JP4620122B2 - 位相共役レーザ用の空間的フィルタ - Google Patents

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Description

本発明はレーザに関する。さらに詳しく説明すれば、本発明は高いパワーのレーザの性能を改良するためのシステム及び方法に関する。
レーザビームのビーム品質を改善するために低パワーシステムでは空間的フィルタが使用されている。この方法は、所望の遠フィールドの中央ローブの外側にあるビームの部分を廃棄し、それによりレーザの効率を減少させる。残念ながら、この方法は過剰なパワーが必要とされ、阻止孔が加熱されるので高パワーのレーザに対しては実用的ではない。
別の方法は、忠実度を改良するための種々の設計パラメータの調節を含んでいる。位相共役レーザの設計パラメータはビーム発散度、ビーム直径、偏光状態、パルスの形状およびフォーマット、波長、収差の形状またはオーダ、コヒーレント性等のような入来するビームの多数のビームパラメータを含んでいる。調節される可能性のあるその他の設計パラメータには、非線形媒体の長さ、焦点、ビームの交叉、ビームのオーバーラップ領域の長さ、ビーム間の角度、非線形媒体の選択等のような非線形媒体内のビーム相互作用の形状等の位相共役のパラメータが含まれている。
残念ながら、この方法は設計において不所望な妥協をしなければならない。さらに、この方法は現在および将来の応用に必要な忠実度を得ることにこれまで成功していない。
したがって、高パワーの位相共役レーザおよびその他の電気・磁気システにおいて位相共役の忠実度を改良するためのシステムおよび方法が要望されている。
この技術的要求は、本発明によって達成される。本発明によれば、優れた空間的フィルタが提供される。本発明のフィルタは、ビーム中の非共役エネルギの角度の広がりを増加させ、さらにこのエネルギを抑制するように構成されて、それによりシステムの効率を改善している。
図示された実施形態では、フィルタは第1および第2のレンズと、それらのレンズの間の焦点領域中に配置されて非共役エネルギを抑制する空間依存性ビームクリッパと、ビームの角度の広がりを増加させる収差装置と含んでいる。特定の実施形態では、空間依存性ビームクリッパはピンホール貫通孔を有している不透明なプレートを備えている。収差装置は歪み光学系、レーザ増幅器、またはその他の適当な機構により構成されることができる。同様に、レンズと空間依存性ビームクリッパは高い角度選択性の厚いブラッグ格子またはその他の適当な装置によって置換されることができる。位相共役マスター発振器/パワー増幅器レーザアーキテクチャもまた開示されている。例示された実施形態では、優れたアーキテクチャはレーザビームを出力するように構成されたマスター発振器と、ビームと光学的に整列しているパワー増幅器ビームラインと、位相共役エネルギと非共役エネルギとを有するビームを生成する機構と、増幅器と整列している少なくとも1つの本発明による空間的フィルタとを備えている。本発明のフィルタは、システムの効率を改善するためにビーム中の非共役エネルギの角度の広がりを増加させ、さらにこのエネルギを抑制するように構成されている。特定の構成では、ビームラインは間に1つづつ配置された本発明の空間的フィルタを有する複数の増幅器を備えている。
優れたループ位相共役共振器もまた開示されている。例示的な実施形態では、本発明の共振器は、干渉パターンを提供する機構と、この干渉パターンを提供する機構と整列している増幅器と、増幅器と整列して増幅されたビーム中の非共役エネルギの角度の広がりを増加させてビーム中の角度の広がりを有する非共役エネルギを抑制するように構成されている空間的フィルタとを備えている。
例示的な実施形態および例示的な応用を添付図面を参照にして説明して本発明の利点を明らかにする。
本発明はここでは特定の応用に対する実施形態を参照にして説明するが、本発明はそれに限定されないことを理解すべきである。当業者は、その技術的範囲内および本発明が特に有効に利用できる付加的な分野における付加的な変更、応用および実施形態を認識するであろう。
