JP4614029B2 - 加工装置の遮断層形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工装置の遮断層形成装置に関し、特に、主として加工時に発生するオイルミストを回収するために設けられる加工装置の遮断層形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、切削加工、特に、ギア部品の歯切りを行なうホブ加工においては、潤滑性の高い油性クーラントを切削油として使用しているが、該切削油は加工時の摩擦熱により気化し、オイルミスト状態となり、周囲に飛散するおそれがあった。そのため、従来は、ミストコレクタを設け、加工箇所を固定カバーで覆い、オイルミストをファンで吸引すると共にフィルタで回収し、オイルミストの飛散を防止しようとしていた。しかし、前記オイルコレクタでは、固定カバー、ファン、フィルタ等にオイルミストが付着するため、例えば、1週間に1回、約1.5時間程度、製造ラインを停止し、定期的にそれらの設備を清掃する必要があり、メンテナンスに手間が掛かっていた。さらに、斯かる設備では、オイルミストの飛散を完全に防止することができないといった性能上の問題もあった。
【0003】
そこで、前記オイルコレクタの問題点を解決すべく、固定カバー等を設ける代わりに、加工箇所の周囲に切削油を膜状に流下させ、オイルミストの飛散防止を図ろうとすることも行われており、その1例として、特開平11−77475号公報に開示されているものがある。これは、環状の液体導入通路を有する装置本体と、該装置本体の外壁に接線方向に沿って設けられた供給パイプと、前記液体導入通路の出口に設けられた絞り部とを備えたことを特徴とし、前記供給パイプを介して前記液体導入通路に導入された液体に周方向の流れを形成させた後、前記液体を前記出口から噴出させ、加工箇所の周囲にカーテン状の液体膜を形成させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、斯かる公報に記載された加工装置の遮断層形成装置では、液体の噴出速度が小さいと、液体の粘性のため液体が内側に絞られ膜がうまく形成できなかったり、又、反対に、噴出速度が大きいと、膜切れを起こしたり、液体自体が飛散するおそれがあった。そのため、液体の噴出速度を厳密に調整することが要求され、斯かる調整作業に手間が掛かっていた。また、出口の絞り部に切粉等が詰まり、作動不良となるのを防止するため、頻繁にメンテナンスを行なう必要があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたもので、調整が容易で、膜切れや絞りがなく、オイルミストの飛散を確実に防止できる加工装置の遮断層形成装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導入した液体に旋回流を形成させるための旋回流形成手段と、旋回流を与えながら前記液体を上向き放射状に放出させ、膜状に流下させるための膜形成手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
好適な態様としては、接線方向に沿って液体を導入可能な導入路と、該導入路から導入された液体が旋回可能な環状流路と、旋回しながら流下した前記液体を上向き放射状に放出する液受けと、上向き放射状に放出された前記液体を膜状に形成させ流下させる整流板とを備えたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記液受けは、前記液体が流下する凹部と、該凹部に流下した前記液体を上向き放射状に放出する放出部とを備え、前記整流板は、前記液受けより外方に延出し、前記放出部の上方で昇降可能に設けられている。
【0009】
また、前記凹部の外周側は、外方斜め上方に傾斜するテーパ部を備え、さらに、前記整流板は前記液体の旋回方向に回転自在に設けられ、さらにまた、前記液体はクーラントである。
【0010】
このような構成において、導入した液体に、前記旋回流形成手段により、旋回流を形成させ、その後、前記膜形成手段により、前記液体を旋回させながら上向き放射状に放出、流下させ、加工箇所の周囲に均一な膜状の遮断層を形成させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図8は本発明の実施の形態に係る遮断層形成装置が適用される加工装置31を示している。該加工装置31は下センター32、上センター33、ホブカッター34、及びバリ取りカッター35により概略構成され、前記下センター32と上センタ33とでクランプした状態のワーク36を回転させ、該ワーク36の加工部37に回転している前記ホブカッター34を当てて歯切り加工を行ない、該歯切り加工中に発生したバリを前記バリ取りカッター35にて除去するものである。
【0013】
図1は前記加工装置31の上方に設けられる遮断層形成装置1を示しており、該遮断層形成装置1は、略円筒状の装置本体2と、該装置本体2の下端に同心に設けられた環状のクーラント受け3と、前記装置本体2の下端部周囲に設けられた整流板5とを備えている。前記装置本体2は、上端に拡径部6が形成された円筒状の第1部材7と、前記拡径部6側から挿通されたボルト8により前記拡径部6の下部に固定された円筒状の第2部材9とを備え、前記第1部材7の前記拡径部6より下側の内周壁部10と前記第2部材9との間に環状流路11が形成されている。前記第2部材9の下端部分12は段差部13が形成されて肉厚が薄くなっており、下端外周側角部は面取られている。また、図2に示すように、前記第2部材9には、例えば2本の導入管14a,14bがそれぞれ接線方向に沿って対称的に設けられ、該各導入管14a,14bは前記環状流路11に連通している。
【0014】
前記クーラント受け3の内径は前記内周壁部10の内径に等しく、外径は前記第2部材9の外径より大きくなっている。前記クーラント受け3上面の内周側部分には段差面15が形成され、該段差面15に前記内周壁部10が立設し、該内周壁部10は前記クーラント受け3の下面側から挿通されたボルト16により前記クーラント受け3に固定されている。そして、前記段差面15より外周側には凹部17が形成され、該凹部17には、内周側に内方斜め上方に傾斜するテーパ部18が形成されていると共に外周側に外方斜め上方に傾斜するテーパ部19が形成されている。また、前記凹部17の上には前記第2部材9が位置しており、さらに、前記クーラント受け3の外周側上端面は前記第2部材9の下端面より高く位置しており、前記凹部17の外周側に上向きの放出部20が形成されている。
【0015】
