JP4624100B2 - 胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット - Google Patents

胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット Download PDF

Info

Publication number
JP4624100B2
JP4624100B2 JP2004513486A JP2004513486A JP4624100B2 JP 4624100 B2 JP4624100 B2 JP 4624100B2 JP 2004513486 A JP2004513486 A JP 2004513486A JP 2004513486 A JP2004513486 A JP 2004513486A JP 4624100 B2 JP4624100 B2 JP 4624100B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
promoter
cells
cell
embryonic stem
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004513486A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2003106673A1 (ja
Inventor
健一郎 小財
知之 高橋
Original Assignee
健一郎 小財
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 健一郎 小財 filed Critical 健一郎 小財
Publication of JPWO2003106673A1 publication Critical patent/JPWO2003106673A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4624100B2 publication Critical patent/JP4624100B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0603Embryonic cells ; Embryoid bodies
    • C12N5/0606Pluripotent embryonic cells, e.g. embryonic stem cells [ES]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2510/00Genetically modified cells

Description

本発明は、胚性幹細胞から分化した目的細胞を効率良く確実に選別して単離又は可視化できる方法及びこれに用いる単離又は可視化用キットに関する。
胚性幹(Embryonic Stem、ES)細胞(以下,ES細胞ともいう)は、初期胚から分離された細胞で、培養系を操作することにより血球系、心筋、骨格筋、神経などいかなる臓器、細胞にも分化し得る全能性を有するため、これを利用して発生学などの生物学、先端医学の分野などでの研究の進展が大いに期待されている。このような研究のためには、ES細胞から分化した目的細胞を効率良く、確実に選別し、単離する方法の確立が最も重要な課題の一つである。
ところで、従来、分化した目的細胞が特異的な膜蛋白を発現する場合は、その膜蛋白を指標にフローサイトメトリーで目的の細胞を単離することが行われている(非特許文献1、穂特許文献2参照)
しかし、この方法が適応できるのは、細胞特異的な分子が膜蛋白として細胞外に発現している場合に限られるため、血球系や血管系などの一部の細胞、臓器に応用が限定されるのが実情であった。
このため心筋細胞のように特異的な膜蛋白が知られていない多くの細胞に対する方策としては、目的の細胞に特異的に発現する分子(遺伝子)のプロモーター領域下にマーカー遺伝子をつないだ組換え遺伝子をES細胞に安定導入し、分化した細胞で特異的に発現するそのマーカーを指標に細胞を選別し、単離する方法が報告されている(非特許文献3参照)。この方法は、組織特異的に発現する遺伝子のプロモーターを使うことにより、薬剤耐性遺伝子を細胞特異的に発現させてその薬剤を用いて目的細胞のみを選別する方法、あるいは特異的な波長の励起光で発色する分子を細胞特異的に発現させることによりフローサイトメトリーで目的の細胞を選別して単離する方法である。
守田陽平, リンパ球サブセットに対する多重染色解析:中内啓光監修、田中弥生編, フローサイトメトリー自由自在(細胞工学 別冊),秀潤社, p60-66 (1999) Yamashita J, Itoh H,Hirashima M, Ogawa M, Nishikawa S, Yurugi T, Naito M, Nakao K, Nishikawa S. Flk1-positive cells derived from embryonic stem cells serve as vascular progenitors. Nature 408(6808): p92-6 (2000)) Andressen C,Stocker E, Klinz FJ, Lenka N, Hescheler J, Fleischmann B,Arnhold S, Addicks K. Nestin-specific green fluorescent protein expression in embryonic stem cell-derived neural precursor cells used for transplantation. Stem Cells 19(5):419-24 (2001)
しかし、これらの方法は細胞特異的なプロモーターの活性(発現強度)に著しく左右されてしまうという大きな問題点があり、その応用と効用は非常に限定的であった。すなわち、細胞特異的なプロモーターは特異性はあっても活性が弱い場合、分化した目的細胞を選別、単離するのに十分な強度のマーカー遺伝子の発現が得られず目的細胞を選別できないため、この方法が適応できるものは非常に限定されるというのが実情であった。また、実験を計画をする段階で確実にこの方法が有用であるか否かを予想することは困難で、予想される結果が不確かであるにも拘わらず目的細胞に分化させて単離するためにES細胞株を目的毎に1つ1つ作成し、分化した目的細胞の1つ1つについて検証をしなければならず、多大な労力と時間を使いながら結果として目的細胞を単離できないことがあった。
本発明は、活性(発現強度)が低い組織特異的なプロモーターでもマーカー遺伝子を機能させるために十分な量の発現を可能とすることにより、各種動物のES細胞を用いた医学、生物学、バイオテクノロジー分野など様々な研究分野や再生医療において利用可能な分化した目的細胞を確実、簡便かつ迅速に選別単離する方法又は選別可視化する方法及びそれに用いる単離又は可視化用キットを提供する。
本発明は、恒常的強発現プロモーターである第1のプロモーター、リコンビナーゼ認識配列を両端に有する遺伝子、胚性幹細胞から分化する目的細胞の選択マーカー遺伝子の順に5'側から配置され、第1のプロモーターが前記選択マーカー遺伝子を発現させる第1の組換えDNAが導入されたベクターを未分化状態の胚性幹細胞に導入し、得られた第1の組換えDNAが安定導入された胚性幹細胞を分化誘導し、この分化誘導過程の胚性幹細胞に、胚性幹細胞から分化する目的細胞に対して特異的に発現する第2のプロモーター、リコンビナーゼ発現遺伝子の順に5'側から配置された第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターを導入することを特徴とする胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法である。
本発明は、恒常的強発現プロモーターである第1のプロモーター、リコンビナーゼ認識配列を両端に有する遺伝子、胚性幹細胞から分化する目的細胞の選択マーカー遺伝子の順に5'側から配置され、第1のプロモーターが前記選択マーカー遺伝子を発現させる第1の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターと、胚性幹細胞から分化する目的細胞に対して特異的に発現する第2のプロモーター、リコンビナーゼ発現遺伝子の順に5'側から配置された第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを、分化誘導過程の胚性幹細胞に各々導入することを特徴とする胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法である。
上記の発明において、リコンビナーゼ認識配列が、loxPで、リコンビナーゼ発現遺伝子が、リコンビナーゼCre発現遺伝子でもよい。恒常的強発現プロモーターが、CMVプロモーター又はCAプロモーターでもよい。選択マーカー遺伝子が、蛍光蛋白遺伝子でもよい。第2のプロモーターが、Nkx2.5遺伝子プロモーター又はαMHC遺伝子プロモーターでもよい。
本発明は、第1の組換えDNAが導入されたベクターが導入された未分化状態の胚性幹細胞と、第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを備えた上記の発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法に用いる単離又は可視化用キットである
本発明は、第1の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターと、第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを備えた上記の発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法に用いる単離又は可視化用キットである
本発明は、上記の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法により得られる細胞である。この発明において、細胞が、第2のプロモーターとしてNkx2.5遺伝子プロモ−ターを用いて得られる心筋細胞でもよい。細胞が、第2のプロモーターとしてαMHC遺伝子プロモーターを用いて得られる心筋細胞でもよい。本発明は、前記の細胞を含む組織である。
本発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法は、単離される各種の細胞、組織を用いて、発生学、再生医学、その他の分子生物学的研究に広く有用であるだけでなく、これらの目的細胞を用いた、心筋梗塞、脳硬塞を初めとする種々の難治性疾患への将来の再生医療の開発にも非常に有用である。また、永続的、恒常的に分化した目的細胞から更に分化した細胞をも標識して可視化できるので、分化系統、組織系統が培養皿上で観察、解析することが可能となる。胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的な単離又は可視化は、単離又は可視化用キットを用いることにより一層簡便に行うことができる。