非線形の光学的位相共役は共役な光ビーム(使用される別の名称は“時間反転された”および“波頭または位相反転された”レプリカビーム)を生成する実時間プロセスであり、その共役光ビームは反転された波頭(位相)を有しており、入射光ビームに関して逆方向に伝搬する。非線形な光学的位相共役は、技術的に知られており、多くの文献に記載されている。例えば、Optical Engineering 、第21巻第2号、156 頁「非線形光学的位相共役」およびニューヨクのアカデミックプレス社発行R.A.Fisher 著「光学的位相共役」に記載されている。
非線形光学方法は、主として非線形のダイナミックホログラフおよび刺激された散乱方法であり、非線形光学的位相共役に対して使用される。数学的には、理想的な位相共役プロセスは次のように記載される。
IN=E(r)ei(ωt−kz) +複素数共役 (1)
c =E*(r)ei(ωt+kz)+複素数共役 (2)
E(r)=A(r)eiφ(r) +複素数共役 (3)
E*(r)=A(r)e−iφ(r)+複素数共役 (4)
ここで、EINとEc はそれぞれ入射および位相共役ビームのベクトル電磁界である。すなわち、
E(r)はヘクトル複素数振幅であり、
A(r)はヘクトル振幅であり、
φ(r)は位相であり、
ωおよびkはそれぞれ角周波数および波伝搬数である。
位相共役プロセスはレーザ物理および光学では重要な役割を行っている。位相共役効果を実現する装置は位相共役ミラー(PCM)と呼ばれ、それは入射ビームの“反射”を行うミラーのように動作するが上述したような位相共役特性を有している。
実際の位相共役プロセスは理想的ではなく、位相共役ミラーから来る反射されたビーム(入射ビームEINに対して後方へのビーム)(EOUT )は同時に非共役成分と空間的に混合された共役ビームを伝送する。位相共役の忠実度は、入力ビームの正確な共役である位相フロントを有するビームを戻すためのPCMの能力を特徴付ける量的パラメータである。位相共役の忠実度(y)の厳密な定義は次の式で与えられる。
Figure 0004620122
ここで、EINとEOUT は入射および反射ビームの電界のベクトル複素数振幅プロフィールであり、PINとPOUT 入射および反射パワーである。
位相共役の忠実度は、入射ビームに共役する反射ビーム中に含まれているパワーの割合である。明らかに位相共役の忠実度の達成可能な最大値は100%である。
[位相共役MOPAアーキテクチャ]
非線形光学的位相共役は、高度にポンプされたソリッドステート増幅器或いは増幅器 “ビームライン”としても知られている増幅素子のチェインのような歪み媒体中の光の収差を補正するために伝統的に使用されている。この出願の位相共役ミラーを使用する1つのレーザアーキテクチャが図1に示されている。
図1および2は、通常の技術にしたがって構成された2パス位相共役マスター発振器/パワー増幅器(PC MOPA)を示している。PC MOPAアーキテクチャの動作の本質的な特徴および理論は以下の文献に記載されており、それらはここで参考文献とされる。
・Optics Letter 2 、第4 頁,1978年、“Correction of Phase Aberrations via Stimulated Brillouin Scattering ”
・“Solid State Laser Power Scaling Using Phase Conjugation ”SPIE 739巻、Phase Conjugation, Beam Combining and Diagnostics 1987年 2〜6 頁
・米国特許第4734911号明細書(発明者H.W.Bruesselbach,1988 年3月29日)。
PC MOPAアーキテクチャにおいては、レーザマスター発振器は、出力カプラ素子(出力カプラ)を通ってパワー増幅器の出力端に回折制限された基準ビームを出力する。この出力カプラ素子は、標準的なビームスプリッタ、偏光子と偏光回転素子との組合わせ、干渉計と波長シフト素子との組合わせ、或いは技術的に知られているその他の手段で構成されることができる。この基準ビームは増幅器ビームラインを2回通過して増幅され、増幅器媒体(ポピュレーション反転)中に蓄積されている光パワーのかなりの部分を抽出する。熱レンズ作用により生じた位相歪み、増幅器ビームライン内の光学ベンチ、光学素子およびマウント、増幅器ポンプヘッド中の熱/構造的コンプライアンスにより生じたビームの漂動は、PCMにより位相反転(共役)される。