図1は、本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態の主要構成を模式的に示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この例の画像形成装置1においては、非磁性一成分系負帯電トナーを用いて画像形成が行われる。もちろん、正帯電トナーを用いて画像形成を行うこともできる。以下の説明では、画像形成装置1は負帯電トナーを用いるものとして説明するが、正帯電トナーを用いる場合には、以下の説明の各部材の帯電の電位を逆極性とすればよい。また、トナーは、トナー母粒子とこのトナー母粒子に外添される外添剤とを有しているが、以下の説明では、トナー母粒子を単にトナーという。
図1に示すように、この例の画像形成装置1は静電潜像およびトナー像が形成される感光体2を備えている。この感光体2は感光体ドラムからなり、従来公知の感光体ドラムと同様に円筒状の金属素管の外周面に所定膜厚の感光層が形成されている。この感光体2における金属素管には、例えばアルミニウム等の導電性の管が用いられるとともに、感光層には、従来公知の有機感光体が使用される。
感光体2の周囲には、ローラ帯電器である第1帯電器3、クリ−ニングローラ4、スコロトロン帯電器である第2帯電器5、露光ユニット6、現像ユニット7、および転写ユニット8が、それぞれこれらの順に感光体2の回転方向D2(図1では、反時計回り)に沿って配設されている。
第1帯電器3は、回転可能に設けられた第1ブラシローラ3aを有している。この第1ブラシローラ3aは多数のブラシ毛3bを有しており、これらのブラシ毛3bが感光体2の表面に近接または当接して配設されている。第1ブラシローラ3aは、感光体2の回転と順回転(感光体2とブラシ毛3bとの当接部で感光体2の回転の接線方向の速度の向きとブラシ毛3bの回転の接線方向の速度の向きとが同じ向き)または感光体2の回転と逆回転(感光体2の前述の速度の向きとブラシ毛3bの前述の速度の向きとが逆向き)で回転するようにされている。
第1ブラシローラ3aは従来から用いられている公知の帯電ブラシローラを用いることができる。第1ブラシローラ3aの一例として、ブラシ毛3bは、材料が6ナイロン、繊度が220T/96F、密度240kf/inch2、原糸抵抗が7.1LogΩ、パイル長が5mmであり、また、第1ブラシローラ3aの感光体2の軸方向に沿う長さは300mmある。この第1ブラシローラ3aには東英産業株式会社製のブラシローラを用いることができる。
第1ブラシローラ3aには、感光体2の表面電位に対して放電開始電圧を超えかつ比較的強い正負いずれかの極性の直流(DC)のローラ帯電バイアスV1が第1帯電バイアス電源31より印加される。これにより、感光体2と第1ブラシローラ3aとの間に電界が形成され、転写工程終了後の感光体2の表面がローラ帯電バイアスV1と同極性の比較的強い電位に帯電される。また、感光体2の表面に残留する転写残りトナーとこのトナーから遊離した外添剤は、それらの帯電極性が正負不揃いである(負帯電トナーを用いているので、ほとんどの転写残りトナーと外添剤は0V(未帯電)または正帯電である)。しかし、これらの転写残りトナーおよび外添剤のうち、ローラ帯電バイアスV1と逆極性に比較的強く帯電されている転写残りトナーおよび外添剤は、第1ブラシローラ3aに静電気的に引き寄せられてブラシ毛3bに付着する。
また、第1ブラシローラ3aによって除去されない感光体2上の転写残りトナーおよび外添剤は、感光体2の帯電と同時に0Vないし感光体2の帯電極性と同極性に帯電される。このとき、これらの転写残りトナーと外添剤は正負のいずれの極性に帯電されていても、それらの電位の絶対値が小さいため確実に0V(未帯電)ないし感光体2の帯電極性と同極性に帯電される。なお、第1帯電器3には、ブラシローラ3a以外に、帯電ゴムローラ等の他のローラ帯電器を用いることができる。
更に、第1帯電器3は、第1ブラシローラ3aのブラシ毛3bに当接するクリーニングブレード3cを有している。クリーニングブレード3cは、ブラシ毛3bに付着する転写残りトナーおよび外添剤を除去し回収する。このクリーニングブレード3cには、従来周知慣用のクリーニングブレードを用いることができる。
クリーニングローラ4は、回転可能に設けられた第2ブラシローラ4aを有している。この第2ブラシローラ4aは多数のブラシ毛4bを有しており、これらのブラシ毛4bが感光体2の表面に当接して配設されている。第2ブラシローラ4aは、感光体2の回転と順回転(感光体2とブラシ毛4bとの当接部で感光体2の回転の接線方向の速度の向きとブラシ毛4bの回転の接線方向の速度の向きとが同じ向き)または感光体2の回転と逆回転(感光体2の前述の速度の向きとブラシ毛4bの前述の速度の向きとが逆向き)で回転するようにされている。この第2ブラシローラ4aにも、前述の第1ブラシローラ3aと同様のブラシローラを用いることができる。
この第2ブラシローラ4aには、第1帯電器3で帯電されたトナーと外添剤とを引き寄せる直流(DC)のクリーニングバイアスVbr2が印加される。その場合、クリーニングバイアスVbr2は、感光体2と第1ブラシローラ3aとの間に形成される電界とは逆方向の電界が感光体2と第2ブラシローラ4aとの間に形成されるように設定される。これにより、ローラ帯電器3を通過した感光体2上の転写残りトナーと外添剤のうち、第1ブラシローラ3aに引き寄せられた転写残りトナーと外添剤とは逆極性に比較的強く帯電された転写残りトナーと外添剤が静電気的に第2ブラシローラ4aの方へ引き寄せられる。そして、引き寄せられたトナーと外添剤はブラシ毛4bに付着する。なお、クリーニングローラ4には、ブラシローラ以外に導電性ゴムローラ等の他の導電性のクリーニングローラを用いることができる。
更に、クリーニングローラ4は、第2ブラシローラ4aのブラシ毛4bに当接するクリーニングブレード4cを有している。クリーニングブレード4cは、ブラシ毛4bに付着する転写残りトナーおよび外添剤を除去し回収する。このクリーニングブレード4cには、従来周知慣用のクリーニングブレードを用いることができる。
第2帯電器5は感光体2の表面に接触しないものであり、この第2帯電器5には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤ5bには正のワイヤ電流Iwが流されるとともに、グリッド5aには負の直流(DC)のグリッド帯電バイアスVgが印加される。第2帯電器5によりトナーと逆極性(正極性)のコロナ放電で感光体2が帯電されることで、感光体2の表面の電位が下げられて均され、感光体表面電位が画像形成時に設定される電位Voに設定される。このとき、第2ブラシローラ4aを通過した転写残りトナーおよび外添剤も、トナーと逆極性(正極性)の電荷が付与されることにより該極性に帯電される。
