JP4605331B2 - エピウエハの成長方法及び成長装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話などに使われるHEMT(高電子移動度トランジスタ;High Electron Mobility Transistor)やHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ;Heterojunction Bipolar Transistor)などの構造を持つエピウエハ(Epitaxial Wafer)の成長方法および成長装置に関する。特に、幾つもの薄膜がその上に積層され内部に隠れた薄膜の特性を測定できるようにした成長方法、装置を提供する。携帯電話用の出力トランジスタとしてSi−トランジスタも使用されるが、高速性が必要なのでGaAsのFET(Field Effect Transistor)、特に2次元電子ガス構造(2DEG;Two Dimensional Electron Gas)を有するHEMT(FETの一種)が使われる事が多い。GaAsは電子移動度が高いのでnチャンネルFETが有利なのである。
【0002】
携帯電話とその発する信号を受信する局の距離は常時変化している。現在の携帯電話は携帯電話側の送信信号の出力は一定であって、局の方でそれを受信して増幅率を変えて所望の強さの信号を得るようにしている。その場合FETであっても良い。しかし局との距離を知って送信信号の強度を携帯側で変化させるというように携帯電話の規格が統一される見込みである。そうなると送信信号パワーを増減させる必要がある。その場合GaAsのFET、HEMTではリニアリティが不十分である。
【0003】
そこでGaAsのバイポーラトランジスタが注目される。GaAsのバイポーラトランジスタはいまだ実績はなくて開発途上である。Siのバイポーラトランジスタのように、コレクタ層に不純物拡散することによってベース、エミッタを作ることはできない。GaAsの場合、コレクタ、ベース、エミッタなどは全てエピタキシャル成長によって作られる。1960年代にGaAs基板の上にAlGaAs層を載せたバイポーラトランジスタが精力的に研究された。が、AlGaAsが酸化しやすく実用化できずGaAs−バイポーラトランジスタの研究はなかなか実を結ぶことがなかった。しかし放棄されることなく研究は持続された。
【0004】
それが1990年代になって復活した。AlGaAs系のAlGaAsバイポーラトランジスタが携帯電話、光通信用トランジスタとして、ようやく実用化された。さらに、AlGaAs系に代えて、InGaP系のGaAsトランジスタが精力的に開発されている。これはAlを含まず酸化されにくいので、より一層特性が向上するはずである。今後、CDMA用として大きな市場拡大が期待されている。
これはpn接合の両側の材料が同一でないからヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor)と呼び、HBTと略称される。
【0005】
ここでは携帯電話用の出力トランジスタとして、GaAsのHEMTとHBTを取り上げるが、本発明はその他の材料、その他の構造のエピタキシャル成長膜の製造、検査にも利用することができる。
【0006】
HBTの場合、エピタキシャル成長ではコレクタ、ベース、エミッタと積層してしまうから、ベース層の特性を調べたいと思っても、中間のベース層を露呈できない。だからベース層の特性を検査できない。HEMTの場合、チャンネル層はその上のコンタクト層によって覆われるから、その特性を調べることができない。そのようにエピタキシャル成長の中間の層の特性を調べることができる方法を提供することが本発明の目的である。
【0007】
【従来の技術】
初めに用語をいくつか定義しよう。基板(ウエハ)をSとして、エピタキシャル成長層を下から順にR1、R2、…、Rmとする。mはエピタキシャル層の数である。m番目の層が最外層である。検査対象となる層がk番目だとする(k<m)。ウエハSの上に、薄膜層R1、R2、…、Rmがエピタキシャル成長したエピウエハを、(S;R1;R2;…;Rm)によって表現する。下からk番面の薄膜をk層と呼ぶ。
【0008】
一連のエピタキシャル成長において中間に埋もれてしまう層の特性を調べたい。その場合、従来はその層まで同じ条件でエピタキシャル成長し、そこでエピタキシャル成長を中止して基板を外部に取り出して最上層に露呈している対象層を検査するという方法がとられる。つまりk層まで成長させて装置から取り出して別の検査装置によって特性を調べる。
【0009】
これは自然な方法であろうが、対象層(k層)の上にエピタキシャル成長層(Rk+1;…;Rm)が載っていないのであるから、厳密にm層まで存在するエピタキシャルウエハでのk層の状態とは違う。それに1〜k層だけのエピタキシャル成長をしたウエハは実際には役に立たないから、そのエピタキシャル成長工程は全くデバイス作製に使えない。検査のためのエピタキシャル成長だったということになる。それでは材料、電力費なども無駄になってしまう。その他の従来技術について述べる。
【0010】
▲1▼ 佐々木幸男、長尾彰一、目黒健、乙木洋平「高周波デバイス用MOVPEウエーハの製造技術」、日立電線No.16(1997−1)p75−80
これは、MBE法に代えてMOVPE法によってGaAs−FETを作製したという報告である。従来は携帯電話用のGaAs−FET、HEMTはMBE法で作製されたが、それに比べ遜色ないものがMOVPE法によっても作られると述べている。FETを特徴付ける重要なパラメータとしてピンチオフ電圧(Vp)というものがある。これが所定の値でなければならないが、それはHEMTやFETにまで製作して初めて測定できる値である。Vpをエピウエハの段階で知ることができれば極めて好都合である。
【0011】
この論文はSI−GaAs基板、バッファ層の上にn−GaAsチャンネル層を半ばまで(ゲート電極の高さまで)堆積し、電極を付けてC−V法でキャリヤ濃度を測定し、キャリヤ濃度がn=1×1015cm−3になるときの印加電圧Vsがピンチオフ電圧Vpに等しくなる(Vs=Vp)という経験則を発見している。そのような経験則を使って、チャンネル層まで積んだ中途のエピウエハの測定によって、最終的なHEMTのピンチオフ電圧Vpを予言できると言っている。これはエピタキシャル成長の途中でウエハを装置から取り出してチャンネル層を露呈させてC−V測定して最終製品の特性を予言するものである。本発明の目的とするものとは反対と言ってよいかもしれない。
