JP4624292B2 - 繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体 - Google Patents

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  • Consolidation Of Soil By Introduction Of Solidifying Substances Into Soil (AREA)

Description

この発明は、建築又は土木構造物の山留め壁・基礎等の地下構造に使用する、繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体の技術分野に属する。
地盤改良体は、現地の発生土にセメント系硬化材を加えて混練し固化させて製造する。一般的には撹拌翼を備えたロッドを軟弱地盤中へ貫入しながら、地上のプラントで製造したセメント系硬化材をロッド先端部から噴出させて掘削土壌と撹拌・混合することにより、軟弱地盤を補強した地盤改良体を製造する。或いは地上のサイロからセメント粉体を空気搬送して、前記攪拌翼を備えたロッドの先端から噴射させて、掘削土壌と攪拌・混合して地盤改良体を製造することも行われる。地盤改良体は、地盤支持力の向上、液状化の防止、あるいは山留め壁、止水壁など地下構造体の構築に広く利用されている。地盤改良体は、圧縮強度が0.5〜4MPa程度であり、地盤の種類に応じて、所要の強度が得られるセメント量をセメント系硬化材として混入する。
この地盤改良体は、最大荷重を超えると、脆性的な破壊を起こす。特に曲げや引っ張りを受ける場合は、最大耐力後に一気に破壊に至る。このため安全を考慮して、室内試験の圧縮強度の1/3〜1/10程度が許容圧縮応力度として用いられる。引っ張り強度は、前記許容圧縮応力度の0.1〜0.2倍、せん断強度は0.3倍として設計することが多い。
地盤改良体の力学特性を改善する従来技術として、たとえば下記の特許文献1には、鋼繊維を混入した繊維補強ソイルセメントとその施工方法が開示されている。この従来技術は、強度レベルが10MPaと一般的な地盤改良体に比べて強度の大きいものについて、鋼繊維補強により、曲げ強度を圧縮強度の15〜30%高められる、との記載が認められる。水セメント比100%のセメント系硬化材に鋼繊維を1〜3%混入することも記載されている。
下記の特許文献2には、直径10〜20ミクロン、繊維長さ4〜10mm、破断強度1500〜2500MPaのビニロン繊維を用いた繊維補強ソイル固化体、或いは直径25〜50ミクロン、繊維長さ10〜20mm、破断強度800〜1500MPaのビニロン繊維を用いた繊維補強ソイル固化体を製造すると、圧縮強度に対する曲げ強度や引っ張り強度が向上し、靱性も向上できると記載されている。
地盤改良のソイル固化体は、地盤の土質に応じて、所要強度が得られるセメント量を決定して施工するのが一般的である。セメント量には幅があるが、例えば砂層では80〜300Kg/m 程度、粘性土では100〜300Kg/m 程度、シルトでは100〜300Kg/m 程度のセメント量である。しかし、特許文献2の開示技術は、全ての土質についてセメント量は350Kg/mと記載しているので、一般的に実施されている地盤改良体とは異質な調合となっている。セメント量が非常に多いことに加えて、高価なビニロン繊維を使用している点が注目される。
下記の特許文献3には、上記特許文献2に記載された繊維補強ソイル固化体の施工法が開示されている。即ち、特許文献2に記載された繊維補強ソイル固化体の施工法では、セメント系硬化材の粘度が非常に低く、繊維の分散が困難であるので、特許文献3の発明は、水セメント比の下限値(60〜80%)で粘土の高い状態のセメント系硬化材に増粘剤、分散剤を加える。その上で、繊維を体積比率にして1%以下0.5%以上混入して分散させる。その後、加水して所要の水セメント比とし、所要の圧縮強度を発揮させると記載されている。
特開平6−228942号公報 特開2001−48609号公報 特開2003−232032号公報
