JP4612930B2 - レムナント様リポタンパク低下剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、日常の食用としても摂取しやすい、血清レムナント様リポタンパク(RLP)低下剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
レムナント様リポタンパク(RLP、レムナント粒子あるいは単にレムナントとも呼ばれる)は、カイロミクロン(CM)や超低比重リポタンパク(VLDL)等のトリグリセリド高含有リポタンパクの血中での中間代謝物である。このRLPは血管壁に取り込まれやすく、RLP中のコレステロールが血管壁に蓄積され、リポタンパクレベルにおいて、低比重リポタンパク(LDL)と同様に動脈硬化惹起性に深く関与する。またある研究では、リポタンパク中のトリグリセリドをより多く含むRLPの方がLDLよりも動脈硬化惹起性に対して大きく関わっているとも報告されている。従ってRLPを低下させることは動脈硬化の予防には重要である。
動脈硬化は治療することよりも、日常の食事により予防することが重要であるため、日常生活において摂取可能であり、且つ、RLPを低下させることができるものが要望されている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、食後の血中トリグリセリドの上昇を抑制することが知られているジアシルグリセロールに着目し、その血清RLPに与える影響について検討してきた。その結果、ジアシルグリセロールは優れたRLP低下作用を有し、且つ、日常生活において摂取が容易であることから、健康志向食品や医薬品として有用であることを見出した。
【0004】
すなわち、本発明は、構成脂肪酸の(シス型不飽和脂肪酸量)/(トランス型不飽和脂肪酸量+飽和脂肪酸量)重量比が、9以上であるジアシルグリセロールを有効成分とするRLP低下剤を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のRLP低下剤に用いられるジアシルグリセロールの構成脂肪酸は、炭素数8〜24、特に16〜22であることが好ましい。全構成脂肪酸中、不飽和脂肪酸を70重量%(以下単に%で示す)以上とすることが望ましい。更に、全構成脂肪酸中、不飽和脂肪酸を70%以上、且つ、ω3系高度不飽和脂肪酸が15%以上であるジアシルグリセロールがより好ましい。特にRLP低下効果をより高めるという点から、(シス型不飽和脂肪酸量)/(トランス型不飽和脂肪酸量+飽和脂肪酸量)(以下(シス)/(トランス+飽和)重量比と示す)が、5.5以上が好ましい。より好ましくは(シス)/(トランス+飽和)重量比が8以上、更に好ましくは9以上である。また、ジアシルグリセロールの構成脂肪酸のうち、トランス型不飽和脂肪酸含量は5%以下が特に好ましく、飽和脂肪酸含量も5%以下が特に好ましい。ここで、シス型不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、α−リノール酸、α−リノレン酸、シス−ジホモγ−リノレン酸、シス−アラキドン酸、シス−エイコサぺンタエン酸、シス−ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。またトランス型不飽和脂肪酸としては、上記不飽和脂肪酸のトランス型が挙げられる。飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸などが挙げられる。
【0006】
ジアシルグリセロールは、例えば目的の構成脂肪酸を有する油脂とグリセリンとをエステル交換反応に付すか、あるいは目的の構成脂肪酸又はそのエステルとグリセリンとの混合物にリパーゼを作用させてエステル化反応を行うことにより製造される。反応中の異性化を防止する上で、リパーゼを用いたエステル化反応がより好ましい。また、リパーゼを用いたエステル化反応によっても、反応終了後精製手段における異性化を防止するため、精製手段も脂肪酸の異性化が生起しないような穏和な条件で行うのが好ましい。
【0007】
上記の方法で得られる組成物は、ジアシルグリセロールを含有する油脂組成物である。本発明においては、このジアシルグリセロールを含有する油脂組成物として用いるのが好ましい。当該油脂組成物としては、RLP低下作用の点から、ジアシルグリセロールを35%以上含有するのが好ましい。更にこの油脂組成物中のジアシルグリセロール含量は50%以上がより好ましく、更に60%以上、特に80%以上が好ましい。
【0008】
通常の植物油には植物ステロールが0.05〜1.2%程度含まれている。しかしながらジアシルグリセロールを含む油脂組成物中の植物ステロール含量は、その製造方法によって異なる。例えば、一般に市販されている蒸留して得られた脂肪酸を原料として用いた場合には、組成物中の植物ステロール量は低下してしまう。この様な場合には植物ステロールを0.05%以上になるように添加するのが好ましい。また植物ステロール含量の上限は特に限定されない。ここで植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノールなどのフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル体が挙げられる。
【0009】
前記油脂組成物に含まれる他の成分は、トリアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールである。モノアシルグリセロール含量は2%以下、特に1.5%以下であるのが好ましい。残部は殆どがトリアシルグリセロールである。
