この発明は、溶接用電極に軸状部品が正しく保持されているかどうかを確認する検知装置に関している。
電極の受入孔に軸状部品が挿入されているかどうかを検知するものが、特許第2789020号公報に開示されている。また、電極をその受入孔に軸状部品が挿入される被供給位置に位置づけ、ついでこの被供給位置から移動させて軸状部品が相手方部材に対向した溶接位置に位置づける溶接装置が知られている。このような溶接装置は、特許第2509103号公報に開示されている。
特許第2789020号公報 特許第2509103号公報
上述の特許文献1に開示されているものは、軸状部品が受入孔に挿入されていることによって検知電流が通電される。しかし、検知電流が通電されない形式の電極や、軸状部品が電極内で移動させられることによって通電回路が成立する形式の電極においては、電極それ自体だけでは軸状部品の有無が確認できない。
また、上述の特許文献2に開示されているものは、被供給位置と溶接位置との2位置をとらせる形式のものである。このような形式において、溶接位置で軸状部品が正しく受入孔に挿入されているかどうかの確認は行われているが、被供給位置での確認は、通常、行われていない。
したがって、移動電極が溶接位置に移動してから軸状部品の不存在が確認されるため、部品不存在の場合には、再び被供給位置に戻さなければならない。このような戻り動作は溶接効率を低下させることとなり、生産性向上にとって問題である。さらに、移動電極の被供給位置において軸状部品の存在を確認することは、移動電極の動作に悪影響を及ぼさないような確認手段を採用する必要がある。
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、電極に軸状部品が保持されているかどうかを確実に検知できるとともに、周囲の関連部材への干渉を防止できる溶接用電極の軸状部品検知装置を提供することを目的とする。
問題を解決するための手段
請求項1記載の発明は、軸状部品は、雄ねじが形成された軸部と、この軸部と一体の円板状のフランジ部と、フランジ部の表面に形成された溶着用突起から構成されており、電極の受入孔に挿入された前記軸状部品は電極とは絶縁状態とされ、前記フランジ部と電極を構成する導電性部材の一部との間に形成された開閉構造部によりスイッチ機能部が構成され、検知手段は駆動手段によって進退する検知ロッドによって構成され、軸状部品を受入孔に供給する供給ロッドに軸状部品を保持する保持ヘッドが結合されているとともに、この保持ヘッドにテーパ孔が形成されており、前記駆動手段は保持ヘッドと一体的に設けられ、保持ヘッドの下部を貫通してテーパ孔の底部に突き出た検知ロッドの先端部に検知ロッドよりも大径の頭部が形成され、この頭部に、供給ロッド全体が上昇して軸部の先端部が受入孔の入り口部分に進入した状態で圧縮空気を噴射する空気口が設けられ、検知ロッドの進出によって前記頭部が溶着用突起に押し付けられて前記スイッチ機能部が閉状態となったときに検知電流が軸状部品を経由して通電されるように構成したことを特徴とする溶接用電極の軸状部品検知装置である。
発明の効果
上述のように、検知手段が受入孔に接近したり離れたりするものであるから、電極に軸状部品が挿入されているかどうかを確認するときには、検知手段が受入孔に接近して検知動作をおこなう。また、電極が溶接動作をおこなったり、他の箇所への移動動作をおこなったりするときには、検知手段が受入孔から離れているので、電極の動作に悪影響を及ぼすことがない。そして、軸状部品が受入孔に挿入されていない場合には、検知手段が軸状部品の不存在を確認するので、それによる信号によって電極の進出を行わせないようにすることができる。すなわち、電極の空打ちが防止される。
前記電極は移動電極であって、この移動電極は、その受入孔に軸状部品が挿入される被供給位置と、この被供給位置から移動して軸状部品が相手方部材に対向した溶接位置とされる。