図1は、本発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法を模式的に示す説明図である。 図2は、アデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率を示す蛍光顕微鏡写真像である。(a)フイーダー細胞上で培養したマウスES細胞(R1細胞)の蛍光顕微鏡写真像(b)フィーダー細胞無しで培養したマウスES細胞(D3細胞)の蛍光顕微鏡写真像(c)分化誘導中のマウスES細胞(D3細胞)の蛍光顕微鏡写真像。なお、(a)〜(c)は、MOI100でAd.CMV-LacZを感染させ、x-gal染色したものであり、各蛍光顕微鏡写真像の右上はその位相差顕微鏡写真像を示す。 図3は、アデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率を示すグラフである。(a)各MOIでアデノウイルスベクターによるES細胞(R1細胞)の遺伝子導入効率を示すグラフである。(b)各MOIでアデノウイルスベクターによるES細胞(D3細胞)の遺伝子導入効率を示すグラフである。 図4は、本発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法によりEGFPで可視化されたES細胞の蛍光顕微鏡写真像である。(a)陰性コントロールとして、Ad.CMV-LacZを感染させたもので、EGFPの発現はない。(b)陽性コントロールとして、Ad.CA-LacZを感染させたもので、遺伝子導入効率に一致して、60〜70%位の細胞がEGFPの発現により可視化されている。(c)Ad.Nkx2.5-Creを第4日に感染させ、第6日に観察したもので、目的細胞と思われる細胞が散在して可視化されている。(d)Ad.αMHC-Creを第13日に観察したもので、目的細胞と思われる細胞が可視化されている。 図5は、Ad.CMV-LacZ、Ad.Nkx2.5-Cre及びAd.αMHC-Creの発現を指標に単離された細胞のフローサイトメトリーのチャートである。 図6は、(a)Ad.Nkx2.5-Cre、(b)Ad.αMHC-Creの発現を指標に単離された細胞の免疫細胞染色の蛍光顕微鏡写真像である。(a)左の写真像がEGFP、中央の写真像が目的の蛋白の発現を示しており、上段はSMA、下段はトロポミオシン(TM)で、それぞれに対する特異的な抗体により免疫蛍光染色したものである。また、右の写真像は左の写真像と中央の写真像を重ね合わせた写真像で、EGFPと目的の蛋白が同じ細胞で発現していることを示している。(b)左の写真像がEGFP、中央の写真像が目的の蛋白の発現を示しており、上段はαMHC、下段はアクチニンで(いずれも心筋細胞特異的な分子)、それぞれに対する特異的な抗体により免疫蛍光染色したものである。また、右の写真像は左の写真像と中央の写真像を重ね合わせた写真像で、EGFPと目的の蛋白が同じ細胞で発現していることを示している。 図7は、恒常的強発現プロモーターのCAプロモーター及び組織特異的遺伝子のNkx2.5プロモーターとαMHCプロモーターにより発現したリコンビナーゼCreの電気泳動像を示す。
本発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的分離又は可視化方法は、各種動物に由来するES細胞に適用ができ、例えばマウス、ラット、サル、ヒトなどすでに樹立されている種は勿論のこと、今後樹立されるであろう他の種のES細胞にも用いることが可能であり、ES細胞の動物種、種類により特に限定されない。
ES細胞の取扱いの標準的な方法は、Brigid Hogan他著、山内一也他訳、「マウス胚の操作マニュアル」、近代出版(1997)、あるいは相沢慎一著、「ジンターゲッティング:ES細胞を用いた変異マウスの作製」、実験医学別冊、バイオマニュアルシリーズ8、羊土社(1995)などに記載されている。
本発明に用いる第1の組換えDNAとは、第1のプロモーター、リコンビナーゼ認識配列を両端に有する遺伝子、胚性幹細胞から分化する目的細胞の選択マーカー遺伝子とが5'から順に配置されたものを遺伝子組換え技術により作成したものである。第1のプロモーターとは、選択マーカー遺伝子を十分に発現させられない第2のプロモーターより活性が高く、選択マーカー遺伝子を発現させるに足るプロモーターであれば特に限定されるものではなく、例えばCA(サイトメガロウイルスエンハンサーとニワトリβアクチンプロモーターのハイブリッドプロモーター)プロモーターやCMV(サイトメガロウイルス初期遺伝子エンハンサー・プロモーター)プロモーターなどの恒常的強発現プロモーターが好適である。なお、恒常的強発現プロモーターとは、該プロモーターに繋いだ目的遺伝子をES細胞を初めとするほとんどの細胞に導入した場合、目的の遺伝子を恒常的に強く発現させるプロモーターのことをいう。
リコンビナーゼ認識配列は、特異的なDNA組換え酵素であるリコンビナーゼにより認識される塩基配列であれば特に限定されず、リコンビナーゼにより二つのリコンビナーゼ認識配列で挟まれたDNA鎖の切断、置換、結合というDNAの組換え反応を生じるloxPやFRTなどの特異的な塩基配列をいう。
リコンビナーゼ発現遺伝子は、リコンビナーゼを発現する遺伝子で、loxPを認識するバクテリオファージP1由来のリコンビナーゼCre(Sternberg et al. J. Mol. Boil. Vol. 150, 467-486 (1981))、FRTを認識する酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のリコンビナーゼFLP (Babineau et al., J. Biol. Chem. Vol.260, 12313-12319 (1985))、チゴサッカロマイセス・ルーイのpSR1プラスミド由来のR(Matsuzaki et al., Mol. Cell. Biol. Vol.8, 955-962 (1988)を発現する遺伝子などを代表例として挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
選択マーカー遺伝子は、第2の組換えDNAがES細胞に導入された後、第1のプロモーターにより発現しES細胞から分化した目的細胞を特異的に選別するための指標として用いるもので、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)やGFP(Green Fluorescent Protein)などの発光蛋白遺伝子や種々の薬剤耐性遺伝子を挙げることができるが、選択マーカーとして用い得ればこれらに限定されない。特に、発光蛋白遺伝子は、目的細胞を可視化でき、フローサイトメトリーなどを用いてその選別単離が容易になるのでより好ましい。また、発光蛋白遺伝子は、恒常的強発現プロモーターを用いた場合、分化した目的細胞から更に分化した細胞をも永続的、恒常的に標識して可視化できるので、分化系統、組織系統が培養皿上で観察、解析することが可能となるので、好ましい。
本発明に用いる第2の組換えDNAとは、胚性幹細胞から分化する目的細胞に対して特異的に発現する第2のプロモーター、リコンビナーゼ発現遺伝子が5'から順に配置されたものを遺伝子組換え技術により作成したものである。第2のプロモーターとは、分化する目的細胞でのみ特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域のことである。その例としては、心筋細胞のNkx2.5, MEF-2, GATA-4, 心筋型アクチン、心筋型αミオシン重鎖(α-cardiac myosin heavy chain: 以下、αMHCという)蛋白、ミオシン軽鎖2v(myosin light chain-2v: MLC2v)蛋白、脳の神経細胞のネスチンnestin、脳のグリア細胞のglial fibrillary acidic protein (GFAP)、より未分化な肝細胞のαフェトプロテイン(α-fetroprotein) (AFP)、(成熟した)肝細胞のアルブミンalbumin、骨髄芽細胞のオステオカルシンosteocalcin、膵臓β細胞の膵・十二指腸ホメオボックス遺伝子1pancreatic and duodenal homeobox gene 1 ( PDX-1)、血管(内皮細胞)のflt-1、表皮ケラチン細胞のケラチン14 keratin14 (K14)、骨格筋細胞の筋クレアチンキナーゼmuscle creatine kinaseなどの遺伝子のプロモーターが挙げられる。これらのプロモーターに繋がれたリコンビナーゼ発現遺伝子は、ES細胞がその目的細胞に分化したときに限定してリコンビナーゼを発現する。
ES細胞への第1の組換えDNAあるいは第2の組換えDNAの導入には、それぞれの組換えDNAと共に薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドをエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポゾーム法、DAEデキストラン法などの分子生物学の一般的な方法で導入して、その後、薬剤添加培地で細胞を1-2週間培養することにより、染色体にこれらの組換えDNAが組み込まれ安定かつ永続的に遺伝子を発現するES細胞のクローンを採取して、分化の実験に用いることができる。さらに有用な方法として、第1の組換えDNAあるいは第2の組換えDNAを含む遺伝子導入用ベクターをそれぞれ作成し、これにより簡便かつ非常に効率的にES細胞に組換えDNAを導入することができる。遺伝子導入用ベクターの例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノアソシエートベクター、センダイウイルスベクターなど、非ウイルスベクターとして、カチオニックリポゾーム、HVJリポゾームなどが挙げられるが、これらに限定されない。
次に、本発明の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法の原理を典型的な例を用いて第1図を参照しながら説明する。第1の組換えDNAは、第1のプロモーター(図中、CAプロモーター)、リコンビナーゼ認識配列としてloxP配列、ES細胞から分化した目的細胞の選択マーカーとしてEGFP遺伝子が5'側から順に配置され、2つのloxP配列間には、マーカーのNeo遺伝子とポリAシグナルが配置され、EGFP遺伝子の下流には、ポリAシグナルが配置されている。なお、リコンビナーゼ認識配列間に配置されるマーカーは、Neo遺伝子に限定されるものではなく、様々なマーカー遺伝子を用いることができる。また、ポリAシグナルも特に限定されず、牛成長ホルモンのポリAシグナル、ラビットβ−グロビンポリAシグナルなど様々なポリAシグナルを用いることができる。
また、第2の組換えDNAは、第2のプロモーター(図中、Nkx2.5遺伝子プロモター又はαMHC遺伝子プロモーター)、リコンビナーゼCreの順で5'側から配置されている。リコンビナーゼCreの下流には、ポリAシグナルが配置されている。