もとの回折制限された位相波頭は、増幅器チェインを通って戻るときに再生される。設計により、増幅器ビームライン内のビーム強度は非線形プロセス(SBS、SRS、非線形インデックス)に対するしきい値よりも十分に下であり、パワーおよび位相情報の損失は最小になる。リレー映像系が典型的に使用されて増幅開口における回折およびクリッピングにより位相情報の損失を最小にして、適切な補正に必要とされる位相情報が失われないことを確実にしている。リレー映像レンズは焦点領域における強度を減少させるために少し傾けられて空気ブレークダウンを阻止しながら、ここで参考文献とされる1993年7月13日発行の米国特許第5228051号でMatthewsによって開示されているように誘起された非点収差を自己補正することができる。冷却された迷光バッフルおよびビーム制動もまた吸収されないポンプ光および広角度の蛍光を制御するために使用されることができる。
図2は、液体中の熱非線形に基づいたループ位相共役ミラー8PCM)方式の光学的な概略図である。この方式はBetin による次のような文献に記載されている。
・1996年7月Techn.Digest,v.11 336〜339 頁、“Phase Conjugation Based on Thermal Nonlinerrity ”NThB1 at Nonlinear Optics ”.
・1996年7月Techn.Digest,v.11 92〜93頁、“Energy Charavteristic of Loop Laser with a Thermal Holographic Mirror Using Millisecond Pulse at 1.06 μm”in Nonlinear Optics .
・“Q-switched Nd:YAG Loop Laser with a Thermal Holographic Mirror ”CTh4, CLEO96、1996年6月 Proc.448 頁.
・“Aberration Correction of ms Pulses at 1.06 μm Using a Loop Cnjugator with Thermal Gatings”CFF8, CLEO96、1996年6月 Proc.510 頁.
・“1 ms Long Pulses Nd:YAG Laser with Loop PCM ”CLEO97、1997年5月 Proc.283 頁。
ループPCMは高利得レーザ増幅器を有する無指向性ループ共振器として構成されている。図2でE1 として示された増幅器ビームラインからの入力ビームは右から非線形媒体中に入り、時計回り方向でループを巡る。ファラデー回転素子と2個の偏光素子から構成されている方向性減衰器が使用されてこの方向における利得媒体(増幅器)の飽和を阻止している。時計回り方向のビームが非線形媒体中に指向され、そこで入力ビームと干渉して非線形媒体中に光学的格子を書込む。
特定の実施形態では、非線形媒体は吸収性の液体媒体であり、干渉縞が高いおよび低い温度(T)の領域を生成し、それは媒体の特性である結合パラメータdn/dTにより低いおよび高い屈折率(n)の対応する領域を生成する。このプロセスは“熱非線形”または“熱散乱”として技術的に知られている。この格子は実時間ホログラフミラーであり、それはループ中の固定されたミラーと共にループを巡る反時計方向の雑音から成長された共振レーザモードに対する十分な光フィードバックを提供する。ファラデー回転素子はこの方向で高い伝送を有するように設定される。
このビームの一部分は非線形媒体中の格子を介して外部に結合され、入力ビームとは反対方向に右方に出る。この共振器の最低次のモードは位相共役モードであり、適当なモード弁別により出力ビームは入力ビームの位相共役レプリカである。
例えば増幅器ビームライン内の熱的に誘起された応力複屈折によって生じた偏光の解消はまた“ベクトル”ループPCMアーキテクチャにより補償されることができる。この方法はここで参考文献とされる次のような文献に記載されている。
・1997年5月 CLEO97 CtuL4、202 〜203 頁、“Vector Phase Conjugation with Loop Laser Geometry ”
・1996年8月Techn.Digest,288〜290 頁、“ Phase Conjugation of Depolarized Light with a Loop PCM ”
