JP4615749B2 - 放射性廃棄物処理方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性廃棄物処理方法に関し、特に放射性廃棄物を容器内に収納し、セメントで固化させた放射性廃棄物処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所から発生する金属を含む放射性廃棄物(放射線核種で汚染した配管など)はセメントで固化した後に発電所から搬出され、放射性廃棄物の埋設処分場で埋設される。
【0003】
このようなドラム缶に入ったセメント固化体(廃棄体)は、国内すべての原子力発電所から発生し、これらの固化体は、各原子力発電所から搬出時に検査され、所定の基準に見合うもののみが搬送される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、放射性廃棄物にアルミナ等が含まれている場合には、セメントペーストがpH12〜13程度のアルカリ性であるため、セメントと反応して水素ガスが微量発生する。また、固化体中に存在する水分の一部が放射線分解し、水素と酸素が発生する可能性がある。
【0005】
そして、発生した水素は、固化体が収められているドラム缶内の圧力を上昇させる原因となり、また、水素濃度が爆発下限である4%を超えると、爆発の可能性もある。
【0006】
水素の発生を抑制、防止するには、
(1)水素の発生原因となる金属を除去してからセメント固化する。
(2)発生した水素を除去する。
方法の2つが挙げられる。
【0007】
しかし、(1)の金属を除去する方法では、放射性廃棄物には、材料、形状等が異なる廃棄物が種々含まれているため、水素発生の原因となる金属を完全に除去することはできなかった。
【0008】
また、(2)の発生した水素を除去する方法としては、金属廃棄物にセメントモルタルを充填した後、モルタルが硬化する過程で水素が発生するため、蓋をするタイミングを遅らせることでドラム缶に蓄積する水素の量を抑えることができる。
【0009】
しかし、セメント固化設備をスムースに稼動させるには、モルタルをドラム缶に充填後、速やかに蓋をするのが好ましい。従って、蓋をせずに長時間放置し、水素の発生がなくなったことを確認してから蓋をするという方法は、現実的ではなかった。
【0010】
そこで本発明では、蓋をした後に固化体とドラム缶との間に蓄積する水素を除去することが可能な放射性廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明の放射性廃棄物処理方法では、セメントを用いて固化体とした放射性廃棄物を容器内に封止する放射性廃棄物の処理方法において、前記固化体と前記容器との間に触媒を設置して、該容器を封止する。
【0011】
この構成では、触媒が容器の中に設置されているため、固化体と容器との間の水素濃度を低く保つことができ、水素濃度の上昇によって生じる爆発の危険性を回避することができる。
【0012】
また、本発明の放射性廃棄物処理装置では、セメントを用いて固化体とした放射性廃棄物を容器内に封止する放射性廃棄物の処理装置において、前記固化体と前記容器を封止する蓋との間に触媒を設置する手段を具備する。
【0013】
この構成では、触媒を容器の中に設置することが可能なため、固化体と容器との間の水素濃度を低く保つことができ、水素濃度の上昇によって生じる爆発の危険性を回避することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる水素除去方法を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる水素除去方法を示す概念図である。
【0016】
図1において、金属廃棄物100がドラム缶110に収納されると共に、モルタルセメント120で固化され、固化体130を形成している。
【0017】
そして、触媒150は、蓋140に設置された茶漉し状のSUS製の金網160に収納されている。
【0018】
ここで触媒としては、水素の酸化触媒であるPd−アルミナ、Pt−アルミナ、疎水性担体に担持したPtなど、常温で水素を水に転換させる触媒を用いる。
【0019】
また、本実施の形態では、触媒を蓋の裏面に設置したが、固化体の表面や固化体と蓋の空間に設置することもできる。しかし、固化体の表面では、セメントに含まれている不純物が触媒の表面に付着し、触媒性能を低下させる恐れがあり、また、蓋の裏面に触媒を設置することは容易なため、図1に示すように蓋の裏面に設置することが望ましい。
【0020】
なお、金網の目のサイズが0.2mm、0.7mmでは水膜を形成し、1.5mmでは水膜を形成することなく水が滴り落ちた。水素濃度を低下させるには触媒が水素と接触することが必要なため、水膜を形成しないメッシュサイズの金網を用いることが望ましい。