前記整流板5は、図3に示すように環状を成し、内径は前記下端部分12の外径より大きく、且つ前記第2部材9の外径より小さくなっており、前記下端部分12に沿って昇降可能であると共に回転可能となっている。また、前記整流板5の外径は前記クーラント受け3の外径より大きくなっている。
【0016】
以下、図1〜図7により前記加工装置32の遮断層形成装置1の作用を説明する。
【0017】
切削加工が行われている間、前記加工装置31の遮断層形成装置1にはポンプ(図示せず)によりクーラント21が供給される。該クーラント21は前記各導入管14a,14bを介して前記装置本体2内の環状流路11に導入される。前記各導入管14a,14bはそれぞれ前記装置本体2の接線方向に沿って接続されているので、前記クーラント21は前記第2部材9の内周壁面に沿って、例えば、図2中における反時計回りに旋回しながら前記凹部17に流下する。前記整流板5の自重により前記放出部20側から前記クーラント21に作用する圧力が前記環状流路11側からの前記クーラント21による圧力より大きい間は、図4に示すように、前記整流板5は前記クーラント受け3の外周部上端面に載置され、前記放出部20は閉塞された状態となる。
【0018】
その後、前記環状流路11側の前記クーラント21による圧力が前記整流板5の自重による圧力より大きくなると、図5に示すように、前記整流板5は前記下端部分12に沿って上昇し、前記整流板5と前記クーラント受け3の外周部上端面の間に隙間22が形成され、前記両圧力が釣り合う位置で前記整流板5は静止する。前記凹部17の外周側にテーパ部19が形成されており、また、前記クーラント21には旋回流が形成されているので、前記クーラント21は斜め上方放射状且つ旋回方向に放出される。この時、前記凹部17に前記テーパ部18,19が形成されていると共に前記下端部分12の下端外周側角部が面取られているため、前記クーラント21は前記凹部17内を円滑に流通する。
【0019】
放出された前記クーラント21は、前記整流板5に衝突し、該整流板5は前記クーラント21の上向き成分の力に応じて昇降すると共に旋回方向成分の力に応じて回転する。そのため、この間の前記クーラント21の放出は円滑に行なわれる。前記整流板5に衝突した前記クーラント21は、その粘性のため、前記整流板5の下面に沿って放射状且つ旋回方向に流出する間に均一な薄膜状となる。その後、薄膜状に形成された前記クーラント21は、図6及び図7に示すように、前記整流板5から放出された時の遠心力により水平方向に膨らんだ後、流下し、前記加工装置31の周囲に均一な膜状の遮断層を形成する。この時、前記段差部13により前記整流板5の上昇範囲を規制しているので、前記クーラント21が所要量以上放出され、均一な膜が形成されなくなるのを防止している。また、前記隙間22は整流板5の上昇限度内において昇降自在であるので、前記クーラント21中に切粉、ゴミ等の不要物が含まれていたとしても、該不要物は前記クーラント21と共に自然に排出されるので、前記不要物が原因で膜切れが生じたり、動作不良となるおそれがない。
【0020】
なお、上記した実施の形態においては、切削加工で使用する場合について説明したが、本発明は、研削加工等、他の加工時にも実施可能であることは言う迄もない。
【0021】
また、上記実施の形態においては、旋回流形成手段として前記導入管14及び環状流路11を示し、膜形成手段として前記クーラント受け3及び整流板5を示しているが、それらは単なる例示に過ぎず、同様の機能を有するものであれば、他の形状、組合せ、構成等であってもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上述べた如く本発明によれば、整流板の自重により遮断層の広がり度合い、膜厚等が決定されるので、調整が非常に簡単で、膜切れや絞りのない均一な薄膜を容易に形成させることができ、オイルミストの飛散を確実に防止することが可能となる。また、構成する部品点数が少なく、形状が単純であるため、製作、加工が容易となる。さらに、切粉等の不要物の排出を自然に行うことができるので、メンテナンスフリー化を実現することが可能となる等種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における第2部材を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における整流板を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における膜形成手段の作用を示す部分断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における膜形成手段の作用を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における作用を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態における作用を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る遮断層形成装置が適用される加工装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 加工装置の遮断層形成装置
3 クーラント受け
5 整流板
11 環状流路
14 導入管
17 凹部
19 テーパ部
20 放出部
21 クーラント
31 加工装置
Claims (6)
- 導入した液体に旋回流を形成させるための旋回流形成手段と、
旋回流を与えながら前記液体を上向き放射状に放出させ、膜状に流下させるための膜形成手段と、
を備えたことを特徴とする加工装置の遮断層形成装置。 - 接線方向に沿って液体を導入可能な導入路と、
該導入路から導入された液体が旋回可能な環状流路と、
旋回しながら流下した前記液体を上向き放射状に放出する液受けと、
上向き放射状に放出された前記液体を膜状に形成させ流下させる整流板と、
を備えたことを特徴とする加工装置の遮断層形成装置。 - 前記液受けは、前記液体が流下する凹部と、該凹部に流下した前記液体を上向き放射状に放出する放出部とを備え、
前記整流板は、前記液受けより外方に延出し、前記放出部の上方で昇降可能に設けられている請求項2に記載の加工装置の遮断層形成装置。 - 前記凹部の外周側は、外方斜め上方に傾斜するテーパ部を備えている請求項3に記載の加工装置の遮断層形成装置。
- 前記整流板は前記液体の旋回方向に回転自在に設けられている請求項3又は4に記載の加工装置の遮断層形成装置。
- 前記液体はクーラントである請求項1〜5のいずれか1の請求項に記載の加工装置の遮断層形成装置。
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