JP4611482B2 - バイス用のインデックスワークホルダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械などにより加工されるワークを保持するバイスに取付けて加工されるワークの割出し回転を可能にするインデックス機能を備えたワークホルダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一つのワークに一定の角度関係となる2箇所の加工を行うときは、ワークを工作機械に装着した状態で当該角度だけワークを回動する必要がある。このときのワークの回動を正確に行わせるために、インデックステーブルやインデックスチャックが用いられる。この種のテーブルやチャックは、1個のワークを把持して角度割出しを行うため、多数のワークの加工を行うときは、1個1個のワークの着脱に時間がかかり、工作機械の稼働率を低下させる。特にワークが小さく、かつ加工が例えば孔開けのような単純な加工であるときは、加工時間に比べてワークの着脱に要する時間の割合が大きくなって、機械の稼働率が大きく低下する。
【0003】
寸法の小さなワークの加工を行うときは、バイスを用いて工作機械のテーブルに多数のワークを装着して、当該多数のワークを一時にあるいは連続的に加工することにより、機械の稼働率を上げることが行われている。例えば工作機械のテーブルに複数のバイスを固定し、更に各バイスの固定爪と可動爪との間に中間爪を設けて、1個のバイスに複数のワークを固定できるようにし、ワークの装脱時に複数のバイスに装着されたワークの着脱を一斉に行い、装着した複数のワークに対する加工を一連の動作で行うことにより、加工能率を向上させるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
同一の工作機械上で、1個のワークに互いにある角度関係にある2箇所以上の加工を行うとき、大型のワークであれば、インデックステーブルを用いてワークの加工位置を割出すことができる。しかし、ワークが小型で前述したように、工作機械のテーブルに複数のバイスを固定して、各バイス毎に複数のワークを把持した状態で加工を行うようなとき、ワークの加工位置を割出すインデックス装置がないため、1箇所の加工が終わった後、工作機械を停止させて、手作業で各ワークの割出しを行ってやらねばならなかったので、ワークの割出しに非常に時間がかかり、かつ正確な角度割出しができないという問題があった。
【0005】
ワークの角度を割出すのに用いることができる治具やワークバイスには、種々の構造が提案されているが、多数のワークを一時に加工しようとするときは、そのような治具やバイスを多数必要とするため、安価であることが要求される。更にそのような治具やバイスが大型であると、工作機械のテーブルに装着するワークの個数が減るため、工作機械の稼働率が低下する。
【0006】
この発明は、バイスに把持されたワークに対して簡単な操作で正確な角度割出しを行うことが可能な、構造が簡単でかつテーブル上のスペースをとらないワークホルダを提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決したこの発明のバイス用のインデックスワークホルダは、バイスの把持方向に自由移動可能に装着されるスライド台7と、スライド台の側部に立設された支持ブラケット10と、バイスの把持方向と直交する軸回りに回動可能に支持ブラケット10に軸支されたインデックス軸13と、インデックス軸の内側端のクランパ18と、インデックス軸の外側端のつまみ32と、歯車20、34とその歯溝に嵌合する爪26とでインデックス軸13の角度を保持する係合対35と、爪26が歯溝に嵌合した状態で当該爪を固定する固定部材31と、爪26を歯車20、34に向けて付勢する付勢部材29とを備えており、付勢部材29は歯車20、34が相対回動したとき爪26が押し戻される力で爪26を付勢している。
【0008】
上記係合対35は、インデックス軸と同軸にして設けた歯車20、34とこの歯車の歯溝に嵌合する爪26とからなり、歯車20、34と爪36とは、支持ブラケット10とインデックス軸13との一方側と他方側とに設けられる。
