作を制御する。冷却ファンモータ31は、マグネトロン12を冷却するためのファンを駆動するモータである。庫内灯32は、加熱室10内を照らす電灯である。マイクロ波発振回路33は、マグネトロン12にマイクロ波を発振させる回路である。ヒータ13とは、ヒータユニット130内のヒータ、および、加熱室10の上方に備えられたヒータである。
【0049】
なお、制御回路30には、個々の赤外線検出素子7aの検出出力が、独立して、入力される。
【0050】
4.自動調理処理における処理内容
次に、電子レンジ1における、赤外線センサ7によって加熱室10内の食品の温度を検出させ、自動的に加熱を終了させる、加熱調理について、制御回路30が実行する処理を中心に、説明する。図8は、電子レンジ1において当該加熱調理を実行するために、制御回路30が実行する、加熱調理処理のフローチャートである。
【0051】
操作パネル6において加熱調理を実行する旨の操作がなされると、制御回路30は、まず、ステップSA1(以下、「ステップ」を省略する)で、マグネトロン12の加熱動作を開始させ、SA2に進む。
【0052】
SA2では、図6に示した25個の赤外線検出素子7aの、それぞれの検出結果に基づいて、それぞれの視野70a内の物体の温度を検出し、SA3に進む。なお、図6に示した25個の赤外線検出素子7aは、それぞれの位置に応じて、P(1)〜P(25)とされている。そして、SA2では、P(1)〜P(25)のそれぞれの検出結果が、T0 (1)〜T0 (25)として、記憶される。
【0053】
SA3では、制御回路30は、SA1で加熱を開始してから予め定められたt秒が経過したか否かが判断される。そして、t秒が経過したと判断すると、SA4に進む。
【0054】
SA4では、制御回路30は、上記したP(1)〜P(25)の各赤外線検出素子7aの検出結果に基づいて温度検出を行ない、当該温度検出値をT(1)〜T(25)として記憶して、SA5に進む。
【0055】
SA5では、制御回路30は、P(1)〜P(25)のそれぞれについて、直前で実行したSA4において記憶した検出値T(n)(nは1〜25)と、加熱開始直後に測定したT0 (n)との差ΔT(n)を算出して、SA6に進む。
【0056】
SA6では、制御回路30は、SA5において算出した25個のΔT(n)の中から、値の一番大きなもの(maxΔT1 )と、二番目に値の大きなもの(maxΔT2 )を抽出して、SA7に進む。
【0057】
SA7では、制御回路30は、SA5において算出した25個のΔT(n)からSA6で抽出した残りの23個のΔT(n)から、下記の式(1)の条件を満たすΔT(n)を抽出して、SA8に進む。式(1)において、maxΔT1 とは、SA6で抽出したΔT(n)の最大値であり、Kは、0<K≦1を満たす定数である。電子レンジ1では、複数の調理メニューのそれぞれに応じて、加熱調理処理が実行される。そして、定数Kの値は、実行される調理メニューに応じて、変更される。
【0058】
ΔT(n)≧maxΔT1 ×K …(1)
なお、SA7では、式(1)の条件を満たすΔT(n)は、maxΔT3 〜maxΔTk として、(k−2)個抽出される。つまり、SA6およびSA7では、25個のΔT(n)から、maxΔT1 〜maxΔTk という、大きいものからk個の値が、抽出されることになる。
【0059】
SA8で、制御回路30は、以下の式(2)に従ってaveΔTを算出し、SA9に進む。
【0060】
【数1】
【0061】
なお、式(2)から理解されるように、aveΔTは、上位k個の加熱開始時からの温度差の平均値に相当する。
【0062】
SA9では、制御回路30は、以下の式(3)が満足されるか否かを判断する。なお、式(3)で、Tpとは、被加熱物に対する設定温度であり、赤外線センサ7において当該設定温度が検出された場合には、被加熱物が十分加熱されたとして加熱を終了させるべきである、とされる温度である。なお、当該設定温度Tpも、調理メニュー毎に、独立して、値が設定されている。
【0063】
(T0 +aveΔT)≧Tp …(3)
そして、制御回路30は、SA9で、式(3)が満足されていないと判断するとSA10に進む。
【0064】
SA10では、制御回路30は、S6およびS7でmaxΔT1 〜maxΔTk が抽出されたk個の各位置で、その時点でのT(n)(赤外線検出素子7の検出出力に基づく温度)を検出し、SA11に進む。
【0065】
SA11では、制御回路30は、直前のSA10で検出した温度とSA2で検出したT0 とに基づいて、maxΔT1 〜maxΔTk を算出し、SA8に進む。SA10〜SA11の処理は、SA9で式(3)が満足されると判断されるまで、続けられる。
【0066】
そして、S9で式(3)が満足されると判断されると、S12でマグネトロン12による加熱動作を終了させた後、リターンする。
【0067】
以上説明した加熱調理処理では、SA8〜SA11の処理として説明したように、最終的には、25個の赤外線検出素子7aの中のk個の検出出力を用いて、被加熱物の加熱が完了したか否かを判断する。上記したk個の検出出力は、SA3〜SA7の処理として説明したように、加熱開始から所定時間(t秒)が経過するまでの、上昇温度ΔT(n)が、式(1)の条件を満たすものである。式(1)の条件とは、ΔT(n)が、最大の上昇温度maxΔT1 にKをかけたもの以上の値である、ということである。
【0068】
以上説明した本実施の形態では、制御回路30により、複数の赤外線検出素子の各検出出力に基づいて、当該複数の赤外線検出素子の各視野内の物体の温度である視野内温度を算出する温度算出手段が構成されている。また、制御回路30によって、温度算出手段の算出した視野内温度に基づいて、加熱手段の加熱動作を制御する加熱制御手段が、兼用構成されている。
【0069】
そして、SA5で検出される、25個の赤外線検出素子7aのそれぞれについてのΔT(n)が、視野内温度の所定時間内の変化量である所定時間変化量に対応している。
【0070】
そして、SA6およびSA7で抽出したmaxΔT1 〜maxΔTk が、所定時間変化量の中の、特定の所定時間変化量に対応している。なお、特定の所定時間変化量は、最も大きい所定時間変化量,および,当該所定時間変化量に対して所定の割合以上の値を有する所定時間変化量である。
【0071】
そして、SA10において温度検出の対象となるk個の赤外線検出素子7aの視野70aが、特定の視野に対応している。なお、特定の視野とは、複数の赤外線検出素子の視野の中の、特定の所定時間変化量に対応する視野である。
【0072】
そして、SA8〜SA11の処理により、制御回路30は、特定の視野における視野内温度に基づいて、加熱手段の加熱動作を制御していることになる。
【0073】
以上説明した本実施の形態では、図6に示すように、赤外線センサ7は、5×5のマトリクス状に、25個の赤外線検出素子7aを備えている。そして、25個の赤外線検出素子7aの視野70aは、それぞれ底板9上の異なる位置を含み、25個の視野70aによって、底板9のほぼ全体が、覆われていた。つまり、底板9上のいずれの場所に食品が載置されても、該食品は、25個の視野70aのいずれかの中に入る。
【0074】
つまり、以上説明した本実施の形態では、複数の赤外線検出素子は、加熱室内のいずれの場所に被加熱物が載置されても、当該複数の赤外線検出素子の視野を移動させることなく、加熱室内に載置された食品の少なくとも一部を、当該複数の赤外線検出素子の視野に含めることができるように、配置されていることになる。
【0075】
なお、本実施の形態では、加熱開始後、最も大きい温度変化が見られた位置(maxΔT1 の検出位置)に、食品が載置されているとして、当該最も大きい温度変化が見られた位置について、加熱終了まで、継続して、温度検出を行なう(SA8〜SA11)。
【0076】
また、加熱開始後、二番目に大きい温度変化が見られた位置(maxΔT2 の検出位置)についても、食品が載置されているとして、当該位置について、加熱終了まで、継続して、温度検出を行なう(SA8〜SA11)。
【0077】
さらに、加熱開始後、最も大きい温度変化に対して、所定の割合(K:SA7参照)以上の温度変化が見られれば、そのような位置についても、加熱終了まで、継続して、温度検出を行なう(SA8〜SA11)。
【0078】
このような制御を実行することにより、底板9上に、複数の被加熱物が載置された場合でも、当該複数の被加熱物の温度をすべて参照しつつ、加熱調理処理を実行することができる。
【0079】
ただし、本実施の形態では、maxΔT2 の検出位置に対しては、maxΔT2 がmaxΔT1 のK倍以上であるか否かに関わらず、加熱終了まで継続して温度検出が実行されるが、本実施の形態はこれに限定されない。
【0080】
つまり、本実施の形態では、少なくとも2つの位置(maxΔT1 ,maxΔT2 の検出位置)に対して加熱終了まで継続して温度検出が実行されるが、これを、1つの位置に対してのみ、加熱終了まで継続して温度検出が実行されるように、変更することもできる。この場合、SA6において、maxΔT1 のみを抽出するよう、処理内容が変更される。また、この場合、SA7において、maxΔT2 〜maxΔTk の、(k−1)個の値が抽出される。
【0081】
赤外線センサ7が、赤外線検出素子7aを複数備える場合、必ずしも図6に示したように、底板9のほぼ全体が、いずれかの赤外線検出素子7aの視野70aに含まれる必要はない。
【0082】
以下に、本実施の形態の第1の変形例として、赤外線センサ7が、所定の方向に一列に配列された複数の赤外線検出素子7aを備えている例について、説明する。
【0083】
5.第1の変形例
図9は、赤外線センサ7が、加熱室10の奥行き方向に一列に並んだ赤外線検出素子7a(図9では図示略)を備えている、電子レンジ1の第1の変形例を示す図である。なお、図9では、加熱室10の内部を容易に視認できるように、外装部4およびドア3を省略し、かつ、本体枠5の中の、加熱室10の左側壁を構成する部分を省略している。また、図9では、加熱室10の、幅方向にx軸が、奥行き方向にy軸が、高さ方向にz軸が定義されている。これらの3軸は、互いに直交している。
【0084】
本変形例の電子レンジ1では、赤外線センサ7に、y軸方向に並んだ6個の赤外線検出素子7aが備えられている。
【0085】
赤外線センサ7が6個の赤外線検出素子7aを備えることから、底板9上では、実線で記載された、y軸方向に並ぶ6個の視野70aが、同時に投影される。なお、底板9は、6個の視野70aによって、x方向の或る領域について、y方向の一方端から他方端までを覆われている。
【0086】
また、電子レンジ1には、赤外線センサ7を両矢印93方向に移動させることのできる部材(図示略)が備えられている。両矢印93は、x−z平面上の回転方向を示している。
【0087】
赤外線センサ7が両矢印93方向に移動されることにより、赤外線検出素子7aの位置も移動され、底板9上に投影される視野70aの位置が両矢印91方向(x軸方向)に移動する。詳しくは、赤外線センサ7が両矢印93方向に移動されることにより、視野70aは、実線で示される視野70aの位置から、破線で示される視野70aの位置までの範囲で、移動できる。
【0088】
図10は、視野70aが底板9上を移動する状態を模式的に示す図であり、図11は、本変形例において、制御回路30が実行する加熱調理処理のフローチャートである。以下に、図10および図11を参照して、本変形例において、赤外線センサ7に備えられた複数の赤外線検出素子7aの各検出出力が、どのように、加熱調理に利用されるかを説明する。
【0089】
なお、以下の説明では、赤外線検出素子7aが加熱室10の奥行き方向に並んだ電子レンジ1全般を対象とするため、図10では、赤外線検出素子7aの数を限定せず、y方向に並ぶ視野70aの数をn個としている。また、図10では、視野70aのx方向に移動しながら、m個の位置を取ることができるように、記載されている。つまり、底板9上の視野70aの位置は、P(x,y)という座標形式を用いれば、P(1,1)〜P(m,n)と記載することができる。
【0090】