第1の組換えDNAと第2の組換えDNAが導入されたES細胞が、目的の細胞に分化誘導されることにより第2のプロモータが発現し、リコンビナーゼCreが作用してloxP配列で囲まれた部分が切り出されると、第1のプロモーターによりEGFP遺伝子が強く発現し、蛍光を指標にして目的細胞の心筋細胞を可視化でき、フローサイトメトリーなどにより簡便かつ容易に選別単離することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は、発明の実質的範囲に包含される限り、上記の実施例に制限されるものではない。なお、比較例、実施例のプラスミド、DNA、各種酵素、大腸菌、培養細胞などを取り扱う遺伝子工学技術ならびに細胞培養技術などは、特に断らない限り、「Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubelら編、(1994), John Wiley & Sons, Inc.」並びに「Culture of Animal Cells; A Manual of Basic Technique, R. Freshney編、第2版(1987), Wiley-Liss」に記載の方法に準じて行った。また特に断りがない限り、ES細胞の培養、取り扱いに関しては前述のBrigid Hogan他著、山内一也他訳、「マウス胚の操作マニュアル」、近代出版(1997)、あるいは相沢慎一著、「ジンターゲッティング:ES細胞を用いた変異マウスの作製」、実験医学別冊、バイオマニュアルシリーズ8、羊土社(1995)に記載の方法、アデノウイルスの一般的な取り扱いに関しては特に断りがない限り、Frank L. Graham著、Manipulation of adenovirus vectors、Chapater 11. p109-p128、;E.J. Murray編、Methods in Molecular Biology, Vol. 7: Gene Transfer and Expression Protocols (1991)、アデノウイルスの作成については、Chen, S-H. et al., Combination gene therapy for liver metastases of colon carcinoma in vivo. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (1995) 92, 2477-2581.、あるいはMizuguchi et al, Human Gene Ther., Vol. 9, 2577-2583, (1998) に記載の方法に準じて行った。
〔比較例〕
以下、従来の胚性幹細胞の単離方法を比較例として記載する。
Nkx2.5遺伝子プロモーターは、Yutzey氏より供与を受けたものを使用した。Yutzeyらは、Nkx2.5遺伝子の5’上流のゲノム解析により、Nkx2.5遺伝子の心筋特異的な発現調節を可能とするプロモーター領域について詳しい検討を行っている(詳細は、Development. Vol.125, 4461-4470 (1998)に記載)。これによると転写開始点より5’上流の-3059bpまで含む領域が、Nkx2.5遺伝子の心筋特異的に十分な発現レベルで発現するための最適なプロモーター領域として働くことが確認されている。ちなみに、これより短い領域、つまり転写開始点より5’上流-959bpまで、あるいは逆にこれより長い領域、つまり転写開始点より5’上流-9000bpでも、心筋特異的に十分な発現レベルでこの下流の遺伝子を発現させることはできないことが上記の論文で示されている。このNkx2.5遺伝子の転写開始点より5’上流の-3059bpの領域、マーカー遺伝子の大腸菌のlacZ遺伝子、SV40 small t-intronとpolyA signalがプラスミド pBlueScript SKに挿入されたpNkx2.5-IA-LacZプラスミドをYutzey氏より供与を受けた(詳細は上記Development. Vol.125, 4461-4470 (1998)に記載)。pNkx2.5-IA-LacZ(論文での記載名は-3059Nkx2.5lacZ)は心筋細胞特異的にLacZ遺伝子を発現することが確認されている。
次いで、プラスミドのpEGFP-C1(クロンテック社、カタログ番号6084-1)から制限酵素のNheIとBclI処理によりEGFP(enhanced green fluorescent protein)遺伝子を切り出し、切り出したEGFP遺伝子の両末端をT4 DNAポリメラーゼIにより平滑化した。pNkx2.5-IA-LacZを制限酵素のSalIで切断し、T4 DNAポリメラーゼIで末端を平滑化し、自己ライゲーションを防ぐためCalf Intestine Phosphatase(CIP)酵素で末端脱リン酸化処理した後、切り出したEGFP遺伝子とT4 DNAリガーゼで反応させライゲーション反応を行い、プラスミドpBS-Nkx2.5-EGFPを作成した。
一方、プラスミドpBS-loxP-Neoは、プラスミドpBS246(旧GIBCO BRL社、現Invitrogen社、カタログ番号10348-019)のリコンビナーゼ認識配列のloxP配列2個の間のマルチクローニングサイト中のHindIII-BamHI間に、5’側よりpGKプロモーター、Neo遺伝子(G418薬剤耐性遺伝子)、bovine growth hormoneのpoly A signalの順で連結された遺伝子を挿入することにより作成した。このプラスミドpBS-loxP-Neoを制限酵素のNotIで切断しCIP処理を行い精製したものと、pBS-Nkx2.5-EGFPをNotIで切り出した遺伝子断片(転写開始点から-3059までのNkx2.5プロモーター、EGFP遺伝子、SV40 small t-intronとpolyA signalが連結された遺伝子)とを、T4 DNAリガーゼで反応させ、pNkx2.5-EGFP-loxP-Neoを作成した。pNkx2.5-EGFP-loxP-Neoは、pBluescriptのバックボーンを持ち、5’側よりNkx2.5遺伝子プロモーター(転写開始点から-3059まで)、EGFP遺伝子、SV40 small t-intronとpolyA signal、loxP配列、pGKプロモーター、Neo遺伝子、bovine growth hormoneのpoly A signal, loxP配列が順に挿入されたプラスミドである。
このプラスミドpNkx2.5-EGFP-loxP-NeoをマウスES細胞株のR1細胞にエレクトロポレーション法(バイオラド社のGene Pulser IIで、0,2mmのcuvetteで150mV、950μFで通電)により遺伝子導入して、翌日より薬剤選択のための抗生剤のG418を150 μg/mlの濃度でLIF(マウスleukemia inhibitory factorの組換え蛋白:旧GIBCO BRL社、現Invitrogen社、商品名ESGRO)添加のES細胞用培地に加え、1-2週間後にコロニーが十分に分離できたところで、この薬剤耐性のES細胞株クローンをとった。3回の実験によりG418耐性のクローンを78個採取した。
尚、ES細胞用培地は、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(high glucose条件, L-glutamine, 110mg/L sodium pyruvateが含有:シグマ社)に、NaHCO3、125μM 2-mercaptoethanol(ナカライ社)、非必須アミノ酸(Invitrogen社)、核酸、20%胎児牛血清(Invitrogen社)、ストレプトマイシン、ペニシリンを加えたものである。なお、ES細胞の未分化能を維持する際はこのES細胞用培地に103 U/mLでLIFを加えて培養し、ES細胞の分化誘導の際はこのES細胞用培地単独でLIFは添加しないで培養する。
これらのクローンES細胞からDNAを抽出し、ゲノミックPCRを行い、EGFPを増幅するために設計したプライマーで25クローン陽性、連結されたNkx2.5遺伝子プロモーターとEGFPを含む領域を増幅するために設計したプライマーで16クローン陽性、さらにこの両者のプライマーセットでいずれも陽性だったものが13クローンであった。少なくともこの13クローンは正しく目的の遺伝子が導入されていると考えられるため、以降の実験にはダブルポジティブのこの13クローンを用いた。
上記の13クローンのES細胞を2つの分化誘導系にのせた。一つの系はES細胞を細胞非接着の皿でLIF非添加のES 細胞用培地で浮遊させて培養することにより、embryoid bodyと呼ばれる初期胚と似た細胞塊が形成された。このembryoid bodyを3日目(LIFを除いた分化誘導開始から3日後)から接着の培養皿に移しLIF非添加のES 細胞用培地で接着状態で培養すると、7日目(LIFを除いた分化誘導開始から7日後)位から14日目位にかけて、生体の心筋細胞のように自己拍動する細胞塊が出現してきた。もう一つの系はST2細胞というマウス間質細胞の上にES細胞をのせてLIF非添加のES細胞用培地で共培養する分化誘導系である。これもLIFを除いてこのST2細胞の上にES細胞をのせて7〜9日後位より、生体の心筋のように自動収縮する細胞塊がところどころに出現してきた。
この2つの分化系に載せて7日後から14日後までの各日の細胞塊からRNAを抽出し、RT-PCR法を行うと、心筋特異的な遺伝子(Nkx2.5、αMHC、MLC2vなど)の発現誘導が確認された。また同時期の細胞塊の免疫染色により筋特異的や心筋特異的な蛋白質(αアクチニン、トロポミオシン、Nkx2.5、MLC2v)などの発現も確認でき、これらの自動収縮する細胞塊が心筋細胞に分化していることが証明された。
一方、この4日後から14日後の心筋に分化した細胞塊から抽出したRNAからEGFP遺伝子のmRNAをRT-PCR法で増幅しても、いずれにおいても陽性の所見はみられなかった。そしてこれらのES 細胞から分化した心筋細胞塊は、いずれのES 細胞クローンから誘導されたものも、蛍光顕微鏡で可視化することも、またセルソーターで単離可能なレベルの明らかなEGFPの発現もみられなかった。前述のように、このNkx2.5遺伝子プロモーター(-3059)は、Yutzeyらが、Development. Vol.125, 4461-4470 (1998)で報告しているものと同様のものであり、このプロモーターに繋いだ遺伝子は、マウスの発生において早期より心臓の予定領域に発現し、心筋細胞に比較的特異的に発現することが確認されたものである。
Yutzeyらが用いたLacZ遺伝子の発現を組織のx-gal染色で検出する方法は酵素反応であるため検出感度は比較的高く、検出に必要なLacZ遺伝子の発現レベルは非常に微量で良いものの、細胞を生きたままで可視化、単離するためにはLacZ遺伝子をマーカー遺伝子として用いることができない。そのため、このような目的にはEGFP遺伝子をマーカー遺伝子として用いるのが一般的であるが、一方EGFPを蛍光顕微鏡で可視化させたりセルソーターで分離するためにはある程度のEGFP遺伝子の発現量が必要である。つまりこの遺伝子が正しく組み込まれて、またES細胞が心筋に分化したにも関わらずEGFPの発現がみられないのは、このNkx2.5遺伝子プロモーターに繋がれた遺伝子は心筋特異的な発現は生じても、EGFPを可視化できるレベルの発現活性を持たないためである。このように、従来法では目的の細胞に分化した心筋細胞をNkx2.5遺伝プロモーターからEGFP遺伝子を発現させることで可視化し、また、セルソーターで単離するという試みはいずれも不可能であった。
