JP4619628B2 - 導電性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

導電性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性樹脂組成物およびその製造方法に関し、更に詳細には、プラスチックが有する可塑性と、好適な導電性とを併有すると共に、日本の如き、高温高湿環境(以下、HH環境と云う)において含有物のブリード等を大きく低減し、特に電子潜像印刷用ローラ等の素材として好適に採用され得る導電性樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、二次電池、帯電防止剤または電解コンデンサ等に好適に使用される、所謂導電性樹脂組成物の原料として、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレンまたはこれらの誘導体等に代表される真性導電性高分子が好適に使用され、かつ実用化されている。そして前記真性導電性高分子は、これまで薄膜状に成形されたフィルムまたは基材表面に製膜させるコーティング材として使われており、厚みの有する成形体等としての利用例は殆ど見られなかった。
【0003】
これに対して最近、下記の特許文献1に示す如く、ポリアニリンまたはその誘導体と、ドデシルベンゼンスルホン酸等のプロトン酸と、酸化亜鉛等の金属化合物とを加熱混合することにより、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルまたはアクリル等のホモまたはコポリマーに容易に混合し得る素材であるポリアニリンコンパウンドが開発された。この素材を使用することで、通常のプラスチック成形技術をそのまま用いることで、立体形状等の所要形状に溶融成形可能な導電性樹脂組成物を得ることができる。前記ポリアニリンコンパウンドは、基材となる様々なポリマーとの混練において掛けられる剪断応力により、数nm〜数十nmサイズに微細化され、ドデシルベンゼンスルホン酸等のプロトン酸の界面活性作用により、該ポリマー中に極めて小さな相として安定的に分散される。そして前記ポリマー中に形成された前記分散相が三次元的に連続することにより、該ポリマーからなる成形体等が導電化されるものと考えられる。
【0004】
【特許文献1】
特許第3017903号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、界面活性作用を供するドデシルベンゼンスルホン酸等のプロトン酸および金属化合物は少量の添加により、基材であるポリマー中に分散されているポリアニリンまたはその誘導体の、中和、可塑化、安定化および導電化をなし得る。殊に前記金属化合物は、前記ポリマーに含有されている各物質の安定化に大きく寄与しており、好適な導電性ポリマーに不可欠な要素である。しかし温度28℃、湿度85RH%となるようなHH環境下においては、前記ポリアニリンまたはその誘導体にドーピングされているプロトン酸(ドーパント)が、得られた導電性樹脂組成物の表面にベタつきを感じる程多量に浸み出る、すなわちブリードしてしまう問題が生じる。
【0006】
そして前記プロトン酸のブリード現象は、得られた導電性樹脂組成物内からの導電性発現物質の流出であるため、該導電性樹脂組成物の導電性の悪化も問題となる。またブリードした前記プロトン酸は、乾燥状態においては結晶化して絶縁体として作用するため、得られる前記導電性樹脂組成物が発現する導電性が該プロトン酸の減少以上に大きく悪化するという問題が確認されていた。このため日本を含む東アジア、東南アジア、南アジア、北米南部地域または南米の如き高温多湿な環境となる地域においては、如何なる用途であっても実質上利用できないという致命的な問題となっていた。
【0007】
【発明の目的】
この発明は、従来の技術に係る導電性樹脂組成物における前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、基材たるオレフィン系熱可塑性エラストマに対して、所定量の酸化亜鉛を混合・存在させることにより、HH環境下におけるプロトン酸のブリードを抑制し、これにより使用環境による導電性の変動幅を通常の使用に影響を与えない範囲とすると共に、該ブリードによるベタつき等の使用時における弊害を回避し得る導電性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係る導電性樹脂組成物は、
