JP4624811B2 - 履物の本底及び履物 - Google Patents

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Description

本発明は、歩行速度変化に対応して、歩きやすく疲れにくい歩行が得られる履物の本底、該本底を備えた履物に関する。
履物の歩行しやすさは、中足趾節関節部に対応する部位の屈曲性に依存するが、例えば特許文献1に記載された履物では、中敷きの母趾部に対応する部位に軟質材料、第2乃至第5趾部に対応する部位に硬質材料を用いて運動性を良好にしている。
また、特許文献2に記載された履物の本底では、硬質材料と軟質材料を上下二層を成すように組み合わせて爪先が屈曲しやすいようにしている。
さらに、特許文献3に記載された履物では、底面に第2趾部の付け根部分から第5趾部の付け根部分に沿って略L字形の溝を延設し、さらに底面における土踏まずの前縁に対応する部位に安定区域を形成するための横方向に延びる溝を設けることにより、前足部の屈曲性の向上を図っている。
特開平02−114904号公報 実公平02−23126号公報 実登平05−4724号公報
歩行時における中足趾節関節部の運動は、踵接地時に軽度背屈、足底接地時に中間位、踏み切り時に最大背屈するのが生理的であるが、この底屈背屈運動をできる限り阻害しない履物が理想的である。
スポーツ用の靴では、本底の中足趾節関節部が屈曲しやすいように、本底の全体または一部に軟質材料を用いたものが存在するが、例えば高さ3cm以上のヒールを備えた婦人用パンプス靴(以下、パンプスと記す)のようなヒールの高い履物では見当たらない。これは、本底の中足趾節関節部が屈曲しやすいという機能性よりも、硬い本底により形崩れを防止して美的外観を優先していることによる。
従来、例えばパンプスのようなヒールの高い履物は、中足趾節関節を屈曲しやすくして歩行に適するように設計されておらず、ファッションの一部として見せるためのものありながら、実際には、様々な場面で使用され、通常の歩行ばかりでなく、ゆっくり歩いたり速く歩いたりと歩行速度が変化するため、中足趾節関節部の屈曲しづらさにより踵が脱け出たり、運動力伝達効率が悪くて疲れやすい等の問題が生じていた。
通常の歩行速度において、足部が接地して踏み切りするまでの間、足底圧力中心(COP : Center Of Pressure、以下COP)の軌跡は、図2に示す7のように踵部から足部外側を通り、足幅を外側から内側へと横切るように進んで母趾部12の先端へと移動し、中足趾節関節部6における本底の屈曲は、通常の歩行速度におけるCOP軌跡9となる。
歩行速度が上昇するにしたがってCOPの軌跡は、8のように次第に中心部へと収束し、中足趾節関節部6における本底の屈曲は、通常の歩行速度におけるCOP軌跡9となるが、特にパンプスでは中足趾節関節部6が屈曲しやすくした歩行に適した靴として設計されていないため、この屈曲性が悪く、下肢の筋負担が増加して疲労度が増すといった問題が生じていた。
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、変化する歩行速度に対応して生理的屈曲を行い、歩きやすく疲れにくい履物の本底、及び該本底を備えた履物を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一の素材を用いて一体形成された履物の本底であって、
前記履物の本底の底面は、
足の第2末節骨,第2中節骨,第2基節骨,第2中足骨頭部から第3中足骨の中間部側に沿ってく字型に屈曲して設けられた中央溝と、
前記足の中足趾節関節部に沿って第1中足骨側の側端から前記中央溝と交差して第5中足骨側の側端まで設けられた速歩用屈曲誘導溝と、
前記中央溝と前記速歩用屈曲誘導溝との交差部位から該速歩用屈曲誘導溝よりも後方で前記足の中足趾節関節部に沿いながら前記第5中足骨側の側端まで設けられた通常歩行用屈曲誘導溝と、
を有することを特徴とする履物の本底である
また、請求項2記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の履物の本底において、
