しかしながら、上述の装置には次の難点があった。
すなわち、上述の装置では、被験者の体重とベッドの重量との合計荷重の変動に基づいて被験者の生体情報が計測されるため、被験者の様々な生体活動のうち僅かな荷重変化しか伴わない生体情報である呼吸情報や脈拍情報(心拍情報)については、精度良く計測することが困難であった。
また、上述の装置では、測定精度の安定化を図るために、ベッド全体の剛性を高めなければならず、その結果、ベッドの重量が重くなったりベッドの製造コストが高くなるという難点があった。
また、上述の装置では、測定精度の向上のために、ロードセルの荷重受け部とベッドの脚部の下端との間にボールやころを介在させる必要がある。そのため、ベッドの設置時に厳格なアライメント作業(芯出し作業)を行わなければならず、ベッドの設置作業が困難であるという難点があった。
さらに、上述の装置では、ロードセルを取り付けることができるベッドの種類に制限され、市販されている全てのベッドに対して必ずしもロードセルを取り付けることができるとは限らないという難点があった。
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、被験者の様々な生体情報のうち特に呼吸情報や脈拍情報等を精度良く計測することができ、更に、市販されている殆どのベッドに対して適用することができる生体情報計測用パネル、生体情報計測装置及び生体情報計測方法を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] 被験者の少なくとも一部を受ける、弾性的に撓曲可能な受け板部を有するパネル本体を備え、前記パネル本体の受け板部の上下両面のうち少なくとも一方の面に、歪みゲージが取り付けられ、前記パネル本体は、ベッド床板面等の寝床面上に、該寝床面に対して前記受け板部が離間する状態に載置されるものであり、前記パネル本体が前記寝床面上に載置され且つ被験者の前記少なくとも一部が前記受け板部で受けられた状態のもとで、前記受け板部の中央部が被験者の生体活動に伴い振動されうるものとなされるとともに、該振動が前記歪みゲージにより検出されるものとなされ、前記歪みゲージからの出力信号は、被験者の生体情報の計測に用いられるものであることを特徴とする生体情報計測用パネル。
[2] 前記パネル本体の受け板部は、平面視略長方形の帯板状に形成されており、前記パネル本体は、前記寝床面上に、該寝床面の左右方向に前記受け板部が延在する態様に載置されるものである前項1記載の生体情報計測用パネル。
[3] 前記パネル本体の受け板部の外周縁部の少なくとも一部に、該受け板部を前記寝床面に対して離間状態に支持する支持脚部が下方突出状に設けられている前項1又は2記載の生体情報計測用パネル。
[4] 前記パネル本体の少なくとも前記受け板部は、押出材により形成されている前項1〜3のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[5] 前記パネル本体の少なくとも前記受け板部は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である前項1〜4のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[6] 前記歪みゲージが、前記パネル本体の受け板部の上下両面の互いに対向する位置に、二対以上取り付けられており、前記二対以上の歪みゲージが電気的に接続されてブリッジ回路が形成され、前記ブリッジ回路からの出力信号が、被験者の生体情報の計測に用いられるものである前項1〜5のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[7] 前記歪みゲージは、前記パネル本体の受け板部の上下両面のうち少なくとも一方の面における左右両側部及び中央部に、それぞれ取り付けられている前項1〜6のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[8] 前記パネル本体の受け板部の下側に弾性部材が配置されている前項1〜7のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[9] 前記パネル本体の受け板部の上面に凹部が設けられるとともに、該凹部の底面に前記歪みゲージが取り付けられている前項1〜8のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[10] 前記凹部内に、該凹部の底面に取り付けられた前記歪みゲージを保護する保護材が充填されている前項9記載の生体情報計測用パネル。
[11] 前記歪みゲージへの入力信号線が、外部から前記パネル本体の受け板部の下側を通って前記歪みゲージに接続されるとともに、前記歪みゲージからの出力信号線が、前記パネル本体の受け板部の下側を通って外部へ導出されている前項1〜10のいずれか1項記載の生体情報計測用パネル。
[12] 前項1〜11のいずれか1項記載の生体情報計測用パネルを具備し、該パネルの歪みゲージからの出力信号に基づいて被験者の生体情報が計測されるものとなされていることを特徴とする生体情報計測装置。
[13] 更に、前記歪みゲージからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、前記演算手段により演算された生体情報を表示する表示手段とを具備している前項12記載の生体情報計測装置。
[14] 更に、前記演算手段により演算された生体情報を送信する通信手段を具備している前項13記載の生体情報計測装置。
[15] 更に、前記演算手段により演算された生体情報に基づいて警報を発する警報手段を具備している前項13又は14記載の生体情報計測装置。
[16] 更に、被験者の下に敷かれ、被験者の全体を受けるマットを具備し、
前記マットの上面には、前記パネルのパネル本体が嵌合される嵌合凹部が設けられている前項12〜15のいずれか1項記載の生体情報計測装置。
[17] 前項1〜11のいずれか1項記載の生体情報計測用パネルを準備し、該パネルのパネル本体をベッド床板面等の寝床面上に載置した状態のもとで、該パネルの受け板部で被験者の少なくとも一部を受け、被験者の生体活動に伴い発生する前記受け板部の中央部の振動を、前記パネルの歪みゲージにより検出し、前記歪みゲージからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を計測することを特徴とする生体情報計測方法。
[18] 前記歪みゲージからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算手段により演算し、前記演算手段により演算された生体情報を表示手段により表示する前項17記載の生体情報計測方法。
[19] 前記演算手段により演算された生体情報を通信手段により送信する前項18記載の生体情報計測方法。
[20] 前記演算手段により演算された生体情報に基づいて警報を警報手段により発する前項18又は19記載の生体情報計測方法。
[21] 前記パネルのパネル本体を、被験者の下に敷かれるマットの上面に設けられた嵌合凹部に嵌合した状態で、前記寝床面上に載置する前項17〜20のいずれか1項記載の生体情報計測方法。
[22] 前項1〜11のいずれか1項記載の生体情報計測用パネルと、前記パネルの歪みゲージからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、前記演算手段により演算された生体情報を送信する通信手段と、前記演算手段により演算された生体情報を表示する表示手段と、前記演算手段により演算された生体情報に基づいて警報を発する警報手段と、を備えていることを特徴とする生体活動監視システム。