露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLにより感光体22表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。より具体的には、図2に示すように、画像信号を生成するホストコンピュータなどの外部装置からインタフェース112を介して画像信号が与えられると、この画像信号が画像処理ユニット111によって所定の処理を施される。この画像信号は、装置全体の動作を制御するCPU101を介して露光ユニット6に受け渡される。露光ユニット6は画像信号に応じて感光体2表面に光ビームLを照射して露光し、露光された感光体2の表面領域(露光部)では電荷が中和されて、露光されなかった表面領域(非露光部)とは異なる表面電位VLに変化する。こうして感光体2上に画像信号に対応した静電潜像が形成される。
こうして形成された静電潜像に対して現像ユニット7からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この例の画像形成装置1の現像ユニット7は、現像ローラ7aが感光体2に接触しない非接触現像方式の現像器である。現像ローラ7aは感光体2と所定のギャップを隔てて対向配置されており、図1の矢印方向D7に回転駆動される。現像ローラ7aには現像バイアス電源71から所定の現像バイアスVbが印加される。この現像ユニット7の構造については後に詳しく説明するが、従来周知慣用の非接触現像器も用いることができる。
また、転写ユニット8は、表面にトナー像を担持可能な無端状ベルトであり図1の矢印方向D8に周回移動する中間転写ベルト8aを有しており、感光体2に近接配置されたバックアップローラ8bによって、中間転写ベルト8aは感光体2の表面に当接されている。さらに、中間転写ベルト8aには転写バイアス電源81からトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスVt1が印加されており、その作用により感光体2上で現像されたトナー像が中間転写ベルト8aに転写(一次転写)される。中間転写ベルト8aに転写されたトナー像はさらに図示しない記録紙に二次転写され、定着ユニット9によって記録紙上に永久定着されて出力される。
なお、以下の説明においては、感光体2と第1帯電器3との対向位置を第1帯電位置CP1、感光体2と第2帯電器5との対向位置を第2帯電位置CP2、感光体2表面に露光ユニット6からの光ビームLが照射される位置を露光位置EP、感光体2と現像ローラ7aとの対向位置を現像位置DP、感光体2と中間転写ベルト8aとの当接位置を転写位置TPと称する。
次に、上記のように構成された画像形成装置に適用されるトナーについて説明する。この実施形態の画像形成装置では、負極性に帯電させた非磁性一成分系のトナーを用いて静電潜像の現像を行う。以下では、トナーの本来の極性である負極性を「正規極性」、これとは反対の正極性を「逆極性」と称することとする。
図3はこの実施形態において各部に付与する電位の関係を示す図である。なお、以下に各部の電位や電流の数値の一例を示すが、本発明の実施の態様はこれらの数値に限定されるものではない:
第1帯電バイアスV1=−1300V;
クリーニングバイアスVbr2=−500V;
スコロトロングリッド電圧Vg=−500V;
チャージワイヤ電流Iw=+200μA;
現像バイアスVbの加重平均電圧Vave=−200V;
現像バイアスVbの振幅(ピーク間電圧)Vpp=1300V;
転写バイアスVt1=+400V。
現像バイアスVbの交流成分Vacの繰り返し周期Tcのうち、電位が正側に振れている期間を符号Tp、負側に振れている期間を符号Tnにより表すとともに、現像バイアスVbの波形デューティWDを次式:
WD=Tp/(Tp+Tn)=Tp/Tc
により定義する。図3に示すように、この実施形態ではTp>Tnとなるように、つまり波形デューティWDが50%より大きくなるように、バイアス波形が定められている。これは、トナーが感光体2から現像ローラ7aに向かって飛翔する期間がその逆の期間よりも長くなるようにすることで、感光体2の非露光部、つまり本来トナーを付着させるべきでない領域に付着したトナーを現像ローラ7a側へ効率よく引き戻すためである。
図4はトナーの帯電量分布を示す図である。また、図5はトナーの帯電状態と現像特性との関連を示す図である。この実施形態において使用するトナーは負帯電トナーであるが、図4に示すように、トナーの帯電特性にはばらつきがあり、帯電量分布は概ね正規分布となる。中には全く帯電しなかったり、逆極性(この場合は正極性)に帯電するトナーも含まれる。帯電量分布における中央値Q0からの偏差が大きいトナーについて、その帯電状態を以下のように分類する:
(1)正規極性に帯電し、しかも帯電量の高い正規高帯電トナー;
(2)正規極性に帯電し、帯電量が低いまたはほとんど帯電しない正規低帯電トナー;
(3)逆極性に帯電し、帯電量が低いまたはほとんど帯電しない逆低帯電トナー;
(4)逆極性に帯電し、しかも帯電量の高い逆高帯電トナー。
なお、横軸における「高帯電」および「低帯電」の数値範囲は便宜的かつ相対的なものであり、この例に限定されるものではない。これらのトナーが現像特性にどのように寄与するかを実験的に評価し、その結果を示したのが図5である。現像特性の評価項目としては、ドット再現性、ベタ再現性、飛散および地カブリの4項目を用いた。
ここで、「ドット再現性」とは、孤立ドットや細線などの面積の小さな画像をいかに高いコントラストで再現できるかを示す指標である。正規極性に帯電したトナーのうち、帯電量の高いもの(正規高帯電トナー)は感光体2上の静電潜像の電位プロファイルに対して敏感であるため、このような孤立ドットや細線を高いコントラストで形成することができる。これに対して、正規極性に帯電したトナーでも帯電量の低いもの(正規低帯電トナー)は、細かい電位の変化を濃度の違いとして表現するのにはあまり向かない。実際に、帯電量の低いトナーのみで画像形成を行うと細線画像がぼやけてしまうことが知られている。なお逆極性に帯電したトナーはドット再現性には無関係である。すなわち、ドット再現性については正規高帯電トナーが最も優れており、正規低帯電トナーがこれに次ぐ。
次に、「ベタ再現性」とは、上記とは逆にベタ画像などの比較的面積の広い画像をいかに濃度ムラなく再現できるかを示す指標である。前記したように正規高帯電トナーは感光体2上の電位変化に敏感であるため、僅かな電位の変動が濃度の違いとなって現れ濃度ムラを生じることがある。一方、感光体2上の電位変化に対する感度のより低い正規低帯電トナーではこのような濃度ムラは現れにくい。ここでも、逆極性に帯電したトナーはベタ再現性には無関係である。すなわち、ベタ再現性については正規低帯電トナーが最も優れており、正規高帯電トナーがこれに次ぐ。