上記特許文献1に開示された繊維補強ソイルセメントとその施工方法は、水セメント比100%のセメント系硬化材に、鋼繊維を1〜3%混入すると記載しているが、水セメント比100%のセメント系硬化材に、体積比で1%を超える鋼繊維を混入して圧送することは甚だ困難である。曲げ強度の向上についても、圧縮強度の30%の向上を期待できると記載されている。しかし、地盤の種類によっては、地盤改良体の10%程度の体積比しかセメント系硬化材を使用しないため、補強繊維は、地盤改良体の体積に対して0.1〜0.3%しか混入されず、十分な繊維補強効果を期待できない。また、最大耐力が向上したとしても、最大耐力以降の靱性改善効果の有無は不明であり、靱性改善効果は検証できないままである。
上記特許文献2に開示された繊維補強ソイル固化体は、いずれの土質に対しても、セメント量は350Kg/m と記載されており、一般的に実施されている地盤改良とは異質な調合となっている。地盤の土質に応じて、所要強度が得られるセメント量を決定して施工するのが一般的である。それにしても特許文献2の開示技術は、セメント量が非常に多い上に高価なビニロン繊維を使用するので、仮に高性能の繊維補強ソイル固化体が得られるとしても、地盤改良費用は大幅に高価になり、経済的ではない。
上記特許文献3に開示された繊維補強ソイル固化体の施工方法は、水セメント比が低く粘度が高いセメント系硬化材へ、繊維を体積比で1%以下0.5%以上混入して分散させるため、増粘剤や分散剤の使用が不可欠であるし、その後は均一に練り混ぜるため水を供給して所要の水セメント比にする必要があるので、現場での実施が面倒である。
本発明の目的は、安価で簡便・確実に地盤改良体の靱性を向上させることができ、従来技術品に比較して一層大きな曲げ強度と引っ張り強度が得られる、高強度、高靱性セメント系地盤改良体を提供することである。
本発明の次の目的は、現在広い分野で大量に使用されており、安価で経済性に優れているポリプロピレン繊維を使用し、しかも練り混ぜ撹拌することにより、繊維が互いに絡み合って大きな繊維補強効果を発揮しマトリックスを補強して成る高強度、高靱性セメント系地盤改良体を提供することである。
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体は、
土壌とセメント系硬化材を混練して製造する地盤改良体において、
破断強度が200〜1200MPaで、練り混ぜ撹拌することにより繊維と繊維が相互に絡み合うように繊維1の太さに対する長さの比率(アスペクト比)を1000以上に調整したポリプロピレン繊維Pを、地盤改良体の体積比にして0.4〜2%混入して土壌と混練しマトリックス2を補強して成ることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体において、
ポリプロピレン繊維Pの太さは、直径が100ミクロン以下であることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体において、
ポリプロピレン繊維Pは、両端部に、繊維径より10ミクロン以上大きいこぶ状又は塊状のアンカー部を有することを特徴とする。
(発明の理論的根拠と産業上の利用可能性)
ポリプロピレン繊維は、表面が疎水性であり、破断強度は200〜1200MPa程度、ヤング係数は2〜15GPa程度であり、他の有機繊維と比較して機械的性質に劣る。そのためポリプロピレン繊維は、地盤改良体の繊維補強効果を得るためには大量に使用しなければならないと考えられてきた。
しかし、本発明では、このポリプロピレン繊維を地盤改良体の体積比にして0.4〜2%混入することで繊維補強効果を発揮させ、セメント系地盤改良体の靱性を大幅に向上させ、曲げ強度、引っ張り強度も大幅に向上させることに成功した。
即ち、一般的な繊維補強の原理は、マトリックス(この明細書で、マトリックスとは、セメント系地盤改良体組織の母材の意味で使用する。)と繊維との付着力や摩擦抵抗で応力を繊維に伝達して曲げ強度、引っ張り強度、靱性を高めると考えられている(図1B、図2Bを参照)。図1B、図2Bにおいて、符号1が繊維、2がマトリックス、3がひび割れを指す。
しかし、本発明では、地盤改良体の中で繊維1が屈曲した状態となり互いに絡み合うように混入されると、引き抜き時の抵抗が増大し同繊維1に応力を伝達してマトリックス2を補強する(図1B)という事実、効果に着眼している。
