JP4628525B2 - 静電気障害防止カイロ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の材料で形成された容器と当該容器の内部に収納した発熱材とからなる携帯可能な使い捨てカイロであって、人体など帯電した静電気を放電させることにより、静電気による様々な障害を防止できる静電気障害防止カイロに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冬季やその他乾燥した季節になると、着用した衣類に、布地との接触および摩擦によって静電気が発生して、衣類のまつわりつき、あるいは、擦り上がり、さらには、脱衣の際に不快な放電音を発生させることはよく知られている。
【0003】
また、家屋のドアノブや自動車のドアノブを素手で触ったときに帯電した静電気の放電による電撃を受けることがある。このようなショックを受ける原因は、人体と触れようとしたドアノブとの間に電位差があって、触れるか接近したときに起こる電気的放電現象により、短時間に両者の間に電流が流れて両者の電位差が中和することにある。両者の電位差が大きければ大きい程、両者の間に流れる電流が大きくなり、人体に与えるショックが大きくなる。
【0004】
一方、この種の使い捨てカイロは、特に冬季での利用が多く、季節的にも静電気障害が発生する時期と重なっている。従来のカイロは、酸化鉄などの空気との接触により酸化反応が開始し発熱する発熱材を不織布等の袋材に収容したものがよく知られている。発熱材を収容した袋体の片面に粘着剤を塗布し、人体あるいは衣類へ貼付できるものと、粘着剤がなくポケットに収容したり手に持って使用するものが提供されている。
【0005】
ところで、このような静電気による障害を防止する従来の技術は、大別して2種類が挙げられる。
【0006】
まず、第1の従来技術は、導電性繊維を用いた衣類等により、空気中でコロナ放電を起こさせ、発生したイオンにより帯電した物質の電荷を中和していた(以下、「空中放電方式」という)。
【0007】
この空中放電方式を利用した第1の従来技術としては、例えば、実開昭57−021651公報に記載されたものがある。この公報に記載された考案では、金属、含金属、金属メッキ、炭素、含炭素質の各種繊維等のような導電性繊維を極く少量分で混有せしめたフェルト、不織布、編地、織布とせる布綿体となし、上記布綿体の片側面に粘着性物質あるいは熱溶融性物質で粘着被膜を付与するように塗着してなる制電性接着布が提供されている。この制電性接着布の場合には、導電性繊維を用いているが性能が劣化した場合には制電性接着布ごと取り替えでき、コストも割安であるという利点がある。
【0008】
次に、第2の従来技術は、高抵抗体を内蔵した指輪やキーホルダーなどの静電気緩衝具を用いて、家屋のドアノブなどの接地体に触れるときに非急速に蓄積された静電気を逃すようにしたものである(以下、「接地放電方式」という)。
【0009】
この接地放電方式を利用した第2の従来技術は、例えば、特開平10−046001号公報に記載されたものがある。この公報に記載された発明では、アルキレンオキサイド基とエチレン系不飽和結合を有する単量体を構成成分として含むゴム幹重合体に、1種以上のエチレン系不飽和単量体をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体から成る合成樹脂組成物を材料として構成され、所定の範囲の体積固有抵抗率を有することにより静電気除去性を有する合成樹脂製成形体が提供されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(A)しかしながら、上述した第1の従来技術によれば次のように問題があった。
【0011】
(i)導電性繊維は、一般的に製糸性が悪く強度も低いため衣類に使用した場合に、性能が劣化しやすく当初の導電性を維持することが困難であったり、衣類としての機能に劣り、または劣化しやすい問題があった。
【0012】
(ii)衣類であるため使い捨てすることができず、かつまた、洗濯すると性能が著しく劣化する問題があった。
【0013】
(iii)前記公報に記載された制電性接着布を用いた場合、機能としては目に見えない電気を放電するだけのものであるから装着している実感が無く、装着していることを忘れてしまうため、装着した衣類をそのまま洗濯してしまい、衣類を傷めたりする恐れがあった。
【0014】
(B)上記第2の従来技術によれば、次のような問題点があった。
【0015】
(i)電流を非急速に流すために高抵抗体を設けたものの場合には非常に高価なものとなる問題があった。
【0016】