【0021】
さて、上記構成において本発明の水素除去方法では、発生した水素が触媒に達すると、触媒作用により、次式に示すように水素は酸素と結合して水を生成する。
【0022】
Figure 0004615749
ここで、水素との結合に用いられる酸素は、固化体と蓋との間の大気中に存在する酸素を用いる。
【0023】
以下、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0024】
【実施例1】
本実施例では、図2(a)に示すように、金属廃棄物として、配管、バルブ、継ぎ手、アルミ板(50mm×200mm、14枚)、合計185Kgを200Lのドラム缶に収納し、水、砂、セメントを重量比で0.33:0.8:1の割合で混合したポルトランドセメントをドラム缶内に流し込み、固化させるため16時間放置した後、蓋をして、水素及び酸素の量を計測した。結果を図3に示す。
【0025】
このように、ドラム缶に蓋をした後、急激に水素濃度が上昇し、爆発下限である4%を超えることが分かる。
【0026】
【実施例2】
次に、図2(b)に示すように、触媒として白金担持アルミナ触媒を2g、蓋に設けられた金網に設置した点以外は、実施例1と同様の条件で水素及び酸素の量を計測した。結果を図4に示す。
【0027】
このように、ドラム缶に蓋をした直後には水素濃度の上昇が見られるが、爆発下限である4%の濃度を超えずに水素濃度が減少していることが分かる。
【0028】
【実施例3】
次に、図2(b)に示すように、触媒として白金担持アルミナ触媒を10g、蓋に設けられた金網に設置した点以外は、実施例1と同様の条件で水素及び酸素の量を計測した。結果を図5に示す。
【0029】
このように、ドラム缶に蓋をした直後から水素濃度は徐々に減少しており、水素濃度は常に低く抑えられていることが分かる。
【0030】
【発明の効果】
本発明では、発生した水素の濃度を常に4%を越えることなく抑えているため、水素による爆発の危険性を回避することができる。
【0031】
また、金属廃棄物からアルミニウムを取り除く必要が無く、触媒の量も10g程度であるため、低コストで水素濃度を抑えることができる。
【0032】
さらに、金属廃棄物は放射性廃棄物であるため、金属廃棄物からアルミニウムを取り除く際の被爆を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる水素除去方法を示す概念図
【図2】 実施例1乃至3における測定条件を示す断面図
【図3】 実施例1における酸素及び水素の計測結果を示すグラフ
【図4】 実施例2における酸素及び水素の計測結果を示すグラフ
【図5】 実施例3における酸素及び水素の計測結果を示すグラフ
【符号の説明】
100…金属廃棄物
110…ドラム缶
120…モルタルセメント
130…固化体
140…蓋
150…触媒
160…金網

Claims (8)

  1. セメントを用いて固化体とした放射性廃棄物を容器内に封止する放射性廃棄物の処理方法において、前記容器を封止する蓋の裏面水素酸化触媒を設置して、該容器を封止することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
  2. 前記廃棄物は、金属廃棄物であることを特徴とする請求項1記載の放射性廃棄物処理方法。
  3. 前記水素酸化触媒は、パラジウム−アルミナ、白金−アルミナ、疎水性担体に担持した白金の内少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または記載の放射性廃棄物処理方法。
  4. セメントを用いて固化体とした放射性廃棄物を容器内に封止する放射性廃棄物の処理装置において、前記固化体と前記容器を封止する蓋の裏面水素酸化触媒を設置する手段を具備することを特徴とする放射性廃棄物処理装置。
  5. 前記水素酸化触媒を蓋の裏面に設置する手段が、茶漉し状の金網に収納する手段であることを特徴とする請求項4に記載の放射性廃棄物処理装置。
  6. 前記茶漉し状の金網は、そのメッシュサイズが水膜を形成しないメッシュサイズであることを特徴とする請求項4または5に記載の放射性廃棄物処理装置。
  7. 前記廃棄物は、金属廃棄物であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の放射性廃棄物処理装置。
  8. 前記水素酸化触媒は、パラジウム−アルミナ、白金−アルミナ、疎水性担体に担持した白金の内少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の放射性廃棄物処理装置。
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