図1は本発明の一形態に係る子守帯の使用状態を示す斜視図、図2は縦抱き用シートを半開き状態にした斜視図、図3は子守帯1の正面図、図4は子守帯1の背面図である。これらの図から明らかなように、子守帯1は使用者(一例として親)に装着される子守帯本体2と、その子守帯本体2に対して着脱可能な縦抱き用シート3とを備えている。子守帯本体2は使用者の肩回りに装着される一対の肩帯4を備えている。縦抱き用シート3は幼児を縦抱き状態で保持するためのものであり、肩帯4の前側4aに装着される。なお、子守帯本体2には縦抱き用シート3に代えて横抱き用シート等の他のアタッチメントを装着できるようにしてもよいが、本形態の子守帯1は肩帯4の前側4aに縦抱き用シート3を装着して幼児を前向き又は後向きで抱っこする縦抱き専用品として構成されている。
図4及び図5に示すように、肩帯4の背側4bには互いに接近する方向の湾曲が付されている。その湾曲の頂点は概ね使用者の背中の中心部に合わせられており、そこには肩帯4同士を連結するための連結手段としての回転バックル装置5が設けられている。回転バックル装置5は、一対の肩帯4のそれぞれに取り付けられて互いに連結及び連結解除が可能な一対の連結具としてのオスバックル6及びメスバックル7を備えている。これらのバックル6、7を相互に連結することにより、一対の肩帯4の背側4bをクロスタイプ、つまりは一対の肩帯が使用者100(図5)の背中で交差するタイプの肩帯と同様に使用者10の背中に添わせ、使用者100に加わる荷重を適切に分散させることができる。縦抱きシート3を肩帯4の前側4aに装着した場合には、縦抱き用シート3に加わる幼児の体重で子守帯1が前方に引っ張られるため、一対の肩帯4の背側4bを上記のようにクロスタイプに近い構成とすれば、使用者100の背中の中心部から肩にかけて荷重を適度に分散させて使用者100の負担を軽減することができる。なお、このような荷重分散効果を高めるには肩帯4の背側4bの幅をなるべく広く設定することが望ましいが、その一方で肩帯4の幅が広すぎれば使用者100の体格に肩帯4が合わなくなるおそれがある。このような観点から、肩帯4の幅は例えば60mm〜70mmの範囲に設定することが望ましい。
回転バックル装置5の詳細を説明する。図6は回転バックル装置5のオスバックル6とメスバックル7とを相互に連結した状態を示す斜視図、図7はオスバックル6とメスバックル7との連結を解除した状態を示す斜視図である。また、図8は回転バックル装置5の正面図、図9は回転バックル装置5の背面図、図10は図8のX−X線に沿った断面図、図11は図8のXI−XI線に沿った断面図である。これらの図に示すように、オスバックル6は、ベース10と、そのベース10から突出するタング11とを備えている。ベース10にはオスバックル6を一方の肩帯4に取り付けるためのベルト通し穴12が設けられている。タング11にはベース10と一体成形されたリング部13と、そのリング部13の内周に基部14aを介して接合された操作部14とが設けられている。操作部14は基部14aを軸としてオスバックル6の厚さ方向(図8において紙面と直交する方向)に弾性変形可能である。図9から明らかなように操作部14には円形の掛止部14bが設けられている。掛止部14bは基部14aに近付くほどその高さが漸次低くなる楔状に形成されている。なお、オスバックル6は樹脂を素材とした一体成形品である。
一方、メスバックル7は、ベース16と、そのベース16から延ばされたソケット17とを備えている。ベース16にはメスバックル7を他方の肩帯4に取り付けるためのベルト通し穴18が設けられている。図10及び図11から明らかなように、ソケット17はメスバックル7の厚み方向(同じく図8において紙面と直交する方向)に対向する一対の壁部20、21とそれらの壁部20、21を相互に結ぶ一対の側壁22とを有している。これら壁部20、21及び側壁22の内側にはオスバックル6のタング11を受け入れる凹部23が形成されている。さらに、メスバックル7の裏面側の壁部21には凹部23に通じる円形の抜き孔24が形成されている。オスバックル6のタング11を凹部23に差し込んだ場合、図9に示すように掛止部14bが抜き孔24に嵌り込み、図10に示すように操作部14の掛止部14bが抜き孔24の内壁に引っ掛かってメスバックル7からのオスバックル6の引き抜きが不能となる。操作部14を押し込んで掛止部14bと抜き孔24の内壁との噛み合いを外せば、オスバックル6をメスバックル7から引き抜いて回転バックル装置5の連結を解除することができる。なお、メスバックル7も樹脂を素材とした一体成形品である。
