JP4612966B2 - 糸止着用アタッチメント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、手織機などの織機の所定の巻取部材に糸を止着するのに用いられる糸止着用アタッチメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
手工芸の分野においては、市販されている布地に加工を施すことにより種々の作品を製作するに止どまらず、布地そのものを手織機を用いて趣のあるように作製することが行なわれている。たとえば、図13に示すように、手織機9は、回転操作が可能なバックローラ90およびフロントローラ91の間に張られた複数本のたて糸Wを、ヘドル(綜絖)92を利用して互い違い状に昇降させることにより、よこ糸およびシャトル(杼)を挿入するための杼口(いずれも図示略)を開口できるように構成されている。このような手織機9を用いて製織(織物を織ること)作業を行うための準備としては、バックローラ90に巻き取られている複数本のたて糸Wのそれぞれの一端部を、フロントローラ91に止着させることにより、これらのローラ90,91間に複数本のたて糸Wを張っておく必要がある。
【0003】
そこで、従来においては、図14によく表われているように、フロントローラ91を、本体部91aとこの本体部91aに複数のボルト93を用いて取り付けられるクランプ板91bとに分割している。たて糸Wを張る場合、ユーザは、複数本のたて糸Wの各一端を本体部91aの上面部に手で載せて並べてから、本体部91a上にクランプ板91bを取り付けることにより、それら複数本のたて糸Wの各一端を本体部91aとクランプ板91bとの間にクランプする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手段において、本体部91aとクランプ板91bとの間に複数本のたて糸Wをクランプさせるには、たて糸Wがそれらの間から脱落しないようにクランプ板91bを手で慎重に固定しつつ、ボルト93の締め付け作業を行わなければならない。したがって、この作業が面倒なものとなっていた。また、複数本のたて糸Wは、バックローラ90とフロントローラ91との間において、略平行となるように張る必要があるが、従来においては、その作業を容易にするための手段もとくに講じられておらず、この点においても不便を生じていた。
【0005】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、織機の巻取部材に糸を止着する作業の容易化を図ることをその課題としている。
【0006】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本願発明によって提供される糸止着用アタッチメントは、織機の巻取部材に複数条の糸を止着するために用いられる糸止着用アタッチメントであって、上記巻取部材とこのアタッチメントとの間に上記複数条の糸を挟み込むようにして上記巻取部材への取り付けが可能に、上記巻取部材に嵌合させるための凹部が形成された本体部と、上記複数条の糸を梳かすための複数の突起からなる櫛歯部と、を有していることを特徴としている。複数条の糸とは、糸が複数本である場合と、1本の糸が複数回にわたって折り返されるなどして複数の筋状に設定されている場合とのいずれをも含む意である。
【0008】
このような構成によれば、織機の巻取部材上に複数条の糸を載せた状態において、それら複数条の糸の上から本願発明に係るアタッチメントの凹部を上記巻取部材に嵌合させれば、これによりアタッチメントと巻取部材との間に複数条の糸を挟み込むようにして、巻取部材に対するアタッチメントの取り付けが行えることとなる。これにより、各糸を巻取部材に止着させることができる。このように、本願発明によれば、アタッチメントの本体部を巻取部材に嵌合させて取り付けるだけの操作で糸の止着が可能となり、従来のボルトの締め付けを行っていた手段よりもその作業が容易となる。また、複数条の糸を織機の巻取部材に止着する前の段階において、このアタッチメントの櫛歯部を利用して複数条の糸を梳かすことにより、これら複数条の糸を略平行に揃えることが可能となる。このため、複数条の糸を略平行に揃えてから、これらを巻取部材に止着するという一連の作業が容易化される。
【0009】
本願発明の好ましい実施の形態においては、上記本体部は、断面略半円弧状または断面略C字状に形成され、かつ上記凹部に上記巻取部材が嵌合したときには上記巻取部材を挟み付ける弾発力を発揮するように構成されている。
【0010】
このような構成によれば、織機の巻取部材に対するアタッチメントの取り付けを、上記本体部の弾発力を利用してより簡易に、かつ確実に行わせることが可能となる。
【0011】