また、「飛散」とは、現像ローラ7aに現像バイアスVbを印加した際に発生する周囲へのトナーの飛散の程度を指標するものである。現像ローラ7aに現像バイアスVbとしての交番電圧を印加することにより、現像ローラ7aからは正規極性に帯電したトナー、逆極性に帯電したトナーのいずれもが飛翔する。いずれの帯電極性でも、帯電量の高いトナーは感光体2または現像ローラ7aへの付着力や電界による拘束を強く受けるので周囲への飛散は少ない。一方、帯電量の少ないトナーはこれらの付着力や拘束力があまり強くないため、電界の拘束から逃れて飛散しやすい。すなわち、トナー飛散については、正規高帯電トナーおよび逆高帯電トナーが優れており(つまり飛散が少ない)、正規低帯電トナーおよび逆低帯電トナーではこれより劣る。
また、「地カブリ」とは、本来トナーが付着すべきでない感光体2の非露光部にトナーが付着してしまう現象である。逆極性に帯電したトナーは正規極性の高電位が付与された感光体2の非露光部に強く引き寄せられるので、非露光部には逆極性トナーが多く付着することになる。ただし、こうして感光体2に付着した逆極性トナーは、中間転写ベルト8aに正の転写バイアスVt1が与えられているため、転写位置TPにおいて中間転写ベルト8aに転写される可能性は低い。
一方、正規極性トナーのうち帯電量の低いものは、非露光部への付着力も弱く、交番電界により現像ローラ7a側に引き戻すことも可能であるので、さほど問題とならない。これに対して、正規高帯電トナーでは、いったん感光体2の非露光部に付着するとこれを引き離すのに強い電界が必要となるため、現像位置DP通過後に感光体2側に残留してしまう可能性がある。このトナーは正規極性に帯電しているため、転写位置TPにおいて中間転写ベルト8aに転写されてしまい、最終的な画像に残存して画質を低下させてしまう。
カブリ現象については、本来の帯電極性(この実施形態では負極性)とは反対の極性に帯電したトナーや帯電量のごく小さいトナーが非露光部に付着することによって生じるものと一般には認識されているが、正規高帯電トナーもカブリ量に大きな影響を及ぼしていることがわかる。上記より、地カブリに関しては、正規低帯電トナーが最も優れている。逆極性トナーではカブリ量は多いが中間転写ベルト8aには転写されにくい。一方、正規高帯電トナーは絶対的なカブリ量は少ないものの最終的な画像に残存してしまうという問題がある。
以上より、孤立ドットや細線を主とする画像からベタ画像まで種々の画像を高品質で形成するためには正規高帯電トナーおよび正規低帯電トナーの双方を適度に含んでいることが望ましい一方、現像ローラ7aから周囲へのトナー飛散を抑えるためには正規極性、逆極性とも低帯電のトナーの挙動を制御することが必要である。さらに、非露光部への地カブリを抑制するためには、正規高帯電トナーの挙動を制御することが必要となる。
この実施形態では、現像ローラ7a表面に1層を超えるトナー層を担持させることによって、正規高帯電トナーおよび正規低帯電トナーを積極的に現像位置DPに搬送するようにしている。現像ローラ7aに1層を超えるトナー層を担持させたとき、現像ローラ7a表面では、現像ローラ7a表面に直接接触するトナー(以下、「接触トナー」という)と、
このような接触トナーには接触しているものの現像ローラ7a表面には直接接触していない非接触トナーとが存在することになる。
なお、本願発明者らの研究によれば、接触トナーとなるトナーは一般的に帯電量が高く、非接触トナーとなるトナーは相対的に帯電量が低い傾向にある。これは、高い帯電量を有するトナーの方が現像ローラへより強い力で引き寄せられる反面、このようなトナーによって帯電量の低いトナーは現像ローラ表面近傍から遠い位置へ押しやられるためと考えられる。実際に、現像ローラ表面が金属など導電性材料で形成されている場合には接触トナーと非接触トナーとの挙動の差が顕著であることが確認されている。これは、導電性の高い材料と帯電量の高いトナーとの間で強い鏡像力が作用するためと考えられる。
このように、この実施形態では、現像ローラ7a表面に1層を超えるトナー層を担持させることにより、正規高帯電トナーおよび正規低帯電トナーの双方を現像位置DPに搬送し、これらを現像動作に寄与させることで、十分な現像濃度と高い画像品質とを得ることができる。また、この実施形態では、次のようにして低帯電トナーの飛散を抑制している。
図6はこの実施形態における感光体上でのトナー等の挙動を模式的に示す図である。現像位置DPを通過した感光体2表面には、帯電量や極性の異なるトナー粒子や外添剤粒子が付着しており、このうち正規極性(負極性)に帯電した粒子は逆極性(正極性)の転写バイアスVt1の作用によって中間転写ベルト8aに転写される。したがって、図6の感光体2の回転方向D2において転写位置TPよりも下流側では、感光体2表面には未帯電または逆帯電のトナーや外添剤が残留している。
第1帯電器3にはトナーの帯電極性と同極性、すなわち正規極性である比較的大きな負電位V1が与えられ、第1帯電位置CP1において感光体2を負電位に帯電させる。またクリーニングローラ4にはより小さな負電位Vbr2が与えられており、感光体2表面に付着した、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電したトナー粒子や外添剤粒子等の付着物をブラシ毛4bに付着させて除去する。このとき、トナー粒子は比較的粒子径が大きいため除去効率は高いが、より小さな外添剤粒子の一部がブラシ毛4bをすり抜けて感光体2に残留することがある。また帯電量が極めて低い粒子についても除去しきれない場合がある。その結果、第2帯電位置CP2の手前では、感光体2に残留付着する粒子は未帯電または逆極性であっても帯電量の低いものが主体となる。
未帯電または帯電量の低いトナーや外添剤粒子は、逆極性の電荷を受け取りやすい環境に置くことで容易に逆極性に帯電することが本願発明者らの実験により明らかになっている。この実施形態では第2帯電位置CP2で逆極性のコロナ放電を発生させているため、感光体2に付着している未帯電または低帯電の粒子が逆極性の電荷を受け取り逆極性に帯電する。その結果、第2帯電位置CP2よりも下流側では、感光体2に付着しているのはほとんどが逆極性に帯電した粒子となる。つまり、この実施形態では、現像位置DPに到達する前の感光体2表面が正規極性に帯電されるとともに、その表面に逆極性に帯電した付着物(以下、「逆極性付着物」という)が分散された状態となっている。
そして、感光体2は露光位置EPにおいて光ビームLを照射されて静電潜像を形成され、該静電潜像は現像位置DPへ搬送される。現像位置DPでは帯電量や帯電極性が種々に異なるトナー粒子や外添剤粒子が飛翔するが、帯電量の高いものはその静電的付着力の強さによって、現像ローラ7aまたは感光体2表面に選択的に付着する。ここで、正規高帯電トナーは主として感光体2表面のうち低電位の露光部に移動して静電潜像を現像するか現像ローラ7a表面に残留する。また、逆高帯電トナーは主として感光体2表面のうち負電位の高い非露光部に付着するか現像ローラ7a表面に残留する。
