本発明の実施形態に係るリニアアクチュエータ装置10について、図1乃至図14に基づいて説明する。先ず、リニアアクチュエータ装置10の概略全体構成を説明し、次いで本発明の要部を含む回転直動変換機構18の詳細構成を説明し、その後、リニアアクチュエータ装置10を昇降式便座装置80に適用した例を説明する。なお、説明の便宜上、各図に適宜矢印Aにて示す方向を前方向すなわち昇降式便座装置80の便座86に着座する人の向く方向とし、矢印Bにて示す方向を上方向とし、左右の方向を用いるときは着座者にとっての左右方向を用いることとする。
(リニアアクチュエータの全体構成)
図9に示される如く、リニアアクチュエータ装置10は、それぞれ別体で構成された一対のリニアアクチュエータ12L、12Rを有して構成されている。各リニアアクチュエータ12R、12Lは、それぞれ単独で本発明におけるリニアアクチュエータに相当する。
各リニアアクチュエータ12L、12Rには、図9、図10に示されるように、駆動機構14L、14Rが設けられており、この各駆動機構14L、14Rは、本実施形態では同一構成とされている。駆動機構14L、14Rは、図10、図11に示されるように、駆動モータ16、回転直動変換機構18、出力ロッド20(ロッド)、エンドハウジング22、本体ハウジング24、フロントハウジング26、位置検出基板28を備えている。
駆動モータ16は、例えば、ブラシ付きモータ等のDCモータで構成されており、エンドハウジング22の下端に固定されている。また、駆動モータ16の内部には、回転数検出器17が内蔵されており、この回転数検出器17は、駆動モータ16の一回転毎にパルスを発生するようになっている。また、駆動モータ16には、給電用のコネクタ30が設けられている。
回転直動変換機構18は、駆動モータ16の回転駆動力を直線運動の駆動力に変換してロッド部材としての出力ロッド20を進退動させるものであり、図11に示されるように、駆動モータ16によって回転させられる回転軸32に形成された「駆動側歯車」としてのウォーム33と、ウォーム33に噛合される「被動側外歯歯車」としてのウォームホイール34と、ウォームホイール34に同軸的かつ一体的に設けられた送りねじ軸36と、送りねじ軸36に螺合されたナット38とを備える。
ナット38の外周部に凹設されたガイド溝46には、本体ハウジング24の内周面から略全長に亘り突設されたガイドレール48が軸線方向に摺動可能に入り込んでおり、ナット38は本体ハウジング24に対し回り止めされている。また、図11に示される如く、ナット38の上端には、後述する位置検出基板28に設けられた全進出位置検出スイッチ50又は全格納位置検出スイッチ52と当接する当接部21が突設されている。
このナット38には、本体ハウジング24の前端を貫通すると共に送りねじ軸36の前端側を同軸的に入り込ませる円筒状に形成された出力ロッド20の後端20Aが固定されている。また、出力ロッド20における常に本体ハウジング24の外側に位置する前端には、後述する昇降式便座装置80(図13、図14参照)に設けられたリンク機構部94L、94Rの第1リンク部材96L、96Rに回動自在に接続固定される可動側接続部23が設けられている。可動側接続部23は、略円柱状に形成されると共に、リンク結合用の連結孔23A、第1リンク部材96L、96Rの逃がし用のスリット23Bを有する。
以上により、回転直動変換機構18では、駆動モータ16が回転するとウォーム33が回転し、ウォーム33の回転によりウォームホイール34及び送りねじ軸36が回転すると、ナット38が出力ロッド20と共に軸線方向に移動するようになっている。この実施形態では、回転直動変換機構18は、駆動モータ16の鉛直方向に沿って配置された回転軸32の回転を、出力ロッド20の略前後方向(水平方向)の直線運動に変換する構成である。送りねじ軸36が本発明における「回転軸」に相当し、ナット38又は出力ロッド20が本発明における「出力部材」に相当する。