前記履物の本底の底面は、前記足の第2中足骨頭部と第3中足骨頭部とに対応する領域に前後方向を卵形状に窪ませて地面に接しないように設けられた除圧部を有することを特徴とする履物の本底である
また、請求項3記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2記載の発明の本底を備えたことを特徴とする履物である。
また、請求項4記載の発明は、上記した請求項3記載の発明の履物において、ヒールの高さが3cm以上であることを特徴とする履物である
請求項1記載の履物の本底によれば、履物の本底の底面は、中央溝と、速歩用屈曲誘導溝と、通常歩行用屈曲誘導溝と、を有していることにより、歩行速度が変化しても上記した溝ごとにそれぞれの目的に応じて生理的屈曲に近似した方向へ屈曲が補助誘導されるため、歩きやすく疲れにくい歩行を得ることができる。この際、中央溝は、歩行時の内外側の運動方向を補助誘導できる。また、通常の歩行速度に対応した通常歩行用屈曲誘導溝と、速い歩行速度に対応した速歩用屈曲誘導溝とを備えることにより、各歩行速度に対応した効果をより確実に得ることができる。
また、請求項2記載の履物の本底によれば、請求項1記載の履物の本底において、履物の底面は、除圧部を有していることにより、上記した請求項1記載の効果が得られる他に、体重負荷に対する地面からの反作用としての圧力が第2中足骨頭部と第3中足骨頭部に集中しなくなるために、胼胝が生じにくくなると共に、従来の履物を長期間使用することによって既に生じている胼胝を改善することができ、これに伴う疼痛を軽減させることができる。
また、請求項3記載の履物によれば、上記した請求項1又は請求項2記載の発明の本底を備えているので、歩行時における足の生理的な運動を阻害せず、歩行速度が上昇しても歩きやすく、疲れにくくなる
また、請求項4記載の履物によれば、上記した請求項3記載の発明の履物において、ヒールの高さが3cm以上であるので、上記した請求項3記載の効果が顕著となる
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態である靴の本底(左足用)の底面図、図2は第1の実施形態の作用効果の説明図であり、左足の底面から見た骨格及びCOP軌跡、図3は図1の本底と左足の骨格との位置関係を示す図、図4は図1の本底を使用したパンプスを斜め下方から見た斜視図である。
図2によれば、通常の歩行速度において、足部が接地して踏み切るまでの間、足底圧力中心(Center Of Pressure、以下COPと記す)の軌跡は、矢印7のように踵部から足部外側を通り、足幅を外側から内側へと横切るように進んで母趾部12の先端とへ移動し、歩行速度が上昇するにしたがってCOPの軌跡は次第に中心部側へ収束し、矢印8のようになる。
エネルギー効率の良い歩行とは、足の底面から垂直上方に向けて身長の約55%の高さの位置にある重心点の移動範囲が小さいことであり、足部においてはCOP軌跡の横方向移動が中心側に収束することにより達せられる。このため歩行速度が上昇すると、エネルギー効率を良くしようとCOPが矢印8の方向に変化するために、下肢の筋は通常歩行速度よりも筋負担が増加して疲労度が増す。
また踏み切り時には中足趾節関節部6より後方は接地しておらず、接地している前足部の底屈力が歩行の推進力となるため、この屈曲部である中足趾節関節部6が屈曲しやすければ運動伝達効率がよい。さらにこの部位の屈曲は歩行速度によって変化し、通常歩行では9の屈曲線、速歩では10の屈曲線にしたがって行われることにより、生理的屈曲に近似するので運動伝達効率がよく、歩きやすく疲れにくい歩行を得ることができる。
本底の表面は滑り止めのためにエンボス加工等をしてもよい。
図1及び図3において、屈曲線9に沿って設けた円弧状の通常歩行用屈曲誘導溝1、屈曲線10に沿って設け、本底をほぼ幅方向に横断する速歩用屈曲誘導溝2は、それぞれ深さ0.5乃至1.5mm程度とし、中足趾節関節部6の屈曲を補助誘導する。くの字型に屈曲した中央溝3は深さ0.5乃至1.5mm程度とし、歩行時の内外側の運動方向を補助誘導する。
本発明の本底の素材は、ゴム、発泡ラテックスなど、靴の本底に通常用いられている素材でよい。