・米国特許第5729380号明細書(発明の名称“Loop Phase-Conjugat Mirror for Depolarized Beam ”1998年3月17日)、
これらの文献はここで参考文献とされる。
この方法は、非線形媒体中にそれぞれの偏光固有状態に対して2つの異なったホログラフ格子を生成するためにループ外部の偏光ビームスプリッタとループ内部の偏光素子を使用する。偏光ミキサもまたループの内部で使用されて位相ロックを行わせるために2つの偏光路の間の予め定められた漏話量を与える。2つの直交偏光され位相共役されたビームが外部の偏光ビームスプリッタで再結合され、相対的な位相は分割前の入力ビームと同じである。これは位相共役ビームが偏光の解消された素子を通ってその通路を再度トレースした後でマスター発振器ビームのもとの偏光が再生されることを確実にする。
熱的非線形ループPCMのユニークな特徴には、非常に高いパワースケール性、広範囲のループ共振器(典型的に約100×DL)、高い反射性(典型的に>100%)、広い波長帯域(可視乃至長波長赤外線)、波頭変化に対する迅速な応答性(典型的に<0.1 ms)、およびQスイッチから真のCW(連続波)までの波形柔軟性等が含まれている。
本発明は、2パス位相共役マスター発振器/パワー増幅器(PC MOPA)レーザチーキテクチャにおいて高いビーム品質を得る一般的な問題を解決する。高いパワーのレーザ用として有用な自己ポンプ位相共役ミラーはランダムな光学的雑音から開始される非線形光学現象に基づいている。利得およびモード選択の正しい状態においては、位相共役モードが反射ビームで支配的であるが、位相共役プロセスの忠実度を減少させる雑音のある成分または高次モードが存在する。非共役部分は、パワー増幅器ビームライン中で増幅されるが、増幅プロセス中の収差を補正せず、増幅されたレーザビームのビーム品質を低下させる。特に、本発明はパワー増幅器の全体的な効率を著しく低下させずに非共役モードに対応する出力パワーの部分を減少させることができる。
本発明の1つの素子は、ループ位相共役ミラー内の収差装置と空間的フィルタの組合わせを使用してループ共振器内の発生されたレーザビームの非共役で高度に発散性の空間的成分を抑制し、それによって位相共役の忠実度の値を増加させる。本発明の別の素子は、位相共役マスター発振器/パワー増幅器レーザシステム内の増幅器ビームラインの複数のパワー増幅器の段間に配置されたリレー光学系と共同して動作する大きな範囲の空間的フィルタを使用して、好ましい増幅の前にレーザビームの非共役成分のパワーの大きな割合をクリップし、それによってレーザの全体的な効率を顕著に減少させることなく出力ビーム品質を改善する。
以下説明する例示的な実施形態において、位相共役忠実度の改善されたシステムおよび方法は、2パス位相共役マスター発振器/パワー増幅器レーザシステムにおいて、空間的フィルタおよび光学的収差の使用により、(1)パワー増幅器ビームラインの連続するレーザ増幅器段の間および/またはパワー増幅器ビームラインとPCMとの間に配置されたリレー映像光学系と関連して、(2)ループ位相共役ミラーのレーザ共振器部分内において、または(3)上記の組合わせにより説明される。
1.増幅器ビームラインのリレー映像光学系内の空間的フィルタ
図3は、本発明による例示的なPC MOPA設計の第1の実施形態の光学的な概略図である。図3の実施形態は、多段のパワー増幅器ビームラインの段間とパワー増幅器ビームラインとPCMとの間とに配置されたリレー映像光学系と共に空間的フィルタを使用して出力パワーまたはレーザシステム全体の効率の損失を非常に少なくして位相共役忠実度を改善している。
図3のシステム10では、マスター発振器12は、直線的なウェッジビームスプリッタ(出力結合器)26を通って3段のパワー増幅器ビームラインの出力端へ近回折制限された基準ビーム14を放出する。このビーム14はその後ビームライン30を2回通過し、蓄積されたパワーの50%以上が抽出される。増幅器31, 36, 42内の熱複屈折により生じた熱レンズおよび偏光解消により生じた位相歪みはループPCMによって位相反転(共役)される。もとの回折制限された位相波頭はパワー増幅器ビームライン30を通って戻る時に再生され、出力ビームは近回折制限されたビーム品質を有して約30kWのパワーを発生する。