移動電極が、その受入孔に軸状部品が挿入される被供給位置と、この被供給位置から移動して軸状部品が相手方部材に接触しうる対向した溶接位置とされるもので、前記被供給位置に待機している移動電極の受入孔に軸状部品が挿入されていることを確認する検知手段が、待機している移動電極に接近して検知動作をおこなう。このように待機状態の移動電極に対して、検知手段が接近動作や離隔動作を行うものであるから、移動電極の種々な待機位置に対応させて検知手段を自在に動作させることができる。
もしも、軸状部品が受入孔に挿入されていないことが検知された場合には、この検知信号によって、移動電極を溶接位置に移動させることを禁止し、再度、被供給位置において軸状部品の挿入動作を行わせることができる。このような動作によって、軸状部品が挿入されていない移動電極が部品なしの状態で溶接位置に移行されることが防止され、溶接効率低下の防止が図られる。
前記電極の受入孔に挿入されているとともに電極とは絶縁状態とされている軸状部品と、電極を構成する導電性部材の一部との間に形成された開閉構造部によりスイッチ機能部が構成され、前記検知手段の接近によって前記スイッチ機能部が閉状態となるように検知手段が配置され、スイッチ機能部の閉状態によって検知電流が軸状部品を経由して通電されるように構成した。
電極とは絶縁状態とされている軸状部品と、電極を構成する導電性部材の一部との間にスイッチ機能部が構成され、検知手段の動作でスイッチ機能部が閉状態になって、検知電流が軸状部品を経由して通電される構成である。したがって、検知手段の変位でスイッチ機能部においてスイッチが閉じられるので、軸状部品が受入孔に正しく挿入されているときには、確実に部品存在が検知でき、移動電極は溶接位置に移動される。
しかし、電極の受入孔に軸状部品が挿入されていない場合には、前記スイッチ機能が実行されないので、それをトリガー信号にして部品不存在が検知される。したがって、部品不存在であることが確認されているので、電極をつぎの動作位置へ移行させることを禁止して、再度、軸状部品の挿入動作を行わせることができる。
前記軸状部品が受入孔に挿入されているときの検知手段の検知位置と、軸状部品が受入孔に挿入されていないときの検知手段の検知位置との位置的差異量によって軸状部品の有無が検知されるように構成した。
軸状部品が受入孔に挿入されていない場合には、検知手段の変位量が位置的差異量を消滅させた状態になる。したがって、この位置的差異量を消滅させる変位量によって、例えば、検知スイッチなどから軸状部品不存在の信号を発生させ、軸状部品の有無を判別することができ、確実な検知動作がえられる。
供給ロッドに取付けた保持ヘッドに軸状部品を保持して前記受入孔に挿入するように構成されているとともに検知手段の前記駆動手段が保持ヘッドと一体的に設けられている。
軸状部品を受入孔に挿入する機能を果たす保持ヘッドに、検知手段の駆動手段が一体化されているので、種々な箇所に配置される電極に対して、自由に検知手段を追従させることがでる。また、前記駆動手段と保持ヘッドが一体化されているので、構造的にコンパクト化される。
供給ロッドに取付けた保持ヘッドに軸状部品を保持して前記受入孔に挿入するように構成されているとともに検知手段の前記駆動手段が静止部材に取付けられている。
軸状部品を受入孔に挿入する機能を果たす保持ヘッドとは別に、検知手段の駆動手段が静止部材に取り付けられているので、保持ヘッドを小型化し狭い箇所への軸状部品供給にとって効果的である。また、駆動手段と電極との相対位置を所定通りに設定しておくことにより、検知手段と受入孔との相対位置も正確に確保でき、信頼性の高い検知動作がえられる。
つぎに、本発明の溶接用電極の軸状部品検知装置を実施するための最良の形態を説明する。
図4にしたがって、本実施例における電極の形態を説明する。
図4(A)は、電極6が回転方向に移動する移動電極7の場合である。移動電極7は回転基部材8に2つ固定され、この回転基部材8はラック・ピニオン機構やステッピングモータなど(図示していない)の回転駆動手段によって所定角度の回動がなされる。ここでは、移動電極7が180度間隔で取り付けられている。