【0012】
▲2▼ 特願2000−090881「InGaP/GaAs−HBTの製造方法及び評価方法」は本出願人の先願である。これはGaAs基板の上に全ての層構造をエピタキシャル成長した後、外部にウエハを取り出して、最上層のエミッタ層を除去してその下のp−GaAsベース層を露呈させ、ベース層の少数キャリヤ寿命τ、厚み、キャリヤ濃度pを測定するものである。対象になるベース層は通常70nmであるが、測定可能にするために、300nm〜1000nmの厚いベース層としている。一旦エミッタ層まで成長させたあと、外部に取り出してエミッタ層を除き、その下のベース層を露出させている。成長条件は同じにしているからベース層の特性は、第1〜m層までを含むエピタキシャル層の中でのベース層と同じ筈である。これはより洗練された方法であるが、やはりそのエピタキシャル成長工程はデバイス作製には使えない。それに使われた材料、電力費が無駄になってしまう。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
基板(ウエハ)をSとして、エピタキシャル成長層を下から順にR1、R2、…、Rk、…、Rmとして、k層の特性を調べたい。一つの方法は、(S;R1;R2;…;Rk)というようにk層までの試験ウエハを作製することであろう。
先述の従来技術▲1▼は、エピ製品とは別構造のエピウエハ(S;R1;R2;…;Rk’;…;Rm)を一旦作製し、エッチングによって上層(Rm、…、Rk+1)を除去しRk’を露出させて(S;R1;R2;…;Rk’)ウエハとして、上部に現れたRk’の特性を試験すると述べている。
【0014】
しかし、これらの方法は別構造の試験ウエハを成長させるために余計に成長装置を稼働させる必要があり原料も余分に消費する。
なおかつ製品とは別途成長させるため製品と同じ特性をもっているとは必ずしも言えない。製品となるウエハとは別の機会に成長させるから、条件も同一にはならないからである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
薄膜成長装置の複数(n枚)のウエハを戴置できるサセプタに、一部のウエハを覆うことができるシャッターを設け、同時に複数のウエハに対して薄膜成長させ、一部の試験ウエハに対してはシャッターを随時閉じて薄膜成長を禁止し、残りの製品ウエハに対しては薄膜成長を続行する。試験ウエハの最上面に露呈した薄膜層の特性を測定することができる。
【0016】
或いは薄膜成長装置の1枚または複数のウエハを戴置できるサセプタに、1枚のウエハの一部領域を覆うことができるシャッターを設け、サセプタ上のウエハに薄膜成長させ、試験ウエハに対してはシャッターを随時閉じて被蓋領域の薄膜成長を禁止し、それ以外のウエハと試験ウエハの残りの露出領域に対しては薄膜成長を続行する。試験ウエハの被蓋領域の最上面に露呈した薄膜層の特性を測定することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[1.試験ウエハと製品ウエハが存在する場合]
ある特定のウエハ全体が試験のために用いられ、それ以外のウエハは製品となるという場合である。説明の便宜のために、試験ウエハと製品ウエハという概念を区別する。試験ウエハをWjによって表す。製品ウエハをViによって表す。
【0018】
s枚の試験ウエハW1、W2、W3、…、Wsと、q枚の製品ウエハV1、V2、…、Vqがあるとして、全部でn=s+qのウエハの上に薄膜成長を行う。試験ウエハに対しては全体を覆うことができる開閉自在のシャッターを設ける。s個のシャッターは同時に開閉する。
【0019】
同じ装置の同じサセプタの上にn枚のウエハがあるから同時に同じ条件で薄膜成長がなされる。ある時期に試験ウエハW1、W2、W3、…、Wsをシャッターによって覆い薄膜成長しないようにする。またある時期にシャッターを開き、それ以後の薄膜成長を再開する。
【0020】
試験ウエハの層構造について幾つもの態様がある。
(A) 試験ウエハWjについては1層からk層まで成長させk層で成長を止める。製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wj=(S;R1;R2;…;Rk)
Vi=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rm)
【0021】
(B) 試験ウエハWjについてはk層まで成長させずk+1層からm層まで成長させる。製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wj=(S;Rk+1;Rk+2;…;Rm)
Vi=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rm)
【0022】
(C) 試験ウエハWjについては1層からk層まで成長させ、ここで成長を中止し、h層で成長を再開する(k<h)。製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wj=(S;R1;R2;…;Rk;Rh;…Rm)
Vi=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh;…;Rm)
【0023】
(D) 試験ウエハWjについてはk層からh層まで成長させる(k<h)。製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wj=(S;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh)
Vi=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh;…;Rm)
その他にもいくつも組み合わせがあり、合計2−2の場合がある。本発明はそれらの組み合わせの全てを実現することができる。
【0024】
[2.1枚のウエハの中に試験領域と製品領域が混在する場合]
