JP4606429B2 - ベアリングレスモータ及びベアリングレスモータシステム - Google Patents

ベアリングレスモータ及びベアリングレスモータシステム Download PDF

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Description

本発明はベアリングレスモータ及びベアリングレスモータシステムに係わり、特に磁気支持巻線が電動機巻線と対に捲回されることでブラシレスDCモータの永久磁石の磁界を精度良く調整しつつ半径方向位置調整を行い、かつ省スペースで安定した制御の行えるベアリングレスモータ及びベアリングレスモータシステムに関する。
現在、各産業や家電、情報機器のドライブ装置として、ブラシレスDCモータが広く用いられている。その軸受には機械的接触面を持つものや、オイルを介して回転軸支持するものが多く用いられていて、軸受のメンテナンスフリーや長寿命化が望まれている。
ベアリングレスモータはモータと磁気軸受の機能を一体化した電磁機械であり、現在、活発に研究開発が行われている。ブラシレスDCモータをベアリングレス化すれば上記軸受の問題を解決できるだけでなく、ドライブの高速化も可能になる。このようなブラシレスDCモータのベアリングレス化について、従来特許文献1、特許文献2が開示されている。
特開2001−351874号公報 特開2001−16887号公報
しかしながら、前述した公知例では、電動機巻線による磁界を磁気支持巻線で発生させた磁界により不平衡とするため、電動機巻線又は磁気支持巻線のいずれかをスロットをまたぎ複数の固定子歯に渡り捲回している。このため、捲回範囲の広くなる分漏れ磁束が大きくなったり、導線抵抗が増加するこことなり制御精度を上げるのが困難となるおそれがあった。また、スペースとしてもその配線スペース分だけ広く必要となっていた。
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、磁気支持巻線が電動機巻線と対に捲回されることでブラシレスDCモータの永久磁石の磁界を精度良く調整しつつ半径方向位置調整を行い、かつ省スペースで安定した制御の行えるベアリングレスモータ及びベアリングレスモータシステムを提供することを目的とする。
このため本発明(請求項1)は、複数の固定子歯へ磁気支持巻線と電動機巻線とが対を成して捲回されるとともに、回転子の回転軸を挟んで対峙する磁気支持巻線同士が直列接続されて成る固定子と、複数の磁極を備えた回転子と、モータ駆動時に電動機巻線電流がゼロとなる電動機巻線と対を成す磁気支持巻線へ流す磁気支持巻線電流を制御して、前記磁気支持巻線が発生する支持磁束と前記回転子に設けられた磁極の界磁磁束とにより回転子の半径方向位置制御を行う磁気支持制御手段を備えて構成した。
磁気支持巻線は、電動機巻線と対となるように捲回されているので、磁束の漏れが少なく、直接的に磁極の磁界に作用することができる。このため、極めて精度の高い制御が行える。なお、磁気支持巻線は、必ずしも電動機巻線の巻かれたすべての固定子歯に対し配設される必要はない。以上により、簡易な構成でベアリングレスモータを実現できる。
電動機巻線は励磁されていない状態にあるので、磁極と磁気支持巻線間の磁束に影響を及ぼすことはない。このため、極めて精度の高い制御が行える。
また、本発明(請求項2)は、前記磁気支持制御手段は、前記回転子の回転角を検出する回転角検出手段と、磁気支持巻線電流が供給される磁気支持巻線を切り換える切換手段を備え、前記直列接続された磁気支持巻線の接続体が発する磁気力が直交する2組の磁気支持巻線接続体による相が少なくとも一つ構成され、
前記回転子の回転とともに前記切換手段により相の切り換えが順次行われることを特徴とする。
以上により、簡易な構成で制御の容易なベアリングレスモータを実現できる。
更に、本発明(請求項3)は、 前記相の数が正の整数nのとき、前記固定子は4nのスロットを有すことを特徴とする。
以上により、広範囲なモータに対し本発明の適用が可能である。
更に、本発明(請求項)は、前記複数の直列接続された磁気支持巻線の接続体は、直交2軸方向のそれぞれに力を発生する支持巻線の群として分離配置され、前記回転子の回転とともに前記切換手段によって群の切換並びに群内の磁気支持巻線の接続体の選択切り換えが順次行われることを特徴とする。
x方向、y方向の力は、1本の磁気支持巻線で半径方向力が発生されたり、あるいは、複数本の磁気支持巻線により発生する力の合成により半径方向力が発生されたりする。磁気支持巻線をx軸制御用とy軸制御用とに分離したことで、x方向やy方向の力の制御が容易に行える。