(ii)指輪やキーホルダーに高抵抗体を組み込むための工賃などが必要となりコストが高いという問題点がある。
【0017】
(iii)指輪やキーホルダーなどの静電気緩衝具は、その放電機能のためだけに身につけたりするものであるから無駄があり経済的でない。
【0018】
(iv)上記公報に記載された静電気除去性を有する合成樹脂製成形体は、単なる成形物として携帯する場合には、携帯していることを忘れてしまったり、あるいは、携帯場所を忘れてしまったりして、即座に取り出して使用するということができないなどの問題があった。
【0019】
(v)腕輪・指輪などの形状に成形し携帯するようにした場合には、仕事場などでは、時と場合によって身に付けることが禁止されていたり、身に付ける人の趣味性が強いため様々な形状のものを生産する必要があったり、元々装飾品を身に付けることを好まない人にあっては腕輪・指輪として使用せず、上記単なる成形物と同じように携帯するようになり無駄があり経済的でないなどの問題点があった。
【0020】
(vi)筆記具に成形し携帯するようにした場合には、人体あるいは鞄などのどこに収容しているか忘れやすい、筆記具は手で強く握るため筆記具の表面に施された静電気障害防止機能を劣化させやすいなどの問題点があった。
【0021】
(C)また、従来のカイロは、静電気障害の発生しやすい時期によく使用されるものであるが、静電気障害防止機能を取り入れたものは存在しなかった。
【0022】
そこで、本発明者らは、従来の静電気障害防止機能を持った物品の課題を解決すると同時に、カイロはさほど大きいものではないため身につけていても違和感がないこと、および発熱するため使用者に存在感を認識させる機能も併せ持つことに着目し本発明を完成させた。
【0023】
すなわち、本発明は、簡単な構造で安価に製造でき、身につけていることを忘れないで、静電気による障害を防止できる静電気障害防止カイロを提供することを目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による静電気障害防止カイロは、容器の内部に発熱材を収納したカイロであって、
接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質により設けられて、当該カイロを前記接地体に近接または接触したときに前記帯電体の帯電電荷を当該カイロを介して前記接地体に通電し放電する静電気障害防止材を前記容器である袋材の一方面又は両面に備え、前記容器は、合成樹脂フィルム、紙、不織布、織布の少なくとも1種類以上からなるシート体により構成された袋材であり、前記シート体は、接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質を練り込んで形成した繊維を用いて通気性の調整された不織布によって構成した。
本発明による他の態様による静電気障害防止カイロは、容器の内部に発熱材を収納したカイロであって、
接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質により設けられて、当該カイロを前記接地体に近接または接触したときに前記帯電体の帯電電荷を当該カイロを介して前記接地体に通電し放電する静電気障害防止材を前記容器である袋材の一方面又は両面に備え、前記容器は、合成樹脂フィルム、紙、不織布、織布の少なくとも1種類以上からなるシート体により構成された袋材であり、前記シート体は、通気性の調整された不織布の表面に接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質を蒸着してなるものである。
【0025】
請求項1記載の発明によれば、身につけていることを忘れないで、かつ、人体に帯電した静電気を接地体へ接触させるなどして逃がすことができ、静電気放電による電撃を人体が受けることを防止する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
[構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る静電気障害防止カイロの一構成例を示す断面図である。
【0033】
この図1において、静電気障害防止カイロ1は、所定の材料である樹脂フィルム、紙、不織布および織布の少なくとも1種類以上により構成されたシート体2によって形成された容器3と、この容器3の内部に収納した発熱材4と、前記容器3に設けた静電気障害防止材5とから構成されたものである。
【0034】
