JP4604772B2 - 定着装置及びこれを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Description
このようなカラー画像形成装置では、近年、高速化、小型化、省エネ化への要求が強く、中でも、画像形成プロセス上最もエネルギーを消費する熱定着器について、環境負荷低減を狙った省エネルギー化技術(省電力化技術)が必要とされてきている。
このような要請に対し、定着器から搬出された定着済の用紙の熱を直接的又は間接的に定着前の用紙に伝達させ、用紙を定着前に予備加熱することで、その後の定着に要する加熱エネルギーを削減したり、加熱電力を増大させずに定着速度を速めるような技術が提示されている(例えば特許文献1,2参照)。
また、図16に示すように、感光体201のトナー像が転写された用紙202を定着装置203にて定着する際、定着装置203の上流側部位204と下流側部位205との間にブロック付きヒートパイプ206を設け、下流側部位205での定着後の用紙202の熱を上流側部位204に伝達する方式が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このようなブロック付きヒートパイプの例や、更には、伝熱ブロック、伝熱板、伝熱ロールとベルトとの組み合わせ等の伝熱手段を介して、定着後の用紙の熱を定着前の用紙に伝えるようにした構成にあっては、カット紙の適用が可能となり用紙の汎用性は確保されるが、伝熱手段での熱量が定常化して熱回収/熱伝達効果が十分に得られるには、伝熱手段そのものが用紙からの熱伝導により温度上昇を繰り返し、定着後の用紙温度に近づく必要がある。すなわち、かかる構成では、上述した伝熱手段の昇温に時間がかかるため、すぐには定着の加熱エネルギーを低減することができないという問題がある。
更に、熱回収/熱伝達効果をすぐさま行う(立ち上がりを速くする)ようにしようとして、伝熱手段に補助加熱を加えるような方法では、却って多くのエネルギーを消費することもあり、省エネルギー化にとって得策とは言えない。
しかしながら、かかる構成にあっては、用紙を搬送する搬送ベルトが熱の伝達媒体ではなく、搬送ベルトとは別体に設けた熱伝達ベルト306を用いる点から、構成が複雑且つ熱伝達効率も悪くなる。
本発明は、上述したような技術的課題を解決するためのものであり、定着後の記録材から熱回収を行い、定着前の記録材へ熱伝達を行うに際し、直接的な熱回収伝達を行うことで、加熱エネルギーの少ない定着装置及びこの定着装置を用いた画像形成装置を提供するようにしたものである。
そのため、先行技術にあっては、記録材5の搬送機能を有する搬送部材とは別に、熱回収伝達機能を持った部材を用いて間接的に熱回収伝達を行う態様であったのに対し、本願においては、ベルト部材3が記録材5に対する搬送機能と熱回収伝達機能を兼ね備え、直接的に熱回収伝達を行うようにした点が大きく異なる。
また、熱回収伝達ユニット2としてベルト部材3を用いることで、比較的熱容量を小さく、記録材5との接触面積も広くすることができることから、効率的な熱の回収伝達が可能となる。
尚、「当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態」とは、ベルト部材3と記録材5との接触面の周囲では大気によって断熱される態様や断熱部材と接触する態様を含む。尚、記録材5をベルト部材3で両面から挟み込む態様であっても差し支えない。
張架部材4が断熱層4aを備えることで、ベルト部材3で回収された熱エネルギーを張架部材4との接触で減衰される量(熱伝導で張架部材4に吸熱される量)が少なくなり、ベルト部材3での熱回収/熱伝達を一層有効に作用させることができるようになる。尚、断熱層4aは、張架部材4表面に断熱材を層状に形成してもよいし、例えば張架部材4自体を断熱材で構成することも含み、層の厚さ等は特に限定されない。
更に、断熱層4aは、ベルト部材3との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えるようにすれば、張架部材4とベルト部材3との接触時に、互いの接触面積を減らすことができ、張架部材4へ吸熱される熱が少なくなり、断熱効果が一層向上する。また、このときの断熱層4aの形状は、ベルト部材3を循環可能にできる形状であれば特に限定されないが、例えば張架部材4の回転軸と交差する方向に凸形状を離散的に配置した形状としてもよいし、回転軸に傾斜する方向に離散的に配置した形状としてもよい。
また、この場合、ベルト部材3は、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは記録材5のトナー像面とは逆の面で接触するようにしている。このことにより、ベルト部材3と未定着トナー像が接触することを避けることができ、画質を損なうことがない。尚、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは、ベルト部材3と接する記録材5の方向(記録材5がベルト部材3の上方に位置するか又は下方に位置するか)は特に限定されないが、記録材5が鉛直下方側に位置する場合、記録材5は必要な部位で上方に位置するベルト部材3に静電吸着又は吸引等により接触保持させるようにすればよい。
また、ベルト部材3への不要な電荷蓄積を防ぐ観点から、熱伝達部HT及び熱回収部HCに配設される二つの静電吸着装置6(6a,6b)は、ベルト部材3の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることが好ましい。