本願発明の他の好ましい実施の形態においては、上記本体部は、上記巻取部材の外面部に設けられている凹状または凸状の部分に対して係脱可能な凸状または凹状の係合部を有している。
【0012】
このような構成によれば、巻取部材との係合により、巻取部材に対するアタッチメントの取り付けをより確実なものにすることができる。
【0015】
本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1は、本願発明に係る糸止着用アタッチメントの一実施形態を示している。本実施形態の糸止着用アタッチメント6(以下、「アタッチメント6」と略称する)は、たとえば合成樹脂製であり、本体部60と、櫛歯部61とを有している。
【0018】
本体部60は、断面略半円弧状または断面略C字状を有しており、この本体部60の長手方向(矢印x方向)に延びる一側部および長手方向両端部に開口した凹部63を形成している。この本体部60の長手方向に延びる両側縁部64a,64bには、互いに向かい合う方向に膨出した凸状の係合部62a,62bが形成されている。これらの係合部62a,62bは、後述するように、織機の巻取部材の一例としてのフロントローラに係合させるための部分である。この本体部60は可撓性を有していることにより、その両側縁部64a,64bおよびその近傍部分は、それらの間の開口幅Sが拡縮するように矢印N10方向に弾性変形可能となっている。
【0019】
櫛歯部61は、本体部60の一側縁部64bに複数の突起61aが一定ピッチで列状に並んで突設されていることにより構成されている。各突起61aが突出する向きは、本体部60の凹部63が本体部60の一側部において開口している向きと一致している。
【0020】
次に、アタッチメント6を織機に使用する場合の一例について説明する。
【0021】
たとえば、図2に示す織機Aに複数本のたて糸Wをセッティングするには、この織機Aのバックローラ3に複数本のたて糸Wを巻き取り、それら複数本のたて糸Wの一部がフロントローラ2上まで延びた恰好にする。その際、各たて糸Wをヘドル4の長手方向に一定間隔で並んだ複数の凹溝44に予め通しておく。同図に示すまでのたて糸の準備は、従来より既知の手法を用いて行うことができる。ただし、ヘドル4は、従来既知のものとはその構造が相違するものであり、この点については後述する。また、バックローラ3の近傍には補助バー31が設けられているが、この補助バー31はたて糸Wの引っ掛けを容易にするためのものであり、この補助バー31とバックローラ3との双方にたて糸Wを巻き取らせておけばよい。
【0022】
複数本のたて糸Wについては、バックローラ3とヘドル4との間の部分と同様に、ヘドル4とフロントローラ2との間の部分においても、略平行に整列させる必要がある。そこで、図3に示すように、アタッチメント6を使用し、その櫛歯部61を利用することにより、複数本のたて糸Wを梳かす。このようにすると、図4に示すように、複数の突起61aどうしの間にたて糸Wが進入することとなり、これらを略平行に揃えていくことができる。図5(a)に示すように、アタッチメント6によって複数本のたて糸Wをフロントローラ2の近傍まで梳かした後には、同図(b)に示すように、このアタッチメント6とフロントローラ2との間に複数本のたて糸Wを挟み込むようにして、アタッチメント6をフロントローラ2に装着する。
【0023】
フロントローラ2に対するアタッチメント6の装着は、アタッチメント6の凹部63とフロントローラ2とを嵌合させるようにアタッチメント6をフロントローラ2に押し当てるだけのワンタッチ操作により、簡単に行うことができる。その装着時においては、アタッチメント6の係合部62a,62bをフロントローラ2の外周面に設けられている一対の凹部24に係合させることにより、アタッチメント6がフロントローラ2から不用意に外れないようにすることもできる。アタッチメント6の本体部60の両側縁部64a,64bは、既述したように所定方向に弾性変形可能であり、このアタッチメント6がフロントローラ2に装着されたときには両側縁部64a,64bがフロントローラ2をその両側から挟み付ける力を発揮できるようにすることができる。したがって、この力により、係合部62a,62bが凹部24に係合する状態を適切に維持させることができる。また、上記力は、アタッチメント6が各たて糸Wをフロントローラ2の外周面に押しつける力として働かせることもできるため、各たて糸Wがアタッチメント6とフロントローラ2との間でスリップしないようにする効果も期待できる。既述したとおり、このアタッチメント6の櫛歯部61の各突起61aの向きは、凹部63の開口部の向きと一致しているため、図5(a)によく表われているように、このアタッチメント6の凹部63の開口部をフロントローラ2に対面させた姿勢にした場合においても、各突起61aをたて糸Wに接触させておくことができる。このことは、アタッチメント6をフロントローラ2に装着する直前まで、櫛歯部61によって複数本のたて糸Wを梳かすことができることを意味し、たて糸Wを略平行に揃える操作もより適切に行えることとなる。
