ところで、プラズマ反応器に用いられる電極の構造は、図20〜図26に示すように、様々なものが提案されている。
まず、図20に示す同軸円筒型は、円筒状の誘電体にて形成された円筒体100と、該円筒体100の表面に形成された電極102と、円筒体100の中空部104を貫通するように配された線状電極106とを有し、電極102と線状電極106間にて放電領域が発生する構造となっている。
図21に示す平行平板型は、それぞれ誘電体にて形成された2枚の板体108及び110と、これら板体108及び110内に配された電極112及び114とを有し、板体108及び110間で放電領域が発生する構造となっている。
図22に示す同軸円筒型は、金属製の円筒電極116と、該円筒電極116の中空部118を貫通するように配された線状電極120とを有し、円筒電極116と線状電極120間で放電領域が発生する構造となっている。
図23に示す沿面放電型は、誘電体にて形成された板体122と、該板体122上にほぼくし歯状に形成された電極124及び該板体122中に埋め込まれた面状電極125とを有し、これら電極124及び面状電極125間にて放電領域が発生する構造となっている。
図24に示す平行平板型は、互いに板面が対向して配された2枚の金属板126及び128を有し、金属板126及び128間で放電領域が発生する構造となっている。
図25に示す平面対針型は、金属板にて形成された電極板130と、該電極板130の上方に配され、且つ、軸方向が電極板130の板面の法線方向とされた針状電極132とを有し、針状電極132の先端と電極板130との間で放電領域が発生する構造となっている。
図26に示す同軸円盤型は、金属製の円筒電極134と、該円筒電極134の中空部136内に収容された複数の金属製の円盤138とを有し、円筒電極134と複数の円盤138間で放電領域が発生する構造となっている。
そして、図20に示す同軸円筒型は、線状電極106に電界が集中し、安定に放電領域が発生する。また、容量も小さいため、パルス電界の電圧上昇率も大きいという効果がある。しかし、導入されるガスの流れが層流となり易く、中空部104内の円筒体100の内壁近傍(放電が弱い)を通過するガスの量が増大し、反応効率が低下する。攪拌機能を持たせることも考えられるが、局部放電を生じやすくなり、その設置が困難である。また、プラズマ反応器は、複数積み重ねてスタック型とすることで、さらなる高効率化を図ることが考えられるが、この同軸円筒型は、円筒形状のため、スタック化が困難である。誘電体バリア(円筒体100)への電極102の形成であるが、円筒体100に電極102を形成することは容易ではないため、歩留まりの点で不利になるおそれがある。また、ガス種に応じた制御性の点でみると、放電領域が固定されてしまうため、調整は困難である。発生した放電領域のプラズマ密度が円筒体100の径方向でばらつくという問題がある。
図21に示す平行平板型は、板体108及び110間の間隔が0.5mm程度と狭く、圧損はあるが、導入されたガスは放電領域の全域を通過することになり、しかも、ガスの流れは乱流となり、攪拌性が良好である。そのため、同軸円筒型と比してガスの反応効率がよい。また、ブロック状であるため、スタック化が容易である。板体108及び110への電極112及び114の埋め込みは、グリーンシート体に電極を埋め込んで形成すればよいため、容易に作製することができる。しかしながら、板体108及び110間の間隔が0.5mm程度に固定されることから、ガス種に応じて構造パラメータを変更することが困難である。また、放電電界がばらつくため、パルス電界のパルス幅を広げる必要があり、損失が大きくなる。容量が大きいため、この容量に電荷がたまるまで電圧上昇しないことから、電源に大きな容量が必要となり、効率が悪くなる。また、大量のガスを処理する場合、板体108及び110の投影断面積を大きくしなければならず、サイズが大型化する。
図22に示す同軸円筒型は、線状電極120に電界が集中し、安定に放電領域が発生する。また、容量も小さいため、パルス電界の電圧上昇率も大きいという効果がある。しかし、導入されるガスの流れが層流となり易く、円筒電極116の内壁近傍(放電が弱い)を通過するガスの量が増大し、反応効率が低下する。攪拌機能を持たせることも考えられるが、局部放電を生じやすくなり、その設置が困難である。また、円筒形状のため、スタック化が困難である。ガス種に応じた制御性の点でみると、放電領域が固定されてしまうため、調整は困難である。発生した放電領域のプラズマ密度が円筒体の径方向でばらつくという問題がある。線状電極120の径と円筒電極116の径との比(線状電極120の径/円筒電極116の径)が大きいとアーク放電に移行し易くなる。
図23に示す沿面放電型は、高周波によって大気圧放電が可能となる。また、板体122の表面形状を変えることでガスの流れを乱流化させることができる。しかし、表面の汚染によって放電の安定性が損なわれるおそれがある。沿面放電は低電圧で放電してしまうため、高電界のパルスを得ることができない。ガス種に応じて構造パラメータを変更することが困難である。板体122であるからスタック化しやすいが、大量のガスを処理する場合、板体122の投影断面積を大きくしなければならず、サイズが大型化する。つまり、大量のガス、高エネルギーの電子を必要とする反応には不適である。