セメント系地盤改良体に関する一般の繊維補強現象は、作用する応力が、マトリックスと繊維の間の付着力を介して繊維に応力が伝達されることにより生ずる。
マトリックスと繊維との間には十分な付着力が作用しており、ひび割れが発生するまでは、繊維とマトリックスが一体的に挙動すると仮定すると、歪みが同じでもヤング係数が大きい繊維ほど大きい応力を負担する。このためマトリックスがひび割れを生ずる歪みに達した際の応力は、ヤング係数が大きい繊維を用いるほどに高くなる。繊維補強マトリックスにひび割れが入る際の断面平均応力σcは、マトリックス単体のひび割れ発生応力σmに、繊維体積比Vf、繊維のヤング係数Ef、マトリックスのヤング係数Emを用い、繊維の配向による低減率を無視すると、下記の数式1で評価できる。
(数式1) σc =σm {1+Vf(Ef/Em−1)}
鋼繊維やビニロン繊維は、地盤改良体のマトリックスに対して、ヤング係数がそれぞれ250倍と50倍程度であり、繊維体積比Vf=1%とすると、ひび割れ発生時の断面平均応力σcはそれぞれ、3.5倍と1.5倍程度と予測される。一方、ポリプロピレン繊維は、ヤング係数が3倍程度であり、ひび割れ発生時の断面平均応力σcは1.02倍にすぎない。
また、繊維補強体の終局強度σuは、繊維の終局強度をσfuとして、下記の数式2で評価できる。
(数式2) σu =σfu・Vf
鋼繊維やビニロン繊維は、地盤改良体のマトリックスに対しては、終局強度がそれぞれ1000MPaと2000MPa倍程度である。繊維体積比Vf=1%として、単純化のために繊維の配向による低減率を無視して終局強度σuを求めると、それぞれ10MPaと20MPaとなる。一方、ポロプロピレン繊維は、終局強度が500〜1000MPa程度であり、同繊維による補強体の終局強度σuは5〜10MPaとなる。
しかし、実際に試験を行ってみると、作用応力が大きくなるとマトリックスと繊維の間の付着が切れ繊維が抜け出しはじめるため、繊維の抜けだし時の摩擦抵抗のみが繊維に伝達されて外力に抵抗するにすぎないことが確認された。結局、強度やヤング係数の大きな繊維を使用しても、上記した期待通りのひび割れ強度や終局強度は得られないことがわかった。これを逆にいうと、強度やヤング係数が低く、繊維補強のためには大量に(例えば3%以上)も添加しないと効果が生じないと考えられてきたポリプロプピレン繊維であっても、強度の低いセメント系地盤改良体の補強には比較的少量の添加でも補強に有効であることを見出し、高靱性化を実現できることが確認されたのである。
かくして本発明者らは、セメント系地盤改良体は、セメントコンクリートに比較すると構造組織が粗であるため、マトリックスと繊維の界面に隙間や空隙があり、作用応力の低い時点から付着切れが発生し、部分的に繊維が抜け出してしまい、上記数式1の関係が成り立たないことから、ひび割れ発生応力に繊維とマトリックスのヤング係数比の影響がほとんど無いことを見出した。
最も重要なことは、繊維の強度やヤング係数よりも、最大応力以降には摩擦により繊維に応力を伝達しやすいことである。この現象により繊維補強マトリックスの曲げ強度、引っ張り強度、靱性の向上が可能になるのである。
繊維の強度は、摩擦抵抗で生ずる応力によって破断しなければよいと考えられる。地盤改良体自体の強度が0.5〜4MPa程度として、繊維補強マトリックスの引っ張り応力度1MPaを実現できるとしても、繊維体積比1%で繊維強度は100MPa、繊維体積比0.5%としても必要繊維強度は200MPa程度であればよい。ヤング係数が大きい繊維は、早い段階で繊維とマトリックスの付着破壊が発生し、繊維強度を有効に発揮できず、補強の効率は低下してしまう。
本発明者らは、地盤改良体の組織構造および地盤改良体マトリックスと繊維の界面について研究した結果、マトリックスには10%以上の空隙が存在し、マトリックスと繊維の界面には脆弱で5〜10ミクロン程度の空隙が存在することがわかった。そのため繊維径が小さいとマトリックスと繊維の接触度が不十分となるので、応力を伝達するためには繊維直径が5ミクロン以上であるべきことを確認した。