ここで扱われる軸状部品は、図4(C)に示す鉄製のプロジェクションボルト1である。これは、雄ねじが形成された軸部2と、軸部2と一体の円板状のフランジ部3と、フランジ部3の表面に形成された溶着用突起4から構成されている。溶着用突起4は、扁平なテーパ型であるが、小さなイボ状の突起を3つまたは4つ設けたものであってもよい。なお、プロジェクションボルトを、単にボルトと表現する場合もある。
図4(A)において、下向きになっている移動電極7の位置が、ボルト1が供給される被供給位置である。そして、上向きになっている移動電極7の位置が、相手方部材である鋼板部品9に対向し接触している溶接位置である。両移動電極7の中心部に軸方向に伸びる受入孔10がもうけられ、ここに軸部2が挿入されるようになっている。溶接位置にある移動電極7に対向させて可動電極5が設けられている。受入孔10の奥部に永久磁石17が取付けられ、その磁力でボルト1を吸引してボルトの落下を防止している。
ボルト1を受入孔10に供給する供給ロッドは、図4(A)に示すように、左右方向と上下方向に進退するようになっている。そして、供給ロッド11の先端部に保持ヘッド12が結合してある。この保持ヘッド12はちょうど円形のカップ状の形であり、テーパ孔13が形成されている。このテーパ孔13内にボルト1が収容されており、そのときにはテーパ孔13の底面14にフランジ部3(溶着用突起4)が着座した状態となっている。
円形の前記底面14の中央部に空気口15が開口しており、それに連通する空気通路16が供給ロッド11内を通って圧縮空気源(図示していない)に接続されている。
供給ロッド11が最も後退した位置に停止しているときに、パーツフィーダ(図示していない)から送られてきたボルト1がテーパ孔13内に入る。その後、供給ロッドが進出して軸部2が受入孔10と同軸になった位置で停止する。ついで、供給ロッド11全体が上昇し軸部2の先端部が受入孔10の入り口部分に進入した箇所で空気口15から圧縮空気が噴射されて、軸部2が受入孔10内に入り込み、永久磁石17によって保持される。
それから、回転基部材8が180度回転すると、ボルト1の溶着用突起4が可動電極5と対向した状態になり、そこへ鋼板部品9を載置してから可動電極5を進出させて加圧・通電がなされ、フランジ部3が鋼板部品9に溶着する。上述の溶接動作に並行して、被供給位置にある他方の移動電極7の受入孔10に前述のようにしてボルト1が供給される。
図4(B)に示す電極6の形態は、固定電極19上に鋼板部品9が載置され、ここに可動電極5に保持されたボルト1が溶接されるものである。したがって、可動電極5に受入孔10や永久磁石17が配置され、可動電極5が最も後退した位置が前記被供給位置である。そして、同図の2点鎖線で示すように、可動電極5が進出してフランジ部3が鋼板部品に溶接される位置が溶接位置である。ここでの供給ロッド11は斜め方向に進退する方式とされ、両電極5と19の間に保持ヘッド12が進退する。それ以外の保持ヘッド12などの構造や作動は、同図(A)のものと同様である。
つぎに、図1にしたがって、電極6(移動電極7)の構造を説明する。
この電極は、電極自体にスイッチ機能部が設けられているものである。断面円形の移動電極7は、筒状の電極本体73の下側に端部材74がねじ部75で一体化されている。この端部材74はほぼ筒状の形態であり、その内側に絶縁筒78が接着などで取り付けてある。また、電極本体73の上端にはねじ部76を介して結合部77が一体化されている。この結合部77が前記回転基部材8に差し込まれている。電極本体73の内側にも絶縁筒79が挿入してあり、その内側には大径孔80と小径孔81が形成してある。両絶縁筒78,79はポリプロピレンやポリアミド樹脂などの絶縁性のある合成樹脂でつくられている。
絶縁筒79に摺動可能な状態で挿入された断熱部材82は、大径孔80と摺動する大径部83と、小径孔81と摺動する小径部84によって構成され、その内部に前記永久磁石17が埋設してある。断熱部材82は永久磁石17が過熱状態になるのを防止している。そして、断熱部材82は導通性のある例えば、ステンレス鋼でつくられている。前記絶縁筒78の筒内空間と小径孔81の内部空間が、前述の受入孔10を構成している。