次に、各項の発明を以下に説明する。
[1]の発明に係る生体情報計測用パネルでは、パネル本体は、寝床面上に該寝床面に対して受け板部が離間する状態に載置される。そして、通常、このパネル本体の受け板部の上にマットを敷き、このマットの上で被験者が横臥姿勢になる。これにより、被験者の少なくとも一部がマットを介してパネル本体の受け板部で受けられる。パネル本体は、一般に被験者の胸部及びその周辺部の下方位置に配置される。したがって、この場合、パネル本体の受け板部で受けられる被験者の部位は、被験者の胸部及びその周辺部である。こうして被験者の所定部位がパネル本体の受け板部で受けられた状態において、受け板部の中央部が被験者の生体活動に伴い振動される。この振動が、受け板部の所定の面に取り付けられた歪みゲージにより検出される。そのため、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に起因する振動の検出限度を向上させて振動を精度良く検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報(心拍情報)を精度良く計測することができる。
さらに、このパネルでは、パネル本体を寝床面上に載置するだけで、パネルの設置作業が完了する。そのため、パネルの設置作業を容易に行うことができるし、市販されている殆どのベッドに対して適用することができる。
また、仮にこのパネルのパネル本体を、寝床面としてのベッド床板面上に載置して、被験者の生体情報を計測する場合においては、次の利点がある。
すなわち、生体情報の計測時にはパネル本体はベッドの床板面上に載置されていることから、もしベッドの周囲を人が歩行した場合であっても、ベッドを設置した床面の振動による検出精度の低下を防止することができる。もとより、ベッドの剛性を高める必要がないので、ベッドの軽量化を図ることができる。
このパネルにおいて、パネル本体の受け板部は、弾性的に撓曲可能な材料からなる。この受け板部の材料は、本発明の目的を達せられるように「曲げこわさ」を考慮して選択される。なお、「曲げこわさ」は、材料のヤング率、断面係数、ポアソン比、形状(長さ、厚さ)などで決定される。例えば、この受け板部は、鉄、鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属製であっても良いし、繊維強化プラスチック等のプラスチック製であっても良い。特に、受け板部は、後述するようにアルミニウム又はアルミニウム合金製であることが望ましい。
なお、本発明では、被験者がベッド上で横臥する場合には、パネル本体はベッドの床板面上に載置される。一方、被験者が畳面又は床面上に敷かれた蒲団の上で横臥する場合には、パネル本体は畳面又は床面上に載置される。したがって、パネル本体が載置される寝床面としては、ベッドの床板面、畳面、床面等が挙げられる。さらに、パネル本体が載置される寝床面としては、椅子や車両座席における座面、背凭れ面等が挙げられる。また、本発明では、便座や浴槽の床面等の、被験者が着座する面や被験者と接する面の上にパネル本体を載置しても良い。
また、本発明では、被験者の生体活動として、呼吸、脈拍(心拍)、体動(例:寝返り)等が挙げられる。
また、ベッドとしては、被験者が睡眠するために用いられるベッド(即ち睡眠用ベッド)をはじめ、その他に、診察台、検査台、ストレッチャー等が具体的に挙げられる。
また、歪みゲージの受け板部への取付け手段としては、例えば、接着剤による貼付けや、カシメ、ネジ、リベット、溶接等の機械的接合手段が挙げられる。
また、本発明では、被験者の生体情報は、歪みゲージからの出力信号だけに基づいて計測されるものとなされていても良いことはもとより、歪みゲージからの出力信号と当該歪みゲージ以外のセンサからの信号とに基づいて計測されるものとなされていても良い。
[2]の発明では、パネル本体の受け板部が平面視略長方形の帯板状に形成されており、パネル本体は、寝床面上に、該寝床面の左右方向に受け板部が延在する態様に載置されるものであるから、被験者の呼吸や脈拍に起因する振動を更に確実に検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に精度良く計測することができる。
[3]の発明では、パネル本体の受け板部の外周縁部の少なくとも一部に、所定の支持脚部が設けられていることから、パネル本体が寝床面上に載置された状態において、パネル本体の受け板部の中央部が支持脚部によって寝床面に対して離間した状態に確実に支持される。そのため、パネル本体の受け板部の中央部が確実に振動されうるものとなる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。
[4]の発明では、パネル本体の少なくとも受け板部が押出材により形成されていることにより、パネル本体の少なくとも受け板部を能率的に且つコスト的に有利に製作することができる。
[5]の発明では、パネル本体の少なくとも受け板部がアルミニウム又はアルミニウム製であることにより、パネル本体の軽量化を図ることができ、そのため、パネルの設置作業を更に容易に行うことができる。
さらに、この場合には次の利点がある。すなわち、一般にアルミニウム又はアルミニウム合金は、鉄等の鋼材に比べてヤング率が約1/3と小さい。そのため、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部は、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に対して非常に敏感に振動し得るものとなる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報(心拍情報)を更に一層精度良く計測することができる。
もとより、アルミニウム又はアルミニウム合金は錆にくいので、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部は、耐用寿命が長くなる。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金はリサイクル性に優れているから、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部を廃棄する際に、これをリサイクルに供することができる。
[6]の発明では、二対以上の歪みゲージが電気的に接続されてブリッジ回路が形成されるとともに、このブリッジ回路からの出力信号が被験者の生体情報の計測に用いられるものであるから、パネル本体の受け板部の微細な振動を確実に検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。
[7]の発明では、歪みゲージが、パネル本体の受け板部の上下両面のうち少なくとも一方の面における左右両側部及び中央部にそれぞれ取り付けられている。したがって、被験者の生体活動のうち呼吸及び脈拍に起因する振動は、パネル本体の受け板部の所定の面における左右方向中央部に取り付けられた歪みゲージによって主に検出される。また、寝床面上における被験者の横臥位置は、パネル本体の受け板部の所定の面における左側部及び右側部にそれぞれ取り付けられた歪みゲージによって主に検出される。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を精度良く計測することができることはもとより、更に、被験者の横臥位置についても精度良く検出することができる。
