プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、プリンタ/ファックス/複写機複合機等の各種画像形成装置としては、記録液(例えばインク)の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(印字ヘッド)をキャリッジに搭載して、このキャリッジを被記録媒体(以下「用紙」というが、材質を紙に限定するものではなく、また、記録媒体、記録紙、転写材などとも称される。)の搬送方向に対して直交する方向にシリアルスキャンさせるとともに、被記録媒体を記録幅に応じて間歇的に搬送し、搬送と記録を交互に繰り返すことによって被記録媒体に画像を形成(記録、印刷、印字、印写も同義で使用する。)するシリアル型画像形成装置、或いは、ライン型の記録ヘッドを搭載したライン型画像形成装置がある。
このような液体吐出ヘッドを用いる画像形成装置又はこのような画像形成装置におけるヘッド駆動装置ないしヘッド駆動方法として、例えば、特許文献1には、複数種類の駆動波形に各々対応する複数の波形データを予め記憶する記憶手段を備え、描画信号に基づいて何れかの波形データを記憶手段から順次読み出して、アナログ信号の駆動波形に変換してインク吐出ヘッドに供給するようにした描画装置が記載されている。
特開2004−255789号公報
また、特許文献2には、n個の圧電素子によって一定駆動周期Tでノズルからインク滴の吐出、非吐出が可能なヘッドであって、駆動周期T内における吐出時の圧電素子への駆動電圧波形の時間的に電圧値の変動する変動部と一定値となる定常部を個別に発生する波形発生手段を有し、各圧電素子に対して前記波形発生手段の信号を選択的に印加可能な信号切り替え手段を有し、印字信号に応じて信号切り替え手段を制御して各圧電素子に駆動電圧波形を印加するヘッド駆動方法が記載されている。
特開2001−129991号公報
このように液体吐出ヘッドを用いる画像形成装置において、階調再現を行なうために、1駆動周期内で1ないし複数の液滴を吐出させて飛翔中又は着弾位置で合体させることによって大きさの異なる液滴を形成することが知られている。
一般的には、液体吐出ヘッドから吐出する滴の多値制御を行なうヘッド駆動装置ないしヘッド駆動方法としては、特許文献3に記載されているように、一吐出周期(一駆動周期、一印字周期ともいう。)内の駆動波形を複数のパルス(駆動信号)から構成し、与えられた画像データを吐出データ(駆動データ)にデコードして階調値に応じて所要の駆動信号を選択して液体吐出ヘッドの圧力発生手段に印加するものが一般的である。
特開平10−8102号公報
このようなヘッド駆動方法を実現するヘッド駆動制御装置の概要について図13ないし図16を参照して説明する。
このヘッド駆動制御装置は、共通駆動波形生成回路501から図14(a)に示すように一吐出周期内に大滴、中滴、小滴の3種類の液滴を吐出させるための複数の駆動信号P51、P52、P53を含む共通駆動波形を生成してヘッド駆動装置であるヘッドドライバ502に出力する。
ヘッドドライバ502は、制御ロジック503と、レベルシフタ504と、アナログスイッチ505とを含み、ノズル毎の吐出滴を表す吐出データと図14(c)、(e)、(g)に示すような滴種毎の滴制御信号M0〜M3(非吐出の滴制御信号M3は図示を省略)を受けて、アナログスイッチ505のオン/オフ(開閉)を制御する。
アナログスイッチ505はオン状態にあるとき、共通駆動波形生成回路501からの共通駆動波形を各チャンネルの圧電素子506に印加し、オフ状態のときには圧電素子506に蓄えられた電荷を維持するように充放電電流経路を遮断する。
このヘッドドライバ502のアナログスイッチ505は、例えば図16に示すように、一対のPチャンネルのトランジスタ521及びNチャンネルトランジスタ522を有し、トランジスタ521、522のゲートはインバータ回路523、524により駆動されており、インバータ523、524はレベルシフタ504の信号により駆動される。レベルシフタ504は、制御ロジック503から出力されるスイッチの状態を指示する5Vないし3.3Vのチャンネルの信号レベルを増幅するものである。図14の回路構成では、レベルシフタ504の出力AがL(ロー)レベル、出力BがH(ハイ)レベルでアナログスイッチ505がオン状態となる設定である。なお、アナログスイッチ505を構成するトランジスタサイズは出力電流と出力負荷の応答時間遅れを考慮して設計されている。
ここで、アナログスイッチ505の開閉(オン/オフ)は、実際の滴制御信号の入力遷移タイミングから一定の遅れ時間を経て切り替わることになる。遅れ時間は、アナログスイッチ505を構成するトランジスタサイズ及びインバータ回路の出力駆動能力により決定されるが、遅れ時間を小さくするためには、インバータ回路のトランジスタサイズを大きくすれば良いが、過渡的な電流値が大きくなる等の問題があるため必要最小限にとどめる必要がある。ここでは、滴制御信号の状態遷移から実際に時間tswを経てアナログスイッチの状態遷移が起こるよう設定されているとする。
図14(a)に示す共通駆動波形中の電位V1は中間電位であり圧電素子がオフ状態にある場合に保たれている電位であり、各パルスの始まりと終わりの電位レベルである。例えば、大滴の吐出データが入力されたチャンネルには区間T51,T52の駆動信号P51、P52が選択されるように同図(c)に示すような大滴制御信号M0が入力されている。
制御ロジック502は、大滴が指示されているチャンネルに対して滴制御信号がHレベルのときに当該ノズルのアナログスイッチ505がON状態となるように制御を行なう。より具体的には、時刻t51でオン状態に遷移し、時刻t53までオン状態を維持したオフ状態に遷移する大滴制御信号M0を出力する。
