JP4633864B2 - 蓄電材料および蓄電デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、蓄電材料およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
近年、携帯オーディオデバイス、携帯電話、ラップトップコンピュータといった携帯型電子機器が広く普及しており、こうした携帯型電子機器の電源として種々の二次電池が使用されている。また、携帯型電子機器よりもはるかに大容量の二次電池に対するニーズも高まっている。例えば、省エネルギーの観点、あるいは、二酸化炭素の排出量を低減する観点から、従来の内燃機関を用いた自動車において、電気による駆動力を併用するハイブリット自動車が普及し始めている。このため、用途にかかわらず、出力、容量、繰り返し特性などの特性がよりいっそう優れた二次電池が求められている。
二次電池は、酸化還元反応を利用して電荷を蓄積するため、可逆的に酸化還元反応を行う物質、つまり電荷を蓄積する蓄電材料が、二次電池のこうした特性に大きく影響する。従来の二次電池では、金属や炭素、無機化合物などが蓄電材料として用いられてきた。例えば、現在、広く用いられているリチウム二次電池の場合、蓄電材料である正極活物質および負極活物質として、金属酸化物および黒鉛などが用いられてきた。
こうした無機材料に対して、有機化合物を蓄電材料として用いることが検討されている。有機化合物は、無機化合物に比べて合成方法が確立しており、設計通りの新しい分子構造を持つ化合物を合成することが比較的容易である。このため、有機化合物を活物質として用いる場合、分子設計により、種々の特性を有する活物質を実現することが可能であると考えられる。
また、有機化合物は金属に比べて軽量であるため、有機化合物からなる蓄電材料を用いて二次電池を構成する場合、軽量な二次電池を実現することができる。このため、例えば、充電密度は高くなくてもよいが、軽量であることが要求されるハイブリット自動車用の二次電池として好適であると考えられる。ハイブリット自動車用蓄電デバイスとしてキャパシタを用いることも検討されているが、このような利点は、化学反応を利用したキャパシタに有機化合物からなる蓄電材料を用いた場合にも得られる。
本願の発明者らは特許文献1および2において、高速の充放電が期待できる新しい蓄電材料としてπ電子共役雲を有する有機化合物を提案し、その反応メカニズムを明らかにしてきた。
こうしたπ電子共役雲を有する有機化合物は低分子化合物としても高分子化合物としても合成することができる。二次電池などの蓄電デバイスにπ電子共役雲を有する有機化合物に用いる場合、電解液には非水溶媒が用いられるため、高分子化合物としてπ電子共役雲を有する有機化合物を利用する方が、電解液への溶出が抑制され、蓄電デバイスの特性を向上させるために好ましい。
本願の発明者は、特許文献3において、このようなπ電子共役雲を有する有機化合物部位を複数含む高分子化合物を蓄電デバイスに用いることを提案した。例えば、ポリアセチレン、ポリメチルメタクリレート鎖を主鎖として有する高分子化合物に、π電子共役雲を有する有機化合物部位を結合させて得られる高分子化合物を開示した。また、ポリビニルアルコール主鎖に、カルボキシテトラチアフルバレンを有する側鎖を脱水縮合させて得られる高分子化合物を開示した。
特開2004−111374号公報 特開2004−342605号公報 特開2007−305461号公報
特許文献3では、本願の発明者は、これらの有機化合物を活物質として用いた蓄電デバイスにおいて、電解液の溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ − ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を用いることが好ましいと開示した。
しかしながら、特許文献3に開示されているπ電子共役雲を有する高分子化合物を種々の電解液を用いて蓄電デバイスを作製し、さらに詳細に特性を評価したところ、用いる電解液によって、放電容量が設計容量に対して低下してしまうことがあるという課題が存在することが分かった。このため、特許文献3に開示されているπ電子共役雲を有する高分子化合物を用いて蓄電デバイスを作製する場合、使用可能な電解液用の溶媒の種類が制限され、高分子化合物の特性を最大限に引き出すことのできる蓄電デバイスの設計が困難となることがある。
また、特許文献3に開示されているπ電子共役雲を側鎖に有する高分子化合物を用いて、高容量、高出力、繰り返し特性に優れた蓄電デバイスを得られることが開示されてはいるものの、なかでも特に優れた特性を有する蓄電デバイスを得ることのできる高分子化合物の分子構造に関する知見は十分に開示されていない。
本発明はこのような従来技術の課題を解決し、電解液の種類にかかわらず、高容量、高出力、繰り返し特性に優れた蓄電材料およびそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明の蓄電材料は、π共役電子雲を有し、下記一般式(1)で表わされる構造の酸化還元部位を側鎖に有する第1ユニットと、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットとの共重合体化合物を含む蓄電材料であって、一般式(1)中、X1からX4はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1およびR2は、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む互いに独立した鎖状または環状の脂肪族基であって、それぞれ少なくとも1つ以上の二重結合を含み、R1およびR2の一方は、前記共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手を含んでいる。
Figure 0004633864
ある好ましい実施形態において、前記共重合体化合物は、下記一般式(1’)で表わされる構造を有し、 一般式(1’)中、X1からX4はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子であり、RaからRdから選ばれる1つは、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手であり、RaからRdの他の3つは、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基である。
Figure 0004633864
本発明の蓄電材料は、π共役電子雲を有し、下記一般式(2)または一般式(3)で表わされる構造の酸化還元部位を側鎖に有する第1ユニットと、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットとの共重合体化合物を含む蓄電材料であって、一般式(2)および(3)中、Xは硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子であり、R3からR6から選ばれる1つは、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手であり、R3からR6の他の3つは、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基であり、R7およびR8は、それぞれ独立した炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む鎖状または環状の脂肪族基、または、水素原子である。
Figure 0004633864
Figure 0004633864
ある好ましい実施形態において、前記第2ユニットの側鎖は、非水溶媒と親和性を有する官能基を含む。
ある好ましい実施形態において、前記第2ユニットの側鎖は、エステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基およびスルホキシド基から選ばれる少なくとも1種を含む。
ある好ましい実施形態において、前記共重合体化合物は、下記一般式(4)で表わされる構造を有し、一般式(4)中、R9およびR10は前記共重合体化合物の主鎖を構成し、R9およびR10は3価残基であって、互いに独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1つと、炭素数1から10の飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基、または、少なくとも1つの水素原子とを含み、L1はR9と結合したエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基であり、R12は、R10およびM1と結合した炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドおよびエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基であり、M1は一般式(1)、(2)または(3)であり、前記結合手によってR12と結合しており、nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である。
Figure 0004633864
ある好ましい実施形態において、前記共重合体化合物は、下記式(5)で表わされ、一般式(5)中、R12は、炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドおよびエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基であり、R13およびR14は、互いに独立した、炭素数1から4の飽和脂肪族基およびフェニル基からなる群から選ばれる1つ、または、水素原子であり、R15からR17は、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基であり、L1はエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基であり、nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である。
Figure 0004633864
ある好ましい実施形態において、L1は、エステル基、エーテル基、カルボニル基から選ばれる少なくとも1種を含む。
ある好ましい実施形態において、前記共重合体化合物は、下記式(6)で表わされる構造を有し、式(6)中、nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である。
Figure 0004633864
ある好ましい実施形態において、前記共重合体化合物を構成する前記第1ユニットのユニット数nに対する前記第2ユニットのユニット数mの構成比率m/nが、0より大きく、5以下である。
本発明の電極は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられており、上記いずれかによって規定される蓄電材料を含む蓄電層とを備える。
ある好ましい実施形態において、前記蓄電層は導電性物質を含む。
本発明の電気化学素子は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解液とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、上記電極を有する。
ある好ましい実施形態において、前記電解液が4級アンモニウムカチオンとアニオンとの塩を含んでいる。
本発明の蓄電デバイスは、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解液とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、上記電極を有する。
本発明の蓄電デバイスは上記電極を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、前記リチウムイオンとアニオンとからなる塩を含み、前記正極および前記負極の間に満たされた電解液とを備える。
本発明の携帯型電子機器は、上記蓄電デバイスを備える。
本発明の車両は、上記蓄電デバイスを備える。