図24に示す平行平板型は、2枚の金属板126及び128の絶縁が課題であるが、スタック化は容易である。しかし、金属板126及び128の端部でアーク放電に移行し易いという問題がある。容量が大きいため、パルス電界の電圧上昇率が小さくなる。放電領域が時間の経過に伴って変化し易く、非放電領域を素通りするガス流が存在する。攪拌機能を持たせることも考えられるが、局部放電を生じやすくなり、その設置が困難である。ガス種に応じて構造パラメータを変更することが困難である。放電電界がばらつくため、ある程度のパルス幅が必要であり、損失が大きい。
図25に示す平面対針型は、針状電極132に電界が集中し、安定に放電領域が発生する。また、容量も小さいため、パルス電界の電圧上昇率も大きいという効果がある。しかし、局部放電となり易く、放電の弱い部分を通過するガスの量が増大し、反応効率が低下する。攪拌機能を持たせることも考えられるが、局部放電を生じやすくなり、その設置が困難である。針状電極132を配置する関係から、スタック化が困難である。ガス種に応じて構造パラメータを変更することが困難である。針状電極132が放電により消耗しやすく針状電極132の交換が頻繁になるという問題と、針状電極132の位置調整が必要で設置に時間がかかるという問題がある。
図26に示す同軸円盤型は、ガスの流れが乱流化し易く、ガス流調整が可能である。しかし、円盤138の径/円筒電極134の径が大きくなると、アーク放電に移行し易いという問題がある。また、容量も大きいため、パルス電界の電圧上昇率が小さいという問題もある。放電領域が変化し易く、非放電領域を素通りするガス流が存在する。円筒形状のため、スタック化が困難である。ガス種に応じて構造パラメータを変更することが困難である。円盤138の端部を加工して放電の安定化を図らなければ、局部的にアーク放電化するという問題がある。
このように、従来のプラズマ反応器は、放電安定性、パルス電界の電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、一長一短があり、これらの特性をすべて満足するようなプラズマ反応器は存在しなかった。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、放電安定性、パルス電界の電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、すべて満足させることができ、種々のプラズマ処理において適用可能なプラズマ反応器及びプラズマ反応装置を提供することを目的とする。
本発明に係るプラズマ反応器は、パルス電源から発生された高電圧パルスの放電によるプラズマを利用して処理を行うプラズマ反応器において、1以上の貫通孔を有する1以上の電極板と、前記貫通孔を挿通するように配された1以上の線状電極とを有することを特徴とする。
これにより、線状電極に電界が集中し、貫通孔において安定に放電領域が発生する。また、容量も小さいため、パルス電界の電圧上昇率も大きいという効果がある。導入されるガスは、貫通孔に発生している放電領域を必ず通ることから、反応効率が向上する。貫通孔を複数設けるだけで、ガス攪拌機能が付与されることになり、しかも、局部放電等の不具合は生じない。電極板の側面を覆うように容器を配置することができるが、このとき、容器の外形を任意に選定できるため、スタック化が容易である。ガス種に応じた制御性の点でみた場合、放電間隔や放電電圧等を調整することで容易に制御でき、1つのプラズマ反応器で様々なガス種に対応させることができる。
このように、本発明に係るプラズマ反応器は、放電安定性、パルス電界の電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、すべて満足させることができ、種々のプラズマ処理において適用可能となる。
そして、前記構成において、前記電極板は、複数の貫通孔を有し、各貫通孔に対してそれぞれ1つの線状電極が配されていてもよい。この場合、ガスの攪拌機能が高められ、反応効率を向上させることができる。
また、前記構成において、互いに直交するx方向とy方向を定義したとき、複数の前記電極板を配置し、各電極板を、第1ないし第nの貫通孔(ここで、nは2以上の連続する整数である)が前記x方向に沿うように配列し、各電極板を、それぞれ第1ないし第nの貫通孔同士がほぼ一致するように前記y方向に沿って配列し、前記y方向に沿って並ぶ複数の前記第1の貫通孔を挿通するように1つの第1の線状電極を配し、前記y方向に沿って並ぶ複数の前記第2の貫通孔を挿通するように1つの第2の線状電極を配し、同様に、前記y方向に沿って並ぶ複数の前記第nの貫通孔を挿通するように1つの第nの線状電極を配するようにしてもよい。この場合、各電極板の第1ないし第nの貫通孔において放電領域が発生することから、大量のガスを効率よく処理することができる。
また、前記構成において、各電極板は、前記第1ないし第nの貫通孔のうち、少なくとも1つの貫通孔を閉塞する誘電体が設けられ、隣接する電極板の関係で見たとき、前記誘電体が設けられる貫通孔の順番がそれぞれ異なるようにしてもよい。この場合、さらにガスの攪拌機能が高められるため、反応効率をより向上させることができる。
また、前記構成において、内壁が前記電極板の側面に接するように配置された容器を有し、前記容器は、前記電極板と電気的に接続されていてもよい。この場合、容器の外形を任意に設定することができる。すなわち、容器の断面外形状を例えば四角形、三角形、六角形等に設定することができ、複数の容器をほとんど隙間のない状態で積み重ねることができる。これは、大量のガスに対する処理を効率よく行うことができるプラズマ反応装置を構成できることにつながる。