ここで、切り替えタイミングにおける動作の詳細について図15を参照して説明する。図15は時刻t53付近での大滴、中滴を吐出するチャンネルの出力電位とアナログスイッチ505の状態を示すものである。
図15(a)に示すように、時刻t3より前に共通駆動波形が中間電位V1に向けて電圧上昇中のとき、大滴を吐出するチャンネルの出力は、図15(b)に示すように共通駆動波形より遅れて電圧が上昇する。これはアナログスイッチ505のON抵抗と出力負荷である圧電素子の容量成分による遅れである。
そして、共通駆動波形が中間電位V1に達すると電圧レベルは一定のまま維持される。電圧レベルが一定になってからも、大滴吐出のチャンネル出力の電位は上昇を続け、中間電位V1とほぼ同じと看做せるレベルになってから時刻t53となり、図15(c)に示すように大滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチ505の状態をOFF状態にするように大滴制御信号M0がLレベルに遷移する。このLレベルの指示を受けてから時間tsw経過後に、図15(c)に示すように大滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチ505はOFF状態へと切り替わる。
一方、時刻t53では、小滴の滴制御信号M2もアナログスイッチ505をON状態にするように遷移する。小滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチ505も図15(e)に示すように時刻t53から時間tsw経過後にOFF状態からON状態へと遷移する。共通駆動波形は時刻t53から時間tsw経過後に小滴を吐出するための遷移を開始する。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図、図2は同機構部の平面説明図である。
この画像形成装置は、フレーム1を構成する左右の側板1A、1Bに横架したガイド部材であるガイドロッド2とステー3とでキャリッジ4を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ5によって駆動プーリ6Aと従動プーリ6B間に架け渡したタイミングベルト7を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ4には、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッド11k、11c、11m、11yからなる記録ヘッド11を複数のインク吐出口(ノズル)を形成したノズル面11aのノズル列を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に配列し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。なお、ここでは独立した液滴吐出ヘッドを用いているが、各色の記録液の液滴を吐出する複数のノズル列を有する1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。また、色の数及び配列順序はこれに限るものではない。
ここでは、記録ヘッド11は上述したように各色の液滴を吐出する別個の4個のヘッド11k、11c、11m、11yで構成し、各ヘッド11k、11c、11m、11yには図3に示すようにそれぞれ液滴を吐出する複数のノズルnを並べて配置してなるノズル列を2列(各ノズル列をノズル列NA、NBとする。)有する構成としている。これに限らず、図4に示すように、1つの記録ヘッド11に、各色の液滴を吐出するそれぞれ2列のノズル列11kA、11kB、11cA、11cB、11mA、11mB、11yA、11yBを配置した構成することもできるし、ブラックインクを吐出する1又は複数のノズル列を有するヘッドと、カラーインクを吐出する各色で1又は複数のノズル列を有するヘッドとで構成することもできる。
記録ヘッド11を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として備えたものを使用している。
この記録ヘッド11にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル:FPCケーブル)12を介して接続している。
また、キャリッジ4には、記録ヘッド11に各色のインクを供給するための各色のサブタンク15を搭載している。この各色のサブタンク15には各色のインク供給チューブ16を介して、カートリッジ装填部9に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填9にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット17が設けられ、また、インク供給チューブ16は這い回しの途中でフレーム1を構成する後板1Cに係止部材18にて保持されている。
一方、給紙トレイ20の用紙積載部(圧板)21上に積載した用紙22を給紙するための給紙部として、用紙積載部21から用紙22を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)23及び給紙コロ23に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド24を備え、この分離パッド24は給紙コロ23側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙22を記録ヘッド11の下方側に送り込むために、用紙22を案内するガイド部材25と、カウンタローラ26と、搬送ガイド部材27と、先端加圧コロ29を有する押さえ部材28とを備えるとともに、給送された用紙22を静電吸着して記録ヘッド11に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト31を備えている。
