JP4620443B2 - 眼科装置 - Google Patents
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Description
ところで、角膜表面は通常、涙液等に覆われ、その表面にはなめらかな液状の層が形成されている。この涙液層は、瞬目して開瞼した後、まぶたを開け続けると時間の経過に伴って徐々に厚みが減少し、やがて消滅する。モニタ等を長時間凝視した場合、まばたきの回数が減り、涙液層が消失した状態(いわゆる、ドライアイと呼ばれる乾燥状態)となる。また、モニタ等を凝視しない場合でも、涙液層の消失する速度には個人差があり、短時間で乾燥状態となってしまう人々もいる。このように短時間でドライアイとなる人々は、日常生活において角膜又はまぶたに異物感を感じ、眼科を受診することが多い。
眼科においてドライアイ状態を主訴する人々を診察する場合、涙液層の角膜表面上における厚みを特定し、その時間変化を観察することが重要となる。開瞼後の涙液層の経時的な変化を捉えることで、涙液層の消失状況を知ることができるためである。このため、角膜表面に形成される涙液層の状態を測定するための眼科装置が開発されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許文献2に記載の眼科装置では、被検眼の涙液最表層(脂質層)の所定点に光が投影され、脂質層の表面と裏面で反射された反射光の干渉による干渉模様がCCDカメラによって撮影される。CCDカメラで撮影された画像はモニタに表示され、検者はモニタに表示される画像から脂質層の状態や様子を観察して簡易的に診断を行う。この眼科装置では、CCDカメラによって観察された画像と指標となる参照画像とを見比べることで、被検眼の涙液層の状態を検者が主観的に決定するものである。したがって、非侵襲的検査ではあるが、涙液層を定量的に解析するものではない。
特許文献3に記載の眼科装置では、角膜下部の涙液メニスカスに対して所定のパターンの投影を行い、その反射パターンをCCDカメラで撮影する。撮影された反射パターンは、涙液メニスカスによって変位しているため、その変位量から涙液メニスカスでの涙液量を評価する。この眼科装置は、涙液メニスカスの涙液量から角膜表面の涙液層の状態を間接的に評価するものであり、角膜表面上の涙液層を定量的に解析するものではなかった。
また、本明細書で開示する眼科装置の一態様は、被検眼の角膜表面に形成される涙液層の時間の経過に伴う変化を測定する眼科装置であり、角膜表面に所定パターンの光を投影する手段と、その投影された光の角膜表面からの反射像を撮影する手段と、撮影手段を所定の時間間隔で繰り返し実行させる手段と、撮影手段で撮影された複数の画像の中の1つを基準画像として、その基準画像に対する他の画像の相関度を算出する画像解析手段と、を有する。
この眼科装置では、被検眼の角膜表面に所定パターンの光を投影し、角膜表面からの反射像を所定の時間間隔で複数回撮影する。撮影によって得られた複数の画像は、これらの画像の中の1つを基準画像とし、他の画像を基準画像との相関度で評価する。すなわち、角膜表面から反射される反射像のパターンは、涙液層の状態が同一であれば同一パターンとして撮影され、涙液層の状態が変化すれば異なるパターンとして撮影される。したがって、基準画像との相関度を算出することで、その変化した程度を定量的に評価することが可能となる。この眼科装置では、撮影された画像から角膜表面における涙液層の厚み等を直接算出するのではなく、基準画像との相関度を算出することで角膜表面における涙液層の時間の経過に伴う変化を定量的に評価する。
このような構成では、撮影された画像内に所定パターンと交差するように解析線が設定され、その解析線上の各点の濃度値が求められる。撮影された画像内においては、光が反射されている部分と光が反射されていない部分の濃度値は大きく異なるため、解析線上の各点の濃度値は振動する波形となる。涙液層の状態が変化すると反射光が撮影される位置も変化することから、この解析線上の濃度値波形が変化する。したがって、この濃度値波形(すなわち、「座標値−濃度値」の関数)の相関度を算出することで、涙液層の変化を定量的に評価することができる。
このような構成によると、濃度値波形(「座標値−濃度値」の関数)を周波数解析することで、その振動特性がより明確化され、両者の相関度を適切に評価することができる。また、周波数解析を行うことでデータ数も少なくなり、両者の相関度を少ない計算量で算出することができる。