1枚のウエハの一部が試験のために用いられ、それ以外の領域は製品となるという場合である。説明の便宜のために、試験ウエハと製品ウエハという概念を区別する。試験ウエハをWjによって表す。製品ウエハをViによって表す。
【0025】
s枚の試験ウエハW1、W2、W3、…、Wsと、q枚の製品ウエハV1、V2、…、Vqがあるとして、全部でn=s+qのウエハの上に薄膜成長を行う。
【0026】
s枚の試験ウエハの一部を覆うことができるs個のシャッターを設ける。s個のシャッターは同時に開閉する。試験ウエハの表面積のうちシャッターによって覆われない部分を製品領域Wvといい、シャッターによって覆われる可能性ある部分を試験領域Wwと呼ぶ。同じ装置の同じサセプタの上にn枚のウエハがあるから同時に同じ条件で薄膜成長がなされる。ある時期に試験ウエハW1、W2、W3、…、Wsの試験領域Wwjをシャッターによって覆い薄膜成長しないようにする。またある時期にシャッターを開きそれ以後の薄膜成長を再開する。
これにも幾つもの態様がある。
【0027】
(A) 試験ウエハWjの試験領域Wwjについては1層からk層まで成長させk層で成長を止める。試験ウエハWjの製品領域Wvjと製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wwj=(S;R1;R2;…;Rk)
Vi、Wvj=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rm)
【0028】
(B) 試験ウエハWjの試験領域Wwjについてはk層まで成長させずk+1層からm層まで成長させる。試験ウエハWjの製品領域Wvjと製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wwj=(S;Rk+1;Rk+2;…;Rm)
Vi、Wvj=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rm)
【0029】
(C) 試験ウエハWjの試験領域Wwjについては1層からk層まで成長させここで成長を中止し、h層で成長を再開する(k<h)。試験ウエハWjの製品領域Wvjと製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wwj=(S;R1;R2;…;Rk;Rh;…Rm)
Vi、Wvj=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh;…;Rm)
【0030】
(D) 試験ウエハWjの試験領域Wwjについてはk層からh層まで成長させる(k<h)。試験ウエハWjの製品領域Wvjと製品ウエハViは全部の層1〜m層までの成長をする。
Wwj=(S;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh)
Vi、Wvj=(S;R1;R2;…;Rk;Rk+1;…;Rh−1;Rh;…;Rm)
【0031】
その他にもいくつも組み合わせがあり、合計2−2の場合がある。本発明はそれらの組み合わせの全てを実現することができる。
【0032】
[3.シャッター構造について]
幾つかのウエハだけ、或いはあるウエハの一部だけを選択遮蔽するシャッター構造について述べる。気相成長装置(MBE装置、OMVPE装置)の中に複雑な構造のシャッターを作るのは難しい。MBEの場合はサセプタが下向きになっている。ウエハを下向きにしてサセプタが回転する。サセプタを静止させておくこともできる。OMVPEの場合、サセプタが上向きになっており、ウエハを上向きに保持して回転する。装置の構造によってシャッターも異なる。シャッターに関していくつかの候補がある。
【0033】
(1) サセプタ面に立てた回転軸によって片持ち支持されるシャッター
回転軸によって片持ち支持される円盤状のシャッターをサセプタの上に設ける。サセプタは右廻り、左廻りするので、サセプタの左右の回転の方向によってシャッターを開閉する。これはサセプタの左右回転によって開閉するもので単純である。装置全体の改変を不要としてサセプタ構造だけを改良することによってシャッター開閉をすることができる。しかしそれだけに動作条件などに注意しなければならない点がある。
【0034】
(2) 外部から操作できる直線導入機によって操作するシャッター
チャンバの外部から操作する直線導入機の先端にシャッターを付けておき、直線往復運動によって特定のウエハだけを遮蔽・開放する。その場合サセプタは静止している必要がある。
【0035】
(3) サセプタの回転軸の内部を二重、三重の円筒構造にして、中心軸の上端にシャッターを付ける。中心軸を回転させて、特定のウエハの上においてシャッター開閉操作をする。
【0036】
[(1)のサセプタ回転によってシャッターを開閉する機構について]
図6はサセプタOの上に回転軸Kを立て、回転軸Kからアームを出してシャッターJを開閉することを説明するための図である。サセプタの中心をOとし、回転軸の中心をK、シャッターの中心をJとする。サセプタ中心Oと回転軸Kの距離をpとする。回転軸の中心Kとシャッターの中心Jの距離をqとする。pとqは定数である(p>q)。シャッターアームがKJになり、これが回転中心Kを中心にして揺動する。半径OKとシャッターアームKJのなす角度をシャッター揺動角θとして定義する。これは変数である。揺動角θの範囲は機構的に制限される。回転には抵抗がないものとし、その範囲内を自由に揺動できるものとする。するとサセプタの回転によってシャッターが動くことになる。
【0037】
シャッターの揺動中心をJとして、サセプタの中心(回転の中心)Oとの距離をOJ=rとする。rはシャッターの回転中心Oからの半径であるが、これは変数である。サセプタの回転角速度をΩとする。サセプタが定常回転(Ωが一定)する場合は、シャッターに生ずる力は遠心力だけで、それはMrΩに等しい。Mはシャッターの質量である。遠心力は必ず半径方向を向く外向きの力である。遠心力以外の力は発生しない。もちろんシャッター回転軸がシャッターに及ぼす反力が存在するがそれは遠心力に源泉がある。定常状態におけるサセプタの回転によって発生するシャッターへの力は遠心力だけなのである。遠心力は半径方向に物体を押し出す力である。ということはθの絶対値を最大にするように働く力だということである。定常状態ではθの絶対値は最大値をとる。もしもθの変域が正だけ、あるいは負だけだとすると、シャッターは一つの状態しかとりえない。