【0024】
上記したように、アタッチメント6を使用すれば、1つのアタッチメント6の幅に対応する所定本数のたて糸Wを略平行に揃える作業と、フロントローラ2に一括して止着する作業とを簡単に行うことができる。アタッチメント6は、予め複数準備しておき、1つのアタッチメント6によって全ての本数のたて糸Wに対処できない場合には、他のアタッチメント6を利用することにより、残余のたて糸Wの止着を上記と同様にして行う。
【0025】
たて糸のセッティングを終えた後には、図6に示すように、織機Aを利用した製織作業を行うことができる。この製織作業は、ヘドル4を利用して複数本のたて糸Wを互い違い状に昇降させることによって杼口(図示略)を開口させてから、この杼口によこ糸Wo が繋がれたシャトル80を挿入することにより行う。ヘドル4は、次に述べるように、その揺動動作によって各たて糸Wの昇降を可能とするものである。より具体的には、このヘドル4は、図7および図8に示すように、2種類の複数枚ずつのプレート40A,40Bがそれらの厚み方向に交互に並べられ、かつこれら複数枚のプレート40A,40Bが一対のサイドカバー41間に挟み込まれてシャフト42およびナット43を利用して連結された構造を有している。サイドカバー41には、略水平状に突出する把手用の凸部41bが設けられている。糸通し用の凹溝44は、プレート40A,40Bどうしの間に形成されており、その上方および両側方は開口している。したがって、たて糸Wを各凹溝44内に通す作業は、凹溝44の上方から糸Wを略水平状にしたまま進入させることによって簡単に行うことができる。複数の凹溝44内には、これらの凹溝44内に通された糸を保持するための第1および第2の保持部45A,45Bがこのヘドル4の長手方向に1つずつ交互に設けられている。
【0026】
図9に示すように、第1の保持部45Aは、プレート40Aの幅方向一端の穴部46a,46bに、プレート40Bの凸部47a,48aを進入させることにより構成されている。第2の保持部45Bは、プレート40Aの幅方向他端の穴部46a,46bに、プレート40Bの凸部47b,48bを進入させることにより構成されている。図10に示すように、第1の保持部45Aは、凹溝44の上方から糸Wが下向きに進入すると、この糸Wは凸部47aの傾斜状の上面47’によってこの凸部47aの先端方向にガイドされることにより、凹部46a内に進入し、その後は凸部47aと凹部46aの周縁下部との隙間を通過して、凸部47a,48aの隙間49a内に進入可能となっている。隙間49a内に糸Wが進入すると、この糸Wは凸部47aの存在により凹溝44の上方には簡単に外れないようになり、その部分に糸Wが保持されることとなる。第2の保持部45Bにおいても、第1の保持部45Aと同様な原理により、凸部47b,48b間に糸Wを保持できるようになっている。
【0027】
ヘドル4は、図11(a)に示すように、第1および第2の保持部45A,45Bにたて糸W(W1,W2)を保持させている状態において、このヘドル4を揺動させると、これらのたて糸W1,W2を互い違い状に昇降させることができる。すなわち、同図(b)に示すように、ヘドル4を矢印N2方向に傾かせると、第1の保持部45Aが下降するとともに、第2の保持部45Bが上昇する。したがって、たて糸W1の下降とたて糸W2の上昇とを同時に行うことができる。次いで、同図(c)に示すように、ヘドル4を上記とは反対の矢印N3方向に傾かせると、上記とは反対に、第1の保持部45Aが上昇するとともに、第2の保持部45Bが下降する。したがって、たて糸W1,W2を、同図(b)とは異なる態様で昇降させることができる。
【0028】
上記した原理により、ヘドル4を利用して複数本のたて糸W間に杼口を適切に開口させることができる。また、この織機Aにおいては、ヘドル4をフロントローラ2に向けてスライドさせることが可能に構成されており、このヘドル4を筬として利用することも可能である。すなわち、複数本のたて糸W間に通されたよこ糸Wo を先に織られている織地に対してこのヘドル4を利用して押しつけることも可能である。製織作業を終了し、作製された織地を織機Aから取り外すときには、各アタッチメント6をフロントローラ2から取り外す必要があるが、この取り外し作業も簡単に行うことが可能である。
【0029】
本願発明の内容は、上述した実施形態に限定されない。本願発明に係る糸止着用アタッチメントの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0030】