一方、帯電量の低い粒子は静電的な付着力が弱いため、その付着先が明確には定まらない。そのため、現像ローラ7a、感光体2のいずれへも付着せず周囲へ飛散してしまうことがあり得る。しかしながらこの実施形態では、現像位置DPに到達する感光体2表面に逆極性付着物が分散された状態となっており、この逆極性付着物の周囲には、正規極性に帯電した粒子を引き付ける局所的な電界が形成されている。そのため、逆極性付着物は、現像位置DPにおいて飛翔する粒子のうち正規極性に帯電した粒子、特に帯電量の低いものを引き寄せてトラップ(捕捉)する機能を有する。こうして感光体2上にトラップされた低帯電量の粒子はもはや飛翔しないので、周囲への飛散は防止される。
なお、感光体2表面のうち露光部には正規極性に帯電したトナーが大量に付着する。このため、露光部では逆極性付着物の電荷は打ち消されてしまうと考えられる。またトラップされたトナーの有無は画像品質にほとんど影響しない。その一方、非露光部では正規高帯電トナーがあまり付着しないので上記したトラップ効果がより高いと考えられるが、トラップされたトナーが中間転写ベルト8aに転写されてしまうと地カブリとなって画像を汚してしまう。特に問題となるのは、非露光部に付着したトナーであって正規極性に帯電したものである。
この問題に対し、この実施形態では、比較的高い逆極性の転写バイアスVt1(先の数値例では+400V)を中間転写ベルト8aに与えるという解決策を採っている。すなわち、中間転写ベルト8aに高い逆極性電位を与えることにより、感光体2の回転方向D2において転写位置TPの直前位置TP0では、正規極性の電位を有する感光体2表面と逆極性電位を有する中間転写ベルト8aとの電位差が大きくなる。図3から明らかなように、特に感光体2の非露光部と中間転写ベルト8aとの電位差が大きい。この実施形態では、感光体2の露光部と中間転写ベルト8aとの間で放電が生じず(放電限界を超えず)、感光体2の非露光部と中間転写ベルト8aとの間で放電が生じる(放電限界を超える)ような値に転写バイアスVt1を設定している。
このようにすると、転写位置TPの手前で感光体2の非露光部と中間転写ベルト8aとの間で放電が生じる。この放電は、非露光部にトラップされた正規帯電トナー(および外添剤)に逆極性の電荷を付与しその帯電極性を逆極性に反転させるように作用する。すなわち、この放電によって、非露光部にトラップされた正規帯電トナーは逆極性トナーに転換する。これにより、トラップされたトナーが転写位置TPにおいて中間転写ベルト8aに転写されることがより確実に防止される。なお、放電によって感光体2の非露光部の電位も低下するので、転写位置TPを通過した後に感光体2表面で放電が起こることは防止される。
ただし、感光体2の非露光部に付着した正規高帯電トナーについては、その極性を反転させるだけの逆極性電荷を与えることは容易でない。そこで、このようなトナーについては非露光部に付着させないようにすることがより重要である。この実施形態では、現像バイアスVbの振幅Vppを適切に設定することによってこれを実現している。なお、以下では現像ローラ7a表面においてトナーを飛翔させるために最低限必要な電界強度を「飛翔開始電界強度」と称する。
図7はトナー粒子径と飛翔開始電界強度との関係を測定した結果を示す図である。より具体的には、図7(a)はトナー粒子径に対する飛翔開始電界強度の変化を示す図であり、図7(b)は飛翔開始電界強度の実測値の例を示す図である。図7(a)において実線で示す曲線Aは、現像ローラ7a表面にトナー1層以下のトナー層を担持させた場合の飛翔開始電界強度(以下、「単層トナー飛翔開始電界強度」という)の実測結果である。トナーの粒子径が小さいほど飛翔開始電界強度が高くなることが示されている。これは、トナー粒子径が小さいほど質量当たりの表面積や帯電量が大きくなるため、より現像ローラ7a表面への付着力が大きくなるためと考えられる。
また、破線で示す曲線Bおよび一点鎖線で示す曲線Cは、現像ローラ7a表面にトナー2層からなるトナー層を担持させた場合の実測結果である。現像ローラ7aの表面に2層、より厳密には1層を超えるトナー層を担持させた場合には、全てのトナーが現像ローラ7a表面に接触するのではなく、一部のトナー(非接触トナー)は現像ローラ7a表面に接触するトナー(接触トナー)に接触することによって間接的に現像ローラ7aに担持されることとなる。本願発明者らの知見によれば、これら2種類のトナーの振る舞いの差異が現像動作の特性に大きく寄与することがわかっている。
図7(a)に示す曲線Bは、接触トナーについての飛翔開始電界強度(以下、「接触トナー飛翔開始電界強度」という)を示している。また、曲線Cは、非接触トナーについての飛翔開始電界強度(以下、「非接触トナー飛翔開始電界強度」という)を示している。
図7(a)の曲線BおよびCに示すように、トナー層が2層の場合でもトナー粒子径が小さいほど飛翔開始電界強度が高くなっている。そして、接触トナー飛翔開始電界強度(曲線B)は単層トナー飛翔開始電界強度(曲線A)よりも小さく、また非接触トナー飛翔開始電界強度(曲線C)は接触トナー飛翔開始電界強度(曲線B)よりもさらに小さい。なお、以下では、体積平均粒径がある値Dtであるトナーにおける単層トナー飛翔開始電界強度、接触トナー飛翔開始電界強度および非接触トナー飛翔開始電界強度の値を、それぞれ符号E0、E1およびE2により表す。
実測数値例として、体積平均粒径Dtが4.5μmであるトナーを用いて測定したときの、単層トナー飛翔開始電界強度E0、接触トナー飛翔開始電界強度E1および非接触トナー飛翔開始電界強度E2の実測結果を図7(b)に示す。このような結果となる理由については、次のように説明することができる。
前記したように、トナーは現像ローラ7a表面に直接接触しているため強く拘束されている。したがって、強い電界E0を加えなければトナーは飛翔しない。これに対して、現像ローラ表面に担持されたトナー層がトナー1層分を超えているとき、現像ローラ表面に直接接触しない非接触トナーに対しては現像ローラ表面からの拘束力が弱い。したがって、非接触トナーが現像ローラから飛翔するために必要な電界強度(非接触トナー飛翔開始電界強度)E2は、トナー層がトナー1層であるときの飛翔開始電界強度E0より大幅に低くて済む。
一方、現像ローラ表面に担持されたトナー層がトナー1層分を超えている場合であっても現像ローラ表面に直接接触しているトナー(接触トナー)は、トナー層がトナー1層であるときのトナーと同様の拘束力を現像ローラから受けている。したがって、単純には単層トナー飛翔開始電界強度E0と同等の電界を加えなければ接触トナーは飛翔しないと考えられる。