本発明の蓄電材料によれば、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元部位を第1ユニットの側鎖に有するため、安定して繰り返し酸化還元反応を行うことができる。また、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットが共重合体化合物に含まれるため、一般式(1)から(3)で表わされる構造が酸化した状態にある場合において、酸化還元部位が溶媒和するための溶媒が移動しうる間隙が確保される。したがって、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元が円滑に進み、第1ユニットの側鎖が可能な酸化状態まで酸化される。
よって本発明の蓄電材料を用いることによって、設計の自由度が高く、高出力、高容量、かつ、繰り返し特性に優れる蓄電デバイスが実現する。
本発明による蓄電デバイスの一実施形態であるコイン型二次電池を示す概略断面図である。 図1の二次電池の正極の構造を示す断面図である。 実施例1から12の評価結果を示すグラフである。 比較例1から12の評価結果を示すグラフである。 本発明による蓄電デバイスの一実施例であるラミネート型二次電池を示す模式的断面図である。 図5の二次電池の模式的な上面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による蓄電材料および蓄電デバイスの実施形態を説明する。本実施形態では、リチウム二次電池を例に挙げて本発明による蓄電デバイスおよび本発明による蓄電材料を説明する。しかし、本発明はリチウム二次電池やリチウム二次電池の正極活物質に限られず、化学反応を利用したキャパシタなどにも好適に用いられる。
図1は、本発明による蓄電デバイスの一実施形態であるコイン型リチウム二次電池を模式的に示した断面図である。図1に示すコイン型リチウム二次電池は、正極31と、負極32と、セパレータ24とを備えている。正極31は正極活物質層23および正極集電体22を含み、正極活物質層23は正極集電体22に支持されている。同様に、負極32は負極活物質層26および負極集電体27を含み、負極活物質層26は負極集電体27に支持されている。
以下において詳細に説明するように、正極活物質層23は、正極活物質として本発明による蓄電材料を含む。正極集電体22は、例えば、アルミニウム、金、銀、ステンレス、アルミニウム合金等からなる金属箔や金属メッシュあるいはこれらの金属からなる導電性フィラーを含む樹脂フィルムなどが用いられる。
負極活物質層26は、負極活物質を含む。負極活物質としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出する公知の負極活物質が用いられる。例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛材料、非晶質炭素材料、リチウム金属、リチウム含有複合窒化物、リチウム含有チタン酸化物、珪素、珪素を含む合金、珪素酸化物、錫、錫を含む合金、および錫酸化物、等のリチウムを可逆に吸蔵放出することの出来る材料、もしくは、活性炭などの電気二重層容量を有する炭素材料、π電子共役雲を有する有機化合物材料などを用いることができる。これら負極材料は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の負極材料と混合して用いてもよい。負極集電体27には、例えば銅、ニッケル、ステンレスなど、リチウムイオン二次電池用負極の集電体として公知の材料を用いることができる。正極集電体22と同様、負極集電体27も金属箔や金属メッシュあるいは金属からなる導電性フィラーを含む樹脂フィルムなどの形態で用いることができる。
正極活物質層23および負極活物質層26は、それぞれ正極活物質および負極活物質のみを含んでいてもよいし、導電剤および結着剤のいずれか一方、または、両方を含んでいてもよい。
導電剤には、正極活物質および負極物質の充放電電位において、化学変化を起こさない種々の電子伝導性材料を用いることができる。例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック等の炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンなどの導電性高分子、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、金属粉末類、導電性ウィスカー類、導電性金属酸化物などを単独又はこれらの混合物として用いることができる。また、イオン導電性助剤として、ポリエチレンオキシドなどからなる固体電解質、またはポリメタクリル酸メチルなどからなるゲル電解質を正極中に含ませてもよい。
結着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)をはじめとするフッ素系樹脂やそれらの共重合体樹脂、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸やその共重合体樹脂などを結着剤として用いることができる。
正極31および負極32は正極活物質層23および負極活物質層26がセパレータ24と接するようにセパレータ24を挟んで対向し、電極群を構成している。セパレータ24は、電子伝導性を有しない樹脂によって構成された樹脂層であり、大きなイオン透過度を有し、所定の機械的強度および電気的絶縁性を備えた微多孔膜である。耐有機溶剤性および疎水性に優れるという観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを単独または組み合わせたポリオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ24の代わりに、電解液を含んで膨潤し、ゲル電解質として機能する電子伝導性を有する樹脂層を設けてもよい。
電極群はケース21の内部の空間に収納されている。また、ケース21の内部の空間には電解液29が注入され、正極31、負極32およびセパレータ24は電解液29に含浸されている。セパレータ24は、電解液29を保持する微細な空間を含んでいるため、微細な空間に電解液29が保持され、電解液29が正極31と負極32との間に配置された状態をとっている。ケース21の開口は、ガスケット28を用いて封口板25により封止されている。
電解液29は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解する支持塩とから構成される。非水溶媒としては、非水二次電池や非水系電気二重層キャパシタに用いることのできる公知の溶媒を使用可能である。具体的には、環状炭酸エステルを含んでいる溶媒を好適に用いることが出来る。なぜなら、環状炭酸エステルは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートに代表されるように、非常に高い比誘電率を有しているからである。環状炭酸エステルの中でもプロピレンカーボネートが好適である。なぜなら、凝固点が−49℃とエチレンカーボネートよりも低く、蓄電デバイスを低温でも作動させることができるからである。
また、環状エステルを含んでいる溶媒もまた好適に用いることが出来る。なぜなら、環状エステルは、γ−ブチロラクトンに代表されるように、非常に高い比誘電率を有していることから、これら溶媒を成分として含むことにより、電解液29の非水溶媒全体として非常に高い誘電率を有することができる。
非水溶媒としてこれらの1つのみを用いてもよいし、複数の溶媒を混合して用いてもよい。その他の溶媒として用いることの出来る溶媒としては、鎖状炭酸エステル、鎖状エステル、環状あるいは鎖状のエーテル等が挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の非水溶媒を用いることができる。
以下において詳細に説明するように、本発明の蓄電材料は、非水溶媒の比誘電率の値によらず、高いエネルギー密度で充放電を行うことが可能であり、また、繰り返し特性に優れる。このため、種々の値の比誘電率を有する非水溶媒を単体で、あるいは、2つ以上混合して用いても優れた特性を発揮し得る。
支持塩としては、以下のアニオンとカチオンとからなる塩を使用することが可能である。アニオン種としては、ハロゲン化物アニオン、過塩素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドアニオンなどを用いることができる。カチオン種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオンや、マグネシウムなどのアルカリ土類金属カチオン、テトラエチルアンモニウムや1,3−エチルメチルイミダゾリウムに代表される4級アンモニウムカチオン等を用いることができる。
なお、カチオン種としては、4級アンモニウムカチオンやリチウムカチオンを用いることが好ましい。4級アンモニウムカチオンはイオン移動度が高く、導電率の高い電解液を得ることが出来ること、また対極として反応速度の速い活性炭等の電気二重層容量を有する負極を用いることが出来ることから、高出力な蓄電デバイスを得ることが出来るからである。また、リチウムカチオンは、対極として反応電位が低く、容量密度の高い、リチウムを吸蔵放出可能な負極を用いることが出来ることから、高電圧、高エネルギー密度な蓄電デバイスを得ることが出来るからである。
図2は、正極31の構造を拡大して示す模式的な断面図である。正極集電体22に支持された正極活物質層23は正極活物質粒子41と、導電剤および結着剤からなる導電剤部42とを含んでいる。導電剤部42は、電解液29を保持しうるように多孔質構造を有している。図2では、正極活物質粒子41を模式的な円形で示しているが、正極活物質粒子41は、鎖状の重合体が折り重なって凝集した粒子形状を備えている。鎖状の重合体が折り重なることによって粒子の内部にまで電解液29が侵入し得る空孔が形成されている。正極活物質粒子41は、概ね球形状を備えているが、重合体が凝集することによって形成する形状であれば特に制限はない。正極活物質粒子41の大きさは、概ね0.5μmから10μm程度である。
以下、正極活物質粒子41として用いる蓄電材料を詳細に説明する。本発明の蓄電材料は、可逆的に酸化還元反応を行う有機化合物であり、具体的には、π共役電子雲を有し、下記一般式(1)から一般式(3)のいずれかで表わされる構造の酸化還元部位を側鎖に有する第1ユニットと、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットとの共重合体化合物を含む。本願明細書において、側鎖とは、共重合体化合物において、もっとも長い炭素の連なった主鎖から枝分かれしている炭素鎖をいう。主鎖および側鎖には炭素以外の原子が含まれていてもよい。
下記一般式(1)中、X1からX4はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子、つまりカルコゲン原子である。R1およびR2は、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む互いに独立した鎖状または環状の脂肪族基であり、それぞれ少なくとも1つ以上の二重結合を含む。R1およびR2の一方は、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手を含んでいる。
Figure 0004633864
下記一般式(2)および(3)中、Xは硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子である。R3からR6から選ばれる1つは、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手であり、R3からR6の他の3つは、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基である。R7およびR8は、それぞれ独立した水素原子、または、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む鎖状または環状の脂肪族基である。
Figure 0004633864
Figure 0004633864
一般式(1)で示される構造は、R1およびR2がそれぞれ少なくとも1つ以上の二重結合を含むため、X1とX2とを含む環状骨格およびX3とX4とを含む環状骨格内にそれぞれ少なくとも1つのπ電子共役雲を含んでいる。
一般式(2)で示される構造は、カルコゲン原子を含む環状骨格を2つ含んでおり、それぞれの環状骨格内に炭素−炭素二重結合が少なくとも1つ存在する。このため、炭素−炭素二重結合のπ電子とカルコゲン原子の孤立電子対とによって、一般式(2)で示される構造の分子上にπ電子共役雲が形成される。