次に、マトリックスと繊維との間の摩擦抵抗によって高い(又は効率の良い)繊維補強効果を得るためには、繊維直径を上記した条件下で適切な太さにしても、図1のように直線状の繊維では、マトリックス2と繊維1の間に十分大きな摩擦抵抗を得られない。図2のように繊維1が屈曲され、繊維と繊維が相互に絡み合う条件を整えることが、引き抜き時の摩擦抵抗を増すことにすこぶる有効であることが確認された。マトリックス2と繊維1との界面で摩擦抵抗を得るため、図2のように繊維1を屈曲させた状態にするには、アスペクト比(繊維の太さに対する長さの比率)が大きいほど有利である。繊維の材質とアスペクト比が同じで、施工時の撹拌力が同じであれば、繊維直径が太くなるにつれ、繊維を屈曲させて相互に絡み合わせた状態にすることが難しくなる。現状、工業的に安価な繊維を大量生産(連続成形)する場合、単糸の直径は100ミクロン程度が限界と知られている。一方で、地盤改良体の施工時の撹拌性、地盤改良体マトリックスの流動性、繊維を混入した後の流動性などを考慮すると、引き抜きに対して十分な摩擦抵抗が得られるように屈曲させるための繊維直径の上限は、100ミクロンを上限とする必要がある。好ましくは50ミクロン以下であるといえる。
繊維直径が10〜50ミクロンで、繊維直径に対する繊維長さの比率(アスペクト比)が1000以上のポリプロピレン繊維を、地盤改良体の体積に対する体積比0.4〜2%で混入すると、セメント系地盤改良体の繊維補強効果が特に高いことを確認できた。前記アスペクト比を1200程度にすると、高い繊維補強効果が得られることも確認した。
以上の繊維補強効果を得る繊維の材質は、破断強度が200〜1200MPa程度、ヤング係数が2〜15GPaと比較的低強度で、低剛性の繊維でよく、工業的に広く使用されて安価に入手できるポリプロピレン繊維が適合することが判明した。
その他、セメント系地盤改良体のマトリックス2と繊維1との間の界面における引き抜き摩擦抵抗を増大させる他の方法として、繊維の表面に凹凸を設けたり、繊維の両端にこぶ状又は塊状のアンカー部(引っ掛かり部)を設けることが有効的であることも確認された。繊維1とマトリックス2の界面には5〜10ミクロンの空隙や脆弱部が存在するが、繊維径に少なくとも10ミクロン加えた大きさのこぶ状又は塊状のアンカー部を両端に設けることにより、繊維の引き抜き抵抗を増大してマトリックス2を補強する効果の大きいことを確認できた。
請求項1〜3に記載した発明に係る繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体は、地盤改良体に不足する引っ張り強度、曲げ強度、靱性を効果的に大幅に向上させることができ、優れた力学特性を発揮させることが出来る。
したがって、セメント系地盤改良体についての優れた力学特性を有効活用する設計法を採用することで、自立山留めや液状化防止を目的とする地盤改良体断面の低減化(経済設計)、あるいは中層、高層建物への直接基礎形式の採用、更に杭状改良体や壁杭の水平支持力の増大による地下構工法の合理化を達成することが可能となる。
土壌とセメント系硬化材を混練して製造する地盤改良体に、破断強度が200〜1200MPaで、練り混ぜ撹拌することにより繊維と繊維が相互に絡み合うように繊維の太さに対する長さの比率(アスペクト比)を1000以上に調整したポリプロピレン繊維Pを、地盤改良体との体積比にして0.4〜2%混入して土壌と混練しマトリックス2を繊維補強する。
前記ポリプロピレン繊維Pの太さは、直径が好ましくは50ミクロン以上、100ミクロンまでとする。
また、ポリプロピレン繊維Pは、両端部に、繊維径より10ミクロン以上大きいこぶ状又は塊状のアンカー部を有するものを使用するのが好ましい。
下記の表1中に示した実施例1〜12は、高炉セメントBを使用し、土質種類(粘土、シルト、砂)に応じて、3〜4MPaの圧縮強度が得られるようにセメント量を170〜300Kg/m と定めた水セメント比100%のセメント系硬化材を、それぞれの土質土壌と混練すると共に、破断強度が647MPa、935MPaである2種類のポリプロピレン繊維(表1中の繊維種類記号P)を混入し練り混ぜ撹拌した。