プロトン酸と共に加熱処理することによりドープされたポリアニリンまたは該ポリアニリンの誘導体に対して、亜鉛、銅、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物或いはハロゲン化物の金属化合物を混合したコンパウンドと、
ブリード抑制剤として作用し、導電性を有する酸化亜鉛を分散させたオレフィン系熱可塑性エラストマとを混合してなり、
前記コンパウンドの混合量を、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲に設定し、前記酸化亜鉛の混合量を、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲に設定し、かつ前記コンパウンドの体積を100とした場合に、該酸化亜鉛の体積を30体積%以上になるよう設定し、
得られた導電性樹脂組成物の通常環境下および高温高湿環境下における体積抵抗率の対数値を、何れも12log(ρv/Ωcm)以下とすると共に、得られた導電性樹脂組成物の通常環境下における体積抵抗率の対数値と、高温高湿環境下における体積抵抗率の対数値との差を、2log(ρv/Ωcm)以下としたことを特徴とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係る導電性樹脂組成物の製造方法は、
プロトン酸と共に加熱処理することによりドープされたポリアニリンまたは該ポリアニリンの誘導体と、亜鉛、銅、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物或いはハロゲン化物の金属化合物とを加熱状態で混合してコンパウンドを得て、
ブリード抑制剤として作用して導電性を有する酸化亜鉛を、オレフィン系熱可塑性エラストマに対して加熱状態で混合して分散させた混合物を得て、
前記混合物に対して、前記コンパウンドを加熱状態で混合するようにした導電性樹脂組成物の製造方法であって、
前記コンパウンドは、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲になるよう混合され、前記酸化亜鉛は、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲になるよう混合されると共に、該酸化亜鉛は、前記コンパウンドの体積を100とした場合に、該酸化亜鉛の体積が30体積%以上になるよう混合されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物およびその製造方法について説明する。本願の発明者は、基材(マトリックス)を形成するオレフィン系熱可塑性エラストマに対して所定量の酸化亜鉛と、従来公知であるプロトン酸がドーピングされ、かつ所定の金属化合物で処理されたポリアニリンまたはその誘導体を主体とする混合物、すなわち該ポリアニリンまたはその誘導体のコンパウンドとを混合することにより、該コンパウンドによる低抵抗の発現と、得られる導電性樹脂組成物のHH環境使用下におけるブリードの大幅な抑制との達成、すなわち該ブリード物質によるベタつき等を回避すると共に、環境変動に対して導電率、具体的には体積抵抗率の変化を実用に影響がない程度の範囲とし得ることを知見したものである。なお、本発明において通常環境および高温高湿環境とは、夫々具体的には温度10℃、湿度15RH%および温度80℃、湿度85RH%の環境を指すものとする。また体積抵抗率のおける実用使用に影響がない程度の範囲は、現状多用されている電子潜像印刷用途ローラの前述の環境変動における変動幅、具体的には該体積抵抗率を対数化した際の一般的な変動幅である2以下と設定した。
【0010】
次に、実施例の導電性樹脂組成物を構成する各要素について製造方法と共に説明する。前記導電性樹脂組成物10は、図1に示す如く、その基材、すなわちマトリクスを構成するオレフィン系熱可塑性エラストマ12と、該エラストマ12内に良好な導電性を発現するよう分散されたポリアニリンまたはその誘導体のコンパウンド(以下、単にコンパウンドと云う)14と、該オレフィン系熱可塑性エラストマ12に対して混合されて、最終的に該コンパウンド14を取り巻く形で分散され、ブリード抑制剤として作用する酸化亜鉛16とから構成される。ここで前記コンパウンド14は、予め所定条件下においてプロトン酸をポリアニリンまたはその誘導体に対して添加すると共に、所定の金属化合物により処理を施された状態の混合物である。
【0011】