結合部77の内端面に絶縁板85が挿入され、そこに密着している導通板86に陽極側の導線87が結線してある。圧縮コイルスプリング88が導通板86と断熱部材82との間に挿入されている。なお、符号89は導線87を保護する絶縁筒である。
前記電極本体73,端部材74,結合部77,断熱部材82等は導電性の良好な金属材料、例えば、ステンレス鋼やクロム銅で製作されている。
前記受入孔10内に軸部2が挿入され、受入孔10の深さは、永久磁石17の吸引力で軸部2の端部が小径部84の端部に接触しているとき、フランジ部3と端部材74の先端部との間にわずかな隙間L1が形成されるように設定されている。また、電極本体73の外周面に陰極側の導線90が結合してある。
図1(A)に示すように、受入孔10に挿入されているボルト1は、絶縁筒78や絶縁筒79によって、電極本体73,端部材74,結合部77などの導通性のある部材から絶縁された状態となっている。このように絶縁状態とされたボルト1の一部であるフランジ部3と、電極を構成する導電性部材の一部すなわち端部材74との間に隙間L1を有する開閉構造部20が形成され、これの開閉で動作するスイッチ機能部20が構成されている。なお、図1(C)に示すように、端部材74の開口部21は軸部2に接触しないような内径のテーパ孔とされている。
通電経路は、導線87,導通板86,圧縮コイルスプリング88,断熱部材82,プロジェクションボルト1,スイッチ機能部20,端部材74,電極本体73,導線90の順序で形成されている。図1(A)は、移動電極7が前記被供給位置に待機してボルト1の挿入がなされた状態を示している。この状態で、フランジ部3と端部材74の先端部との間にわずかな隙間L1が形成、つまり前記スイッチ機能部20が形成され、前記導通順序による通電経路は隙間L1で絶たれた状態になっている。
ついで、検知手段について説明する。
図1(A)に示した検知手段は、検知ロッド23によって構成されている場合であり、この検知ロッド23を進退させる駆動手段がエアシリンダ24によって構成されている。そして、検知手段である検知ロッド23が保持ヘッド12と一体的になっている。そのために、エアシリンダ24が保持ヘッド12に溶接などで結合されている。
前記エアシリンダ24内のピストン25によってピストンロッドである検知ロッド23が進退するものであり、検知ロッド23は進退自在な状態で保持ヘッド12の下部を貫通して、テーパ孔13の底部に突き出ている。検知ロッド23の先端部に検知ロッド23よりも大径の頭部26が形成され、ここに前記空気口15が開口している。この空気口15に連通する空気通路18が検知ロッド23に形成され、この空気通路18が前記空気通路16に連通している。
前記頭部26には、ポリアミド樹脂などの合成樹脂で作られた絶縁キャップ27が接着剤などで接合してある。なお、符号28,29は、エアシリンダに結合された空気吸排管である。
前記エアシリンダ24に換えて、電磁ソレノイドや進退出力型電動モータを採用することも可能である。
上記検知手段の動作を説明する。
供給ロッド11が最も後退した位置に停止しているときに、パーツフィーダ(図示していない)から送られてきたボルト1がテーパ孔13内に入る。その後、供給ロッドが進出して軸部2が受入孔10と同軸になった位置で停止する。ついで、供給ロッド11全体が上昇し軸部2の先端部が受入孔10の入り口部分に進入した箇所で空気口15から圧縮空気が噴射されて、軸部2が受入孔10内に入り込み、永久磁石17によって保持される。
引き続いて、エアシリンダ24の出力で検知ロッド23が上方へ進出すると、頭部26がフランジ部3(溶着用突起4)に押し付けられるので、断熱部材82が圧縮コイルスプリング88を縮めながら、スイッチ機能部20が同図(B)に示すように、閉じた状態になり、導線87,導通板86,圧縮コイルスプリング88,断熱部材82,プロジェクションボルト1,スイッチ機能部20,端部材74,電極本体73,導線90の順序で検知電流の通電回路が形成される。この通電によって、プロジェクションボルト1が移動電極7に正しく保持されていることが確認される。