この搬送ベルト31は、無端状ベルトであり、搬送ローラ32とテンションローラ33との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ34によって帯電(電荷付与)される。
この搬送ベルト31としては、1層構造のベルトでも良く、又は複層(2層以上の)構造のベルトでもよい。1層構造の搬送ベルト31の場合には、用紙32や帯電ロー34に接触するので、層全体を絶縁材料で形成している。また、複層構造の搬送ベルト31の場合には、用紙22や帯電ローラ34に接触する側は絶縁層で形成し、用紙22や帯電ローラ34と接触しない側は導電層で形成することが好ましい。
1層構造の搬送ベルト31を形成する絶縁材料や複層構造の搬送ベルト31の絶縁層を形成する絶縁材料としては、例えばPET、PEI、PVDF、PC、ETFE、PTFEなどの樹脂又はエラストマーで導電制御材を含まない材料であることが好ましく、体積抵抗率は1012Ωcm以上、好ましくは1015Ωcmなるように形成する。また、複層構造の搬送ベルト31の導電層を形成する材料としては、上記樹脂やエラストマーにカーボンを含有させて体積抵抗率が105〜107Ωcmとなるように形成することが好ましい。
帯電ローラ34は、搬送ベルト31の表層をなす絶縁層(複層構造のベルトの場合)に接触し、搬送ベルト31の回動に従動して回転するように配置され、軸の両端に加圧力をかけている。この帯電ローラ34は、体積抵抗率が106〜109Ω/□の導電性部材で形成している。この帯電ローラ34には、後述するように、ACバイアス供給部(高圧電源)から例えば2kVの正負極のACバイアス(高電圧)が印加される。このACバイアスは、正弦波や三角波でもよいが、方形波の方がより好ましい。
また、搬送ベルト31の裏側には、記録ヘッド11による印写領域に対応してガイド部材35を配置している。このガイド部材35は、上面が搬送ベルト31を支持する2つのローラ(搬送ローラ32とテンションローラ33)の接線よりも記録ヘッド11側に突出させることで搬送ベルト31の高精度な平面性を維持するようにしている。
この搬送ベルト31は、副走査モータ36によって駆動ベルト37及びタイミングローラ38を介して搬送ローラ32が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。なお、図示しないが、搬送ローラ32の軸には、スリットを形成したエンコーダホイールを取り付け、このエンコーダホイールのスリットを検知する透過型フォトセンサを設けて、これらのエンコーダホイール及びフォトセンサによってホイールエンコーダを構成している。
さらに、記録ヘッド11で記録された用紙22を排紙トレイ40に排紙するための排紙部として、搬送ベルト31から用紙22を分離するための分離爪41と、排紙ローラ42及び排紙コロ43とを備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット51が着脱自在に装着されている。この両面ユニット51は搬送ベルト31の逆方向回転で戻される用紙22を取り込んで反転させて再度カウンタローラ26と搬送ベルト31との間に給紙する。また、この両面ユニット51の上面は手差しトレイ52としている。
さらに、キャリッジ4の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド11のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構61を配置している。この維持回復機構61には、記録ヘッド11の各ノズル面11aをキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)62a〜62d(区別しないときは「キャップ62」という。)と、ノズル面11aをワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード63と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け64などを備えている。ここでは、キャップ62aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ62b〜62dは保湿用キャップとしている。
また、キャリッジ4の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け68を配置し、この空吐出受け68には記録ヘッド11のノズル列方向に沿った開口69などを備えている。
また、図1に示すように、キャリッジ4には用紙22の有無を検知するための媒体検知手段である赤外線センサ(センサの種類は、赤外線センサに限定するものではない。)からなる濃度センサ71を設けている。また、この濃度センサ71はキャリッジ4がホーム位置にあるときに記録領域(画像形成領域)側(搬送ベルト31側)に位置する側で、記録ヘッド11よりも用紙搬送方向上流側に設けている。
さらに、キャリッジ4の前方側には、スリットを形成したエンコーダスケール72を主走査方向に沿って設け、キャリッジ4の前面側にはエンコーダスケール72のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ73を設け、これらによって、キャリッジ4の主走査方向位置を検知するためのリニアエンコーダ74を構成している。