更に、本発明(請求項5)は、前記支持巻線群に含まれる各支持巻線において、直交2軸方向に一致しない巻線の巻数は直交2軸方向に一致する巻線の巻数よりも支持力リプルが減少するように少なく調整されていることを特徴とする。
このことにより、磁気支持巻線の切り換え前後での磁気支持力変動を防止できる。
更に、本発明(請求項)は、前記回転子は軸方向に複数段設けられ、段間において磁極が回転方向へスキューされていることを特徴とする。
更に、本発明(請求項)は、前記固定子歯は、断面がT字状に形成され、歯頭部の全体が同一磁極面内に位置する間は磁気支持巻線に対する励磁が継続され、回転子の回転により歯頭部が異なる磁極に対峙する前に励磁される支持巻線が切り換えられることを特徴とする。
固定子歯の歯頭部の全体がずっと同一の磁極の面内に含まれた形で回転子が移動しており、磁極による歯頭部に向かう磁界の磁性は一様で、この回転角度範囲内で変化することはない。従って、安定した精度の高い制御が容易に行える。
更に、本発明(請求項8)は、前記磁気支持巻線に流す電流所定の回転角度進行する毎に方形波形状と電流値ゼロと交互に形成されることを特徴とする。
更に、本発明(請求項)は、複数の固定子歯へ磁気支持巻線と電動機巻線とが対を成して捲回されると共に、前記各磁気支持巻線が回転子の回転軸を挟んで対峙する巻線同士を直列接続されて成る固定子と、複数の磁極を有した回転子と、前記回転子の回転角度を検出する回転角度センサと、前記回転子の直交2軸方向の変位を検出する複数のギャップセンサと、前記回転角度センサによって検出された回転子の角度に対応する電動機巻線電流を調整する電動機電流調整手段と、前記回転角度センサの出力と前記ギャップセンサから出力された直交2軸方向の回転子の位置変位と変位指令値の偏差とから磁気支持巻線に流す電流を調整する磁気支持巻線電流調整手段とを備え、前記磁気支持巻線電流調整手段は、前記角度センサの出力に対応して前記電動機電流調整手段によって電流がゼロに制御される電動機巻線と対を成す前記磁気支持巻線を励磁制御し回転子の半径方向位置調整を行うことを特徴とする。
以上説明したように本発明によれば、磁気支持巻線は、電動機巻線と対となるように捲回されたので、磁束の漏れが少なく、直接的に磁極の磁界に作用することができる。このため、極めて精度の高い制御が行える。以上により、簡易な構成でベアリングレスモータを実現できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態であるDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図を図1に示す。図1のDCブラシレス構造ベアリングレスモータ10において、回転子1は8極アウターロータ型である。しかしながら、本発明はインナーロータ型に対しても適用可能である。鉄心3の内側には永久磁石5が配置されている。そしてそれぞれの永久磁石5は、回転角度方向に向けて45°毎に磁極が切り換わる。なお、鉄心がなく永久磁石だけの構造でも適用できる。
図1中のN、Sは鉄心3に面する側の永久磁石5の極性を表している。固定子鉄心7は12スロット構造である。固定子歯9に巻かれた巻線の内、外側のU、V、Wで表記された巻線は三相電動機巻線11であり、各相それぞれ4つの固定子歯9に集中して巻かれている。また、この三相電動機巻線11の内側には磁気支持巻線13が捲回されている。そして、例えば磁気支持巻線13a1はシャフト15を挟んで対峙する固定子歯9に対し直列接続となるように捲回されている。固定子歯9は断面T字状に形成され、固定子歯9の歯頭部9aは、それぞれ回転角度方向に向けて−15°〜+15°の範囲内に渡り突設されている。
また、磁気支持巻線13a1と磁気支持巻線13a2とは、それぞれの発生する起磁力が互いに直交する方向となるように配置されている。磁気支持巻線13a2も磁気支持巻線13a1と同様に、シャフト15を挟んで対峙する固定子歯9に対し直列接続となるように捲回されている。ここに、磁気支持巻線13a1と磁気支持巻線13a2を一つの相とし、a相巻線と定義する。更に、磁気支持巻線13b1、13b2、13c1、13c2も同様に配置されている。ここに、磁気支持巻線13b1、13b2を一つの相とし、b相巻線と定義し、磁気支持巻線13c1、13c2を一つの相とし、c相巻線と定義する。なお、電動機巻線の配置、トルクの発生原理は従来のブラシレスDCモータと同様なので説明を省略する。