また、前記構成において、前記容器は、前記線状電極が電気的に接続される部分と、前記電極板が電気的に接続される部分とを電気的に絶縁するための絶縁材を有するようにしてもよい。この場合、容器の内壁を電極板の側面に接触させて構成させた場合においても、電極板の電位と線状電極の電位とを容易に異ならせることができ、各電極板の貫通孔において放電領域を安定に発生させることができる。
あるいは、本発明において、複数の側壁を有し、且つ、処理空間を区画するための容器を具備し、前記容器は、前記複数の側壁から前記電極板の側面を露出させるように前記複数の側壁が配置されると共に、前記線状電極の両端部が電気的に接続され、少なくとも前記電極板と前記線状電極とが一部の側壁によって電気的に絶縁されるようにしてもよい。
この場合、複数の線状電極を配線することを考慮したとき、複数の線状電極を容器から引き出してパルス電源に電気的に接続する必要はなく、容器のうち、線状電極の両端部が電気的に接続された部分をパルス電源に電気的に接続すればよいため、配線数を少なくすることができ、しかも、配線の引き回し作業が容易になる。これは、プラズマ反応器の生産性の向上につながる。
そして、前記構成において、複数の前記電極板を有し、前記複数の電極板のうち、少なくとも1つの電極板は、前記線状電極と同電位とされ、前記線状電極と同電位とされた前記電極板とその他の電極板は、前記容器の一部の側壁によって電気的に絶縁されるようにしてもよい。この場合、線状電極は、途中の電極板にて電力供給されることから、電位的に安定し、より安定に放電領域が発生する。
また、前記構成において、前記複数の電極板が、複数の貫通孔を有し、各貫通孔に対してそれぞれ1つの線状電極が配されている場合に、前記線状電極と同電位とされた前記電極板は、該線状電極が配線される部分に貫通孔を有さず、閉塞されていてもよい。この場合、この場合、前記電極板の閉塞部分にて、ガスの攪拌機能が高められるため、反応効率をより向上させることができる。
そして、上述した発明において、前記電極板が絶縁体で挟まれ、あるいは覆われていてもよい。電極板を絶縁体で挟んだ場合は、金属/絶縁体/気体の3重点(トリプル・ジャンクション)にて電界強度を高めることができるため、パルス電界の電圧上昇率を向上させることができる。しかも、電極板の金属露出部を小さくできるので、寿命を伸ばすことができる。電極板を絶縁体で覆った場合は、誘電体バリア放電となるが、静電容量を平行平板の場合よりも小さくできるため、損失を低減できる。もちろん、電極板の金属露出部をなくすことができるため、寿命をさらに伸ばすことができる。
また、前記構成において、前記線状電極が絶縁体で覆われていてもよい。この場合、線状電極の金属露出部を小さくすることができる、あるいはなくすことができるため、寿命を伸ばすことができる。
また、前記構成において、被処理ガスの導入方向が前記線状電極の軸方向とほぼ平行な方向であってもよいし、被処理ガスの導入方向が前記線状電極の軸方向とほぼ直交する方向であってもよい。いずれにしても、被処理ガスを攪拌させることができ、放電領域に被処理ガスを効率よく流通させることができる。
以上説明したように、本発明に係るプラズマ反応器及びプラズマ反応装置によれば、放電安定性、パルス電界の電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、すべて満足するさせることができ、種々のプラズマ処理において適用可能となる。
以下、本発明に係るプラズマ反応器及びプラズマ反応装置の実施の形態例を図1〜図19を参照しながら説明する。
本実施の形態に係るプラズマ反応装置10は、図1に示すように、直流入力電圧Vinの供給によって高電圧パルスVL(又は高電圧パルスVLを含む高電圧パルス列Pc)を発生するパルス電源12と、該パルス電源12に接続され、該パルス電源12にて発生された高電圧パルスVL(又は高電圧パルスVLを含む高電圧パルス列Pc)によって均一なストリーマ放電領域を発生させて、パルスコロナ放電によるプラズマ処理を促進させるプラズマ反応器14とを有する。
そして、第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aは、図2に示すように、処理空間を区画するための容器20と、該容器20内に設置され、且つ、1つの貫通孔22を有する1つの電極板24と、貫通孔22を挿通するように配された1本の線状電極26とを有する。
線状電極26は、径が約0.5mm、長さが約500mmであり、材質はステンレスである。材質としては、その他、インコネル等の耐蝕性導電材料を使用することができる。
電極板24は、外形がほぼ正方形状を有し、貫通孔22の径が約30mm、1辺の長さが約40mm、厚みが0.1〜10mmであり、材質はステンレスである。材質としては、その他、インコネル等の耐蝕性導電材料を使用することができる。
容器20は、図2及び図3に示すように、前面部28、背面部30及び4つの側壁21を有する。各側壁の内壁面には、電極板24の各側面が接触するように接合されており、容器20と電極板24は電気的に接続されている。