PCM50(ループPCMを含む)の実効的な位相共役の忠実度を改善する1つの方法は、戻りビームの非共役部分のみを阻止する特有のタイプの外部空間的フィルタを付加することである。
図4は本発明による共役装置の忠実度を改善するように設計された空間的フィルタの例示的な実施形態を示している。このフィルタ22は、焦点にピンホール孔82を有する映像望遠鏡80と収差装置86とを使用して構成されている。ピンホール孔82はプレートまたはリング84に設けられている。プレート84は通常の設計および構造のレンズ81と83の間に挟まれている。本発明によれば、収差装置(a.k.a “角度増倍器”または“均質化装置”)86は望遠鏡80とPCM50との間に配置されている。望遠鏡80は金属、ガラスその他の適当な不透明材料で作られたプレートで作られることができる。最良の実施形態では、ピンホール孔82の大きさ(d)は、発散角度θを有する入射ビームが顕著な損失を生じることなく通過するように選択されている(すなわちd>f・θ、最良の実施形態ではdは近似的に2〜3f・θであり、ここでfはレンズの焦点距離である)。収差装置86もまた通常の設計および構造のものでよい。すなわち、収差装置は典型的に所定のビームサイズに対して特定の角度の広がりを有して選択されている。当業者は、収差ビームの発散または角度の広がりが共役装置の許容角度内であり、ビームが共役装置内のどの点でもクリップされないようにシステムのパラメータが選択されなければならないことを認識するであろう。同様に、共役装置への入口におけるビームの発散とビームサイズの積が共役装置の許容可能な範囲(すなわち“d・θ”)内に依然として位置するようにシステムのパラメータが選択されなければならない。
収差装置86は入力ビームがさらに歪みを受けてPCM50に入る前にその範囲を確実に増加させる。技術的に知られているように“範囲”はビームの発散角度とビームサイズの積である。このように範囲はビーム品質の尺度である。高い範囲は貧弱なビーム品質であることを示している。高い範囲は所定のビームサイズに対するビーム発散角度が高いことを意味している。最良のモードでは、収差装置86は、望遠鏡80における拡大がないと仮定すると、入射ビームの発散がある値θA が近似的に(2乃至3)・θに等しくなるように増加するように選択される。ループPCMの忠実度は完全ではないから、入力ビームに対して非共役であり角度の広がりがほぼθA の反射エネルギの成分が存在する。この非共役成分は収差装置の第2回の通過中には補正されない(収差装置を通って戻った後その角度発散は実際に増加する)で、ピンホール孔で実質的にクリップされる。ピンホール孔82を通過したエネルギは遠いフルドまたは非常に低いビーム発散中のピーク中央ローブに対応している。共役成分は収差装置86により導入された歪みを補償するから、それはピンホール孔82を通過した戻りの通路で余分な損失を受けることはない。非共役成分、すなわち、発散角度がθもよりも大きいほぼθA の発散角度の広がりはピンホール孔(d<f・θ)によって実質的に阻止される。ほぼ[(d/f・θA )]2 の小部分だけが通過する。共役成分は最小の損失で通過する。その結果として、戻りビームは共役成分が支配的となる。それ故、結合された空間的フィルタおよびPCM装置の実効的な共役忠実度はPCM単独の忠実度よりも実質的に高くなる。
位相共役の忠実度の改良評価値χは簡単化された次式を使用して行われる。
χ=χPCM /[χPCM +TNC(1−χPCM )] [6]
ここで、χPCM はPCMの位相共役忠実度であり、TNCはピンホール孔を通って伝送された非共役成分内のパワーの割合である。