ちなみに、ポリプロピレン繊維をセメント系硬化材および各土質土壌へ混入し練り混ぜ撹拌する手法としては、地盤改良装置の撹拌掘削翼で掘削した原位置土壌中へセメント系硬化材の注入管とは別系統の例えば少し太めの空気圧搬送管を通じて圧送供給して直接混入する直接方式と、原位置の掘削土壌を掘削して一旦は地上へ排出し、地上の混練プラントに収容した上で、セメント系硬化材と上記ポリプロピレン繊維を混入して混練する地上方式などを実施条件に応じて選択的に実施する。実施例1〜12は後者の地上方式を採用して実施した場合を示す。
Figure 0004624292
ポリプロピレン繊維Pに関しては、上記練り混ぜ撹拌の結果において、繊維と繊維が相互に絡み合うようにする条件として、繊維の太さに対する長さの比率(アスペクト比)を、1000、1200、1770、1786に調整したポリプロピレン繊維を用いた。そして、ポリプロピレン繊維は、地盤改良体に対する体積比にして0.5%、又は1.0%混入し、前記土壌と混練してマトリックス2を繊維補強するセメント系地盤改良体を製造した。
かくして製造したセメント系地盤改良体の繊維分散状態は、およそ図2A、Bに示すように、各繊維1はそれぞれ湾曲状態となり、しかも繊維と繊維が相互に絡み合った状況でマトリックス2中に内在することを確認できた。
他方、表1中に示した比較例1〜17は、同じく高炉セメントBを使用し、土質の種類(粘土、シルト、砂)に応じて、3〜4MPaの圧縮強度が得られるようにセメント量を170〜300Kg/m と定めたセメント系硬化材を、各土質土壌と混練したものである。
比較例1、7、14、17は、従来用いられている地盤改良体で、繊維を混入していない。その他の比較例へ混入した繊維は、ビニロン繊維とナイロン繊維およびポリプロピレン繊維の3種類である。
更に詳細には破断強度960MPaのナイロン繊維、同1950MPaのビニロン繊維、同311〜935MPaのポリプロピレン繊維をそれぞれ選択使用して練り混ぜ撹拌した。各繊維の太さに対する長さの比率(アスペクト比)は、210〜800とした。これらを体積比にして1.0%混入して、前記土壌と混練しマトリックスを補強するセメント系地盤改良体を製造した。もっとも、各比較例2〜6、8〜13、および15、16の繊維分散状態は、およそ図1A、Bに示すとおりで、各繊維1、1は直線状態を保ち、繊維と繊維が絡み合うことなく、マトリックス2中に分散した状況であることを確認した。
表1中の右欄に併記した各実施例1〜12および各比較例1〜17の力学性能における曲げ、および引っ張りの判定結果を示す◎印、○印と×印および△印の意味内容は、判定例を図3に「曲げ・引っ張り・靱性の判定例」として示したとおりである。
即ち、最大耐力に至った直後に破断して全く靱性のないものを×印とし、最大耐力に達した直後に、破断はしないが、耐力が大きく低下するものを△印、最大耐力に達した後に歪みが2%に至った時点でも最大耐力の50%以上を保持するものを○印、そして、歪みが2%を超えても耐力低下が殆ど見られず靱性が優れているものを◎印で表している。
更に、図4〜図9は、各実施例および比較例における繊維のアスペクト比の影響を示したグラフである。このグラフによれば、セメント系地盤改良体における強度、靱性に関する改善効果を、次のように評価することが出来る。
先ず、図4の場合はシルトに水セメント比100%のセメント系硬化材を170Kg/m 混入したが、繊維の混入は無い比較例1をマトリックスとして、これに直径17ミクロンで長さ20mm(アスペクト比が1190)であるポリプロピレン繊維Pを体積比で1%混入した本発明の実施例1と、一方、アスペクト比が210〜600の範囲で、ポリプロピレン繊維P、ビニロン繊維B、ナイロン繊維Nをそれぞれ体積比1%混入した比較例2〜6の引っ張り試験および曲げ試験における応力と歪みの関係を示している。
本発明の実施例1は、大きな歪みを生じた時点でも高い耐力を保持しており、優れた靱性を発揮することがわかる。
図5の場合は、粘性土に水セメント比100%のセメント系硬化材を200Kg/m 混入したが、繊維の混入は無い比較例7をマトリックスとして、これに繊維強度が935MPa、直径17ミクロンのポリプロピレン繊維Pを、アスペクト比400、600、800、1000、1200、1786として、地盤改良体に対する体積比1%混入した試験材の引っ張り試験および曲げ試験における応力と歪みの関係を示している。