前面部28は、電極板24の板面と平行に配置された平板部28aと該平板部28aの四辺から各側壁21に向かって突出する側板部28bとを有する。背面部30も、電極板24の板面と平行に配置された平板部30aと該平板部30aの四辺から各側壁21に向かって突出する側板部30bとを有する。
そして、前面部28の側板部28bの端面と各側壁21の端面との間に、前面部28と各側壁28bとの電気的絶縁を図るための誘電体ブロック23が介在され、背面部30の側板部30bの端面と各側壁21の端面との間にも、背面部30と各側壁21との電気的絶縁を図るための誘電体ブロック25が介在されている。これら誘電体ブロック23及び25は、それぞれ矩形状の貫通孔23a及び25aが形成されて、枠状に形成されている。
前面部28の平板部28aは、その中央に線状電極26が挿通する電極用貫通孔32と被処理ガスを導入するための第1及び第2のガス用貫通孔34a及び34bが形成され、該電極用貫通孔32には、線状電極26と前面部28とを電気的に接続するための導電材36が埋め込まれている。背面部30もその中央に線状電極26が挿通する電極用貫通孔38と被処理ガスを流通するための第1及び第2のガス用貫通孔40a及び40bが形成され、該電極用貫通孔38には、線状電極26と背面部30とを電気的に接続するための導電材42が埋め込まれている。
そして、前面部28及び背面部30とパルス電源12とが電気的に接続されることによって、線状電極26にパルス電源12が電気的に接続され、容器20の各側壁21及び電極板24は接地(GND(グランド)に接続)とされている。
なお、パルス電源12から出力される高電圧パルスVL(又は高電圧パルスVLを含む高電圧パルス列Pc)としては、図4に示すように、パルス半値幅Tpを50〜100ns、立ち上がり時における電圧上昇率(dV/dt)を1011(V/s)以上としている。
ここで、この第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aの作用について説明する。まず、被処理ガスが第1及び第2のガス用貫通孔34a及び34bを通じて容器20内に導入される。このとき、線状電極26にパルス電源12から高電圧パルスVLが供給されることによって、電極板24における貫通孔22の内壁と線状電極26との間で放電が発生し、これによって、貫通孔22内で放電領域(プラズマ)が発生することになる。この放電領域の発生によって、被処理ガスは例えば分解あるいは活性化することとなる。被処理ガスが例えばNOxガスであれば、前記放電領域においてNOxガスが分解し、無害なガスに変換することとなる。また、被処理ガスが例えば臭気ガスであれば、臭気ガスが分解して、臭気成分が吸着材に吸着されやすい状態に変化(活性化)する。
このように、本実施の形態に係るプラズマ反応装置10及び第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aにおいては、線状電極26に電界が集中し、貫通孔22において安定に放電領域が発生する。また、容量も小さいため、高電圧パルスVLの電圧上昇率(dV/dt)も大きいという効果がある。導入される被処理ガスは、貫通孔22に発生している放電領域を必ず通ることから、反応効率が向上する。電極板24の側面を覆うように容器20を配置するようにしているため、容器20の外形を任意に選定でき、スタック化が容易である。ガス種に応じた制御性の点でみた場合、放電間隔や放電電圧等を調整することで容易に制御でき、1つのプラズマ反応器14Aで様々なガス種に対応させることができる。
このように、本実施の形態に係るプラズマ反応装置10及び第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aは、放電安定性、パルス電界の電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、すべて満足させることができ、種々のプラズマ処理において適用可能となる。
次に、第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bについて図5及び図6を参照しながら説明する。
この第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bは、上述した第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aとほぼ同様の構成を有するが、容器20内に複数の電極板24A〜24Cが設置されている点と、各電極板24A〜24Cに複数の貫通孔(22Aa〜22Ac)、(22Ba〜22Bc)、(22Ca〜22Cc)が形成されている点と、容器20内に複数本の線状電極26a〜26cが配されている点で異なる。
すなわち、図5及び図6に示す構成では、プラズマ反応器14Bは、容器20内に3つの電極板(第1の電極板24A、第2の電極板24B及び第3の電極板24C)を有する。そして、互いに直交するx方向とy方向を定義したとき、第1の電極板24Aは、それぞれ第1の貫通孔22Aa、第2の貫通孔22Ab及び第3の貫通孔22Acがx方向に沿って配列され、第2の電極板24Bも、それぞれ第1の貫通孔22Ba、第2の貫通孔22Bb及び第3の貫通孔22Bcがx方向に沿って配列され、第3の電極板24Cも、それぞれ第1の貫通孔22Ca、第2の貫通孔22Cb及び第3の貫通孔22Ccがx方向に沿って配列されている。また、第1〜第3の電極板24A〜24Cは、それぞれ第1の貫通孔(22Aa、22Ba、22Ca)同士、第2の貫通孔(22Ab、22Bb、22Cb)同士、第3の貫通孔(22Ac、22Bc、22Cc)同士がほぼ一致するようにy方向に沿って配列されている。