次に、本発明の第1実施形態の動作を説明する。
図2及び図3に基づき磁気支持力の発生原理を示す。12スロット8極構造では、ベアリングレスSRモータの原理を応用して軸支持できる。図4に回転角度φと磁気支持電流との関係を、また図5に回転角度φと電動機電流との関係を示す。但し、図4は、x軸正方向に力Fxを発生させる場合について例示したものである。y軸方向についての動作は同様なので説明を省略する(以下、同旨)。なお、図2、図3は、それぞれ回転角度φ=22.5°、0°の場合を例に示す。図中、三相電動機巻線11は省略している。
まず、回転子1の回転角度φが22.5°の場合について説明する。回転角度φ=22.5°のとき、図5よりU相の三相電動機巻線11を流れる電流はゼロであり、U相の三相電動機巻線11は励磁されていない状態にある。このとき、図2に示したようにU相の三相電動機巻線11と同一の固定子歯9に捲回された磁気支持巻線13a1に対し正方向に電流ia1を流し励磁すると、永久磁石5の界磁磁束(太い矢印)に加えて支持磁束(細い矢印)が発生する。すると磁束密度がギャップ21では減少し、ギャップ23では増加してアンバランスになりx軸正方向に力Fxが発生する。なお、この場合に、U相の三相電動機巻線11は励磁されていない状態にあるので、永久磁石5と磁気支持巻線13a1間の磁束に影響を及ぼすことはない。このように、回転角度φ=22.5°を含む回転角度15°から30°までの範囲においては、固定子歯9の歯頭部9a1、9a7の全体がずっと同一の永久磁石5A、5Eと対峙し、かつこの永久磁石5A、5Eの面内に含まれた形で回転子1が移動しており、永久磁石5A、5Eによる歯頭部9a1、9a7に向かう磁界の磁性は一様で、この回転角度範囲内で変化することはない。従って、安定した精度の高い制御が容易に行える。
次に、回転子1の回転角度φが0°の場合について説明する。回転角度φ=0°のとき、図5よりV相の三相電動機巻線11を流れる電流はゼロであり、V相の三相電動機巻線11は励磁されていない状態にある。このとき、図3に示したようにV相の三相電動機巻線11と同一の固定子歯9に捲回された磁気支持巻線13b1、b2に対しそれぞれ負方向へ電流を流し励磁する。すると力Fb1、Fb2が発生し、その合力によりx軸正方向に力Fxと大きさが等しくなるように支持電流の大きさを決定する。このように、回転角度φ=0°を含む回転角度0°から15°までの範囲においては、固定子歯9の歯頭部9a2、9a5、9a8、9a11の全体がずっと同一の永久磁石5B、5D、5F、5Hと対峙し、かつこの永久磁石5B、5D、5F、5Hの面内に含まれており、永久磁石5B、5D、5F、5Hによる磁界の磁性は一様で、この回転角度範囲内で変化することはない。従って、安定した制御が容易に行える。
このように、12スロット、8極構造のブラシレスDCモータでは、回転角度φが、15°≦φ<30°、60°≦φ<75°の区間において、a相巻線を励磁して半径方向に磁気支持力を発生する。同様に0°≦φ<15°、45°≦φ<60°の区間においてb相(b1、b2)巻線、30°≦φ<45°、75°≦φ<90°の区間においてc相(c1、c2)巻線を励磁し、力を発生する。
なお、本発明は、4nスロット(支持巻線n相)に適用可能である。なお、回転子極数は従来のブラシレスDCモータの原理でトルクを発生できる極数であれば良く、何種類か考えられる。例えば、上記以外にも4スロット(支持巻線一相)に対し、回転子極数が例えば4極、あるいは、8スロット(支持巻線二相)に対し回転子極数が例えば6極などに適用可能である。
上記した通り、回転角度により励磁する相を決定するが、多相構造であっても、高速回転時など慣性の力が大きい場合には少なくとも一相分で力を発生できる。例えば、本実施形態では、a相、b相、c相の3相構造であるが、この内、a相だけの制御であっても制御可能である。但し、リップル等の点からは3相制御された方が望ましい。
次に、図6を基にDCブラシレス構造ベアリングレスモータの制御方法について説明する。
図6において、DCブラシレス構造ベアリングレスモータ10の回転子1の回転角度を回転角度センサ31で抽出する。そして、この回転角度センサ31で抽出した回転角度に基づき電動機電流制御回路33にて電動機電流iU、iV、iWが演算された後、電動機電流駆動回路34で増幅された形で三相電動機巻線11に流される。