また、この実施形態で回転直動変換機構18は、駆動モータ16の正転によって出力ロッド20を前進(本体ハウジング24に対し伸長)させ、駆動モータ16の逆転によって出力ロッド20を後退させるようになっている。すなわち、後述するハウジングケース40L、40R内に収納された各駆動機構14L、14Rは、可動側接続部23をハウジングケース40L、40Rの外側に位置させた出力ロッド20を該ハウジングケース40L、40Rに対し伸縮させるようになっている。
なお、回転直動変換機構18では、ナット38の直動を送りねじ軸36の回転に変換することができないセルフロックが生じる設定とされている。また、上記したウォーム33とウォームホイール34とから成るウォームギヤは、増速側の回転伝達を行うことができないセルフロックが生じる設定とされている。
エンドハウジング22は、互いに噛み合わされたウォーム33及びウォームホイール34を収納している。また、エンドハウジング22内には、送りねじ軸36を軸線廻りに回転自在に軸支するベアリング42が収納、保持されている。この保持楮については後に詳述する。また、エンドハウジング22には、後述する昇降式便座装置80に設けられた本体ベース部材88の固定脚部90L、90Rに回動自在に接続固定される固定側接続部44が設けられている。固定側接続部44は、固定脚部90L、90Rへのリンク結合用の連結孔44A、相対角変位許容のためのスリット44Bを有する。
そして、エンドハウジング22の前端には、本体ハウジング24が固着具であるビス25によって固定されており、本体ハウジング24のエンドハウジング22と反対側には、フロントハウジング26が固着具であるビス27によって固定されている。フロントハウジング26は、出力ロッド20を挿通させる貫通孔26Aを有しており、該貫通孔26Aの孔縁において出力ロッド20を軸線方向に摺動可能に支持している。
また、本体ハウジング24内は、後端がエンドハウジング22に保持された送りねじ軸36が挿通しており、送りねじ軸36の前端は、ベアリング49(図11参照)を介して出力ロッド20の内周面に相対回転可能でかつ軸線方向の摺動可能に接している。すなわち、送りねじ軸36の前端は、ベアリング49、出力ロッド20を介してフロントハウジング26に支持されている。本体ハウジング24の内側には、上記の通りナット38のガイド溝46と係合するガイドレール48が長手方向に沿って形成されている。
位置検出基板28は、出力ロッド20の全進出位置と全格納位置とを検知するものであり、出力ロッド20の全進出時にナット38の当接部21と当接する全進出位置検出スイッチ50を前端近傍に備えると共に、出力ロッド20の全格納時に当接部21と当接する全格納位置検出スイッチ52を後端近傍に備えている。位置検出基板28は、本体ハウジング24内における送りねじ軸36の上方に配置されており、その一端がエンドハウジング22によって支持されると共に、その他端がフロントハウジング26によって支持されている。
また、位置検出基板28における全格納位置検出スイッチ52の後側には、全進出位置検出スイッチ50、全格納位置検出スイッチ52の検出信号を後述する制御回路基板66に出力するためのコネクタ31が設けられている。図10及び図11に示される如く、コネクタ31は、エンドハウジング22の上端に一体に形成されたコネクタハウジング部22Aから露出している。
以上説明した駆動部14R、14Lは、出力ロッド20の運動方向が水平方向に略一致するように、それぞれ対応するハウジングケース40R、40Lに収容保持されており、出力ロッド20の前端側すなわち可動側接続部23側及び固定側接続部44がハウジングケース40R、40Lを貫通して外部に突出している。出力ロッド20は、ハウジングケース40R、40Lの貫通部に設けられた図示しないシール部材と軸線方向への摺動可能に接している。また、駆動部14R、14Lは、略矩形容器状に形成された本体ハウジング24がハウジングケース40R、40L内の上部に配置され、駆動モータ16がハウジングケース40R、40L内の後部に配置されている。
図9に示される如く、リニアアクチュエータ12Rのハウジングケース40R内には、電源回路部54が収納されている。電源回路部54は、ハウジングケース40R内における駆動部14Rの下方でかつ駆動モータ16の前方の空間内に配設されている。電源回路部54は、外部電源60(図12参照)からの電源供給(例えば、AC100V)を受けて一対のリニアアクチュエータ12L、12Rすなわち各駆動モータ16のそれぞれの駆動に必要な電源(例えば、DC24V)を生成するように構成されている。