一般式(3)で示される構造は2つの環状骨格を含んでおり、それぞれの環状骨格において、2つの炭素−窒素二重結合が炭素−炭素単結合を介して存在する。このため、二重結合のπ電子によって、一般式(3)で示される構造の分子上にπ電子共役雲が形成される。
これら一般式(1)から(3)のπ電子共役雲は電子の授受が可能であり、環状骨格あたり1つの電子を放出することができる。
第1ユニットが一般式(1)で規定される構造を含む場合、R1、R2がエチレン基(−CH=CH−)であるテトラカルコゲノフルバレン骨格を第1ユニットが含んでいることが好ましい。具体的には、第1ユニットは下記一般式(1’)で示す構造を含んでいることが好ましい。
Figure 0004633864
ここで、X1からX4はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子であり、RaからRdから選ばれる1つは、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手であり、RaからRdの他の3つは、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基である。
一般式(1’)で表わされる構造において、X1からX4が硫黄原子である場合には一般式(1’)の骨格はテトラチアフルバレン(TTFと略されることもある)である。
テトラチアフルバレンは、下記式(7)に示すように、電解液に溶解した状態で1電子酸化を受けると、2つの5員環のうち一方の電子が引き抜かれ、正に帯電する。このため、対アニオン(この場合PF6 -)がテトラカルコゲノフルバレン骨格に1つ配位する。さらに、1電子酸化を受けると、他方の5員環の電子が引き抜かれ、正に帯電する。このため、もう1つ、対アニオンが環状骨格に配位する。
Figure 0004633864
酸化された状態でも、環状骨格は安定であり、電子を受け取ることによって還元され、電気的に中性な状態に戻ることができる。したがって、この可逆的な酸化還元反応を利用することにより、テトラカルコゲノフルバレン骨格を電荷の蓄積が可能な蓄電材料として用いることができる。
例えば、テトラチアフルバレンを、リチウム二次電池の正極に用いる場合、放電時には、テトラカルコゲノフルバレン骨格が電気的に中性の状態、つまり、式(7)の左側の状態をとる。また、充電状態では、テトラカルコゲノフルバレン骨格が正に帯電した状態、つまり、式(7)の右側の状態をとる。
第2ユニットは、酸化還元反応部位を側鎖に有していない。より具体的には、一般式(1)から(3)に示される構造が酸化還元反応を行う電位の範囲において、電気化学的に酸化還元反応を行う部位を第2ユニットは有しておらず、第2ユニットの側鎖は、一般式(1)から(3)に示される構造が酸化還元反応を行う電位の範囲において、酸化も還元もされない。より好ましくは、第2ユニットの側鎖は、非水溶媒と親和性を有する官能基を含む。このような化学的特性を有する構造としては、酸素含有官能基であるエステル基、エーテル基、カルボニル基、窒素含有官能基であるシアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、炭素からなる官能基であるアルキル基、フェニル基、硫黄含有官能基であるアルキルチオ基、スルホン基、スルホキシド基などが挙げられる。第2ユニットの側鎖は、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましく、2種以上含んでいてもよい。
エステル基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基の官能基の末端部は特に限定されないが、メチル基、エチル基のような炭素数の少ないアルキル基、芳香族基が望ましい。好ましいエステル基としては、例えば(−COO−CH3)、(−COO−C25)で表されるアルキルエステルやフェニルエステル(−COO−C65)などが挙げられる。また、好ましいエーテル基としては、例えば(−O−CH3)、(−O−C25)で表されるアルキルエーテルやフェニルエ―テル(-O-C65)などが挙げられる。また、好ましいカルボニル基としては、例えば(−C(=O)−CH3)、(−C(=O)−C25)、(−C(=O)−C65)などが挙げられる。また、好ましいスルホン基としては、(−S(=O)−CH3)、(−S(=O)−C25)、(−S(=O)2−C65)などが挙げられる。また、好ましくいスルホキシド基としては、(−S(=O)−CH3)、(−S(=O)−C25)、(−S(=O)−C65)などが挙げられる。
また、共重合体化合物の主鎖は特に限定されず、炭素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む3価残基を繰り返しユニットとして含んでいる。繰り返しユニットは、炭素数1から10の飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基よりなる群から選ばれる置換基を含んでいてもよい。つまり、繰り返しユニットは、少なくとも1つの水素、または、炭素数1から10の飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基よりなる群から選ばれる置換基を有する。具体的には、飽和炭化水素であるポリエチレン、ポリプロピレン、不飽和炭化水素であるポリアセチレン、芳香族を含むポリカーボネート、ポリスチレン、あるいはこれらのプロトンの一部がハロゲンに置換されたものなどが挙げられる。
第1ユニットおよび第2ユニットからなる共重合体化合物の重合度は、有機溶媒に溶解しないよう、大きいことが好ましい。具体的には、共重合体化合物に含まれる第1ユニットおよび第2ユニットの数の合計が4以上、つまり、重合度は4以上であることが好ましい。これにより、有機溶媒に溶けにくい蓄電材料が実現する。より好ましくは、重合体の重合度は、10以上であり、さらに好ましくは、20以上4000以下である。
共重合体化合物を構成する第1ユニットのユニット数nに対する第2ユニットのユニット数mの構成比m/nは任意に変更することができるが、高容量、高出力、優れた繰り返し特性を両立する蓄電材料の実現のためには、0より大きく5以下であることが好ましい。
つまり、本発明の蓄電材料に含まれる共重合体化合物は、下記一般式(4)で表わすことができる。
Figure 0004633864
ここで、R9およびR10は、共重合体化合物の主鎖を構成している。R9およびR10は3価残基であって、互いに独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1つと、炭素数1から10の飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基から群から選ばれる少なくとも1つの置換基、または、少なくとも1つの水素とを含む。L1は、R9と結合したエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基である。R12は、R10およびM1と結合した炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドまたはエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基である。M1は一般式(1)、(2)または(3)であり、上述の結合手によってR12に結合しており、nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である。
一般式(4)に示すように、R9およびR10は、M1およびL1以外の側鎖を含んでいてもよい。また、m+nは、4以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上4000以下であることが更に好ましい。m/nは0より大きく5以下であることが好ましい。L1を含む繰り返しユニットとM1を含む繰り返しユニットは、規則的に配列していてもよく、ランダムであってもよい。
本発明の蓄電材料に含まれる共重合体化合物は、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元部位を第1ユニットに有するため、上述したように、繰り返し可逆的な酸化還元反応を行うことができる。また、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットが共重合体化合物に含まれるため、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元が円滑に進む。
以下この理由を、まず、特許文献3に開示された従来の重合体化合物を参照しながら説明する。
特許文献3に開示された式(8)で示される重合体化合物(以下重合体化合物8と記載する)は、ポリビールアルコールからなる主鎖とカルボキシテトラチアフルバレンからなる側鎖とを有する。つまり、本願発明の共重合体化合物における酸化還元部位を有している第1ユニットのみで構成されており、第2ユニットを含んでいない。
Figure 0004633864
重合体化合物8は、テトラチアフルバレン骨格を有しており、上述したようにテトラチアフルバレン骨格1つあたり2電子の酸化が可能である。この重合体化合物を蓄電材料とし、二次電池に使用した場合、二次電池が充電された状態において、式(8’)に示すように、テトラチアフルバレンが電子を放出して酸化されることによって、正に帯電する。
Figure 0004633864
このとき、負の電荷を有する電解質アニオン(PF6 -)がテトラチアフルバレンに配位し、充電状態となる。充電状態となったテトラチアフルバレンは、電子を受け取ることにより、電気的に中性となり、電解質アニオンを解放して放電状態となる。このように高分子活物質は、式(8’)のような充電状態と、式(8)のような放電状態とを可逆的に繰り返す。
式(8’)に示すように、電解質アニオンが、テトラチアフルバレンに配位する場合、正に帯電したテトラチアフルバレンと負の電荷を有する電解質アニオンとの間にはクーロン引力が働くと考えられる。このクーロン引力が大きい場合、電解質アニオンは、テトラチアフルバレンに強くトラップされてしまう。これにより、重合体化合物8を活物質として含む正極活物質粒子において、電解質アニオンが粒子の表面近傍でトラップされてしまい、粒子に形成された間隙内部へ電解質アニオンが進入することが困難となる。その結果、二次電池の設計容量より少ない容量しか利用できず、単位重量あたりの電荷密度が高いという有機化合物の特徴を発揮させることができなくなる。
本願発明者は、このような場合、電解液の溶媒として比誘電率の高いものを選べば、充電されて正に帯電したテトラチアフルバレンに溶媒和し、正極活物質粒子内の重合体と電解質アニオンとの静電引力を緩和させることができることを見出した。式(8)に示す重合体化合物は、例えば、比誘電率の高い炭酸プロピレン(PC)と炭酸エチレン(EC)とを体積比1:1で混合した溶媒を用いた場合、式(9)に示すように、炭酸プロピレンおよび炭酸エチレンが正に帯電したテトラチアフルバレンに溶媒和する。これにより、電解質アニオンが、充電されたテトラチアフルバレンによって強く引き寄せられた場合でも、捕捉されなくなり、正極活物質粒子の内部を移動可能となる。したがって、活物質粒子の表層部が充電された段階においても、電解質アニオンは活物質粒子の表層部でトラップされず、電解質溶液中から活物質表層部を通過し、活物質中心部まで進入することが可能となり、活物質粒子は粒子内部まで充放電に利用することができると考えられる。
Figure 0004633864
一般的に、アニオンおよびカチオンからなる塩を混合した溶媒において、塩を解離させ、それぞれのイオンを単独で移動可能にするためには、比誘電率の高い溶媒が有効であることが知られている。これは、比誘電率の高い溶媒が、塩のカチオンを優先的に溶媒和し、アニオン−カチオン間の静電引力を緩和することによる。したがって、環状のπ共役電子雲を有する重合体の活物質粒子においても、これと同様のメカニズムで、比誘電率の高い溶媒が、充電されたテトラチアフルバレンに優先的に溶媒和し、アニオン−カチオン間の静電引力を緩和するものと考えられる。
ただし、重合体化合物8は、酸化還元反応部位を含む側鎖しか有していないため、酸化還元部位周囲の間隙が相対的に狭く、酸化したテトラチアフルバレンに溶媒が接近しにくい。このため、溶媒がテトラチアフルバレンから比較的はなれた位置においても溶媒和の効果を発揮するために、溶媒の比誘電率がより高いことが必要となる。本願発明者が詳細に検討したところ、重合体化合物8については、溶媒の20℃における比誘電率が55未満である場合、二次電池の容量が設計容量に対して大きく低下してしまうことが分かった。