オスバックル6とメスバックル7とが連結された状態(掛止部14bが抜き孔24の内壁に掛かっている状態)において、掛止部14bは抜き孔24の内壁に沿って回転可能である。従って、図12に示したようにメスバックル7に対してオスバックル6が掛止部14bを軸として回転可能である。これにより、一対の肩帯4は抜き孔24の中心CPの回りに相互に回転できるようになる。これにより使用者の体格の相違に応じて肩帯4の背側4bの開き具合が変化し、様々な体格の使用者に肩帯4をフィットさせることができる。
メスバックル7に対するオスバックル6の回転は、オスバックル6のタング11が側壁22と接する範囲で許容される。従って、側壁22はオスバックル6の回転範囲を制限するストッパとして機能する。オスバックル6の回転範囲が必要以上に大きいと肩帯4が開きすぎて装着時の安定性が損なわれるおそれがあり、その回転範囲が不足すれば体格に応じた調整機能が損なわれる。このような観点から、メスバックル7に対するオスバックル6の回転角度θ、具体的には両バックル6、7が一直線に並んだ状態を基準とした片側の最大回転角度θは例えば10°〜20°の範囲に制限することが望ましい。
図13は回転バックル装置5のバックル6、7を肩帯4に取り付けた状態を示す断面図である。バックル6、7はそれぞれそのベルト通し穴12、18に通されたバックル固定ベルト26の両端部を肩帯4の外面に重ね合わせて縫製ラインSL1上で縫い付けることにより肩帯4に固定される。この際、メスバックル7は抜き孔24が設けられた壁部21を肩帯4の内面側(使用者と対向する側)に向けるように取り付けられ、オスバックル6もそれに合わせた向きで肩帯4に取り付けられる。バックル固定ベルト26にはさらにバックルカバー27が重ね合わされ、それらのバックルカバー27は縫製ラインSL2上で肩帯4に縫い付けられる。なお、縫製ラインSL1はなるべくバックル6、7に近い位置に設定することが望ましい。
上述した向きでバックル6、7が肩帯4に固定された場合、バックル6、7の連結を解除するには図14に示したように使用者100が肩帯4の内面側に指(例えば親指)を入れてオスバックル6の操作部14(掛止部14b)を外側に向かって押し込めばよい。従って、連結解除のための操作部をバックルの上下に設けてそれらの操作部を使用者が挟むようにして連結を解除する構成と比較して、使用者100が比較的容易にバックル6、7の連結を解除することができる。また、操作部14が内面側を向き、かつバックル6、7が肩帯4の外面側に重ねられて操作部14と使用者100の背中との間に肩帯4の厚み相当の隙間が確保されるので、使用者100の背側に外側から物があたる等してバックル6、7が押されてもバックル6、7の連結が解除されるおそれがない。
なお、図10から明らかなように、掛止部14bが抜き孔24に嵌り込んだ状態で掛止部14bは壁部21の表面よりも凹部23側に後退している。これにより、仮にバックル6、7が使用者の背中に当たるまで押されても壁部21が操作部14に対するガードとなり、操作部14が意図せずに押し込まれるおそれがより確実に排除される。また、図15に示したように、メスバックル7の壁部20、21のうち、肩帯4の外面側に配置される壁部20は肩帯4の内面側に配置される壁部21よりも凹部23の開口方向に突出する。また、内面側の壁部21には、凹部23の開口方向に向かうほど一対の壁部20、21同士の間隔を拡大させるテーパ面21aが設けられている。このような形状をメスバックル7に与えることにより、オスバックル6のタング11をメスバックル7のソケット17に差し込み易くなる。すなわち、壁部20を長くしたことにより、オスバックル6のタング11をメスバックル7に対して斜め内側から接近させてタング11を壁部20に突き当て、その壁部20をガイドとしてタング11を送り込むことができる。また、テーパ面21aを設けたことにより凹部23の口元が広がってタング11をソケット17に差し込み易くなる。