[8]の発明では、パネル本体の受け板部の下側に弾性部材が配置されているので、パネル本体が寝床面上に載置され且つ被験者の所定部位が受け板部で受けられた状態において、受け板部の中央部又は/及びその周辺部が弾性部材によって弾性的に支持される。そのため、受け板部が被験者の所定部位を受けて撓曲した場合であっても、受け板部が弾性変形の限度(即ち降伏点)を超えて塑性変形してしまう不具合を防止することができる。さらに、受け板部の下側に設けられる部材が弾性部材であるから、受け板部の中央部の振動が阻害されることはない。
[9]の発明では、歪みゲージがパネル本体の受け板部の上面に設けられた凹部の底面に取り付けられているので、歪みゲージのマットとの接触に伴う損傷を防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を長くすることができる。
[10]の発明では、凹部の底面に取り付けられた歪みゲージが保護材により保護される。そのため、歪みゲージのマットとの接触に伴う損傷を確実に防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を確実に長くすることができる。
[11]の発明では、歪みゲージへの入力信号線と歪みゲージからの出力信号線とが、ともにパネル本体の受け板部の下側を通っているので、入力信号線及び出力信号線のマットとの接触に伴う損傷や断線を防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を更に長くすることができる。
[12]の発明に係る生体情報計測装置は、本発明に係る生体情報計測用パネルを具備しているので、[12]の発明では、本発明に係る生体情報計測用パネルによる効果と同様の効果を奏する。
[13]の発明では、生体情報計測装置は所定の演算手段と所定の表示手段を具備しているので、被験者の生体情報を確実に演算することができるし、被験者の生体情報を確実に表示することができる。
[14]の発明では、生体情報計測装置は所定の通信手段を具備しているので、被験者の生体情報を遠隔地で計測することができる。
[15]の発明では、生体情報計測装置は所定の警報手段を具備しているので、被験者の状態が想定している範囲外となった場合に看護師、介護者、監視者等に警報で知らせることができる。
[16]の発明では、パネルのパネル本体がマットの上面に設けられた嵌合凹部に嵌合される。これにより、パネル本体の受け板部の上面の、マット上面からの高さ位置を低くすることができ、例えば、受け板部の上面の高さ位置をマットの上面の高さ位置に合わせ、受け板部の上面とマットの上面とを面一(つらいち)に連ならせることができる。そのため、被験者が横臥姿勢になった状態において、受け板部の上面とマットの上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。
[17]の発明に係る生体情報計測方法では、本発明に係る生体情報計測用パネルによる効果と同様の効果を奏する。
[18]の発明では、上記[13]の発明と同様に、被験者の生体情報を確実に演算することができるし、被験者の生体情報を確実に表示することができる。
[19]の発明では、上記[14]の発明と同様に、被験者の生体情報を遠隔地で計測することができる。
[20]の発明では、上記[15]の発明と同様に、被験者の状態が想定している範囲外となった場合に看護師、介護者、監視者等に警報で知らせることができる。
[21]の発明では、上記[16]の発明と同様に、被験者が横臥姿勢になった状態において、パネル本体の受け板部の上面とマットの上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。
[22]の発明では、生体活動監視システムは、所定の生体情報計測用パネル、演算手段、通信手段、表示手段及び警報手段を備えているので、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や心拍の状況についてより確実に監視することができる。
本発明は次の効果を奏する。
[1]の発明に係る生体情報計測用パネルでは、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に起因する振動を確実に検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報(心拍情報)を精度良く計測することができる。さらに、パネルの設置作業を容易に行うことができるし、市販されている殆どのベッド(診察台、検査台、ストレッチャー等を含む。)に対してパネルを適用することができる。
[2]の発明では、被験者の呼吸や脈拍に起因する振動を更に確実に検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に精度良く計測することができる。
[3]の発明では、パネル本体の受け板部の中央部が確実に振動されうるものとなる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。
[4]の発明では、パネル本体の少なくとも受け板部を能率的に且つコスト的に有利に製作することができる。
[5]の発明では、パネル本体の軽量化を図ることができ、そのため、パネルの設置作業を更に容易に行うことができる。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部は、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に対して非常に敏感に振動し得るものとなる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報(心拍情報)を更に一層精度良く計測することができる。
もとより、アルミニウム又はアルミニウム合金は錆にくいので、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部は、耐用寿命が長くなる。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金はリサイクル性に優れているから、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部を廃棄する際に、これをリサイクルに供することができる。
[6]の発明では、パネル本体の受け板部の微細な振動を確実に検出することができる。したがって、被験者の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。
[7]の発明では、被験者の呼吸情報や脈拍情報を精度良く計測することができることはもとより、更に、被験者の横臥位置についても精度良く検出することができる。
[8]の発明では、受け板部が被験者の所定部位を受けて撓曲した場合において、受け板部が弾性変形の限度(即ち降伏点)を超えて塑性変形してしまう不具合を防止することができる。さらに、受け板部の中央部をその振動が阻害されることなく支持することができる。
[9]の発明では、歪みゲージのマットとの接触に伴う損傷を防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を長くすることができる。
[10]の発明では、歪みゲージのマットとの接触に伴う損傷を確実に防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を確実に長くすることができる。
[11]の発明では、入力信号線及び出力信号線のマットとの接触に伴う損傷や断線を防止することができる。よって、パネルの耐用寿命を長くすることができる。
[12]の発明に係る生体情報計測装置では、本発明に係る生体情報計測用パネルによる効果を同様の効果を奏する。
[13]の発明では、被験者の生体情報を確実に演算することができるし、被験者の生体情報を確実に表示することができる。