本実施形態の電源回路部54には、図12に示されるように、電源回路が設けられた電源回路基板56が設けられており、電源回路基板56には、各コネクタ58A〜58Dが設けられている。コネクタ58Aには、外部電源60から延びる電源ケーブル62が接続されており、これにより、外部電源60から電源回路基板56が電源供給を受けるようになっている。
さらに、電源回路部54には、外部電源60から供給された電圧を変圧するためのトランス64が設けられており、このトランス64から延びる配線部材は、電源回路基板56にコネクタ58C、58Dを介して接続されている。本実施形態では、このトランス64も、ハウジングケース40R内に配置されている。
一方、リニアアクチュエータ12Lのハウジングケース40L内には、図9に示されるように、制御回路が設けられた制御回路基板66が収納されている。制御回路基板66は、ハウジングケース40L内における駆動部14Lの下方でかつ駆動モータ16の前方の空間内に配設されている。制御回路基板66の制御回路(以下、単に制御回路基板66という)は、電源回路部54からの電源供給に基づいて一対のリニアアクチュエータ12L、12Rのそれぞれを制御するように構成されている。
制御回路基板66には、図12に示されるように、各コネクタ68A〜68Gが設けられている。コネクタ68Aは、モータ出力用であり、リニアアクチュエータ12Rの駆動モータ16に設けられたコネクタ30に接続ケーブル72を介して接続される。また、コネクタ68Bは、位置検出信号入力用であり、リニアアクチュエータ12Rの位置検出基板28に設けられたコネクタ31に接続ケーブル72を介して接続される。なお、本実施形態において、接続ケーブル72は、図9に示されるように、電源回路部54の電源回路基板56と制御回路基板66とを接続する1本のワイヤハーネスとして構成されている。
コネクタ68Cは、モータ出力用であり、図12に示されるように、リニアアクチュエータ12Lの駆動モータ16に設けられたコネクタ30に接続ケーブル73Aを介して接続され、コネクタ68Dは、位置検出信号入力用であり、リニアアクチュエータ12Lの位置検出基板28に設けられたコネクタ31に接続ケーブル73Bを介して接続される。
また、コネクタ68Eは、電源入力用であり、電源回路部54のコネクタ58Bに接続ケーブル72を介して接続され、コネクタ68F、68Gは、操作信号入力用であり、それぞれハンドスイッチ70A、フットスイッチ70Bに接続される。
制御回路基板66による制御については、昇降式便座装置80の構成と共に後述する。
(回転直動変換機構の詳細構成)
図4には本体ハウジング24の背面図が示されている。この図に示される如く、本体ハウジング24は、軸線方向から見て略滴状の外縁形状を有する筒状に形成されている。本体ハウジング24には、下部に位置し送りねじ軸36が挿通されると共にナット38が往復動するための運動変換空間24Aと、上部に位置し位置検出基板28を配設するための基板設置空間24Bと、運動変換空間24Aと基板設置空間24Bとを連通する連通空間24Cが形成されている。
運動変換空間24Aには、上記したガイドレール48が本体ハウジング24(の周壁)から複数突出している。この実施形態ではガイドレール48は3つ設けられており、運動変換空間24Aと基板設置空間24Bとの間に位置するガイドレール48を切り欠くことで連通空間24Cが形成されている。したがって、ガイドレール48が4つ設けられていると把握することも可能である。
3つのガイドレール48には、それぞれビス25がねじ込まれるねじ孔48Aが形成されている。図11に示される如く、ねじ孔48Aは、本体ハウジング24の前側開口端にも形成されており、ビス27がねじ込まれるようになっている。