次に、この画像形成装置における記録ヘッドを構成する液滴吐出ヘッドの一例について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図6は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び液室106、液室106にインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図6では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル12を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。なお、このノズル板103の表面が前述したノズル面34aとなる。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液滴吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
以上のように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙22が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙22はガイド25で案内され、搬送ベルト31とカウンタローラ26との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド27で案内されて先端加圧コロ29で搬送ベルト31に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、後述するACバイアス供給部から帯電ローラ34に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト31が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト31上に用紙32が給送されると、用紙22が搬送ベルト31に静電力で吸着され、搬送ベルト31の周回移動によって用紙22が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ4を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド11を駆動することにより、停止している用紙22にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙22を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙22の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙22を排紙トレイ40に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト31を逆回転させることで、記録済みの用紙32を両面給紙ユニット51内に送り込み、用紙22を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ26と搬送ベルト31との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル31で搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ40に排紙する。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7のブロック図を参照して説明する。
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU211と、CPU211が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F206と、記録ヘッド11を駆動制御するためのデータ転送手段を含むヘッド駆動制御部207、キャリッジ4側に設けた記録ヘッド11を駆動するためのヘッド駆動装置であるヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ5を駆動するための主走査モータ駆動部210と、副走査モータ36を駆動するための副走査モータ駆動部211と、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、リニアエンコーダ74、ホイールエンコーダ236からの検出パルス、環境温度を検出する温度センサ215からの検出信号、及びその他の各種センサからの検知信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM202にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
ヘッド駆動制御部207は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROM202に格納されてCPU201で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び増幅器等で構成される駆動波形生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形をヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド11の1行分に相当する画像データに基づいてヘッド駆動制御207から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド11のアクチュエータ手段(前述したヘッド構成では圧電素子121)に対して印加することでヘッド11を駆動する。
主走査モータ駆動部210は、CPU201側から与えられる目標値とリニアエンコーダ74からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づいて制御値を算出して内部のモータドライバを介して主走査モータ5を駆動する。