また、本変形例では、複数の赤外線検出素子7aは、その視野が、底板9をy方向について一端から他端まで同時に覆うように、配列されている。したがって、当該複数の赤外線検出素子7aの視野のP(x,y)の座標としては、常に、x座標が同じ値となり、y座標が1〜nの値を有するn個の座標が存在することになる。
【0091】
操作パネル6において加熱調理を実行する旨の操作がなされると、制御回路30は、まず、S1で、マグネトロン12の加熱動作を開始させ、S2に進む。
【0092】
S2では、制御回路30は、赤外線検出素子7aの各視野70aの座標が「x=1」に位置するよう赤外線センサ7を移動させて、S3に進む。「x=1」の位置とは、底板9の右端の位置である。赤外線検出素子7aの各視野70aの座標が「x=1」に位置する場合、図9および図10では視野70aは実線で示された位置に存在することになり、複数の赤外線検出素子7aの視野の座標は、P(1,1)〜P(1,n)となる。
【0093】
S3では、現在の各視野70aの位置での検出出力に基づいて、各視野70a内の物体の温度を検出し、当該検出温度をT0 (x,1)〜T0 (x,n)として記憶し、S4に進む。T0 (x,1)〜T0 (x,n)のxの値としては、現在の各視野70aのx座標の値が代入される。
【0094】
S4では、制御回路30は、各視野70aのx座標の値を「1」加算更新して、S5に進む。なお、視野70aのx座標の値が「1」加算更新されるとことにより、視野70aのx座標が加算更新後のx座標の位置に移動される。
【0095】
S5では、制御回路30は、S4で加算更新された結果x座標の値がmを越えるか否かを判断し、越えないと判断するとS3に戻り、越えると判断するとS6に進む。これにより、S3およびS4における処理は、視野70aのx座標が1からmまで継続される。したがって、底板9全体が、n×m個の視野70aのいずれかに含まれることになる。
【0096】
S6では、制御回路30は、S3においてx=1での温度検出を行なってから予め定められたt秒が経過したか否かを判断し、経過したと判断するとS7に進む。
【0097】
S7では、制御回路30は、赤外線検出素子7aの各視野70aの座標が「x=1」に位置するよう赤外線センサ7を移動させて、S8に進む。
【0098】
S8では、現在の各視野70aの位置での検出出力に基づいて、各視野70a内の物体の温度を検出し、当該検出温度をT(x,1)〜T(x,n)として記憶し、S9に進む。
【0099】
S9では、制御回路30は、各視野70aのx座標の値を「1」加算更新して、S10に進む。
【0100】
S10では、制御回路30は、S9で加算更新された結果x座標の値がmを越えるか否かを判断し、越えないと判断するとS8に戻り、越えると判断するとS11に進む。これにより、S8およびS9における処理は、視野70aのx座標が1からmまで継続される。
【0101】
S11では、制御回路30は、S3で記憶したT0 (1,1)〜T0 (m,n)とS8で記憶したT(1,1)〜T(m,n)を用いて、各座標についてΔT(x,y)を算出して、S12に進む。つまり、S11では、n×m個のΔT(x,y)が算出される。なお、ΔT(x,y)は、以下の式(4)に従って算出される。
【0102】
ΔT(x,y)=T(x,y)−T0 (x,y) …(4)
なお、T0 (x,y)は、開始直後の、各座標(x,y)における検出温度であり、T(x,y)は、T0 (x,y)が検出されてからt秒後の、各座標(x,y)における検出温度である。つまり、ΔT(x,y)は、t秒間の、各座標における上昇温度である。
【0103】
S12では、制御回路30は、S11で算出されたn×m個のΔT(x,y)の中から、最大のものを抽出し、maxΔT(x,y)として記憶して、S13に進む。
【0104】
S13では、制御回路30は、S11で算出されたn×m個のΔT(x,y)の中から、以下の式(5)の条件を満たすものを抽出し、ΔTa(x,y)として記憶し、S14に進む。
【0105】
ΔT(x,y)≧maxΔT(x,y)×K …(5)
なお、式(5)において、Kは、0<K≦1を満たす定数であり、その値は、実行される調理メニューに応じて、変更される。
【0106】
また、以下に、ΔTa(x,y)に対応する視野70aの位置を、「特定の位置」という。
【0107】
S14では、制御回路30は、S13においてΔTa(x,y)として抽出された特定の位置について、それぞれ、S3で記憶した、加熱開始直後の検出温度T0 (x,y)を呼び出してTa0 (x,y)とし、該Ta0 (x,y)の平均値を算出し、該平均値をTa0 として記憶し、S15に進む。
【0108】
S15では、制御回路30は、S13で抽出したΔTa(x,y)の平均値を算出し、該平均値をΔTaとして記憶し、S16に進む。
【0109】
S16では、制御回路30は、S14で算出したTa0 にS15で算出したΔTaを加えたものが、Tpに到達するか否かを判断する。そして、まだ到達していないと判断するとS17に進み、既に到達していると判断するとS19に進む。Tpとは、被加熱物に対する設定温度であり、被加熱物が十分加熱されたとして加熱を終了させるべきである、とされる温度である。
【0110】
S19では、制御回路30は、マグネトロン12による加熱を終了させて、加熱調理処理を終了させてリターンする。
【0111】
一方、S17では、制御回路30は、S13においてTa(x,y)として抽出された特定の位置(座標Pa(x,y)とする)について、温度検出を行ない、S18に進む。
【0112】
S18では、特定の位置のそれぞれについて、直前のS17での検出温度と、S3で検出した温度との差ΔTa(x,y)を算出し、S15に戻る。
【0113】
以上説明した本変形例では、底板9において、P(1,1)〜P(m,n)で示されるn×m個の位置について、視野70a内の温度検出が実行される。なお、n×m個の各位置についての温度検出は、加熱開始直後(S2〜S5)および加熱開始から所定時間経過後(S7〜S10)に、行なわれる。
【0114】
そして、n×m個の各位置について、加熱開始から所定時間(t秒間)の温度変化が、ΔT(1,1)〜ΔT(m,n)として、算出される(S11)。
【0115】
そして、ΔT(1,1)〜ΔT(m,n)の中から、最大値maxΔT(x,y)に対して所定の割合K以上の値を有するΔTa(x,y)が、抽出される(S12,S13)。なお、maxΔT(x,y)はΔT(1,1)〜ΔT(m,n)の中の最大値であり、ΔTa(x,y)にはmaxΔT(x,y)が含まれる。また、底板9上のn×m個の位置の中で、抽出されたΔTa(x,y)のそれぞれに対応する位置を、特定の位置と呼んでいる。
【0116】
そして、本変形例では、これ以降の処理は、n×m個の位置の中の、特定の位置のみが、温度検出の対象となる。
【0117】
つまり、当該特定の位置のそれぞれについての加熱開始時の温度Ta0 (x,y)の平均値として、Ta0 が算出される(S14)。また、当該特定の位置の上昇温度ΔTa(x,y)の平均値として、ΔTaが算出される(S15)。そして、Ta0 とΔTaの和が設定温度Tp以上であるか否かが、加熱終了の判断基準となる(S16)。
【0118】
なお、Ta0 とΔTaの和が設定温度Tp以上となるまで、特定の位置でのみ、温度が検出される(S17,S18,S15)。
【0119】
つまり、本変形例では、加熱開始後、最も大きい温度変化が見られた位置に、食品が載置されているとして、当該最も大きい温度変化が見られた位置について、加熱終了まで、継続して、温度検出を行なう。なお、当該最も大きい温度変化に対して、所定の割合(K:S13参照)以上の温度変化が見られれば、そのような位置についても、加熱終了まで、継続して、温度検出を行なう。
【0120】
ここで、最も大きい温度変化が見られた位置と当該位置に対して所定の割合以上の温度変化が見られた位置とを合わせて、本変形例では「特定の位置」としていた。
【0121】
このような制御を実行することにより、底板9上に、複数の被加熱物が載置された場合でも、当該複数の被加熱物の温度をすべて参照しつつ、加熱調理処理を実行することができる。
【0122】
以上説明したように、本変形例では、複数の赤外線検出素子7aは、その視野70aを合わせると、底板9のx軸方向(加熱室10の幅方向)の或る領域について、y軸方向(加熱室10の奥行き方向)の一方端から他方端までを覆うように、備えられていた。そして、本変形例では、図9および図10を用いて説明したように、視野70aをx軸方向に移動させていた。
【0123】
なお、電子レンジ1では、図12および図13に示すように、複数の視野70aのいずれかによって底板9のx軸方向の一方端から他方端までが覆われるように赤外線検出素子7aを備え、かつ、当該視野70aをy軸方向に移動させてもよい。より具体的には、図12および図13を参照して、加熱室10内で、複数の視野70aは、それぞれ、両矢印99方向に、つまり、y軸方向に、移動される。これにより、視野の位置をx−y座標P(x,y)で示した場合、P(1,n)〜P(m,n)に位置する視野は、そのy座標が変化するように、移動される。
【0124】
また、複数の赤外線検出素子7aは、その視野70aが、y軸方向またはx軸方向について、底板9の一方端から他方端までを覆うように備えられる必要はない。以下に、電子レンジ1の第2の変形例として、複数の赤外線検出素子7aが、その視野70aを合わせたもののx軸方向およびy軸方向の寸法が、いずれも、底板9の対応する寸法よりも小さくなるように備えられた電子レンジについて、説明する。
【0125】
6.第2の変形例
図14は、赤外線センサ7が、加熱室10の奥行き方向に一列に並んだ5個の赤外線検出素子7a(図14では図示略)を備えている、電子レンジ1の第2の変形例を示す図である。なお、図14では、加熱室10の内部を容易に視認できるように、図9と同様に、電子レンジ1の種々の構成部材を省略している。また、図14では、加熱室10の、幅方向,奥行き方向,高さ方向について、互いに直交した、x軸,y軸,z軸の3軸を定義している。なお、図14では、加熱室10内にも、破線X,Yとして、x軸,y軸が、ターンテーブル90の中央で交わるように、記載されている。矢印92は、ターンテーブル90の回転方向を示している。
【0126】
本変形例の電子レンジ1は、加熱室10の底面に、円形のターンテーブル90を備えている。なお、本変形例では、加熱室10の底面にターンテーブル90が備えられることから、電子レンジ1では、マグネトロン12は、加熱室10の側面より、加熱室10にマイクロ波を供給するように構成されることが好ましい。また、それに伴って、導波管19および回転アンテナ15も、加熱室10の側面に取付けられることが好ましい。
【0127】
本変形例では、5個の赤外線検出素子7aは、その視野70aが、y軸方向に並ぶように、備えられている。ターンテーブル90上に投影された5個の視野70aを合わせると、ターンテーブル90の中央から外周に向けて、視野70aが連続していることになる。これにより、ターンテーブル90が回転すると、ターンテーブル90上の全ての領域が、5個の視野70aのいずれかに含まれることになる。
【0128】
図15は、複数の視野70aとターンテーブル90の位置関係を模式的に示す図であり、図16および図17は、本変形例において、制御回路30が実行する加熱調理処理のフローチャートである。以下に、図15〜図17を参照して、本変形例において、赤外線センサ7に備えられた複数の赤外線検出素子7aの各検出出力が、どのように、加熱調理に利用されるかを説明する。
【0129】
なお、以下の説明では、赤外線検出素子7aが加熱室10の奥行き方向に並んだ電子レンジ1全般を対象とするため、図15では、赤外線検出素子7aの数を限定せず、y方向に並ぶ視野70aの数をn個としている。つまり、ターンテーブル90上の視野70aの位置は、Pn という形式を用いれば、P1 〜Pn と記載することができる。なお、P1 はターンテーブル90の中心に位置し、Pの添え字の数が大きくなるほど、Pn で表される位置は、ターンテーブル90の外周に近づく。そして、ターンテーブル90の最も外周部に位置するのが、Pn である。
【0130】
操作パネル6において加熱調理を実行する旨の操作がなされると、制御回路30は、まずS20で、マグネトロン12の加熱動作を開始させ、S21に進む。