図5は、収差が複数の増幅器により供給される本発明の別の実施形態を示している。図5は図3と同様の例示的な増幅器ビームラインを示しており、増幅器ビームライン31, 36, 42中の増幅器の間および増幅器ビームライン30とPCM50との間に追加された空間的フ ィルタ18, 20, 22を有し、増幅された自然発生放射(ASE)および寄生レーザ作用を抑制し、非共役モードを除去している。ただ1個の収差装置86しか必要ないことに注目すべきである。これは、本発明にしたがって動作するために増幅器が第1および第2のフィルタ18, 20に対して必要とされる収差を提供することによるものである。回折制限された発振器ビームは増幅器ビームライン30の第1の増幅器31の入力開口に入る。その入力ビームは増幅器の第1段で増幅され、第1の空間的フィルタ18のピンホール孔を通ってリレー映像望遠鏡により焦点を結ばれる。第1のフィルタ18では、ピンホール孔の直径はビームの収差の大きさに比較して大きいことが好ましい。例えば入力ビームが増幅器31による増幅後5倍に回折制限される(×DL)場合には、空間的フィルタのピンホール孔の直径は回折制限の10倍であってもよい。これは第2および第3の増幅段およびフィルタ段にも適用され、同様に入力ビームは増幅され、濾波され、空間的フィルタにより影響されることなく実質的にパワー増幅器によって増幅され収差を生成され、位相共役ミラー50に到達するまで第1の通過においてビームラインにより誘起された収差を感知する全ての情報を伝送する。最良のモードでは、空間的フィルタは入力ビームの範囲の2〜3倍である。例えば1倍のDLの入力ビームにより、第1段の増幅後、ビームは5×DLであり、したがって空間的フィルタは10〜15DLのピンホール孔の寸法が必要となる。したがって、図5において第1の空間的フィルタ18は10×DLのピンホール孔の寸法を有して示されている。簡単に言うと各空間的フィルタのピンホール孔の寸法は、第1の通過ビームのパワーおよび位相情報損失を最小にするために適当なマージンを有する入来ビームのビーム積または範囲よりも大きくなければならない。ビームはPCMに入り、PCMの忠実度に応じてそこから戻され、ビームの可成りの部分(この例では例えば60%)は正確な波頭を有しており、そのためPCMから外れて補正され、残りの部分(すなわちビームの40%)は正確な波頭を有しない。後者は、位相共役プロセス中の雑音によって生じたランダム位相を有している。正しい波頭を有する部分は本発明の空間的フィルタ22, 20, 18を通過し、ターゲット上のビームを構成する。後者の部分は高度に発散性である。正しい波頭を有する60%の部分を有する場合には、単に20×DLではなく、例えば50,60,70×DLであってもよい。結論として、このエネルギ(すなわち20×DLのコーンの外側のエネルギ)の大部分は増幅器42に入る前にフィルタ22によって除去される。この不正確な波頭はさらに、このエネルギがビームライン30により増幅されることを阻止するために増幅前に第2および第1のフィルタ20および22によって取除かれる。そのため、ビーム品質は通常の方法による場合に予測されるよりも低いパワー損失に維持される。
通常のPCMは図5の実施形態で使用されることができる。増幅器は通常の設計および構造でよい。良好に設計されたPC MOPAシステムにおいては、増幅器はビームのクリップを避けるように設計されなければならない。
レーザ増幅器の入力および出力における近フィールドおよび遠フィールドビームのプロフィールもまた図5に示されている。これらのプロフィールはMATLABにおける1次元波光学的コンピュータ伝搬のモデルから導出されたものである。この解析にのために、入力ビームは回折制限される(近トップハット強度およびフラット位相プロフィール)と仮定し、PCMの忠実度は以前に与えられた定義にしたがって60%であると仮定する。本発明の空間的フィルタの使用により、結果的なPC MOPAレーザシステムの忠実度は80%以上に増加され、PCMの典型的な固有の60%の忠実度にまさる実質的な改善が得られる。モデルはまたレーザシステムの全体の効率の減少が、空間的フィルタの付加により1%しか減少しなかったことを示している。
当業者は、通常の空間的フィルタがパワー増幅器31の前だけに設けられることを認識するであろう。この場合に、増幅器は入力ビームに収差を生成し、PCMはビームを反射するが、高度の発散モードを除いて収差に対して補正する。これらの高度の発散モードは主として忠実度に対する損失に対して応答する。典型的に、高度の発散モードはまたビームラインを通る2回の通過で増幅される。出力における単一の空間的フィルタはターゲットにおける特定されたビームサイズを生成する増幅された高い収差を有する部分を除去する。残念ながら、この方法は、続いて廃棄されるビームの部分を増幅することによって増幅器中のパワーを無駄にする欠点がある。