図1〜図3に示すように、子守帯本体2の肩帯4の下部には肩帯4の前側4aと背側4bとを繋ぐアジャストベルト30が設けられている。各アジャストベルト30の一端は肩帯4の前側4aの下端部(図1及び図2では縦抱き用シート3に隠れて見えていない。)に縫い付けられ、他端はラダー31を介して肩帯4の背側4bの下端部4cに連結されている。肩帯4の前側の下端部4cからラダー31までのアジャストベルト30の長さを調整することにより、肩帯4の長さを使用者の体格に合わせて変化させることができる。
図16に示すように、肩帯4の背側4bにおいてラダー31の取付位置よりも下方にはめくれ防止帯32が取り付けられている。ラダー31に通される前のアジャストベルト30をそのめくれ防止帯32に通すことにより、アジャストベルト30と肩帯4の背側4bの下端部4cとを束ねて下端部4cのめくれ上がりを防止することができる。なお、ラダー31から引き出されたアジャストベルト30の余長部30aをそのめくれ防止帯32にさらに通してもよい。
次に、縦抱き用シート3について説明する。図1〜図3に示すように、縦抱き用シート3は、幼児の臀部を指示する底部40と、その底部40に続いて幼児の背側又は胸側を支えるシート本体部41と、シート本体部41の上端に続く頭部保護部42とを備えている。底部40は肩帯4の前側4aの下端に連結される。底部40の両側には幼児の足を通すための足抜き部43が形成される。シート本体部41にはメッシュ素材等で構成された折り畳み可能な変形部41aが設けられており、ベルト通し41cに通されたアジャストベルト41bの長さ調整によりその変形部41aの折り畳み量を調整してシート本体部41の幅を幼児の体格に合わせて変化させることができる。また、アジャストベルト41bの下方にもブリッジベルト41dが設けられており、これらをホック41e、41fにて相互に連結することにより幼児の股部分におけるシート本体部41の幅を変化させることができる。
シート本体部41の両側にはホールド部44が設けられている。ホールド部44の幅(上下方向の長さ)は幼児の脇下から腿上までを覆える程度に設定されている。各ホールド部44と各肩帯4の前側4aとはサイドバックル装置45を介して着脱自在に連結される。頭部保護部42はヘッドサポート46及び回転バックル装置47を介して肩帯4と連結される。
以下、サイドバックル装置45について説明する。図17はサイドバックル装置45の連結状態の斜視図、図18はサイドバックル装置45の連結解除状態の斜視図、図19はサイドバックル装置45の平面図、図20はサイドバックル装置45の正面図である。また、図21は図19のXXI−XXI線に沿った断面図、図22は図20のXXII−XXII線に沿った断面図、図23は図20のXXIII−XXIII線に沿った断面図である。これらの図に示すように、サイドバックル装置45は、シート側留め具としてのオスバックル50と、本体側留め具としてのメスバックル51とを備えている。図18及び図21〜図23から明らかなように、オスバックル50は、バックル本体(留め具本体)52と一体の掛止部53とを備えている。これらのバックル本体52と掛止部53とは樹脂を素材として一体成形されている。