〔実施例1〕
5’側より、CMVプロモーター(human cytomegalovirus immediate early promoter)あるいはCAプロモーター(cytomegarovirus enhancer+chicken β-actin promoter)、その下流に2つのloxP配列で囲まれたNeo遺伝子、さらにその下流のマーカー遺伝子にEGFP遺伝子を配置した第1の組換えDNAを含むプラスミドpCMV-loxP-Neo-EGFPならびにpCA-loxP-Neo-EGFPを作成したが、その作成過程を以下に記載する。
まずpcDNA3プラスミド(Invitrogen社)を制限酵素のBclIとBsmIで処理してNeo遺伝子を切り出し、その断端をT4 DNAポリメラーゼI処理により平滑末端化する(インサート)。pBS246プラスミド(旧GIBCO BRL社、現Invitrogen社)を制限酵素のHindIIIとBamHIで切断しCIP処理する(ベクター)。このインサートとベクターの両者をT4 DNAリガーゼで反応させライゲーションすることで、pBS246のloxP配列の間にneo遺伝子が挿入されたプラスミドのpBS-loxP-Neoを得た。
次に、このpBS-loxP-Neoを制限酵素NotIで切り出し、T4 DNAポリメラ ーゼIで処理し、2つのloxP配列とそれに囲まれたNeo遺伝子の遺伝子断片を回収した(インサート)。一方、CMVプロモーターが導入されているプラスミドpIRES-EGFP(クロンテック社、カタログ番号#6064-7)を制限酵素ClaIとBamHIで処理し、MCS(マルチクローニングサイト)、IVS(synthetic intron)、IRES(internal ribosome entry site)を除いたベクター部分を回収し、これをT4 DNAポリメラーゼIで末端平滑化した(ベクター)。このインサートとベクターの両者をT4 DNAリガーゼでライゲーションすることにより、目的の一つのプラスミドpCMV-loxP-Neo-EGFPを得た。
さらにプラスミドpCMV-loxP-Neo-EGFPをBglIIとEcoRIで処理しCMVプロモーター部を除き、T4 DNAポリメラーゼIで断端を平滑末端化、CIP処理をした(ベクター)。一方、コスミドpAdex1Cawt(タカラ社、コード番号6150)をPmeIとSwaIで処理して、CAプロモーター部を切り出し、T4DNAポリメラーゼIで断端を平滑末端化した(インサート)。このインサートと前記ベクターの両者をT4 DNAリガーゼで反応させライゲーションを行い、もう一つの目的プラスミドpCA-loxP-Neo-EGFPを得た。
プラスミドpCMV-loxP-Neo-EGFPあるいはpCA-loxP-Neo-EGFPを別々にES細胞(D3細胞)にエレクトロポレーション法にて遺伝子導入し、150μg/mL G418と103 U/L LIF添加したES細胞用培地にて1-2週間培養することにより、ES細胞クローンを単離した。これらの手技は比較例の項で詳細に記載した通りである。pCMV-loxP-Neo-EGFPを遺伝子導入したクローンを70個、pCA-loxP-Neo-EGFPを59個採取した。
また、5'側より、Nkx2.5プロモーター(-3059)、リコンビナーゼのCre遺伝子、bovine growth hormone poly A signalを配置した第2の組換えDNAを作成し、さらにその遺伝子を含むアデノウイルスベクターAd.Nkx2.5-Creを下記のように作成した。
まずプラスミドpHMCMV6(Mark Kay氏より供与:プラスミドの詳細はH.Mizuguchi and M. Kay: Human Gene Ther vol. 10: 2013-201 (1999)に記載、現在、クロンテック社より販売)をNheIとMunIで処理してCMVプロモーターを除いた後にT4 DNAリガーゼでライゲーションを行った。さらにこのプラスミドをAflIIで切断しT4 DNAポリメラーゼIで断端の平滑末端化を行い(ベクター)、この場所にプラスミドpBS185(旧GIBCO BRL社、現Invitrogen社)よりXhoIとMluIでCre遺伝子を切り出してT4DNAポリメラーゼIで平滑末端化したインサートを、T4 DNAリガーゼでライゲーション反応をおこない挿入し、プラスミドpHMΔp-Creを得た。つまりpHMΔp-Creは、プロモーターを持たず、任意のプロモーターを簡単に挿入するためのマルチクローニングサイトを持ち、その下流にCre遺伝子、bovine growth hormone poly A signalを持つプラスミドである。
比較例で記載したpNXK2.5-IA-LacZをNotIとXbaIで切り出しT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化したNkx2.5遺伝子プロモーター部分(インサート)を、pHMΔp-CreをNotIで切断しT4 DNAポリメラーゼIで平滑末端化しCIP 処理したベクターに、T4 DNAリガーゼでライゲーションし、プラスミドpHM-Nkx2.5-Creを得た。
さらにpHM-Nkx2.5-CreをI-CeuI、PI-SceIで切断したインサート、ならびにアデノウイルスベクタープラスミドpAdHM4(Mark Kay氏より供与:プラスミドの詳細はH. Mizuguchi and M. Kay: Human Gene Ther vol. 10: 2013-201 (1999)に記載)をI-CeuI、PI-SceIで切断したベクターを、T4 DNAリガーゼでライゲーションすることにより、アデノウイルスベクタープラスミドpAdHM4-Nkx2.5-Creを得た。pAdHM4-Nkx2.5-CreをPacIで切断し精製したものを293細胞に遺伝子導入し、10-14日後に出現したアデノウイルスAd.Nkx2.5-Creのプラークを回収し、これを293細胞でウイルスの増幅を行い、CsClの密度勾配法による精製、カラムによる脱塩を行った(方法の詳細は最初に記載した引用文献、著書に記載)。
このAd.Nkx2.5-Creはヒト5型アデノウイルスベクターで、細胞に感染、遺伝子導入後はNkx2.5遺伝子プロモーターの制御下にCre遺伝子を発現する。
また同様の方法でpHMΔp-CreにCAプロモーターを挿入して、同様の方法でアデノウイルスベクターAd.CA-Creを作成した。Ad.CA-Creはヒト5型アデノウイルスベクターで、細胞に感染、遺伝子導入後はCAプロモーターの制御下にCre遺伝子を発現する。CAプロモーターはES細胞を含むほとんどの細胞で、下流の遺伝子を恒常的に強く発現させることができるため、Ad.CA-Creを感染させた細胞はその分化状態に関わらず細胞内で恒常的にCre酵素を発現する。
次に、アデノウイルスベクターのES細胞に対する遺伝子導入効率を調べた。まずCMVプロモーターの制御下にLacZ遺伝子を発現するヒト5型アデノウイルスベクターAd.CMV-lacZを前述の方法で作成した。Ad.CMV-LacZを各MOI(multiplicity of infection;感染可能なウイルス数/細胞数)で感染させ、x-gal染色で陽性細胞の割合を評価したところ、MOIを上げるに従い遺伝子導入効率は上昇した(第2図、第3図参照)。そして R1、D3のいずれのES細胞でも、またフィーダー細胞有り、無しのいずれの状態でも、30 MOIで多くの細胞に遺伝子が導入でき、100から300 MOIで100%のES細胞に遺伝子を導入することができた。しかし、余りにも極端にMOIを上げすぎると細胞障害がみられることもあるため、細胞障害がほとんどみられずに約60-80%の細胞に遺伝子導入ができる30MOIで後述する実験を行った。同様に前述の分化誘導をかけたES細胞に十分量のAd.CMV-LacZを感染させてx-gal染色で評価すると、いずれの分化段階でも、分化誘導後1-14日目のいずれの日でも、大差なく大部分の細胞に遺伝子を導入することができた(第2図c参照)。このようにアデノウイルスベクターを使うことで、ES細胞に簡単に高率にいずれの分化段階でも遺伝子を導入することが確認できた。特に分化誘導中はエレクトロポレーション法などの従来の一般的な遺伝子導入法では遺伝子導入することが困難であるため、アデノウイルスベクターの使用は非常に有用であることが分かった。
第1の組換えDNAが組み込まれたpCMV-loxP-Neo-EGFPが安定導入されたES細胞の70クローンのうち、まず34個をEGFPを増幅する比較例で設計したプライマーセットによるゲノミックPCRを行ったところ、そのうちの31個が陽性であった。またこの31個のES細胞クローンにAd.CA-Creを感染させたところ、4クローンが蛍光顕微鏡による観察で十分な発現強度をもって可視化された(この4クローンはいずれもEGFPのゲノミックPCRで陽性)。つまりゲノミックPCRでEGFP遺伝子の挿入を確認せずとも、直接Ad.CA-Cre感染でスクリーニングする方が、より発現の強いクローンを迅速に選別できるため、以降は得られたES 細胞クローンは直接Ad.CA-Cre感染によるEGFPの発現強度により、目的のクローンを選別することにした。pCMV-loxP-Neo-EGFPが安定導入された残りの34クローンをAd.CA-Cre感染後の(蛍光顕微鏡での観察による)EGFP発現強度でスクリーニングしたところ、11クローンがEGFP強発現、4クローンがEGFP弱発現であった。つまり、pCMV-loxP-Neo-EGFPが安定導入された合計70クローンから15クローン(弱い発現もいれると19クローン)の目的のものを採取できた。
一方、pCA-loxP-Neo-EGFPが安定導入された59クローンのES細胞を、Ad.CA-Cre感染後のEGFP発現で直接スクリーニングしたところ、16クローンがEGFP強発現する目的のものであった。pCMV-loxP-Neo-EGFPとpCA-loxP-Neo-EGFPがそれぞれ安定導入されたES細胞は、いずれもAd.CA-Creを感染しない場合、あるいはCre遺伝子を発現しないコントロールのAd.CMV-LacZの感染をした場合、EGFPの可視レベルの発現はなく問題となるバックグラウンドはなかった。また、Ad.CA-Creを感染させた後のPCMV-loxP-Neo-EGFPとpCA-loxP-Neo-EGFPがそれぞれ安定導入されたES細胞のEGFPの発現レベルは、いずれにおいてもpCA-loxP-Neo-EGFPの方が強かった。これは多くの細胞株で報告されてきたのと同様に、ES細胞においてもCMVプロモーターよりCAプロモーターの方が強発現を誘導できるという、それぞれのプロモーター活性の違いによると思われる。しかしpCMV-loxP-Neo-EGFPが導入されたES細胞でも可視レベルのEGFPの発現が得られ、さらに感度がいいセルソーターでの解析と単離を目的とした実験にはpCMV-loxP-Neo-EGFPでも本質的には問題ないと考えられる。本実験例での以下の分化誘導の実験には、より発現が強く蛍光顕微鏡下での観察がより明確に解析がより容易に行えるという点で、pCA-loxP-Neo-EGFPを用いて行った。