【0131】
S21で、制御回路30は、P1 〜Pn の各位置に視野70aを有する赤外線検出素子70aの検出出力に基づいて、温度を検出し、S22に進む。なお、制御回路30は、S21で検出した温度を、検出位置P1 〜Pn のそれぞれに対応させて、T1 〜Tn として記憶している。また、制御回路30は、検出位置Pn に対応した検出温度Tn を、特別に、T0 tとして、記憶している。
【0132】
S22で、制御回路30は、T0 tからK(℃)を引いたものが、Tpよりも大きいか否かを判断し、Tpより大きいと判断するとS23に進み、Tp以下であると判断すると、S40に進む。
【0133】
S40では、制御回路30は、T0 tにK(℃)を加えたものが、Tpよりも小さいか否かを判断し、Tpより小さいと判断するとS41に進み、Tp以上であると判断すると、S30に進む。
【0134】
Tpとは、被加熱物に対する設定温度であり、被加熱物が十分加熱されたとして加熱を終了させるべきである、とされる温度である。また、Kとは、5程度の定数である。つまり、K℃とは、5℃程度となる。なお、電子レンジ1において、加熱調理処理が複数の調理メニューのそれぞれに対応した態様で実行される場合、Kは、調理メニュー毎に設定される。
【0135】
本変形例における加熱調理処理の、S23以降のステップは、S23〜S29、S30〜S38、S41〜S46の大きく3つのブロックに分けることができる。そして、制御回路30がどのブロックのステップを実行するかは、S22およびS40の判断時のT0 tの大きさに依存する。ここで、表1に、T0 tと制御回路30の実行するブロックの関係をまとめる。
【0136】
【表1】
【0137】
まず、S23〜S29の処理について説明する。
S23では、制御回路30は、次に実行するS24で判断の対象として抽出する検出温度の、検出位置のy軸上の値を「1」と設定して、S24に進む。つまり、S23の処理で、制御回路30は、S24でT1 を判断対象とするような設定を行なったことになる。
【0138】
S24では、制御回路30は、その時点で判断対象とするよう設定されている検出温度(Ty )を抽出し、当該検出温度が設定温度Tpよりも低い温度であるか否かを判断する。Tpよりも低いと判断すると、S25に進み、Tpに達していると判断すると、S27に進む。なお、S24で判断対象とされる検出温度は、直前に実行されたS21またはS29における検出温度の中の、直前で実行されたS23またはS26で設定された検出位置のものである。
【0139】
S25では、制御回路30は、現在判断対象として抽出するよう設定されているy軸上の位置が「n−1」以下となっているか否かを判断する。「n−1」以下であると判断すると、S26に進む。一方、「n−1」を越えている、つまり、「n」に達していると判断すると、S28に進む。
【0140】
S26では、現在設定されているy軸上の位置を「1」加算更新して、S24に戻る。つまり、S24における判断は、y軸上の位置が「1」から「n」となるまで、順次、実行される。
【0141】
S28では、前回、S29またはS21でT1 〜Tn が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S29に進む。S29では、検出位置P1 〜Pn-1 のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT1 〜Tn-1 として記憶して、S23に戻る。ここで、a秒とは、T1 〜Tn-1 の検出周期である。なお、a秒は、ターンテーブル90の回転周期をb(bpm)とした場合、当該回転周期と、以下の式(6)の関係を有することが好ましい。
【0142】
a=b/i …(6)
(iは整数)
式(6)の関係がある場合、T1 〜Tn-1 はターンテーブル90が1回転する間にi回検出される。つまり、ターンテーブル90上の、互いに(360/i)°の角度をなす半径の位置において、温度検出が実行されることになる。
【0143】
一方、S24で、Ty がTpに達したと判断すると、制御回路30は、S27で、当該Ty が、T0 tよりも低いか否かを判断する。そして、T0 t以上であると判断すると、S25に戻り、T0 tより低いと判断すると、S39でマグネトロン12による加熱を終了させて、リターンする。
【0144】
以上説明したS23〜S29の処理では、a秒毎に、検出位置P1 〜Pn-1 のそれぞれで温度検出を行なわれ、検出された温度はT1 〜Tn-1 として記憶される。そして、T1 〜Tn のいずれかが設定温度Tpに達すると、S27の処理を経て、加熱が終了される。なお、この場合のTn については、S21で検出された温度である。
【0145】
次に、S30〜S38の処理について説明する。
S30では、制御回路30は、次に実行するS31で判断の対象として抽出する検出温度の、検出位置のy軸上の値を「1」と設定して、S31に進む。
【0146】
S31では、制御回路30は、その時点で判断対象とするよう設定されている検出温度(Ty )を抽出し、当該検出温度が設定温度TpからKを引いた温度、「T0 t−K」よりも低い温度であるか否かを判断する。「T0 t−K」よりも低いと判断すると、S32に進み、「T0 t−K」に達していると判断すると、S34に進む。なお、S31で判断対象とされる検出温度(Ty )は、直前に実行されたS21またはS38における検出温度の中の、直前で実行されたS30またはS33で設定された検出位置のものである。また、T0 tとは、S21で検出されたTn である。
【0147】
S32では、制御回路30は、現在判断対象として抽出するよう設定されているy軸上の位置が「n−1」以下となっているか否かを判断する。「n−1」以下であると判断すると、S33に進む。一方、「n−1」を越えている、つまり、「n」に達していると判断すると、S37に進む。
【0148】
S33では、現在設定されているy軸上の位置を「1」加算更新して、S31に戻る。つまり、S31における判断は、y軸上の位置が「1」から「n」となるまで、順次、実行される。
【0149】
S37では、前回、S38またはS21でT1 〜Tn が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S38に進む。S38では、検出位置P1 〜Pn-1 のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT1 〜Tn-1 として記憶して、S33に戻る。ここで、a秒とは、S28の処理について説明したものと同様の、T1 〜Tn-1 の検出周期である。
【0150】
一方、S31で、Ty が「T0 t−K」に達したと判断すると、制御回路30は、S24で、当該Ty が、T0 tよりも低いか否かを判断する。そして、T0 t以上であると判断すると、S32に戻り、T0 tより低いと判断すると、S35に進む。
【0151】
S35では、制御回路30は、TpがT0 tよりも低いか否かを判断し、低いと判断すれば、S39でマグネトロン12による加熱を終了させて、リターンする。
【0152】
一方、S35でTpがT0 t以上であると判断すると、制御回路30は、S36で、その時点から、当該処理におけるKの値に対応した時間だけさらにマグネトロン12に加熱動作を実行させた後、S39で加熱を終了させて、リターンする。なお、上記したように、Kは、調理メニューに対応して、予め定められた値である。したがって、S36では、調理メニューに対応した時間だけ、さらに、加熱動作が実行されることになる。
【0153】
次に、S41〜S46の処理について説明する。
S41では、制御回路30は、次に実行するS42で判断の対象として抽出する検出温度の、検出位置のy軸上の値を「1」と設定して、S42に進む。
【0154】
S42では、制御回路30は、その時点で判断対象とするよう設定されている検出温度(Ty )を抽出し、当該検出温度が設定温度Tpよりも低い温度であるか否かを判断する。Tpよりも低いと判断すると、S43に進み、Tpに達していると判断すると、S39で加熱を終了させ、リターンする。
【0155】
なお、S42で判断対象とされる検出温度は、直前に実行されたS21またはS46における検出温度の中の、直前で実行されたS41またはS44で設定された検出位置のものである。
【0156】
S43では、制御回路30は、現在判断対象として抽出するよう設定されているy軸上の位置が「n−1」以下となっているか否かを判断する。「n−1」以下であると判断すると、S44に進む。一方、「n−1」を越えている、つまり、「n」に達していると判断すると、S45に進む。
【0157】
S44では、現在設定されているy軸上の位置を「1」加算更新して、S42に戻る。つまり、S42における判断は、y軸上の位置が「1」から「n」となるまで、順次、実行される。
【0158】
S45では、前回、S46またはS21でT1 〜Tn が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S46に進む。S46では、検出位置P1 〜Pn-1 のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT1 〜Tn-1 として記憶して、S41に戻る。ここで、a秒とは、S28の処理について説明したように、T1 〜Tn-1 の検出周期である。
【0159】
以上説明したように、本変形例における加熱調理処理では、表1に示したように、T0 tの値に応じて異なるブロックのステップが実行される。なお、いずれのブロックにおいても、温度検出は、a秒毎に実行される。温度の検出周期であるa秒は、回転周期b(bpm)と、上記の式(6)に示した関係を有することが好ましい。
【0160】
なお、以上説明した本変形例では、S29およびS38における温度検出は、検出位置P1 〜Pn-1 で行なわれ、検出位置Pn での温度検出は省略される。これは、ターンテーブル90において食品の載置されている可能性が低い検出位置Pn での温度検出を省略し、処理に要する時間を極力短縮するためである。
【0161】
本変形例において、電子レンジ1では、赤外線検出素子7aのすべての視野70aを合わせても、同時に、加熱室10の底面全体を覆うことはできなかった。その一方で、加熱室10の底面にはターンテーブル90が備えられていた。そして、ターンテーブル90が回転することにより、ターンテーブル90上のほぼ全域が、複数の赤外線検出素子7aの中のいずれかの視野70aに含まれた。
【0162】
次に、電子レンジ1のさらなる変形例として、加熱室10の底面のほぼ全域が複数の赤外線検出素子7aのいずれかの視野70a内に含まれ、かつ、加熱室10の底面にターンテーブルが設けられているものを説明する。
【0163】
7.第3の変形例
図18は、赤外線センサ7が、加熱室10の奥行き方向および高さ方向に並んだ、つまり、m×nのマトリクス状に並んだ赤外線検出素子7a(図18では図示略)を備えている、電子レンジ1の第3の変形例を示す図である。なお、図18では、加熱室10の内部を容易に視認できるように、図9と同様に、電子レンジ1の種々の構成部材を省略している。また、図18では、加熱室10の、幅方向,奥行き方向,高さ方向について、互いに直交した、x軸,y軸,z軸の3軸を定義している。
【0164】
本変形例の電子レンジ1は、加熱室10の底面に、円形のターンテーブル90を備えている。なお、本変形例では、ターンテーブル90が備えられることから、電子レンジ1では、マグネトロン12は、加熱室10の側面から加熱室10にマイクロ波を供給するように構成され、また、導波管19および回転アンテナ15が加熱室10の側面に取付けられることが好ましい。
【0165】
本変形例では、赤外線検出素子7aは、y軸方向にm個、z軸方向にn個、備えられている。これに応じて、加熱室10の底面には、y軸方向にm個(図18では一例として6個)、x軸方向にn個のの視野70aが並んでいる。m×n個の視野70aの中には、ターンテーブル90上に投影されているものもあれば、ターンテーブル90外に投影されているものもある。なお、ターンテーブル90上の全ての領域が、m×n個の視野70aのいずれかに含まれている。