バックル本体52は一方向に長いベース52aと、そのベース52aの表面側に直交させて一体的に設けられた平板状のハンドル52bとを備えている。ベース52aの一端にはロック解除手段としての摘み部54が設けられている。摘み部54はベース52aの長手方向中心側に向かって開くU字型に形成されており、そのU字型の基部に当たる連絡部54aを介してハンドル52bと連結されている。連絡部54aを除く摘み部54の周囲はスリット55によってベース52a及びハンドル52bのそれぞれから分離されている。摘み部54の両端にはロック解除操作のための操作部54bが形成されている。各操作部54bの下方にはロック56が一体的に形成されており、各ロック56の先端はベース52aの裏面から突出する。ロック56もまたスリット55によってベース52a及びハンドル52bのそれぞれから分離されている。従って、左右の操作部54bを摘むとロック56もバックル本体52の幅方向(図19において上下方向)に互いに接近するように変位する。バックル本体52のハンドル52bには、オスバックル50を縦抱き用シート3のホールド部44の先端に取り付けるためのスロット52cが適宜数(図では2つ)形成されている。一方、掛止部53はベース52aの長手方向に距離をおいて設けられている。各掛止部53は、ベース52aの裏面から突出する平板状の連絡部53aと、その連絡部53aの先端に続くフランジ53bとを備えた逆T字状に形成されている。
図18に詳しく示すように、メスバックル51は一方向に長いベース60と、そのベース60に設けられた一対の受け部61とを有している。受け部61はオスバックル50の掛止部53と噛み合う部分であり、掛止部53の連絡部53aを通すためのスリット61aと、掛止部53のフランジ53bを収容する凹部61bとを備えている。凹部61bはベース60の長手方向一端側(図18の奥側)に向かって開口し、スリット61aは凹部61bの開口端まで延びている。ベース60の一端側の受け部61に関しては、そのスリット61aの一対の内壁のそれぞれにロック受け溝61cがさらに設けられている。また、ベース60の長手方向両端部及び中間部のそれぞれにはベース60を肩帯4に取り付けるための取付穴62が設けられている。
以上のようなサイドバックル装置45においては、オスバックル50の掛止部53のフランジ53bをメスバックル51の受け部61の凹部61bに差し込んで連絡部53aをスリット61aに通すことにより、掛止部53を受け部61と噛み合わせて両バックル50、51を連結することができる。その連結状態ではオスバックル50のロック56が受け部61のロック受け溝61cに噛み合うことにより、受け部61に対する掛止部53の噛み合いの解除が不能となり、それによりオスバックル50がメスバックル51に対して連結状態に拘束される。オスバックル50をメスバックル51から取り外すには、摘み部54の操作部54bを摘んでロック56を弾性変形させてロック受け溝61cから外し、その状態でオスバックル50を受け部61の凹部61bの開口方向にスライドさせればよい。
図2及び図24に示したように、メスバックル51はその受け部61の開口方向を上に向けた状態で肩帯4の前側4aに取り付けられる。一方、オスバックル50は摘み部54を上にして縦抱き用シート3のホールド部44の先端に取り付けられる。なお、図2及び図24では一方のホールド部44と一方の肩帯4とへのバックル50、51の取り付け状態のみを示すが反対側も同一である。以上のようにバックル50、51が取り付けられることにより、掛止部53及び受け部61がそれぞれ上下方向に適度な間隔をおいて並ぶようになる。そして、図24に矢印で示すようにホールド部44のオスバックル50の掛止部53のそれぞれを斜め上から肩帯4のメスバックル51の受け部61に噛み合わせることにより、ホールド部44を肩帯4に連結することができる。
上記の連結状態では上下一対の掛止部53がそれぞれの受け部61と噛み合っているので、万が一いずれか一方の掛止部53や受け部61が破損しても残る一方の掛止部53と受け部61とによってホールド部44と肩帯4との連結が維持される。従って、安全性が高い。なお、上側の掛止部53を下側の受け部61に取り付ける等の誤りが生じないように、掛止部53のフランジ53bの厚みと幅は上下の掛止部53間で互いに異なっている。
また、単一のオスバックル50をメスバックル51に沿ってスライドさせるだけで複数の掛止部53と受け部61とを一括して噛み合わせることができるので、掛止部53と受け部61とを個別に噛み合わせる場合と比して手間がかからない。さらに、ホールド部44を肩帯4から外す場合には単一の摘み部54を摘むだけでよいために手間がかからない。但し、一対の操作部54bを同時に押し込まない限りはメスバックル51に対するオスバックル50の拘束が解除されないので、その拘束が不用意に解除されるおそれもない。しかも、図2から明らかなように、バックル50、51を外すだけで縦抱き用シート3の側部が完全に開くので幼児の乗せ降ろしを容易に行える。さらに、オスバックル50とメスバックル51とがホールド部44の上下方向の幅のほぼ全長に亘って延びているので、バックル50、51を連結すればホールド部44がほぼ全幅に亘って肩帯4と連結されるようになり、幼児の側方に隙間がなくなるので安全性がさらに高まる。なお、上下の掛止部53を一体に連続させた場合でもホールド部44をほぼ全幅に亘って肩帯4と連結することができるが、その場合にはホールド部44の下端をメスバックル51の上端まで持ち上げてバックル50、51を連結する必要がある。これに対して、図24から明らかなように掛止部53及び受け部61が上下に分離されている場合には、各掛止部53が対応する受け部61の直ぐ上に位置する状態までホールド部44を持ち上げるだけでよいためにホールド部44の操作に関する負担が少なくて済む。
図25に示すように、ホールド部44の先端には、縦抱き用シート3の外面側に配置される外カバー部65aと、縦抱き用シート3の内面側に配置される内カバー部65bとからなるバックルカバー65が設けられている。オスバックル50はそのバックルカバー65内に埋め込まれるように配置されている。図26に示したようにオスバックル50のスロット52c(図18参照)にはバックル固定ベルト66が通され、それらのバックル固定ベルト66は縫製ラインSL3上で外カバー部65a及び内カバー部65bとともに一体的に縫い合わされる。これによりオスバックル50がホールド部44に固定される。
図25から明らかなように、バックルカバー65の内カバー部65bは外カバー部65aよりもホールド部44の先端側に長く設けられており、その長さはバックル50、51同士を連結させた状態でメスバックル51をもほぼ完全に覆う程度に設定されている。このように内カバー部65bを設けることにより、縦抱き用シート3に収容された幼児とバックル50、51との接触を防止することができる。図25及び図27に示すように、内カバー部65bにはめくれ防止用の平板状の芯材67が内蔵されている。芯材67としては例えば密に編まれたベルト材、樹脂材等が利用できる。但し、図27から明らかなように、オスバックル50の操作部54bをバックルカバー65の外側から押し込み操作できるように、内カバー部65bの操作部54bと対向する部分には芯材67が設けられていない。また、外カバー部65aにはそのような芯材67が設けられていない。これにより、バックルカバー65の操作部54bと対向する部分は低剛性部として構成されている。さらに、図28に示すように、バックルカバー65の表面には操作部54bと位置を合わせるようにして識別標識68が設けられている。この識別標識68の部分を使用者が摘むことによりバックルカバー65の外側から操作部54bを確実に押し込むことができる。
図26に示すように、バックルカバー65の外カバー部65aの表面には帯状の持ち手69がホールド部44を上下方向に横断するように設けられている。持ち手69はその上下端において縫製ラインSL4に沿ってバックルカバー65と一体的に縫い合わされている。持ち手69は、バックル50、51の連結及び連結解除操作時にホールド部44を使用者が保持するために設けられている。持ち手69には芯材を設けることが望ましい。使用者は、図26に矢印Yで示すようにホールド部44の基部側から先端側に向かって持ち手69とバックルカバー65との間に指を指し入れてホールド部44を持ち上げてオスバックル50をメスバックル51と連結させることができる。この際、使用者が指を入れ易いように縫製ラインSL4はホールド部44の先端に向かって斜め上方に延びるように設定されている。また、持ち手69による支持位置とオスバックル50の掛止部53とはなるべく接近していることが望ましく、そのために持ち手69は縫製ラインSL3になるべく近い位置に設けるとよい。