【0009】
歯車20、34は、所望の単位割出し角度、例えば15度とか30度毎に歯溝を設けたものとすることもできるが、割出し単位角度より歯溝の多い歯車を利用して、その歯溝の必要なものだけを選択的に作動させる構造とすれば、精度が高くて安価な既製の歯車を利用することができ、割出し操作もより簡単かつ速やかにできるようになる。
【0010】
請求項2の発明は、上記のより好ましい構造を実現したもので、歯車20、34に隣接して対応する歯溝を閉鎖している複数個の遮蔽部材24を備えたもので、各遮蔽部材24は対応する歯溝を開放する位置と閉鎖する位置とに個別に設定可能であることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項3の発明は、上記手段を備えたインデックスワークホルダにおいて、インデックス軸13の内側端のクランパ18を、インデックス軸13の軸心に螺合された先端にテーパ面14を有する開閉ねじ15で開閉する構造としたものである。テーパ面14は、先端外周又は内周に設けられた円錐面であり、軸方向移動によりクランパ18を半径方向に拡縮して開閉する。この構造は、クランパの構造を簡単にし、装置全体をコンパクトにできる。
【0012】
また請求項4の発明は、上記手段を備えたインデックスワークホルダにおいて、支持ブラケット10がバイスの把持方向と直交し、かつインデックス軸の軸方向と直交する方向に移動かつ固定自在にしてスライド台7に装着されていることを特徴とするものである。この構造は、ワークの径に合わせてインデックス軸の高さを調整することにより、把持したワークの底面をスライド台の上面に当接させた状態でワークを把持することができ、ワークの保持状態が安定する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、円筒形ワークのホルダの一実施例を示す図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図6は、この発明のワークホルダを用いて工作機械のテーブルに装着した複数個のワークバイスのそれぞれに、複数個のワークを装着して加工を行う状態を示す平面図である。各バイス1は細長い平面形状で、固定爪2と可動爪3との間に、その把持方向と同方向に自由移動可能な中間爪4を取付けて、複数のワーク5を同時に把持することができる構造としてある。テーブル上にはバイス1の複数個が互いに狭い間隔で隣接して取付けられており、1個のバイスに固定するワーク数×バイス数のワークを一時に固定して加工することが可能である。一定の大きさのテーブルに多数のバイスを取付けるためには、バイス相互の間隔を狭くする必要があり、そのため、インデックスワークホルダ6は小型であることが要求される。更にこのように、ワーク及びワークバイスが密に配置された状態でワークの割出し作業が容易に行われるような操作性を備えていなければならない。
【0014】
図1は、1個のインデックスホルダを示す側面図である。各インデックスワークホルダは、スライド台7によってバイスの基台8にバイスの把持方向と平行な方向に自由移動可能に取付けられている。スライド台7の側面には、ボルト9で支持ブラケット10が固定されている。支持ブラケット10のボルト9の挿通孔11は、図2に示すように、バイスの把持方向と直交する上下方向(テーブル面が水平な場合)の長孔12となっており、支持ブラケット10に軸支されているインデックス軸13のバイスの基台8からの高さを調整できるようになっている。
【0015】