前記導電性樹脂組成物10の製造方法は、図2に示す如く、基本的にコンパウンド製造工程S1および各原料混合工程S2からなる。前記コンパウンド製造工程S1は、本発明に係る導電性樹脂組成物10において所定の導電性を発現させるポリアニリンまたはその誘導体を、プロトン酸と共に100〜200℃の温度下で予め加熱処理すると共に、金属化合物による処理を実施してドープ化されたポリアニリンまたはその誘導体、すなわち前記コンパウンド14を製造する工程である。また前記各原料混合工程S2は、前記オレフィン系熱可塑性エラストマ12と、酸化亜鉛16と、前記コンパウンド製造工程S1で得られたコンパウンド14とを混合して導電性樹脂組成物10を得る工程である。
【0012】
前記各原料混合工程S2で使用され、得られる導電性樹脂組成物10の基材の主材料である前記オレフィン系熱可塑性エラストマ12としては、得られる導電性樹脂組成物10が使用される使用用途にもよるが、その永久圧縮歪みが小さい、耐熱性が高いまたはその他有用な物性を備える、例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー)等の完全架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマの使用が好適である。なお、極性が高いポリウレタン等やスチレン等においては、本発明に係るブリード抑制剤としての酸化亜鉛を使用しても、ブリードの抑制効果の良好に発現しないことが確認されているため留意が必要である。
【0013】
前記ポリアニリンまたはその誘導体としては、非置換ロイコエメラルジン、プロトエメラルジン、エメラルジン、ニグルアニリンまたはトルプトロエメラルジン形態等のプロトン酸でのドーピングにより導電性ポリマーとして作られ得る任意のポリアニリン質物質が使用可能である。好ましくはエメラルジン塩基形態のポリアニリンであることが確認されている。また、置換アニリンから作られるポリマー、または簡便なポリアニリン置換体、すなわち化学的に修飾されたポリアニリン等のポリアニリン誘導体も使用に供し得る。
【0014】
また前記ポリアニリンまたはその誘導体の混合量は、前記コンパウンド製造工程S1で得られたコンパウンド14として規定され、得られる導電性樹脂組成物10の全体に対して10〜30重量%の範囲に設定される。基本的に得られる導電性樹脂組成物10の導電性は、このコンパウンド14の混合量に反比例する数値であり、該混合量が少ないと導電性が確保できなくなる。従ってこの混合量が10重量%未満であると、一般的に本発明に係る導電性樹脂組成物10を好適な素材として製造される電子潜像印刷用ローラ等に求められる体積抵抗率である4〜12log(ρv/Ωcm)の範囲を逸脱し、好適な使用がなされなくなってしまう。一方、この混合量が30重量%を越えると、前記ポリアニリンまたはその誘導体が有する硬度が高くかつ脆いといった物性が、得られる導電性樹脂組成物10においても顕著に発現することになってしまい、ローラ等の所定のニップ圧を必要とする部材への採用だけでなく、汎用的な取り扱いについても困難となってしまう問題が指摘される。
【0015】
前記プロトン酸としては、前記ポリアニリンまたはその誘導体をドーピングし得る、例えばHCl、H2SO4、HNO3、HClO4、HBF4、HPF6、HF、リン酸、スルホン酸、ピクリン酸、m−ニトロ安息香酸、ジクロロ酢酸または重合性酸等の様々なプロトン酸が使用できる。特にドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)に代表される芳香族スルホン酸等の如き有機スルホン酸が好適に使用される。
【0016】
前記プロトン酸のポリアニリンまたはその誘導体に対する添加量は、両者のモル比率として規定される。そしてそのモル比率は、ポリアニリンまたはその誘導体:プロトン酸=1:0.1〜1:1.1、好適には1:0.5〜1:0.7の範囲に設定される。
【0017】
前記金属化合物は、前記ポリアニリンまたはその誘導体と、プロトン酸とを混合する際または混合後に添加されるものであり、ドープされたポリアニリンの基材中での酸性発現を抑制し、かつより容易に溶融加工できるようにする、所謂安定化剤の役割を担う。具体的には、亜鉛、銅、アルミニウム、チタン、鉄、ジルコニウムマグネシウム、バリウム、カルシウム、カドミウム、鉛またはスズ等の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、ステアリン酸塩、炭酸塩、リジノール酸塩、パルミチン酸塩、オクタン酸塩、ラウリン酸塩、フェノラート、マレイン酸塩またはオクチルチオグリコラートが単独或いは複合して使用される。これらは、前述した酸性発現抑制効果または安定化作用の何れかを優先的になし得るか等の諸要素によって適宜選択して使用される。特に、ステアリン酸亜鉛または酸化亜鉛等の亜鉛をベースとする酸化物または水酸化物の使用が、前述の双方の作用を高い水準で発現するため好適である。
