JP4610999B2 - リン酸エステル化ビニル系重合体からなる顔料分散剤 - Google Patents
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Description
前記リン酸エステル化不飽和アルコール系共重合体(a)は、(i) 下記式(I):
前記リン酸エステル化部分ブチラール化ポリビニルアルコール(b)は、(i) 前記繰り返し単位(I)、及び下記式(III):
(1) 不飽和アルコール系共重合体
不飽和アルコール系共重合体はビニルアルコール単位と塩化ビニル単位及び/又は酢酸ビニル単位とからなる。不飽和アルコール系共重合体は、下記一般式(1):
部分ブチラール化不飽和アルコール系重合体は、ビニルアルコール単位を主成分とする不飽和アルコール系重合体とブチルアルデヒドを所定の割合で反応させ、部分的にブチラール化したものである。従って部分ブチラール化不飽和アルコール系重合体は水酸基を有する。部分ブチラール化する不飽和アルコール系重合体としてはポリビニルアルコールが好ましい。
リン酸エステル化ビニル系重合体は、上記水酸基含有ビニル系(共)重合体と、無水リン酸(P 2 O 5 )と、水とを反応させることにより調製することができる。水酸基含有ビニル系(共)重合体の水酸基1当量に対するP2O5の配合割合は、所望のリン酸エステル化度に応じて適宜設定すればよいが、全ての水酸基をリン酸エステル化するには水酸基1当量に対し0.5モル以上とするのが好ましい。この配合割合の上限は1モル以下とするのが好ましい。水の配合割合は、1モルのP2O5に対して1〜2モルとするのが好ましく、1.3〜1.8モルとするのがより好ましい。水の配合割合が1モルのP2O5に対して1モル未満だと、ゲル化物が生じやすい。
かくして得られるリン酸エステル化ビニル系重合体は、例えば上記式(1)により表される不飽和アルコール系共重合体を原料とし、その水酸基を全てリン酸エステル化した場合、下記一般式(4):
本発明の顔料分散剤は上記リン酸エステル化ビニル系重合体からなる。本発明の顔料分散剤は、(i) ビニル基が鎖状に結合した炭化水素骨格、並びに塩化ビニル単位、酢酸ビニル単位及びブチラール基のいずれかからなる親油部と、(ii) 極性を示すリン酸基とを有する。本発明の顔料分散剤は、リン酸基が顔料に強く吸着し、上記親油部が分散媒により溶解されることにより、優れた分散安定性を示す。また上記親油部は炭化水素鎖及びアルキル基による疎水性を有するので、本発明の顔料分散剤を含む顔料分散液から形成される皮膜は、優れた耐水性を示す。以下本発明の顔料分散剤の使用における顔料、使用量、分散媒、分散液調製方法等について詳細に説明する。
本発明の顔料分散剤は有機顔料及び無機顔料のいずれにも使用できる。分散対象となる有機顔料としては例えばフタロシアニン系、ジアリライド系(ジアリリド系)、ナフトール系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、縮合アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ペリレン系、ジオキサン系、アンスラキノン系、キノフタロン系等が挙げられる。分散対象となる無機顔料としては、アルミニウム、鉛、亜鉛等の金属;鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン、マンガン等を含む金属酸化物;カーボンブラック、硫酸バリウム、シリカ、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、塩基性硫酸鉛、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸鉛等の無機化合物が挙げられる。
顔料分散剤の顔料に対する配合割合は、固形分重量ベースの比率(分散剤/顔料)が0.1〜20の範囲であるのが好ましく、1〜10の範囲であるのがより好ましい。この比が0.1より小さいと分散安定性が不十分であり、粘度上昇や顔料の沈降が比較的早い。一方この比を20より大きくしても効果が飽和する。但し顔料分散剤の最適な添加量は、使用する顔料及び分散媒の組み合わせにより変動する。
分散媒は顔料に応じて適宜選択すればよいが、例えばアルコール;多価アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のグリコール誘導体;アミン;ケトン;エーテル;エステル;炭化水素系溶媒;その他の極性溶媒等が挙げられる。その他の極性溶媒としては、例えばN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(例えばN,N-ジメチルアクリルアミド等)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。分散媒中の固形分濃度は0.5〜20質量%とするのが好ましい。