インデックス軸13は、バイスの把持方向及び長孔12の延在方向と直交する方向の軸回りに回動可能に支持ブラケット10に装着されている。支持ブラケット10は、本体10aとキャップ10bとで構成され、インデックス軸13の軸方向の移動を阻止している。インデックス軸13は、外側端に鍔21のある短い中空軸で、その軸心に先端に円錐面14を備えたクランプねじ15が螺合されている。インデックス軸の内側端には、軸方向に十字形にすり割り16が切込まれており、このすり割を設けた部分の内側は、クランプねじ15の先端と対向する円錐内周面となっている。従ってクランプねじ15を螺進させると、インデックス軸13の内側端は、径方向に押し広げられる。インデックス軸13の内側端面には、インデックス軸の径方向の動きを阻止しないように分割したストッパプレート17が固定されており、このストッパプレート17と後述の平歯車20の内側端との間に、四つ割れないし三つ割れにした端面外向きコの字形のクランプリング18が嵌着されており、その外周溝にOリング19が嵌挿されている。円筒形のワーク5はインデックス軸13の内側端が押し広げられたとき、クランプリング18及びOリングで端部内径を拡開方向に押圧されてクランプされる。
【0016】
インデックス軸13の鍔21の内側には、歯先円直径が鍔の直径よりわずかに小さい平歯車20が固定されている。鍔21には、その外周に近く、平歯車20の歯溝に対向する円周を12等分する位置に、内側から座ぐり孔22が穿設されており、この座ぐり孔に歯溝開閉ピン24が挿入されている。歯溝開閉ピン24は、平歯車20側の端部に円周の一箇所を切欠いた歯溝開閉鍔24aが設けられており、その切欠25を外周側に向けたときに、当該ピンに対応する歯溝30が開き、切欠を内側に向けるように歯溝開閉ピン24を回動したとき、当該ピンに対応する歯溝30が閉じられる。座ぐり孔22の座ぐり部23は、歯車20側から見たとき、図4に示すように、鍔21の外周に向けてU字形に開いている。歯溝開閉ピン24の長さ方向中間に弾性リング(Oリング)36が嵌挿されていて、歯溝開閉ピン24の強制回転時以外の自由回転を阻止している。
【0017】
平歯車20の外周に対向して先端に爪26を備えたロッカーアーム27がインデックス軸と平行な支点ピン28で枢支されており、爪26はバネ29で歯車20側に付勢されている。爪26は座ぐり孔の座ぐり部23部分にも対向する爪幅を有しており、従って爪26が平歯車20の歯溝30に対向しても、歯溝開閉鍔24aに遮られて歯溝30に嵌挿することができない。しかし、歯溝開閉鍔24aの切欠25を外向きにした歯溝開閉ピンに対応する歯溝としたときは、爪26の侵入を阻止するものがないため、バネ29の付勢力により当該歯溝に嵌入する。しかし、爪26が歯溝30に嵌入しても、インデックス軸13がロッカーアーム27に外向きの回転モーメントを生じさせる方向に回動させられると、ロッカーアーム27は再び外向きに揺動して爪26と歯溝30との係合が解かれ、インデックス軸13は更に回動することができる。一方、インデックス軸13がロッカーアーム27に内側向きの回転モーメントを生じさせる方向に回動させられたときは、爪26が歯溝内に留まるため、インデックス軸はその方向の回動を阻止される。
【0018】
爪26の背後には、偏心カムを利用したロックピン31が設けられており、爪26が歯溝に嵌入した状態でロックピン31を回動することにより、ロッカーアーム27の動きが固定され、インデックス軸13はどちらの方向へも回動することができない状態で角度位置を固定される。
【0019】
インデックス軸の鍔21には、周面に滑り止めの刻みを設けた円板状のつまみ32が小ねじ37で固定されている。このつまみ32の外周は、支持ブラケット10の上端から若干突出する大きさであり、歯溝開閉ピン24に対応する部分には、ドライバ等の回転工具の挿入孔が貫通している。
【0020】
上記構造のインデックスワークホルダは、図5に示したように、各バイス1の固定爪2と中間爪4との間、中間爪4相互の間及び中間爪と可動爪3との間に1個ずつ装着される。各インデックスワークホルダ6は、割出し位置決めしようとする角度位置の歯溝開閉ピン24をその切欠25が外周を向く方向に設定しておく。各ワーク5は、その端部をインデックス軸の内側端のクランプで保持した状態で装着され、インデックス軸13の回転により、最初の加工位置に割出して、インデックス軸の回動をロックピン31でロックした状態でバイスの可動爪3を固定爪2に向けて進出させることによってクランプされる。
【0021】