しかしながらこの場合、もともとトナー層が1層である場合と異なり、現像ローラ表面近傍にはより弱い電界で飛翔する非接触トナーが存在している。こうして飛翔するトナーが交番電界により往復移動しながら加速された結果十分な運動エネルギーを得て、現像ローラ上の接触トナーに衝突してこれをはじき出し、結果として接触トナーを飛翔させることがある。つまり、非接触トナーがより弱い電界で飛翔開始することに起因して、単層トナー飛翔開始電界強度E0よりも弱い電界でも接触トナーが飛翔しうる。このため、接触トナー飛翔開始電界強度E1が、単層トナー飛翔開始電界強度E0よりも小さくなるものと考えられる。
このことを利用して、現像ローラ7a表面のうち感光体2の非露光部に対向する領域から接触トナーを飛翔させないようにすることが可能である。すなわち、感光体2の非露光部と現像ローラ7aとが対向する位置において、現像ローラ7aに印加される現像バイアスVbにより形成されるトナー飛翔電界の電界強度が、非接触トナーを飛翔させるには十分であるが接触トナーを飛翔させるには不十分な値となるようにすればよい。
図8は現像ローラ表面近傍における電界強度分布を示す図である。図8のグラフにおける横軸は、現像ローラ7aの回転軸方向から現像位置DPを見たときの現像ローラ7aの表面位置を表している。すなわち、互いに略円筒形状をなす感光体2と現像ローラ7aとが対向配置されてなる現像位置DPにおいて両者が最も接近している位置を原点Oとして、現像ローラ7aの周面上の各位置を該原点Oからの距離により表している。また縦軸は各位置における電界(トナー飛翔電界)の極性が現像ローラ7a表面からトナーを飛翔させる極性となるときの当該電界の電界強度を示している。
感光体2と現像ローラ7aとの電位差を各位置におけるギャップの大きさで除した値がその位置における電界強度であるが、前述のように感光体2表面では露光部と非露光部とで表面電位が異なるため、現像ローラ7a表面各位置における電界強度は、当該位置が感光体2上の露光部と対向しているのか、非露光部と対向しているのかによって異なってくる。図3から明らかなように、現像ローラ7a表面のうち感光体2の露光部と対向する位置では、非露光部と対向する位置よりも電界強度が高い。また、感光体2と現像ローラ7aとが最近接する位置で電界強度は最高となり、この最近接位置から離れるにつれて電界強度は低下する。図8において実線で示す曲線Aは、感光体2上の露光部と対向する位置における電界(以下、「露光部電界」という)の電界強度を示している。また、破線で示す曲線Bは、感光体2上の非露光部と対向する位置における電界(以下、「非露光部電界」という)の電界強度を示している。
この実施形態では、図8に曲線Aで示す露光部電界の最近接ギャップ位置における電界強度が接触トナー飛翔開始電界強度E1よりも高くなるようにする。また、曲線Bで示す非露光部電界の最近接ギャップ位置における電界強度が、接触トナー飛翔開始電界強度E1よりも低く、かつ非接触トナー飛翔開始電界強度E2よりも高くなるように、現像バイアスVbの振幅Vppを設定している。こうすると、感光体2の非露光部と現像ローラ7aとの間では、現像ローラ7aに担持された非接触トナーは飛翔するが、接触トナーは飛翔しない。このようにすることで、接触トナーが感光体2の非露光部に付着することが抑制され、地カブリ防止に効果的である。
その一方、露光部電界が接触トナー飛翔開始電界強度E1を上回るようにすると、露光部では非接触トナー、接触トナーの双方が飛翔するため、十分な現像濃度を得ることができる。また、前記したように非接触トナーは感光体上の電位プロファイルに対する再現性が低く、逆に帯電量の高い接触トナーは電位プロファイルに対する再現性が高いため小さな電位の変動が濃度変動として現れることがあるが、両トナーが混在した状態で現像を行わせることにより、このような欠点が相互に補完されて優れた画像品質を得ることができる。すなわち、細線画像については高い画像コントラストを得られ、また広い面積を有する画像については濃度ムラの少ない画像を得ることができる。
この場合において、接触トナーを飛翔させるために必要な電界強度E1は単層トナー飛翔開始電界強度E0よりも低いので、現像ギャップに発生させる電界の強度も低く抑えることができる。これによって、装置内外へのトナー飛散を抑制することができ、さらに現像ギャップにおける放電の発生をも防止することができる。
次に、上記のような現像動作を実現するために好適な現像ユニット7の構造について説明する。これまで述べてきたように、この実施形態は、現像ローラ表面に1層を超えるトナーを担持させる、厳密には接触トナーおよび非接触トナーの双方を担持させるとともに、感光体2上の付着物に逆極性の電荷を与えることで正規低帯電トナーをトラップさせることにより、現像濃度の向上と、地カブリおよびトナー飛散の抑制とを両立させようとするものである。しかしながら、非接触トナーに作用する現像ローラへの拘束力が弱いことから、現像ローラの回転に起因して現像ローラ表面から離脱し装置内外へ飛散してしまうおそれがある。
特に、従来から広く用いられている、表面をブラスト加工して表面積を増大させたタイプのローラ(ブラストローラ)のように現像ローラ表面の全面にトナーを担持する構造のものでこの問題が顕著であり、このような構造の現像ローラに1層を超えるトナーを担持させてもトナー飛散が多く実用にならない。また、プロセス速度向上の要請に応えるために現像ローラの回転数を高くした場合にも、現像ローラ表面から離脱したトナーの飛散が増大する。
現像ローラ表面からのトナーの離脱はこれまで主に回転によってトナーに作用する遠心力に起因するものと考えられているが、本願発明者らの研究によれば、現像ローラの回転に伴って生じる現像ローラ表面近傍の気流の影響が大きいことが明らかになった。特に粒子径の小さなトナーでは、質量が小さいため遠心力が小さいにもかかわらず現像ローラ表面からの離脱は大粒径のトナーの場合よりも甚だしいという事実が確認されており、これは現像ローラの回転による風圧をトナーが受けることによって引き起こされていると考えられる。そこで、この実施形態では、現像ユニット7の構造を次のようなものとすることでこの問題を解決している。
図9はこの実施形態における現像ユニットの構造を示す断面図である。この現像ユニット7では、その内部に一成分トナーTを収容するハウジング72に供給ローラ7bおよび現像ローラ7aが軸着されており、現像ローラ7aが感光体2と現像位置DPにおいて所定のギャップを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ7a、7bが本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。供給ローラ7bは例えば発泡ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料により円筒状に形成されている。また、現像ローラ7aは、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金などの導電性材料の金属素管により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ7a、7bが接触しながら回転することでトナーが現像ローラ7aの表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ7a表面に形成される。