【0038】
遠心力がシャッターの2状態を安定に保持するのである。だから遠心力MrΩは二つの安定状態(開と閉)に於いてアームを異なる方向に押すのでなければならない。ということはシャッターの回転アームの変域は、図7に示すようにマイナスのある定角(−Φ)からプラスのある定角(+Φ)の間であるということである。サセプタの回転方向だけでシャッターが開閉するためには、
【0039】
(ア) サセプタが左廻り(反時計廻り)に廻るとき(Ωが正のとき)にシャッター回転角θはマイナスの境界値θ=−Φを取る。
【0040】
(イ) サセプタが右廻り(時計廻り)に廻るとき(Ωが負のとき)にシャッター回転角θはプラスの境界値θ=+Φを取る。
というようなことでなければならない。
【0041】
そのようなことは軸がサセプタの外周部にあって、アームが内向きであって、軸KよりもシャッターJが内側にあるから可能なのである。しかしそれは必要条件であって充分条件ではない。
【0042】
問題は、サセプタの回転方向が切り替わる短い過渡的な時間においてシャッターが−Φから+Φへ、或いは+Φから−Φへと切り替わるかどうかである。サセプタの反転の速度があまりに遅い場合は、所望のシャッターの運動は起こらないであろう。シャッターの揺動角はθであるが、シャッター中心Jとサセプタ中心Oを結ぶ半直線OJが、軸半径OKとなす角度をψとする。
【0043】
∠JKO=θ、∠KOJ=ψであるから、∠KJO=π−θ−ψである。正弦定理から
【0044】
【数1】
Figure 0004605331
【0045】
となる。シャッターの運動方程式を導出する。サセプタが定常でなく過渡期だとする。サセプタの角速度Ωは一定でなくて、その時間微分α=dΩ/dtが存在する。軸のあるK点の加速度は円周方向にpαである。軸K点と、シャッター中心Jはアームで結合しているから、シャッター中心Jにはそれと反対の方向に加速度−pαが発生する。これによって−Mpαの力が掛かる。
【0046】
シャッター中心Jにはもう一つの力(遠心力)が半径方向に生じている。これはMrΩであって、半径方向外側に向かう力である。シャッター中心Jは円弧FHEしか動く事ができない。先ほどの過渡期力−Mpαの円弧に対する余弦成分はcosθである。遠心力の円弧に対する余弦成分はcos(π/2−ψ−θ)である。円弧FHEに沿ったシャッターの運動方程式は
【0047】
【数2】
Figure 0004605331
【0048】
となる。右辺第1項は(1)によって次のように単純化される。
【0049】
rcos(π/2−ψ−θ)=rΩsin(ψ+θ)=psinθ (3)
【0050】
【数3】
Figure 0004605331
【0051】
これは過渡期の方程式である。定常状態のときは、dΩ/dt=0、Ω=Ωであり、θが+Φ、−Φにあるときはシャッター軸から右辺第1項を打ち消すモーメント−MpΩsinθが与えられるから右辺は0になり、θが一定値(+Φ、−Φ)を取るのである。Ωはサセプタの角速度である。
【0052】
サセプタが反転するときどのような動きをするのか?これがわからないが、サセプタを駆動するモータや減速器、サセプタの慣性などからその運動は一義的に決まる。Ωの過渡的運動が決まれば運動方程式は解けるはずである。線形でないから解析的には解けない。数値解析法によって厳密解を求めることもできる。しかし、ここでは近似解を求めてより先へ進もうと思う。
【0053】
たとえば負のΩ(時計廻り)から正のΩ(反時計廻り)に変わる反転の瞬間をとらえるのだから、sinθはsinΦにある。そこでsinθをs(定数)とおき、cosθ=1と近似する。Ωが時間に正比例して立ち上がる(加速度が一定)とすると、回転角加速度をb(定数)として、dΩ/dt=bである。
【0054】
【数4】
Figure 0004605331
【0055】
これは積分できる。初期条件を、t=0、dθ/dt=0、θ=θとすると、
【0056】
【数5】
Figure 0004605331
【0057】
Ωが負から正への転回の場合は、θが正でsも正、bも正である。θをtで微分して極小値をとるtを求めると、
【0058】
=(3/bs)1/2 (7)
【0059】
これに対するθの極小値θmimは、
【0060】
【数6】
Figure 0004605331
【0061】
となる。これがもしも正であれば、シャッターは元の位置に戻り状態変化が起こらないということである。だからこれは負でなければならない。
【0062】
【数7】
Figure 0004605331
【0063】
s=sinθであるから、第1近似では、
【0064】
sinθ<(3p/4q)1/2 (10)
【0065】
となる。これを越えるような角度であると、サセプタが反転しても、シャッターは動かないということである。だから、2状態のθ=+Φ、−Φは共に、
【0066】
sinΦ<(3p/4q)1/2 (11)
【0067】
sinΦ<(3p/4q)1/2 (12)
【0068】
でなければならない。この範囲の初期角度であれば、サセプタの反転のときにシャッターアームが反転する可能性がある。実際に反転するかどうかは、式(10)〜(12)だけからはわからない。さらに必要条件がある。θが0になった時に、角速度がθとは反対になっていなければならない。
【0069】
(6)式右辺の第2項は寄与が小さいので無視すると、θが0になる時刻tは(アームKJが半径OK上にくるのは)
【0070】
=(2qθ/pb)1/2 (13)
【0071】
となる。このときのサセプタの角速度Ωは
【0072】
Ω=bt=(2qbθ/p)1/2 (14)
【0073】
であるが、これが定常状態の角速度Ω以下でなければならない。そうでないとθ=0になる前にサセプタが定常回転になり、遠心力以外の力が喪失しアームの回転力がなくなるからである。
【0074】
(2qbθ/p)1/2<Ω (15)
【0075】
【数8】
Figure 0004605331
【0076】