もし、何等かの原因でボルト1が受入孔10に挿入されていないときには、検知ロッド23の頭部26が図1(C)に示すように、端部材74の端面に当たるので、導線87から導線90に至る通電回路が不成立となる。この不通電をトリガー信号にして移動電極7が溶接位置へ移動することを禁止する。
上述のような受入孔10にボルト1が挿入されていることを検知する検知手段が、前記通電経路の成立または不成立によって実現されている。他方、別の検知手段として、図1(A),(C)に2点鎖線で図示したように、受入孔10の最も奥まった位置に軸部2の存在を検知するセンサー91を設けるものがある。センサー91としてはいろいろなものが採用できるが、ここでは近接スイッチのタイプである。
このような位置にセンサー91が配置されているので、ボルト1の軸部2は検知されるが、ボルト1が挿入されていないときには、センサー91からの検知信号がえられない。このような検知信号がないことをトリガー信号にして、軸部2の不存在を検出する。このセンサー91の採用は、前記検知手段と併用してより高精度な検知動作をえることができるものである。
なお、検知信号がないことをトリガー信号にすることは、通常の方法でよく、例えば、軸部2が受入孔10に挿入される際に動作するエアシリンダの動作信号でタイマーの計時を開始し、一定時間経過しても「軸部2あり」の信号がなければ、このタイマーからの信号で軸部の不存在を確認し、次への動作を行わないようにするのである。
図1(D)に示す例は、検知手段と保持ヘッドとを分離し、検知手段の駆動手段を静止部材に固定した場合である。したがって、検知ロッド23の頭部26は保持ヘッド12を貫通することなく、保持ヘッド12の下側に位置している。すなわち、エアシリンダ24が静止部材22に固定されており、検知ロッド23と受入孔10とが同軸の状態となるようにエアシリンダ24の固定位置が設定されている。また、保持ヘッド12は、後退している頭部26と移動電極7との間に進出してくるようになっている。
それ以外の構成は図1(A)の例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。また、検知動作に関する点も、図1(A),(B)および(C)の例と同じである。
上記実施例1の作用効果を列記する。
上述のように、検知手段である検知ロッド23の頭部26が、受入孔10に接近したり離れたりするものであるから、移動電極7にプロジェクションボルト1が挿入されているかどうかを確認するときには、検知ロッド23の頭部26が受入孔10に接近して検知動作をおこなう。また、移動電極7が溶接動作をおこなったり、他の箇所への移動動作をおこなったりするときには、検知ロッド23の頭部26が受入孔10から離れているので、移動電極7の動作に悪影響を及ぼすことがない。そして、ボルト1が受入孔10に挿入されていない場合には、検知ロッド23の頭部26がボルト1の不存在を確認するので、それによる信号によって移動電極7の進出を行わせないようにすることができる。すなわち、移動電極7の空打ちが防止される。
前記電極は移動電極7であって、この移動電極7は、その受入孔10にボルト1が挿入される被供給位置と、この被供給位置から移動してボルト1が相手方部材である鋼板部品9に接触して対向した溶接位置とされる。
移動電極7が、その受入孔10にボルト1が挿入される被供給位置と、この被供給位置から移動してボルト1が鋼板部品9に接触する溶接位置とされるもので、前記被供給位置に待機している移動電極7の受入孔10にボルト1が挿入されていることを確認する検知ロッド23の頭部26が、待機している移動電極7に接近して検知動作をおこなう。このように待機状態の移動電極7に対して、検知ロッド23の頭部26が接近動作や離隔動作を行うものであるから、移動電極7の種々な待機位置に対応させて検知手段を自在に動作させることができる。