【0166】
図19は、m×n個の視野70aとターンテーブル90の位置関係を模式的に示す図であり、図20および図21は、本変形例において、制御回路30が実行する加熱調理処理のフローチャートである。以下に、図19〜図21を参照して、本変形例において、赤外線センサ7に備えられたm×n個の赤外線検出素子7aの各検出出力が、どのように、加熱調理に利用されるかを説明する。
【0167】
なお、以下の説明では、視野70aの位置は、P(x,y)という形式を用いれば、P(1,1)〜P(n,m)と記載することができる。なお、P(1,1)は加熱室10の奥の右端に位置し(図19では、右上端)、P(n,m)は加熱室10の手前側の左端に位置する(図19では、左下端)。また、加熱室10内では、視野70aは、x方向に左側にあるものほど、x座標が大きいものとなる。また、視野70aは、y方向に前側(図19では下方)にあるものほど、y座標が大きいものとなる。
【0168】
操作パネル6において加熱調理を実行する旨の操作がなされると、制御回路30は、まずS49で、マグネトロン12の加熱動作を開始させ、S50に進む。
【0169】
S50で、制御回路30は、P(1,1)〜P(n,m)の各位置に視野70aを有する赤外線検出素子70aの検出出力に基づいて、温度を検出し、S51に進む。なお、制御回路30は、S50で検出したm×n個の温度を、検出位置P(1,1)〜P(n,m)のそれぞれに対応させて、T(1,1)〜T(n,m)として記憶している。また、制御回路30は、検出位置P(1,1)に対応した検出温度T(1,1)を、特別に、T0 tとして、記憶している。
【0170】
S51で、制御回路30は、T0 tからK(℃)を引いたものが、Tpよりも大きいか否かを判断し、Tpより大きいと判断するとS53に進み、Tp以下であると判断すると、S52に進む。
【0171】
S52では、制御回路30は、T0 tにK(℃)を加えたものが、Tpよりも小さいか否かを判断し、Tpより小さいと判断するとS68に進み、Tp以上であると判断すると、S60に進む。
【0172】
Tpとは、被加熱物に対する設定温度であり、被加熱物が十分加熱されたとして加熱を終了させるべきである、とされる温度である。また、Kとは、5程度の定数である。つまり、K℃とは、5℃程度となる。電子レンジ1において、加熱調理処理が複数の調理メニューのそれぞれに対応した態様で実行される場合、Kは、調理メニュー毎に設定される。
【0173】
本変形例における加熱調理処理の、S53以降のステップは、S53〜S59、S60〜S66、S68〜S73の大きく3つのブロックに分けることができる。そして、制御回路30がどのブロックのステップを実行するかは、S51およびS52の判断時のT0 tの大きさに依存する。ここで、表2に、T0 tと制御回路30の実行するブロックの関係をまとめる。
【0174】
【表2】
【0175】
まず、S53〜S59の処理について説明する。
S53では、制御回路30は、直前で実行されたS50またはS59で検出されたT(x,y)[T(1,1)〜T(n,m)]の中で、T0 tにK(℃)を加えたものよりも低いものを抽出して、Te(x,y)とし、S54に進む。
【0176】
S54では、制御回路30は、S53で抽出したTe(x,y)の中の最大値を抽出し、maxTeとして記憶して、S55に進む。
【0177】
S55では、制御回路30は、Te(x,y)の中で、maxTeと定数dとの積より以上の温度を有するものを抽出し、Ted(x,y)として記憶して、S56に進む。なお、「d」とは、調理メニュー毎に、予め定められている定数であり、0<d<1を満たす定数である。
【0178】
S56では、制御回路30は、S55で抽出したTed(x,y)の平均を算出し、aveTed(x,y)として記憶して、S57に進む。
【0179】
S57では、S56で算出したaveTed(x,y)がTpより低いか否かを判断し、低いと判断すると、S58に進む。一方、aveTed(x,y)がTp以上であると判断すると、S67で、マグネトロン12の加熱動作を終了させて、リターンする。
【0180】
S58では、前回、S59またはS50でT(x,y)が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S59に進む。S59では、検出位置P(1,1)〜P(n,m)のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT(1,1)〜T(n,m)として記憶して、S53に戻る。ここで、a秒とは、T(1,1)〜T(n,m)の検出周期である。なお、a秒は、ターンテーブル90の回転周期をb(bpm)とした場合、当該回転周期と、以下の式(7)の関係を有することが好ましい。
【0181】
a=b/i …(7)
(iは整数)
式(7)の関係がある場合、T(1,1)〜T(n,m)はターンテーブル90が1回転する間にi回検出される。つまり、ターンテーブル90上の、互いに(360/i)°の角度をなす半径の位置において、温度検出が実行されることになる。
【0182】
次に、S60〜S66の処理について説明する。
S60では、制御回路30は、直前で実行されたS50またはS64で検出されたT(x,y)[T(1,1)〜T(n,m)]の中で、T0 tからK(℃)を引いたものよりも低い以上のものを抽出して、Tf(x,y)とし、S61に進む。
【0183】
S61では、制御回路30は、S60で抽出したTe(x,y)の中でT0 tよりも低いものを抽出し、Tft(x,y)として記憶して、S62に進む。
【0184】
S62では、S61で抽出したTft(x,y)の数が0となったか否かを判断し、0であると判断するとS63に進み、0ではないと判断するとS65に進む。
【0185】
S63では、前回、S64またはS50でT(x,y)が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S64に進む。S64では、検出位置P(1,1)〜P(n,m)のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT(1,1)〜T(n,m)として記憶して、S60に戻る。ここで、a秒とは、S58における処理で説明したように、T(1,1)〜T(n,m)の検出周期である。
【0186】
S65では、制御回路30は、TpがT0 tよりも低いか否かを判断し、低いと判断すれば、S67でマグネトロン12による加熱を終了させて、リターンする。
【0187】
一方、S65でTpがT0 t以上であると判断すると、制御回路30は、S66で、その時点から、当該処理におけるdの値に対応した時間だけさらにマグネトロン12に加熱動作を実行させた後、S39で加熱を終了させて、リターンする。なお、上記したように、dは、調理メニューに対応して、予め定められた値である。したがって、S66では、調理メニューに対応した時間だけ、さらに、加熱動作が実行されることになる。
【0188】
次に、S68〜S73の処理について説明する。
S68では、制御回路30は、直前で実行されたS50またはS59で検出されたT(x,y)[T(1,1)〜T(n,m)]の最大値を抽出して、maxTとし、S69に進む。
【0189】
S69では、制御回路30は、直前で実行されたS50またはS59で検出されたT(x,y)の中で、maxTと定数dとの積より以上の温度を有するものを抽出し、Td(x,y)として記憶して、S70に進む。なお、「d」とは、S55において説明したように、調理メニュー毎に予め定められている定数である。
【0190】
S70では、制御回路30は、S69で抽出したTd(x,y)の平均を算出し、aveTd(x,y)として記憶して、S71に進む。
【0191】
S71では、S70で算出したaveTd(x,y)がTpより高いか否かを判断し、高いと判断すると、S72に進む。一方、aveTd(x,y)がTp以下であると判断すると、S67で、マグネトロン12の加熱動作を終了させて、リターンする。
【0192】
S72では、前回、S73またはS50でT(x,y)が検出されてから、予め定められたa秒が経過しているか否かを判断し、a秒が経過していると判断すると、S59に進む。S73では、検出位置P(1,1)〜P(n,m)のそれぞれで温度検出を行ない、新たにT(1,1)〜T(n,m)として記憶して、S68に戻る。a秒とは、T(1,1)〜T(n,m)の検出周期である。
【0193】
以上説明したように、本変形例における加熱調理処理では、表2に示したように、T0 tの値に応じて異なるブロックのステップが実行される。なお、いずれのブロックにおいても、温度検出は、a秒毎に実行される。温度の検出周期であるa秒は、回転周期b(bpm)と、上記の式(7)に示した関係を有することが好ましい。
【0194】
8.本発明の実施の形態
図22は、本発明の実施の形態の電子レンジの縦断面図である。なお、図22は、電子レンジにおける、図4に相当する部分の断面図である。
【0195】
本実施の形態の電子レンジには、加熱室10の下方に、回転アンテナ15の代わりに、回転アンテナ20が取り付けられている。
【0196】
また、回転アンテナ20には、補助アンテナ21が取付けられている。回転アンテナ20および補助アンテナ21付近の側面図を、図23に示す。回転アンテナ20および補助アンテナ21は、板状である。そして、補助アンテナ21は、回転アンテナ20に、絶縁体61,62によって、取付けられている。つまり、回転アンテナ20と補助アンテナ21は、絶縁されている。なお、回転アンテナ20は、軸15aの上端に取付けられている。
【0197】
回転アンテナ20の下方には、軸15aが1回転するごとに1度オンされるスイッチ89が取付けられている。回転軸15aの回転は、ボックス88内の周知の機構を介して、スイッチ89に伝えられる。
【0198】
図24および図25は、図22の加熱室10下部付近の拡大図である。両図中において、細線の矢印および白抜きの矢印はマイクロ波の放射パターンを示し、太線の両矢印は電界の発生するパターンを示している。本実施の形態の電子レンジでは、マグネトロン12から導波管19を介して導かれたマイクロ波は、回転アンテナ20内を伝わって回転アンテナ20の外周から放射されるとともに(図24および図25中の細線の矢印)、回転アンテナ20の外周部分と本体枠5の底面の間および補助アンテナ21と本体枠5の底面の間を伝わって(図24および図25中の太線の両矢印)補助アンテナ21の外周部分付近から放射される(図24および図25の白抜きの矢印)。
【0199】
回転アンテナ20の外周部分から効率良くマイクロ波を放射するためには、軸15aの先端から回転アンテナ20の外周先端までの距離は、マイクロ波の波長の1/2、または、それにマイクロ波の波長の整数倍を加えたものとされることが好ましい。このような寸法とされることにより、回転アンテナ20の外周部分における電界強度が極大値またはそれに近い値となるからである。
【0200】
なお、マイクロ波が、回転アンテナ20内で広がる際には伝送ロスが生じるが、補助アンテナ21と本体枠5の底面の間とを伝わる場合には当該伝送ロスはほとんど生じない。したがって、補助アンテナ21の形状は、マイクロ波が放射される加熱室10の形状に合わせたものとすることができる。
【0201】
補助アンテナ21には、後述するように複数の孔が形成されており、図25は、補助アンテナ21の、孔から電波が伝播する状態を示している。導波管19から送られてくる電波は、軸15aを介して、回転アンテナ20の中心から、回転アンテナ20の端部に向けて伝えられる。回転アンテナ20の端部まで伝えられた電波は、そのまま、加熱室10内に供給されるものもあれば、補助アンテナ21に伝えられるものもある。補助アンテナ21に伝えられた電波は、補助アンテナ21の端部から、加熱室10に供給されるものもあれば、孔(後述する孔21A〜21F等)の端部から加熱室10に供給されるものもある。
【0202】