これに対し、本発明の蓄電材料の共重合体化合物は、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットを含んでいる。例えば、式(6)に示される共重合体化合物は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の側鎖であるメトキシカルボニル基の一部の末端炭素にテトラチアフルバレンが結合した構造を備えている。テトラチアフルバレンはメトキシカルボニル基の一部にしか導入されていないため、テトラチアフルバレンが導入されていないメトキシカルボニル基は酸化還元反応部位を側鎖に有さない。
Figure 0004633864
このような、共重合体化合物は、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットの存在により、第1ユニットの一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元部位に柔軟性が生じ、また、ユニットごとに、側鎖の長さが異なるため、共重合体化合物内において、分子レベルの隙間が生じやすくなると考えられる。
この隙間には電解液中の溶媒が含浸し易く、活物質粒子内部に電解液の溶媒の連続した経路が形成されることにより、活物質粒子内部まで溶媒分子およびアニオンが移動可能となる。これによって、電解液に用いる溶媒の比誘電率が低い場合であっても、充放電反応に伴い、アニオンが活物質粒子の共重合体化合物内に生じる分子レベルの隙間を通過して、活物質粒子の内部で移動し、酸化還元部位に接近して溶媒和することができる。したがって、酸化還元反応部位が可能な酸化状態まで酸化され、充放電反応が進行する。
式(6)に示す構造の共重合体化合物の場合、式(6’)に示すように、テトラチアフルバレンが酸化されると、テトラチアフルバレンは炭酸プロピレンおよび炭酸エチレンに溶媒和される。これにより、溶媒が配位したテトラチアフルバレンはより嵩高くなるが、第2ユニットの側鎖は酸化還元反応部位を有さないため、溶媒和により嵩高くなることがない。このため、第2ユニットの側鎖に隙間が生じ、電解液中の溶媒が含浸する。
Figure 0004633864
以上のように、共重合体化合物内に酸化還元部位を側鎖に有しない第2ユニットを含ませることで、嵩高くならずに活物質粒子内に溶媒の経路を形成させることができる。前記の効果は、共重合体化合物を構成するユニットに第2ユニットが1つでも含まれていれば期待することができる。その好ましい共重合体化合物を構成する第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率m/nは、0より大きく、5以下である。なお、本発明における構成比率m/nとは、共重合体化合物を構成する第2ユニットの総数を第1ユニットの総数で割った値の平均値を意味する。
上述したように、酸化還元部位を側鎖に有しない第2ユニットが共重合体化合物に少しでも含まれていれば、本発明の効果は得られるため、構成比率m/nは0より大きければよい。また、嵩高さを抑制するためには、第2ユニットは多いほうが好ましく、m/nが大きいほど、上述した効果を得ることができる。しかし、第2ユニットは酸化還元部位を含まないため、第2ユニットが多くなると共重合体化合物の充電密度は低下する。本願発明者の詳細な検討によれば、構成比m/nが5以下である場合に、充電密度を高め、かつ、安定して繰り返し酸化還元反応を生じさせることができることが分かった。特に、構成比m/nが1以上5以下の範囲にあれば、非水溶媒の比誘電率の値によらず、高いエネルギー密度で充放電を行うことが可能であり、また、繰り返し特性に優れた蓄電デバイスが得られる。
このようなことから、第2ユニットの側鎖は、溶媒と親和性の高い官能基を含んでいることが好ましい。蓄電デバイスには、一般に非水溶媒を用いられるため、第2ユニットの側鎖は、非水溶媒と親和性の高い官能基を含んでいることがより好ましい。たとえば、酸素含有官能基であるエステル基、エーテル基、カルボニル基、窒素含有官能基であるシアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、炭素からなる官能基であるアルキル基、フェニル基、硫黄含有官能基であるアルキルチオ基、スルホン基、スルホキシド基、などは非水溶媒と親和性の高い官能基の1つである。これにより、第2ユニットの存在により形成される間隙の内部に溶媒がより進入しやすくなり、第1ユニットの一般式(1)から(3)で表わされる構造が溶媒和され易くなる。特に、第2ユニットの側鎖が大きな極性を有している官能基を含んでいれば、上述の効果が顕著になる。したがって、第2ユニットの側鎖は、酸素含有官能基であるエステル基、エーテル基またはカルボニル基を含むことがより好ましい。
なお、π電子共役雲を有する高分子化合物として、ポリアニリンやポリチオフェンおよびこれらの誘導体が知られている。これらの高分子化合物は主鎖全体に共役二重結合による共鳴構造が形成されるため、主鎖から電子を引き抜くと、それにより生じる正電荷は主鎖において、ある程度広がって分布する。その結果、隣接する繰り返し単位から続けて電子を引き抜こうとした場合、最初の電子を引き抜くことによって生じた正電荷が隣接するユニットにわたって非局在化し、電気的反発によって隣接するユニットから電子を引き抜きにくくなる。したがって、利用できる電子数が制限され、高い蓄電容量を得ることが難しくなってしまう。
これに対し、本発明の蓄電材料の共重合体化合物は、一般式(1)から(3)に示される部位が共重合体化合物の第1ユニットの側鎖のみに含まれる。各側鎖は独立しており、ある側鎖の酸化状態は隣接する側鎖の酸化還元反応にほとんど影響を与えない。このため、第1ユニットの側鎖の数に対応した電子の授受が可能であり、本発明の蓄電材料は高い蓄電容量を達成することができる。
本発明の蓄電材料の好ましい実施形態の1つは、上述したようにテトラチアフルバレン骨格を共重合体化合物の第1ユニットの側鎖に含んでいる。テトラチアフルバレン骨格は上述したように、2電子酸化された状態でも安定であるため、蓄電材料に適している。具体的には下記一般式(5)で示される構造を共重合体化合物の第1ユニットに含んでいる。
Figure 0004633864
ここで、R12は、炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドおよびエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基である。R13およびR14は、互いに独立した、水素原子、炭素数1から4の飽和脂肪族基およびフェニル基からなる群から選ばれる1つであり、R15からR17は、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基である。L1はエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基である。上述したように、テトラチアフルバレン骨格は酸化状態でも非常に安定であり、テトラチアフルバレン骨格の酸化還元反応は骨格外の構造にあまり影響を受けない。
本発明の蓄電材料に用いる上述の各共重合体化合物は、上述した第1ユニットおよび第2ユニットを含む限り、どのような方法で合成してもよい。例えば、共重合体化合物の主鎖となる共重合体主鎖化合物を合成し、その後、共重合体主鎖化合物に一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖を導入してもよい。あるいは、共重合体化合物の主鎖化合物の合成に用いるモノマー体に一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖を導入し、主鎖の合成を行うことによって共重合体化合物を合成してもよい。しかし、重合反応中の活性な結合手の転位を防止し、分子量や、第1ユニットと第2ユニットとの混合比率などが制御された規則性の高い共重合体化合物を合成するためには、主鎖となる共重合体主鎖化合物をまず合成し、カップリング反応によって、一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖を共重合体主鎖化合物に導入することが好ましい。例えば、ハロゲン元素およびヒドロキシル基によるカップリング反応、ハロゲン元素およびアミノ基によるカップリング反応などが挙げられる。ハロゲン元素およびヒドロキシル基、または、ハロゲン元素およびアミノ基の一方は共重合体主鎖化合物に導入され、他方が側鎖に導入される。ハロゲン元素およびヒドロキシル基によるカップリング反応によれば、共重合体化合物の主鎖と一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖とがエステル結合により結合された共重合体化合物が得られる。また、ハロゲン元素およびアミノ基のカップリング反応によれば、共重合体化合物の主鎖と一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖とがアミド結合により結合された共重合体化合物が得られる。
また、ヒドロキシル基同士を脱水縮合させることにより、一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖を共重合体主鎖化合物に導入してもよい。この場合、共重合体化合物の主鎖と一般式(1)から(3)に示される構造を含む側鎖とがエーテル結合で結合された共重合体化合物が得られる。以下の実施例において具体的な例を示す。
上述したように本発明の蓄電材料に含まれる共重合体化合物は、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元部位を第1ユニットに有するため、安定して繰り返し酸化還元反応を行うことができる。また、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットが共重合体化合物に含まれるため、一般式(1)から(3)で表わされる構造が酸化した状態にある場合において溶媒和するための溶媒が移動しうる間隙が確保される。したがって、一般式(1)から(3)で表わされる構造の酸化還元が円滑に進み、第1ユニットの側鎖の数に対応した電子の授受が可能である。また、酸化還元反応が円滑に進むということは、高容量だけではなく、出力特性、繰り返し特性などの蓄電デバイス特性の向上も期待できる。
このため、本発明の蓄電材料を用いた蓄電デバイスは、高出力、高容量、かつ、繰り返し特性に優れる。特に、第1ユニットと第2ユニットの構成比率が1以上5以下のときに、顕著な効果が得られ、高容量、高出力、繰り返し特性に優れた蓄電デバイスが実現できる。
このような特徴から、本発明の蓄電デバイスは、ハイブリッド自動車などの車両や携帯型電子機器に好適に用いられる。本発明の蓄電デバイスを備えた車両および携帯型電子機器は、蓄電デバイスが軽量であり、また、出力が大きく、かつ、繰り返し特性に優れているという特徴を有する。このため、特に、重量の点で従来の無機化合物を用いた蓄電デバイスでは達成し難かった軽量化が可能となる。
本実施形態では、本発明の蓄電材料を蓄電デバイス、より具体的には、リチウム二次電池に用いた形態を説明した。しかし、本発明の蓄電材料は、上述したように、二次電池以外の電気二重層キャパシタなどに用いてもよいし、生化学反応を利用するバイオチップなどの電気化学素子や、電気化学素子に用いられる電極にも好適に用いることができる。
この場合、上述の蓄電材料を用いた電極は、乾式法、湿式法、気相法の三つの方法により作製することができる。まず、乾式法による電極作製法を説明する。乾式法では、上述の共重合体化合物と結着剤とを混合し、得られたペーストを導電性支持体上に圧着させる。これにより膜状の蓄電材料が導電性支持体に圧着した電極が得られる。膜の形状としては、緻密膜であっても多孔質膜であってもよいが、乾式法による膜は多孔質になることが一般的である。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、あるいは、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアクリル酸、セルロース系樹脂などの炭化水素系樹脂を用いることができる。安定性の点から、好ましくはフッ素樹脂を好適に用いることができる。
導電性支持体としては、Al、SUS、金、銀等の金属基板、Si、GaAs、GaNのような半導体基板、ITOガラス、SnO2のような透明導電性基板、カーボン、グラファイト等の炭素基板、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性有機基板を用いることができる。