前述のように、pCA-loxP-Neo-EGFPが安定導入されCre酵素の発現後にloxPで挟まれたNeo遺伝子が切り出されてEGFPの強発現が保証された15クローンのES 細胞のうち、3個のクローンを用いてAd.Nkx2.5-Creを用いた分化誘導の実験を行った。前述のAd.CA-Creを用いた予備実験で、Ad.CA-Cre感染1日後より十分に可視化されるレベルのEGFPの発現がみられ、感染2日後で最大の発現レベルに達し、それ以降同レベルのEGFPの持続発現が得られることが確認された。
比較例で既に述べた、embryoid bodyを介した分化誘導系にこの3クローンのES細胞を使用してみた。まず、この分化誘導系でのNkx2.5 mRNAの発現をRT-PCRで毎日調べたところ、分化誘導5日目よりNkx2.5の発現が明らかにみられた。このため分化誘導後4日目に分化中のES細胞にAd.Nkx2.5-Creを30 MOIで感染させた。つまり、1日にLIF非添加のES細胞用培地で培養し非接着状態でembryoid bodyの作成を初め、分化誘導開始後3日目に培養皿に接着させ、4日目にAd.Nkx2.5-Creを30 MOIで感染させた。分化誘導開始後5日目より蛍光顕微鏡下で所々にEGFPが可視化できる細胞が出現し、分化誘導開始後6日目より蛍光顕微鏡下で非常に強い発現レベルのEGFP発現が観察され、このEGFPの発現は以降もずっと見られた(第4図C参照)。6日目、あるいは8日目でトリプシンにより細胞塊をばらばらにし、一個ずつの細胞に十分分離した後、セルソーターにてEGFPを発現する目的細胞を単離した。
このフローサイトメトリーの解析では、Ad.Nkx2.5-Creを感染させた群の陽性率、つまりNkx2.5発現細胞は約2%であった(第5図参照)。一方これに対し、陽性コントロールとしてAd.Nkx2.5-Creの代わりにAd.CA-Creを感染させた群での陽性率は(則ちこれはアデノウイルスが感染しCre遺伝子を導入した細胞の割合を表すものである)、約60%であった(第5図参照)。また一方陰性コントロールとしてAd.Nkx2.5-Creの代わりにAd.CMV-LacZを感染させた群、あるいはアデノウイルスベクターを全く感染させなかった群での陽性率は(則ちこれはpCA-loxP-Neo-EGFPの遺伝子が安定導入されているES細胞での、Cre酵素によるloxPが切りだされていない状態でのEGFP発現の漏れ、バックグラウンド)0-0.2%であった(第4図a、第5図参照)。すなわちこの実験系では、非常に高率に約60%の細胞に正しく目的の遺伝子が導入されており、またバックグラウンドがなく、正しく目的のNkx2.5発現細胞を可視化し、さらに単離できるということで、従来不可能だったこれらの技術を解決した非常にすぐれた実験系であることが分かった。
次いで、単離された細胞はすぐに培養皿に蒔いて培養し、翌日、あるいは数日後にその細胞の性格、形質について解析を行った。まず単離された細胞のEGFP遺伝子の発現は、翌日から数日後も、大部分の細胞において蛍光顕微鏡ではっきりと確認できるくらいの強いEGFPの発現を示していた。これにより、この方法で単離された細胞が非常に高純度で目的の細胞であることが分かった。
次に細胞の性格、形質の解析のため、この細胞からRNAを抽出しRT-PCR法により、Nkx2.5遺伝子の発現、心筋特異的な分子、並びにその他関連の遺伝子の発現を調べた。あるいは、これらの単離細胞の免疫細胞染色を行い、これらの分子の発現を調べた。まずNkx2.5遺伝子、αMHC、MEF2c(心筋特異的転写因子)、GATA4(心筋に頻度が高く発現する転写因子)は、80%の細胞で明らかな発現がみられた。この結果よりこの細胞の多くは心筋細胞であることが分かった。一方、20-30%の細胞に、心筋以外のマーカーの平滑筋型アクチン(smooth muscle actin: SMA)、トロポミオシン(tropomyosin:TM)の発現もみられた(第6図a参照)。ES細胞からNkx2.5を発現する細胞のみを確実に(しかも蛍光顕微鏡でも可視化できるレベルで確実に)単離できた報告はこれまでになく、Nkx2.5は現在まで分かっている心筋特異的遺伝子の中で心筋の発生過程で最も早期に発現する転写因子であることを考えると、本細胞の一部が心筋以外のマーカーを発現するという結果は、本細胞が今までにES細胞から単離されたことのない、成熟心筋細胞以前の分化段階の心筋細胞、さらには心筋芽細胞とでもいうべき心筋への分化が運命付けられているより未分化な細胞の可能性もある。そのため、この単離された細胞自身が、特に未だ十分に解明されていない初期の心臓の発生や、分化、再生に関する今後の基礎研究、ES細胞を使った心疾患への再生医療法開発にいて非常に有用なものと考えられる。
また、心筋の各分化段階で発現する様々な心筋特異的遺伝子はMEF2CやGATA4など幾つか報告されており、今後本方法を用いることでこのような遺伝子の発現を指標に心筋の各分化段階の細胞を自由に単離することが可能であり、本法の発明の意義は大きい。さらに本法の有用性は心筋に限定されるものではなく、組織特異的、あるいは性格が同定された種々遺伝子のプロモーターを用いれば、ES細胞から分化するいかなる特異的な分化段階の各組織も、ある遺伝子の発現に特化したいかなる目的の細胞も可視化でき、単離することが可能である。この点から、本発明は、ES細胞を用いた再生医学、発生学において極めて重要な意義を持つものである。
〔実施例2〕
本発明に用いる第2のプロモーターは、Nkx2.5遺伝子プロモーターに限られるものではなく、その他の心筋特異的遺伝子を指標にしたES細胞由来の心筋細胞、あるいはES細胞由来の他の細胞や組織を蛍光顕微鏡下で可視化し、さらに単離する目的で一般化することに広く用いることが可能である。つまり第2のプロモーターさえ目的のものに置換する事で、いかなるES細胞由来の目的細胞をも可視化し単離できる。このような本発明の広い一般的な有用性をさらに確認するために、第2のプロモーターにマウスのαMHC遺伝子プロモーターを用いたアデノウイルスベクターAd.αMHC-Cre、つまりこれはαMHCが発現する心筋細胞に特異的にCre酵素を発現するような組換え遺伝子を導入するアデノウイルスベクターであるが、これを実施例1と同様の方法で作成して同様の実験を行った。
Ad.αMHC-Creは以下のようにして作成した。まずシンシナチー医科大学(University of Cincinnati, College of Medicine)のJeffrey Robbins氏より供与された、αMHCプロモーターが挿入されているプラスミド(プラスミドの詳細は、J. Biol. Chem. Vol. 266, p9180-9185 (1991)に記載)から、BamHIとSalIでαMHC遺伝子プロモーターを含む約5.5kbのDNAを切り出し、T4 DNAポリメラーゼIで末端を平滑化し、精製、抽出した。これはRobbins氏らが上記文献で報告しているように、心臓型βミオシン重鎖遺伝子の3’側の最後のエクソンの一部、αMHCの3’領域ならびに蛋白をコードしない最初の三つのエクソンを含むDNAであり、この領域が心臓特異的な発現をもたらすプロモーターとして働くことが同論文で示されている。一方実施例1で作成したベクターのpHMΔp-CreをNotI酵素で切断し、T4 DNAポリメラーゼIで末端を平滑化し、CIP酵素で末端脱リン酸化処理して精製した。これを前述のαMHC遺伝子プロモーターの5.5kbのDNA断片とともに、T4 DNAリガーゼ酵素で反応させライゲーション反応を行い、αMHC遺伝子プロモーターの下流にCre遺 伝子が繋がれたプラスミッドpHM-αMHC-Creを作成した。このpHM-αMHC-CreとアデノウイルスベクタープラスミドpAdHM4を実施例1で記載したように、制限酵素のI-CeuI、PI-SceIで切断した後、両プラスミドをT4DNAリガーゼでライゲーションすることにより、pAdHM4-αMHC-Creを得た。pAdHM4-αMHC-CreをPacIで切断し精製したものを293細胞に遺伝子導入し、10-14日後に出現したアデノウイルスAd.αMHC-Creのプラークを回収し、実施例1に記載したものと同様にウイルス増幅、精製、脱塩をおこなった。このように作成されたAd.αMHC-Creは、細胞に感染、遺伝子導入後は、αMHC遺伝子プロモーターの制御下にCre遺伝子を発現するものである。
実施例1で作成したpCA-loxP-Neo-EGFPが安定導入されたES細胞クローン株の中で、Creの発現後にEGFPが強く発現することが確認されたES細胞クローン株を用いて、Ad.Nkx2.5-Creの代わりにAd.αMHC-Creを用いて実施例1と同様の実験を行った。基本的な実験プロトコール、手技は実施例1で記載したのものと同じであるが、ただ実施例1では、Ad.Nkx2.5-Creを分化誘導後4日目に感染させて6日目に可視化された目的細胞をセルソーターで単離させていたところを、本実施例ではAd.αMHC-Creを9日目に感染させて13日目に可視化された目的細胞をセルソーターで単離することにした。これは分化誘導開始後のES細胞の内因性のαMHC遺伝子の発現をRT-PCR法や免疫組織化学で調べたところ、αMHCの発現は約8日目から14日目にかけて顕著にみられたためである。ES細胞の分化におけるこのαMHCの発現時期の結果は、αMHCは心筋特異的収縮蛋白の一つであるため成熟した心筋細胞で発現が強くみられるという生体内での事実と一致するものであり、また心筋様の拍動を示すES細胞のコロニーも分化誘導後9-14日目に最も顕著にみられるということもこれと合致する所見である。このようにAd.αMHC-Creの感染の時期以外の点では、実施例1と全く同じように以下の実験を行った。
Ad.αMHC-Cre感染後1日目(分化誘導後9日目)より、一部の細胞にEGFPの発現が蛍光顕微鏡下で認められ、感染後2日目(分化誘導後10日目)からはっきりとし、それ以降発現はやや増強し、感染後4日目(分化誘導後13日目)にはEGFPの発現は最大となったため、この時にトリプシンで細胞をばらばらにし、セルソーターでEGFP陽性細胞を単離した(第4図d参照)。単離された細胞はほとんどEGFPを発現していた。さらにこれらの細胞の特性を確証するために、RT-PCRと免疫染色により、αMHC、アクチニンなどの心筋特異的分子のmRNAと蛋白の発現を調べたところ、単離されたほとんどの細胞でこれらの心筋特異的分子の発現は陽性であった(第6図b参照)。さらに、電子顕微鏡の観察で横紋筋繊維構造などの心筋細胞に特有な細胞構造も確認できた。そして何といっても、培養皿に接着させて培養して翌日から数日間、細胞の心筋様の拍動が観察されたことは、単離された細胞が目的の成熟した心筋細胞であることを示している。これらの結果より、単離された細胞は成熟した心筋細胞であることが確証できた。このように本法により、Nkx2.5は転写因子でαMHCは収縮蛋白というように、二つの性格の異なる遺伝子のプロモーターを用いて、実施例1で比較的未熟な分化段階の心筋細胞を、そして実施例2で成熟した心筋細胞を、確実に単離できたことから、本発明が広く一般化して用いられ、有用であることが確証された。
〔実施例3〕
実施例1では第1の組換えDNAが安定導入できたES細胞クローンを最初に取り、そのES細胞に分化誘導過程で第2の組換えDNAをアデノウイルスベクターにより遺伝子導入するという方法を用いたが、実施例3ではES細胞クローンを取るといった作業をすることなしに、第1の組換えDNAも第2の組換えDNAも分化誘導過程のES細胞にアデノウイルスベクターを使って直接遺伝子導入した。