なお、図29から理解されるように、本実施の形態では、回転アンテナ20は全体的に補助アンテナ21に覆われている。つまり、補助アンテナ21の外周は、回転アンテナ20の外側にある。このことから、補助アンテナ21は、回転アンテナ20よりも、加熱室10側に、かつ、加熱室10に対向する面と平行な面において外形寸法が大きく、また、広い範囲で、存在していることになる。これにより、加熱室10に対して、回転アンテナ20のみが設けられる場合よりも広範囲に、マイクロ波を供給できる。このような、補助アンテナ21が設けられることによる効果を、図26を参照して、さらに詳細に説明する。
【0203】
図26は、図4に示した電子レンジ1の、加熱室10の下部付近の拡大図である。加熱室10の下部に、補助アンテナ21が備えられず、回転アンテナ15のみが設けられた場合、回転アンテナ15の外周から、加熱室10の底面の中央付近にのみ、マイクロ波が供給される。
【0204】
一方、図24および図25を示したように、回転アンテナ20および補助アンテナ21が設けられた場合、回転アンテナ20の外周から加熱室10の底面の中央付近にマイクロ波が放射されるのに加え、補助アンテナ21の外周からも加熱室10の隅付近にもマイクロ波が放射される。
【0205】
図27は、補助アンテナ21の平面図であり、図28は、回転アンテナ20の平面図である。また、図29は、補助アンテナ21の、回転アンテナ20と重なった状態での平面図である。
【0206】
補助アンテナ21には、孔21A〜21Fを含む、複数の孔が形成されている。これにより、回転アンテナ20から電波を伝えられた補助アンテナ21は、その外縁部分のみからでなく、孔からも、マイクロ波を放射できる。
【0207】
また、補助アンテナ21は、回転アンテナ20に固定されることにより、回転アンテナ20と同じ周期で、回転される。このことから、補助アンテナ21から加熱室10にマイクロ波を供給されるパターンを、補助アンテナ21の回転に伴って変化させることができる。つまり、補助アンテナ21を回転させることによっても、加熱室10に、より複雑なパターンで、つまり、まんべんなく、マイクロ波を供給できる。
【0208】
回転アンテナ20は、図28に示すように、中央部に、軸15aと接続するための孔20Xが形成されている。また、回転アンテナ20は、孔20Xから放射状に延びた部分20A〜20Cを備えている。孔20X付近の外周は、円弧状となっている。部分20Aの端部の、孔20Xからの距離Aは約60mmであり、部分20Bおよび20Cの端部の、孔20Xからの距離Bは約80mmである。なお、距離Aは、マイクロ波の波長の約1/2の長さに相当する。
【0209】
回転アンテナ20の端部から放射されるマイクロ波の強さは、その端部の電界の強さに依存する。電界の強さは、マグネトロン12のマグネトロンアンテナから軸15aまでの距離、軸15aの先端から回転アンテナ20の外周部分の先端までの距離、ならびに、導波管19の長さや形状と放射されるマイクロ波の波長との関係等に依存する。本実施の形態の回転アンテナ20では、部分20Aの端部から放射されるマイクロ波は、部分20Bおよび20Cの端部から放射されるマイクロ波よりも強くなっている。即ち、通常、導波管は、当該導波管の給電口付近、つまり、回転軸15a付近の電界が強くなるように設計されている。このことから、回転軸15aの頂点から回転アンテナ20の端部までの長さがマイクロ波の波長の1/4の偶数倍に近づく寸法となれば当該端部における電界は強くなり、また、マイクロ波の波長の1/4の奇数倍に近づく寸法となれば当該端部における電界は弱くなる。
【0210】
そして、本実施の形態の補助アンテナ21の、部分20A付近には、マイクロ波の主な伝播方向(図29中の矢印E)に垂直な方向に長手方向を有するようなスリット状の孔21A〜21Fが形成されている。これにより、孔21A〜21Fから、強く、マイクロ波が放射される。また、孔21B,21D,21E,21Fからは、特に、強く、マイクロ波が放射される。なお、孔21B,21D,21E,21Fから効率良くマイクロ波を放射するために、これらの孔の長手方向の寸法は、55mm〜60mm程度とされる。
【0211】
本実施の形態の電子レンジでは、孔21A〜21Fが加熱室10内のドア3側に位置するように、回転アンテナ20および補助アンテナ21が停止させられている。これにより、これらのアンテナが停止されて運転される場合には、加熱室10の内の前の方に食品が載置されると、当該食品に集中的にマイクロ波が供給され、効率良く、加熱されることになる。なお、底板9を透明にする等して補助アンテナ21を加熱室10内から視認可能とし、補助アンテナ21の孔21A〜21Fが形成される付近(図29の領域F部分)に、このことを示す表示がなされることが好ましい。この場合の表示とは、文字で「パワーゾーン」等、集中的に加熱される旨を記載してもよいし、その部分の表面にうねりを設けて(つまり、断面が図29(B)に示すようにして)もよい。
【0212】
なお、回転アンテナ20は、軸15aの上端に、当該軸15aの上端をかしめることにより、取付けられている。そして、かしめる部分の断面は、円形ではなく、多角形となっている。そして、図28に示すように、孔20Xの断面形状も八角形となっている。軸15aのかしめられている断面が多角形であるため、軸15aを回転させることにより回転アンテナ20を矢印W方向に回転させた場合、回転アンテナ20が軸15aに対して滑ることを回避できる。つまり、軸15aの回転角度を制御することにより、確実に、回転アンテナ20の回転角度を制御できることになる。
【0213】
以上説明した本実施の形態では、回転アンテナ20に対して絶縁された補助アンテナ21が備えられている。そして、本実施の形態では、回転アンテナ20により、放射アンテナが構成されている。
【0214】
なお、上記した本実施の形態では、回転アンテナ20と補助アンテナ21とを組合わせた構成を説明したが、このような構成と同様な効果を得ようとするために回転アンテナ20の寸法変更のみで対応することも考えられる。
【0215】
しかしながら、このような寸法変更のみで対応した場合、(1)マイクロ波は、そのほとんどが回転アンテナ20の端部から放射されること、(2)回転アンテナ20の寸法が長くなればマイクロ波の伝送ロスが大きくなること、(3)回転アンテナ20から効率良くマイクロ波を放射するためには、マイクロ波の波長に関連した寸法としなければならないため、加熱室の大きさを自由に選択できなくなること(たとえば、回転アンテナ20の端部から最大出力でマイクロ波を放射するためには軸15aから回転アンテナ20の端部までの長さをマイクロ波の波長の1/4の偶数倍に近い寸法にしなければならない、等)、などの理由により、加熱室の設計に規制がかかる。
【0216】
この点、補助アンテナ21は、回転アンテナ20から放射されたマイクロ波の一部を補助アンテナ21外周まで導く働きがあるのみで、その寸法が伝送ロスに関係無いため、マイクロ波の放射の効率に関係無く、自由に、補助アンテナ21の寸法を選択できる。
【0217】
つまり、回転アンテナ20は、最も効率の良い寸法で設計でき、回転アンテナ20端部からマイクロ波を放射できると共に、放射されたマイクロ波の一部を、寸法が自由に選択できる補助アンテナ21によりその外周にまで導いて放射させることができる。したがって、加熱室の大きさに応じて補助アンテナ21の寸法を決定すれば良く、加熱室の大きさを自由に選択することが可能なものとなる。
【0218】
さらに、回転アンテナ20の端部付近から、および、補助アンテナ21の外周付近から、加熱室に対してマイクロ波を放射できるため、回転アンテナ20および補助アンテナ21を回転することにより、加熱室に、より満遍なくマイクロ波を放射できる構成となっている。
【0219】
9.本発明の第2の実施の形態
図30は、本発明の第2の実施の形態の補助アンテナ22および回転アンテナ20の平面図である。本第2の実施の形態の補助アンテナ22は、上記実施の形態の補助アンテナ21に、さらに、反射部22Xを設けたものである。
【0220】
図31は、本第2の実施の形態の電子レンジの、部分的な縦断面図である。本第2の実施の形態の電子レンジでは、本体枠5の下部に、光学センサ23が取付けられている。
【0221】
図32は、図31の光学センサ23付近の拡大図である。光学センサ23は、投光素子および受光素子を備えている。投光素子は、所定の時間間隔で、矢印V1の光を放射する。なお、回転アンテナ20および回転アンテナ20に固定された補助アンテナ22は、モータ81が駆動することにより、回転する。そして、補助アンテナ22の回転位置が、反射部22Xが光学センサ23に対向する位置となったときに、矢印V2で示した、反射部22Xにおける矢印V1の反射光が、光学センサ23の受光素子によって検出される。このように、光学センサ23により、矢印V2の光が検出されることにより、回転アンテナ20および補助アンテナ22が所定の回転位置にあることが検出される。そして、さらに、光学センサ23が矢印V2の光を検出してからのタイミングを検出することにより、回転アンテナ20および補助アンテナ22の回転位置を、検出できる。
【0222】
これにより、上記実施の形態で説明したようなスイッチ89を取付けることなく、かつ、直接、回転アンテナ20および補助アンテナ22の回転状態を検出できる。
【0223】
また、本第2の実施の形態では、回転アンテナ20に接続された軸15aを回転させるためのモータ81が、軸15aの下方ではなく、側方(左側)に取付けられている。図33に、モータ81付近の部分的な縦断面図を示す。
【0224】
モータ81は、軸81aが備えられ、軸81aは、カム84に接続している。カム84の回転はカム82に伝えられ、カム82の回転は軸83に伝えられ、軸83の回転が、軸15a(図31参照)に伝えられる。つまり、モータ81が駆動すると、軸81aが回転し、その回転が、カム84,カム82,軸83を介して、軸15aに伝えられる。
【0225】
そして、本第2の実施の形態で、モータ81が軸15aの側方に備えられることにより、モータ81が、加熱室10から汁等がこぼれた場合でも、図31中に矢印で示したような、加熱室10の下方において想定される汁の流れの経路の外に位置することになる。したがって、万が一、加熱室10においてこぼれた汁が加熱室10の下方に伝わってきたとしても、当該汁が、軸15aを伝わってモータ81に到達することを回避できる。
【0226】
10.本発明の第3の実施の形態
図34は、本第3の実施の形態の電子レンジの、モータ付近の下面図である。なお、本第3の実施の形態の電子レンジは、上記した第2の実施の形態の電子レンジの、カム82(図31および図33参照)の代わりに、カム85が取付けられ、さらに、カム85の外周付近には、スイッチ86が備えられている。スイッチ86は、スイッチボタン86aを備え、当該スイッチボタン86aを押圧されることにより、所定の回路のオン/オフを切換える。
【0227】
上記本発明の第2の実施の形態では、補助アンテナ22の反射部22Xを用いて、補助アンテナ22および回転アンテナ20の回転状態を検出していた。これに対し、本第3の実施の形態では、カム85の回転状態を検出することにより、補助アンテナ22および回転アンテナ20の回転状態を検出する。
【0228】
以下に、カム85の回転状態の検出について説明する。
図34において、G1は、カム84の回転方向であり、G2は、カム85の回転方向である。カム85の外周の形状は、基本的には円形であるが、突出した部分85cが設けられている。そして、突出した部分85cの回転方向側の近傍の部分85aは、部分85cから離れるに従って、急激に、中心(軸83)との距離が縮まり、回転方向と逆側の部分85bは、85aと比較して、緩やかに、中心との距離が縮まっている。カム85は、このような外周の形状を有することにより、G2方向に回転した場合、スイッチボタン86aを、部分85aで素早く押圧し、かつ、部分85bで緩やかにその押圧を解除する。
【0229】
つまり、本第3の実施の形態の電子レンジでは、カム85の回転状態をスイッチ86で検出することにより、回転アンテナ20および補助アンテナ22の回転状態を検出するが、その際、スイッチボタン86aは、素早く押圧され、かつ、緩やかに押圧が解除される。これにより、スイッチ86に、カム85の回転状態に速やかに反応させつつ、スイッチボタン86aに対する扱いが乱雑になることを回避できる。
【0230】