このような構成によると、濃度値波形(「座標値−濃度値」の関数)が所定の周期で振動する波形となるため、特定の周波数領域にピークを有することとなる。このため、周波数解析によって得られた「周波数−強度」の関数に対して所定周波数領域についての相関度を算出することで、2つの画像の相関度を評価することができる。また、所定周波数領域についてのみ相関度を算出することで、その他の領域に含まれるノイズの影響等を除去することができる。
所定周波数領域についての相関度を算出する場合は、例えば、画像解析手段は、「周波数−強度」の関数に所定周波数領域に帯域を有する帯域フィルタを乗算して得られる波形値の相関度を算出することができる。帯域フィルタを乗算することで、所定周波数領域の波形のみを取り出すことができる。
このような構成を採用する場合、例えば、解析線が角膜中心から放射状に周方向に連続して複数設定されていることが好ましい。解析線を角膜中心から放射状に周方向に連続して複数設定することで、角膜全面をもれなく評価することができる。
このプログラムを従来からある角膜形状解析装置等にインストールすることで、涙液層の時間経過に伴う変化を定量的に評価することができる。
図1に示すように、本実施形態の眼科装置は、被検眼Cの角膜に対向して位置決めされるコーン(01)と、コーン(01)の背面に配置された照明装置(02)(例えば、LED等)を備えている。図2に示すようにコーン(01)は、内部が中空の円錐形状の筒体であり、透明樹脂によって形成されている。コーン(01)の内壁面には同心円状のパターンが印刷された透明フィルムが貼り付けられる一方で、コーン(01)の外壁面には光を反射する塗装が施されている。したがって、コーン(01)の背面に配置された照明装置(02)による照明光は、コーン(01)内で散乱し、内壁面に貼り付けられた透明フィルムによって光の一部が遮られ、被検眼Cの角膜に投影される。これによって、被検眼の角膜には、図3に示すような同心円状のパターン光が投影される。なお、コーン(01)によって所望のパターンを投影する方法としては、コーン(01)の内側に所望のパターンを直接切削し、その部分に遮光性の塗装を施す方法を採ることもできる。
照明装置(02)の背面にはレンズ(03)及びハーフミラー(04)が配置される。ハーフミラー(04)には、固視灯点光源(06)の光がレンズ(05)を介して入射するようになっている。固視灯点光源(06)の光は、ハーフミラー(04)で反射され、レンズ(03)を透過してコーン(01)に入射する。コーン(01)に入射した光は、コーン(01)の中央開口部から被検眼Cの角膜に照射される。図3に示すように、固視灯点光源(06)の光はコーン(01)によって形成される同心円状パターンの中心に位置するように調整されており、角膜観察時の固視灯となる。また、被検眼Cの角膜表面で反射された光(すなわち、角膜表面に投影された同心円状パターンの光と固視灯の光の反射光)は、は、コーン(01)、レンズ(03)及びハーフミラー(04)を透過し、レンズ(07)によって焦点調整が行われた後にCCDカメラ(08)で観察される。
なお、上述した眼科装置で角膜形状を正確に計測するためには、被検眼Cの角膜頂点を中心とする同心円状にリングパターンを投影する必要がある。このため、角膜形状計測時には固視灯点光源(06)を点灯し、その光を被検者に固視させる。検者はCCDカメラ(08)で観察される固視灯点光源(06)の光が画像中央となるように、被検眼Cに対して光学系の位置を調整する。これによって、被検眼Cの角膜頂点を中心とする同心円状にリングパターンが投影されることとなる。
コントローラ(12)は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータによって構成することができる。コントローラ12には、CCDカメラ(08)、撮影開始スイッチ(11)及びメモリ(10)が接続されている。撮影開始スイッチ(11)は検者によって操作される。検者が撮影開始スイッチ(11)を操作すると、コントローラ(12)は所定のプログラムを起動して、角膜表面に形成される涙液層の時間経過に伴う変化量を測定する。CCDカメラ(08)によって撮影された画像データはコントローラ(12)に入力され、メモリ(10)等に記憶される。
また、コントローラ12には、照明装置(02)、固視灯点光源(06)及び表示装置(09)が接続されている。コントローラ(12)は、照明装置(02)及び固視灯点光源(06)のON/OFFを行い、また、CCDカメラ(08)で撮影された画像等を表示装置(09)に表示する。
図5に示すように、まず、検者は固視灯点光源(06)を点灯し、被検者に固視灯を固視するよう指示する(S01)。固視灯点光源(06)が点灯されると、CCDカメラ(08)で観察される画像が表示装置(09)に表示される。表示装置(09)には、固視灯点光源(06)による輝点と、被検眼Cの角膜の画像が表示される。なお、固視灯点光源(06)と照明装置(02)の点灯は同時に行うようにしてもよい。