ワーク5は、図6左側のバイスから順次取付けられる。左側のバイスにワークを取付けるときは、その右側のバイスにワークが取付けられていないため、ドライバなどによるクランプねじ15の螺進退を行うことができる。すべてのバイスにワークを取付けたら、すべてのワークに対して最初の割出し位置における加工を行い、工作機械を止める。次に各バイスを少し緩め、ロックピンのレバー33を立ててロッカーアームを開放し、つまみ32の外周を手指で操作して、インデックス軸13を回動させる。次の割出し位置で爪が歯溝に係合したら、つまみを逆方向に力を加えた後、ロックピンのレバー33を倒して、インデックス軸を固定する。ロックピン31を開放した状態であれば、インデックス軸13は一方向にいくらでも回転するから、2番目ないし3番目等の割出し位置にワークを割出すこともできる。以上のようにしてワークの割出し位置を変更したら、バイスでワークを把持し、新たな割出し位置の加工を行う。ワークの加工が終了したら、図6の右側のバイスから順にワークを取り外す。
【0022】
図示実施例の歯車20は24歯のもので、一つおきに歯溝開閉ピン24を設けることによって12等分の割出しを行うことができる構造であるが、歯車20は必ずしも全周に歯を設けたものでなければならないわけではなく、所望の分割位置に歯溝が設けられていればよい。歯車はその加工法が確立しているため、割出し精度を高くできる。歯車は平歯車のみでなく、傘歯車やクラウン歯車を用いることもできる。傘歯車34を用いた実施例は図5に示し、平歯車20の実施例(図3)と同じ作用をする。また、ワークが中空孔のない中実ワークであれば、クランプねじ15を進退させたときに、縮径する構造のクランパをインデックス軸13の内側端に設けてやればよい。このクランパは、ワークに割出し回転動作を伝達するためだけのものであって、加工時におけるワークの保持はバイス1の把持で行われるので、それほど大きなクランプ力を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例の側面図
【図2】図1の一部を省いた正面図
【図3】図1の断面平面図
【図4】図1の歯車側から見た要部説明図
【図5】傘歯車を開いた実施例の断面平面図
【図6】複数個のワークを装着して加工を行う状態を示す平面図
【符号の説明】
7 スライド台
10 支持ブラケット
13 インデックス軸
14 円錐面
15 クランプねじ
18 クランプリング
20 平歯車
24 歯溝開閉ピン
26 爪
29 バネ
31 ロックピン
32 つまみ
34 傘歯車
35 係合対

Claims (4)

  1. バイスの把持方向に自由移動可能に装着されるスライド台(7)と、スライド台の側部に立設された支持ブラケット(10)と、バイスの把持方向と直交する軸回りに回動可能に支持ブラケット(10)に軸支されたインデックス軸(13)と、インデックス軸の内側端のクランパ(18)と、インデックス軸の外側端のつまみ(32)と、支持ブラケット(10)とインデックス軸(13)との一方に固定してインデックス軸と同軸に設けた歯車(20,34)と他方に設けた前記歯車の歯溝に嵌合する爪(26)とからなる係合対(35)と、爪(26)が歯溝に嵌合した状態で当該爪を固定する固定部材(31)と、爪(26)を歯車(20,34)に向けて付勢する付勢部材(29)とを備え、付勢部材(29)は歯車(20,34)が相対回動したとき爪(26)が押し戻される力で爪(26)を付勢していることを特徴とする、バイス用のインデックスワークホルダ。
  2. 前記歯車(20,34)に隣接して対応する歯溝を閉鎖している複数個の遮蔽部材(24)を備え、各遮蔽部材(24)は対応する歯溝を開放する位置と閉鎖する位置とに個別に設定可能であることを特徴とする、請求項1記載のインデックスワークホルダ。
  3. クランパ(18)がインデックス軸(13)の軸心に螺合された先端にテーパ面(14)を有する開閉ねじ(15)で開閉される請求項1または2記載のインデックスワークホルダ。
  4. 支持ブラケット(10)がバイスの把持方向と直交し、かつインデックス軸の軸方向と直交する方向に移動かつ固定自在にしてスライド台(7)に装着されている請求項1、2または3記載のインデックスワークホルダ。
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