このためまず、第1の組換えDNAを遺伝子導入できるアデノウイルスベクターを以下のように作製した。
まず実施例1で作成したpCA-loxP-Neo-EGFP、pCMV-loxP-Neo-EGFPからSalI酵素処理により、5’側よりCAプロモーター、リコンビナーゼ認識配列のloxP配列で囲まれたneo遺伝子、ポリA配列、EGFP遺伝子、ポリA配列が繋がった目的のDNA断片を切り出した。一方、アデノウイルスを作成するシャトルベクターのpHM5プラスミド(Mark Kay氏より供与:プラスミドの詳細はH. Mizuguchi and M. Kay: Human Gene Ther vol.10: 2013-2017 (1999)に記載、マルチクローニングサイトの両端にそれぞれI-CeuIとPI-SceIの制限酵素認識配列を有する)は、マルチクローニングサイトのSalI認識配列をSalI酵素で切断し、CIP酵素で末端脱リン酸化処理し、これと上記の切り出された目的のDNA断片とを、T4 DNAリガーゼ酵素でライゲーションすることにより、目的の第1の組換えDNAが挿入されたシャトルベクタープラスミッドpHM-CA-loxP-Neo-EGFP、pHM-pCMV-loxP-Neo-EGFPを各々得た。
さらに、このpHM-CA-loxP-Neo-EGFP、pHM-pCMV-loxP-Neo-EGFPからI-CeuI、PI-SceI酵素で目的の遺伝子部分を切り出し、実施例1でも述べたように、I-CeuI、PI-SceI酵素処理されたアデノウイルスベクタープラスミドのpAdHM4とともに、T4DNAリガーゼでライゲーションすることで、目的の第1の組換えDNAを持つアデノウイルスベクタープラスミドpAdHM4-CA-loxP-Neo-EGFP、pAdHM4-pCMV-loxP-Neo-EGFPを各々作成した。
アデノウイルスベクターの作成は実施例1で述べたように行った。つまり、pAdHM4-CA-loxP-Neo-EGFP、pAdHM4-pCMV-loxP-Neo-EGFPをPacI酵素処理後に293細胞にトランスフェクションし、得られたウイルスプラークを増幅、精製、脱塩して、目的の第1の組換えDNAを含むアデノウイルスベクターAd.CA-loxP-Neo-EGFP、Ad.CMV-loxP-Neo-EGFPを得た。
実施例1でも述べたように、本実施例の目的には、CAプロモーターでもCMVプロモーターでも本質的な差はないが、より発現が強いということで以下には、Ad.CA-loxP-Neo-EGFPを用いた実験結果を示す。但し、Ad.CMV-loxP-Neo-EGFPでも同様の実験を行い、同様の結果が得られることは確認されている。
全く遺伝子が導入されていないES細胞(D3)を用い、実施例1と同様に、LIFを除いた培地でembryoid bodyを作成することで分化誘導を行った。まずNkx2.5を指標とした、ES細胞由来のより未分化な心筋細胞の単離には、4日目にAd.Nkx2.5-CreとAd.CA-loxP-Neo-EGFPの2つのアデノウイルスベクターをそれぞれ30 MOIで感染させ、6日目にセルソーターで目的のEGFP発現細胞を単離した。つまり本実施例が実施例1と異なるのは第1の組換えDNAをアデノウイルスベクターを使って遺伝子導入したことのみである。この実験の結果、実施例1と同様の細胞が単離され、これらの細胞は実施例1 と同様の遺伝子の発現パターンを示した。
次にαMHC遺伝子を発現するES細胞由来の成熟心筋細胞の単離には、実施例2と同様に分化誘導第9日目に、Ad.αMHC-CreとAd.CA-loxP-Neo-EGFPの2つのアデノウイルスベクターをそれぞれ30 MOIで感染させ、第13日目にセルソーターで目的のEGFP発現細胞を単離した。この実験結果も、実験2と同様の細胞が単離され、これらの細胞は同様の心筋特徴的な遺伝子の発現パターンや心筋細胞様の収縮を示した。
この2つの実験結果より、第1の組換えDNAも第2の組換えDNAもアデノウイルスを使って遺伝子導入することで、従来の遺伝子導入安定発現細胞を取って行う方法と同様の結果が、より簡単に得られることが確認できた。
実施例1及び実施例2で示したように、従来の技術で第1の組換えDNAを安定発現するES細胞を作成し、良好なクローンを選んでおいて、これに第2の組換えDNAをアデノウイルスで遺伝子導入するという方法と、実施例3のように両方のDNAをアデノウイルスを使って遺伝子導入する方法は、いずれも本発明における意義において本質的な差はない一方、それぞれの利点は目的によって使い分けが有用と考えられる。 二つのDNAの遺伝子導入にアデノウイルスベクターを用いる利点をまとめると以下のようになる。
(1)第1、第2の組換えDNAが安定導入され恒常発現するクローンを取る煩わしい作業の労力、時間を必要としない:つまり実施例1、2で示したように、従来の方法で第1の組換えDNAを導入し安定的に恒常発現するクローンを選んで取るには、労力も時間も必要とする。さらに全くアデノウイルスベクターを使用せず従来の技術だけで遺伝子導入して、第1と第2の組換えDNAの両方を安定的に恒常発現するクローンを選んで取るとすると、さらなる時間と労力を要することになる。この場合それに加え、2種類の異なる薬剤耐性遺伝子を必要とすることになり、これらの多重薬剤耐性遺伝子発現、またそのクローンを選択する煩雑な作業や長期の薬剤使用によるES細胞への影響、つまり細胞の性格の変化など、問題となる可能性があり、またこのような種々の影響で目的のクローンがとれない場合さえもある。
(2)アデノウイルスベクターは分化段階の任意な時期に高率に簡単に目的遺伝子を導入できる:これは従来の技術では不可能なことであったが、アデノウイルスを使えば簡単にできることを、本発明で示した。この利点として、(1)で記載したこととも関連するが、ES細胞に不要な遺伝子や薬剤の長期間の暴露などの、不要な影響を与えない。
(3)アデノウイルスベクターは、宿主細胞(この場合ES細胞)に導入遺伝子をepisomal(染色体に組み込まれることなく核内に存在)の形で安定して長期間発現させるため、安定した結果が得られる:従来の方法で、染色体に目的の遺伝子が組み込まれたES細胞クローンを薬剤耐性遺伝子を利用して取って来る方法の場合、これらの導入遺伝子が染色体にランダムに組み込まれるため染色体上で組み込まれた場所の影響、クロマチン構造の影響などを受ける。このため必ずしも組み込まれた遺伝子が全て安定して発現するわけではないため、(1)に記載したように導入遺伝子を安定発現する良好なクローンを選択してくるのに時間と労力を要する。さらにES細胞では、他の癌細胞株や初代正常培養細胞などを用いた場合に比べ、染色体に組み込まれた導入遺伝子の発現が不安定になりやすいこと、例えば導入遺伝子の発現がシャットオフされる場合もあることが知られている。これに対しアデノウイルスベクターで遺伝子を導入した場合、episomalであるため、このような染色体やクロマチンの影響をうけにくく、安定した発現が得られ、再現性のある安定した結果がいつも得られる。
(4)任意のES細胞株を用いることができる:ES細胞株の種類、またそのクローンやサブクローンによって分化能、性格が異なっている。この場合、ある細胞の単離には、よりその細胞へ分化しやすいことが同定されているES細胞株のクローンを特に指定して使用したい場合が考えられる。実施例3の第1と第2の組換えDNAを遺伝子導入できるアデノウイルスベクターを用いれば、それぞのES細胞株やクローンについて安定細胞株を作成する必要がなく、自由に望みのES細胞を使用して行うことができる。
(5)ES細胞以外にも簡単に遺伝子導入できるため、作成した第1の組換えDNAの特異性を他の細胞で直接的に確認することができる。また他の細胞での実験へも、この遺伝子構築したものが簡単に応用できる。
〔実施例4〕
前述したように、実施例で使用したNkx2.5遺伝子プロモーター及びαMHC遺伝子プロモーターの特異性は既に確認されており、また実際の実験結果でも心筋細胞を単離できることは明らかとなったが、さらに上記の(5)の観点から、実施例3の二つのアデノウイルスで導入したDNAが正しく目的の心筋細胞を特異的に可視化できていることを直接的に証明する目的で、この二つのアデノウイルスをマウスの初代心筋培養細胞に感染させてみた。出生1日目の新生児マウスより心筋を取り出し、これをコラゲナーゼで消化して心筋細胞を単一細胞に分離した後、培養皿に巻いて培養した。この初代心筋細胞培養の手技は、Khalid MA et al. Circ. Res. 72, p725-736 (1993)、ならびにWang L et al. Circ. Res. 79, p79-85 (1996) に記載された方法に基本的に従って行った。このように培養して2日目の心筋細胞に、Ad.Nkx2.5-CreとAd.CA-loxP-Neo-EGFPをそれぞれ5MOIで感染させて、感染72時間後に蛍光顕微鏡下で観察したところ、遺伝子が導入された心筋細胞がEGFP陽性として可視された。同様のプロトコールで、Ad.αMHC-CreとAd.CA-loxP-Neo-EGFPを同じように感染させても、遺伝子導入された心筋細胞はEGFP陽性として可視された。これらの二つのアデノウイルスベクターを他の心筋以外の数種類の培養細胞(Helaヒト子宮頚癌細胞、MKN28ヒト胃癌細胞、LL2マウス肺癌細胞、LM8マウス骨肉腫細胞など)に感染させて、その特異性を検証したが、いずれの細胞でもこのようなEGFPの発現は蛍光顕微鏡でみられなかった。このように実施例1、2、3で用いた第1の組換えDNAと第2の組換えDNAは、遺伝子導入されると明らかに心筋細胞のみを標的化してEGFPで可視化できていることが直接的に証明された。
また、恒常的強発現プロモーターのCAプロモーター及び組織特異的遺伝子のNkx2.5プロモーターとαMHCプロモーターのプロモーター活性を調べるための実験を行った。すなわち、以下のアデノウイルスベクターを感染効率(MOI)30か500で感染させたマウス初代培養心筋細胞とNIH3T3マウス線維芽細胞株を用いてウエスタンブロット解析(Cre抗体)を行った(図7参照)。CAはAd.CA-Creを感染させ5μgの蛋白を泳動、CA'はAd.CA-Creを感染させ0.5μgの蛋白を泳動、CA''はAd.CA-Creを感染させ0.1μgの蛋白を泳動、NCは陰性コントロールでno Ad,5μgの蛋白を泳動、Nkx2.5はAd.Nkx2.5-Creを感染させ5μgの蛋白を泳動、αMHCはAd.αMHC-Creを感染させ5μgの蛋白を泳動、Tublin(心筋細胞や線維芽細胞で分泌される蛋白)は内因性のコントロールとして、抗Tublin抗体を用いて検出した。
図7から、CAプロモーターは5μgの蛋白を用いる場合は勿論のこと、10倍希釈したCA'と50倍希釈したCA''でもリコンビナーゼCreが検出されているが、Nkx2.5プロモーターとαMHCプロモーターはいずれも5μgの蛋白でも非常に微量が検出されに過ぎなかった。これにより、組織特異的遺伝子のNkx2.5プロモーターとαMHCプロモーターのプロモーター活性は非常に弱く、本発明によってのみ、EGFPなどの選択マーカーを発現させられることが分かる。