アスペクト比が1000の本発明実施例4は、歪みが2%に達した時点でも耐力低下は50%未満を維持している。更に大きなアスペクト比1200、1786の本発明実施例3と2は、一層優れた靱性を発揮することがわかる。
図6は、図5と同じ比較例7のマトリックスに、繊維強度が647MPa、直径11ミクロンのポリプロピレン繊維Pを用いて、アスペクト比と靱性改善効果を確認したグラフである。
図5と同様に、アスペクト比が1000の本発明実施例7は、歪みが2%に達した時点でも耐力低下は50%未満を維持している。更に大きなアスペクト比1200、1770の本発明実施例6と5は、非常に優れた靱性を発揮することがわかる。
図7の場合は、シルトに水セメント比100%のセメント系硬化材を200Kg/m 混入したものをマトリックスとし、これに繊維強度が935MPa、直径17ミクロンのポリプロピレン繊維Pを、アスペクト比800、1200、1786として、体積比1%混入した試験材の曲げ試験の応力と撓み/載荷スパンの関係を示している。アスペクト比が1200、1786の本発明実施例9、11と8の場合は、繊維混入量が0.5%でも、歪みが2%に達した時点の耐力低下は50%未満を維持しており、優れた靱性を発揮することがわかる。
最後に、図8は、砂に水セメント比100%のセメント系硬化材を300Kg/m 混入した比較例17と、前記比較例17をマトリックスとし、これに繊維強度が935MPa、直径17ミクロン、アスペクト比1200のポリプロピレン繊維Pを、地盤改良体に対する体積比1%混入した実施例12の曲げ試験の応力と撓み/載荷スパンとの関係を示している。
以上のとおり、本発明によれば、ポリプロピレン繊維Pを用いて、いかなる土壌でも、優れた靱性と高強度が得られることが明らかである。
以上に本発明を実施例と試験例に基づいて説明したが、もとより本発明は実施例と試験例の構成に限定する意味ではない。本発明の目的と要旨を変更しない範囲で、当業者が必要に応じて通常行う設計変更や、応用、利用の範囲を含むものであることを、念のため申し添える。
A・Bは、一般的な繊維補強における、繊維分散状態と応力伝達メカニズムを模式的に表した説明図である。 A・Bは本発明の実施例における、繊維分散状態と応力伝達メカニズムを模式的に表した説明図である。 曲げ・引っ張り・靱性の判定図を示す。 A・Bは本発明実施例1と比較例1〜6の引っ張り試験結果と曲げ試験結果を示すグラフである。 A・Bは本発明実施例2〜4と比較例7〜10の引っ張り試験結果と曲げ試験結果を示すグラフである。 A・Bは本発明実施例5〜7と比較例7および11〜13の引張り試験結果と曲げ試験結果を示すグラフである。 本発明実施例8、9、11と比較例10、15、16の曲げ試験結果を示すグラフである。 本発明実施例12と比較例17の曲げ試験結果を示すグラフである。
符号の説明
1 繊維
2 マトリックス
3 ひび割れ

Claims (3)

  1. 土壌とセメント系硬化材を混練して製造する地盤改良体において、
    破断強度が200〜1200MPaで、練り混ぜ撹拌することにより繊維と繊維が相互に絡み合うように繊維の太さに対する長さの比率(アスペクト比)を1000以上に調整したポリプロピレン繊維を、地盤改良体の体積比にして0.4〜2%混入して土壌と混練しマトリックスを補強して成ることを特徴とする、繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体。
  2. ポリプロピレン繊維の太さは、直径が100ミクロン以下であることを特徴とする、請求項1に記載した繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体。
  3. ポリプロピレン繊維は、両端部に、繊維径より10ミクロン以上大きいこぶ状又は塊状のアンカー部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載した繊維補強による高強度、高靱性セメント系地盤改良体。


































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