さらに、y方向に沿って並ぶ3つの第1の貫通孔22Aa、22Ba及び22Caを挿通するように1本の第1の線状電極26aが配され、y方向に沿って並ぶ3つの第2の貫通孔22Ab、22Bb及び22Cbを挿通するように1本の第2の線状電極26bが配され、同様に、y方向に沿って並ぶ3つの第3の貫通孔22Ac、22Bc及び22Ccを挿通するように1本の第3の線状電極26cが配されている。
また、容器20は、4つの側壁が、第1〜第3の電極板24A〜24Cの側面に接触して接合されており、これら4つの側壁21と第1〜第3の電極板24A〜24Cは電気的に接続されている。なお、容器20の変形例としては、例えば各電極板24A〜24Cの側面を容器20から露出させた構成を採用してもよい。この変形例を利用した構成は、後述する第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dにて説明する。
容器20における前面部28の平板部28aは、第1〜第3の線状電極26a〜26cが挿通する第1〜第3の電極用貫通孔32a〜32cと、被処理ガスを導入するための第1〜第4のガス用貫通孔34a〜34dが形成され、第1〜第3の電極用貫通孔32a〜32cには、第1〜第3の線状電極26a〜26cと前面部28とを電気的に接続するための導電材36a〜36cがそれぞれ埋め込まれている。第1のガス用貫通孔34aと第2のガス用貫通孔34bとの間に第1の電極用貫通孔32aが形成され、第2のガス用貫通孔34bと第3のガス用貫通孔34cとの間に第2の電極用貫通孔32bが形成され、第3のガス用貫通孔34cと第4のガス用貫通孔34dとの間に第3の電極用貫通孔32cが形成されている。
容器20における背面部30の平板部30aも第1〜第3の線状電極26a〜26cが挿通する第1〜第3の電極用貫通孔38a〜38cと、被処理ガスを流通するための第1〜第4のガス用貫通孔40a〜40dが形成され、第1〜第3の電極用貫通孔38a〜38cには、第1〜第3の線状電極26a〜26cと前面部28とを電気的に接続するための導電材42a〜42cがそれぞれ埋め込まれている。第1〜第3の電極用貫通孔38a〜38cと第1〜第4のガス用貫通孔40a〜40dの形成位置関係は、前面部28の場合と同様である。
そして、前面部28及び背面部30とパルス電源12とが電気的に接続されることによって、第1〜第3の線状電極26a〜26cにパルス電源12が電気的に接続され、容器20の側壁21及び第1〜第3の電極板24A〜24Cは接地(GND(グランド)に接続)とされている。
この第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bにおいても、上述した第1の実施の形態に係るプラズマ反応器14Aと同様に、放電安定性、高電圧パルスVLの電圧上昇率、ガスの反応効率(放電領域へのガスの有効供給)、ガスの反応効率(ガスの攪拌性)、システムの拡張性(スタック化)、ガス種に応じた制御性等について、すべて満足させることができ、種々のプラズマ処理において適用可能となる。
特に、この第2の実施の形態では、第1〜第3の電極板24A〜24Cにおける第1の貫通孔(22Aa、22Ba、22Ca)、第2の貫通孔(22Ab、22Bb、22Cb)及び第3の貫通孔(22Ac、22Bc、22Cc)においてそれぞれ放電領域が発生することから、大量の被処理ガスを効率よくプラズマ処理することができる。
また、容器20に設けられた第1〜第4のガス用貫通孔(34a〜34d)、(40a〜40d)の形成位置と、第1〜第3の電極板24A〜24Cに設けられた第1〜第3の貫通孔(22Aa、22Ba、22Ca)、(22Ab、22Bb、22Cb)、(22Ac、22Bc、22Cc)の形成位置が一致していないため、第1〜第4のガス用貫通孔(34a〜34d)、(40a〜40d)を通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内において乱流となる。すなわち、容器20内においてガスの攪拌機能が高められるため、反応効率をより向上させることができる。
また、容器20の側壁21の内壁面を第1〜第3の電極板24A〜24Cの側面に接するように配置して、第1〜第3の電極板24A〜24Cと電気的に接続するようにしたので、容器20の外形を任意に設定することができる。すなわち、容器20の断面外形状を例えば四角形、三角形、六角形等に設定することができ、複数の容器20をほとんど隙間のない状態で積み重ねることができる。これは、大量のガスに対する処理を効率よく行うことができるスタック型のプラズマ反応装置を容易に構成できることにつながる。
また、前面部28と背面部30とをパルス電源12に電気的に接続して、線状電極26a〜26cの両端をパルス電源12に電気的に接続するようにしたので、線状電極26a〜26cに対する給電能力を高めることができる。
次に、第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bのいくつかの変形例について図7〜図9を参照しながら説明する。