Claims (11)

  1. 恒常的強発現プロモーターである第1のプロモーター、リコンビナーゼ認識配列を両端に有する遺伝子、胚性幹細胞から分化する目的細胞の選択マーカー遺伝子の順に5'側から配置され、第1のプロモーターが前記選択マーカー遺伝子を発現させる第1の組換えDNAが導入されたベクターを未分化状態の胚性幹細胞に導入し、得られた第1の組換えDNAが安定導入された胚性幹細胞を分化誘導し、この分化誘導過程の胚性幹細胞に、胚性幹細胞から分化する目的細胞に対して特異的に発現する第2のプロモーター、リコンビナーゼ発現遺伝子の順に5'側から配置された第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターを導入することを特徴とする胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  2. 恒常的強発現プロモーターである第1のプロモーター、リコンビナーゼ認識配列を両端に有する遺伝子、胚性幹細胞から分化する目的細胞の選択マーカー遺伝子の順に5'側から配置され、第1のプロモーターが前記選択マーカー遺伝子を発現させる第1の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターと、胚性幹細胞から分化する目的細胞に対して特異的に発現する第2のプロモーター、リコンビナーゼ発現遺伝子の順に5'側から配置された第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを、分化誘導過程の胚性幹細胞に各々導入することを特徴とする胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  3. リコンビナーゼ認識配列が、loxPで、リコンビナーゼ発現遺伝子が、リコンビナーゼCre発現遺伝子ある請求項1又は請求項2に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  4. 恒常的強発現プロモーターが、CMVプロモーター又はCAプロモーターである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  5. 選択マーカー遺伝子が、蛍光蛋白遺伝子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  6. 第2のプロモーターが、Nkx2.5遺伝子プロモーター又はαMHC遺伝子プロモーターである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法。
  7. 第1の組換えDNAが導入されたベクターが導入された未分化状態の胚性幹細胞と、第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを備えた請求項1に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法に用いる単離又は可視化用キット。
  8. 第1の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターと、第2の組換えDNAが導入されたアデノウイルスベクターとを備えた請求項2に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法に用いる単離又は可視化用キット。
  9. 請求項1又は請求項2に記載の胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法により得られる細胞。
  10. 細胞が、第2のプロモーターとしてNkx2.5遺伝子プロモ−ターを用いて得られる心筋細胞である請求項9記載の細胞。
  11. 細胞が、第2のプロモーターとしてαMHC遺伝子プロモーターを用いて得られる心筋細胞である請求項9記載の細胞。
JP2004513486A 2002-06-17 2003-06-13 胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット Expired - Fee Related JP4624100B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002175231 2002-06-17
JP2002175231 2002-06-17
PCT/JP2003/007536 WO2003106673A1 (ja) 2002-06-17 2003-06-13 胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2003106673A1 JPWO2003106673A1 (ja) 2005-10-20
JP4624100B2 true JP4624100B2 (ja) 2011-02-02