【0018】
前記金属化合物のポリアニリンまたはその誘導体に対する添加量は、前記プロトン酸に対するモル比率として規定される。そしてそのモル比率は、プロトン酸:金属化合物=1:1〜1:4、好適には1:2.2〜1:2.7の範囲に設定される。
【0019】
また、ここで使用される金属化合物として好適な酸化亜鉛は、ドーパントとなり導電性を発現させる前記プロトン酸と結合して、前記ポリアニリンまたはその誘導体内での分散性を確保する働きを有しており、後述([0020])するブリード抑制剤としての酸化亜鉛16とは全く異なる作用を供するものである。また前記金属化合物としての酸化亜鉛の量を増大させても、前述したブリード抑制剤としての作用は発現されず、前記プロトン酸と塩を生成させてしまう。その結果、前記プロトン酸のドーパントとしての働きは阻害され、得られる導電性樹脂組成物10が所定の導電性を発現しなくなるという、深刻な問題を発生させてしまう。すなわち、前記金属化合物としてポリアニリンまたはその誘導体に混合される金属化合物としての酸化亜鉛と、本発明に係るブリード抑制剤としての酸化亜鉛16とは全く異なる作用を供する物質であり、その点を留意する必要がある。
【0020】
前記ブリード抑制剤として作用する酸化亜鉛16は、一般的に流通している、例えば特1号〜特3号酸化亜鉛や、焼成亜鉛華、活性亜鉛華または一部アルミニウム等の他金属を含有する酸化亜鉛合金等が何れも使用可能である。なお、前記酸化亜鉛16の粒径については、基材中での反応性を高めることによってもブリード抑制効果の向上が期待できるため、より小さい方が好ましい。
【0021】
そして前記酸化亜鉛16の混合量は、全体に対して10〜30重量%の範囲に設定される。この混合量が10重量%未満であると、HH環境下における使用において前記プロトン酸のブリード現象の抑制が実効を伴わないものとなってしまう。一方、この混合量が30重量%を越えると、得られる導電性樹脂組成物10の硬度が高くなる等の悪影響が発生してしまい、前記コンパウンド14が所定量以上混合されたのと同様に、好適な物性を有する電子潜像印刷用途ローラの素材として採用し得なくなってしまう問題が指摘される。また酸化亜鉛16の混合量が40重量%以上となると、該亜鉛が基材であるオレフィン系熱可塑性エラストマ中に充分に分散されなくなってしまうため、均質な成形体が得られなくなってしまう問題も併せて指摘される。
【0022】
また同時に前記酸化亜鉛16は、前記コンパウンド14に含有されるプロトン酸のブリードを抑制するためのものであるため、該ブリードを好適に抑制するためには該コンパウンド14の混合量に伴って該酸化亜鉛16の混合量も増加させる必要がある。前記酸化亜鉛16は、前述([0010])した如く、基材たるオレフィン系熱可塑性エラストマ12内に分散して存在する前記コンパウンド14の周囲を取り巻くよう分散することで、該コンパウンド14内部からブリードしてくる前記プロトン酸を抑え、該プロトン酸の該エラストマ12、すなわち導電性樹脂組成物10や該組成物10から製造された成形体表面へのブリードを抑制するものである。従って、前記酸化亜鉛16の混合量は、前記コンパウンド14の混合量に応じて一定以上の比率となるように設定されている。
【0023】
本発明において、前記コンパウンド14と酸化亜鉛16との量的関係は得られる導電性樹脂組成物10内での存在状態に左右されるため、体積百分率で表される。そして、前記コンパウンド14の体積100に対して、前記酸化亜鉛16の体積が少なくとも30体積%以上、好ましくは35体積%以上に設定されることで好適なブリード抑制作用が得られるものである。この混合比率において前記酸化亜鉛16の割合が前述の値を下回ると、前記プロトン酸のブリードを効果的に抑制し得ず、その結果、得られた導電性樹脂組成物10または該組成物10から製造された成形体の好適な使用が困難となる。殊に前記酸化亜鉛の体積%が20を下回ると、ブリードの度合いは酷いものとなることも確認されている。また前記酸化亜鉛の体積%が30〜35近傍である場合には、前記オレフィン系熱可塑性エラストマ12に対する該酸化亜鉛の体積混合率、すなわちマトリクス中における該酸化亜鉛の体積濃度によりブリードの度合いが左右されていると考えられる。
【0024】