導電性支持体としては、上述の材料によって単独で膜形状を有する緻密膜であってもよいし、網やメッシュのような多孔質膜であってもよい。あるいは、非導電性支持体であるプラスチックやガラス上に上述の導電性支持体の材料が膜状に形成されていてもよい。また、共重合体化合物および結着剤に加えて、膜中の電子伝導性を補助するべく、必要に応じて例えば導電助剤を混合してもよい。導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック等の炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンなどの導電性高分子が用いられる。また、膜内部にイオン導電性助剤として、ポリエチレンオキシドなどからなる固体電解質、またはポリメタクリル酸メチルなどからなるゲル電解質を含ませてもよい。
次に、湿式法による電極作製法に関して説明する。湿式法では、上述の共重合体化合物を溶媒に混合分散させ、得られたスラリーを導電性支持体上に塗布あるいは印刷し、溶媒を除去することによって、膜状に形成することができる。また、電極膜中に必要に応じて、乾式法と同様に導電助剤、結着剤、イオン伝導性助剤を混合してもよい。導電性支持体には、乾式法で説明したものと同様のものを用いることができる。
最後に、気相法による電極作製法を説明する。気相法では、上述の共重合体化合物を真空中でガス化させ、ガス状態の共重合体化合物を導電性支持体上に堆積、製膜することによって、膜状に形成することができる。本方法で用いることのできる製膜方法としては、真空蒸着法や、スパッタリング法、CVD法などの一般的な真空製膜プロセスが適応しうる。また、電極膜中に必要に応じて、乾式法と同様に導電助剤、結着剤、イオン伝導性助剤を混合してもよい。導電性支持体には、乾式法で説明したものと同様のものを用いることができる。
(実施例)
以下に、式(6)で示される共重合体化合物を合成し、およびこれを用いた蓄電デバイスの作製を行い、蓄電デバイスの特性を評価した結果を詳細に説明する。
式(6)で示される共重合体化合物の合成に先だって、第2ユニットの側鎖として好ましい、非水溶媒と親和性を有する官能基がどのようなものであるかを確認した。具体的には、第2ユニットのみからなる高分子化合物の、非水溶媒に対する溶媒親和性評価を行った。第2ユニットからなる高分子化合物として、酸素含有官能基を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)(Aldrich社製、Mw=120000)、ポリメチルアクリレート(PMA)(Aldrich社製、Mw=40000)、ポリビニルアセテート(PVAc)(Aldrich社製、Mw=83000)、炭素からなる官能基を有するポリスチレン(PS)(Aldrich社製、Mw=290000)、窒素含有基であるニトリル基を有するポリアクリロニトリル(PAN)(Aldrich社製、Mw=150000)を用いた。電解液溶媒、すなわち非水溶媒として、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DEC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いた。
溶媒親和性は、20gの溶媒に10mgの化合物を投入し、5分間の超音波撹拌を行ったのち、溶媒内の粒度分布を測定するによって評価した。溶媒内の粒度分布は、島津製作所社製SALD−7000を用いて測定した。粒度分布測定において、回折/散乱強度は観測されず、非水溶媒中に0.015μm以上の粒が存在しない場合には溶解したと判断し、0.015μm以上の粒が存在する場合には溶解しなかったと判断した。また、溶解したと判断した場合、UV測定を行うことで溶媒中に化合物が溶解していることを確認した。
それぞれのポリマーの電解液溶媒に対する溶媒親和性評価結果を表1に示す。
Figure 0004633864
表1に示すように、PMMA、PMA、PVAcは、全ての非水溶媒に対して溶解し、親和性を有していた。また、PSはDECに対して、PANはDMFに対して溶解し、親和性を有していた。
これらの結果より、第2ユニットとしてPMA、PVAcを用いた場合は、第2ユニットにPMMAを用いたときと同様の効果が得られると推察できる。また、PSを用いた場合にはDECに対して、PANを用いた場合にはDMFに対して溶媒親和性が向上すると推察される。
以上の結果から、共重合体化合物の第2ユニットの側鎖に含まれる、非水溶媒と親和性のある官能基は、酸素含有基であるエステル基、エーテル基、カルボニル基、窒素含有基であるシアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、炭素からなる官能基であるアルキル基、フェニル基、硫黄含有基であるアルキルチオ基、スルホン基、スルホキシド基が適していると推測できる。
次に、式(6)で示される共重合体化合物を備えた蓄電デバイスの評価結果を説明する。以下、作製した蓄電デバイスの充放電容量の電解液溶媒依存性の評価、充放電繰り返し特性の評価および出力特性の評価の順で評価結果を説明する。
まず、本発明の共重合体化合物の充放電容量の電解液溶媒依存性について記載する。
(実施例1)
1.試料の作製
まず、式(6)に表される構造を有する共重合体化合物Aを合成した。合成する共重合体化合物Aを構成する第1ユニット(酸化還元部位を含むユニット)のユニット数nに対する第2ユニット(酸化還元部位を含まないユニット)のユニット数mの構成比率m/nはおよそ1である。共重合体化合物Aは、側鎖に含まれるテトラチアフルバレン前駆体の合成、共重合体主鎖化合物A’の合成、および共重合体主鎖化合物A’へのテトラチアフルバレンのカップリングに分けて合成した。以下に順に記載する。
テトラチアフルバレン前駆体の合成は、以下の式(11)に示すルートで行った。コルベンに5gのテトラチアフルバレン17(Aldrich社製)を入れ、さらに80ccのテトラヒドロフラン(Aldrich社製)を加えた。これを−78℃に冷却した後、1モル濃度のリチウムジイソプロピルアミドのn‐ヘキサン‐テトラヒドロフラン溶液(関東化学社製)を10分で滴下した後、7.3gのパラホルムアルデヒド(関東化学社製)を加え、15時間攪拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液を900ccの水に注ぎ、1Lのジエチルエーテル(関東化学社製)で2回抽出し、500ccの飽和塩化アンモニウム水溶液および500ccの飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤除去後、減圧濃縮し、得られた粗体6.7gをシリカゲルカラム精製し、1.7gの精製物を得た。精製物がテトラチアフルバレン前駆体18であることをNMRおよびIRにより確認した。
Figure 0004633864
共重合体主鎖化合物A’の合成は、以下の式(12)に示すルートで行った。モノマー原料として、40gのメチルメタクリレート(Aldrich社製)と21gのメタクリロニルクロライド(Aldrich社製)を90gのトルエン(Aldrich社製)に混合し、重合開始剤として、4gのアゾイソブチロニトリル(Aldrich社製)を加えた。混合物を100度℃で4時間攪拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液にヘキサンを添加することにより、再沈させ、57gの沈殿生成物を得た。生成物が式(21)で示される共重合体主鎖化合物A’であることを、NMR(H−NMR)、IR、GPCにより確認した。
H−NMR測定から第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率(m/n)は、およそ1であることを確認した。H−NMR測定結果の解析は以下のようにして行った。H−NMR測定では、第1ユニットおよび第2ユニットの主鎖にそれぞれ1つずつ結合しているメチル基の水素に由来するピークと、第2ユニットの側鎖に結合しているメチル基の水素に由来するピークとを区別して観測することができる。そのため、得られたNMRスペクトルのそれぞれのピークの積分値の比率から、共重合体主鎖化合物A’における第2ユニットの割合が求められ、第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率(m/n)を算出することができる。例えば、クロロホルム溶媒中でのH−NMR測定時において、本実施例で用いた共重合体主鎖化合物A’を測定した場合、第1ユニットおよび第2ユニットの主鎖にそれぞれ主鎖に結合しているメチル基の水素に由来するピークは0.5から2.2ppm付近、第2ユニットの側鎖に結合しているメチル基の水素に由来するピークを3.6ppm付近に観測することができ、それらのNMRスペクトルのピークの積分値の比率から、合成した共重合体主鎖化合物A’の第1ユニットと第2ユニットの構成比率を算出することができる。
IR測定から第1ユニットと第2ユニットが共に導入されていること、すなわち第1ユニットと第2ユニットが共重合されていることを確認した。IR測定では、1800cm-1付近に第1ユニット側鎖のカルボニル基(C=O)、1750cm-1付近に第2ユニット側鎖のカルボニル基がそれぞれ異なったピークとして測定することができ、共重合体主鎖化合物が第1ユニットと第2ユニットから共重合されていることを確認した。
GPCから合成した共重合体主鎖化合物A’の分子量は10000であり、重合度が20を超えていることを確認した。
Figure 0004633864
共重合体主鎖化合物A’へのテトラチアフルバレン前駆体18のカップリングは、以下の式(13)に示すルートで行った。Arガス気流下で、反応容器に1.0gのテトラチアフルバレン前駆体18と26ccのテトラヒドロフランとを入れ、室温で撹拌した。反応液に0.17gのNaH(60wt% in mineral oil)(Aldrich社製)を滴下し、40℃で1時間撹拌しながら、8.5ccのテトラヒドロフランに0.58gの共重合体主鎖化合物A’を溶解させた溶液を混合した。混合液を70℃で一晩撹拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液にヘキサンを加え、再沈により、0.2gの沈殿生成物を得た。得られた生成物が共重合体化合物Aであることを、NMR、IR、GPC、元素分析(硫黄)により確認した。
H−NMR測定から第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率(m/n)は、およそ1であることを確認した。H−NMR測定結果の解析は以下のようにして行った。H−NMR測定を用いて、共重合体化合物Aの酸化還元部位であるテトラチアフルバレンと主鎖を結合しているメチレン基の水素と、テトラチアフルバレンの主鎖との結合部以外の水素と、第2ユニットの側鎖に結合しているメチル基の水素とを異なったピークで観測することができる。そのため、得られたNMPスペクトルのそれぞれのピークかの積分値の比率から、共重合体化合物の第1ユニットと第2ユニットとの割合が求められ、第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率(m/n)を算出することができる。例えば、クロロホルム溶媒中でのH−NMR測定において、テトラチアフルバレンと主鎖を結合しているメチレン基の水素に由来するピークは4.8ppm付近に、テトラチアフルバレンの主鎖との結合部以外の水素に由来するピークは6.8から7.0ppm付近に、第2ユニットの側鎖に結合しているメチル基の水素に由来するピークを3.6ppm付近に観測することができ、それらのNMRスペクトルのピークの積分値の比率から、合成した共重合体主鎖化合物A’の第1ユニットと第2ユニットの構成比率を算出することができる。なお、本実施例の構成比率は、TTF導入工程後の共重合体化合物AのH-NMR測定における、第1ユニットに由来するピークと、第2ユニット側鎖に結合しているメチル基に由来するピークの積分値より算出した値を用いている。
IR測定から酸化還元部位が導入された第1ユニットと第2ユニットが共重合されていることを確認した。IR測定では、1800cm-1付近に第1ユニット側鎖のカルボニル基(C=O)に由来ピークとして測定することができ、1800cm-1付近のピークが消失していることから共重合体主鎖化合物の第1ユニットにTTFが導入されていることを確認した。また、1750cm-1付近に第2ユニット側鎖のカルボニル基に由来するピークを測定することができ、1800cm-1付近のピークの消失と1750cm-1付近のピークを確認することで、酸化還元部位が導入された第1ユニットと第2ユニットが共重合していることが確認した。