この容器3は、その一方の面が、ナイロンスパンボンド不織布にカーボンブラックやチタンやステンレスなどの導電性物質6を蒸着あるいは化学結合させて付与した通気性の調整された不織布7を最外層に用い、その内側に低密度ポリエチレン(LDPE)に微細孔を設けたフィルム8を積層し、さらに、その内側に熱融着性のよい直鎖状低密度ポリエチレン(L/LDPE)からなる微細孔を設けたフィルム9を積層して形成されたシート体2aにより構成されている。また、前記容器3の他方の面は、最外層に基材層となる低密度ポリエチレンフィルム10を用い、その内側に熱融着性の良い直鎖状低密度ポリエチレンフィルム11を積層してなるシート体2bにより構成されている。
【0035】
この実施の形態では、静電気障害防止材5を容器3の片面に設け手いるが、静電気障害防止材5を容器3の全表面に設けてもよく、または、静電気障害防止部材5により容器3の一部を構成するように設けてもよい。
【0036】
この実施の形態で用いられる発熱材4としては、特に制限はないが、空気中の酸素と容易に反応し、この反応の際に発熱するものであればよく、例えば還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、いもの鉄粉等が挙げられる。
【0037】
また、静電気障害防止カイロ1において、カイロとして機能を果たすことを考慮して適宜発熱助剤、電解質溶液を添加するのが好ましい。
【0038】
発熱助剤としては、活性炭を用いるのが好ましい。活性炭としては、ヤシガラ活性炭、木粉炭、石炭、暦青炭、泥炭、コークス炭等が挙げられる。
【0039】
また、シリカ、バーミキュライト、吸水性ポリマー、木粉等の保水剤を加えてもよい。前記吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸塩架橋物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、架橋ポリアルキレンオキシド、水溶性セルロースエーテル、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ペクチン、アクリルスルホン酸系高分子物質、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0040】
電解質溶液としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水溶液が挙げられる。
【0041】
また、発熱材4を収容する容器3は偏平袋形状の袋材13が好ましく、空気中の酸素と反応して発熱する発熱材4を使用する際には、通気性の調整された袋材13が好ましい。なお、袋材13とした場合は、成形物に比べ人体に装着・携行するには柔軟性があるため違和感なくもてるという利点もある。さらに、柔軟性があると接地放電式にあっては、ドアノブ等と静電気障害防止部材との接触可能性を高めることができるので好ましい。
【0042】
前記袋材13を形成するシート体2a,2bは、既に説明したが、再び述べれば合成樹脂フィルム、紙、不織布、織布などで構成することが好ましい。
【0043】
このシート体2a,2bを形成するにあたっては、発熱材が通気性を必要とするものにあっては、紙、不織布、織布などは通気性を有するものが多いため問題ないが、合成樹脂フィルムはそのままでは一般的に通気性が低いため、フィルムに通気性を付与するようにすればよく、延伸および/又は可溶性充填剤の抽出あるいは極細針による穿孔等の方法により通気性を発現するようにしたものが用いられる。
【0044】
具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、塩酸ゴム等が挙げられるが、これらのうちポリオレフィン系樹脂製のものが延伸等により、均質な通気性フィルムが得られるから好ましい。
【0045】
このポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどのホモポリマー、あるいはコポリマー、またはこれらのブレンドポリマーが挙げられるが、特にポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L/LDPE)が上述の観点より好ましい。
【0046】
これら合成樹脂フィルム、織布、および不織布を少なくとも1種以上からなるシート体2を用いればよいが、好ましくは、不織布と通気性の付与された合成樹脂フィルムを積層してなるシート体2がよい。
【0047】
この静電気障害防止カイロ1に使用される静電気障害防止材5としては、空気に帯電した電荷を放電し得るか、接地体に近接又は接触したときに帯電した電荷を通電し放出することができれば特に制限はない。
【0048】