もしも、ボルト1が受入孔10に挿入されていないことが検知された場合には、この検知信号によって、移動電極7を溶接位置に移動させることを禁止し、再度、被供給位置においてボルト1の挿入動作を行わせることができる。このような動作によって、ボルト1が挿入されていない移動電極7がボルトなしの状態で溶接位置に移行されることが防止され、溶接効率低下の防止が図られる。
前記移動電極7の受入孔10に挿入されているとともに移動電極7とは絶縁状態とされているボルト1と、移動電極7を構成する導電性部材の一部との間に形成された開閉構造部によりスイッチ機能部20が構成され、前記検知ロッド23の頭部26の接近によって前記スイッチ機能部20が閉状態となるように検知ロッド23の頭部26が配置され、スイッチ機能部20の閉状態によって検知電流がボルト1を経由して通電されるように構成した。
移動電極7とは絶縁状態とされているボルト1と、移動電極7を構成する導電性部材の一部すなわち端部材74との間にスイッチ機能部20が構成され、検知ロッド23の頭部26の動作でスイッチ機能部20が閉状態になって、検知電流がボルト1を経由して通電される構成である。したがって、検知ロッド23の頭部26の変位でスイッチ機能部20においてスイッチが閉じられるので、ボルト1が受入孔10に正しく挿入されているときには、確実にボルト1の存在が検知でき、移動電極7は溶接位置に移動される。
しかし、移動電極7の受入孔10にボルト1が挿入されていない場合には、前記スイッチ機能20が実行されないので、それをトリガー信号にしてボルト不存在が検知される。したがって、ボルト不存在であることが確認されているので、移動電極7をつぎの動作位置へ移行させることを禁止して、再度、ボルト1の挿入動作を行わせることができる。
供給ロッド11に取付けた保持ヘッド12にボルト1を保持して前記受入孔10に挿入するように構成されているとともに検知手段23,26の駆動手段であるエアシリンダ24が保持ヘッド12と一体的に設けられている。
ボルト1を受入孔10に挿入する機能を果たす保持ヘッド12に、検知手段23,26を駆動するエアシリンダ24が一体化されているので、種々な箇所に配置される移動電極7に対して、自由に検知手段23,26を追従させることがでる。また、前記エアシリンダ24と保持ヘッド12が一体化されているので、構造的にコンパクト化される。
供給ロッド11に取付けた保持ヘッド12にボルト1を保持して前記受入孔10に挿入するように構成されているとともに検知手段23,26を進退させるエアシリンダ24が静止部材22に取付けられている。
ボルト1を受入孔10に挿入する機能を果たす保持ヘッド12とは別に、検知手段23,26を進退させるエアシリンダ24が静止部材22に取り付けられているので、保持ヘッド12を小型化し狭い箇所へのボルト1の供給にとって効果的である。また、エアシリンダ24と移動電極7との相対位置を所定通りに設定しておくことにより、検知手段23,26と受入孔10との相対位置も正確に確保でき、信頼性の高い検知動作がえられる。
実施例2を図2にしたがって説明する。
この実施例は、ボルト1が受入孔10に挿入されているときの検知手段23,26の検知位置と、ボルト1が受入孔10に挿入されていないときの検知手段23,26の検知位置との位置的差異量によってボルト1の有無が検知されるようにしたものである。
図2(A)に示すように、頭部26が上昇しているときには、フランジ部3が端部材74の端面に押し付けられている。したがって、頭部26の上面と端部材74の端面との間には、フランジ部3の厚さと溶着用突起4の高さに相当する隙間L2が形成される。また、受入孔10にボルト1が挿入されていないときには、図2(B)に示すように、頭部26の上面は端部材74の端面に密着している。図2(A)と(B)との間には、隙間L2の有無の差がある。この差がボルト1の有無にともなう位置的差異量L2である。