[14]の発明では、被験者の生体情報を遠隔地で計測することができる。
[15]の発明では、被験者の状態が想定している範囲外となった場合に看護師、介護者、監視者等に警報で知らせることができる。
[16]の発明では、被験者が横臥姿勢になった状態において、パネル本体の受け板部の上面とマットの上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。
[17]の発明に係る生体情報計測方法では、本発明に係る生体情報計測用パネルによる効果と同様の効果を奏する。
[18]の発明では、被験者の生体情報を確実に演算することができるし、被験者の生体情報を確実に表示することができる。
[19]の発明では、被験者の生体情報を遠隔地で計測することができる。
[20]の発明では、被験者の状態が想定している範囲外となった場合に看護師、介護者、監視者等に警報で知らせることができる。
[21]の発明では、被験者が横臥姿勢になった状態において、パネル本体の受け板部の上面とマットの上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。
[22]の発明では、被験者の様々な生体活動のうち特に呼吸や心拍の状況についてより確実に監視することができる。
次に、本発明の幾つかの好ましい実施形態を以下に説明する。
図1〜図10は、本発明の第1実施形態に係る生体情報計測用パネル(P1)及び生体情報計測装置(M1)を説明するための図である。
本第1実施形態の生体情報計測装置(M1)は、図1に示すように、被験者(S)の主に就寝中の生体情報(呼吸情報、脈拍情報、体動情報等)を計測するためのもので、医療施設、介護施設、一般家庭等で用いられるものである。被験者(S)として、健康人、病人、乳幼児、高齢者等を挙げることができる。
この生体情報計測装置(M1)は、図1に示すように、生体情報計測用パネル(P1)と演算手段(30)と表示手段(35)と通信手段(36)と警報手段(37)とを具備している。
また、(40)は、被験者(S)が就寝(即ち横臥)するためのベッドである。被験者(S)は、このベッド(40)の床板面(41)上に敷かれたマット(図示せず)の上で就寝姿勢(即ち横臥姿勢)になる。本第1実施形態では、このベッド(40)の床板面(41)が寝床面(42)に対応している。以下、ベッド(40)の床板面(41)を寝床面(42)という。
なお、このベッド(40)はギャッチベッドであり、したがって寝床面(42)のうち被験者(S)の上半身を受ける部位は水平面に対して所定の角度に起こすことができるようになっている。なお、生体情報の計測時には、寝床面(42)全体は通常、水平に配置される。
パネル(P1)は、図2〜図4に示すように、パネル本体(1)と、複数個の歪みゲージ(20a)(20b)とを備える。
パネル本体(1)は、被験者(S)の一部を受ける受け板部(2)と、底板部(6)とを有している。底板部(6)は、受け板部(2)の下側において該受け板部(2)に対して離間し且つ該受け板部(2)と略平行に配置されている。本第1実施形態では、受け板部(2)で受けられる被験者(S)の部位は、図1に示すように被験者(S)の胸部及びその周辺部である。なお、本明細書では、説明の便宜上、被験者(S)の胸部及びその周辺部を「被験者(S)の胸部を含む胸周辺部」という。
受け板部(2)は平面視略長方形の帯板状に形成されている。また同じく、底板部(6)は平面視略長方形の帯板状に形成されている。
パネル本体(1)は、ベッド(40)の寝床面(42)上に、該寝床面(42)に対して受け板部(2)が離間する状態に且つ受け板部(2)が寝床面(42)の左右方向に延在する態様に載置されるものである。本第1実施形態では、パネル本体(1)は、寝床面(42)のうち被験者(S)の胸部を含む胸周辺部に対応する部位の上に載置される。
受け板部(2)の外周縁部のうち左縁部及び右縁部には、図4に示すように、該受け板部(2)を寝床面(42)に対して離間状態に支持する支持脚部(3)が、それぞれ下方突出状に設けられている。この支持脚部(3)は、受け板部(2)の左縁部及び右縁部からそれぞれ連続して形成されている。なお、受け板部(2)の前縁部及び後縁部にはそれぞれこのような支持脚部は設けられていない。
さらに、底板部(6)の左縁部及び右縁部には、受け板部(2)の左縁部及び右縁部に当接して該受け板部(2)を寝床面(42)に対して離間状態に支持する支持片部(7)が、それぞれ上方突出状に設けられている。なお、底板部(6)の前縁部及び後縁部には、それぞれこのような支持片部は設けられていない。
そして、図6に示すように、受け板部(2)の支持脚部(3)と底板部(6)の支持片部(7)とが、両者の間にスペーサ(13)を介在させて、ボルト−ナットやリベット等の連結部材(12)によって互いに連結されている。
受け板部(2)は、弾性的に撓曲可能な材料からなり、具体的には、アルミニウム又はアルミニウム合金(例:JIS A6063−T5)製の押出材から形成されている。また同じく、底板部(6)はアルミニウム又はアルミニウム合金製の押出材から形成されている。
この受け板部(2)は、被験者(S)の胸部を含む胸周辺部を受けることによって、弾性的に僅かに断面円弧状に撓曲される。そして、被験者(S)の生体活動に伴い、受け板部(2)の少なくとも中央部が上下に微細に振動され得るものとなる。
受け板部(2)の下側には、ゴム弾性を有する弾性部材(11)が受け板部(2)の下面全面に接触した状態に設けられており、本実施形態では、弾性部材(11)は底板部(6)上に配置されている。パネル本体(1)が寝床面(42)上に載置され且つ被験者(S)の胸部を含む胸周辺部が受け板部(2)で受けられた状態において、受け板部(2)の中央部及びその周辺部は、この弾性部材(11)によって弾性的に支持されている。
弾性部材(11)は、本第1実施形態では、受け板部(2)と底板部(6)との間に充填されて配置されている。詳述すると、この弾性部材(11)は、受け板部(2)と底板部(6)との間に充填した発泡性樹脂を発泡させることにより形成された弾性発泡体(例:発泡ウレタン、発泡スチレン及び発泡ゴム)からなる。
図2に示すように、受け板部(2)の幅W(即ち、寝床面(42)の左右方向に沿う受け板部(2)の長さ)は、ベッド(40)の寝床面(42)の幅や蒲団(図示せず)の幅と略同寸であることが望ましく、具体的には、800〜1000mmの範囲に設定されていることが望ましい。
受け板部(2)の長さL(即ち、寝床面(42)の前後方向に沿う受け板部(2)の長さ)は、100〜1000mmの範囲に設定されていることが望ましい。長さLをこの範囲に設定することにより、背の低い被験者から背の高い被験者まで確実に対応することができる。特に望ましい長さLは、200〜400mmの範囲である。
パネル本体(1)の厚さH(即ち、受け板部(2)の上面の高さ)は、15mm以下であることが望ましい。厚さHを15mm以下に設定することにより、被験者(S)が就寝姿勢になった状態において、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面と寝床面(42)の上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。特に望ましい厚さHは、10mm以下(更に望ましくは6mm以下)である。
また、図6に示すように、受け板部(2)の肉厚tは、0.5〜3mmの範囲であることが望ましい。肉厚tをこの範囲に設定することにより、被験者(S)の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に対して受け板部(2)が敏感に振動し得るものとなる。この望ましい範囲は、受け板部(2)の材質とは無関係に適用可能であるが、特に、受け板部(2)がアルミニウム又はアルミニウム合金製である場合に最適である。特に望ましい肉厚tは、1〜2mm(更に望ましくは1.2〜1.7mm)の範囲である。