これが、反転時の角加速度bの上限を決める式である。サセプタの定常回転が速い(Ωが大きい)か、初期角度θが小さい場合、bの取り得る範囲は広い。しかしサセプタの定常回転が遅い(Ωが小さい)か、初期角度θが大きい場合、bの取り得る範囲は狭い。サセプタをゆっくりと反転しなくてはいけないということである。そのような条件が満足されるなら、
【0077】
(ア)サセプタを右回転(時計回り)に回転した時(Ω=−Ω)は、
シャッター位置 θ=+Φ になり、
【0078】
(イ)サセプタを左回転(反時計回り)に回転した時(Ω=+Ω)は、
シャッター位置 θ=−Φ になる。
【0079】
【実施例】
[実施例1:HEMT構造エピタキシャルウエハ(図1、図4)]
(3枚のHEMT製品ウエハ(2DEG構造)と1枚の試験ウエハ(2DEG構造)を同時にOMVPE法でエピタキシャル成長)
HEMT製品ウエハVの構造を図4(a)に示す。HEMT試験ウエハWの構造を図4(b)に示す。これらは上から順に、
【0080】
Figure 0004605331
【0081】
よりなる層構造を持っている。製品ウエハVi(i=1、2、3)は9層の薄膜をGaAs基板のうえに成長させたものである。試験ウエハは(W1)は8層の薄膜をGaAs基板の上に成長させたものである。製品ウエハの最上層のn−GaAs100nmを除外したものが試験ウエハである。
【0082】
HEMT(High Electron Mobility Transistor)というのは2次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas;2DEG)を利用したFETである。non−というのはノンドープということである。non−InGaAsがチャンネル層でありここを電子が移動するゲート電圧によってチャネル幅が変化してドレイン電流が変化するのはFETと同じである。通常のFETと違うのは、チャンネル層自体が不純物を持っておりキャリヤを与えるのではなくて、チャンネル層は不純物を持たず、その他の隣接層からキャリヤを得るということである。
【0083】
InGaAsチャンネル層の上のn−AlGaAs(10nm)と下のn−AlGaAs(10nm)からキャリヤ(電子)を受ける。このキャリヤがInGaAs層を流れる。InGaAsはノンドープなので結晶性がよく散乱が少ないから電子移動度が高い。AlGaAsよりInGaAsの方がバンドギャップが狭いから電子がInGaAsに溜まる。InGaAs中を殆ど散乱しないで高速で移動し電子移動度の高速性を生かすことができる。だからHigh Electron Mobilityというのである。電子を供与するn−AlGaAsは従来チャンネル層の上にしかなかったのに図4のものは電子供与n−AlGaAsがチャンネル層の上下にあるからダブルドープHEMTと呼ぶ。電子数が多いから大電流を流すことができる。高速パワートランジスタとして適する。
【0084】
n−AlGaAsの上下のnon−AlGaAsは結晶性を高めるために介装される層である。ドーパントを有する層はどうしても結晶性が悪くなるからノンドープ層を作り結晶性を回復させる。
【0085】
一番上のn−GaAsコンタクト層は導電性が高くてドレイン電極、ソース電極がオーミック接合される。電極接合のために100nmと厚くなっている。オーミック接合の際の合金化処理によってソース、ドレイン電極とnon−InGaAs層が低抵抗接続される。non−AlGaAsの途中までエッチング除去され、そこにゲート電極を付ける。
【0086】
製品ウエハ最上層のn−GaAs層が100nmもあって厚いから、それより下の、n−AlGaAs、non−InGaAs、n−AlGaAsなどよりなる活性層のキャリヤ濃度、移動度などを測定できない。
【0087】
そこで最上層の厚いn−GaAs100nmを除いたものを試験ウエハとしている。これがないからnon−AlGaAsの上に電極を取り付けることによって活性層(non−InGaAs、n−AlGaAs)でのキャリヤ濃度や移動度を測定できる。本発明の目的は活性層での電子パラメータを測定することにあるから、そのような試験ウエハができるというのはまことに好都合のことである。
【0088】
そのような層構造をもつ製品ウエハ(Vi(i=1、2、3))3枚と試験ウエハ(W1)1枚を図1のサセプタに載せて、気相成長装置の内部で同時に成長させた。
【0089】
図1に示すようにサセプタは4つの窪みを有する。サセプタは中心(O)の廻りを回転することができる。サセプタの周辺部にシャッターが取り付けられる。サセプタ周辺部にシャッター軸をたて、アームを軸からのばしその先に円盤状のシャッターを付けたものである。シャッターとアームは一体となって、軸の廻りを自由に揺動することができる。機構的に揺動角θの範囲は決まっており、図7のように正の方向に+Φ、負の方向に−Φまで揺動することができる。サセプタの回転方向によって揺動角θは、+Φ、−Φの何れかの角度をとり、その位置で安定する。いずれかが「閉」であり、「開」である。ウエハを露呈する状態が「開」であり、ウエハを隠ぺいする状態が「閉」である。
【0090】
トレーは、成長の初期段階では図1のB方向(時計廻り;右廻り)に回転しており、シャッターは「開」の状態を維持する。基板側から順次各層の成長を進めコンタクト層直下のnon−AlGaAs:50nm層の成長が終了した時点で、トレーの回転を図1のBからA方向へ反転することにより、シャッターを「閉」の状態に切り替える。
【0091】
しかる後に残るコンタクト層(n−GaAs;100nm)を成長し、成長を完了する。OMVPE成長炉より取り出したテスト構造エピは、HALL測定によって、Ns(シートキャリヤ濃度)、μ(移動度)をさらにCV(電圧−容量)特性測定によりVp(ピンチオフ電圧)など活性層の状態を確認するために必要な測定を自由に行うことができる。
なおかつ製品構造エピとテスト構造エピは同時に成長しているので、テスト構造で測定された特性は、製品構造のエピの特性と完全に一致する。
【0092】
[実施例2:HBT構造エピタキシャルウエハ(図2、図5(a)、図5(c)) ]
(3枚のHBT製品ウエハと1枚の試験ウエハを同時にOMVPE法でエピタキシャル成長)