基板設置空間24Bの上部には、位置検出基板28を支持するための左右一対のスリット110が形成されている。位置検出基板28は、各スリット110に後端側から挿入されて本体ハウジング24にセットされるようになっている。この際、全進出位置検出スイッチ50、全格納位置検出スイッチ52の揺動アーム部50A、52A(図4、図6参照)は、連通空間24Cを通過するようになっている。
図6及び図7に示される如く、位置検出基板28の前端は、フロントハウジング26の背面から後向きに突設された上下一対の係合突起112間で保持するようになっている。位置検出基板28の前端は、フロントハウジング26の本体ハウジング24への取付動作に伴って、又はフロントハウジング26が取り付けられている本体ハウジングへの挿入動作に伴って、係合突起112間に入り込む構成である。
一方、図1及び図2に示される如く、位置検出基板28の後端は、エンドハウジング22におけるコネクタハウジング部22Aの後壁22Bに設けられた凹部114に入り込んで保持されるようになっている。位置検出基板28の前端は、エンドハウジング22の本体ハウジング24への取付動作に伴って凹部114間に入り込む構成である。
また、図5に示される如く、本体ハウジング24の連通空間24Cの下部は、ナット38から突設した当接部21が入り込んでおり、全進出位置検出スイッチ50、全格納位置検出スイッチ52のアーム部50A、52Aに当接可能とされている。全進出位置検出スイッチ50、全格納位置検出スイッチ52は、揺動アーム部50A、52Aが当接部21によって押し上げられると検出信号を出力するようになっている。
そして、図6及び図7に示される如く、位置検出基板28には、全進出位置検出スイッチ50の揺動アーム部50Aの下方への揺動を規制するカバー材116が取り付けられている。カバー材116は、揺動アーム部50Aの前部を下側から覆うように、上向きに開口するコ字状に形成されている。このカバー材116によって、図8(A)に示される如く前方に移動する当接部21が揺動アーム部50Aを通過して図8(B)に示される如く後方に移動する際に、当接部21が揺動アーム部50Aを押し上げることができる構成とされている。なお、カバー材116を備えない場合には、図8(C)に示される如く前方に移動する当接部21が揺動アーム部50Aを通過して図8(D)に示される如く後方に移動する際に、揺動アーム部21を下側に回動しようとして当接部21の後方への移動が阻害されてしまう現象が生じ得る。
図1乃至図3に示される如く、エンドハウジング22内には、ベアリング42が収容されるベアリング嵌入部118と、ウォームホイール34が収容されるホイール収容部120とが前後方向(送りねじ軸36の軸線方向)に連設されている。また、エンドハウジング22内におけるホイール収容部120の側方には、ウォーム33が収容されるウォーム収容部122が設けられおり、ウォーム収容部122とをホイール収容部120とは、窓部124を介してウォーム33とウォームホイール34との噛み合い可能に連通されている。なお、図2は、出力ロッド20の組付前の分解斜視図である。
図1及び図2に示される如く、ベアリング42は、送りねじ軸36の後端36Aに嵌合する内輪42Aと、エンドハウジング22のベアリング嵌入部118に嵌入される外輪42Bとが図示しない多数のボールやころを介して滑らかに相対回転可能に嵌合して構成されている。 外輪42Bの外径は、ウォームホイール34の外径よりも大とされている。
そして、図3に模式的に示される如く、ベアリング嵌入部118は、外輪42Bが嵌合する送りねじ軸36と同軸的な円筒面部118Aと、後端を規定し外輪42Bが当接する円環壁部118Bと、円環壁部118Bの径方向内側に位置し内輪42Aの後方に突出した送りねじ軸36の後端36Aを逃がす逃がし空間118Cとを有する。したがって、ベアリング嵌入部118に嵌入され外輪42Bを円環壁部118Bに当接させたベアリング42は、径方向及び後方への移動が規制されるようになっている。
このエンドハウジング22は、その前端面22Cから前方に突出した嵌合部22D(ず2参照)を本体ハウジング24の運動変換空間24Aに嵌合させると共に、前端面22Cを本体ハウジング24の後側開口端24Dに突き当てた状態で、自らを貫通したビス25がねじ孔48Aにねじ込まれる(螺合する)ことで、本体ハウジング24に固定的に取り付けられる構成である。