アタッチメントの本体部は、要は、所望の糸を挟み込んだ状態で織機の巻取部材への取り付けを行うことができるように、巻取部材に嵌合させるための凹部が形成されていればよく、その具体的な断面形状は、断面半円弧状や断面略C字状以外の形状にすることができる。本願発明においては、たとえば、図12に示すように、アタッチメント6の本体部60に指で摘まむことが可能な凸状部69を設けた構成とすることもできる。このような構成によれば、アタッチメント6をフロントローラ2から取り外すときには、この凸状部69を指で摘まむことにより、その作業をより簡単に行うことができる。また、凸状部69を本体部60の全長にわたって形成しておけば、このアタッチメント6の周りに織地または糸を巻き取る場合に、アタッチメント6の長手方向各所における織地または糸の巻取寸法を同一に揃えることが可能となる。
【0031】
本体部60の長さもとくに限定されない。たとえば図6においては、計3つのアタッチメント6を用いて複数本のたて糸Wを止着している例を示しているが、本願発明はこれに限定されない。たとえば、本体部60の長さをフロントローラ2の全長と同等またはそれに近い寸法とすることにより、所定本数のたて糸Wを1個のアタッチメントによって、一括してフロントローラ2に止着できるように構成してもかまわない。
【0032】
フロントローラ2に係合させるための係合部をアタッチメントに設ける場合、上記実施形態とは反対に、フロントローラ2に凸状部を形成し、かつアタッチメントに凹状の係合部を設けた構成にすることもできる。また、それらの数もとくに限定されない。
【0033】
本願発明は、使用対象となる織機の具体的な構成は問わない。織機のヘドルとしては、たとえば糸通し部が凹溝として形成されているものに代えて、スリット状または穴状に形成されている既知のものを用いることもできる。糸を巻き取るための巻取部材も、上記した実施形態のフロントローラに限定されない。また、本願発明に係る糸止着用アタッチメントは、たとえば上記実施形態の織機Aのバックローラ3にたて糸の一端を止着する用途に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る糸止着用アタッチメントの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】織機の一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す糸止着用アタッチメントの使用例を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】(a),(b)は、図1に示す糸止着用アタッチメントの使用例を示す断面図である。
【図6】織機を用いて製織作業を行う状態を示す斜視図である。
【図7】図2に示す織機のヘドルを示す斜視図である。
【図8】図7のVIII −VIII 断面図である。
【図9】図7に示すヘドルの要部分解斜視図である。
【図10】図7に示すヘドルの要部拡大断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、図7に示すヘドルの作用説明図である。
【図12】本願発明に係る糸止着用アタッチメントの他の実施形態を示す斜視図である。
【図13】従来技術を示す斜視図である。
【図14】従来技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
A 織機
W たて糸
2 フロントローラ(巻取部材)
6 糸止着用アタッチメント
60 本体部
61 櫛歯部
61a 突起
62a,62b 係合部
63 凹部

Claims (4)

  1. 織機の巻取部材に複数条の糸を止着するために用いられる糸止着用アタッチメントであって、
    上記巻取部材とこのアタッチメントとの間に上記複数条の糸を挟み込むようにして上記巻取部材への取り付けが可能に、上記巻取部材に嵌合させるための凹部が形成された本体部と、
    上記複数条の糸を梳かすための複数の突起からなる櫛歯部と、
    を有していることを特徴とする、糸止着用アタッチメント。
  2. 上記櫛歯部は、上記本体部の一側縁部に上記複数の突起が列状に並んで突設されて構成されている、請求項1に記載の糸止着用アタッチメント。
  3. 上記本体部は、断面略半円弧状または断面略C字状に形成され、かつ上記凹部に上記巻取部材が嵌合したときには上記巻取部材を挟み付ける弾発力を発揮するように構成されている、請求項1または2に記載の糸止着用アタッチメント。
  4. 上記本体部は、上記巻取部材の外面部に設けられている凹状または凸状の部分に対して係脱可能な凸状または凹状の係合部を有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の糸止着用アタッチメント。
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