GPC測定から、合成した共重合体化合物Aの重量平均分子量はおよそ28000であることを確認した。
硫黄の元素分析を行い、合成した共重合体化合物Aの硫黄含有量は16.7wt%であり、側鎖にTTFが導入されたことを確認した。
Figure 0004633864
2.蓄電デバイスの作製
このようにして合成した共重合体化合物Aを用いて、蓄電デバイスを作製した。共重合体化合物Aは混合前に、乳鉢で粉砕してから用いた。乳鉢で粉砕後の共重合体化合物Aの粒子径はおよそ10μm程度であった。37.5mgの共重合体化合物Aに対し、導電剤として100mgのアセチレンブラックとを加え、均一に混合し、さらにバインダとして25mgのポリテトラフルオロエチエンを加えて混合することにより、正極活物質合剤を得た。さらにこの正極合剤をアルミニウム金網の上に圧着し、真空乾燥を行い、直径13.5mmの円盤状に打ち抜き裁断して正極極板を作製した。正極活物質の塗布重量は、極板単位面積あたり1.7mg/cm2であった。
負極活物質である金属リチウム(厚さ300μm)を直径15mmの円盤状に打ち抜き、同じく直径15mmの円盤状の集電板(ステンレス製)に貼り付けることによって、負極を作製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)を体積比1:1で混合した溶媒を用い、塩としてこれに1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解し、電解液を作製した。用いた溶媒の比誘電率は78である。なお、電解液は、正極、負極、多孔質ポリエチレンシート(厚さ20μm)に含浸させて用いた。
これら正極、負極、電解液を、図1に示すコイン型電池のケースに収納し、ガスケットを装着した封口板でケースの開口を挟み、プレス機にてかしめ封口し、コイン型蓄電デバイスを得た。
(実施例2)
電解液の組成以外の条件を実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)を溶媒として用い、これに1mol/L濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は65である。
(実施例3)
電解液の組成以外の条件を実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比12:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は60である。
(実施例4)
電解液の組成以外の条件を実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比3.2:1で混合した溶媒に、1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は50である。
(実施例5)
電解液の組成以外の条件を実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比1.5:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は40である。
(実施例6)
電解液の組成以外の条件を実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比0.8:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は30である。
(実施例7)
1.試料の作製
式(6)で表される構造を有する共重合体化合物Bを合成した。合成する共重合体化合物Bを構成する第1ユニットのユニット数nに対する第2ユニットのユニット数mの構成比率m/nはおよそ1である。共重合体化合物Bは、側鎖に含まれるテトラチアフルバレン前駆体の合成、共重合体主鎖化合物の合成、および共重合体主鎖化合物へのテトラチアフルバレンのカップリングに分けて合成した。
共重合体化合物Bの合成には、実施例1で作製した共重合体主鎖化合物A’を用い、共重合体主鎖化合物A’へのテトラチアフルバレンのカップリング条件以外は実施例1と同様に行った。具体的には、テトラチアフルバレン前駆体18とテトラヒドロフランとNaH(60wt% in mineral oil)の反応液と、共重合体主鎖化合物A’とテトラヒドロフランの反応液の反応を、80℃で1時間撹拌することで反応を進行させた。
得られた生成物が共重合体化合物Bであることを、H−NMR、IR、GPC、元素分析(硫黄)により確認した。H−NMRから、共重合体化合物Bの第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率m/nは、およそ1であることを確認した。また、合成した共重合体化合物Bの重量平均分子量はおよそ19000であった。合成した共重合体化合物Bの硫黄元素分析の結果、硫黄含有量は30.2wt%であった。
2.蓄電デバイスの作製
正極活物質として上記で合成した共重合体化合物Bを用いて、実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。
(実施例8)
正極活物質として共重合体化合物Bを用いて、実施例4と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は50である。
(実施例9)
正極活物質として共重合体化合物Bを用いて、実施例6と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は30である。
(実施例10)
1.試料の作製
式(6)で表される構造を有する共重合体化合物Cを合成した。共重合体化合物Cを構成する第1ユニットのユニット数nに対する第2ユニットのユニット数mの構成比率m/nはおよそ5である。共重合体化合物Cは、側鎖に含まれるテトラチアフルバレン前駆体の合成、共重合体主鎖化合物C’の合成、および共重合体主鎖化合物C’へのテトラチアフルバレンのカップリングに分けて合成した。以下、順に記載する。
テトラチアフルバレン前駆体18の合成は、実施例1と同様にして行った。
共重合体主鎖化合物C’の合成は、式(12)に示すルートで行った。モノマー原料として、50gのメチルメタクリレート(Aldrich社製)と10.5gのメタクリロニルクロライド(Aldrich社製)を24gのトルエン(Aldrich社製)に混合し、重合開始剤として、3.9gのアゾイソブチロニトリル(Aldrich社製)を加えた。混合物を100℃で4時間撹拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液にヘキサンを添加することにより、再沈させ、54gの沈殿生成物を得た。生成物が式(21)で示される共重合体化合物である共重合体主鎖化合物C’であることを、H−NMR、IR、GPCにより確認した。
共重合体主鎖化合物C’へのテトラチアフルバレン前駆体18のカップリングは、式(11)に示すルートで行った。Arガス気流下で、反応容器に1.96gのテトラチアフルバレン前駆体18と51ccのテトラヒドロフランとを入れ、室温で撹拌した。反応液に0.335gのNaH(60wt% in mineral oil)(Aldrich社製)を30分かけて滴下し、40℃で1時間撹拌しながら、3.9ccのテトラヒドロフランに2.5gの共重合体主鎖化合物C’を溶解させた溶液を混合した。混合液を80℃で一晩撹拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液を濃縮し、得られた固体を50ccの水に入れて撹拌した後、ろ過を行った。得られた固体を50ccのメタノールに入れて撹拌し、ろ過を行った。得られた固体をヘキサンで洗浄し、メタノールで洗浄した後、40℃5時間減圧乾燥させることで、1.9gの生成物を得た。得られた生成物が共重合体化合物Cであることを、H−NMR、IR、GPCにより確認した。H−NMRから、共重合体化合物Cの第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率m/nは、およそ5であることを確認した。また、合成した共重合体化合物Cの重量平均分子量はおよそ18000であった。合成した共重合体化合物Cの硫黄元素分析の結果、硫黄含有量は14.3wt%であった。
2.蓄電デバイスの作製
正極活物質として共重合体化合物Cを用いて、実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。
(実施例11)
正極活物質として共重合体化合物Cを用いて、実施例4と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は50である。
(実施例12)
正極活物質として共重合体化合物Cを用いて、実施例6と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は30である。
(比較例1)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、実施例1と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。重合体化合物8は、ポリビニルアルコールとテトラチアフルバレンカルボキシル誘導体を脱水縮合により反応させて合成した。用いた重合体化合物8の重量平均分子量はおよそ50000であった。電解液は第1の実施例と同じ組成のものを用いた。用いた溶媒の比誘電率は78である。
(比較例2)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、実施例2と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は65である。
(比較例3)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、実施例3と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は60である。
(比較例4)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、電解液の組成以外、実施例1と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比5:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は55である。
(比較例5)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、実施例4と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は50である。
(比較例6)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、実施例5と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は40である。
(比較例7)
正極活物質として重合体化合物8を用いて、電解液の組成以外実施例1と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比1:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は34である。
(比較例8)
1.試料の作製
式(14)で示される重合体化合物(以下、重合体化合物14と記載する)を合成した。重合体化合物14は、式(4)で示される共重合体化合物の第2ユニットを含まない、酸化還元部位を含む第1ユニットのみで構成される重合体化合物である。重合体化合物14は、側鎖に含まれるテトラチアフルバレン前駆体の合成、重合体主鎖化合物の合成、および重合体主鎖化合物へのテトラチアフルバレンのカップリングに分けて合成した。以下に順に記載する。
Figure 0004633864
テトラチアフルバレン前駆体18の合成は、実施例1と同様にして行った。
重合体主鎖化合物の合成は、以下の式(15)に示すルートで行った。モノマー原料として、50gのメタクリロニルクロライド(Aldrich社製)を24gのトルエン(Aldrich社製)に混合し、重合開始剤として、0.5gのアゾイソブチロニトリル(Aldrich社製)を加えた。混合物を65℃で6時間撹拌することにより、反応を進行させた。生成物が式(22)で示される化合物(以下、重合体主鎖化合物22と記載する)であることを、H−NMR、IR、GPCにより確認した。