一方、回転角度センサ31で抽出した回転角度は、磁気支持巻線電流制御回路35にも入力されるようになっている。
また、ギャップセンサ37で回転子1のx軸方向の変位を検出し、x方向変位指令値39との間での偏差Δxが減算器41にて算出される。そして、この偏差Δxは補償回路43にてPID補償されることで力の指令値Fx *が演算される。
一方、ギャップセンサ47でy軸方向の変位を検出し、y方向変位指令値49との間での偏差Δyが減算器51にて算出される。この偏差Δyは補償回路53にてPID補償されることで力の指令値Fy *が演算される。
そして、回転角度センサ31で抽出した回転角度φが、15°≦φ<30°、60°≦φ<75°の区間において、a相巻線(a1、a2)を励磁して半径方向に磁気支持力を発生する。このとき、数1に基づき磁気支持巻線電流制御回路35において支持巻線電流ia1、ia2が調整される。調整された電流は、磁気支持巻線電流駆動回路36で増幅された後、磁気支持巻線13に流される。但し、Kは比例定数とする。
Figure 0004606429
同様に、0°≦φ<15°、45°≦φ<60°の区間においてb相(b1、b2)巻線を励磁して半径方向に磁気支持力を発生する。このとき、数2に基づき磁気支持巻線電流制御回路35において支持巻線電流ib1、ib2が制御される。この際、力の指令値Fx *、Fy *をb相(b1、b2)巻線の起磁力方向になるように座標変換された上で電流値が演算される。演算された電流は、磁気支持巻線電流駆動回路36で増幅された後、磁気支持巻線13に流される。
Figure 0004606429
更に、30°≦φ<45°、75°≦φ<90°の区間においてc相(c1、c2)巻線を励磁して半径方向に磁気支持力を発生する。このとき、数3に基づき磁気支持巻線電流制御回路35において支持巻線電流ic1、ic2が制御される。この際、力の指令値Fx *、Fy *をc相(c1、c2)巻線の起磁力方向になるように座標変換された上で電流値が演算される。演算された電流は、磁気支持巻線電流駆動回路36で増幅された後、磁気支持巻線13に流される。
Figure 0004606429
なお、減算器41、51、補償回路43、53、磁気支持巻線電流制御回路35、電動機電流制御回路33は、DSP(Digital Signal Processor)やCPUにてディジタル演算処理が可能である。
以上により、簡易な構成でベアリングレスモータを実現できる。磁気支持巻線13は、三相電動機巻線11と同一の固定子歯9に捲回されているので、磁束の漏れが少なく、直接的に永久磁石5の磁界に作用することができる。また、磁気支持巻線13の励磁は、三相電動機巻線11の励磁がされていない固定子歯について行われる。このため、極めて精度の高い制御が行える。
次に、図7に示す解析モデルの諸元を用いて有限要素法により磁気支持力を求めた。解析には電磁界解析ソフトJMAG−Studio((株)日本総研、ver.8.2)を用いた。発生方向は支持力がx軸正方向に定める。
図8に解析結果である回転角度と支持力の関係を示す。磁気支持巻線13に流す電流は方形波である。このとき、支持力はスイッチング周波数(周期15°)に同期したリプルが生じている。また、x軸方向についての制御を行っているにも関わらずこのFx成分に対し最大で31パーセント程度のFy成分が発生している。
しかしながら、この点については、磁気支持巻線13に流す電流を正弦波とすることで図9に示すように抑制することが可能である。なお、永久磁石5の着磁自体が均等着磁ではなく、正弦波状に形成されても良い。
図7の諸元に基づき本実施形態の実験を行った。図10に実験したDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図を示し、図11に全体の制御システム実験モデル構成図を示す。なお、図1、図6と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
図10において、回転角度センサ61HU、61HV、61HWはそれぞれ電気角で120°毎に配置され、この信号を基準に磁気支持巻線13や三相電動機巻線11の通電の切り換えが行われる。回転角度センサ61HU、61HV、61HWには、ホールセンサを用いている。但し、後述の第2実施形態のように二相電動機巻線を用いた場合には、回転角度センサは2個配設されれば良い。
市販のブラシレスDCモータでは、回転角を抽出するためホールセンサが標準的に装備されて販売されることが多い。このブラシレスDCモータに対して磁気支持巻線13を追加捲回するだけで、本願のベアリングレスモータを製作可能である。このため、容易に量産可能であり、安価にできる。