本発明の制限は、共役装置の範囲およびビームが収差を受ける量である。例えば、もしも共役装置が70倍のDLのような高い収差でけを受けることができ、入力ビームが空間的フィルタなしで70DLである場合には、本発明の方法がパワー利用の観点から実際に悪いビームをより良いビームにするので、共役装置中の高い収差を有するビームを許容する能力においてヘッドルームが存在する。
2.ループPCM内の光学的収差および空間的フィルタ
本発明の第2の実施形態はループPCM装置の固有の位相共役忠実度を改善するための空間的フィルタ技術を使用する。熱非線形ループPCMにおける位相共役忠実度に影響を与える種々のファクターが存在する。これらのファクターには次のようなものが含まれている。(1)入力ビーム特性(ビームパワー、サイズ、発散、および偏光)、(2)非線形相互作用の幾何学的形態(ビーム交叉角度および非線形媒体の長さ)、(3)非線形媒体の特性(例えばdn/dT、熱伝導度)、(4)非線形セルの設計(非線形媒体および光学系における熱負荷)、(5)ホログラフプロセスにおける雑音、不安定、および寄生効果、(6)ループPCM共振器中の高次モード弁別。共振器中で空間的フィルタを使用する利点は非共役モードの成長を許さないことであり、それ故、ループPCM増幅器の利得を消耗させないことである。
図6は、本発明の別の実施形態によるループ共振器内に挿入された収差装置および空間的フィルタを有するループPCMの光学的概略図を示している。この実施形態は図2の通常の構成に類似しているが、例外は図2のレーザ増幅器が図6では2個の増幅器として示され、非線形媒体が熱非線形セルにより置換され、本発明により構成された空間的フィルタ110 が共振器中に挿入されていることである。熱非線形セル102 は、空間的パターンを有するビームが吸収媒体を有する液体中を通過するとき、強度の高いビームの部分が液体を加熱して結合パラメータ“dn/dT”にしたがって異なる屈折率を有する区域を生成する原理に基づいて動作する。この強度パターンは実時間ホログラフプロセスにおいて2つのビーム間の干渉によって生成される。そのホログラフは非線形媒体の屈折率中に書込まれて光をミラー表面のように回折する。このホログラフミラーと、ループ内に配置されている他のミラーおよび利得媒体により、レーザ作用がループ中に雑音から成長するような発振状態が設定される。ホログラフミラーは位相共役戻りビームを生成するために必要なタイプである。本発明によれば、空間的フィルタ110 は空間的なクリップによって高次モードを抑制するために設けられている。空間的フィルタ110 は第1および第2のレンズ112 と116 とを含み、その間にそれと光学的に整列してピンホール孔114 が配置されている。第3のレンズ120 は熱非線形セル102 の相互作用領域内のビームを規制し、ループPCM共振器の安定性を制御するために設けられており、収差装置118 は第2のレンズ116 と第3のレンズ120 との間に配置されている。
ビーム強度プロフィールもまたループPCM通路内の種々の地点で示されており、それはMATLABにおいてモデル化された2次元波光学的コンピュータから導出される。ループPCMの共役忠実度の改善は61乃至85%であることが図6に示されている。
動作において入力ビームE1 が熱的非線形セル102 を通ってループに入り、ループを時計回りに巡って、空間的フィルタ110 内のピンホール孔114 が時計回りに伝送されるビームに関して過大な寸法にされなければならないとき実質的にクリップがない。しかしながら、本発明の収差装置および空間的フィルタが挿入されていないループ共振器は、反対の反時計方向の雑音から成長される可能性のある多数のモードをサポートすることができる。図6にE4 で示されたこれらのモードは、所望の位相共役モードおよび1以上の非共役モードを含んでいる。収差装置118 は非共役モードの角度を拡大して空間的フィルタの焦点におけるモードサイズを増加させ、これらのモードをピンホール孔114 で大量にクリップさせる。クリップされた非共役モードはそれ故失われ、ループ共振器中では認識できるような成長は生じない。他方で位相共役モードはこのクリップによる損失を受けない。その理由は収差装置118 によって生じた歪みは位相共役プロセスによって補償されるからである。それ故、ビームE4 は、E4 がE3 に対して共役であるように所望の位相共役モードが支配的となる。ビームE4 は時計回りでループを巡って伝搬してビームE2 となり、反射されたビームEOUT として非線形セル102 を通ってループ共振器から外部へ結合される。それはE1 と位相共役であるモードによって支配される(EOUT は近似的にE1 *に等しい)。