この静電気障害防止材5としては、導電性物質6を発熱材を収容した容器3(袋材13)に設けて空気中への放電と接地体への通電の両方に効果のある手段や、導電性物質6を用いない手段として静電気消散性ポリマーの層を容器3に設けたもの、界面活性剤を容器3の表面に塗布あるいは含浸させるもの、容器3の少なくとも一部を織布あるいは不織布で構成しその一部を起毛させて放電しやすくしたもの、イオン化した珪素をセラミックスやFRPに混入したものを容器に設けるなどの手段により、空気中へ帯電した電荷を放出するようにしてもよい。
【0049】
例えば、静電気障害防止材5の設け方としては、導電性物質6を含有する繊維を混抄した不織布を用い、発熱材4を収容した袋材13の最外面の少なくとも一部に用いたり、或いは当該不織布を最外面に積層した袋材13により達成できる。
【0050】
なお、静電気障害防止材5を設けたシート体2aを2枚用いて袋材13とした構成の場合、カイロの裏表両方が静電気障害防止効果を呈するので好ましい。
【0051】
また、この静電気障害防止カイロ1に用いられる静電気障害防止材5は、金属、金属含有物質、炭素、炭素含有物質などの導電性物質6が用いられる。好ましくは、導電性物質6として、炭素含有物質であるカーボンなどを用いるほうがよい。
【0052】
導電性物質6の形態としては、導電性繊維を含む不織布や不織布に導電性物質を蒸着等させたものが好ましく、導電性繊維には合成樹脂に金属、カーボンブラックを含有させたものや、セルロース導電性繊維、導電性ステープルファイバー、カーボンファイバー、ポリエステルとアクリルの合成繊維等がある。例えば、導電性繊維として販売されているカーボン繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維、アクリル繊維中に硫化銅を固着させた繊維(商品名サンダーロン)、ポリビニルアルコール繊維に銅を結合させ特殊金属処理した繊維(商品名ダイナ)、アクリルとカーボンの短繊維を混練した繊維などが用いられる。含有させる金属としては、酸化スズ、金、銀、銅、硫化銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、ウィスカ、セレン、ビスマス、インジウム等がある。
【0053】
なお、これらの金属をメッキとして容器3(袋材13)に直接、あるいはシート体にコーティングして用いる方法もある。
【0054】
また、不織布の表面に導電性ポリマーを反応形成させたシート体(日本バイリーン製、商品名「でんきとーる」)、不織布に導電性物質を化学結合させたシート体、ナイロンスパンボンド不織布にステンレスまたはチタンなどを蒸着したシート体(旭化成工業製、商品名「スーパースパッタリングクロス」)などが用いられる。
【0055】
図4は、本発明の実施の形態2に係る静電気障害防止カイロの断面図である。
【0056】
この実施の形態2は、発熱材4を充填した袋材13の一方面または両面を導電性物質6を練り混んで形成した繊維7’を用いて通気性の調整された不織布7単層によって構成している。なお、この実施の形態においては、縁部を熱溶着する上で必要があれば熱溶着性樹脂層を内側に形成する。なおまた、上記導電性物質6により繊維を形成し、この繊維によって不織布を組成し、この不織布を用いて上記容器、或いは袋体を形成してもよい。
【0057】
[作用]
次に上述したように構成された実施の形態に係る静電気障害防止カイロ1の作用について説明する。
【0058】
上記のように構成された静電気障害防止カイロ1は、発熱材4を収容した容器3に設けられた静電気障害防止材5によって人体等に帯電し蓄積された電荷が放電されることになる。
【0059】
さらに、空気中に電荷を放電する導電性物質6を含んでなる静電気障害防止材5を、発熱材4を収容した容器3に設けるか、発熱材4を収容する容器3の少なくとも一部を構成するようにした場合には、人体等に身につけることにより帯電し蓄積された電荷を空気中に放電されることになる。
【0060】
または、接地体に近接または接触したときに帯電電荷を通電し放電する導電性物質6を含んでなる静電気障害防止材5を、発熱材4を収容した容器3に設けるか、発熱材4を収容する容器3の少なくとも一部を構成するようにした場合には、静電気障害防止カイロ1の一端を持ち、静電気障害防止カイロ1の他端などを、例えば、素手でドアノブを握る前に、ドアノブに接触させるなどすると、発熱材4を収容した容器3に設けられた静電気障害防止材5によって人体等に帯電し蓄積された電荷がドアノブへ通電し放電されることになる。
【0061】
なお、空気中に電荷を放電する導電性物質であって、接地体に近接または接触したときに帯電電荷を通電し放電する導電性物質である場合には、身につけていることにより静電気を放電し、さらに接地帯へ接触等させて放電されることになる。