また、X方向センサ(ギャップセンサ)63Xは磁気支持巻線13a1が起磁力を発生する方向の回転子1の半径方向位置を抽出するように配置され、Y方向センサ63Yは磁気支持巻線13a2が起磁力を発生させる方向の回転子1の半径方向位置を抽出するように配置されている。なお、X方向センサ63X、Y方向センサ63Yは、図示しないマイクロメータによりセンサの位置(x、y軸方向)と高さが調整できるようになっている。
実験の手順としては、まず電動機側の電源、コントローラをONする。すると、回転子1が回転する(低速数百r/min)。次に磁気支持側の電源、コントローラをONする。すると、浮上(半径方向に対して非接触支持)する。その後、1,125r/minまで加速した。回転速度1,125r/min、無負荷運転時、電動機電流(矩形波)のピーク値0.1Aで観測し、まず半径方向に対して浮上(非接触磁気支持)を確認した。
次に、図11において、図中(1)の測定点では、回転角度センサ61HU、61HV、61HWの出力を観測し、(2)の測定点では、各相毎の支持電流の指令値を観測した。この回転角度センサ出力と各相毎の支持電流の指令値との関係を測定し、結果を図12に示す(図4に対応)。その結果、回転角に応じて相切り換えが理論通りON、OFFされていることを確認した。
そして、図中(3)の測定点では、X方向センサ63X、Y方向センサ63Yから出力される電圧を測定し、電圧値を距離に変換した。測定結果を図13の上段に示す。図13において、X方向センサ63X、Y方向センサ63Yの波形の振れはおよそ±5μmであり、図示しないタッチダウン軸受のギャップ範囲(±100μm)以内であり、十分制御でき、安定して浮上の行われていることが分かる。
また、図中(4)の測定点では、支持力の指令値Fx *、Fy *の電圧値を測定した。測定結果を図13の下段に示す。図13において、支持力の指令値Fx *、Fy *は相毎の切り換えにおいて不連続とならずに連続した制御の行われていることが分かる。
更に、x方向変位指令値39(測定点(5))に与えたステップ状の信号に対する応答を、X方向センサの出力(測定点(3))から確認した。測定結果を図14に示す。ステップ状の信号を与えた時にX方向センサの出力は0.5μs以内に目標値に達しており、Y方向センサの出力はほとんど変動がない。このことより、制御部の応答性は良好であることが確認された。なお、X方向センサ63X、Y方向センサ63Yから出力される電圧はアンプ65X、65Yで0.5倍に増幅し、A/D変換された後に、距離に換算されている。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態であるDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図を図15に示す。なお、図1と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
図15のDCブラシレス構造ベアリングレスモータ100において、回転子111は6極アウターロータ型である。しかしながら、本発明はインナーロータ型に対しても適用可能である。鉄心3の内側には永久磁石105が貼り付けられている。図15中のN、Sは鉄心3に面する側の永久磁石105の極性を表している。
固定子鉄心7は12スロット構造である。固定子歯9に巻かれた巻線の内、外側のA1〜A6、B1〜B6で表記された巻線は二相電動機巻線101であり、固定子歯9に集中して巻かれている。また、この二相電動機巻線101の内側には磁気支持巻線103が捲回されている。そして、例えば磁気支持巻線103xaはシャフト15を挟んで対峙する固定子歯9に対し直列接続となるように捲回されている。
また、磁気支持巻線103xaと磁気支持巻線103yaとは、それぞれの発生する超磁力が互いに直交する方向となるように配置されている。磁気支持巻線103yaも磁気支持巻線103xaと同様に、シャフト15を挟んで対峙する固定子歯9に対し直列接続となるように捲回されている。更に、磁気支持巻線103xb、103yb、103xc、103ycも同様に配置されている。ここに、磁気支持巻線103xa、103xb、103xcがx軸方向に力を発生させる支持巻線であり、一方、磁気支持巻線103ya、103yb、103ycがy軸方向に力を発生させる支持巻線である。なお、電動機巻線の配置、トルクの発生原理は従来のブラシレスDCモータと同様なので説明を省略する。