図2の構成において、サセプタには4つのウエハ穴があり、3つの同等のシャッターが設けられる。アームを回転自在に保持するシャッター軸がサセプタに立てられ、シャッターがアームの先に固定されている。そのようなサセプタを含む薄膜成長装置により図5(a)に示すHBT製品ウエハ3枚と図5(c)に示すHBT試験ウエハ1枚を同時に成長させた。実施例2においては、前例と異なり、試験ウエハはシャッターによって覆われず、製品ウエハが途中でシャッターによって覆われるようになっている。
【0093】
Figure 0004605331
【0094】
製品ウエハ(a)と試験ウエハ(c)は二つの点で相違する。一つはp−GaAsベース層の厚みが違う(試験ウエハ500nm、製品ウエハ70nm)ということである。もう一つはベース層の下に、試験ウエハの場合、non−AlGaAs:100nmを追加している、ということである。
【0095】
炭素ドープGaAsよりなるベース層は、製品ウエハ(a)の場合70nmの薄いものである。ベース(p−GaAs)はその厚みがデバイスの応答速度に強く影響する。ベースは薄い方がよいので製品ウエハについては70nmと極めて薄い。しかし試験ウエハでは500nmと厚くなっている。それはベース層の正孔密度p、電子寿命τを測定するためである。ベース層は炭素ドープによってp型としているが水素が入ると結晶性が悪くなるし正孔密度pが低下し、電子寿命τも短くなる。それがトランジスタの応答速度、線形性などを劣化させる。だからpやτを実際に測定して品質を評価する必要がある。
【0096】
しかし製品ウエハのように70nmで薄いと、ホール測定によって正孔濃度pを測定するのが難しいということがある。ホール(Hall)測定は、磁場を掛け、電流を流して、それによって発生する起電力を求めることによってキャリヤ濃度を知るから、薄い層の場合は測定しにくいのである。
【0097】
しかし薄いベース層においてもっと問題なのは、電子(少数キャリヤ;Minority carrier)の寿命τ(lifetime)を測定することが不可能だということである。フォトルミネセンスによって電子のライフタイムを測定する。GaAsのバンドギャップ1.4eVより高いエネルギーの光を出すレ−ザ光を当てる。レ−ザ光によって正孔と電子の対ができるが電子はやがてルミネセンス(蛍光)を出して正孔と再結合し消滅する。蛍光の減衰が寿命に対応する。蛍光強度の変化の速さから電子寿命がわかる。製品ウエハのベース層は70nmで薄いから、レ−ザを当てるとその下の層まで届き下の層からのフォトルミネセンスも拾ってしまう。だからベース層の電子寿命測定ができない。それを避けるために500nmもの厚いベース層をもつ試験ウエハを成長させる。これぐらい厚いと下の層からのフォトルミネセンスはない。以上で試験ウエハのベース層が厚い理由を述べた。
【0098】
試験ウエハ(c)においてベース層の下のnon−AlGaAs:100nmはエッチング停止層である。GaAs/AlGaAsのエッチングレートが0に近いエッチング液でウエハをエッチングすると、上層のGaAsだけが除去される。ベース層の一部をレジストによって覆ってエッチングすると、レジストによって覆われない部分は下地のAlGaAsが露呈する。レジストによって覆われた部分はp−GaAsが残り段差が生じる。段差を顕微鏡で見てベース層の厚みを測定する。ベース層厚みを正確に測定するためのAlGaAsを入れるのである。
【0099】
そのような事は先述の先行技術▲2▼特願2000−090881に詳しく述べている。これに示された先行技術試験ウエハ(b)は
【0100】
HBT試験ウエハ(b)
n−InGaAs:50nm
n−GaAs:100nm
n−InGaP:50nm
p−GaAs:500nm
non−AlGaAs:100nm
non−GaAs:100nm
半絶縁性GaAs基板
【0101】
という構造をもつ。本発明の試験ウエハ(c)はエッチング停止層non−AlGaAsの下に製品ウエハと同じように、n−GaAs500nmとn−GaAs200nmをもち、▲2▼の試験ウエハは、non−GaAs100nmをもつ。その点で、本発明の試験ウエハ(c)と先行技術▲2▼の試験ウエハ(b)が相違する。
【0102】
本発明で成長させる図5(c)のHBTテスト構造が引用した先行技術▲2▼(特願2000−090881)でのHBTテスト構造(図5(b))と異なる理由を説明する。
【0103】
先行技術▲2▼(特願2000ー090881)の試験ウエハは、HBT製品ウエハでは薄すぎ(70nm)て時間分解PL(フォトルミネセンス)測定ができないp−GaAsベース層を厚く(500nm)し、p−GaAsベース層の厚みを段差測定で計測するためエッチング停止層としてnon−AlGaAs:100nm層を追加している。
先行技術▲2▼では、テスト構造エピをHBT製品構造エピとは別個に成長させるので、測定と関連のない層(n−GaAs500nmとn−GaAs200nm)は成長時間と原料を節約するために省略している。
【0104】
しかし本発明ではHBT製品構造(a)エピとHBTテスト構造(c)エピは同時に成長するので、先行技術▲2▼の試験ウエハの特徴をHBT製品構造に追加した構造(c)で必要な測定を全て行うことができる。
【0105】
また、製品構造エピと同時に成長しているので、得られた測定結果は、エピ層の厚みなどを変更した項目を除いて製品構造エピの特性と一致する。
【0106】
さて、エピタキシャル成長の過程を述べる。サセプタ(トレー)は成長の初期段階では図2のB方向(時計廻り、右廻り)に回転しており、3個備えられたシャッターはいずれも「開」の状態で維持される。
【0107】
半絶縁性GaAs基板側から順次各層の成長を進める。n−GaAs:200nm、n−GaAs500nmの薄膜成長がなされる。基板側より2層目(n−GaAs:500nm)の成長を終了した時点で、トレーの回転を図2のB方向(右廻り、時計廻り)からA方向(左廻り、反時計廻り)に反転する。慣性によって3枚のシャッターが反時計廻りに回転し、製品ウエハを覆うようになる。つまり3個のシャッターが「閉」の状態に切り替えられた。
【0108】
テスト構造の1枚の試験ウエハはシャッターがないからシャッターによって覆われない。薄膜成長が可能な状態である。そこで試験ウエハに、エッチング停止層となるnon−AlGaAs100nm層を成長させる。さらに、HBT製品構造のベース層70nmとHBTテスト構造の厚いベース層500nmとの厚さの差に相当する430nmのベース層の成長を進める。