このパネル本体(1)において、図2〜図4に示すように、受け板部(2)の上下両面の中央部の互いに対向する位置には、歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が二対、接着剤によって直接貼り付けられている。この二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)を、説明の便宜上、「中央歪みゲージ群(20C)」という。この二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)は、図7に示すように電気的に接続されており、これによりブリッジ回路(21C)(ホイートストンブリッジ回路)が形成されている。このブリッジ回路(21C)を、説明の便宜上、「中央ブリッジ回路(21C)」という。また、受け板部(2)の上面の中央部には、平面視略円形状の凹部(4)が設けられている。そして、この凹部(4)の底面に、二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)のうち二個の歪みゲージ(20a)(20a)が貼り付けられている。
また、受け板部(2)の上下両面の左側部の互いに対向する位置には、歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が二対、直接貼り付けられている。この二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)を、説明の便宜上、「左側歪みゲージ群(20L)」という。この二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)は、図7に示すように電気的に接続されており、これによりブリッジ回路(21L)が形成されている。このブリッジ回路(21L)を、説明の便宜上、「左側ブリッジ回路(21L)」という。また、受け板部(2)の上面の左側部には、平面視略円形状の凹部(4)が設けられている。そして、この凹部(4)の底面に、二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)のうち二個の歪みゲージ(20a)(20a)が貼り付けられている。
また、受け板部(2)の上下両面の右側部の互いに対向する位置には、歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が二対、直接貼り付けられている。この二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)を、説明の便宜上、「右側歪みゲージ群(20R)」という。この二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)は、図7に示すように電気的に接続されており、これによりブリッジ回路(21R)が形成されている。このブリッジ回路(21R)を、説明の便宜上、「右側ブリッジ回路(21R)」という。また、受け板部(2)の上面の右側部には、平面視略円形状の凹部(4)が設けられている。そして、この凹部(4)の底面に、二対(即ち四個)の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)のうち二個の歪みゲージ(20a)(20a)が貼り付けられている。
なお、各歪みゲージ(20a)(20b)は例えば接着剤によって所定の部位に貼り付けられている。
歪みゲージ(20a)(20b)は、被験者(S)の呼吸、脈拍(心拍)、体動(例:寝返り)等の生体活動に伴い発生する受け板部(2)の中央部の振動を検出するためのものである。一方、受け板部(2)は起歪体として機能する。
歪みゲージ(20a)(20b)からの出力信号としての出力電圧は、被験者(S)の生体情報の計測に用いられる。本第1実施形態では、二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が電気的に接続されてブリッジ回路(21L)(21C)(21R)が形成されていることから、各ブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号としての出力電圧が被験者(S)の生体情報の計測に用いられることとなる。
なお本発明では、歪みゲージ(20a)(20b)の種類は限定されるものではなく、歪みゲージ(20a)(20b)として、例えば、抵抗線歪みゲージ、箔歪みゲージ及び半導体歪みゲージが用いられる。
図1〜図5において、(22)は歪みゲージ(20a)(20b)への入力信号線であり、(23)は歪みゲージ(20a)(20b)からの出力信号線である。なお、同図では、入力信号線(22)と出力信号線(23)とは、互いに共通する一本の線で図示されている。
本第1実施形態では、二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が電気的に接続されてブリッジ回路(21L)(21C)(21R)が形成されていることから、歪みゲージへの入力信号線(22)はブリッジ回路(21L)(21C)(21R)への入力信号線となり、歪みゲージからの出力信号線(23)はブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号線となる。
図4に示すように、各ブリッジ回路(21L)(21C)(21R)への入力信号線(22)は、外部から、受け板部(2)の支持脚部(3)に設けられた信号線第1挿通孔(8)及び底板部(6)の支持片部(7)に設けられた信号線第2挿通孔(9)を順次通って受け板部(2)の下側へ導入されるとともに、更に該受け板部(2)の下側を通って対応するブリッジ回路(21L)(21C)(21R)に接続されている。このとき、受け板部(2)の凹部(4)の底面に貼り付けられた歪みゲージ(20a)(20a)への入力信号線(22)は、該凹部(4)の底面に設けられた信号線第3挿通孔(10)を通って該歪みゲージ(20a)(20a)に接続されている(図5参照。)。
また、各ブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号線(23)は、受け板部(2)の下側を通るとともに、更に信号線第2挿通孔(9)及び信号線第1挿通孔(8)を順次通って外部へ導出されている。このとき、受け板部(2)の凹部(4)の底面に貼り付けられた歪みゲージ(20a)(20a)からの出力信号線(23)は、信号線第3挿通孔(10)を通って受け板部(2)の下側へ導入されている(図5参照。)。
演算手段(30)は、歪みゲージ(20a)(20b)からの出力信号(出力電圧)に基づいて被験者(S)の生体情報を演算するためのものである。本第1実施形態では、二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が電気的に接続されてブリッジ回路(21L)(21C)(21R)が形成されていることから、演算手段(30)は、ブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号(出力電圧)に基づいて被験者(S)の生体情報を演算することとなる。
表示手段(35)は、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報等を表示するためのものである。