ここで、図1乃至図3に示される如く、回転直動変換機構18では、本体ハウジング24の後側開口端24Dから後側に突設された複数の「保持凸部」としての保持ピン125によって、ベアリング42の前方への移動を規制するようになっている。各保持ピン125は、本体ハウジング24の長手方向すなわち送りねじ軸36の軸線方向に沿って設けられている。
具体的には、複数の保持ピン125は、ウォームホイール34の外径よりも大径でかつベアリング42の外輪42Bの外径よりも小径である仮想円周に沿って配置され、それぞれ後端をベアリング42の外輪42Bの前面に当接させるようになっている。これにより、エンドハウジング22がビス25によって本体ハウジング24に取り付けられると、ベアリング42の外輪42Bがエンドハウジング22の円環壁部118Bと各保持ピン125との間に挟み込まれ、ベアリング42の前方への移動が規制されるようになっている。
この実施形態では、保持ピン125は、本体ハウジング24の後側開口端24Dにおける各ガイドレール48から突設されて計3本とされている。また、図4に示される如く、各保持ピン125は、ウォームホイール34に噛み合うウォーム33を避けるように、周方向に不等間隔で配置されている。そして、保持ピン125は、周方向に隣り合う保持ピン125がベアリング42(送りねじ軸36)の軸心廻りに180°未満の位置に存在するように配置されている。
各保持ピン125は、例えばステンレス鋼などの金属線材等にて構成され、前端をアルミニウム合金にて構成された本体ハウジング24に圧入することで、それぞれ本体ハウジング24に保持されている。本体ハウジング24は、アルミニウム合金の引抜材又は押出材とされている。また、エンドハウジング22、フロントハウジング26は、それぞれ樹脂成形によって形成されている。
この実施形態では、本体ハウジング24が本発明における[ハウジング」に、エンドハウジング22が本発明における「軸受保持部材、カバー部材」に、ベアリング嵌入部118が本発明における「仮保持部、ラジアル支持部、凹部」にそれぞれ相当する。
(昇降式便座装置への適用例)
次いで、図13、図14を参照しながら、上記構成からなるリニアアクチュエータ装置10を昇降式便座装置80に適用した例について説明する。
本実施形態に係る昇降式便座装置80は、例えば、洋式の便器82に好適に使用されるものであり、昇降機構84を備えている。そして、この昇降機構84を作動させて被駆動部材としての便座86を昇降させるための駆動装置として、上述のリニアアクチュエータ装置10が用いられている。
昇降式便座装置80には、左右一方側から他方側へ跨る本体ベース部材88が設けられている。本体ベース部材88は、便器82に対して固定状態とされており、この本体ベース部材88の左右端からそれぞれ垂下されて便器82の左右方向外側に位置する固定脚部90L、90Rには、リニアアクチュエータ装置10のリニアアクチュエータ12L、12Rに設けられた固定側接続部44がそれぞれ左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されている。そして、本実施形態では、固定側接続部44に接続固定されたリニアアクチュエータ12L、12Rにおける各出力ロッド20の進退動方向が同一とされている。
また、本実施形態の昇降式便座装置80には、便座86が載置される載置台92と、リニアアクチュエータ装置10に備えられた左右一対のリニアアクチュエータ12L、12Rの作動により載置台92を昇降させる左右一対のリンク機構部94L、94Rが備えられている。このリンク機構部94L、94Rは、第1リンク部材96L、96R及び第2リンク部材98L、98Rを含んでそれぞれ構成されている。また、載置台92の左右端からは、それぞれ便器82の左右方向外側に位置する脚板部100L、100Rが垂下されている。脚板部100L、100Rは、それぞれの後上部を側面視で固定脚部90L、90Rにオーバラップさせている。