本実施形態を構成する前部5、後部4、及びその間の部分は、一体形成されることが、強度および外観上好ましい。
本発明の本底は板状で一様の厚みを持ち、パンプス用には3乃至5mm程度、婦人用カジュアルシューズもしくは紳士靴用には5乃至15mm程度の厚みとするのが好ましい。
図4は本発明の本底を用いたパンプスの例であるが、通常歩行用屈曲誘導溝1及び速歩用屈曲誘導溝2は中足趾節関節部6の生理的屈曲位置に合致させるため、履物のサイズに応じて本底の大きさも適切に増減させることが必要である。
歩行速度が変化すると履物の本底の屈曲部位が変化するが、本発明の本底はこれを補助誘導する溝を備えていることにより、生理的屈曲に近似した屈曲を行わせるため、歩きやすく疲れにくい歩行を得ることができる。
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図5は第2の実施形態である靴の本底(左足用)の底面図、図6は図5の本底に設けた除圧部と左足の骨格との位置関係を示す図である。
図5に示すように、本実施形態では、第2中足骨頭部13(図6参照)及び第3中足骨頭部14(図6参照)に対応する部位に、深さ1乃至3mm程度の窪み状の除圧部11を設けている。
例えばパンプスのように前足部よりも踵部の方が高くなっていると、体重負荷は前足部に集中して足骨格を保持する横アーチが消失し、本来体重を受ける骨形態になっていない第2中足骨頭部13と第3中足骨頭部14に圧力が集中するので、生体防御反応として当該部位に胼胝を生じ、疼痛の発生や歩きにくくなるといった問題がある。
このため第2中足骨頭部13と第3中足骨頭部14において、体重負荷に対する地面からの反作用としての圧力を集中させないため、除圧部11を設けて地面に接しないようにして当該部分を除圧すると、胼胝を生じにくくするばかりか、従来の履物を長期間使用することによって既に生じている胼胝を改善することができ、これに伴う疼痛を軽減させることができる。
なお、上記実施形態では、先端部に丸みを持たせた形状の本底及び履物を例に挙げて説明したが、先端部が尖った形状のもの等、いかなる形状のものにも本発明を適用することができる。その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
本発明の第1の実施形態である靴の本底(左足用)の底面図である。 第1の実施形態の作用効果の説明図であり、左足の底面から見た骨格及び方向時のCOP軌跡である。 図1の本底と左足の骨格との位置関係を示す図である。 図1の本底を使用したパンプスの斜め下方から見た斜視図である。 本発明の第2の実施形態である靴の本底(左足用)の底面図である。 図5の本底に設けた除圧部と左足の骨格との位置関係を示す図である。
符号の説明
1 通常歩行用屈曲誘導溝
2 速歩用屈曲誘導溝
3 中央溝
4 後部
5 前部
6 中足趾節関節部
11 除圧部
12 母趾部
13 第2中足骨頭部
14 第3中足骨頭部

Claims (4)

  1. 一の素材を用いて一体形成された履物の本底であって、
    前記履物の本底の底面は、
    足の第2末節骨,第2中節骨,第2基節骨,第2中足骨頭部から第3中足骨の中間部側に沿ってく字型に屈曲して設けられた中央溝と、
    前記足の中足趾節関節部に沿って第1中足骨側の側端から前記中央溝と交差して第5中足骨側の側端まで設けられた速歩用屈曲誘導溝と、
    前記中央溝と前記速歩用屈曲誘導溝との交差部位から該速歩用屈曲誘導溝よりも後方で前記足の中足趾節関節部に沿いながら前記第5中足骨側の側端まで設けられた通常歩行用屈曲誘導溝と、
    を有することを特徴とする履物の本底。
  2. 前記履物の本底の底面は、前記足の第2中足骨頭部と第3中足骨頭部とに対応する領域に前後方向を卵形状に窪ませて地面に接しないように設けられた除圧部を有することを特徴とする請求項1記載の履物の本底。
  3. 請求項1又は請求項2記載の本底を備えたことを特徴とする履物
  4. ヒールの高さが3cm以上であることを特徴とする請求項3記載の履物。
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