また、本第3の実施の形態では、マグネトロン12による加熱が停止した後、回転アンテナ20および補助アンテナ22の回転は、特定の回転位置で停止されるよう、制御される。具体的には、マグネトロン12による加熱が停止した後、スイッチボタン86aの押圧が解除されてから2秒経過した時点で、これらのアンテナの回転は停止される。なお、スイッチボタン86aの押圧が解除されてから2秒後には、補助アンテナ22の孔21A〜21Fは、補助アンテナ22の他の部分よりりも、加熱室10の前側に位置している。なお、補助アンテナ22の孔21A〜21Fは、図29等を用いて説明した補助アンテナ21の孔21A〜21Fと同様に、マイクロ波を比較的強く放射できる位置に形成されている。つまり、本第3の実施の形態の電子レンジは、マグネトロン12による加熱が停止すると、加熱室10内の前側が、集中的に加熱できるような状態となる。なお、加熱室10内の前側とは、ドア3側であり、ユーザが食品を載置しやすい場所である。したがって、本第3の実施の形態の電子レンジでは、マグネトロン12による加熱が開始される際、まず、加熱室10の、食品が載置されやすい場所を集中的に加熱することができる。
【0231】
さらに、本第3の実施の形態では、電子レンジにおいて、スイッチボタン86aは、押圧された状態で長時間放置されない。これにより、スイッチボタン86aに対する外力からの押圧を解除されても当該スイッチボタン86a自体が押圧を解除された状態に復帰できない、という事態を、より確実に回避できる。つまり、スイッチ86の寿命を、より長くできる。
【0232】
11.本発明の第4の実施の形態
図35は、本発明の第4の実施の形態の電子レンジにおけるモータ付近の下面図である。本第4の実施の形態では、第3の実施の形態のカム85の代わりに、カム850が備えられている。カム850は、第3の実施の形態のカム85のような凸部を備えていない代わりに、反射部851を備えられている。また、カム850の外周付近には、光学センサ87が備えられている。
【0233】
光学センサ87は、投光素子と受光素子を備えている。当該投光素子は、所定の時間間隔で、連続的に、矢印H1で示す光を放射する。カム850は、G2方向に回転する。そして、当該受光素子が矢印H2で示される光を検出することにより、カム850の回転位置が反射部851によって矢印H1の光を反射される位置となったことが、検出される。
【0234】
12.本発明の第5の実施の形態
上記本発明の第1〜第4の実施の形態において、回転アンテナ20、および、補助アンテナ21または22の回転角度を検出するための機構について、説明した。本第5の実施の形態では、これらの機構を用いて、回転アンテナ20、および、補助アンテナ21または22の停止時における回転角度を制御する。なお、これらのアンテナの停止位置の制御は、加熱室10内の食品の配置に適したパターンで加熱することを、目的としている。ここで、加熱室10内の食品の加熱パターンについて、説明する。
【0235】
回転アンテナ20を、図36に示すように、ドア3に部分20Aを対向させた状態を0°とし孔20Xを中心とし、図中の矢印方向(図36では反時計方向)にα°回転させて停止させる場合を考える。図36中、破線内に「ドア側」とあるのは、回転アンテナ20に対するドア3の相対的な位置関係を示すための記載である。
【0236】
加熱室10の底面を図37に示すように、▲1▼と▲2▼の領域に分割することを考える。なお、▲1▼は、加熱室10をドア3側から見て、つまり、前方から見て左側に位置する領域であり、▲2▼は、右側に位置する領域である。そして、回転アンテナ20を、0°,90°,270°所定の回転角度で停止させた状態で、また、回転アンテナ20を連続的に回転させて、ある一定時間、マグネトロン12による加熱を行なった場合の、▲1▼および▲2▼の領域のそれぞれに配置された食品の上昇温度を、表3に示す。
【0237】
【表3】
【0238】
表3を参照して、回転アンテナ20を回転させながら加熱が行なわれると、▲1▼および▲2▼に載置された食品の上昇温度の差は1℃未満となっている。つまり、この場合、両領域における上昇温度はほぼ一定であると言える。一方、回転アンテナ20を停止させて加熱が行なわれると、場合によっては、▲1▼と▲2▼における上昇温度に差が生じる。
【0239】
具体的には、回転アンテナ20を、部分20Aがドア3から見て右側に位置するように、つまり、回転角度を90°で停止させて加熱を行なった場合には、ドア3から見て右側にある領域▲2▼に載置された食品の方が、左側にある領域▲1▼に載置された食品よりも、5℃以上も高く温度が上昇している。
【0240】
また、部分20Aがドア3から見て左側に位置するように、つまり、回転角度を270°で停止させて加熱を行なった場合には、ドア3から見て左側にある領域▲1▼に載置された食品の方が、右側にある領域▲2▼に載置された食品よりも、4℃以上も高く温度が上昇している。
【0241】
これに対し、部分20Aが加熱室10の前方または後方(回転角度0°または180°)に位置する場合には、領域▲1▼と領域▲2▼における食品の上昇温度には、さほど大きな差は見られない。
【0242】
以上説明したように、回転アンテナ10の停止された回転位置によって、加熱室10内で集中的に加熱される位置が変化する。また、本第5の実施の形態の電子レンジでは、加熱開始時に、赤外線センサ7を用いて、加熱室10内の食品の配置パターンが検出される。具体的には、図37の1または2のどちらに、または、加熱室10をさらに多くの領域に分割しその中のどの領域に、食品が載置されているかを判断する。どこに食品が載置されているかの判断は、加熱開始後、温度上昇があった場所を、食品が配置されている場所であると判断することにより、行なわれる。
【0243】
そして、電子レンジでは、食品の配置パターンに応じ、食品が配置されている位置を強く加熱できる加熱パターン(表3では、▲1▼または▲2▼のいずれを集中的に加熱するか)が選出される。そして、選出された加熱パターンに応じた回転角度で回転アンテナ20(または21,22)を停止させて、加熱を行なう。表3の内容は、たとえば、制御回路30内に記憶されている。
【0244】
なお、加熱室10をさらに多くの領域に分割し、表3として、種々の回転角度α°に対するそれらの領域での食品の上昇温度を記憶させることもできる。これにより、表3には、より多くの加熱パターンが含まれることになるため、より実際の加熱室10内の食品の配置パターンに対応した加熱調理を行なうことができる。
【0245】
以上説明したように、食品の配置パターンに応じた位置で回転アンテナを停止させて加熱を行なうことにより、より効率良く、加熱室10内の食品を加熱できる。
【0246】
13.本発明の実施の形態の変形例
図38は、本発明の実施の形態の変形例の電子レンジの、外装部を外した状態を、右上方から見た部分的な斜視図である。つまり、図38は、電子レンジ1の変形例の、図3に相当する図である。
【0247】
本変形例の電子レンジでは、検出経路部材40の上部に、赤外線センサ7が取付けられている。また、検出経路部材40の右部には、赤外線センサ7の視野を移動させるためのモータ180が取付けられている。
【0248】
検出経路部材40の上端には、孔40Xが形成され、当該孔40Xを囲うように筒41が備えられている。筒41は、検出経路部材40の上端をバーリング加工することにより形成されており、検出経路部材40の上端面から切り立った筒状の形状を有している。図39は、本変形例の検出経路部材40の右側面図であり、図40は、検出経路部材40の下面図であり、図41は、検出経路部材40の右後方から見た斜視図であり、図42は、検出経路部材40と赤外線センサ7を下から見た図であり、これらの位置関係を示す図である。
【0249】
筒41は、凸部41Aを有するように、その一部だけが高くなるように形成されている。つまり、筒41は、凸部41Aのみが高くなるように構成されているため、バーリング加工によって容易に形成することができる。
【0250】
赤外線センサ7は、図42に示すように、検出孔7Xを介して、赤外線をその内部に取込み、赤外線量の検出を行なう。そして、本変形例では、赤外線センサ7は、図42に示すように、加熱室10内の赤外線量の検出を行なう場合には、破線で示す位置等に存在するが、赤外線量の検出を行なわない場合(非検出時)には、検出孔7Xを凸部41Aに対向させる位置(図42中にこれらを実線で示す位置)に存在する。図42での赤外線センサ7の非検出時の位置は、図38における赤外線センサ7の位置に相当する。つまり、筒41において凸部41Aは、ファン181,182の送風方向に関して、当該筒41内の最も風上側に設けられている。したがって、赤外線センサ7は、孔40Xを介して、加熱室10内の赤外線量を検出するが、非検出時には、孔40Xよりも風上側に、移動されることになる。
【0251】
これにより、赤外線センサ7の非検出時に、加熱室10内から飛び散る汁等によって、赤外線センサ7の検出部分が汚されることを、回避できる。
【0252】
なお、本変形例では、赤外線センサ7は、検出に際し、または、検出時から非検出時へ移行する際、加熱室10の前後方向に移動される。この前後方向とは、図14および図15におけるy方向に相当する。つまり、本変形例は、図14および図15を用いて説明したように、赤外線センサ7の視野70Aを加熱室10の前後方向に移動させる電子レンジに対応したものである。ただし、本変形例では、赤外線センサ7が非検出時に孔40Xよりも風上側に位置すれば良いのであって、加熱室10に対して前後方向に移動される例のみに適用されるものではない。
【0253】
また、筒41に凸部41Aが形成されていることにより、バーリング加工の高さを、全体的でなく一部だけを高くするのみで、赤外線センサ7の非検出時の避難場所を確保でき、かつ、容易に筒41を形成できる。さらに、赤外線センサ7の非検出時の避難場所を、検出時の位置からさほど遠くない位置とすることもできる。
【0254】
また、本変形例では、マグネトロン12等を冷却するためのファン181,182が取付けられている。そして、赤外線センサ7は、非検出時には、筒41よりも、ファン181,182の送風方向について、風上側に位置している。これにより、加熱室10内からの汁が赤外線センサ7の検出部分に付着することを、確実に防止できる。
【0255】
次に、本変形例での、赤外線センサ7の視野の移動態様について、図43〜図46を参照して、説明する。図43は、加熱室10内の赤外線センサ7の視野を模式的に示す図である。本変形例では、赤外線センサ7は、加熱室10の外側であって、加熱室10の右側面上部に取付けられている。
【0256】
本変形例では、赤外線センサ7の視野は、加熱室10の前後方向(図43の両矢印y方向)に移動可能である。そして、図43では、赤外線センサ7の視野の加熱室10内の最も右側にある部分の集合体を、面として、視野701と示し、最も左側にある部分の集合体を、面として、視野702と示している。図44は、図43の赤外線センサ7部分の拡大図である。また、図43における三角柱100は、赤外線センサ7の視野の移動態様を説明するための補助的な線画として示されている。
【0257】
視野701は、加熱室10の、赤外線センサ7の視野が及ぶ領域の最も右側の平面を示している。そして、赤外線センサ7は、三角柱100の最上部に位置する線(図44の線101)を軸として、図44の両矢印K方向に回動されることにより、その視野を、加熱室10の前後方向に移動させることができる。図43では、視野701は、三角柱の側面と平行な面である。つまり、視野701と線101とは、垂直となっている。これにより、加熱室10において、赤外線センサ7の備えられる側(図43では右側)の、奥および手前の、視野が及ぶことのできない領域を、最も狭くすることができる。
【0258】
また、加熱室10に対して、赤外線センサ7が、後面側に取付けられ左右方向に回動される場合には、回動される際の軸は、視野の最も後方に位置する部分の集合体の面に垂直に交わるものとされることが好ましい。
【0259】
つまり、本変形例では、赤外線センサ7を回動することにより、赤外線センサ7の視野を移動させる場合、回動させる軸は、赤外線センサ7の視野の及ぶ全領域の中で、加熱室10内の、最も赤外線センサ7が取付けられる側寄りの面に垂直なもの、とされる。これにより、加熱室10の、赤外線センサ7が取付けられる側において、赤外線センサ7の視野の及ばない領域を、小さくできるからである。つまり、加熱室10内の、より広い範囲を、赤外線センサ7の視野の中に含めることができる。