同様に、副走査モータ駆動制御部211は、CPU101側から与えられる目標値とホイールエンコーダ136からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づいて制御値を算出して内部のモータドライバを介して副走査モータ36を駆動する。
次に、ヘッド駆動制御部207及び本発明に係るヘッド駆動装置であるヘッドドライバ28の構成の一例について図8を参照して説明する。
ヘッド駆動制御部207は、上述したように、1吐出周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、画像データ(印字データ)、図示しない転送クロック、ラッチ信号、滴制御信号を出力するデータ転送部302とを備えている。滴制御信号M0〜M3(非吐出制御信号M3は図示を省略している。)は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ316の開閉を滴毎に指示する信号であり、共通駆動波形の吐出周期に合わせて選択すべき波形でHレベルに状態遷移し、非選択時にはLレベルに状態遷移する。
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データを入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、画像データと制御信号をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ316とを備えている。
このアナログスイッチ316は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データと制御信号をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログ316がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
このアナログスイッチ316は前述した従来構成のアナログスイッチと同様にCMOSアナログスイッチで構成している。すなわち、図9に示すように、一対のPチャンネルのトランジスタ321及びNチャンネルトランジスタ322を有し、トランジスタ321、322のゲートはインバータ回路323、324により駆動されており、インバータ323、324はレベルシフタ314の信号により駆動される。レベルシフタ314の出力AがL(ロー)レベル、出力BがH(ハイ)レベルでアナログスイッチ316がオン状態となる設定である。また、アナログスイッチ315の開閉(オン/オフ)は、実際の滴制御信号M0〜M2の入力遷移タイミングから一定の遅れ時間を経て切り替わることになり、滴制御信号M0〜M2の状態遷移から実際に時間tswを経てアナログスイッチ316の状態遷移が起こるよう設定している。CMOSアナログスイッチとすることで低コスト化を図れる。
また、このヘッドドライバ208には、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M2の立下りエッジ(選択終了タイミング)を検出するエッジ検出手段であるエッジ検出回路317と、このエッジ検出回路317の出力に基づいて滴制御信号の立下りエッジを所定時間遅延させてデコーダ313に出力させる遅延設定手段である遅延設定回路318とを備えている。
次に、このヘッドドライバ208の動作について図10以降をも参照して説明する。
まず、駆動波形生成部301からは、図10(a)に示すように、一吐出周期内に、基準電位(中間電位)V1から立下り(液室容積を拡大する方向)、所定のホールド時間を経た後基準電位V1に向けて立ち上がる(液室容積を収縮する方向)、複数のパルス(駆動信号)P1、P2、P3を含む共通駆動波形を出力する。
ここで、パルスP1、P2で2個の液滴を吐出させて飛翔中に合体させることで大滴を形成させ、また、パルスP2の波形要素は立下り電位をパルスP1よりも低くすることでパルスP2だけで中滴を吐出できるようにし、また、パルスP3の波形要素は立下り電位をパルスP2よりも低くし、かつ、段階的に立ち上げることで、パルスP3だけで小滴を吐出できるようにしている。
また、駆動波形生成部301からは、大滴を選択するときには図10(b)、(c)に示すようにパルスP1、P2に対応する区間T1、T2でHレベルになる大滴制御信号M0を、中滴を選択するときには図10(e)、(f)に示すようにパルスP2に対応する区間T2でHレベルになる中滴制御信号M1を、小滴を吐出させるときには図10(h)、(i)に示すように区間T3でHレベルになる小滴制御信号M2を出力する。
ここで、各制御信号M0、M1、M2のLレベルからHレベルへの状態遷移及びHレベルからLレベルへの状態遷移(選択開始又は終了を指示するタイミング)は、各駆動パルスの連結部分(中間電位V1となる部分)とし、かつ、駆動パルスが電圧上昇して中間電位V1となった直後に設定している。この場合、区間T1の時間を前述した図14の区間T51の時間よりも短く設定することになる。
そして、ヘッドドライバ208のエッジ検出回路317はこれらの制御信号M0、M1、M2のHレベルからLレベルへの状態遷移(選択終了を指示するエッジ)を検出し、遅延設定回路318はエッジ検出回路317が制御信号M0、M1、M2のエッジを検出してから所定時間rdだけエッジを遅延させて、つまり選択終了のタイミングを遅らせてデコーダ313に出力する。これにより、デコーダ313に入力される制御信号M0、M1、M2のHレベルからLレベルへの遷移で指示された選択終了のタイミングは、実際には所定時間tdだけ遅延したものとなる。