Family

ID=29728022

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004513486A Expired - Fee Related JP4624100B2 (ja) 2002-06-17 2003-06-13 胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20050208466A1 (ja)
JP (1) JP4624100B2 (ja)
AU (1) AU2003242380A1 (ja)
WO (1) WO2003106673A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10662441B2 (en) 2011-03-25 2020-05-26 Kagoshima University Viral vector targeting cancer stem cells

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20060008451A1 (en) * 2004-07-06 2006-01-12 Michigan State University In vivo methods for effecting tissue specific differentiation of embryonic stem cells
US20080044393A1 (en) * 2004-07-16 2008-02-21 White Robert L Retinal dystrophin transgene and methods of use thereof
KR101207576B1 (ko) * 2009-11-13 2012-12-03 한국생명공학연구원 이중 프로모터를 포함하는 리포터 시스템 및 이를 이용한 배아줄기세포의 심근계 분화 탐지 방법
JP6327712B2 (ja) * 2014-11-17 2018-05-23 学校法人北里研究所 トランスジェニック非ヒト動物の製造方法及び遺伝子改変非ヒト動物の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999002719A1 (en) * 1997-07-11 1999-01-21 The University Of British Columbia Complementation trap
JP2002034580A (ja) * 2000-01-05 2002-02-05 Japan Science & Technology Corp 多能性神経系前駆細胞を分離し、精製するための方法および多能性神経系前駆細胞

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4216350B2 (ja) * 1994-09-19 2009-01-28 大日本住友製薬株式会社 動物細胞感染用の組換えdnaウイルスベクター
US6090622A (en) * 1997-03-31 2000-07-18 The Johns Hopkins School Of Medicine Human embryonic pluripotent germ cells

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999002719A1 (en) * 1997-07-11 1999-01-21 The University Of British Columbia Complementation trap
JP2002034580A (ja) * 2000-01-05 2002-02-05 Japan Science & Technology Corp 多能性神経系前駆細胞を分離し、精製するための方法および多能性神経系前駆細胞

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10662441B2 (en) 2011-03-25 2020-05-26 Kagoshima University Viral vector targeting cancer stem cells

Also Published As

Publication number Publication date
WO2003106673A1 (ja) 2003-12-24
AU2003242380A1 (en) 2003-12-31
US20050208466A1 (en) 2005-09-22
JPWO2003106673A1 (ja) 2005-10-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7964401B2 (en) Screening method for somatic cell nuclear reprogramming substance affecting ECAT2 and ECAT3
JP6936952B2 (ja) 細胞ゲノムの誘導性改変
CN101535474B (zh) 人类人工染色体(hac)载体和包含它的人类细胞药物
Sommer et al. Induced pluripotent stem cell generation using a single lentiviral stem cell cassette
Giudice et al. Genetic modification of human embryonic stem cells for derivation of target cells
KR20030032912A (ko) 심장세포-특이적 인핸서 인자 및 이의 용도
EP2248889A1 (en) Reversibly immortalized cells as well as methods relating hetero
US20170298384A1 (en) Stem cell gene targeting
EP3433366B1 (en) Kit for constructing transposon and use thereof
EP1206906A1 (en) Mouse having human cytochrome p450 transferred therein
US8598331B2 (en) CLDN5 mini-promoters
CN114761035A (zh) 用于体内双重组酶介导的盒式交换(dRMCE)的系统和方法及其疾病模型
Tasca et al. Large-scale genome editing based on high-capacity adenovectors and CRISPR-Cas9 nucleases rescues full-length dystrophin synthesis in DMD muscle cells
JP4624100B2 (ja) 胚性幹細胞から分化した目的細胞の選別的単離又は可視化方法及び単離又は可視化用キット
Li et al. CRISPR-CasRx knock-in mice for RNA degradation
JPWO2004022741A1 (ja) 哺乳類人工染色体
WO2000056932A2 (en) Germline-competent avian cells
KR101242114B1 (ko) 초음파 영상 기반의 유전자 전달 기술 및 리포터 유전자를 이용한 생체 내 영상에 의한 형질전환 동물의 선별 방법
WO2023090372A1 (ja) プロモーター活性化配列、そのプロモーター活性化配列を含む発現ベクター、及びその発現ベクターを含む哺乳動物細胞
WO2023074873A1 (ja) 細胞純化方法
KR100801873B1 (ko) 복합체
US20060172420A1 (en) Gene trap system
조호연 Studies on application of spermatogonial stem cell for quail genome modification
Perez-Campo et al. Novel vectors for homologous recombination strategies in mouse embryonic stem cells: An ES cell line expressing EGFP under control of the 5T4 promoter
JP2010148440A (ja) 組換えアデノウイルス迅速構築システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090618

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090814

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20090814

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100104

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20100304

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100304

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100402

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100403

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100517

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101029

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101102

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4624100

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131112

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees