JP4612140B2 - 歯車を支持部材に連結するためのピン及び該ピンを備えた変速機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯車を支持部材に連結するためのピンに及び該ピンを備えた変速機に関する。
【０００２】
特に本発明は、排他的にではなく、一般に厳しい負荷を伝達するための遊星歯車装置において、また特に航空機用変速機の遊星歯車装置において有利に使用できる支持ピンに関しており、下記の説明は純粋に例としてこれらの遊星歯車装置に言及している。
【０００３】
【従来の技術】
航空機用変速機は通常、太陽歯車と、リングギヤと、この太陽歯車とリングギヤの間に介在して遊星歯車キャリア上で支持されている多数の遊星歯車とからなる遊星歯車装置を含んでいる。
【０００４】
大抵の用途においてこの遊星歯車キャリアは、遊星歯車の軸方向の相対する側で互いに向き合うように位置決めされていて、２個の実質的に板状の要素と通常は一体的に結合された、多数の角度的に等しい間隔で配置された十字部材、またはほぞによって互いに一体的に連結されている前記２個の板状要素からなる。これら遊星歯車の各々は、それぞれの支持ピンによって前記キャリアに連結され、その相対する端部の各々は、それぞれ板状要素に連結されており、またこの支持ピンには、それぞれの遊星歯車が軸受け通常は摩擦軸受けを介して連結される。
【０００５】
この歯車装置の動作時に前記キャリアは、時にはキャリアの変形という結果、また特に前記２個の板状要素の相対的な変位という結果を招く力によって応力を加えられている。
【０００６】
前記板状要素の変位は、前記ほぞと支持ピンの両者の変形という結果を招くが、これらの支持ピンの軸は、太陽歯車の軸とリングギヤの軸に平行な理想的動作状態または休止状態から実際の動作状態または臨界動作状態までを推移するものであり、この実際の動作状態または臨界動作状態ではこれら支持ピンの軸は、太陽歯車軸・リングギヤ軸と、ゼロ以外のある角度を形成し、またこの状態は伝達される力の強さによって変化する。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
これらのピン軸の振れ、したがってまたリングギヤ軸・太陽歯車軸に対するそれぞれの遊星歯車軸の振れは、遊星歯車の歯と太陽歯車・リングギヤ両者の歯との間の接触圧力の不均一な分布という結果を招き、またそれは、一般的な歯車装置の誤動作ばかりでなく、相対運動におけるこの歯車装置の接触部品の急速な磨耗という結果を招く。
【０００８】
上記の欠点を除去するために、両端が同じサイズで弾性を有する、また常に歯車の正しい噛み合わせを確実にするために板状要素とそれぞれのほぞとの変形を弾性的に並行して起こさせる、専用の支持ピンが使用されている。またキャリアと支持部材との間には、支持部材に一体的に連結された多数の軸方向アームと、各アームごとに、太陽歯車軸・リングギヤ軸に垂直で各遊星歯車の中心線を通る平面内に存在するそれぞれの連結部材とからなる、負荷のバランスをとるアセンブリの備えが存在しなくてはならない。
【０００９】
上記の態様の公知のバランスアセンブリは、特に複雑であって製造・保守ともに非常に高コストであり、また強い応力が掛かると、しばしば破損や誤動作を起こす傾向がある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、簡単で低コストな方法で上述の問題を解決するように設計された支持ピンを提供することである。
【００１１】
本発明によれば、歯車を支持部材に連結するためのピンであって、それぞれの軸を有し、また前記支持部材に連結可能な第１、第２の長手方向端部と、前記第１の端部から延びる第１の中間部と、前記第２の端部から延びる第２の中間部とからなり、前記第１、第２の中間部は互いにサイズ及び曲げ強さとが異なっていることを特徴とするピンが提供される。
【００１２】
【発明の実施の形態】
添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【００１３】
図１、図２における参照符号１は、航空機（図示せず）用の遊星歯車変速機全体的を示す。変速機１は、それぞれの軸３を中心として回転する太陽歯車２と、軸３と同軸の回転リングギヤ４と、リングギヤ４と太陽歯車２とに噛み合っていて、互いに平行で軸３に平行なそれぞれの軸を中心に回転するように遊星歯車キャリア６に連結された多数の遊星歯車５（この図示例では５個）とからなる。
【００１４】
キャリア６は、軸３と同軸方向に延び金属材料で一体に形成され、また２個の相対する板状部材８、９を含んでいる（図２）。この特定の図示例において部材８は、公知態様により（例えば、ブラケット８ａと図示されていないネジまたはピンとにより）キャリア６を支持する固定された部材１０（概略的に図示）に一体的に連結される。キャリア６はまた、板状部材８、９の間に軸方向にこれらと一体的に延びている多数の公知のほぞ（図示せず）も含んでいる。図示しない変形体において、部材８は出力軸に一体的に連結されており、リングギヤ４は固定部材に一体的に連結されている。
【００１５】
各遊星歯車５は、中心軸用貫通孔１２を備え、それぞれの支持装置１３によってキャリア６の板状部材８、９に連結されている。図２に示すように装置１３は、貫通孔１２の中を貫通して延びており、それぞれの軸１５を備える支持ピン１４と、ピン１４と関連遊星歯車との間に介在する、減摩材製のブッシュ１６とからなる。
【００１６】
ピン１４は、軸１５に垂直でピン１４の中心線を通る平面Ｐに関して非対称であり（図２、３）、軸１５と同軸で直線的母線を有する円筒形支持面１８によって側面方向が画定されている。ピン１４は、この特定の図示例では部材８、９内に形成されたそれぞれの軸の貫通孔に実質的に隙間なしで係合する２個の相対する管状の長手方向端部１９、２０を備える。この他、図示しない変形体では、一端が拘束され、他端が支持体に対して静止している通常のロッドと同じようにピン１４が動作するように、部分１９はそれぞれの孔に係合し、したがって部材９と一体的に連結されており、これに対して部分２０は部材８によって支えられた支持体に対して単に静止している。
【００１７】
図２、３に示すように、ピン１４は、部分１９、２０からそれぞれ延びており、平面Ｐと平行なそれぞれの平面内で測定されたそれぞれの外径とそれぞれの異なる横断面とを有する２個の円筒形管状の中間部２１及び２２を備える。更に明確に言えば、部分２１は、部分２２よりも大きな外径及び横断面とを有し、部分２２よりはるかに大きな曲げ強さ、即ち少なくともピン１４が使用中、応力を掛けられているときに部分２２だけが実質的に弾性変形を受ける程度の大きな曲げ強さを備える。
【００１８】
図２、３に示すようにピン１４はまた、外側を表面１８によって画定され、中間部分２１から突き出ていて、中間部分２２を取り巻いている更なる管状部２４を備える。管状部２４は、中間部分２２の外側面２６に対向して延びていて、端部１９に向かって勾配の付いた内径を有する円錐面２５によって内側を画定されている。表面２５は、側面２６から間隔をあけており、使用中に部分２２が内部で曲がる空洞２７を表面２６と共に画定している。
【００１９】
図２に示すようにピン１４は、詳細は説明しないが、ピン１４とブッシュ１６との間に潤滑流体を供給するための既知の潤滑装置２８を収納している。
【００２０】
各ピン１４は、少なくとも一端が拘束された通常の可変断面ロッドと同様に機能し、またピン１４の中間部の異なる曲げ強さの断面は、遊星歯車５によってキャリア６に伝達される負荷が板状部材８、９とキャリア６のほぞ（図示せず）とを変形させる程のものである時に、部分２２は図３の破線によって示すように曲がるが、部分２１、２４の両者は実質的に変形しないでいるようなサイズになっている。実際には板状部材８、９に対する端部１９、２０のこの特定の連結と板状部材８、９自身の変形とによって、部分２２の変形は、関連遊星歯車５に作用する力とは反対方向に部材９に働く反作用を発生させて、ピン１４の表面１８がそれ自身に平行な状態で動くこと、したがって遊星歯車５が太陽歯車２とリングギヤ４の両者に常に正しく噛み合うことを可能にしている。キャリア６の変形のバラツキと共に遊星歯車と太陽歯車・リングギヤとの間の実質的に不変の噛み合い状態を維持することは、噛み合っている歯とブッシュ１６の局所的な変形との間の好ましくない、予測できない力の発生、明らかに遊星歯車装置ばかりでなく変速機全体の間断のない急速な減損という結果を招くこの力の発生を防止する。
【００２１】
既知の解決策と比較すればピン１４のこの特定の形状は、変速機１の製造コストと運用コストの両者を大幅に削減することに備えているものでもある。すなわちピン１４の形状、特に各ピンが応力を掛けられたときに弾性変形可能な反作用部分を１ヶ所だけ備えるということは、既知の解決策のような複雑で高コストの負荷バランス装置を必要とせずに、前記２個の板状部材のうちの１個だけ（本図示例では部材８）がキャリア６の支持部材に直接連結されることを可能にしている。
【００２２】
しかしながら、本発明の範囲から逸脱せずに、ここに述べたようなピン１４に対する変更が可能であることは明らかである。特にピン１４の種々の部分は、例として説明したものとは異なるように形成することも可能であり、あるいは同等の機能を実行するそれぞれの部分で置き換えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る多数の支持ピンを備える遊星歯車装置を概略的に示す部分断面図である。
【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線から見た拡大断面図である。
【図３】図２の細部の断面図である。

Claims (6)

1. 歯車を支持部材に連結するためのピンであって、
   前記ピンは、それぞれの軸を有し、また前記支持部材に連結可能な第１、第２の長手方向端部と、前記第１の端部から延びる第１の中間部と、前記第２の端部から延びる第２の中間部とからなり、前記第１、第２の中間部は互いにサイズ及び曲げ強さが異なり、
   前記第１の中間部は、前記軸に垂直な平面内で測定した場合に、前記平面に平行な更なる平面内で測定された前記第２の中間部の横断面よりも大きな横断面を備え、
   前記ピンは、円筒形の支持面によって側面方向が画定されていることと、前記軸と同軸方向に前記第１の中間部から突き出ていて、前記第２の中間部と取り巻いており、且つ前記円筒面によって外側が画定されている単一の管状部を備えることを特徴とするピン。
2. 前記軸に垂直であって、前記ピンの中心線を通る平面に関して非対称であることを特徴とする請求項１に記載のピン。
3. 前記単一の管状部は、前記第２の中間部の外側面に向き合っていて、前記外側面から間隔をあけて存在する表面によって内側を画定されており、前記第２の中間部は使用時に前記単一の管状部の内側で変形することを特徴とする請求項１または２に記載のピン。
4. それぞれの軸に沿って延びていて、互いに向き合って連結された実質的に板状の第１、第２の板状部を含む支持部材と、前記第１、第２の板状部の間に介在する少なくとも１個の歯車と、前記歯車とを、前記第１、第２の板状部に連結するピンを備える機械的変速機であって、前記ピンは、それぞれの軸を有し、また前記第２の板状部に結合された第１の長手方向端部と、前記支持部材に連結された第２の長手方向端部と、前記第１の端部から延びる第１の中間部と、前記第２の端部から延びる第２の中間部とを含み、前記第１、第２の中間部は、互いにサイズ及び曲げ強さが異なり、前記第１の中間部は、前記軸に垂直な平面内で測定した場合に、前記平面に平行な更なる平面内で測定された前記第２の中間部の横断面よりも大きな横断面を備え、前記ピンは、円筒形の支持面によって側面方向が画定されていることと、前記軸と同軸方向に前記第１の中間部から突き出ていて、前記第２の中間部と取り巻いており、且つ前記円筒面によって外側が画定されている単一の管状部を備えるピンであることを特徴とする機械的変速機。
5. 前記支持部材を連結部材に直接連結するための連結手段であって、前記板状部のうちの一つと前記連結部材との間に介在する、前記連結手段を含むことを特徴とする請求項４に記載の変速機。
6. 前記板状部のうちの一つは、前記連結部材と一体的に連結されていることを特徴とする請求項５に記載の変速機。

Images