一方、熱回収部HCに設けられる静電吸着装置6bとしては、記録材5に対し非接触配置されるコロナ帯電器の態様や、トナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材の態様が挙げられる。尚、この板状若しくはフィルム状の帯電部材を使用する態様においては、記録材5との摩擦力を減少させ記録材5の送りをスムーズにする観点及び浮遊トナー等異物の付着を防止する観点から、帯電部材の表面には離型層が施されることが好ましい。
また、本発明では、熱回収部及び熱伝達部では、ベルト部材が記録材に対してトナー像面とは逆の面で接触させるようにしたので、記録材の未定着トナー像に対してベルト部材が接触する虞がなく、接触による画質の劣化はない。
また、本発明においては、記録材をベルト部材に静電吸着装置を用いて吸着させるようにしたので、トナー像面への影響を防ぎ、画質を維持した状態で記録材からの熱回収並びに記録材への熱伝達を有効に行うことが可能になる。
◎実施の形態1
図3は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す概要図である。
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、プラテン11上の原稿を読み取る原稿読取装置10と、例えば電子写真方式にて四つの各色成分(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)画像(トナー像)を形成する画像形成ユニット20(20a〜20d)と、各画像形成ユニット20(20a〜20d)にて形成された各色成分画像が順次転写(一次転写)されて保持される中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30上に転写された重ね画像を用紙(記録材)に一括転写(二次転写)する二次転写装置31と、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着装置70と、各種サイズの用紙を供給する給紙トレイ51〜53と、トナー像形成を終えた用紙を収容する排紙トレイ55と、給紙トレイ51〜53から排紙トレイ55までの用紙搬送を行う複数の用紙搬送経路とを備えたものである。
尚、符号27(27a〜27d)は、現像装置24へトナーを補給するトナー補給装置であり、各色トナーが夫々の現像装置24へ補給されるようになっている。
そして、本実施の形態では、張架ロール33を張架ロール32より下方に配置することで、中間転写ベルト30を斜め下向きになるように配置し、各画像形成ユニット20(20a〜20d)は、張架ロール33と張架ロール34との間の中間転写ベルト30に沿って、中間転写ベルト30の下方側に配置されている。そのため、画像形成ユニット20でのトナー飛散が中間転写ベルト30上に影響せず、汚れの少ない高画質な画像を維持できるようになっている。
また、本実施の形態においては、張架ロール32が二次転写装置31のバックアップロールとして働いており、画像形成ユニット20にて中間転写ベルト30上に形成されたトナー像を二次転写装置31で用紙上に一括転写するようになっている。そのため、中間転写ベルト30上にトナー像が形成された後、すぐに用紙上に二次転写されることから、中間転写ベルト30上でのトナー像の乱れを防ぎ、画質を一層向上させた画像形成が可能となっている。尚、図中の符号35は、中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃するベルトクリーナである。
同図において、定着装置70は、用紙S上のトナーを溶融定着する定着ユニット80と、用紙S上の熱を定着ユニット80の下流側の熱回収部HCにて回収し、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTにて後続の用紙Sに回収した熱を伝達する熱回収ベルト91と、この熱回収ベルト91を張架する7個の張架ロール92とで構成される熱回収伝達ユニットとしてのベルトユニット90とが設けられている。
本実施の形態では、加圧ロール81及び加熱ロール86と夫々の断熱カバー82a,82bとは、例えば3〜20mmの距離を隔てて配置され、断熱カバー82a,82bが加圧ロール81及び加熱ロール86を互いに上下方向から挟み込むような形となっている。また、本実施の形態では、加圧ロール81と加熱ロール86とが鉛直方向に対向配置されているため、このニップ域を用紙Sが略水平方向に移動するようになっている(図4参照)が、本願における用紙搬送方向は特にこれに限定されるものではない。
すなわち、熱回収ベルト91の熱容量が小さすぎると、熱回収ベルト91自体の温度の立ち上がりは速くなるが、用紙Sから熱を回収しても、後続の用紙Sへの熱伝達を行うまでに回収した熱が消散し易く、また、定着前の用紙Sへ熱伝達を行う際にも十分用紙Sを加熱することができないこともあり、有効な熱伝達を行うことが困難となる。
また、反対に熱回収ベルト91の熱容量が大きすぎると、熱回収ベルト91の温度の立ち上がりは遅くなり、安定するまでの時間が必要となる。そのため、定着前の用紙Sへの有効な熱伝達を行うまでには時間がかかり、例えば数枚程度のプリントを繰り返すような使用形態では定着前の用紙Sに予備加熱を加えることが有効に行えない。
よって、熱回収ベルト91で有効に熱回収/熱伝達を行うには、使用する用紙S程度の熱容量(単位面積当たり)から数倍程度の熱容量までが好ましい。
本実施の形態では、ポリイミドの75μmのフィルムを使用していることから、用紙Sの1枚目からの熱回収を可能にしている。