【0062】
これにより、衣類のまつわりつき、あるいは擦り上がり、さらには脱衣の際に不快な放電音を発生させたり、接地体(家屋や自動車のドアノブ)に近接又は接触したときに受ける電撃などの原因である静電気が放出されるため、これらのような障害が起こらない。
【0063】
【実施例】
次に、上記実施の形態に係る静電気障害防止カイロ1について具体的に第1の実施例ないし第3の実施例を作成し、静電気障害防止効果について検証してみた。
【0064】
本発明の実施の形態における静電気障害防止カイロ1について、第1の実施例ないし第3の実施例では、不織布7、導電性物質6および導電性物質6を不織布7にどのように設けたかについては、表1のとおりとした。
【0065】
また、本発明の実施の形態における静電気障害防止カイロ1について、第1の実施例ないし第3の実施例は、発熱材4としては、鉄粉28.3[g]、活性炭3.5[g]、バーミキュライト7.1[g]、水12.7[g]、塩化ナトリウム1.4[g]を混合し調製したものを用いた。
【0066】
なお、袋材13の静電気障害防止材5を設けた面の通気度は、ガーレー式通気度測定器による値が14.5[秒]/800[cc]であり、袋材13からなる容器3の静電気障害防止カイロ1は、縦横の寸法を135[mm]×100[mm]とした。
【0067】
[比較例]
また、本発明の第1の実施の形態の効果をより明確にするために比較例を設けた。この比較例は、静電気障害防止材5を設けなかった以外は、第1の実施例ないし第3の実施例と同様の条件にして作成した比較例カイロである。この比較例カイロは、表1に記載したとおりの不織布を使用している。
【0068】
【表1】
上記の通り作成した第1の実施例ないし第3の実施例に記載した静電気障害防止カイロ1と、比較例カイロとを用いて、人体に帯電した静電気による障害を防止する試験を次のように行った。
【0069】
この試験は、JIS L 1023「繊維製床敷物の性能に関する試験方法」を利用して図2に示すような試験装置によって行った。試験装置21は、図2に示すように、グランドレベル22の上に配置した絶縁板23と、この絶縁板23の上に配置したカーペット24と、グランドレベル上に設けた作業台25と、作業台25の上に配置した絶縁シート26と、絶縁シート26上に配置した電極27と、絶縁シート26上で前記電極板27に対向するプローブ28と、プローブ28に接続され作業台25上に配置された電位計29と、作業台25の上に配置され電位計29の測定結果を記録できる自動記録計30と、前記電極27に接続され先端に人体帯電圧測定用プローブ31を有するリード線32とから構成されている。
【0070】
また、この試験装置21の絶縁板23の近辺には、アースした金属ドアノブ33が配置されている。
【0071】
試験は次のようにして行なう。被験者が、図2のように、人体帯電圧測定用プローブ31を持って、100[%]ポリエステル製のカーペット24の上で足踏みをする。すると、靴とカーペット間の摩擦により被験者は徐々に帯電してくる。
【0072】
これら第1の実施例の静電気障害防止カイロ1を手に持ち、人体帯電圧が6000[V]以上に達してから、足踏みを止めた時、カイロ1を接地した金属ドアノブ33に3[cm]の距離で接近させたとき、1[cm]のとき、接地された金属ドアノブ33に接触させたときの、それぞれについての人体帯電圧の変化を図3に示した。なお、図3では、縦軸に人体帯電圧〔V〕を、横軸に時間(作業)をそれぞれとったものである。
【0073】
図3において、足踏み停止直後には、少なくとも7000〔V〕以上の電圧が人体に帯電しており、足踏み停止してから一定の時間経過しても概ね6000〔V〕を保つことがわかる。また、この6000〔V〕帯電している状態から、3[cm]の距離で金属ドアノブ33に近づけると4200〔V〕程度に電圧が低下し、さらに1[cm]の距離で金属ドアノブ33に近づけると3700〔V〕〜3800〔V〕に低下することがわかる。さらに、静電気障害防止カイロ1を金属ドアノブ33に接触させると、ほぼ0〔V〕になることが分かる。
【0074】
第2の実施例、第3の実施例および比較例についても、上記第1の実施例のように上記試験装置21により試験をし、概ね6000〔V〕に保ち、それぞれのカイロを接地された金属ドアノブ33へ接触させた後、接地された金属ドアノブ33を素手でつかんでみた時の状態を観察し、静電気による電撃を受けるのを防止した場合に「○」を、防止できなかった場合を「×」を用いて表2へ記入した。もちろん、第1の実施例についても上述同様に、静電気による電撃を受けるのを防止した場合に「○」を、防止できなかった場合を「×」を用いて表2へ記入した。