ハウジング72の内部空間は隔壁72aによって第1室721および第2室722に仕切られている。供給ローラ7bおよび現像ローラ7aはともに第2室722に設けられており、これらのローラの回転に伴って第2室722内のトナーが流動し攪拌されながら現像ローラ7aの表面に供給される。
また、この現像ユニット7では、現像ローラ7aの表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード76が配置されている。この規制ブレード76は、ステンレスやリン青銅などの弾性を有する板状部材761と、板状部材761の先端部に取り付けられたシリコンゴムやウレタンゴムなどの樹脂部材からなる弾性部材762とで構成されている。この板状部材761の後端部はハウジング72に固着されており、図9の矢印に示す現像ローラ7aの回転方向D7において、板状部材761の先端部に取り付けられた弾性部材762が板状部材761の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材762が現像ローラ7a表面に弾性的に当接することで規制ニップを形成し、現像ローラ7aの表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。
さらに、ハウジング72には、現像ローラ7aの回転方向D7において感光体2との対向位置(現像位置DP)よりも下流側で現像ローラ7a表面に圧接されたシール部材77が設けられている。シール部材77は、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ素樹脂などの柔軟性を有する材料により形成され、現像ローラ7aの回転軸に平行な方向Xに沿って延びる帯状のフィルムであり、長手方向Xに直交する短手方向における一方端部がハウジング72に固着されるとともに、他方端部が現像ローラ7a表面に当接されている。他方端部は現像ローラ7aの回転方向D7における下流側に向かうように、いわゆるトレイル方向に現像ローラ7aに当接されており、感光体2との対向位置を通過した現像ローラ7a表面に残留しているトナーをハウジング72内に案内するともに、ハウジング内のトナーが外部へ漏れ出すのを防止している。
図10は現像ローラおよびその表面の部分拡大図を示す図である。その表面が導電性材料の金属素管で形成される現像ローラ7aは略円筒形のローラ状に形成されており、その長手方向の両端にはローラと同軸にシャフト740が設けられており、該シャフト740が現像器本体により軸支されて現像ローラ7a全体が回転自在となっている。現像ローラ7a表面のうちその中央部74aには、図10の部分拡大図(点線円内)に示すように、規則的に配置された複数の凸部741と、それらの凸部741を取り囲む凹部742とが設けられている。
複数の凸部741のそれぞれは、図10紙面の手前側に向けて突出しており、各凸部741の頂面は、現像ローラ7aの回転軸と同軸である単一の円筒面(包絡円筒面)の一部をそれぞれ成している。また、凹部742は凸部741の周りを網目状に取り囲む連続した溝となっており、凹部742全体も現像ローラ7aの回転軸と同軸かつ凸部の成す円筒面とは異なる1つの円筒面を成している。そして、凸部741とそれを取り囲む凹部742との間は緩やかな斜面743によって繋がれている。すなわち、該斜面743は現像ローラ7aの半径方向外向き(図11において上方)、つまり現像ローラ7aの回転軸から遠ざかる方向の成分を有する。このような構造の現像ローラ7aについては、例えば特開2007−140080号公報に記載のいわゆる転造加工を用いた製造方法により製造することができる。これにより、現像ローラ7aの円筒面に規則的かつ均一な凹凸部を形成することができる。そのため、得られる現像ローラ7aは、その円筒面に均一かつ最適な量のトナーを担持させることができ、また、現像ローラ7aの円筒面でのトナーの転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。その結果、トナーの局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。また、型を用いて凹凸部を形成するため、ブラスト加工により得られた一般的な現像ローラと異なり、得られる凹凸部はその凸部の先端の幅を比較的大きくすることができる。このような凹凸部は優れた機械的強度を有する。特に、型により押圧された部位は機械的強度が向上するので、得られる凹凸部は、切削加工のような処理で得られたものと比しても優れた機械的強度を有する。このような凹凸部を有する現像ローラ7aは、優れた耐久性を発揮することができる。また、凹凸部の凸部の先端の幅が比較的大きいと、磨耗しても形状変化が少ないので、現像特性が急激に低下することも防止して、長期にわたり優れた現像特性を発揮することができる。
図11は現像ローラ表面の構造の詳細を示す断面図である。図11(a)に示すように、現像ローラ7a表面を断面方向から見ると、周方向外側に向けて突出した凸部741と、これに比べると後退した凹部742とが交互に配列されている。また凸部741と凹部742とが斜面743により繋がれている。凸部741頂面の寸法および凹部742の幅は例えば100μm程度とすることができるがこれに限定されない。一方、凸部741と凹部742との高低差、言い換えれば凸部741を取り囲む溝状の凹部742の深さについては、使用トナーの体積平均粒径Daveよりも大きな値、より好ましくは体積平均粒径Dave2倍以上とする。
こうすることで、図11(b)に示すように、凸部742頂面を結ぶ線(破線で示す)よりも外部に突出することなく凹部742に2層以上のトナーを担持させることが可能となる。図11(b)において、白丸印は現像ローラ7a表面に直接接触している接触トナーT1を示している。また、ハッチングを付した丸印は現像ローラ7a表面には直接接触せずに凹部742に担持されている非接触トナーT2を示している。
また、図11(b)において破線で示した凸部742頂面を結ぶ線は、各凸部741の頂面を1つの円筒面の一部と考えたときの包絡円筒面上の曲線である。凹部742に担持されるトナーがこの線を越えないということは、現像ローラ7a表面においてこの包絡円筒面よりも外側にトナーが露出することがないということを意味する。したがって、現像ローラ7aの回転に起因して現像ローラ7a表面に強い気流が発生したとしても、現像ローラ7a表面から後退した位置に担持されているトナーにはその影響が及ばず、現像ローラへの拘束力の弱い非接触トナーであっても離脱、飛翔することは防止されている。