この位置的差異量L2によってボルト1の有無を検知するための構成としては、図2(B)のように、頭部26が端部材74に接触することによってその接触部に通電させるものや、位置的差異量L2をエアシリンダ24以外の箇所に取り出すもの等いろいろなものが採用できる。ここでは、後者のものが採用されている。
すなわち、エアシリンダ24のピストン25に作動ロッド30を結合して、エアシリンダ24の外側に突出させ、その先端にキック部材31が固定されている。このキック部材31の移動によってオン・オフされる検知スイッチ32が静止部材22に取り付けられている。そして、検知スイッチ32の取付け位置は、位置的差異量L2が消滅することによって検知スイッチ32から信号が発生するように設定されている。つまり、検知スイッチ32の作動子33とキック部材31との間隔が、図2(A)に示すように、位置的差異量L2よりもわずかに小さく設定されている。なお、エアシリンダ24は静止部材22に固定されている。
それ以外の構成は先の実施例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。なお、この実施例では、図1(A)に示したような検知電流の通電回路を成立させる必要はなく、図示されていないが、導線87や90なども採用されていない。
したがって、ボルト1が受入孔10に挿入されているときには、位置的差異量L2が存在するので、検知スイッチ32から信号は出されない。しかし、ボルト1が受入孔10に挿入されていないときには、図2(B)に示すように、位置的差異量L2が消滅しているので、検知スイッチ32から信号が発せられて、ボルト不挿入であることが検知される。
本第2実施例によれば、ボルト1が受入孔10に挿入されていない場合には、検知手段23,26の変位量が位置的差異量L2を消滅させた状態になる。したがって、この位置的差異量L2を消滅させる変位量によって、検知スイッチ32からボルト不存在の信号を発生させ、ボルト1の有無を判別することができ、確実な検知動作がえられる。
それ以外の作用効果は、先の実施例と同じである。
実施例3を図3(A)にしたがって説明する。
この実施例は、検知手段としてのセンサー35をボルト1に接近させて、ボルトの有無を検知するものである。センサー35としては、光学的に動作するものや、磁気的に動作するもの等いろいろなものが採用できるが、ここでは後者のものが採用されている。
検知ロッド23にブラケット36を取り付けて、ここにセンサー35が固定されている。それ以外の構成は先の各実施例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
ボルト1が受入孔10に挿入されているときに、センサー35がフランジ部3に接近すると、フランジ部3が磁気的に検知されてボルトありの信号が発せられる。もし、ボルト1が不挿入であれば、このような信号が出されないので、異常が検知される。それ以外の作用効果は、先の各実施例と同じである。
なお、図3(B)に示したものは、ボルト1が挿入されているときには、バキュームを発生させてこの低圧状態を検知するものである。符号37は真空ポンプに接続されているバキュームホース、39は圧力センサーである。また、同図(C)に示したものは、前述のセンサー91と同様のものである。
上述のように、本発明によれば、電極の受入孔に軸状部品が挿入されているかどうかを、確実に検知できるものであるから、自動車の車体溶接工程や家庭電化製品の板金溶接工程などで幅広く利用することができる。
検知装置の断面図である。
他の検知装置の断面図である。
さらに他の検知装置の断面図である。
電極の形態を示す断面図とボルトの側面図である。
符号の説明
1 軸状部品,プロジェクションボルト
2 軸部
3 フランジ部
5 可動電極
6 電極
7 移動電極
9 鋼板部品
10 受入孔
11 供給ロッド
12 保持ヘッド
19 固定電極
20 開閉構造部,スイッチ機能部
23 検知ロッド
24 エアシリンダ
26 頭部
31 キック部材
32 検知スイッチ
35 センサー