【0109】
試験ウエハのp−GaAsベース層厚みが430nmに到達したとき、再び、トレーの回転をB方向(右廻り、時計廻り)に反転する。慣性でシャッターが「開」になる。製品ウエハ3枚が再び露呈する。製品ウエハには70nmのベース層を新規に成長させ、試験ウエハには70nmのベース層を追加成長させる。その後はシャッターは開いたままであり、試験ウエハにも製品ウエハにも、残るエミッタ3層(n−InGaP:50nm、n−GaAs:100nm、n−InGaAs:50nm)を成長させて薄膜形成を完了する。
【0110】
OMVPE成長炉より取り出した本発明による図5(c)のテスト構造エピについて、図5(b)を引用した先行特許出願▲2▼(特願2000−090881)と同様に以下の測定を行った。
【0111】
まずエピ表面側よりn−InGaAs:50nm層とn−GaAs:100nm層をエッチングによって除去した。この際、InGaAsやGaAs層は溶解するが、InGaPは溶解しないエッチング液、エッチング条件を用いるのが望ましい。
【0112】
n−InGaP:50nm層が表面に露出した状態で時間分解PL(フォトルミネセンス)法により厚いベース(p−GaAs:500nm層)の結晶性を評価した。
【0113】
本実施例においては、ベース層のライフタイムは300psec(ピコ秒=10−12sec)と良好な結晶性を有していることが確認できた。
【0114】
続いて表面に露出しているn−InGaAs:50nm層を除去し、HALL測定をし、さらに部分的にp−GaAs:500nm層を除去して、残った部分を表面形状測定装置を用いて段差を測ることにより厚いベース層(p−GaAs:500nm層)の厚みを測定した。
【0115】
各層のエッチングを行う際に、n−InGaP:500nm層を除去するには、InGaPを溶かすがGaAsを溶かさないエッチャントを用いて、また厚いベース層(p−GaAs:500nm)を除去するには、GaAsを溶かすがAlGaAsを溶かさないエッチング液、エッチング条件を用いる事が望ましい。
【0116】
測定の結果、厚いp−GaAs:500nm層の厚み及びキャリヤ濃度は設計通りに成長していたことが確認できた。
【0117】
同時に成長させた図5(a)のHBT製品構造エピは製品として、デバイス製造メーカーに出荷した(あるいは同社内の下工程に進めた)。
尚エッチング停止層としては、InGaPを用いても良い。
【0118】
[実施例3:HEMT構造エピタキシャルウエハ(図3)]
(OMVPE法で1枚のHEMTエピを成長、エピの半分はHEMT製品構造、残りの半分はテスト構造(2DEG構造)エピ)
【0119】
本発明は、シャッターによって一部ウエハを覆い薄膜成長の一部の過程を禁止し、残りのウエハについては成長続行するというものであるから、ウエハの全体を試験ウエハ、製品ウエハに区別するだけでなく、他の可能性もある。
【0120】
つまりウエハ1枚の内、一部を試験用に、一部を製品用にあてることもできる。実施例3はそのようなものである。図3にその場合のサセプタの構造を示す。サセプタの中心に一つのウエハ窪みがあり、ここに1枚の試験・製品ウエハが装填されている。シャッターは半月型のものであり、閉状態ではウエハの右半分を覆う。開状態ではウエハ全体が露呈する。ウエハの右半分が試験ウエハに、左半分が製品ウエハになる。
【0121】
実施例1と全く同一でHEMT構造のエピタキシャルウエハである。エピ構造は図4に示すとおり、試験部分は図4の(b)に、製品部分は図4(a)に示す。
【0122】
図1の実施例1と同様に、成長初期の段階では、図3のB方向(右廻り、時計廻り)にサセプタを回転させてシャッターを「開」の状態にする。その状態で、バッファ層:500nm、non−AlGaAs:150nm、n−AlGaAs:10nm、non−AlGaAs:3nm、non−InGaAs:10nm、non−AlGaAs:3nm、n−AlGaAs:10nm、non−AlGaAs:50nmの薄膜を成長させる。
【0123】
コンタクト層(n−GaAs:100nm)直下のnon−AlGaAs:50nm層の成長を終了した段階で、サセプタの回転を図3のBからA方向(左廻り、反時計廻り)に切り替えて、シャッターを「閉」にする。その状態でウエハの(図3で)左半分のみにコンタクト層(n−GaAs:100nm層)を成長する。
【0124】
エピウエハの右半分の試験構造部分で実施例1と同等の測定を行った。実施例1と同様の結果が得られた。残りの左半分の製品構造部分は製品製造のために用いた。
【0125】
そうでなくて、エピウエハの半分のテスト構造部分で実施例1と同等の測定を行い、残る半分の製品構造部分は、別の破壊検査を含む測定を行うようにし、製品エピはサセプタの別の箇所に置いた別のウエハの上に成長してもよい。
【0126】
【発明の効果】
本発明は、製品ウエハと試験ウエハを同一の薄膜成長装置の中に並べて薄膜成長させ、試験ウエハあるいは製品ウエハをシャッターで覆い一部の薄膜成長工程を省いたものと、省かないウエハを製造し、試験ウエハの特性を測定することによって同一の条件で製造した製品ウエハの特性を調べる事ができるようにした。製品と同じ条件で薄膜成長させた試験ウエハを調べることができるし、製品ウエハそのものでは測定しにくい特性をも測るようにすることもできる。
【0127】
本発明の要点は、一度に成長するエピの一部をシャッターで覆う事によって、
【0128】
(1)測定の障害になる、あるいは測定が困難になる層を取り除く、
【0129】
(2)もしくは厚みを減ずること、
【0130】
(3)あるいは逆に測定の助けになる層を加える、
【0131】
(4)もしくは厚みを増すことによって、
【0132】
製品との一部の特性を一致させたテストエピウエハ(試験ウエハ)を同時に成長させ、テストウエハの特性を測定し、製品ウエハの特性を詳細厳密に調べる事を可能にしたことにある。
【0133】
実施例ではOMVPE法を用いてGaAs基板を用いたエピ成長を例に記したが、本発明は以下の様に他の分野にも適用が可能である。
【0134】