現像ローラ7a表面に図11(b)に示すようにトナーを担持させるためには、図11(c)に示すように、現像ローラ回転方向D7における規制ブレード76の弾性部材762の上流側エッジ762aを現像ローラ7aの凸部741に当接させる、いわゆるエッジ規制によって凸部741へのトナー付着を規制する。これとともに、弾性部材762とし適度な弾性を有する材料を選ぶことによって、凹部742との対向位置で弾性部材762が凹部742に向けてわずかにせり出すようにすればよい。こうすることで、凸部741へのトナー付着を規制するとともに、包絡円筒面を越えてトナーが凹部742に担持されることが防止される。
なお、前記したように、接触トナーに対しては現像ローラ7aへの強い拘束力が作用する。したがって、接触トナーについては気流への耐性が比較的高く包絡円筒面の外部に露出するようにしてもトナーの離脱は起こりにくいと考えられる。この観点からは、図11(d)に示すように、凸部741に1層以下のトナー付着を許容するように、規制ブレード76の当接角度や当接圧等を調節してもよい。
ただし、凹部742のみにトナーを担持させることによって、次のような効果も得られる。まず、凸部741に均一なトナー層を形成するためには規制ブレード76と凸部741とのギャップの精密な管理が必要となるが、凹部742のみにトナーを担持させるためには規制ブレード76と凸部741とを当接させて凸部741のトナーを全て除去すればよいので実現が比較的容易である。また、搬送されるトナーの量は規制ブレード76と凹部742との隙間に生じる空間の容積によって決まるので、トナー搬送量を安定させることができる。
また、搬送されるトナー層の良好さという点においても利点がある。すなわち、凸部741にトナーを担持させると規制ブレード76との摺擦に起因するトナーの劣化が起こりやすい。具体的には、トナーの流動性や帯電性が低下したり、トナーが圧粉状態となり凝集したり現像ローラ7aに固着してフィルミングを生じさせるなどの問題がある。これに対し、規制ブレード76からの押圧をあまり受けない凹部742にトナーを担持させるとこのような問題が起こりにくい。また、凸部741に担持されるトナーと凹部742に担持されるトナーとでは規制ブレード76との摺接のされ方が大きく異なるため、トナーの帯電量のばらつきが大きくなることが予想されるが、凹部742のみにトナーを担持させることでこのようなばらつきも抑えられる。
特に近年では、画像の高精細化やトナー消費量および消費電力の削減を実現するためにトナーの小粒径化や定着温度の低温化が求められているが、本実施形態の構成はこのような要求にも対応することが可能なものである。小粒径トナーにおいては帯電の立ち上がりが鈍いにもかかわらず飽和帯電量が高いため、凸部741に担持されたトナーは凹部742に担持されたトナーよりも帯電量が著しく高く(過帯電)なる傾向にある。このような帯電量の差はいわゆる現像履歴として画像に現れる。また、低融点トナーでは摺擦によるトナー同士または現像ローラ7a等への固着が起きやすい。しかしながら、凹部742のみにトナーを担持する本実施形態の構成ではこのような問題は生じにくい。
なお、この実施形態において、使用するトナーの粒子径は特に限定されないが、体積平均粒径Daveが5μm以下であるトナーを使用する場合に特に顕著な効果を発揮する。このような小粒径トナーは、その粒子径の小ささゆえにファンデルワールス力が強く作用し現像ローラ44からの飛翔が難しい。また、導電性材料からなる現像ローラ44に強く働く鏡像力により現像ローラ44からの飛翔が難しい。このため、1層を越えるトナーを現像ローラ7aに担持させ、接触トナー、非接触トナーのいずれをも飛翔させて現像動作に寄与させる本実施形態の現像方式が、特に優れた効果を奏する。
また、5μm程度を境にして、これ以下の体積平均粒径を有するトナーは粉体としての性質が強まり、より粒径の大きなトナーとは挙動が異なってくる。例えば、粒子径の小さなトナーは質量が小さいため、いったん飛散すると長い時間空中を漂うことになり、装置内ばかりか装置外部へも漏れ出してしまうことがある。本実施形態の装置はトナー飛散を効果的に抑制しているため、粒子径の小さなトナーを使用する場合でもこのような問題が生じることはない。
以上のように、この実施形態では、現像ローラ7aの表面に1層を超えるトナー層、より厳密には現像ローラ表面に直接接触している接触トナーおよび現像ローラ表面には直接接触しない非接触トナーの双方を含むトナー層を担持させる。こうすることによって、現像位置DPに十分な量のトナーを搬送することができ、高い現像濃度を得ることができる。
また、接触トナーおよび非接触トナーの双方を現像ローラに担持させることにより、より低い電界強度で飛翔開始する非接触トナーによって接触トナーをはじき出す効果を期待できるので、現像位置DPにおいて発生させる電界の電界強度が低くて済む。このことは、現像位置DPにおいて飛翔したトナーがギャップ外へ飛散するのを抑制するとともに、ギャップでの放電の発生を抑制するという効果をもたらす。
また、第1帯電位置CP1において第1帯電器3により感光体2表面を正規極性に帯電させた後、第2帯電位置CP2において、第2帯電器5によって感光体2表面に付着する付着物(トナーや外添剤)に逆極性の電荷を与える。こうして逆極性に帯電した付着物に、現像位置DPにおいて飛翔する低帯電トナーをトラップさせることにより、帯電量の低いトナーが現像ローラ7aから周囲に飛散するのを防止している。
また、第1帯電位置CP1と第2帯電位置CP2との間にクリーニングローラ4を設けているので、感光体2表面に残留する付着物が無制限に増大することが未然に防止されている。その一方、クリーニングローラ4をブラシローラとすることにより、粒子径が小さく、しかも顔料を担わないため画像には影響を及ぼさない遊離外添剤をある程度感光体2上に残留させておくことができ、この遊離外添剤を「逆極性付着物」として有効に利用することができる。
また、中間転写ベルト8aに逆極性の高い転写バイアスVt1を与えることにより、感光体2の回転方向D2において現像位置DPよりも後方で転写位置TPよりも前方の位置TP0において感光体2の非露光部と中間転写ベルト8aとの間で放電を発生させる。これにより、現像位置DPを通過した後に非露光部に付着するトナーや外添剤に逆極性の電荷を与え、転写位置TPにおいて中間転写ベルト8aの転写されるのを防止することができる。これにより、さらに地カブリを低減することができる。