本実施の形態での張架ロール92は、図6の平面図及び図7の断面図に示すように、肉厚の薄いステンレス(SUS)パイプ921上を表面が凹凸形状をしたウレタン樹脂よりなる発泡層922で覆ったもので、発泡層922の凹部922aと凸部922bとは、張架ロール92の軸に直交する方向に形成されている。尚、図6中、符号92a,92bは、張架ロール92の両端に設けられた回転軸である。
本実施の形態では、張架ロール92の表面を発泡層922で覆い、更に、発泡層922の表面を凹凸形状としたことで、熱回収ベルト91と張架ロール92との接触域では熱回収ベルト91の熱が張架ロール92側に吸収されることを少なくしている。また、肉厚の薄いSUSパイプ921を使用することで、張架ロール92自体の熱容量を小さくすることができ、熱伝導等で張架ロール92の温度が上昇しても、速く飽和することができ、張架ロール92での余分な熱の吸収が少なくなるようになっている。
そのため、熱回収ベルト91での熱回収/熱伝達を一層効率的に行うことができるようになっている。
また、この主搬送路64の途中から、用紙を反転して二次転写部位に戻す反転搬送路65が繋がっている。そして、これらの搬送路には、多数の搬送ロールが設置され、用紙の搬送が確実になされるようになっている。
そして、各色成分の未定着トナー像は、各感光体ドラム21と中間転写ベルト30とが接する一次転写部位において、一次転写装置25によって中間転写ベルト30上に順次一次転写され、重ね合わせられる。
二次転写部位では、二次転写装置31と張架ロール32との間に印加された図示外の転写バイアスにより、例えば給紙トレイ51等から搬送された用紙上に、前記中間転写ベルト30上の未定着トナー像が一括転写される。用紙上に一括転写された未定着トナー像は、定着装置70にて定着された後、主搬送路64を通って排紙トレイ55へと排出される。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、図示外の帯電装置によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙を剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、熱回収ベルト91から用紙の腰を利用して剥離される。尚、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようにしているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
更に、熱回収部HCで熱回収を終えた熱回収ベルト91は、そのまま循環経路を循環して定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで次に搬送される用紙Sと接触し、熱回収部HCで事前に回収した熱を用紙Sに伝達し、予備加熱するようになる。
したがって、本実施の形態においては、有効に定着前の用紙を予備加熱することができるため、定着時の熱エネルギーを小さくでき、省電力化に適した画像形成装置を実現できる。また、熱回収ベルト91による熱回収の立ち上がりが速いため、熱回収ベルト91の1周目から熱回収及び後続用紙への予備加熱が可能になり、10枚以下のプリントを繰り返すような使用形態にあっても、定着時の加熱エネルギーを低減できる。更に、熱容量の小さい熱回収ベルト91を使用したので、熱回収ベルト91と用紙との熱交換が短時間で可能になり、装置の小型化が可能で、かつ、高速化も可能となる。尚、熱回収ベルト91は、適用する装置の条件によって適切な構成が異なることは云うまでもない。
また、熱回収ベルト91そのものを用紙搬送経路の主搬送路64(例えば図3参照)の下方側に設けることも可能で、更に、定着ユニット80の加熱源として、ロールの代わりに例えばランプヒータを使用して非接触加熱することも可能である。更にまた、加熱源を用紙の上方に配置したり、用紙の上下に配置することも可能である。
また、本実施の形態では、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCと上流側の熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間をほぼ同等としたが、熱回収ベルト91と用紙Sとの温度差や装置構成の都合等により、熱回収部HCと熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間を変えるようにしてもよい。
この張架ロール92は、ロール軸に対し斜めに凸部922bを設けたもので、凸部922bが図の矢印A方向に回転するように回転軸92a,92bをセットするようにすれば、張架ロール92が回転する際、熱回収ベルト91(例えば図4参照)を絶えずベルトの外側(ベルトの移動方向と直交する方向)に向かって張る方向に力を作用させることができ、熱回収ベルト91の循環姿勢を一層安定させることができる。
このとき、上述した実施の形態と同様の発泡層922が形成されているため、この例によっても、熱回収ベルト91からの吸熱を抑えることができ、省電力化を実現した画像形成装置が可能になる。
図9は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態2を示す。
本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
定着ユニット80の構成は実施の形態1と同様であるが、熱回収ベルト91がこの定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86のニップ域を通過するため、熱回収ベルト91の昇温速度が実施の形態1より速くなっている。