便座86の左側面に設けられたリンク機構部94Lでは、第1リンク部材96Lは、リニアアクチュエータ12Lの出力ロッド20の可動側接続部23に左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されると共に、本体ベース部材88の固定脚部90L及び載置台92の脚板部100Lにそれぞれ左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されている。また、第2リンク98Lは、長手方向両端が本体ベース部材88の固定脚部90L、載置台92の脚板部100Lにそれぞれ左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されている。
同様に、便座86の右側面に設けられたリンク機構部94Rでは、第1リンク部材96Rは、リニアアクチュエータ12Rの出力ロッド20に左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されると共に、本体ベース部材88の固定脚部90R及び載置台92の脚板部100Rにそれぞれ左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されている。また、第2リンク98Rは、長手方向両端が本体ベース部材88の固定脚部90R、載置台92の脚板部100Rにそれぞれ左右方向に沿う軸線廻りに回動自在に接続されている。
また、図示は省略するが、ハンドスイッチ70Aは脚板部100L、100Rの何れか一方(便座86と共に上下動する部分)に取り付けられており、フットスイッチ70Bは、便器82が設置された床上に配設されている。
そして、上記構成からなる昇降式便座装置80では、ハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bが上昇方向に操作されると、制御回路基板66がリニアアクチュエータ12L、12Rの各出力ロッド20をハウジングケース40L、40Rから進出する方向(矢印X1方向)に同時にスライドさせるように各駆動モータ16への給電を行う(各駆動モータ16を正転させる)ように構成されている。
また、昇降式便座装置80では、左右の出力ロッド20が同時に矢印X1方向にスライドすると、リンク機構部94L、94Rの第1リンク部材96L、96R及び第2リンク部材98L、98RがR1、R2方向にそれぞれ回動し、これにより、図14に想像線で示される如く、載置台92と共に便座86が上昇するようになっている。このとき、リニアアクチュエータ12L、12Rは、全体として前傾するように固定側接続部44の接続点廻りに回動するようになっている。
さらに、制御回路基板66は、左右の全進出位置検出スイッチ50の何れかから全進出位置検出信号を検出した場合に、一対の駆動機構14L、14Rの各駆動モータ16の全進出側への回転を停止させるように構成されている。
一方、昇降式便座装置80では、ハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bが降下方向に操作されると、制御回路基板66が左右の出力ロッド20をハウジングケース40L、40Rに格納される方向(矢印X2方向)に同時にスライドさせるように各駆動モータ16への給電を行う(各駆動モータ16を逆転させる)ように構成されている。また、昇降式便座装置80では、各出力ロッド20が矢印X2方向に同時にスライドすると、上気した上昇の場合とは逆の動作によって便座86を降下させるようになっている。
そして、この降下動作に際に制御回路基板66は、各駆動モータ16を、それぞれ対応する全格納位置検出スイッチ52からの信号によって全格納位置検出信号を検出するまで全格納側へ回転させるようになっている。すなわち、制御回路基板66は、便座86の上昇動作の終了時には各駆動モータ16への給電を同時に停止し、降下動作の終了時には各駆動モータ16への給電を、それぞれ対応する全格納位置検出スイッチ52からの信号に基づいて独立して停止するように構成されている。