ここに記載された本発明の実施形態は例示的なものであり、異なったループPCM共振器構造、パワー増幅器構造(コヒーレントに組合わされた媒体および光ファイバ媒体を含む)、リレー映像方式(反射および回折を含む)、空間的フィルタ(ピンホール孔、レンズを有し、または自由空間で、或いは高い角度選択性の厚いブラッグ格子)、ピンホール孔素子(ハードおよびソフト開口手段を含む)、光学的収差装置(周期的構造および特定のゼーニック強度を有する調整された位相シートを含む)が本発明の技術的範囲および精神を逸脱することなく使用されることができる。さらに刺激されたブリローイン散乱、後方刺激されたラーマン散乱、光回折および非線形利得のような他の光学的位相共役プロセスが本発明の技術的範囲および精神を逸脱することなく使用されることができる。
さらに、本発明は反射性、屈折性、または回折性阻止により構成されることができる。本発明は光スペクトルに限定されない。本発明は、当業者により認識されるような電磁波スペクトルの他の部分のエネルギを使用して構成されることもできる。
以上、本発明は特定の応用に対する特定の実施形態を参照にして説明された。当業者およびこの発明にアクセスする者は、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲内において種々の付加的な変形、応用および実施形態を認識することができるであろう。
したがって、そのような任意のおよび全ての応用、変形および実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲内に含まれることが意図されている。
通常の技術により構成された2パス位相共役マスター発振器/パワー増幅器(PC MOPA)の概略図。 液体中の熱的非線形に基づいたループ位相共役ミラー方式の光学方式の概略図。 本発明の例示的な1実施形態によるPC MOPA設計の第1の実施形態の光学的概略図。 本発明の実施形態による位相共役装置の忠実度を改善するように設計された空間的フィルタの例示的な実施形態の概略図。 収差が複数の増幅器により供給される本発明の別の実施形態の概略図。 本発明の別の実施形態によるループ共振器内に挿入された収差装置および空間的フィルタを有するループPCMの光学的概略図。

Claims (4)

  1. レーザビームを出力するように構成されたマスター発振器(12)と、
    前記レーザビームと光学的に整列して同じ光軸上に配置されているパワー増幅器ビームライン(30)と、
    位相共役エネルギと非共役エネルギとを有するビームを生成するループ位相共役ミラー(50)と、
    前記パワー増幅器ビームライン(30)と光学的に整列して同じ光軸上に配置されている1以上の空間的フィルタ(18, 20 または22) とを具備し、
    前記空間的フィルタ(22)は、前記ビームの収差の量の大きさよりも大きい直径を有する開口を有し、前記レーザビーム中の前記非共役エネルギの角度的広がりを増加させる手段と、前記前記レーザビーム中の前記共役エネルギを抑制することなく前記レーザビーム中の角度的に広げられた前記非共役エネルギを抑制する手段とを備えており、
    前記空間的フィルタの1つ(22)は、前記位相共役ミラー(50)の出力部に配置されていることを特徴とする位相共役レーザ。
  2. 前記開口の直径は、前記ビームの直径の大きさの2乃至3倍である請求項1記載のレーザ。
  3. 前記開口の直径は、入来するビームの直径よりも大きく、前記ビーム中のパワーの損失および位相情報損失を最小にするのに適切なマージンを有している請求項1記載のレーザ。
  4. さらに、位相共役ミラー(50)の出力部に配置されている前記空間的フィルタ(22)とは別の空間的フィルタ(18, 20)が前記パワー増幅器ビームライン(30)の段間に置されている請求項1記載のレーザ。
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