【0010】
後記試験例に示す如く、ジアシルグリセロール及びこれを含む油脂組成物は、優れた血清レムナント様リポタンパク低下作用を有し、且つ、日常摂取し易いという特性を有することから、血清RLP低下を目的とした健康志向の食品として、また医薬品として有用である。
【0011】
本発明の血清RLP低下剤には、通常の油脂組成物に含まれる成分、例えばトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、BHT、BHA、リン脂質等の抗酸化剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等の乳化剤等を配合しても良い。
【0012】
また、通常ジアシルグリセロールでは、同じ脂肪酸組成のトリアシルグリセロールと比較して、融点上昇が生じるが、上記の組成物では常温で液状となり、食用油として広く使用できるという利点もある。従って、本発明のRLP低下剤は、調理油及び種々の油脂加工食品として好適に使用することができる。加工食品の例としては、ドリンク、デザート、アイスクリーム、ドレッシング、トッピング、マヨネーズ等の水中油滴型油脂加工食品;マーガリン、スプレッド等の油中水滴型油脂加工食品;ピーナッツバター、フライング、ベーキングショートニング等の加工油脂食品;ポテトチップス、スナック菓子、ケーキ、クッキー、パイ、パン、チョコレート等の加工食品;ベーカリーミックス;加工肉製品;冷凍アントレ;冷凍食品等に利用することができる。また、カプセル、錠剤等の形態でも利用可能である。
【0013】
本発明のRLP低下剤1日の摂取量は、ジアシルグリセロールとして0.03〜25g、更に5〜20g、特に6〜15gが好ましい。
【0014】
【実施例】
実施例1
トランス酸含有量0.8%である市販大豆油を加水分解して得た脂肪酸をウィンタリングにより飽和脂肪酸を低減させた後、市販の固定化1,3位選択リパーゼ(Lipozyme 3A、ノボインダストリーA.S.社製)を触媒とし、この脂肪酸とグリセリンを40℃で反応させた。リパーゼ製剤を濾別した後、反応終了品を分子蒸留にかけ、常法により精製して油脂組成物Aを得た。
【0015】
実施例2
トランス酸含有量0.6%である市販ナタネ油を加水分解して得た脂肪酸を市販の固定化1,3位選択リパーゼ(Lipozyme 3A、ノボインダストリーA.S.社製)を触媒とし、この脂肪酸とグリセリンを40℃で反応させた。リパーゼ製剤を濾別した後、反応終了品を分子蒸留にかけ、常法により精製して油脂組成物Bを得た。
【0016】
実施例3
トランス酸含有量2.8%である市販ナタネ油を加水分解して得た脂肪酸を市販の固定化1,3位選択リパーゼ(Lipozyme 3A、ノボインダストリーA.S.社製)を触媒とし、この脂肪酸とグリセリンを40℃で反応させた。リパーゼ製剤を濾別した後、反応終了品を分子蒸留にかけ、常法により精製して油脂組成物Cを得た。
【0017】
実施例4
市販DHA高含有油とグリセリンを混合し、アルカリ触媒(ナトリウムメトキサイド)を触媒とし、減圧下100℃でエステル交換反応を行った。触媒を濾別した後、反応終了品を分子蒸留にかけ、常法により精製して油脂組成物Dを得た。
【0018】
実施例1〜4及び大豆油(比較例1)のグリセリド組成及びジアシルグリセロールの構成脂肪酸を表1及び表2に示す。
【0019】
〔グリセリド分布の測定〕
油脂をシリル化剤(関東化学製、シリル化剤TH)にてシリル化した後、キャピラリーカラム(J&W社製、DBTM−1)を用い、ガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0020】
〔ジアシルグリセロールの構成脂肪酸分布〕
カラムクロマトグラム(和光純薬工業社製、「ワコーゲルC−200とヘキサンでトリグリセリド画分を落とした後、ヘキサン/エーテル=70/30にてジアシルグリセロール画分を得た)により、油脂中のジアシルグリセロール画分を集め、常法によりメチルエステル化後、キャピラリーカラム(クロムパック社製、CP−SIL88)を用い、ガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
試験例1
各油脂組成物を、普段使用している食用油に置き換えて、1ケ月間使用した。
その際の1日の摂取量はジアシルグリセロールとして10gであった。各試験は、血清トリグリセリドが高めの成人男女8名で行った。実施例及び比較例のRLPへ及ぼす効果を表3に示した。初期の値を100とした場合の相対値を示した。
RLPは、抗アポB−100・抗アポA1モノクローナル抗体アフィニティ混合ゲルで分画して得られた画分のコレステロール量によって定量した。
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
ジアシルグリセロール又はこれを含む油脂組成物を日常の食用油脂として摂取すれば、血清RLPを低下できるため、動脈硬化の予防が可能となる。
Claims (1)
- モノアシルグリセロール、トリアシルグリセロール、植物ステロール及び炭素数14〜18の脂肪酸を構成脂肪酸とし、当該構成脂肪酸の(シス型不飽和脂肪酸量)/(トランス型不飽和脂肪酸量+飽和脂肪酸量)重量比が9以上であるジアシルグリセロールからなる油脂組成物であって、当該ジアシルグリセロールの含有量が80%以上である油脂組成物を有効成分とするレムナント様リポタンパク低下剤。
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