まず、第1の変形例に係るプラズマ反応器14Baは、図7に示すように、上述した第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bとほぼ同様の構成を有するが、第1〜第3の電極板24A〜24Cに形成された第1〜第3の貫通孔(22Aa〜22Ac)、(22Ba〜22Bc)、(22Ca〜22Cc)のうち、各電極板24A〜24Cにおいて少なくとも1つの貫通孔22Ac、22Bb、22Caを閉塞する誘電体50a、50b、50cが設けられ、隣接する電極板の関係で見たとき、誘電体50a、50b、50cが設けられる貫通孔の順番がそれぞれ異なるように設定されている点で異なる。
すなわち、第1の電極板24Aにおける第1〜第3の貫通孔(22Aa〜22Ac)のうち、第3の貫通孔22Acが誘電体50aで閉塞され、第2の電極板24Bにおける第1〜第3の貫通孔(22Ba〜22Bc)のうち、第2の貫通孔22Bbが誘電体50bで閉塞され、第3の電極板24Cにおける第1〜第3の貫通孔(22Ca〜22Cc)のうち、第1の貫通孔22Caが誘電体50cで閉塞されている。この場合、放電領域が形成される貫通孔の数が減ることになるが、第1〜第4のガス用貫通孔34a〜34dを通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内において大きく乱されて、被処理ガスが攪拌されることから、反応効率をより向上させることができる。
次に、第2の変形例に係るプラズマ反応器14Bbは、図8に示すように、上述した第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bとほぼ同様の構成を有するが、容器20の前面部28及び背面部30に第1〜第4のガス用貫通孔(34a〜34d)、(40a〜40d)は形成されておらず、容器20の1つの側壁(図6の例では上板)にガス導入孔52とガス排出孔54が形成されている点で異なる。
具体的には、容器20の上板のうち、容器20の前面部28と第1の電極板24Aの間にガス導入孔52が形成され、容器20の背面部30と第3の電極板24Cの間にガス排出孔54が形成されている。この場合、ガス導入孔52を通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内に導入された段階で大きく乱されることから、反応効率を向上させることができる。
次に、第3の変形例に係るプラズマ反応器14Bcは、図9に示すように、上述した第1の変形例に係るプラズマ反応器14Baとほぼ同様の構成を有するが、容器20の前面部28及び背面部30に第1〜第4のガス用貫通孔(34a〜34d)、(40a〜40d)は形成されておらず、容器20の1つの側壁(図9の例では上板)にガス導入孔52とガス排出孔54が形成されている点で異なる。つまり、第1の変形例に係るプラズマ反応器14Baと第2の変形例に係るプラズマ反応器14Bbとを組み合わせた構成を有する。
この場合も、ガス導入孔52を通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内に導入された段階で大きく乱され、さらに、容器20内においても大きく乱されて、被処理ガスが攪拌されることから、反応効率をより向上させることができる。
上述の第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14B並びに第1〜第3の変形例に係るプラズマ反応器14Ba〜14Bcでは、前面部28と背面部30とをパルス電源12に電気的に接続して、線状電極26a〜26cの両端をパルス電源12に電気的に接続するようにしたが、前面部28あるいは背面部30をパルス電源12に電気的に接続して、線状電極26a〜26cの各一端(例えば前面部28側の各端部)あるいは線状電極26a〜26cの各他端(例えば背面部30側の各端部)をパルス電源12に接続するようにしてもよい。この場合、低コスト化、省スペース化に有利になる。
また、上述の例えば第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bでは、前面部28に形成された電極用貫通孔32a〜32cに、第1〜第3の線状電極26a〜26cと前面部28とを電気的に接続するための導電材36a〜36cを埋め込み、背面部30に形成された電極用貫通孔38a〜38cに、第1〜第3の線状電極26a〜26cと背面部30とを電気的に接続するための導電材42a〜42cを埋め込むようにしたが、その他、図10に示す第3の実施の形態に係るプラズマ反応器14Cのような構成を採用してもよい。
すなわち、この第3の実施の形態に係るプラズマ反応器14Cは、図10に示すように、容器20がすべて金属製で構成され、前面部28と側壁21とが金属にて一体とされ、背面部30と側壁21とが金属にて一体とされている。
そして、前面部28に形成された第1〜第3の電極用貫通孔32a〜32cには、第1〜第3の線状電極26a〜26cとの絶縁を図るための絶縁体37a〜37cがそれぞれ埋め込まれ、背面部30に形成された第1〜第3の電極用貫通孔38a〜38cには、第1〜第3の線状電極26a〜26cとの絶縁を図るための絶縁体43a〜43cがそれぞれ埋め込まれている。この場合、絶縁体37a〜37c並びに43a〜43cは、沿面距離を大きく取ることができるように、立体形状(碍子の襞のような形状)とされている。