次に、本発明の第2実施形態の動作を説明する。
図16及び図17に基づき本発明の第2実施形態であるDCブラシレス構造ベアリングレスモータの磁気支持力の発生原理を示す。そして、図18に回転角度φと磁気支持電流との関係を、また図19に回転角度φと電動機電流との関係を示す。但し、図18は、x軸正方向に力Fxを発生させる場合について例示したものである。なお、図16、図17は、それぞれ回転角度φ=0°、30°の場合を例に示す。図中、二相電動機巻線101は省略している。
まず、回転子1の回転角度φが0°の場合について説明する。回転角度φ=0°のとき、図19よりA相の二相電動機巻線101を流れる電流はゼロであり、A相の二相電動機巻線101は励磁されていない状態にある。このとき、図16に示したようにA相の二相電動機巻線101と同一の固定子歯9に捲回された磁気支持巻線103xa1、103xa2に対し図18に示すように正方向に電流ixaを流し励磁すると、永久磁石105の界磁磁束(太い矢印)に加えて支持磁束(細い矢印)が発生する。すると磁束密度がギャップ121では減少し、ギャップ123では増加してアンバランスになりx軸正方向に力Fxが発生する。なお、この場合に、A相の二相電動機巻線101は励磁されていない状態にあるので、永久磁石105と磁気支持巻線103xa1、103xa2間の磁束に影響を及ぼすことはない。
このように、回転角度φ=0°を含む回転角度−15°から15°までの範囲においては、固定子歯9の歯頭部9a1、9a7の全体がずっと同一の永久磁石105A、105Dと対峙し、かつこの永久磁石105A、105Dの面内に含まれた形で回転子1が移動しており、このときの永久磁石105A、105Dによる歯頭部9a1、9a7に向かう磁界の磁性は一様で、この回転角度範囲内で変化することはない。従って、安定した精度の高い制御が容易に行える。
次に、回転子1の回転角度φが30°の場合について説明する。回転角度φ=30°のとき、図19よりB相の二相電動機巻線101を流れる電流はゼロであり、B相の二相電動機巻線101は励磁されていない状態にある。このとき、図17に示したようにB相の二相電動機巻線101と同一の固定子歯9に捲回された磁気支持巻線103xb1、xb2に対し正方向へ電流を流し、かつ磁気支持巻線103xc1、xc2に対し負方向へ電流を流し励磁する。すると力Fxb、Fxcが発生し、その合力によりx軸正方向に力Fxと大きさが等しくなるように磁気支持巻線103xb1、xb2及び103xc1、xc2の巻数を決定する。
このように、回転角度φ=30°を含む回転角度15°から45°までの範囲においては、固定子歯9の歯頭部9a2、9a6、9a8、9a12の全体がずっと同一の永久磁石105A、105C、105D、105Fと対峙し、かつこの永久磁石105A、105C、105D、105Fの面内に含まれており、永久磁石105A、105C、105D、105Fによる磁界の磁性は一様で、この回転角度範囲内で変化することはない。従って、安定した制御が容易に行える。
即ち、本発明では、直交二軸のx、y軸方向にそれぞれ力を発生する巻線が決められており、図15中の磁気支持巻線103xa、103xb、103xcがx軸方向への力を担い、一方、磁気支持巻線103ya、103yb、103ycがy軸方向への力を担っている。そして、回転角度により励磁する支持巻線が決まっており、1本の支持巻線で半径方向力を発生したり、又は複数本の支持巻線により発生する力を合成することで回転軸支持を行っている。
本発明は、一般に2pスロット、p極の二相モータに適用可能である。
なお、磁気支持巻線103xa、103xb、103xcを同一の巻数で捲回したと仮定すると、磁気支持巻線103xaに流していた電流をそのまま磁気支持巻線103xb、103xcに流すことは、支持巻線切り換え前後での磁気支持力変動を生ずる。このため、支持力リプルが減少するように支持巻線の巻数を例えば、磁気支持巻線103xaが30ターンに対し磁気支持巻線103xb、103xcが18ターン等と調整されることが望ましい。このように巻数を調整することにより、磁気支持巻線103xaと103xb、103xcには大きさが等しい電流を流すことで安定に回転軸を支持できる。
次に、図20を基にDCブラシレス構造ベアリングレスモータの制御方法について説明する。