次に、ヘッドサポート46及びこれを取り付けるための回転バックル装置47について説明する。図29はヘッドサポート46の使用状態を示す。縦抱き用シート3の頭部保護部42は縦抱き用シート3に保持された幼児101の頭部を支えるように設けられ、かつ両側が開口した袋状に構成されている。ヘッドサポート46はその頭部保護部42の内部に通された上で幼児101の側方に回され、その両端が回転バックル装置47を介して肩帯4に連結される。図31及び図32に示したように、頭部保護部42は縦抱き用シート3の外側かつ下方に向かって二段階に折り返し可能である。図31に示すように頭部保護部42が浅く折り返された状態ではヘッドサポート46は幼児101の肩回りを経由して肩帯4と連結される。一方、図32に示したように頭部保護部42が深く折り返された状態ではヘッドサポート46は幼児101の脇下を回って肩帯4と連結される。
このように頭部保護部42を折り返す場合、ヘッドサポート46の頭部保護部42から引き出されている部分は縦抱き用シート3の内側に入り込むように捻られる。これを放置すれば幼児101の頭部回りのスペースが狭められる。本形態のヘッドサポート46及び回転バックル装置47はこのようなヘッドサポート46の変位を抑えるための特徴を備えている。以下、ヘッドサポート46及び回転バックル装置47について説明する。
図33はヘッドサポート46の正面図、図34はその裏面図である。これらの図に示すように、ヘッドサポート46は弓側に湾曲した支持部70と、支持部70の両端に配置された一対の連結部71とを有している。支持部70の中央には変形部72が設けられ、その変形部72の両側には二対のフック73a、73bが設けられている。変形部72はヘッドサポート46に内蔵されるパッド等の内装材が省略されて折り畳み可能に設けられている。変形部72を折り畳んでフック73a、73b同士を噛み合わせることによりヘッドサポート46の長さを調整することができる。これにより、変形部72及びフック73a、73bは長さ調整手段として機能する。これらの変形部72及びフック73a、73bはヘッドサポート46の頭部保護部42にて隠される部分に配置されている。従って、幼児のヘッドスペースにこれらの部品は露出せず、幼児の快適性が保たれる。なお、フック73a、73bは一対でもよい。長さ調整手段は例えば変形部72の両端にベルトとラダーを設けて変形部72の折り畳み長さを無段階に調整できるようしたもの等、種々変形が可能である。
連結部71は支持部70の両端から支持部70の湾曲方向外周側に折れ曲がるように延びている。支持部70と連結部71との境界にはヘッドサポート46の生地を縫い合わせることによって折り曲げ線74が形成されている。折り曲げ線74は支持部70と連結部71との間に曲げ癖を付けるために設けられている。折り曲げ線74を形成するための縫製はヘッドサポート46の片面側にのみ実施されてもよいし、ヘッドサポート46を厚み方向に貫くように実施されてもよい。なお、ヘッドサポート46は支持部70の湾曲方向に対して外周側が上方となる向きで頭部保護部42に装着される。すなわち、支持部70が頭部保護部42から下方に向かって弓形に湾曲しつつ延びるような向きでヘッドサポート46が頭部保護部42に取り付けられる。
連結部71には回転バックル装置47のオスバックル75が取り付けられている。図35及び図37に示すように、オスバックル75は円板状のベース76とそのベース76の中心位置から突出する掛止部77とを有している。掛止部77はベース76と同軸の支軸77aとその支軸77aの先端に配置されたフランジ77bとを備えている。ベース76には掛止部77を挟むようにして一対のベルト通し穴78が設けられている。ベース76の表面76aには掛止部77を頂点として球面状の膨らみが付されている。また、その表面76aにはロック手段として一対の凸部79a、79bが設けられている。これらの凸部79a、79bは掛止部77から互いに等しい距離に設けられている。このようなオスバックル75はベルト通し穴78にそれぞれ通されるバックル固定ベルト80がヘッドサポート46の連結部71に縫い付けられることによってそれらの連結部71に取り付けられる(図34参照)。なお、オスバックル75はヘッドサポート46の外面側、つまり幼児と対向する側に対する反対面側に取り付けられる。