次に、検者は表示装置(09)に表示される被検眼の前眼部が画面上の中央に位置するように(すなわち、固視灯点光源(06)による反射光が角膜Cの中央に位置決めされるように)、被検眼Cに対して光学系の位置調整を行う(S02)。
光学系の位置調整が終了すると照明装置(02)を点灯し、被検眼Cの角膜表面に同心円状のパターン光を投影する(S03)。次に、検者は、被検者にいったん閉瞼させて均質な涙液層を角膜表面に形成させ、被検者が開瞼すると同時に撮影開始スイッチ(11)を操作する(S04)。
検者によって撮影開始スイッチ(11)が操作されると、コントローラ(12)は、CCDカメラ(08)を操作して、角膜表面からの反射パターンを所定の時間間隔で所定コマ数だけ撮影する(S05)。本実施形態では、撮影開始スイッチ(11)が操作されてから10秒が経過するまで、1秒毎に角膜表面からの反射パターンを撮影する。したがって、ステップS05の処理によって11枚の角膜表面画像が撮影される。撮影された一連の画像は、メモリ(10)に時系列順に格納される。図6にはステップS05の処理によって取得された一連の画像が時系列順に示されている。なお、ステップS05の撮影処理が完了するまでは、検者に瞬目をしないよう指示しておく。
図9にはCCDカメラ(08)で撮影された画像と、この画像内に設定された解析線が例示されている(ただし、図9では水平方向に引かれた1本の解析線のみが図示されている。)。図9から明らかなように、解析線は同心円状の反射パターンと直交し、解析線上には反射パターンと交差する部分(明るい部分)と反射パターンと交差しない部分(暗い部分)が交互に現れている。また、解析線は、角膜中心から同心円状の反射パターンの8番目のリングと交差する位置まで設定されている。8番目のリングと交差する位置までとしたのは、外周部が瞼にかかる度合いが多くなるためであり、また、8本目と9本目とのリングの間隔が若干広いためである。
図10には、図9に示す解析線の濃度値波形(位置と濃度値の関係)を示している。図10から明らかなように、解析線の濃度値波形は振動し、反射パターンと交差する位置で濃度値が高くなり、反射パターンと交差しない位置で濃度値が低くなっている。
ステップS16に進むと、コントローラ(12)は、解析線毎に、ステップS14で得られたフーリエ変換波形に帯域フィルタを乗算する(S16)。ステップS16で乗算する帯域フィルタは、図11に示す三角形状の帯域フィルタであり、フーリエ変換波形のピークとなる周波数(周波数−20と+20)を頂点としている。このような帯域フィルタをフーリエ変換波形に乗じることで、フーリエ変換波形の振動部分(反射パターンと交差する部分)の周波数特性のみを抽出することができる。
ステップS18では、解析線毎に、帯域フィルタを乗じることで得られた波形値の絶対値を加算し、各解析線の評価値を算出する(S18)。この評価値が、各解析線の相似度を評価するための値として用いられる。なお、波形値の二乗和を算出し、この値を評価地としてもよい。
ステップS24では、コントローラ(12)は比較画像の各解析線について、基準画像の対応する解析線に対する相関度(インデックス値)を算出する。具体的には、比較画像の評価値を基準画像の対応する評価値で除算する。なお、ステップS24で算出されたインデックス値が1.0を超える場合は、その解析線のインデックス値は1.0とする。
ステップS26に進むと、コントローラ(12)は全ての画像の各解析線についてインデックス値を算出したか否かを判断する。全ての画像の各解析線についてインデックス値を算出している場合(ステップS26でYES)はそのまま処理を終了し、全ての画像の各解析線についてインデックス値を算出していない場合(ステップS26でNO)はステップS20に戻ってステップS20からの処理を繰返す。これによって、全ての比較画像の各解析線についてインデックス値が算出される。
図15には涙液層が安定していない被検眼に対して測定した結果が示されている。図15Bに示す10秒後の画像では反射パターンのリング形状が滲んでおり、特に、角膜の下半分においてその乱れが顕著である。また、図15Aから明らかなように、内側の円内の5秒後の状態に比べて、外側の円内の9秒後の状態ではインデックス値が低くなっている。なお、角膜の上部はまぶたがかかるために、アーチファクトが観察される場合も考えられる。