図20において、DCブラシレス構造ベアリングレスモータ100の回転子111の回転角度を回転角度センサ31で抽出する。そして、この回転角度センサ31で抽出した回転角度に基づき電動機電流制御回路133にて電動機電流iA、iBが演算された後、電動機電流駆動回路134で増幅された形で二相電動機巻線101に流される。一方、回転角度センサ31で抽出した回転角度は、磁気支持巻線電流制御回路135、137にも入力されるようになっている。
また、ギャップセンサ37で回転子1のx軸方向の変位を検出し、x方向変位指令値39との間での偏差Δxが減算器41にて算出される。そして、この偏差Δxは補償回路43にてPID補償されることで電流指令値Ix *が演算される。
この電流指令値Ix *は磁気支持巻線電流制御回路135に入力され、図18のタイミングチャートに従い、回転角度毎に決められた磁気支持巻線103xa、103xb、103xcに対しそれぞれ電流ixa、ixb、ixcが演算されるようになっている。その後、磁気支持巻線電流駆動回路136で増幅された形でこの磁気支持巻線103xa、103xb、103xcに向けて駆動電流が流される。
このことにより、1本の支持巻線でx方向の半径方向力を発生したり、又は複数本の支持巻線により発生する力を合成することでx方向の半径方向力を発生し回転軸の支持が行われる。
一方、ギャップセンサ47でy軸方向の変位を検出し、y方向変位指令値49との間での偏差Δyが減算器51にて算出される。そして、この偏差Δyは補償回路53にてPID補償されることで電流指令値Iy *が演算される。
この電流指令値Iy *は支持巻線電流制御回路137に入力され、図18のタイミングチャートに従い、回転角度毎に決められた磁気支持巻線103ya、103yb、103ycに対しそれぞれ電流iya、iyb、iycが演算されるようになっている。その後、磁気支持巻線電流駆動回路138で増幅された形でこの磁気支持巻線103ya、103yb、103ycに向けて駆動電流が流される。
このことにより、1本の支持巻線でy方向の半径方向力を発生したり、又は複数本の支持巻線により発生する力を合成することでy方向の半径方向力を発生し回転軸の支持が行われる。
なお、減算器41、51、補償回路43、53、磁気支持巻線電流制御回路135、137、電動機電流制御回路133は、DSP(Digital Signal Processor)やCPUにてディジタル演算処理が可能である。
次に、本発明の第1実施形態と同様に有限要素法により磁気支持力を求めた。
図21に解析結果である回転角度と支持力の関係を示す。磁気支持巻線103に流す電流は方形波である。このとき、支持力はスイッチング周波数(周期15°)に同期したリプルが生じている。また、x軸方向について力を指令しているにも関わらずこのFx成分に対し最大で31パーセント程度のFy成分が発生している。
しかしながら、この点については、回転子1をモータ軸方向に複数段積層させ、かつ隣接する各段の回転子を回転方向にそれぞれ角度をオフセット(スキュー)させるようにしても良い。このスキューを施した場合についての解析結果を図22に示す。図22を見て分かるように、回転子1にスキューを施すことにより、図21では最大で31パーセント程度のFy成分が発生していたものが、Fx成分に対し11パーセント程度のFy成分に抑えることができたことが分かる。
本発明の第1実施形態であるDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図 磁気支持力の発生原理(回転角度が22.5°の場合) 磁気支持力の発生原理(回転角度が0°の場合) 回転角度と磁気支持電流との関係を示すタイミングチャート 回転角度と電動機電流との関係を示すタイミングチャート DCブラシレス構造ベアリングレスモータの制御方法 解析モデルの諸元 有限要素法により解析した回転角度と支持力の関係を示す図 支持巻線に流す電流を正弦波としたときの回転角度と支持力の関係を示す図 実験したDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図 全体の制御システム実験モデル構成図 相選択の図 磁気浮上の図 ステップ応答の図 本発明の第2実施形態であるDCブラシレス構造ベアリングレスモータの横断面図 磁気支持力の発生原理(回転角度が0°の場合) 磁気支持力の発生原理(回転角度が30°の場合) 回転角度と磁気支持電流との関係を示すタイミングチャート 回転角度と電動機電流との関係を示すタイミングチャート DCブラシレス構造ベアリングレスモータの制御方法 有限要素法により解析した回転角度と支持力の関係を示す図 回転子にスキューを施したときの回転角度と支持力の関係を示す図