図36は回転バックル装置47のメスバックル81を示している。図37にも示したように、メスバックル81はオスバックル75の掛止部77を通すための通し穴81aと、掛止部77のフランジ77bと噛み合う凹部81bと、掛止部77の軸部77aを通すためのスリット81cとを備えている。通し穴81aに差し込まれた掛止部77の軸部77aをスリット81cに差し込んで凹部81bとフランジ77bとを噛み合わせることにより、オスバックル75とメスバックル81とが掛止部77の軸部77aを中心として相互に回転可能に連結される。
なお、メスバックル81にはベルト通し穴81dが設けられている。ベルト通し穴81dはスリット81cに対して通し穴81aを挟んで反対側に設けられている。メスバックル81の表面(オスバックル75と対向する面)81eにはロック手段としての一対の凹部82a、82bと、それらの凹部82a、82bに通じる案内溝83a、83bとが設けられている。凹部82a、82bはスリット81cにおける回転中心RC(そこに差し込まれる掛止部77の軸中心と一致する。)に対して互いに等しい距離に設けられている。また、案内溝83a、83bはその回転中心RCを軸として湾曲している。以上のようなメスバックル81は、そのベルト通し穴81dに通されるバックル固定ベルト84が肩帯4に縫い付けられることにより、バックル固定ベルト84から吊り下げられるようにして肩帯4に固定される(図2参照)。
以上のような構成によれば、ヘッドサポート46に固定されたオスバックル75の掛止部77を肩帯4側のメスバックル81の通し穴81aに差し込んでオスバックル75を引き下げることにより掛止部77の連結軸部77aがスリット81cに入ってバックル75、81が互いに連結される。これにより、ヘッドサポート46が肩帯4と連結される。連結状態においてオスバックル75がメスバックル81に対して回転できるため、縦抱き用シート3の頭部保護部42を下方に折り返した場合でもヘッドサポート46の両端を裏返して肩帯4に付け直す必要がない。また、頭部保護部42を延ばした状態ではヘッドサポート46の支持部70に付された湾曲によりヘッドサポート42が外側に張り出すようになり幼児の頭部回りのスペースが拡大して幼児の快適性が高まる。
また、頭部保護部42を下方に折り返すことによってヘッドサポート46が内側に捻られた場合には、それに伴ってオスバックル75が図29に矢印Mで示したように内側に回転するが、連結部71が支持部70に対して湾曲方向外周側へ折れ曲がっているために、ヘッドサポート46の全体を弓形に湾曲させた場合と比較して連結部71の回転に対する支持部70の内側への捻れの程度が小さくなる。しかも、連結部71に対して支持部70が折り曲げ線74に沿って折れ曲がることにより、支持部70の内側への捻れは一層軽減され、それによりヘッドサポート46の内側への変位が抑えられる。また、オスバックル75が回転中心を挟んで両側で連結部71に固定されているので、頭部保護部42を押し返した際にオスバックル75に対して連結部71が内側にずれて支持部70が縦抱き用シート3の内方に入り込むおそれもない。
頭部保護部42を延ばした状態、頭部保護部42を折り返した状態のそれぞれにおいて、バックル75の凸部79a、79bと凹部82a、82bとが適宜に噛み合う。具体的には、頭部保護部42が延ばされた状態においては、右肩側のオスバックル75の凸部79aがメスバックル81の凹部82aと噛み合い、左肩側のオスバックル75の凸部79bがメスバックル81の凹部82bと噛み合う。一方、頭部保護部42が折り返された状態においては、右肩側のオスバックル75の凸部79bがメスバックル81の凹部82bと噛み合い、左肩側のオスバックル75の凸部79aがメスバックル81の凹部82aと噛み合う。このような噛み合いにより、オスバックル75を頭部保護部42を延ばした状態に適した位置、及び頭部保護部42を折り返した状態に適した位置にそれぞれ適度な力で拘束してオスバックル75の周方向の遊びを抑え、それによりヘッドサポート46の姿勢を安定させることができる。なお、ヘッドサポート46は頭部保護部42に対して取り外し不能であってもよい。