次に、第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dについて図11を参照しながら説明する。
この第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dは、図11に示すように、上述した第2の実施の形態に係るプラズマ反応器14Bとほぼ同様の構成を有するが、容器20のうち、板状の前面部28と該前面部28に隣接する電極板24Aとの間に介在する側壁(上板20Aa、下板20Ab、側板20Ac、側板20Ad)が絶縁材(誘電体を含む)で構成され、板状の背面部30と該背面部30に隣接する電極板24Cとの間に介在する側壁(上板20Da、下板20Db、側板20Dc、側板20Dd)が絶縁材(誘電体を含む)で構成されている点で異なる。容器20のうち、電極板24A及び24B間に介在する側壁(上板20Ba、下板20Bb、側板20Bc、側板20Bd)並びに電極板24B及び24C間に介在する側壁(上板20Ca、下板20Cb、側板20Cc、側板20Cd)は例えば金属板で構成されている。
そして、前面部28に形成された電極用貫通孔32a〜32cに、線状電極26a〜26cと前面部28とを電気的に接続するための導電材36a〜36cが埋め込まれ、背面部30に形成された電極用貫通孔38a〜38cに、線状電極26a〜26cと背面部30とを電気的に接続するための導電材42a〜42cが埋め込まれている。
なお、容器20及び電極板24A〜24Cは接地(GND(グランド)に接続)とされている。また、前面部28と背面部30を共にパルス電源12に接続するようにしたので、線状電極26a〜26cに対する給電能力を高めることができる。
次に、第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dの変形例について図12〜図15を参照しながら説明する。
まず、第1の変形例に係るプラズマ反応器14Daは、図12に示すように、上述した第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dとほぼ同様の構成を有するが、容器20の前面部28及び背面部30に第1〜第4のガス用貫通孔(34a〜34d)、(40a〜40d)は形成されておらず、容器20のうち、前面部28と該前面部28に隣接する電極板24Aとの間に介在する上板24Aaにガス導入孔52が形成され、背面部30と該背面部30に隣接する電極板24Cとの間に介在する上板20Daにガス排出孔54が形成されている点で異なる。この場合、ガス導入孔52を通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内に導入された段階で大きく乱されることから、反応効率を向上させることができる。
次に、第2の変形例に係るプラズマ反応器14Dbは、図13に示すように、上述した第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14Dとほぼ同様の構成を有するが、前面部28と該前面部28に隣接する電極板24Aとの間に介在する側壁(上板20Aa、下板20Ab、側板20Ac、側板20Ad)、並びに背面部30と該背面部30に隣接する電極板24Cとの間に介在する側壁(上板20Da、下板20Db、側板20Dc、側板20Dd)に加えて、電極板24A及び24B間に介在する側壁(上板20Ba、下板20Bb、側板20Bc、側板20Bd)並びに電極板24B及び24C間に介在する側壁(上板20Ca、下板20Cb、側板20Cc、側板20Cd)も絶縁材(誘電体を含む)で構成されている点で異なる。
この場合、各線状電極26a〜26cは、前面部28及び背面部30を介してパルス電源12に電気的に接続され、各電極板24A〜24Cは、それぞれ容器20の側壁からはみ出した部分を通じて接地(GND(グランド)に接続)とされている。この第2の変形例においても、ここでは図示しないが、上述した第1の変形例と同様に、容器20のうち、前面部28と該前面部28に隣接する電極板24Aとの間に介在する上板20Aaにガス導入孔52を形成し、背面部30と該背面部30に隣接する電極板24Cとの間に介在する上板20Daにガス排出孔54を形成するようにしてもよい。
次に、第3の変形例に係るプラズマ反応器14Dcは、図14に示すように、上述した第2の変形例に係るプラズマ反応器14Dbとほぼ同様の構成を有するが、貫通孔22の形成個数が少ない電極板24Bが少なくとも1枚介在されている点と、該電極板24Bが容器20からはみ出した部分を介してパルス電源12に電気的に接続されている点で異なる。
具体的には、例えばy方向に沿って配列された3枚の電極板24A〜24Cのうち、中央に配された電極板24Bは、他の電極板24A及び24Cと比して貫通孔22が1つ少なく設定されている。この例では、電極板24Bは、前面部28寄りに配された電極板24Aの第1及び第3の貫通孔22Aa及び22Acに対応する部分にそれぞれ貫通孔22Ba及び22Bcが形成され、電極板24Aの第2の貫通孔22Abに対応する部分には貫通孔は形成されておらず閉塞されている。
そして、各線状電極26a〜26cは、前面部28と背面部30を介してパルス電源12に接続される。特に、2番目の線状電極26bは、前面部28と背面部30並びに電極板24Bを介してパルス電源12に接続される。つまり、中央に配された電極板24Bは線状電極26bと同電位とされる。