Figure 0004633864
重合体主鎖化合物22へのテトラチアフルバレン前駆体18のカップリングは、式(16)に示すルートで行った。Arガス気流下で、反応容器に3.4gのテトラチアフルバレン前駆体18と88ccのテトラヒドロフランとを入れ、室温で撹拌した。反応液に0.574gのNaH(60wt% in mineral oil)(Aldrich社製)を20分かけて滴下し、40℃で1時間撹拌しながら、15ccのテトラヒドロフランに1.0gの重合体主鎖化合物22を溶解させた溶液を混合した。混合液を80℃で一晩撹拌することにより、反応を進行させた。このようにして得た溶液を濃縮し、得られた固体の中に50ccの水を入れて撹拌した後、ろ過して得られた固体を50ccのメタノールに入れて撹拌し、ろ過を行った。得られた固体をヘキサンで洗浄し、メタノールで洗浄した後、40℃5時間減圧乾燥させることで、2.2gの生成物を得た。得られた生成物が重合体化合物14であることを、H−NMR、IR、GPC、元素分析(硫黄)により確認した。また、合成した重合体化合物14の重量平均分子量はおよそ44000であった。合成した重合体化合物14の硫黄元素分析の結果、硫黄含有量は38.9wt%であった。
Figure 0004633864
2.蓄電デバイスの作製
正極活物質として重合体化合物14を用いて、実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は78である。
(比較例9)
正極活物質として重合体化合物14を用いて、実施例2と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は65である。
(比較例10)
正極活物質として重合体化合物14を用いて、実施例4と同じ条件で蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は50である。
(比較例11)
正極および負極を以下の様にして作製した。正極および負極活物質として、活性炭粉末(比表面積1700m2/g、平均粒子径2μm)を用い、正極および負極を作製した。活性炭粉末100mgとアセチレンブラック20mgとを均一に混合し、ポリビニルピロリドン20mg、メタノール800mgを加えてスラリーを調整した。このスラリー状の正極および負極合剤を集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、真空乾燥を行い、これを直径13.5mmの円盤状に打ち抜き裁断して正極および負極を得た。正極および負極活物質の塗布重量は、極板単位面積あたり2.0mg/cm2であった。
正極、負極として活性炭粉末を用いた電極を使用したこと以外の条件は実施例1と同様にして、蓄電デバイスを作製した。
(比較例12)
電解液の組成以外の条件を比較例11と同様にして蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを体積比0.8:1で混合した溶媒に1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は30である。
3.蓄電デバイスの特性の評価
実施例1から12および比較例1から12の蓄電デバイスの充放電容量の評価を行った。蓄電デバイスの充放電容量評価は、初回の充放電時の充放電容量を活物質重量で割った値、すなわち活物質単位重量あたりの充放電容量で評価した。充放電は、0.1mAの定電流充放電によって行った。充放電条件は、実施例1から12および比較例1から10の充電上限電圧を4.0V、放電下限電圧を3.0Vとし、比較例11と12の充電上限電圧を2V、放電下限電圧を0Vとした。充電終了後、放電を開始するまでの休止時間はゼロとした。
実施例1から12の蓄電デバイスの充放電容量評価結果を表2に、また比較例1から12の充放電容量評価結果を表3にまとめて示す。また、表2および表3の結果を図3および図4に示す。図3および図4において、縦軸は、設計容量に対する測定された充放電容量値の割合を示している。
Figure 0004633864
Figure 0004633864
表2および図3から明らかなように、本発明の共重合体化合物A(m/n=1)を用いた蓄電デバイスの実施例1から6では、電解液の溶媒の比誘電率が30から78という広い範囲内において、いずれも50mAh/g以上の充放電容量を得ることができた。ただし、電解液溶媒の比誘電率が高いほど充放電容量も高いことが分かる。実施例1から6に用いた共重合体化合物A(式(4))の硫黄含有量が16.7wt%であったので、硫黄含有量から共重合体化合物Aの理論容量を計算すると、70mAh/gとなる。理論容量の計算は、共重合体化合物の硫黄が全て硫黄元素4個を含むテトラチアフルバレン骨格によるものであり、さらにテトラチアフルバレン骨格が骨格1つあたり2電子酸化還元することができると仮定して計算することができる。実施例1の充放電容量は、理論容量の99%である。また、電解液溶媒の比誘電率が30と低い実施例6においても、理論容量の74%の充放電容量を達成することができている。
本発明の共重合体化合物B(m/n=1)を用いた実施例7から9においても、電解液の溶媒の比誘電率が30から78という広い範囲において、100mAh/g以上の充放電容量を得ることできた。実施例7から9に用いた共重合体化合物Bは、実施例1から6に用いた共重合体化合物Aと、第1ユニットと第2ユニットの構成比率は同じであるが、主鎖へのテトラチアフルバレン部位のカップリングを行う条件が異なる。そのため、主鎖へのテトラチアフルバレン部位のカップリング割合が異なり、共重合体化合物の硫黄含有量が異なる。実施例7から9に用いた共重合体化合物Bの硫黄含有量が30.2wt%であったので、硫黄含有量から理論容量を計算すると、125mAh/gとなる。実施例7の充放電容量は理論容量の87%である。また、電解液溶媒の比誘電率が30と低い実施例9においても理論容量の82%の充放電容量を達成することができている。つまり、共重合体化合物Bを用いた場合、電解液溶媒の比誘電率によらず、比較的高い充放電容量を達成することができることが分かる。
また、本発明の共重合体化合物C(m/n=5)を用いた実施例10から12においても、電解液溶媒の比誘電率に関わらず、50mAh/g以上の充放電容量を得ることができた。実施例10から12に用いた共重合体化合物Cの硫黄含有量が14.3wt%であったので、硫黄含有量から理論容量を計算すると、60mAh/gとなる。実施例10の充放電容量は理論容量と同じ容量であり、電解液溶媒の比誘電率が30と低い実施例12においても理論容量と同じ充放電容量を達成している。
これに対し、表3および図6に示すように、活物質として、重合体化合物8を用いた場合、電解液溶媒の比誘電率が55以上の場合のみ大きな充放電容量が得られ、比誘電率55未満の溶媒の場合は充放電容量が著しく小さかった。
また、重合体化合物11を用いた場合、電解液溶媒の比誘電率が78の時には設計した容量の75%である132mA/gの充放電容量を確認できたが、電解液溶媒の比誘電率が65のときには設計した容量の約45%である78mAh/gと少し低下し、さらに電解液溶媒の比誘電率が50のときには設計容量の15%である24mAh/gと大きく容量が低下した。
活性炭を正極活物質として用いた場合、電解液溶媒の種類に関わらず、ほぼ理論容量通りである41mAh/g以上の容量を確認した。
これは、重合体化合物8および重合体化合物11では、酸化還元反応をしない側鎖を有する第2ユニットが存在しないため、溶媒が側鎖にあまり接近できず、溶媒の比誘電率が小さくなると酸化還元部位に対する溶媒和の効果が小さくなるからであると考えられる。そのため、比誘電率の小さい溶媒を用いたときには、溶媒分子やアニオンの移動経路が活物質内部で確保されなくなる。その結果、設計した容量よりも大幅に低い容量しか得られないと考えられる。
なお、比較例1から4、比較例8において充放電容量が実施例1から12よりも大きいのは、比較例1から4、比較例8で用いている重合体化合物8および重合体化合物11が第2ユニットを含まないため、単位重量あたりの酸化還元部位の数が共重合体化合物A、B、Cよりも多いことによる。
以上のように、本発明の式(4)に表される構造のような、酸化還元基を有するユニットと酸化還元基を有さないユニットを共重合させた共重合体化合物を用いることで、電解液溶媒の種類に関わらず、設計した容量通りの容量を得ることができるデバイスを得た。また、実施例1から12に示すように、共重合体化合物の構成比率を0より大きく5以下とした共重合体化合物を正極活物質として用いた蓄電デバイスにおいて、52mAh/g以上の容量を確認しており、比較例11、12に示した活性炭より大きな容量を得た。なお、本発明の共重合体化合物の酸化還元電位は、3から4Vの範囲であり、電解液の種類によらず設計容量通りの容量を得ることのできる高容量な蓄電デバイスを得た。
次に、本発明の共重合体化合物の繰り返し特性と出力特性試験について説明する。
(実施例13)
1.試料の作製
実施例7で用いた、第1ユニットに対する第2ユニットの構成比率(m/n)がおよそ1である共重合体化合物Bを用いた。
2.蓄電デバイスの作製
正極活物質として上記で合成した共重合体化合物Bを用いることと、作製する正極極板の形状を15mm角の正方形とすること以外の条件を実施例1と同様にして、正極極板を作製した。
負極を以下のようにして作製した。負極活物質として、活性炭粉末(比表面積1700m2/g、平均粒子径2μm)を用い、負極を作製した。活性炭粉末100mgとアセチレンブラック20mgとを均一に混合し、ポリビニルピロリドン20mg、メタノール800mgを加えてスラリーを調整した。このスラリー状の負極合剤を集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、真空乾燥を行い、これを15mm角の正方形状に打ち抜き裁断して負極を得た。負極活物質の塗布重量は、極板単位面積あたり2.0mg/cm2であった。
次に参照極を作製した。金属リチウム(厚み300μm)を15mm角の正方形状に打ち抜き、同じく15mm角の正方形状の集電板(ニッケル製)に貼り付けることによって、参照極を作製した。
炭酸エチレン(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比1:3で混合した溶媒を用い、塩としてこれに1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解し、電解液を作製した。用いた溶媒の比誘電率は28である。なお、電解液は、正極、負極、多孔質ポリエチレンシート(厚み20μm)に含浸させて用いた。
これら正極、負極、参照極および電解液を用いて、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。図5および図6は、作製したラミネート型リチウム二次電池の模式的な断面および上面を示している。
図5に示すように、ラミネート型リチウム二次電池は、正極31と、負極32と、参照極55と、セパレータ24と備えている。正極31はコイン型リチウム二次電池と同様のものを使用し、端部に正極リード51が接合されている。正極リード51には正極集電体23と同様のものを用いることができる。同様に、負極32はコイン型リチウム二次電池と同様のものを使用し、端部に負極リードが接合されており、負極リード52には負極集電体27と同様のものを用いることができる。
参照極55は、参照極物質53を含む。参照極物質としては、金属リチウムを用いた。参照極物質53は参照極集電体54に支持されている。参照極集電体54にはニッケル製のメッシュを用い、参照極リード56にはニッケルリードを用いた。参照極リード56は参照極集電体54の端部に接合されている。
正極31および負極32は、正極活物質層23および負極活物質層26がセパレータ24と接するようにセパレータ24を挟んで対向している。参照極55は、参照極物質53が正極集電体23とセパレータ24を挟んで対向するように配置されている。これにより、正極31、負極32および参照極55が電極群を構成している。セパレータ24はコイン型リチウム二次電池と同様のものを使用できる。電極群を構成する際に、各集電体に接合されているリードは、短絡が起こらないように異なる方向から外部へ取り出すように各電極が配置されている。