【0260】
このような効果は、図45および図46を参照して、さらに詳しく説明することができる。図45は、赤外線センサ7が本変形例の比較される状態で回動する状態を示す図である。また、図46は、図45の、赤外線センサ7付近の拡大図である。図45において、三角柱200は、赤外線センサ7の移動態様を説明するための補助的なものとして示されている。
【0261】
図45および図46における比較例においても、赤外線センサ7の視野は、赤外線センサ7が回動されることにより、前後方向(両矢印y方向)に移動される。赤外線センサ7が回動されることによりその視野が及ぶ領域の中で、最も右側の面が視野703、最も左側の面が視野704として、示されている。
【0262】
この比較例では、三角柱200の最も右側にある線(図46の線201)は、赤外線センサ7の回動する際の軸となっている。つまり、図46から理解されるように、この比較例では、視野703と線201のなす角は、鋭角となっている。これにより、視野703が加熱室10と交わる部分の線の長さは、加熱室10のその部分での奥行き方向の寸法よりも、かなり小さいものとなっている。つまり、図43と図45とを比較すると、加熱室10の赤外線センサ7を取付けられた側(右側)の隅では、図43の方が、図45よりも、かなり多くの領域を、赤外線センサ7の視野に含めることができている。
【0263】
これにより、赤外線センサ7を回動することにより、赤外線センサ7の視野を移動させる場合、赤外線センサ7を回動させる軸は、赤外線センサ7の視野の及ぶ全領域の中で、加熱室10内の、最も赤外線センサ7が取付けられる側寄りの面に垂直なもの、とされることが好ましいと言える。
【0264】
このようなことからも、赤外線センサ7を回動することにより、赤外線センサ7の視野を移動させる場合、赤外線センサ7を回動させる軸は、赤外線センサ7の視野の及ぶ全領域の中で、加熱室10内の、最も赤外線センサ7が取付けられる側寄りの面に垂直なもの、とされることが好ましいと言える。
【0265】
14.本発明の実施の形態の他の変形例
次に、図47および図48、ならびに、図10を参照して、本発明の実施の形態の他の変形例について、説明する。本変形例では、主に、電子レンジにおける、加熱調理中の赤外線センサ7を用いて加熱室10内の食品の温度を検出し、自動的に、加熱終了のタイミングを決定するような調理についての制御態様を説明する。
【0266】
図47および図48は、本変形例の電子レンジにおける制御態様を示すフローチャートである。なお、本変形例では、赤外線センサ7の視野を、加熱室10の幅方向(図10のx方向)および奥行き方向(図10のy方向)に移動させることができる。
【0267】
まず、S101では、電子レンジに対してキー入力があったか否かを判断する。そして、あったと判断すると、制御は、S102に進む。
【0268】
次に、S102では、S101で入力を検出したのが、電子レンジ側に自動的に調理終了を検出させる調理を実行させるキー(自動キー)であるか否かを判断する。自動キーであると判断すれば、S103に処理を進め、自動キー以外のキーであったと判断すれば、当該キーに応じた処理に進む。
【0269】
S103では、S102によって検出された自動キーが、赤外線センサ7によって加熱室10内の食品の温度を検出させることにより実行するコースを選択するものであるか否かを判断する。当該コースを選択するものである場合には、S104に進み、それ以外のコースを選択するものである場合には、当該コースに従った処理に進む。
【0270】
S104では、加熱調理を開始させるキー(スタートキー)が操作されたか否かを判断する。スタートキーが操作されたと判断すると、S105に進む。
【0271】
S105では、マグネトロン12に加熱動作を開始させて、S106に進む。
S106では、自動調理に関するメモリの記録内容およびフラグをリセットして、S107に進む。
【0272】
S107では、食品検知温度M0を設定して、S108に進む。食品検知温度M0とは、赤外線センサ7の検知する温度がこの温度に到達すると、加熱を終了させる、という、加熱の目標となる温度である。
【0273】
S108では、加熱室10内を照らすランプの点灯、および、回転アンテナ15の回転を開始させて、S109に進む。
【0274】
S109では、マグネトロン12の運転を開始させて、S110に進む。
S110では、赤外線センサ7による温度検出を開始させ、S111に進む。
【0275】
S111では、赤外線センサ7の視野を、加熱室10内の前後方向で複数箇所に走査させ、最高温度を検出し、S112に進む。S111の処理を、図10を参照して、より詳細に説明する。
【0276】
本変形例では、赤外線センサ7の視野は、加熱室10の前後方向(図10のy方向)および左右方向(図10のx方向)に移動される。そして、S111では、視野をp(x,y)としてx−y座標で示すと、x=1でyをnから1に変化させる線状、x=m1でyを1からnに変化させる線状、x=m2でyをnから1に変化させる線状(1<m1<m2<m)の順に、つまり、奥行き方向について、前方から後方へ移動し、左方に移動し、後方から前方へ移動し、さらに左方に移動し、前方から後方へ、という要領で、加熱室10全域を、移動させる。なお、加熱室10全域に視野を移動させながら、赤外線センサ7による温度検出が行なわれている。そして、加熱室10内で検出された、奥行き方向での温度の最大変化値(Mx)をメモリに記憶される。奥行き方向での温度の最大変化値とは、加熱室10内でy方向に延びる複数の線状で温度検出が行なわれるが、各線状ごとに求められた温度の最大値と最小値との差の中の最大値である。
【0277】
S112では、S111で記憶された最大変化値Mxが、所定の温度Lx以上であるか否かを判断する。そして、MxがLx以上であると判断すると、S113に進み、そうではないと判断すると、S111に戻り、再度、最大変化値Mxを抽出する。
【0278】
S113では、前回赤外線センサ7による温度検出が開始されてから、10秒が経過したか否かを判断し、経過したと判断すると、S114に進む。
【0279】
S114では、フラグF0がリセットされた状態か否かを判断する。リセットされていると判断すると、S115に進み、セットされていると判断すると、S121に進む。
【0280】
S115では、直前のS112で判断対象となったMxを検出された奥行き方向の線状で赤外線センサ7の視野を移動させて、再度、赤外線センサ7による温度検出を実行して、S116に進む。なお、S115における赤外線センサ7の視野の移動の速度は、S111における視野の移動の速度よりも低いものである。具体的には、S115における視野の移動速度は、たとえば、S111における視野の移動速度の1/4とすることができる。つまり、本変形例では、最初に、加熱室10全体を比較的速いスピードで赤外線センサ7の視野を移動させて、食品の位置を探した後(S111〜S112)、食品の存在する線についての見当が付いた後は、丁寧に、食品の温度を検出することになる(S115)。そして、さらに、当該線上の温度検出を行ない、当該線上のどこに食品が存在するかを決定する(S116〜S119)。
【0281】
S116では、S115で温度検出を行なった線上での、温度の最大値を記録した地点での、上昇温度Myをメモリに記憶して、S117に進む。
【0282】
S117では、S116で記憶させたMyが、所定の温度Ly以上であるか否かを判断する。Ly以上であると判断すると、S118に処理を進め、直前のS116におけるMyの検出の対象となった地点に、食品が載置されているとして、当該地点の含まれる奥行き方向に赤外線センサ7の視野を移動させた温度検出が行なわれ、S119に進む。なお、S118における視野の移動速度は、S115における移動速度と同じである。
【0283】
S119では、フラグF0をセットして、S113に戻る。この後、フラグF0がセットされた状態であれば、S121に処理が進む。
【0284】
S121では、S118で温度検出を行なった、所定の、奥行き方向の線状で、赤外線センサ7の視野を移動させて、温度検出を行ない、当該線上での温度の最大値が検出された地点での温度の変化量Mzを記憶して、S122に進む。なお、S121における視野の移動速度は、S115における移動速度と同じである。
【0285】
S122では、S121で記憶したMzが、所定の温度Lz以上であるか否かを判断する。MzがLz以上であると判断するとS123に進み、MzがLz未満であると判断すると、S120に進む。
【0286】
S120では、直前の線状に視野を移動させて温度検出を行なってから5秒が経過したか否かを判断し、5秒経過したと判断すると、S114に進む。
【0287】
一方、S123では、S121でMzを記憶した地点で、赤外線センサ7の視野を固定させて、赤外線センサ7による温度検出を継続し、S124に処理を進める。
【0288】
S124では、視野内の食品の温度M1の検出を行ない、S125に進む。
S125では、直前のS125で検出した温度M1が、S107で設定したM0に到達しているか否かを判断する。そして、まだ到達していないと判断するとS124に戻り、到達していると判断すると、S126に処理を進める。
【0289】
S126では、加熱を終了する設定を行ない、S127に処理を進める。S127では、マグネトロン12の加熱動作、加熱室10を照らすランプの点灯、および、回転アンテナ15の回転を停止させて、S128に進む。S128では、加熱の終了をブザー等により報知する。この後、電子レンジは、待機状態となる。
【0290】
15.本発明の実施の形態のさらに他の変形例
図49は、本発明の実施の形態のさらに他の変形例の電子レンジにおける、視野の移動態様を説明するための図である。
【0291】
本変形例では、赤外線センサ7には、8個の赤外線検出素子が備えられている。或る時点での、これらの8個の赤外線検出素子の視野は、それぞれ、視野71A〜78Aとして、加熱室10の底面に投影される。視野71A〜78Aが加熱室10の幅方向のほぼ全域を覆うことから、加熱室10の幅方向のほぼ全域が、いずれかの赤外線検出素子の視野に含まれることになる。
【0292】
なお、本変形例では、赤外線センサ7が所定の態様で回動されることにより、視野71A〜78Aは、加熱室10の前方向には、視野71B〜78Bまで、加熱室10の後ろ方向には、視野71C〜78Cまで、移動されることになる。これにより、加熱室10のほぼ全域が、いずれかの赤外線検出素子の視野に含まれることになる。
【0293】
なお、本変形例では、各赤外線検出素子と、その視野内の加熱室10の底面との距離が変化しないように、各赤外線検出素子を移動させている。これにより、加熱室10の底面上では、同一の赤外線検出素子の視野は同じ面積となっている。つまり、加熱室10の底面上では、視野71A〜71Cは同じ面積であり、視野72A〜72Cは同じ面積であり、視野78A〜78Cは同じ面積である。このように各視野が移動されることにより、各赤外線検出素子が、その視野内に含む加熱室10の領域を、一定とすることができる。したがって、本変形例では、各赤外線検出素子については、温度検出の精度を一定とすることができる。各赤外線検出素子が検出できる赤外線量は、視野内に含まれる領域の大きさに、影響を受けるからである。
【0294】
16.本発明の実施の形態の他の変形例
図50は、本発明の実施の形態の他の変形例の赤外線センサ7付近の拡大図である。また、図51は、本変形例の電子レンジの縦断面図である。
【0295】
赤外線センサ7には、5個の赤外線検出素子701〜705が備えられている。また、図50および図51には、赤外線検出素子701〜705の視野の中心線701A〜705Aが記載されている。
【0296】
本変形例では、赤外線素子701〜705の視野は、検出経路部材40に設けられた孔40Xを介して、加熱室10内に到達している。そして、赤外線素子701〜705は、その視野の中心線701A〜705Aが、孔40X付近の点Qで交わるように、備えられている。これにより、孔40Xの径を、最小とすることができる。