【0075】
【表2】
上記表のように第1の実施例ないし第3の実施例に係る静電気障害防止カイロ1を用いた場合は、表2に示すように人体に帯電した静電気を効果的に除電し、接地体へカイロを接触させた際には静電気を接地体へ逃がし、人体へ電撃を与えるということがなかった。しかしながら、比較例用カイロについては、表2に示すように、金属ドアノブ33に接触直前に5500〔V〕もあり、当然、金属ドアノブ33に接触したときに大きな電撃を受けた。
【0076】
これら実施例からも分かるように、容器3に静電気障害防止材5を設けた静電気障害防止カイロ1は、効果的に帯電した静電気を放電、通電し、人体へ電撃を与えることがないことがわかった。なお、表2,図3に表記した電圧は、絶対値で表しており、今回の試験ではマイナスの電荷が帯電しており、最高−8500Vまで帯電し、接地の際に帯電圧が瞬時になくなった。−1000Vの目盛りがあるのは、逆の電荷へ振れた際のためのものである。なお、プラスの電荷が帯電した場合にも同様に瞬時に帯電圧を0へ下げることができる。
【0077】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明における静電気障害防止カイロは、簡単な構造で安価に製造でき、通常のカイロとしての機能の他に、身につけていることを忘れないで、しかも低コストで静電気放電による電撃を人体が受けることを防止する等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る静電気障害防止カイロを示す断面図である。
【図2】本発明の実施例について静電気障害防止ができるか試験するための試験装置を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施例による電圧の変化を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る静電気障害防止カイロを示す断面図である。
【符号の説明】
1 静電気障害防止カイロ
2,2a,2b シート体
3 容器
4 発熱材
5 静電気障害防止材
6 導電性物質
7 不織布容器
8 低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム
9 直鎖状ポリエチレン(L/LDPE)フィルム
10 低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム
11 直鎖状ポリエチレン(L/LDPE)フィルム
13 袋材
21 試験装置
23 絶縁板
24 カーペット
25 作業台
26 絶縁シート
27 電極
28 プローブ
29 電位計
31 人体帯電圧測定用プローブ
32 リード線
33 金属ドアノブ
Claims (2)
- 容器の内部に発熱材を収納したカイロであって、
接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質により設けられて、当該カイロを前記接地体に近接または接触したときに前記帯電体の帯電電荷を当該カイロを介して前記接地体に通電し放電する静電気障害防止材を前記容器である袋材の一方面又は両面に備え、前記容器は、合成樹脂フィルム、紙、不織布、織布の少なくとも1種類以上からなるシート体により構成された袋材であり、前記シート体は、接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質を練り込んで形成した繊維を用いて通気性の調整された不織布によって構成したことを特徴とする静電気障害防止カイロ。 - 容器の内部に発熱材を収納したカイロであって、
接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質により設けられて、当該カイロを前記接地体に近接または接触したときに前記帯電体の帯電電荷を当該カイロを介して前記接地体に通電し放電する静電気障害防止材を前記容器である袋材の一方面又は両面に備え、前記容器は、合成樹脂フィルム、紙、不織布、織布の少なくとも1種類以上からなるシート体により構成された袋材であり、前記シート体は、通気性の調整された不織布の表面に接地体と当該カイロを保持する人である帯電体とが当該カイロを介して通電しやすい導電性物質を蒸着してなるものであることを特徴とする静電気障害防止カイロ。
Priority Applications (1)
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