図29に示したように、子守帯1は涎掛け90をさらに備えている。涎掛け90は幼児を後向きに対面抱っこした場合、幼児を前向きに抱っこした場合のいずれにおいて使用できるように構成されている。図38は涎掛け90の正面図、図39はその裏面図である。これらの図に示すように、涎掛け90には、幼児の涎を受ける涎掛け本体91と、涎掛け本体91の裏面側に設けられるポケット92と、そのポケット92の両側に配置される上部留め具としての押し込み式のホック93と、涎掛け本体91の下部側縁に設けられた下部留め具としての一対の留め紐94とを備えている。
ポケット92は袋状に構成されており、頭部保護部42に被せるようにして縦抱き用シート3に装着可能である。ポケット92の両側にはヘッドサポート46を通過させる開口部92aが設けられている。留め紐94にはこれらを互いに連結及び分離するためのホック95a、95bがそれぞれ適宜数(図では二つずつ)設けられている。
幼児を前向き抱っこで保持する場合には、図40に示すように涎掛け本体91を頭部保護部42の内面側に垂らしつつ頭部保護部42にポケット92を被せる。また、留め紐94を縦抱き用シート3のシート本体部41に巻き付けてホック95a、95bで相互に連結する。この状態から図41に示すように頭部保護部42を下方に折り返すと、その折り返し部分が涎掛け本体91にて覆われる。これにより前向き抱っこで保持する際に汚れやすい頭部保護部42の折り返し部分を涎掛けにて保護することができる。一方、幼児を対面抱っこする際には肩帯4の胸元付近が汚れやすいため、図29に示すように涎掛け本体91を肩帯4の前側4aの胸元付近に配置し、各肩帯4に設けられたホック4d(図2に片側のみ示す。)と涎掛け90の上部のホック93に留める。また、留め紐94を両肩帯4の内面側に回してホック95a、95bを相互に留め付ける。前向き抱っこ及び対面抱っこのいずれの場合でも、涎掛け90の上部がポケット92又はホック93によって固定され、かつ下部も留め紐94にて固定されるので、涎掛け90がずれたり上方にめくれるおそれがない。なお、涎掛け90の取り付けは幼児を抱っこする前でも後でもよい。肩帯4のホック4dは肩帯4の内面側に設けられてもよい。子守帯1が幼児のおんぶもできるように構成されている場合には肩帯4の背側4bにもホック4dを取り付けておんぶ時にも涎掛け90を使用可能としてもよい。
本発明は以上の形態に限らず種々の形態にて実施してよい。例えば、縦抱き用シート3は子守帯本体1に対して完全に分離可能なものに限らず、幼児を乗せ降ろしするために一部のみが子守帯本体2に対して着脱可能であってもよい。肩帯4の背側4b同士を連結する連結具は回転バックル装置5に限らずフック状、ホック状のもの等を使用できる。縦抱き用シート3のホールド部44を肩帯4と連結するための留め具に関しては、サイドバックル装置45のメスバックル51の受け部61を共通のベース60上に設けたものに限らず、受け部61毎にベースが異なってもよい。すなわち、オスバックル50の掛止部53が単一のバックル本体52に設けられている限りにおいて、それらの掛止部53の一括的な連結及び連結解除を実現することができる。受け部61を分離した場合、ロック受け溝61cはいずれかの受け部61に設けてもよいし、それらの受け部とは別部材に設けてもよい。掛止部53の形状は図示のものに限定されず、例えば鈎形であってもよい。ヘッドサポート46を肩帯4と連結するための留め具に関しても回転バックル装置47に限らずホック状のもの等を利用してもよい。涎掛け90の上部留め具及び下部留め具もホック93、留め紐94に限らず、涎掛け本体90を子守帯本体2や縦抱き用シート3に固定できる限りにおいてバックル、ベルトその他の各種の固定手段を利用してよい。