さらに、昇降式便座装置80では、リニアアクチュエータ装置10の回転直動変換機構18、ウォーム33とウォームホイール34とから成るウォームギヤとが共にセルフロックを生じる設定とされているため、便座86への着座に伴う負荷によって便座86が上下動してしまうなどの不具合が防止されている。また、食い違い軸歯車であるウォームギヤを用いることで、ナット38を介して出力ロッド20から送りねじ軸36に軸方向荷重が入力された場合でも、この荷重が駆動モータ16の軸線方向に作用することが防止され、出力ロッド20に軸線方向への荷重が加わっている間もウォーム33及び駆動モータ16の回転を円滑に維持できる。また、駆動モータ16側に配設した回転数検出器17によって、精度良く駆動モータ16の回転速度(パルス)を検出することができる。
上記の如く昇降式便座装置80に適用されたリニアアクチュエータ装置10は、各リニアアクチュエータ12R、12Lがハウジンケース40R、40Lに収容されることで、駆動部14R、14L、電気回路への被水や高湿度空気の接触が防止されるようになっている。
次に、上記構成からなる昇降式便座装置80及びリニアアクチュエータ装置10の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る昇降式便座装置80では、使用者又は介助者がハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bを上昇側に操作すると、リニアアクチュエータ装置10の一対の出力ロッド20が矢印X1方向に同時にスライドし、便座86が上昇する。この便座86に使用者が着座した状態でハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bが降下側に操作されると、リニアアクチュエータ装置10の一対の出力ロッド20が矢印X2方向に同時にスライドし、便座86が着座状態の使用者を支持しつつ降下する。
さらに、使用者の着座状態でハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bが上昇側に操作されると、リニアアクチュエータ装置10の一対の出力ロッド20が矢印X1方向に同時にスライドし、便座86が座状態の使用者を支持しつつ上昇する。そして、使用者が便座86から離れた後にハンドスイッチ70A又はフットスイッチ70Bが降下側に操作されると、リニアアクチュエータ装置10の一対の出力ロッド20が矢印X2方向に同時にスライドし、便座86が降下して初期位置に復帰する。
以上により、本発明の実施形態に係るリニアアクチュエータ装置10が適用された昇降式便座装置80では、使用者の便座86への着座動作、便座86からの起立動作が補助され、これらの動作が容易になる。
ここで、リニアアクチュエータ装置10の各リニアアクチュエータ12L、12Rでは、本体ハウジング24の後側開口端24Dから突出して設けられた複数の保持ピン125とエンドハウジング22との間にベアリング42を挟み込んで保持する構造であるため、簡単な構造でベアリング42を本体ハウジング24に対し支持(保持)することができる。また、エンドハウジング22は、単独でベアリング42のスラスト方向の移動を規制する構造ではないため、送りねじ軸36の径方向に2分割する構造等とする必要がなく、強度を確保することができる。このため、エンドハウジング22に十分な強度を有する固定側接続部44を設ける構成を実現することができた。
特に、各リニアアクチュエータ12L、12Rでは、本体ハウジング24の後側開口端24Dとベアリング42との間に送りねじ軸36を駆動するためのウォームホイール34が配置されているが、本体ハウジング24の後側開口端24Dから保持ピン125を周方向に部分的に突出することで、ウォームホイール34及びこれに噛み合うウォーム33に干渉することなく、ベアリング42を保持する構成が実現された。そして、この実施形態では、ウォーム33とウォームホイール34とを用いることで噛み合い部が比較的広くなるが、保持凸部として細径の保持ピン125を用いることで、複数の保持ピン125を180°未満の間隔で配置することができた。これにより、ベアリング42を安定して保持することができる。