顔料分散剤は、顔料分散液の用途に応じて他の添加物とともに使用できる。他の添加物として、例えば公知の界面活性剤;結合剤;pH調整剤、粘度調整剤、浸透材、表面張力調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤等の添加剤等が挙げられる。
顔料分散液は、顔料分散剤、顔料及び分散媒を所定の配合割合で混合することにより調製できる。但し顔料は通常凝集体を形成しており、微粒子化するのは容易でない。そのため顔料及び分散媒からなる着色液、並びに顔料分散剤及び分散媒からなるポリマー溶液を予め調製し、得られた着色液及びポリマー溶液を混合することにより調製してもよい。顔料分散液の調製において各種分散機を使用してもよいし、必要に応じて加熱してもよい。
本発明の顔料分散剤を用いた顔料分散液は、分散安定性及び皮膜の耐水性に優れているので、インキ、塗料等の用途に好適である。
(i) 顔料分散剤の調製
還流冷却管、粉末投入口及び温度計を接続した自動合成反応装置(内容積1L、ユニケミカル(株)製)に、360 gのTHFを入れ、170 gの酢酸ビニル単位含有ポリビニルアルコール(商品名「クラレLMポリマーLM-20」、鹸化率:38〜42モル%、水酸基当量:約173、株式会社クラレ製)を加え、溶解した。攪拌回転数を2,120 rpmに保持し、反応温度を30〜58℃の範囲に保持しながら、18 g(1モル)の水及び71 gのP2O5(0.5モル)を、各々ほぼ6分の1ずつ6回に分けて、ほぼ等間隔で3時間かけて投入した。水及びP2O5を全て投入後、30℃の温度条件及び2,120 rpmの攪拌条件で1時間熟成反応を行った。
4.5 gの上記ポリマーAのTHF溶液(濃度:40質量%)と、95.4 gのブチルセロソルブとを混合し、ポリマー溶液を調製した(ポリマー固形分:2質量%)。銅フタロシアニン(β)粉末[商品名「MICROLITH Blue 4G-A」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)用の源粉末(「MICROLITH」用の顔料粉末〈以下同じ〉。「MICROLITH」は顔料粉末をエチルセルロースキャリヤーに分散させた加工顔料である。)]を、ブチルセロソルブに添加した混合物を調製した(固形分:2質量%)。得られたポリマーAの溶液及び顔料/ブチルセロソルブ混合物を、等質量比で混合し、撹拌して顔料を均一分散させることにより青色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、ナフトール系顔料粉末[商品名「MICROLITH Red 3R-A」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)用の源粉末]を用いた以外実施例1と同様にして、赤色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、ジアリライド系顔料粉末[商品名「MICROLITH Yellow 2R-A」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)用の源粉末]を用いた以外実施例1と同様にして、黄色顔料分散液を調製した。
(i) 顔料分散剤の調製
175 gの部分ブチラール化ポリビニルアルコール(商品名「エスレックB BL-1」、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%、積水化学工業株式会社製、以下特段の断りがない限り「BL-1」と呼ぶ)を350 gのTHFに溶解し、26 gの水(1.44モル)及び127 gのP2O5(0.89モル)を添加した以外実施例1と同様にして、リン酸エステル化した。得られた反応液に更に200 gのTHFを追加し、30分間攪拌した。
10質量部の上記乾燥ポリマーBのTHF溶液(濃度:20質量%)と、90質量部のブチルセロソルブとを混合し、ポリマー溶液(固形分:2質量%)を調製した。実施例1と同様にしてMICROLITH Blue 4G-A用の源粉末/ブチルセロソルブ混合物(固形分:2質量%)を調製した。得られたポリマーBの溶液及び顔料/ブチルセロソルブ混合物を等質量比で混合し、撹拌して顔料を均一分散させることにより青色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Red 3R-A用の源粉末を用いた以外実施例4と同様にして、赤色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Yellow 2R-A用の源粉末を用いた以外実施例4と同様にして、黄色顔料分散液を調製した。