また、接触トナーと非接触トナーとで飛翔開始電界強度が相違することに鑑み、感光体の非露光部と対向する現像ローラ表面におけるトナー飛翔電界の電界強度を非接触トナー飛翔開始電界強度E2よりは高く、かつ接触トナー飛翔開始電界強度E1よりは低くなるように設定することで、非露光部と対向する現像ローラ表面からは非接触トナーのみを飛翔させて接触トナーが飛翔するのを抑制しているので、正規高帯電トナーが非露光部へ付着するのを抑制して地カブリの発生をさらに効果的に抑えることができる。
また、感光体の露光部と対向する現像ローラ表面においてはトナー飛翔電界の電界強度が接触トナー飛翔開始電界強度E1より高くなるようにしているので、接触トナー、非接触トナーのいずれをも飛翔させて現像に寄与させることができ、高い現像濃度を得ることができる。また接触トナー、非接触トナーの双方を用いて現像を行うことで、細線画像、広い面積を有する画像のいずれにおいても良好な画像品質で画像を形成することができる。
また、現像ローラ表面を規則的な凹凸を設けた構造とするとともに、その高低差をトナーの体積平均粒径の2倍以上となるようにして凹部のみにトナーを担持させるようにしているので、2層以上のトナーを確実に現像ローラ7aに担持させることが可能である。また凹部にトナーを収容した状態で現像ローラ7aを回転させるので、回転に起因する現像ローラ表面からのトナーの離脱を防止することができる。
次に、この発明にかかる画像形成装置の第2実施形態について説明する。この第2実施形態の装置は、転写ユニット8の構成が上記した第1実施形態のものと相違しているが、これを除く各部の構成および動作は基本的に第1実施形態の装置と同一である。そこで、同一構成には同一符号を付して説明を省略し、ここでは第1実施形態との相違点について主に説明する。
図12は本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態の主要構成を模式的に示す図である。この第2実施形態では、転写ユニット8にサポートローラ8dが設けられており、このサポートローラ8dは感光体2の回転方向D2における転写位置TPの上流側で中間転写ベルト8cを感光体2表面側に近接させることにより、感光体2の非露光部と中間転写ベルト8cとの間でより放電を生じやすくする作用を有する。また、この実施形態では、中間転写ベルトに転写バイアスが印加される第1実施形態の装置とは異なり、バックアップローラ8bに転写バイアスVt1として+600Vの直流電位が電源82から印加されるとともに、サポートローラ8dにはさらに高い正電位(+800V)の直流電位Vt0が電源83から印加される。こうすることにより、上記した第1実施形態の装置と同様に、転写位置TPの手前で感光体2に付着する低帯電トナーに逆極性の電荷を付与し、転写位置TPで中間転写ベルト8cに転写されるのを防止することができる。
以上説明したように、これらの実施形態では、感光体2および現像ローラ7aがそれぞれ本発明の「潜像担持体」および「トナー担持ローラ」として機能している。また現像バイアス電源71が本発明の「電界形成手段」に相当している。また、第1帯電器3および第2帯電器5がそれぞれ本発明の「第1帯電手段」および「第2帯電手段」として機能している。第2帯電器5はスコロトロン帯電器であり、グリッド5aおよびチャージワイヤ5bがそれぞれ本発明の「グリッド」および「コロナワイヤ」に相当している。
また、これらの実施形態では、露光ユニット6および転写ユニット8がそれぞれ本発明の「潜像形成手段」および「転写手段」として機能しており、中間転写ベルト8a,8cが本発明の「転写媒体」として機能している。また、クリーニングローラ4が本発明の「クリーニング手段」として機能する一方、規制ブレード76が本発明の「規制部材」として機能している。さらに、転写バイアス電源81および電源83が本発明の「電荷供給部」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の説明において示した各数値は一例にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
また、上記実施形態は帯電させた感光体2表面のうち露光により電荷が除去された領域にトナーを付着させる、いわゆるネガ潜像タイプの画像形成装置であり、感光体22上においては露光された領域(露光部)がトナーを付着させるべき本発明における「画像部」である一方、露光されなかった領域(非露光部)が本発明における「非画像部」となっている。しかしながら、本発明は露光により電荷の発生した領域にトナーを付着させる、いわゆるポジ潜像タイプの画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。この場合には、感光体上の露光された領域が「画像部」、露光されなかった領域が「非画像部」となる。また、本実施形態では負帯電トナーを使用しているが、正帯電トナーを使用する画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
また、本実施形態における現像ローラ7aの表面構造は、略菱形の頂面を有する凸部741とこれを取り囲むように設けられた凹部742とを規則的に配してなるものであるが、凸部の形状や現像ローラの表面構造はこれに限定されるものではない。これ以外にも例えば、ほぼ平滑な包絡円筒面上に多数のディンプルを設けた構造のものや、螺旋状の溝を設けたものも利用可能である。この場合においても、ディンプルや溝の深さをトナーの体積平均粒径の2倍以上とすることにより、2層以上のトナーを搬送することが可能となる。なお、現像ローラ表面でのトナー流動を許容し凹部へのトナー固着等を防止するという観点からは、トナーを担持する凹部については互いに連通していることが好ましい。
また、上記実施形態では現像ユニット7の個数について特に言及していないが、本発明は、回転自在のロータリー現像ユニットに複数の現像ユニットを装着したカラー画像形成装置や、複数の現像ユニットを中間転写媒体の周囲に配置したいわゆるタンデム型の画像形成装置、現像ユニットを1個だけ備えてモノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置などに対して好適に適用することが可能である。
2…感光体(潜像担持体)、 3…第1帯電器(第1帯電手段)、 4…クリーニングローラ(クリーニング手段)、 5…第2帯電器(第2帯電手段)、 5a…グリッド、 5b…チャージワイヤ(コロナワイヤ)、 6…露光ユニット(潜像形成手段)、 7a…現像ローラ(トナー担持ローラ)、 8…転写ユニット(転写手段)、 8a,8c…中間転写ベルト(転写媒体)、 71…現像バイアス電源(電界形成手段)、 76…規制ブレード(規制部材)、81…転写バイアス電源(電荷供給部)、 83…電源(電荷供給部)、 E1…接触トナー飛翔開始電界強度、 E2…非接触トナー飛翔開始電界強度、 T1…接触トナー、 T2…非接触トナー