通信手段(36)は、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報等を遠隔地に送信するためのものである。
警報手段(37)は、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報等に基づいて警報を発するためのものである。
而して、演算手段(30)では、図8に示すように、各ブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号(出力電圧)が増幅部(31)において増幅されたのち、A/D変換部(アナログ/デジタル変換部)(32)においてデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号がコンピュータ等からなる中央演算処理部(33)に送信される。中央演算処理部(33)では、この送信されたデジタル信号に基づいて所定のプラグラムに従って被験者(S)の生体情報(呼吸情報、脈拍情報、体動情報等)についての演算が行われる。この演算は、公知の方法、例えばFFT法による周波数解析により行われる。
さらに、この中央演算処理部(33)では、寝床面(42)上における被験者(S)の就寝位置(横臥位置)についての演算が行われる。この演算方法について簡単に説明すると次のとおりである。すなわち、この中央演算処理部(33)では、左側ブリッジ回路(21L)からの出力信号と右側ブリッジ回路(21R)からの出力信号とを所定の計算式を用いて比較し、その比較結果に基づいて寝床面(42)上における被験者(S)の就寝位置についての演算が行われる。
さらに、この中央演算処理部(33)では、被験者(S)の着床・離床情報についての演算が行われる。
表示手段(35)では、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報(呼吸情報、脈拍情報、体動情報等)、就寝位置情報、着床・離床情報等が、所定のモニタテレビ等のディスプレイ上にリアルタイムで表示される。
通信手段(36)では、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報、就寝位置情報、着床・離床情報等が、電話回線、インターネット回線等の所定の通信線を介してあるいは無線で看護センター等の監視室や携帯電話へ送信される。
警報手段(37)では、演算手段(30)により演算された被験者(S)の生体情報、就寝位置情報、着床・離床情報等が所定の範囲から外れた場合に、警報が看護師、被験者、監視者等に対して発せられる。
次に、本第1実施形態の生体情報計測用パネル(P1)及び生体情報計測装置(M1)を用いて遂行される生体情報計測方法について、以下に説明する。
図1に示すように、生体情報計測用パネル(P1)のパネル本体(1)を、ベッド(40)の寝床面(42)における、被験者(S)の胸部を含む胸周辺部に対応する部位の上に、受け板部(2)が寝床面(42)の左右方向に延在する態様に載置する。この載置状態において、受け板部(2)は、支持脚部(3)及び支持片部(7)で支持されて寝床面(42)に対して上側に離間している。さらに、必要に応じて、このパネル本体(1)を寝床面(42)に対して固定する。
次いで、寝床面(42)及びパネル本体(1)の上に、被験者(S)の全体を受けるマット(マットレス)(図示せず)を、寝床面(42)全体を覆うように敷設する。そして、このマットの上に被験者(S)が就寝姿勢になる。これにより、被験者(S)の胸部を含む胸周辺部がこのマットを介してパネル本体(1)の受け板部(2)で受けられ、該受け板部(2)が被験者(S)の胸部を含む胸周辺部からの荷重によって弾性的に僅かに撓曲する。
被験者(S)が就寝すると、パネル本体(1)の受け板部(2)の中央部は、被験者(S)の就寝中の生体活動に伴い、上下に微細に振動する。この振動が歪みゲージ(20a)(20b)により検出される。そして、歪みゲージ(20a)(20b)からの出力信号、即ちブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号が出力信号線(23)を介して演算手段(30)に送信される。この送信された出力信号に基づいて演算手段(30)により被験者(S)の生体情報、就寝位置情報等が演算される。
演算手段(30)に演算された被験者(S)の生体情報、就寝位置情報等は、表示手段(35)により表示されるとともに、通信手段(36)により送信される。また、被験者(S)の生体情報、就寝位置情報等が所定の範囲から外れた場合には、警報手段(37)により警報が発せられる。
次に、演算手段(30)の中央演算処理部(33)で実行される処理について、図8及び図9を参照して以下に説明する。
なお、演算手段(30)には、被験者(S)の呼吸数、脈拍数(心拍数)及び体動数についての好適な範囲が予め設定されており、更に、寝床面(42)上における被験者(S)の好適な就寝位置が予め設定されている。
三個のブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号は、図8に示すように、それぞれ上述したように増幅部(31)において増幅されたのち、A/D変換部においてデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号が中央演算処理部(33)に送信される。
中央演算処理部(33)において、図9に示すように、ステップ(S1)では、送信された三つの信号を読み取る。次いで、ステップ(S2)、(S9)及び(S12)にぞれぞれ進む。
ステップ(S2)では、三つの信号のうち、中央ブリッジ回路(21C)からの出力信号に基づいて、FFT法等の公知の方法により周波数の解析を行う。次いで、ステップ(S3)及び(S6)にそれぞれ進む。
ステップ(S3)では、解析された周波数から呼吸数の検出を行う。次いで、ステップ(S4)に進む。
ステップ(S4)では、呼吸数が所定範囲内にあるか否かについての判定を行う。呼吸数が所定範囲から外れていると判定された場合には、「No」として、ステップ(S5)に進み、警報信号を警報手段(37)に発信する。一方、呼吸数が所定範囲内にあると判定された場合には、「Yes」として、ステップ(S1)に戻る。なお、本ステップ(S4)では、例えば、被験者の生死、睡眠状態、睡眠時無呼吸症候群等に関する情報を得ることができる。
ステップ(S6)では、解析された周波数から脈拍数(心拍数)の検出を行う。次いで、ステップ(S7)に進む。
ステップ(S7)では、脈拍数が所定範囲内にあるか否かについての判定を行う。脈拍数が所定範囲から外れていると判定された場合には、「No」として、ステップ(S8)に進み、警報信号を警報手段(37)に発信する。一方、脈拍数が所定範囲内にあると判定された場合には、「Yes」として、ステップ(S1)に戻る。なお、本ステップ(S7)では、例えば、被験者の生死、睡眠状態等に関する情報を得ることができる。
ステップ(S9)では、三つの信号のうち、左側ブリッジ回路(21L)からの出力信号と右側ブリッジ回路(21R)からの出力信号とを、所定の計算式を用いて比較し、その比較結果に基づいて寝床面(42)上における被験者(S)の就寝位置についての解析を行う。次いで、ステップ(S10)に進む。
ステップ(S10)では、被験者(S)の就寝位置が寝床面(42)上の所定位置であるか否かについての判定を行う。就寝位置が所定位置ではない(例えば、就寝位置が寝床面(42)上の端部である。)と判定された場合には、「No」として、ステップ(S11)に進み、警報信号を警報手段(37)に発信する。そして、警報手段(37)により発せられた警報をもとに被験者(S)の寝床面(42)からの落下防止のための処置を行うことができる。一方、就寝位置が所定位置である(例えば、就寝位置が寝床面(42)上の中央部である。)と判定された場合には、「Yes」として、ステップ(S1)に戻る。