すなわち、従来の角膜形状解析装置では、角膜に投影されたリングパターンのうち、角膜表面の涙液層の乱れによって、そのリングパターンの反射像が滲んだり隣同士で癒着したりしたような部位は、通常、計測欠点として扱われ、周囲の数値からその部位の数値が補間されていた(すなわち、計測欠点の情報は解析に用いられていなかった)。これに対して、本実施形態では、従来は用いられなかった計測欠点を生じる部位の情報をあえて活用し、これによって、角膜をおおう涙液層の時間的変化を定量的に計測している。
例えば、角膜表面に投影される投影パターンは同心円状のものに限られず、その形状等は任意に設定することができる。なお、投影パターンは、角膜全面に、均一で、かつ、偏在することなく光を投影できるものであることが好ましい。角膜全面を均一に評価できるためである。
また、画像内に設定される解析線は、角膜中心から放射状に設定するものに限られず、種々に設定することができる。その際は、角膜表面に投影される投影パターンと解析線が交差するように設定することが好ましい。このような構成とすることで、投影パターンの反射像の滲みや癒着等が解析線の濃度値波形に反映され、涙液層の時間的変化を定量的に算出することができる。
また、角膜表面からの反射パターンを撮影する回数や、その時間間隔は種々に設定することができる。例えば、最大開瞼時間内に5〜10程度の画像を撮影することができるように決定することができる。また、撮影間隔も等間隔とする必要は必ずしもない。
また、上述した実施形態では、被検眼に対する光学系のアライメントをマニュアルで行うようにしたが、光学系のアライメントは自動で行うようにしてもよい。さらに、本実施形態では、濃度値波形をフーリエ変換したが、この他にも種々の周波数解析の方法を用いることができる。
02:照明装置
03:レンズ
04:ハーフミラー
06:固視灯点光源
08:CCDカメラ
10:メモリ
12:コントローラ
Claims (6)
- 被検眼の角膜表面に形成される涙液層の時間の経過に伴う変化を測定する眼科装置であって、
角膜表面に所定パターンの光を投影する手段と、
その投影された光の角膜表面からの反射像を撮影する手段と、
撮影手段を所定の時間間隔で繰り返し実行させる手段と、
撮影手段で撮影された複数の画像の中の1つを基準画像として、その基準画像に対する他の画像の相関度を算出する画像解析手段と、を有しており、
画像解析手段は、(1)基準画像内に所定パターンと交差するように設定された解析線上の各点の座標値とその点における濃度値の関係を表す「座標値−濃度値」の関数を周波数解析して得られる「周波数−強度」の関数と、(2)比較対象となる他の画像内に設定された対応する解析線上の「座標値−濃度値」の関数を周波数解析して得られる「周波数−強度」の関数との相関度を算出することを特徴とする眼科装置。 - 所定パターンが角膜中心を中心として同心円状に略等間隔で配置された複数のリングパターンによって構成されると共に、解析線が角膜中心から外周方向に直線状に設定されており、画像解析手段は、「周波数−強度」の関数の所定周波数領域について相関度を算出することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
- 画像解析手段は、「周波数−強度」の関数に所定周波数領域に帯域を有する帯域フィルタを乗算して得られる波形値の相関度を算出することを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
- 撮影手段で撮影された画像内には複数の解析線が設定されており、画像解析手段は解析線毎に相関度を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼科装置。
- 解析線が角膜中心から放射状に周方向に連続して複数設定されていることを特徴とする請求項4に記載の眼科装置。
- コンピュータを、
照明光学系から角膜表面に所定パターンの光を投影させる照明制御手段と、
その投影された光の角膜表面からの反射像を撮影装置に撮影させる撮影制御手段と、
撮影制御手段を所定の時間間隔で繰り返し実行させる繰り返し実行手段と、
撮影手段で撮影された複数の画像の中の1つを基準画像として、その基準画像に対する他の画像の相関度を算出する画像解析手段として機能させるためのプログラムであって、
前記画像解析手段は、(1)基準画像内に所定パターンと交差するように設定された解析線上の各点の座標値とその点における濃度値の関係を表す「座標値−濃度値」の関数を周波数解析して得られる「周波数−強度」の関数と、(2)比較対象となる他の画像内に設定された対応する解析線上の「座標値−濃度値」の関数を周波数解析して得られる「周波数−強度」の関数との相関度を算出することを特徴とするプログラム。
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