InP基板を用いた半導体レ−ザや受光素子、もちろんGaAs基板やGaN基板を用いた半導体レ−ザや受光素子、トランジスタのエピウエハ成長にも適用可能である。HEMTについても実施例ではDHEMT(ダブルドープHEMT)構造を例に取ったが、通常のシングルドープや他の構造にも適用できることはもちろんである。
【0135】
またOMVPE法以外、例えばMBE法やVPE法など、シャッターの開閉により、エピ成長を中断できる製造方法に、適用することができる。シャッター開閉の機構も図1、図2、図3の(過渡的慣性による)方法には限られない。
【0136】
OMVPE法では特性を均一にするためウエハを収容したトレーを回転させる場合が多いが、回転させる必要のない製法であれば、回転導入機、直線導入機、磁気結合機構など、成長炉チャンバの外側から直接に機械的に開閉することができるシャッターを備えることができる。
【0137】
実施例3で示した通り、成長するエピウエハの枚数も、複数枚か、1枚かを問わない。
【0138】
実施例3のように成長するエピウエハが1枚の場合、その試験領域面積、製品領域面積の配分については、検査に必要な面積を勘案して自由に設計すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 4枚のウエハを同時に薄膜成長させ、その内1枚のウエハだけ成長を一部中断できるようなシャッターを設けたサセプタの平面図。
【図2】 4枚のウエハを同時に薄膜成長させ、その内3枚のウエハだけ成長を一部中断できるようなシャッターを設けたサセプタの平面図。
【図3】 1枚のウエハの内、一部を試験領域とし、一部を製品領域として、シャッターによって試験領域の薄膜成長を一部中断できるようにしたシャッターを設けたサセプタの平面図。
【図4】 本発明の実施例1において成長させるGaAs−HEMTの層構造を示す図。(a)はHEMT製品エピウエハの層構造図。(b)は試験ウエハの層構造図。
【図5】 本発明の実施例2において成長させるGaAs−HBTの層構造を示す図。(a)はGaAs−HBT製品ウエハの層構造図。(b)は本出願人による先行技術▲2▼によって示されたGaAs−HBT試験ウエハの層構造図。(c)は本発明の実施例2において用いるGaAs−HBT試験ウエハの層構造図。
【図6】 サセプタの上の一点Kに中心軸をもつシャッターJが、サセプタの回転とともにどのような角度変化するかを説明するための図。Oがサセプタの中心、Kがシャッター軸の中心、Jがシャッターの中心、FJEはシャッター中心の描く軌跡である円弧。pはシャッター軸中心とサセプタ中心までの距離、qはシャッターアームの実効長さ。rはサセプタ中心Oとシャッター中心Jの間の距離で変数。θはシャッターアームの揺動角である。
【図7】 シャッターアームの揺動角θの許容範囲を示す図。θは−Φ≦θ≦+Φの範囲を動く事ができる。範囲の限定は機構的な手段による。
【符号の説明】
O サセプタの中心
K シャッター軸の中心
J シャッターの中心
FHE シャッターの中心Jがその上を動く円弧
p サセプタ中心Oとシャッター軸中心Kの距離(定数)
q シャッター軸中心Kとシャッター中心Jの距離(定数)
r シャッター中心Jとサセプタ中心Oの距離(変数)
θ シャッターアームの揺動角
ψ サセプタ中心Oとシャッター中心Jを結ぶ線分が、シャッター軸への半径OKとなす角度
+Φ シャッターアーム揺動角θの上限
−Φ シャッターアーム揺動角θの下限

Claims (7)

  1. サセプタに複数枚或いは1枚の基板ウエハを取り付け、基板ウエハの上に多層薄膜を同時にエピタキシャル成長させるエピウエハの成長方法であって、前記多層薄膜成長中に一部のウエハ或いはウエハの一部を開閉可能なシャッターで覆う事により多層薄膜中の一部の層を成長させないか、成長させても成長層の厚みを減じるようにし、あるいは前記多層薄膜成長中にシャッターを開くことによって余分な層を成長させるか、一部の層の厚みを増すようにして、試験ウエハと製品ウエハ或いは試験領域と製品領域を作製することを特徴とするエピウエハの成長方法。
  2. エピウエハが基板の上に電子供給層、チャンネル層、コンタクト層を成長させたHEMT構造ウエハであって、多数枚のエピウエハを同時に成長させ、一部のウエハあるいはウエハの一部についてはコンタクト層を成長させないことを特徴とする請求項1に記載のエピウエハの成長方法。
  3. HEMT構造ウエハからコンタクト層を省略した試験ウエハの特性をCV(容量)測定、およびHALL測定によって評価し、試験ウエハと同時に成長させた製品となるHEMT製品ウエハの性能を確認することを特徴とする請求項2に記載のエピウエハの成長方法。
  4. エピウエハが基板の上にコレクタ層、ベース層、エミッタ層を成長させたHBT構造ウエハであって、多数枚のエピウエハを同時に成長させ、一部のウエハあるいはウエハの一部についてはベース層を製品構造よりも厚く成長させることを特徴とする請求項1に記載のエピウエハの成長方法。
  5. ベース層直下にエッチング停止層を余分に成長させることを特徴とする請求項4に記載のエピウエハの成長方法。
  6. 厚くしたベース層をPL(フォトルミネセンス)法もしくは時間分解PL法(フォトルミネセンス)法によって少数キャリヤ寿命を測定し、選択エッチングによってベース層厚みを測定し、HALL測定によってキャリヤ濃度を評価し、製品となるHBT構造ウエハの性能を確認することを特徴とする請求項5に記載のエピウエハの成長方法。
  7. サセプタに複数枚或いは1枚の基板ウエハを取り付け、基板ウエハの上に多層薄膜を同時にエピタキシャル成長させるエピウエハの成長装置であって、一部のウエハあるいはウエハの一部を覆うことができ薄膜成長中に開閉可能な開口部を持たない シャッターをサセプタに回転可能あるいは進退自在に備え、サセプタの回転もしくは並進運動による慣性によってシャッターが開閉するようにし、薄膜成長中にシャッターを開閉することによって層構造の一部が異なる試験ウエハと製品ウエハ或いは層構造の一部が異なる試験領域と製品領域を作製するようにしたことを特徴とするエピウエハの成長装置。
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