ステップ(S12)では、被験者(S)の寝返り等の体動の検出を行う。次いで、ステップ(S13)に進む。
ステップ(S13)では、寝返り数等の体動数が所定範囲内にあるか否かについての判定を行う。体動数が所定範囲から外れていると判定された場合には、「No」として、ステップ(S14)に進み、警報信号を警報手段(37)に送信する。そして、警報手段(37)により発せられた警報をもとに褥瘡(じょくそう)の発生防止のための処置を行うことができる。一方、体動数が所定範囲内にある(例えば、体動が適度にある。)と判定された場合には、「Yes」として、ステップ(S1)に戻る。
図10は、本第1実施形態の生体情報計測装置(M1)により被験者(S)の生体情報を実際に計測した場合の、中央ブリッジ回路(21C)からの出力信号(出力電圧)の一実測例を示す図(グラフ)である。
同図では、ブリッジ回路(21C)からの出力信号は波形として表されている。この出力波形では、被験者(S)の呼吸に起因する呼吸波成分と、被験者(S)の脈拍(心拍)に起因する脈拍波成分(心拍波成分)とが重畳されている。この出力波形において、波長が長くて連続するうねり状の波が呼吸波成分であり、パルス状の波が脈拍波成分である。この出力波形では、呼吸周期が約3〜4秒であり、脈拍周期が約1秒である。
同図に示すように、本第1実施形態の生体情報計測装置(M1)によれば、呼吸波成分と脈拍波成分とをそれぞれ明確且つ確実に検出することができる。したがって、従来の生体情報計測装置では計測が極めて困難であった、僅かな荷重変化しか伴わない生体情報である呼吸情報(呼吸数等)と脈拍情報(脈拍数等)とについて、特に精度良く計測することができる。
さらに、本第1実施形態の生体情報計測用パネル(P1)及び生体情報計測装置(M1)には、次の利点がある。
本第1実施形態の生体情報計測用パネル(P1)によれば、パネル本体(1)を寝床面(42)上に載置するだけで、パネル(P1)の設置作業が完了する。そのため、パネル(P1)の設置作業を容易に行うことができるし、市販されている殆どのベッド(40)に対して適用することができる。
さらに、生体情報の計測時にはパネル本体(1)はベッド(40)の寝床面(42)上に載置されているので、もしベッド(40)の周囲を人が歩行した場合であっても、ベッド(40)を設置した床面の振動による検出精度の低下を防止することができる。もとより、ベッド(40)の剛性を高める必要がないので、ベッド(40)の軽量化を図ることができる。
さらに、パネル本体(1)の受け板部(2)が平面視略長方形の帯板状に形成されており、パネル本体(1)は、寝床面(42)上に、該寝床面(42)の左右方向に受け板部(2)が延在する態様に載置されるものであるから、被験者(S)の呼吸や脈拍に起因する振動を更に確実に検出することができる。したがって、被験者(S)の呼吸情報や脈拍情報を更に精度良く計測することができる。
さらに、パネル本体(1)の受け板部(2)及び底板部(6)がそれぞれ押出材により形成されたものなので、受け板部(2)及び底板部(6)をそれぞれ能率的に且つコスト的に有利に製作することができる。
さらに、パネル本体(1)の受け板部(2)及び底板部(6)がそれぞれアルミニウム又はアルミニウム製であるから、次の利点がある。
すなわち、パネル本体(1)の軽量化を図ることができ、そのため、パネル(P1)の設置作業を更に容易に行うことができる。
さらに、一般にアルミニウム又はアルミニウム合金は、鉄等の鋼材に比べてヤング率が約1/3と小さい。そのため、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部(2)は、被験者(S)の様々な生体活動のうち特に呼吸や脈拍(心拍)に対して非常に敏感に振動し得るものとなる。したがって、被験者(S)の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。もとより、アルミニウム又はアルミニウム合金は錆にくいので、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部(2)は、耐用寿命が長くなる。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金はリサイクル性に優れているから、アルミニウム又はアルミニウム合金製の受け板部(2)及び底板部(6)を廃棄する際に、これらをリサイクルに供することができる。
さらに、二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)が電気的に接続されてブリッジ回路(21L)(21C)(21R)が形成されるとともに、このブリッジ回路(21L)(21C)(21R)からの出力信号が被験者(S)の生体情報の計測に用いられるものであるから、パネル本体(1)の受け板部(2)の微細な振動を確実に検出することができる。したがって、被験者(S)の呼吸情報や脈拍情報を更に一層精度良く計測することができる。
さらに、歪みゲージ(20a)(20b)が、パネル本体(1)の受け板部(2)の上下両面の左右両側部及び中央部にそれぞれ貼り付けられている。したがって、被験者(S)の生体活動のうち呼吸及び脈拍に起因する振動は、中央ブリッジ回路(21C)によって検出される。また、寝床面(42)上における被験者(S)の就寝位置は、左側ブリッジ回路(21L)及び右側ブリッジ回路(21R)によって検出される。したがって、被験者(S)の呼吸情報や脈拍情報を精度良く計測することができることはもとより、更に、被験者(S)の就寝位置についても精度良く検出することができる。
さらに、パネル本体(1)の受け板部(2)の下側に弾性部材(11)が配置されているので、パネル本体(1)が寝床面(42)上に載置され且つ被験者(S)の胸部を含む胸周辺部が受け板部(2)で受けられた状態において、受け板部(2)の中央部及びその周辺部がこの弾性部材(11)によって弾性的に支持される。そのため、受け板部(2)が被験者(S)の所定部位を受けて撓曲した場合において、受け板部(2)が弾性変形の限度(即ち降伏点)を超えて塑性変形してしまう不具合を防止することができる。さらに、受け板部(2)の下側に設けられる部材が弾性部材(11)であるから、受け板部(2)の中央部の振動が阻害されることはない。
さらに、二対の歪みゲージ(20a)(20a)(20b)(20b)のうち2個の歪みゲージ(20a)(20a)がパネル本体(1)の受け板部(2)の凹部(4)の底面に貼り付けられているので、歪みゲージ(20a)のマットとの接触に伴う損傷を防止することができる。よって、パネル(P1)の耐用寿命を長くすることができる。
さらに、歪みゲージへの入力信号線(22)と歪みゲージからの出力信号線(23)とが、ともにパネル本体(1)の受け板部(2)の下側を通っているので、入力信号線(22)及び出力信号線(23)のマットとの接触に伴う損傷や断線を防止することができる。よって、パネル(P1)の耐用寿命を更に長くすることができる。
本第1実施形態の生体情報計測装置(M1)は、演算手段(30)と表示手段(35)を具備しているので、被験者(S)の生体情報を確実に演算することができるし、被験者(S)の生体情報を確実に表示することができる。
さらに、生体情報計測装置(M1)は、通信手段(36)を具備しているので、被験者(S)の生体情報を遠隔地で計測することができる。
さらに、生体情報計測装置(M1)は、警報手段(37)を具備しているので、被験者(S)の状態が想定している範囲外となった場合に、看護師、介護者、監視者等に警報で知らせることができる。