前述のS1およびS2の2工程を経ることで得られる本発明に係る導電性樹脂組成物10は、その後各種部材の素材として好適に使用され、該部材の形状等に合わせた押出、射出またはプレス成形等によって該形状に成形されて使用に供される。本発明に係る導電性樹脂組成物10は、発現する体積抵抗率を前記コンパウンド14の混合量で任意に制御可能であると共に、基材たる熱可塑性樹脂の可塑性を生かして様々な形状に容易に加工し得るため、素材としての使用用途は極めて広くかつ汎用性の高いものである。
【0025】
また本発明に係る導電性樹脂組成物10を製造するに際しては、前述した各原料の他、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維、難燃剤、つや消し剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、滑剤その他の機能性フィラー等を、該導電性樹脂組成物10を原料として製造されるアキュミュレーター、感知要素、スイッチ、光要素、回路板、加熱要素、静電気放電エリミネーション(ESD)または電磁波シールド(EMI)等の使用用途に応じて適宜併用するようにしてもよい。
【0026】
【実験例】
以下に、本発明に係る導電性樹脂組成物と、従来の技術に係る導電性樹脂組成物とにおけるHH環境下での使用を考慮した場合の導電性の変化を計測する実験例を示す。
【0027】
(実験1) 通常の酸化亜鉛を使用した場合
本実験1において混合される各物質、すなわちオレフィン系熱可塑性エラストマ(商品名 サントプレン201−55;エーイーエス・ジャパン製)、ブリード抑制剤としての酸化亜鉛(ハクスイテック製)およびコンパウンド(商品名 Panipol CXM;Panipol製)を、以下に示す表1(各実施例)または表2(各比較例)に記載の割合(重量%および体積%)で、その体積を約90mlとするように調整し、回転数46.5回転/分、温度190℃、時間5分間の条件で混合装置により混合して実施例1〜7および比較例1〜8に係る導電性樹脂組成物を夫々作製した。そして前記導電性樹脂組成物10gを温度190℃、圧力9.8MPaの条件でホットプレス装置により、厚さ1mmのシート状試験片とし、以下に示す測定を実施した。なお、本実験例中で使用する各機器については以下に記する。また参考例として、コンパウンドを30重量部混合し、ブリード抑制剤として作用する酸化亜鉛を混合しなかったものについても同様に試験片を製造・測定を実施した。
【0028】
【表1】
Figure 0004619628
【0029】
【表2】
Figure 0004619628
【0030】
(使用器具)
・混合装置:商品名 ラボプラストミル;東洋精機製、容量100ml
・ホットプレス装置:商品名 ホットプレス;テスター産業製
・抵抗測定装置:R8340A;アドバンテスト製
【0031】
(実施した測定およびその評価法)
・各試験片を、本発明における通常環境(温度10℃、湿度15RH%)下およびHH環境(温度80℃、湿度85RH%)下に夫々48時間放置し、放置後のブリードの発生状況を該試験片の表面状態を目視することで確認して、◎:殆どなし、○:良好、×:使用不可の3段階で評価し、また放置後の体積抵抗値をJISK 6911に準拠したφ50の真鍮製測定電極、内径φ70のリング状ガード電極および真楡製の対向電極を使用し、抵抗測定装置により1〜100Vの範囲の直流電圧を15秒印加することで電気抵抗値を測定し、ここから体積抵抗率を算出した。そして夫々の環境下単独の体積抵抗率または該体積抵抗率の差により評価をした。なお、前記ブリードの度合いを示す結果の上欄に、前記コンパウンド100体積部に対する酸化亜鉛の体積部を併記した。
【0032】
(実験1の結果)
得られた各測定結果等を上記表1および表2に併記する。そして得られた結果より、前記ブリード抑制剤として作用する酸化亜鉛の混合量が、全体に対して10〜30重量%の範囲に設定され、かつ前記コンパウンド100体積%に対して、少なくとも30体積%以上設定されることで、充分な導電性と、導電性を発現させるプロトン酸のHH環境下におけるブリードを抑制すると共に、使用環境による導電性の変動幅を通常の使用に影響を与えない範囲とし得ることが確認された。なお、酸化亜鉛が40重量部以上となる場合には、該亜鉛が基材であるオレフィン系熱可塑性エラストマ中に充分分散されなくなってしまうため、均質な試験片(成形体)が得られなくなってしまう現象も確認された。
【0033】
(実験2) 導電性を有する酸化亜鉛を使用した場合
本実験1において使用されるブリード抑制剤としての酸化亜鉛(ハクスイテック製)に代えて、導電性酸化亜鉛(商品名 23−K;ハクスイテック製)を使用し、以下に示す表3に記載の割合で各原料を混合して実施例8および9並びに比較例10および11に係る試験片を実験1と同様に製造して測定評価を行なった。