電極群はアルミラミネートケース57の内部の空間に収納されている。また、アルミラミネートケース57の内部の空間には電解液29が注入され、正極31、負極32、参照極55およびセパレータ24は電解液29に含浸されている。電解液29はコイン型リチウム二次電池と同様のものを使用できる。セパレータ24は、電解液29を保持する微細な空間を含んでいるため、微細な空間に電解液29が保持され、電解液29が正極31と負極32の間および正極31と参照極55の間に配置された状態をとっている。アルミラミネート57を、電極群を配置し、電解液を注入した後に、加熱封口により密閉することで、蓄電デバイスを作製した。
(実施例14)
正極活物質として共重合体化合物Cを用いて、実施例13と同様にして蓄電デバイスを作製した。用いた溶媒の比誘電率は28である。
(比較例13)
正極活物質として重合体化合物14を用いて、電解液の組成以外の条件を実施例13と同様にして、蓄電デバイスを作製した。電解液は、炭酸プロピレン(PC)と炭酸エチレン(EC)を体積比1:1で混合した溶媒を用い、1mol/Lの濃度となるように6フッ化りん酸リチウムを溶解することによって作製した。用いた溶媒の比誘電率は78である。
1.蓄電デバイス特性の評価
実施例13、14および比較例13の蓄電デバイスの充放電繰り返し特性評価を行った。蓄電デバイスの繰り返し特性評価は、500サイクル後の充放電容量を1サイクル目の充放電容量で割った値、すなわち500サイクル後の充放電容量維持率で評価した。充放電は、1から3サイクル目および498から500サイクル目は0.1mA、4から497サイクル目は実施例13では5mA、実施例14では10mA、比較例12では0.5mAの定電流充放電によって行った。充放電条件は、正極電位の上限電圧は4.0V、下限電圧は3.0Vとした。正極電位は参照電極に対する正極の電位を用いた。参照電極に対する正極の電位を正極電位として用いることで、蓄電デバイスを構成する負極、セパレータ、電解液の充放電の繰り返しによる劣化に関わらず、正極の劣化挙動のみを観測することができる。充電および放電終了後の放電および充電を開始するまでの休止時間はゼロとした。
実施例13、14および比較例13の1サイクル目、500サイクル目の充放電容量を表4にまとめて示す。
Figure 0004633864
繰り返し特性試験の結果について説明する。表4に示すように、本発明の共重合体化合物を用いた実施例13、14の蓄電デバイスでは、500サイクル目までの容量維持率が95%以上という結果を得た。また、重合体化合物11を用いた蓄電デバイスでは、500サイクルでの容量維持率が57%であった。
実施例13、14の蓄電デバイスに用いられる共重合体化合物B、C(式4)は、酸化還元反応部位を側鎖に含むユニットと酸化還元反応部位を側鎖に含まないユニットの共重合である。このため、活物質粒子内部への溶媒の経路が形成され、酸化還元反応時に移動するアニオンの全てが充放電に伴って活物質粒子の内部と外部との間で円滑に移動できる。その結果、高い容量維持率が得られ、繰り返し特性に優れた蓄電デバイスを実現できると考えられる。
これに対し、比較例13で用いている重合体化合物11は、酸化還元反応部位を側鎖に含まないユニットを有していないため、アニオンが円滑に移動できないと考えられる。このため、充放電を繰り返すことによって、重合体化合物11の近傍に十分に移動できないアニオンが滞留し、重合体化合物11の酸化還元反応が十分に進行しにくくなり、充電容量が低下していくものと考えられる。
次に、実施例13、14および比較例12の蓄電デバイスの出力特性評価を行った。蓄電デバイスの出力特性評価は、10mA充放電での充放電容量を0.1mA充放電での充放電容量で割った値で評価した。充放電条件は、正極電位の上限電圧は4.0V、下限電圧は3.0Vとした。正極電位は参照電極に対する正極の電位を用いた。充電および放電終了後の放電および充電を開始するまでの休止時間はゼロとした。
実施例13、14および比較例13の0.1mA充放電、10mA充放電での充放電容量を表5にまとめて示す。
Figure 0004633864
表5に示すように、実施例13の蓄電デバイスでは10mA充放電時に0.1mA充放電容量の71%の容量、実施例の14の蓄電デバイスでは10mA充放電時に0.1mA充放電容量の96%の容量を得ることができた。これに対し、比較例12の蓄電デバイスでは10mA充放電時に0.1mA充放電容量の55%の容量しか得られなかった。
実施例13で用いた共重合体化合物Bでは、テトラチアフルバレン間に溶媒が含浸する距離はあるが、その距離は小さいため、テトラチアフルバレンの活物質内での流動性が十分ではないと考えられる。そのため、10mA充放電時にはアニオンが円滑に移動できずに酸化還元反応に追従できない部分が存在し、0.1mA充放電時より低下したと考えられる。一方、実施例14で用いた共重合体化合物Cでは、酸化還元部位であるテトラチアフルバレンが活物質粒子内において、テトラチアフルバレンが十分に溶媒和される間隔があるため、テトラチアフルバレンモノマーが溶媒内に存在しているときとほぼ同様の状態になっていると考えられる。このため、酸化還元部位であるテトラチアフルバレンの周囲には溶媒和されたアニオンが移動するのに十分な空間があり、素早い酸化還元反応においても、アニオンが潤滑に移動できると考えられ、0.1mA充放電時とほぼ同等の容量を10mA充放電時でも得られたと考えられる。
このように本発明の共重合体化合物は、酸化還元反応をしない側鎖を有する第2ユニットが含んでおり、蓄電デバイスの活物質として用いたとき、活物質粒子内にアニオン移動のための経路を形成し、充放電に伴う容量劣化が少なく、高出力な蓄電デバイスを得ることができた。
以上のように本発明の共重合体化合物は、酸化還元部位を有さない第2ユニットを含んでいるため、蓄電デバイスとして用いたとき、活物質粒子内にアニオン移動のための経路が形成されるため、高容量、高出力、優れた繰り返し特性を有する蓄電材料である。また、本発明の共重合体化合物を電極活物質に用いることで、高容量、高出力、優れた繰り返し特性を有する蓄電デバイスを提供することができる。
本発明の蓄電材料は、軽量であり、有機溶剤に溶けにくく、高エネルギー密度で可逆的な酸化還元反応を安定して行うことができる。また、電解液に用いる溶媒の比誘電率に関わらず、設計容量通りの充放電が可能な蓄電デバイスを提供することができる。このため、所望とされる特性に応じた蓄電デバイスが実現する。このような蓄電デバイスは、高出力、高容量かつ、繰り返し特性に優れる。このため、各種携帯機器、輸送機器、無停電電源などに好適に用いられる。また、バイオチップをはじめ種々の電気化学素子に好適に用いられる。
21 コイン型ケース
22 正極集電体
23 正極活物質層
24 セパレータ
25 封口板
26 負極活物質層
27 負極集電体
28 ガスケット
29 電解液
31 正極
32 負極
41 正極活物質粒子
42 導電剤部
51 正極リード
52 負極リード
53 参照極層
54 参照極集電体
55 参照極
56 参照極リード
57 アルミラミネートケース

Claims (12)

  1. π共役電子雲を有し、下記一般式(1’)で表わされる構造の酸化還元部位を側鎖に有する第1ユニットと、酸化還元反応部位を側鎖に有さない第2ユニットとの共重合体化合物を含む蓄電材料であって、
    一般式(1’)中、X1からX4はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子であり、
    RaからRdから選ばれる1つは、共重合体化合物の主鎖または側鎖の他の部分と結合するための結合手であり、RaからRdの他の3つは、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基であり、
    Figure 0004633864
    前記第2ユニットの側鎖は、非水溶媒と親和性を有する官能基を含み、
    前記第2ユニットの側鎖は、エステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基およびスルホキシド基から選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記共重合体化合物は、下記一般式(4)で表わされる構造を有し、
    一般式(4)中、R 9 およびR 10 は前記共重合体化合物の主鎖を構成し、R 9 およびR 10 は3価残基であって、互いに独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1つと、炭素数1から10の飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基、または、少なくとも1つの水素原子とを含み、
    1 はR 9 と結合したエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基であり、
    12 は、R 10 およびM 1 と結合した炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドおよびエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基であり、
    1 は一般式(1’)であり、前記結合手によってR 12 と結合しており、nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数であり、
    Figure 0004633864
    前記共重合体化合物を構成する前記第1ユニットのユニット数nに対する前記第2ユニットのユニット数mの構成比率m/nが、0より大きく、5以下である蓄電材料。
  2. 前記共重合体化合物は、下記式(5)で表わされ、
    一般式(5)中、R12は、炭素数1から4の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アリーレン、エステル、アミドおよびエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む2価残基であり、R13およびR14は、互いに独立した、炭素数1から4の飽和脂肪族基およびフェニル基からなる群から選ばれる1つ、または、水素原子であり、R15からR17は、互いに独立した鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基またはアルキオチオ基であり、
    1はエステル基、エーテル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシル基、アルキル基、フェニル基、アルキルチオ基、スルホン基またはスルホキシド基であり、
    nおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である請求項に記載の蓄電材料。
    Figure 0004633864
  3. L1は、エステル基、エーテル基、カルボニル基から選ばれる少なくとも1種を含む請求項に記載の蓄電材料。
  4. 前記共重合体化合物は、下記式(6)で表わされる構造を有し、式(6)中のnおよびmはモノマー単位の繰り返し数を表わす整数である請求項に記載の蓄電材料。
    Figure 0004633864
  5. 導電性支持体と、
    前記導電性支持体上に設けられており、請求項1から4のいずれかによって規定される蓄電材料を含む蓄電層と、
    を備えた電極。
  6. 前記蓄電層は導電性物質を含む請求項5に記載の電極。
  7. 正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解液とを備え、
    前記正極および前記負極の少なくとも一方が、請求項に規定される電極を有する電気化学素子。
  8. 前記電解液が4級アンモニウムカチオンとアニオンとの塩を含んでいる請求項に記載の電気化学素子。
  9. 正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置された電解液とを備え、
    前記正極および前記負極の少なくとも一方が、請求項に規定される電極を有する蓄電デバイス。
  10. 請求項に規定される電極を有する正極と、
    リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、
    前記リチウムイオンとアニオンとからなる塩を含み、前記正極および前記負極の間に満たされた電解液と、
    を備えた蓄電デバイス。
  11. 請求項10に規定される蓄電デバイスを備えた携帯型電子機器。
  12. 請求項10に規定される蓄電デバイスを備えた車両。
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