なお、この生体情報計測装置(M1)によれば、ベッド(40)上に横臥した被験者の就寝中の生体情報を計測できるだけではなく、更に、覚醒状態(即ち目が覚めている状態)の被験者がベッド(40)上に横臥することにより、覚醒状態の被験者の生体情報を計測することができる。
また、本第1実施形態の生体活動監視システムは、上記生体情報計測装置(M1)における生体情報計測用パネル(P1)、演算手段(30)、表示手段(35)、通信手段(36)及び警報手段(37)を備えている。したがって、この監視システムによれば、被験者(S)の体動、呼吸及び心拍の状況をより確実に監視することができるし、更に、離床・着床状況や就寝位置状況についてもより確実に監視することができる。
図11は、本発明の第2実施形態に係る生体情報計測用パネル(P2)を説明するための図である。
本第2実施形態のパネル(P2)においては、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面に設けられた各凹部(4)内には、保護材(14)が、凹部(4)の底面に貼り付けられた歪みゲージ(20a)の表面を被覆する状態に充填されている。この保護材(14)によって歪みゲージ(20a)が保護されている。保護材(14)の表面と受け板部(2)の上面とは面一に連なっている。本第2実施形態では、保護材(14)は、凹部(4)内に充填された樹脂層からなる。
本第2実施形態のパネル(P2)及び生体情報計測装置の他の構成、並びに生体情報計測方法は、上記第1実施形態と同じである。
本第2実施形態のパネル(P2)では、歪みゲージ(20a)が保護材(14)により保護されているので、歪みゲージ(20a)のマットとの接触に伴う損傷を確実に防止することができる。よって、パネル(P1)の耐用寿命を確実に長くすることができる。
図12及び図13は、本発明の第3実施形態に係る生体情報計測用パネル(P3)及び生体情報計測装置(M3)を説明するための図である。
本第3実施形態の生体情報計測用パネル(P3)は、第1実施形態と同じである。
本第3実施形態の生体情報計測装置(M3)は、被験者の下に敷かれ、被験者の全体を受けるマット(17)を具備している。このマット(17)は弾性を有している。図12に示すように、このマット(17)の上面の、被験者の胸部を含む胸周辺部に対応する部位には、嵌合凹部(18)が設けられている。そして、図13に示すように、この嵌合凹部(18)内にパネル(P3)のパネル本体(1)が嵌合されている。この嵌合状態において、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面とマット(17)の上面とは面一に連なっている。なお本発明では、受け板部(2)の上面はマット(17)の上面よりも若干高く配置されていても良い。
本第3実施形態の生体情報計測装置(M3)では、パネル(P3)のパネル本体(1)を、マット(17)の嵌合凹部(18)に嵌合した状態で、寝床面上に載置する。そして、このマット(17)の上で被験者が就寝し、被験者の生体情報が計測される。あるいは、このマット(17)の上に更に別のマットが敷かれて当該マットの上で被験者が就寝し、被験者の生体情報が計測される。
本第3実施形態の生体情報計測用パネル(P3)及び生体情報計測装置(M3)の他の構成、並びに生体情報計測方法は、第1実施形態と同じである。
本第3実施形態の生体情報計測装置(M3)では、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面とマット(17)の上面とが略面一に連なっているので、被験者が就寝姿勢になった状態において、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面とマット(17)の上面との間の段差により生じることのある違和感を解消することができる。
図14は、本発明の第4実施形態に係る生体情報計測用パネル(P4)を説明するための図である。
本第4実施形態のパネル(P4)のパネル本体(1)は、受け板部(2)と左右両支持脚部(3)(3)とを有しているが、底板部と弾性部材とを有していない。また、各支持脚部(3)の下端には接床片部(3a)が側方突出状に設けられている。
本第4実施形態のパネル(P4)の他の構成は、第1実施形態と同じである。
図15は、本発明の第5実施形態に係る生地情報計測パネル(P5)を説明するための図である。
本第5実施形態のパネル(P5)では、底板部(6)は箱型に形成されており、すなわち底板部(6)の外周縁部の全部に側壁部(6a)が設けられている、また、受け板部(2)の左縁部及び右縁部にはぞれぞれ支持脚部(3)が下方突出状に設けられている。そして、このパネル(P5)では、箱型の底板部(6)内に受け板部(2)が装填されている。
本5実施形態のパネル(P5)の他の構成は、第1実施形態と同じである。
以上で、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に示したものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能である。
例えば、上記実施形態では、いずれも、パネル本体(1)の受け板部(2)の上下両面にそれぞれ歪みゲージが貼り付けられているが、本発明では、受け板部(2)の上面だけに歪みゲージが貼り付けられていても良いし、受け板部(2)の下面だけに歪みゲージが貼り付けられていても良い。
また、パネル本体(1)の受け板部(2)の上面又は下面に貼り付けられる歪みゲージの個数は、1個であっても良いし、2個であっても良いし、3個であっても良いし、4個以上であっても良い。
また、本実施形態では、いずれも、各ブリッジ回路に用いられる歪みゲージの対数は二対であるが、本発明では、歪みゲージの対数は二対に限定されるものではなく、例えば三対であっても良いし、四対であっても良い。
また、パネル本体(1)の受け板部(2)は、被験者の全体を受けるものであっても良い。
また、パネル本体(1)の受け板部(2)の外周縁部の全部に支持脚部(3)が下方突出状に設けられていても良い。
また、本実施形態では、いずれも、歪みゲージ群の組数は3組であるが、本発明では、歪みゲージ群の組数は1組であっても良いし、2組であっても良いし、4組以上であっても良い。
また、本実施形態では、いずれも、パネル本体(1)は、ベッド(40)の床板面(41)上に載置されるものであるが、本発明では、パネル本体(1)は、畳面上に載置されるものであっても良いし、床面上に載置されるものであっても良い。
また、本実施形態では、弾性部材(11)は、パネル本体(1)の受け板部(2)の下側に該受け板部(2)の下面全面に亘って接触した状態に設けられているが、本発明では、弾性部材(11)は、パネル本体(1)の受け板部(2)の下側に該受け板部(2)の下面の中央部を除く周辺部に接触した状態に設けられていても良い。
また、本実施形態では、いずれも、パネル本体(1)の受け板部(2)は押出材により形成されているが、本発明では、パネル本体(1)の受け板部(2)は押出材以外の材料により形成されていても良い。
また、本発明では、生体情報計測用パネルや生体情報計測装置には、必要に応じて安全上の装置が付設されていても良いし、安全上の処理が施されていても良い。
また、本発明では、歪みゲージは、接着剤による貼付け以外の取付け手段として、カシメ、ネジ止め、リベッド止め、溶接(例:スポット溶接)等の機械的接合手段によって所定部位に沿接状態に取り付けられていても良い。
また、本発明では、ベッド(40)は、被験者が睡眠するために用いられるものであっても良いし、病院や介護施設などで用いられる診察台、検査台、ストレッチャー等であっても良い。