この場合、2番目の線状電極26bは、途中の電極板24Bにて電力供給されることから、電位的に安定し、2番目の線状電極26bについて、より安定に放電領域が発生する。従って、ここでは図示しないが、前面部28と背面部30間に配列する電極板24の数が多ければ、前面部28寄りに配された電極板24Aの第1の貫通孔22Aaに対応した部分が閉塞とされた電極板と、電極板24Aの第2の貫通孔22Abに対応した部分が閉塞とされた電極板と、電極板24Aの第3の貫通孔22Acに対応した部分が閉塞とされた電極板を配することで、すべての線状電極26a〜26cについて、より安定に放電領域を発生させることができる。
次に、第4の変形例に係るプラズマ反応器14Ddは、図15に示すように、上述した第3の変形例に係るプラズマ反応器14Dcとほぼ同様の構成を有するが、上述した第1の変形例に係るプラズマ反応器14Daと同様に、容器20のうち、前面部28と該前面部28に隣接する電極板24Aとの間に介在する上板20Aaにガス導入孔52が形成され、背面部30と該背面部30に隣接する電極板24Cとの間に介在する上板20Daにガス排出孔54が形成されている。この場合、ガス導入孔52を通じて導入された被処理ガスの流れは容器20内に導入された段階で大きく乱されることから、反応効率を向上させることができる。
上述の第4の実施の形態に係るプラズマ反応器14D並びに第1〜第4の変形例に係るプラズマ反応器14Da〜14Ddでは、前面部28と背面部30を共にパルス電源12に接続するようにしたが、前面部28あるいは背面部30のいずれかをパルス電源12に接続するようにしてもよい。この場合、低コスト化、省スペース化に有利になる。
上述した第2の実施の形態〜第4の実施の形態では、容器20内に3つの電極板24A〜24Cを設置した場合を示したが、その他2つの電極板を設置してもよいし、4つ以上の電極板を設置してもよい。また、上述した第2の実施の形態では、各電極板24A〜24Cに3つの貫通孔(22Aa〜22Ac)、(22Ba〜22Bc)、(22Ca〜22Cc)を設けた場合を示したが、その他2つの貫通孔を設けてもよいし、4つ以上の貫通孔を設けてもよい。つまり、各電極板にn個(n=1、2、3・・・)の貫通孔を設けることができる。
その一例(第5の実施の形態に係るプラズマ反応器14E)について図16を参照しながら説明する。
この第5の実施の形態に係るプラズマ反応器14Eは、図16に示すように、誘電体(セラミックス等)にて構成された容器80を有する。この容器80は、上面開口の箱型に形成された容器本体82と、該容器本体82の上面開口を一部閉塞するように取り付けられる蓋84とを有する。
容器本体82内には、前面板86、4枚の電極板24A〜24D及び背面板88がそれぞれ所定間隔を置いて収容されている。4枚の電極板24A〜24Dには、それぞれ6つの貫通孔22が3行2列の配列で形成され、これら貫通孔22を挿通するように、6本の線状電極26が挿通されている。
前面板86には、6本の線状電極26が挿通する6つの電極用貫通孔32が形成され、これら6つの電極用貫通孔32に、6本の線状電極26と前面板86とを電気的に接続するための導電材36がそれぞれ埋め込まれている。
背面板88にも、6本の線状電極26が挿通する6つの電極用貫通孔38が形成され、これら6つの電極用貫通孔38に、6本の線状電極26と背面板88とを電気的に接続するための導電材42がそれぞれ埋め込まれている。
一方、蓋84には、前面板86、4つの電極板24A〜24D及び背面板88の各上部が挿通するスリット90が形成され、さらに、ガス導入孔52とガス排出孔54が形成されている。
この第5の実施の形態に係るプラズマ反応器14Eにおいても、ガス導入孔52を通じて導入された被処理ガスの流れは容器80内に導入された段階で大きく乱され、さらに、容器80内においても大きく乱されて、被処理ガスが攪拌されることから、反応効率をより向上させることができる。
上述の例では、第1〜第4の電極板24A〜24Dを金属板としたが、図17に示すように、金属板60を2つの誘電体62及び64で挟んだ構成にしてもよいし、図18に示すように、金属板60を誘電体66で覆うようにしてもよい。図17に示す構成の場合、金属/絶縁体/気体の3重点(トリプル・ジャンクション)にて電界強度を高めることができるため、パルス電源12から供給される高電圧パルスの電圧上昇率を向上させることができる。しかも、第1〜第4の電極板24A〜24Dの金属露出部を小さくできるので、寿命を伸ばすことができる。図18に示す構成の場合、誘電体バリア放電となるが、静電容量を平行平板の場合よりも小さくできるため、損失を低減できる。もちろん、電極板24A〜24Dの金属露出部をなくすことができるため、寿命をさらに伸ばすことができる。
また、上述の例では、線状電極26(26a〜26c)を金属線としたが、図19に示すように、金属線70を誘電体72に埋め込んだ構成にしてもよい。この場合、線状電極26の金属露出部を小さくすることができる、あるいはなくすことができるため、寿命を伸ばすことができる。
なお、本発明に係るプラズマ反応器及びプラズマ反応装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。