【0034】
【表3】
Figure 0004619628
【0035】
(実験2の結果)
得られた各測定結果等を上記表3に併記する。そして得られた結果より、前記実験1の結果と同様に、前記ブリード抑制剤として作用する酸化亜鉛の混合量が、全体に対して10〜30重量%の範囲に設定され、かつ前記コンパウンド100体積%に対して、少なくとも30体積%以上設定されることで、充分な導電性と、導電性を発現させるプロトン酸のHH環境下におけるブリードを抑制すると共に、使用環境による導電性の変動幅を通常の使用に影響を与えない範囲とし得ることが確認された。なお、酸化亜鉛が有する導電性は、導電性樹脂組成物の導電性には殆ど寄与していないことも確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る導電性樹脂組成物によれば、基材たるオレフィン系熱可塑性エラストマに対して、所定量の酸化亜鉛を混合・存在させることにより、導電性を発現させるポリアニリンまたはその誘導体内にドーピングされたプロトン酸のHH環境下におけるブリードを抑制し、これにより使用環境による導電性の変動幅を通常の使用に影響を与えない範囲とすると共に、該ブリードによるベタつき等の使用時における弊害を回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物の組成的な構造を微視的に示した概略図である。
【図2】実施例に係る導電性樹脂組成物の製造工程を示す簡単なフロー図である。

Claims (2)

  1. プロトン酸と共に加熱処理することによりドープされたポリアニリンまたは該ポリアニリンの誘導体に対して、亜鉛、銅、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物或いはハロゲン化物の金属化合物を混合したコンパウンド(14)と、
    ブリード抑制剤として作用し、導電性を有する酸化亜鉛(16)を分散させたオレフィン系熱可塑性エラストマ(12)とを混合してなり、
    前記コンパウンド(14)の混合量を、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲に設定し、前記酸化亜鉛(16)の混合量を、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲に設定し、かつ前記コンパウンド(14)の体積を100とした場合に、該酸化亜鉛(16)の体積を30体積%以上になるよう設定し、
    得られた導電性樹脂組成物の通常環境下および高温高湿環境下における体積抵抗率の対数値を、何れも12log(ρv/Ωcm)以下とすると共に、得られた導電性樹脂組成物の通常環境下における体積抵抗率の対数値と、高温高湿環境下における体積抵抗率の対数値との差を、2log(ρv/Ωcm)以下とした
    ことを特徴とする導電性樹脂組成物。
  2. プロトン酸と共に加熱処理することによりドープされたポリアニリンまたは該ポリアニリンの誘導体と、亜鉛、銅、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物或いはハロゲン化物の金属化合物とを加熱状態で混合してコンパウンド(14)を得て、
    ブリード抑制剤として作用して導電性を有する酸化亜鉛(16)を、オレフィン系熱可塑性エラストマ(12)に対して加熱状態で混合して分散させた混合物を得て、
    前記混合物に対して、前記コンパウンド(14)を加熱状態で混合するようにした導電性樹脂組成物の製造方法であって、
    前記コンパウンド(14)は、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲になるよう混合され、前記酸化亜鉛(16)は、導電性樹脂組成物全体に対して10〜30重量%の範囲になるよう混合されると共に、該酸化亜鉛(16)は、前記コンパウンド(14)の体積を100とした場合に、該酸化亜鉛(16)の体積が30体積%以上になるよう混合される
    ことを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法。
JP2003120517A 2003-04-24 2003-04-24 導電性樹脂組成物およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4619628B2 (ja)

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