符号の説明
1、111 回転子
3 鉄心
5、105 永久磁石
7 固定子鉄心
9 固定子歯
9a 歯頭部
10、100 DCブラシレス構造ベアリングレスモータ
11 三相電動機巻線
13、103 磁気支持巻線
15 シャフト
21、23、121、123 ギャップ
31 回転角度センサ
33、133 電動機電流制御回路
34、134 電動機電流駆動回路
35、135、137 磁気支持巻線電流制御回路
36、136、138 磁気支持巻線電流駆動回路
37、47 ギャップセンサ
39 x方向変位指令値
41、51 減算器
43、53 補償回路
49 y方向変位指令値
61 回転角度センサ
63 X方向センサ、Y方向センサ
101 二相電動機巻線

Claims (9)

  1. 複数の固定子歯へ磁気支持巻線と電動機巻線とが対を成して捲回されるとともに、回転子の回転軸を挟んで対峙する磁気支持巻線同士が直列接続されて成る固定子と、複数の磁極を備えた回転子と、モータ駆動時に電動機巻線電流がゼロとなる電動機巻線と対を成す磁気支持巻線へ流す磁気支持巻線電流を制御して、前記磁気支持巻線が発生する支持磁束と前記回転子に設けられた磁極の界磁磁束とにより回転子の半径方向位置制御を行う磁気支持制御手段を備えたことを特徴とするベアリングレスモータ。
  2. 前記磁気支持制御手段は、前記回転子の回転角を検出する回転角検出手段と、磁気支持巻線電流が供給される磁気支持巻線を切り換える切換手段を備え、
    前記直列接続された磁気支持巻線の接続体が発する磁気力が直交する2組の磁気支持巻線接続体による相が少なくとも一つ構成され、
    前記回転子の回転とともに前記切換手段により相の切り換えが順次行われることを特徴とする請求項1に記載のベアリングレスモータ。
  3. 前記相の数が正の整数nのとき、前記固定子は4nのスロットを有すことを特徴とする請求項2に記載のベアリングレスモータ
  4. 前記複数の直列接続された磁気支持巻線の接続体は、直交2軸方向のそれぞれに力を発生する支持巻線の群として分離配置され、
    前記回転子の回転とともに前記切換手段によって群の切換並びに群内の磁気支持巻線の接続体の選択切り換えが順次行われることを特徴とする請求項に記載のベアリングレスモータ。
  5. 前記支持巻線群に含まれる各支持巻線において、直交2軸方向に一致しない巻線の巻数は直交2軸方向に一致する巻線の巻数よりも支持力リプルが減少するように少なく調整されていることを特徴とする請求項4に記載のベアリングレスモータ。
  6. 前記回転子は軸方向に複数段設けられ、段間において磁極が回転方向へスキューされていることを特徴とする請求項1乃至に記載のベアリングレスモータ。
  7. 前記固定子歯は、断面がT字状に形成され、歯頭部の全体が同一磁極面内に位置する間は磁気支持巻線に対する励磁が継続され、回転子の回転により歯頭部が異なる磁極に対峙する前に励磁される支持巻線が切り換えられることを特徴とする請求項1乃至請求項に記載のベアリングレスモータ。
  8. 前記磁気支持巻線に流す電流所定の回転角度進行する毎に方形波形状と電流値ゼロと交互に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のベアリングレスモータ。
  9. 複数の固定子歯へ磁気支持巻線と電動機巻線とが対を成して捲回されると共に、前記各磁気支持巻線が回転子の回転軸を挟んで対峙する巻線同士を直列接続されて成る固定子と、
    複数の磁極を有した回転子と、前記回転子の回転角度を検出する回転角度センサと、
    前記回転子の直交2軸方向の変位を検出する複数のギャップセンサと、
    前記回転角度センサによって検出された回転子の角度に対応する電動機巻線電流を調整する電動機電流調整手段と、
    前記回転角度センサの出力と前記ギャップセンサから出力された直交2軸方向の回転子の位置変位と変位指令値の偏差とから磁気支持巻線に流す電流を調整する磁気支持巻線電流調整手段とを備え、
    前記磁気支持巻線電流調整手段は、前記角度センサの出力に対応して前記電動機電流調整手段によって電流がゼロに制御される電動機巻線と対を成す前記磁気支持巻線を励磁制御し回転子の半径方向位置調整を行うことを特徴とするベアリングレスモータシステム。
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