またここで、リニアアクチュエータ12R、12Lでは、保持ピン125が本体ハウジング24の後側開口端24Dに埋め込まれて本体ハウジング24に保持されるので、構造が簡単である。そして、保持ピン125が構成する「保持凸部」を本体ハウジング24に一体に形成する必要がないため、該本体ハウジング24を押出成形又は引抜成形にて安価かつ容易に得ることができる。しかも、保持ピン125は、圧乳によって本体ハウジング24に埋め込まれるので、例えばねじ込みや接着等を用いる構成と比較して、保持ピン125の取付作業が容易である。
さらにここで、リニアアクチュエータ12R、12Lでは、本体ハウジング24の後側開口端を閉止するエンドハウジング22がベアリング42を保持する軸受保持部材の機能を果たすため、部品点数が増すことがなく構造が一層簡単になる。しかも、上記の通り保持ピン125との間にベアリング42を挟み込むエンドハウジング22は、1部品(1ピース)として構成することができ、構造がより一層簡単で所要の強度を確保しやすい(設計が容易である)。
また、エンドハウジング22自体がベアリング42の前方への移動を規制する規制部を有する必要がないため、ベアリング42とウォームホイール34とを近接して配置することができ、装置が全体としてコンパクトになる。
さらにまた、リニアアクチュエータ12R、12Lでは、エンドハウジング22のベアリング嵌入部118にベアリング42を嵌入すなわち仮保持した状態で、該エンドハウジング22を本体ハウジング24に送りねじ軸36の軸線方向に沿って組み付ける動作によって、各保持ピン125とエンドハウジング22の円環壁部との間にベアリング42を保持することができるため、駆動部14R、14Lの組立作業が容易である。特に、各構成要素を送りねじ軸36の軸線方向の移動によって組み付けることができるため、自動組立による組立工程(システム)を簡素化することができる。
しかも、エンドハウジング22におけるベアリング42を駆り保持する部分すなわちベアリング嵌入部118は、該ベアリング118をラジアル方向に支持するラジアル支持部であるため、エンドハウジング22の構造が簡単である。また、ベアリングの外輪42Bは、外縁が送りねじ軸36と同軸的な円形であり、これに対応する形状のベアリング嵌入部118に嵌入されるため、該嵌入する際の周方向の方向性が問題とならないため、組付作業が一層容易である。
そして、リニアアクチュエータ12R、12Lでは、ベアリング42として内輪42A、外輪42Bを有する転がり軸受を備えるが、内輪42Aが送りねじ軸36の後端36Aに嵌合されると共に、外輪42Bが円環壁部118Bと保持ピン125との間に挟み込まれる構成であるため、該ベアリング42のラジアル方向、スラスト方向のガタが共に小さくなる。
このように、本実施形態に係るリニアアクチュエータ装置10を構成するリニアアクチュエータ12R、12Lは、エンドハウジング22の強度を確保しつつ簡単な構造でベアリング42を保持することができる。
なお、上記実施形態では、送りねじ機構によって駆動モータ16の回転を出力ロッド20の直動に変換するリニアアクチュエータ12R、12Lを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ボールねじ機構やラックアンドピニオン機構などによって駆動モータ16の回転を出力ロッド20の直動に変換するように構成しても良い。
また、本発明は、2つのリニアアクチュエータ12R、12Lを備える構成に限定されることはなく、単独で機能するリニアアクチュエータ12Rに本発明を適用しても良いことはいうまでもない。
さらに、本発明に係るリニアアクチュエータ12R等の用途が昇降式便座装置80に限定されることはなく、各種用途に用いることができる。
12L、12R・・・リニアアクチュエータ、20・・・出力ロッド(出力部材)、22・・・エンドハウジング(軸受保持部材、カバー部材)、24・・・本体ハウジング(ハウジング)、33・・・ウォーム(駆動側歯車)、34・・・ウォームホイール(被動側外歯歯車)、36・・・送りねじ軸(回転軸)、38・・・ナット(出力部材)、42・・・ベアリング(軸受部材)、42A・・・内輪、42B・・・外輪、118・・・ベアリング嵌入部(仮保持部、ラジアル支持部、凹部)