また、本実施の形態における熱回収ベルト91は、上述のニップ域により従動され、循環移動するようになっているため、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで熱回収ベルト91に吸着した用紙Sは、熱回収ベルト91の移動と共に、そのまま排出位置(熱回収ベルト91の最下流側)まで移動する。
本実施の形態では、熱回収ベルト91によって用紙Sが吸着搬送されるため、定着ユニット80への巻きつきジャム防止効果がある。
したがって、本実施の形態にあっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
図10は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態3を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
この2個のコロナ帯電器93,94は、夫々図示外の電源により、熱回収ベルト91の帯電電位が熱伝達部HTではプラス側(トナーの帯電電荷と異なる極性)、熱回収部HCではマイナス側になるようにしている。用紙Sが定着ユニット80に入る前は熱回収ベルト91がトナーを引きつける方向に作用することから、トナー画像の乱れを抑えることができ、定着後は逆極性とすることで、熱回収ベルト91自体に不要なチャージアップを来すことがないようになっている。
尚、コロナ帯電器93,94と対向する張架ロール92は、コロナ帯電器93,94の対向電極を構成することから、張架ロール92の断熱層の厚さ等は適宜選定されることはいうまでもない。例えば、張架ロール92表面に断熱性を有する導電性樹脂(カーボンブラック等)を配合したフッ素系樹脂等を用いることで、断熱効果と静電的な用紙吸着効果を得るようにすることもできる。
更に、本実施の形態では、コロナ帯電器93,94への電圧印加は、熱回収ベルト91が駆動される時間内に限って行われるようになっているため、熱回収ベルト91の一部がチャージアップすることもない。
同図において、駆動モータ111の回転軸に装着された駆動ギア112に噛合した中間ギア113と、定着ユニット80の加熱ロール86に装着されたロールギア116が噛合するように配設されている。また、中間ギア113からギア114を介して張架ロール92のロールギア115が回転するように各ギアが噛合している。
したがって、本実施の形態では、駆動モータ111の回転によって、定着ユニット80の加熱ロール86と熱回収ベルト91の張架ロール92とが共に駆動回転されるようになっていることから、加熱ロール86と熱回収ベルト91との回転又は移動が同期を持って行われるようになる。尚、図12では、駆動される張架ロール92は熱回収部HCの入口のものとしたがこれに限るものではなく、他の張架ロール92であっても差し支えない。また、図中の定着ユニット80の加熱ロール86側の断熱カバーは省略している。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、熱伝達部HTに設けられたコロナ帯電器93によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで到達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙Sを剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、熱回収部HCに設けられたコロナ帯電器94によって帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、そのまま搬送される。そして、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から剥離され、定着装置70以降の工程に搬送される。
このとき、加熱ロール86と熱回収ベルト91とは同期して回転又は移動するようになっていることから、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようになっているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
また、コロナ帯電器93,94に印加する極性や印加タイミングを考慮したので、熱回収ベルト91での不要なチャージアップを抑えることができ、長期的にも安定した用紙Sの吸着性能が確保され、効果的な予備加熱を行うことが可能になる。
また、遮熱フード100はポリカーボネート樹脂に限らず、耐熱性及び遮熱性が得られれば、他の樹脂材料でもよいし、金属等の表面処理を工夫して行うようにしても差し支えない。
図13は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態4を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみを示す。また、本実施の形態の定着装置70は実施の形態3の定着装置と略同様に構成されるが、実施の形態3の定着装置70で使用した静電吸着装置としてのコロナ帯電器の代わりに、帯電部材を用いた点が実施の形態3と異なる。尚、実施の形態3と同様な構成要素については実施の形態3と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
また、熱回収部HCの入口で定着ユニット80の下流直後には、熱回収ベルト91の外側にバイアス電源97が接続された板状帯電器96が熱回収ベルト91に軽く接触するようにして配設されている。この板状帯電器96は、板状帯電器96側がプラス側になるようにバイアス電源97が接続されている。尚、板状帯電器96としては、金属等の導電性部材によって構成され、定着後の用紙Sのトナーをオフセットさせないように、その表面にはフッ素系樹脂等の高離型性コート層が施されている。