ここで、遅延時間tdは、アナログスイッチ315のON抵抗と出力負荷の圧電素子121の容量による駆動信号の遅れ時間を考慮した値にあらかじめ設定している。
次に、図11を参照して図10の時刻t3付近の動作の詳細について説明する。この図10は、時刻t3付近での大滴、中滴を吐出するチャンネルの出力電位とアナログスイッチ315の状態を示すものである。
図11(a)に示すように、時刻t3より前に共通駆動波形のパルスP1が中間電位V1に向けて電圧上昇中のときに、図11(b)に示すように大滴を吐出するチャンネルの出力(応答波形)は共通駆動波形より遅れて電圧が上昇する。これは、アナログスイッチ315のON抵抗と出力負荷である圧電素子121の容量成分による遅れである。
そして、共通駆動波形のパルスP1が中間電位V1に達する(t3からtd経過後)と、大滴制御信号M0はHレベルからLレベルに状態が遷移する(立ち下がる)、つまり、当該大滴を吐出させるアナログスイッチ315をOFF状態にする選択終了を指示した状態になる。このとき、上述したようにエッジ検出回路317と遅延設定回路318によって大滴制御信号M0の立ち下がりエッジが遅延され、実際にはさらにtswが経過した時、アナログスイッチ315の状態をON状態からOFF状態にするように、遅延設定回路318の出力がHレベルからLレベルに遷移する。
これにより、大滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチ315は図11(c)に示すように、遅延された大滴制御信号M0のHレベルからLレベルの状態遷移(選択終了)の指示を受けてから時間tsw経過後にOFF状態へと切り替わることになる。
一方、時刻t3では、小滴制御信号M2もアナログスイッチ315をON状態にするように状態が遷移する。この小滴制御信号M1のLレベルからHレベルへの立ち上がり(状態遷移)に対しては遅延が行なわれないので、図11(e)に示すように小滴吐出のチャンネルのアナログスイッチ313は時刻t3から時間td経過後にOFF状態からON状態へと遷移する。共通駆動波形は時刻t3から時間td経過後に小滴を吐出するための遷移を開始する。
したがって、大滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチの選択終了の状態遷移と小滴を吐出するチャンネルのアナログスイッチの選択開始の状態遷移がずれる、つまり、駆動信号を選択するための選択タイミングは、駆動信号の選択開始と駆動信号の選択終了とで異なるタイミングとなり、同時にスイッチングする回路数が少なくなる。
このように、一吐出周期内に入力される複数の駆動信号を含む駆動波形から所要の駆動信号を選択するための選択タイミングが選択開始と選択終了とで異なることによって、同時にスイッチングする回路数が少なくなり、放射ノイズや過渡的な電流増加を抑制することができて、ノズル数の増加にも対応することができ、記録速度の高速化、高画質化を図ることができる。
この場合、液体吐出ヘッドから吐出させる滴の大きさ毎にスイッチ手段の開閉を指示する滴制御信号を入力し、この滴制御信号の選択終了を指示するエッジ(状態遷移)を検出するエッジ検出手段と、このエッジ検出手段の検出結果に応じてスイッチ手段に対する滴制御信号の選択終了を指示する状態遷移を遅延させる遅延手段とを備えて、駆動信号の連結部分に対応する1箇所の選択切り替えタイミングを遅延させることで選択開始のタイミングと選択終了のタイミングを異ならせることによって、ヘッド駆動装置に対する信号線数を増加することなく、簡単な構成で選択開始のタイミングと選択終了のタイミングを異ならせることができる。
ここで、アナログスイッチ315を構成する前述した図9のトランジスタを駆動するインバータ323、324の駆動能力を変更し、ON状態からOFF状態へと遷移するまでの遅延時間Tswoffと、OFF状態からON状態へと遷移するときの遅延時間tswonの間に、次の(1)式の関係が成立するように構成することもできる。
このようにアナログスイッチを構成することによって、上述したエッジ検出回路や遅延設定回路を設けないでも、アナログスイッチの状態遷移は図11で説明したのと同様になり、更に回路構成が簡単になる。
次に、共通駆動波形を構成するパルス(駆動信号)の傾きが緩い場合には、遅延設定回路318の遅延量を少なくすることもできる。この場合の動作について図12を参照して説明する。
ここで用いている共通駆動波形は、図12(a)に示すように、図10に示す共通駆動波形の区間T2における立ち上がり電圧の遷移よりも緩やかな遷移の波形要素としている。このとき、大滴を吐出するチャンネルの応答波形と共通駆動波形との差は、図10の共通駆動波形を用いた場合に比べて小さくなり、中間電位(基準電位)V1に達する時間も図10の波形と比べて短くなる。
ここで、遅延設定回路318は、td>td1となる遅延設定を行なっておくことにより、結果として(td−td1)だけ中間電位V1を維持する時間が短くなり、駆動波形を短くすることが可能となる。この場合には、遅延量を予め選択波形ごとに決めておき、その都度制御部側から遅延量を遅延設定回路318に与えるようにすれば良い。
つまり、選択終了のタイミングは、選択された駆動信号の終了直前の電圧遷移状態によって異なることになる。これにより、圧電素子とアナログスイッチのON抵抗による出力駆動電圧と共通駆動波形との電圧差を考慮して波形選択タイミングを選べるので、波形が短くなり高速化を図ることができる。
なお、上記実施形態ではプリンタ構成の画像形成装置を例にして説明したが、プリンタ/FAX/複写機を複合したマルチファンクションタイプの画像形成装置にも同様に適用することができる。また、インク以外の記録液、液体を使用する画像形成装置にも同様に適用することができる。