(i) 顔料分散剤の調製
150 gの塩化ビニル単位含有ポリビニルアルコール(商品名「SOLBIN TA5R」、塩化ビニル単位87質量%−酢酸ビニル単位1質量%−ビニルアルコール単位12質量%、水酸基当量:367、日信化学工業株式会社製)を305 gのTHFに溶解し、10.8 gの水(0.6モル)及び58 gのP2O5(0.41モル)を添加した以外実施例1と同様にして、リン酸エステル化した。得られた反応液に更に400 gのTHFを追加した。得られた反応生成液を多量の攪拌水に少量ずつ入れ、固体樹脂を析出させた。多量の水によりTHF、副生した正リン酸、ピロリン酸等の水可溶物を透析除去した。水洗後の析出樹脂を常温乾燥した後、粉砕して更に真空乾燥した。得られた粉末樹脂(以下特段の断りがない限り「ポリマーC」と呼ぶ)を水10 vol%/THF90 vol%混合液に溶解し、酸価を測定したところ60 mg/gであった。なおリン酸エステル化前のSOLBIN TA5Rの酸価は0mg/gであった。
10質量部の上記粉末ポリマーCのTHF溶液(濃度:20質量%)と、90質量部のブチルセロソルブとを混合し、ポリマー溶液を調製した(ポリマー固形分:2質量%)。実施例1と同様にしてMICROLITH Blue 4GA用の源粉末/ブチルセロソルブ混合物を調製した(固形分:2質量%)。得られたポリマーCの溶液及び顔料/ブチルセロソルブ混合物を等質量比で混合し、撹拌して顔料を均一分散させることにより青色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Red 3R-A用の源粉末を用いた以外実施例7と同様にして、赤色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Yellow 2R-A用の源粉末を用いた以外実施例7と同様にして、黄色顔料分散液を調製した。
MICROLITH Blue 4G-A用の源粉末を、ブチルセロソルブに添加し、撹拌して均一分散させることにより青色顔料分散液を調製した(固形分:1質量%)。
MICROLITH Red 3R-A用の源粉末を、ブチルセロソルブに添加し、撹拌して均一分散させることにより赤色顔料分散液を調製した(固形分:1質量%)。
MICROLITH Yellow 2R-A用の源粉末を、ブチルセロソルブに添加し、撹拌して均一分散させることにより黄色顔料分散液を調製した(固形分:1質量%)。
10質量部の上記BL-1のTHF溶液(濃度20質量%)と90質量部のブチルセロソルブとを混合し、ポリマー溶液を調製した。実施例1と同様にしてMICROLITH Blue 4G-A用の源粉末/ブチルセロソルブ混合物を調製した(固形分:2質量%)。得られたBL-1の溶液及び顔料/ブチルセロソルブ混合物を等質量比で混合し、撹拌して顔料を均一分散させることにより青色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Red 3R-A用の源粉末を用いた以外比較例4と同様にして、赤色顔料分散液を調製した。
上記青色顔料の代わりに、MICROLITH Yellow 2R-A用の源粉末を用いた以外比較例4と同様にして、黄色顔料分散液を調製した。
(2) 商品名「MICROLITH Red 3R-A」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)用の源粉末。
(3) 商品名「MICROLITH Yellow 2R-A」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)用の源粉末。
(4) リン酸エステル化した酢酸ビニル単位含有ポリビニルアルコール。
(5) リン酸エステル化した部分ブチラール化ポリビニルアルコール。
(6) リン酸エステル化した塩化ビニル単位含有ポリビニルアルコール。
(7) 部分ブチラール化ポリビニルアルコール。
(8) テトラヒドロフラン。
Claims (2)
- リン酸エステル化した不飽和アルコール系共重合体(a)及びリン酸エステル化した部分ブチラール化ポリビニルアルコール(b)のいずれか又はこれらの両方からなる顔料分散剤であって、
前記リン酸エステル化不飽和アルコール系共重合体(a)は、(i) 下記式(I):
前記リン酸エステル化部分ブチラール化ポリビニルアルコール(b)は、(i) 前記繰り返し単位(I)、及び下記式(III):
- 請求項1に記載の顔料分散剤において、前記不飽和アルコール系共重合体及び前記部分ブチラール化ポリビニルアルコールの平均重合度がいずれも100〜3,000であることを特徴とする顔料分散剤。
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