【0297】
孔40Xの径が小さくなることにより、加熱室10から赤外線検出素子701〜705へと食品の汁等が飛散することを、より確実に回避することができる。
【0298】
なお、本変形例では、赤外線センサ7において、図52に示すように一列に、赤外線検出素子701〜705を配列させていてもよいし、図53に示すように、球の内壁に、二次元的に、複数の赤外線検出素子7aを配列させていてもよい。なお、図52および図53のいずれにおいても、複数の赤外線検出素子7a,701〜705の視野の中心は、孔40X付近で交わってから、加熱室10内に延びるように構成されている。さらに、図53に示した赤外線センサ7では、加熱室10内のすべての領域が、同時に、複数の赤外線検出素子7aのいずれかの視野に含まれる。
【0299】
17.本発明の実施の形態のさらに他の変形例
図54は、本発明の実施の形態のさらに他の変形例の赤外線センサ7付近の拡大図である。
【0300】
本変形例の赤外線センサ7は、図50を用いて説明した赤外線センサ7の赤外線検出素子701〜705に加えて、赤外線検出素子706を備えている。赤外線検出素子701〜705は、その視野が、すべて、孔40Xを介して加熱室10内に向けられていたが、赤外線検出素子706は、約半分ほどが、検出経路部材40に遮られ、加熱室10内に向けられることができなくなっている。
【0301】
そして、本変形例では、加熱室10内で、赤外線検出素子706の視野706X内において食品が検知された場合には、正確に当該食品の温度を検出することができないとして、その時点で加熱を停止する制御が行なわれる。このような制御態様を、図55を参照して、より詳細に説明する。
【0302】
図55を参照して、本変形例では、マグネトロン12による加熱動作が開始された後、S201で、加熱室10全体がいずれかの赤外線検出素子の視野内に含まれるように制御される。つまり、加熱室10全体において、温度を検出するために赤外線検出素子の視野を走査する処理がなされる。
【0303】
次に、S201で、加熱室10内で、食品が存在する位置を検出できたか否かが判断される。この判断は、たとえば、時間の経過とともに、温度上昇が見られた位置を検出できたか否かによってなされる。そして、このような位置を検出できた場合、その位置に、食品が存在すると判断される。そのような位置を検出できた場合、S203に処理が進められる。
【0304】
そして、S203では、その食品の位置が、赤外線センサ7の視野の端部であったか否かが判断される。ここで、赤外線センサ7の視野とは、赤外線検出素子701〜706の視野をまとめたものを言う。そして、赤外線センサ7の視野の端部とは、赤外線検出素子706の視野の中の加熱室10内にある視野706Xを言う。視野706内に食品が存在するということは、食品の一部のみが、赤外線センサ7の視野に含まれることを意味する。つまり、図56に示すように、加熱室10内に赤外線センサ7の総視野700が存在する場合、食品Rが、その一部のみを総視野700内に含まれるように存在していることを意味する。
【0305】
このような場合には、赤外線センサ7(つまり、赤外線検出素子701〜706)によっては、食品Rの温度を、正確に検出することは困難である。したがって、S203で、食品の位置が、赤外線センサ7の視野の端部であると判断すると、S206に処理を進め、その時点で、マグネトロン12による加熱動作を停止して、処理を終了する。
【0306】
なお、S203で、食品の位置が、赤外線センサ7の視野の端部であると判断すると、S204で、そのまま食品の温度検出を続行し、食品が、加熱を終了すべき温度である仕上がり設定温度に到達したことを条件として、加熱を停止し、処理を終了させる。
【0307】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0308】
つまり、実施の形態および各変形例に開示された技術は、単独で実行されてもよいし、複合されて実行されてもよい。
【0309】
さらに、実施の形態および各変形例において開示された技術は、可能な限り、赤外線センサ7に、単数の赤外線検出素子が備えられた場合にも、複数の赤外線検出素子が備えられた場合にも、適用することができる。
【0310】
また、赤外線センサ7に、複数の赤外線検出素子が備えられ、各赤外線検出素子の視野を移動すべく、赤外線センサ7自体が移動される際には、赤外線検出素子が備えられる領域を、長方形の領域と捉えた場合、少なくとも、赤外線センサ7は、当該長方形の短辺方向に移動されるべきである。たとえば、図57に示すように、赤外線センサ7において、赤外線検出素子7aが一列に備えられた場合であっても、図58や図59に示すように、赤外線検出素子7aが複数列に備えられる場合であっても、いずれも、両矢印N方向に移動されるべきである。両矢印N方向に移動されることにより、各赤外線センサ7の移動距離に対する、新たに赤外線検出素子7aの視野に含まれる領域の変化量が、最大となるからである。つまり、より速く、加熱室10全域の温度検出を行なえるからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態である電子レンジの斜視図である。
【図2】 図1の電子レンジのドアが開状態とされた状態の斜視図である。
【図3】 図1の電子レンジの外装部を外した状態の斜視図である。
【図4】 図1の電子レンジのIV−IV線に沿う矢視断面図である。
【図5】 図1の電子レンジのV−V線に沿う矢視断面図である。
【図6】 図1の電子レンジの、赤外線センサに含まれる赤外線検出素子の視野を模式的に示す図である。
【図7】 図1の電子レンジの制御ブロック図である。
【図8】 図1の電子レンジの制御回路が実行する、加熱調理処理のフローチャートである。
【図9】 図1の電子レンジの第1の変形例を示す図である。
【図10】 図1の電子レンジの第1の変形例において、赤外線検出素子の視野が底板上を移動する状態を模式的に示す図である。
【図11】 図1の電子レンジの第1の変形例において、制御回路が実行する加熱調理処理のフローチャートである。
【図12】 図9の電子レンジにおいて、赤外線検出素子の視野の移動方向を変更した状態を示す図である。
【図13】 図10の電子レンジにおいて、赤外線検出素子の視野の移動方向を変更した状態を示す図である。
【図14】 図1の電子レンジの第2の変形例を示す図である。
【図15】 図1の電子レンジの第2の変形例において、赤外線検出素子の視野と底板との位置関係を模式的に示す図である。
【図16】 図1の電子レンジの第2の変形例において、制御回路が実行する加熱調理処理のフローチャートである。
【図17】 図1の電子レンジの第2の変形例において、制御回路が実行する加熱調理処理のフローチャートである。
【図18】 図1の電子レンジの第3の変形例を示す図である。
【図19】 図1の電子レンジの第3の変形例において、赤外線検出素子の視野と底板との位置関係を模式的に示す図である。
【図20】 図1の電子レンジの第3の変形例において、制御回路が実行する加熱調理処理のフローチャートである。
【図21】 図1の電子レンジの第3の変形例において、制御回路が実行する加熱調理処理のフローチャートである。
【図22】 本発明の実施の形態の電子レンジの縦断面図である。
【図23】 図22の回転アンテナおよび補助アンテナ付近の側面図である。
【図24】 図22の加熱室下部付近の拡大図である。
【図25】 図22の加熱室下部付近の拡大図である。
【図26】 図4の加熱室下部付近の拡大図である。
【図27】 図22に示す電子レンジの、補助アンテナの平面図である。
【図28】 図22に示す電子レンジの、回転アンテナの平面図である。
【図29】 図22に示す電子レンジの、補助アンテナの、回転アンテナと重なった状態での平面図である。
【図30】 本発明の第2の実施の形態の補助アンテナおよび回転アンテナの平面図である。
【図31】 本発明の第2の実施の形態の電子レンジの部分的な縦断面図である。
【図32】 図31の電子レンジの光学センサ付近の断面図である。
【図33】 図31の電子レンジのモータ付近の縦断面図である。
【図34】 本発明の第3の実施の形態の電子レンジのモータ付近の下面図である。
【図35】 本発明の第4の実施の形態の電子レンジのモータ付近の下面図である。
【図36】 一般的な回転アンテナの平面図である。
【図37】 加熱室の底面を模式的に示す図である。
【図38】 本発明の実施の形態の変形例の電子レンジの、外装部を外した状態を、右上方から見た部分的な斜視図である。
【図39】 図38の検出経路部材の右側面図である。
【図40】 図38の検出経路部材の下面図である。
【図41】 図38の検出経路部材の右後方から見た斜視図である。
【図42】 図38の検出経路部材と赤外線センサの位置関係を示す図である。
【図43】 本発明の実施の形態の変形例の加熱室内の赤外線センサの視野を模式的に示す図である。
【図44】 図43の赤外線センサ付近の拡大図である。
【図45】 赤外線センサが本発明の実施の形態の変形例の比較される状態で回動する状態を示す図である。
【図46】 図45の赤外線センサ付近の拡大図である。
【図47】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジにおける制御態様を示すフローチャートである。
【図48】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジにおける制御態様を示すフローチャートである。
【図49】 本発明の実施の形態のさらに他の変形例の電子レンジにおける、視野の移動態様を説明するための図である。
【図50】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジの赤外線センサ付近の拡大図である。
【図51】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジの縦断面図である。
【図52】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジにおける赤外線センサの具体的構成の一例を示す図である。
【図53】 本発明の実施の形態の他の変形例の電子レンジにおける赤外線センサの具体的構成の別の例を示す図である。
【図54】 本発明の実施の形態のさらに他の変形例の電子レンジの赤外線センサ付近の拡大図である。
【図55】 本発明の実施の形態のさらに他の変形例の電子レンジにおける制御態様を示すフローチャートである。
【図56】 本発明の実施の形態のさらに他の変形例の電子レンジにおける制御態様を説明するための図である。
【図57】 本発明において推奨される赤外線センサの移動方向を示すための図である。
【図58】 本発明において推奨される赤外線センサの移動方向を示すための図である。
【図59】 本発明において推奨される赤外線センサの移動方向を示すための図である。
Claims (2)
- 食品を収容する加熱室と、
マイクロ波を発振するマグネトロンと、
前記マグネトロンの発振したマイクロ波を前記加熱室内に導く放射アンテナと、
前記放射アンテナに、当該放射アンテナに対して電気的に絶縁されるように備えられた補助アンテナとを含み、
前記放射アンテナは、所定の方向にマイクロ波を放射するよう構成され、
前記補助アンテナは、前記所定の方向に交わる方向に長手方向を有するスリットを形成されている、電子レンジ。 - 食品を収容する加熱室と、
マイクロ波を発振するマグネトロンと、
前記マグネトロンの発振したマイクロ波を前記加熱室内に導く放射アンテナと、
前記放射アンテナに、当該放射アンテナに対して電気的に絶縁されるように備えられた補助アンテナとを含み、
前記放射アンテナは、当該放射アンテナの所定の位置から、当該放射アンテナの他の位置よりも強く、所定の方向にマイクロ波を放射するよう構成され、
前記補助アンテナは、前記放射アンテナの所定の位置に対向する部分に、前記所定の方向に交わる方向に長手方向を有するスリットを形成されている、電子レンジ。
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