一方、熱回収部HCでは、板状帯電器96によって熱回収ベルト91が熱伝達部HTと異なる極性になるように帯電される。そして、定着ユニット80を通過した用紙Sは、そのまま熱回収部HCで熱回収ベルト91に再吸着される。尚、このとき、熱回収部HCの入口にある張架ロール92を接地することで、熱回収ベルト91の帯電が安定するようになっている。
また、本実施の形態では、特に熱回収ベルト91の周りに構成物が少なくて済むことから、特に小型化が可能になる。更に、これにより、紙詰まり等のジャムに際して用紙の除去を行うことも容易となる利点もある。
本実施例は、実施の形態1と同等の構成にて、具体的な用紙の予備加熱効果を確認するために温度測定を行ったものである。
このときの各種条件は次のようにした。
使用した熱回収ベルトは、75μm厚のポリイミドフィルムとした。
張架ロールは、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用した。尚、本実施例では、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層(発泡層)を被覆した構造とした。
また、使用した用紙は、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙した。
すなわち、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着ユニットでの加熱エネルギーが低減できた。
また、比較として、張架ロールを表面に断熱層のないSUSパイプのみで構成し、上記内容と同様の試験を行ったところ、熱回収ベルト1周での温度は26℃であり、熱回収効果がないことが確認された。よって、張架ロールに断熱層を備える効果が明確な有意差として確認された。
本実施例は、実施例1と同様の方法でテストを行ったもので、使用した張架ロールの構成が実施例1と異なるものである。
本実施例では、実施の形態1の形状の張架ロール(例えば図6,7参照)とし、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に、幅1.5mm、高さ3mmの突起を7mmピッチで設けたものとした。また、本実施例で使用した断熱層の材料は、実施例1と異なり、熱伝導率は0.2W/(m・K)以下の樹脂とした。
本実施例では、張架ロールとして実施例1より熱伝導率の高い樹脂(発泡体ではない)を使用しても、その表面に凹凸を設けることで、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積が減り、実施例1と同様の効果が得られることが確認された。
尚、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積(突起部の面積)を小さくする方が、熱回収ベルトから熱を奪うことが少なくなる点で好ましいが、この接触面積は熱回収ベルトの剛性状態によっても変化するもので、熱回収ベルトの張力によっては突起部からベルトにしわが入ることにもなり、用紙の熱回収ベルトへの吸着に影響を生じることも想定される。したがって、突起部は、このようなことがないように選定する必要がある。
本実施例は、実施例1の構成で、熱回収ベルトの熱容量を変えたときの予備加熱効果を評価したものである。
本実施例では、熱回収ベルトとして、厚さ75μmと厚さ300μmのベルトとを使用した。このとき、厚さ75μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムとし、厚さ300μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムの裏面にシリコーンゴムシートを積層した構成とした。
尚、張架ロールは、実施例1と同様に、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用し、表面は凹凸形状とせず、平坦な形状とした。
結果は、図14に示すように、厚さ75μmのベルトでは、立ち上がりが速く、10sec程度で38℃に達し、ほぼ飽和状態となった。一方、厚さ300μmのベルトでは立ち上がりが遅く、10secでは約33℃であり、50sec後も飽和に至らず、徐々に上昇している。また、約30sec後には、75μmのベルトの温度38℃を超えている。
すなわち、用紙と同程度の厚さ(熱容量)のベルト(本実施例の75μmのベルト)は立ち上がりが速く、厚いベルトは立ち上がりが遅いが、通紙時間が長くなるとベルトの蓄熱効果により厚いベルトの方が熱回収温度(効率)が高くなる。
このことは、装置の使われ方に応じてベルト厚を変えることで、熱回収効率の最適化が可能であることを示している。すなわち、数枚のプリント動作が散発的に行われるような装置の使用形態では、ベルト厚さを薄くするのがよく、一方、数十枚のプリント動作が多くなるような使用形態や連続的にプリントするような動作が行われる使用形態の場合では、ベルト厚さを比較的厚めにする方がよい。
本実施例は、実施の形態3の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前のコロナ帯電器には、用紙裏面(トナー担持面の反対側)の転写電荷と逆極性の電圧(−6.5kV)を印加した。このとき、トナーはマイナストナーを使用していることから、用紙へのトナー転写時には用紙裏面側にプラス電荷を与えて転写していることから、このような極性を印加している。尚、使用するトナーの極性が異なるときは、この逆の極性になるようにすればよい。
一方、定着後のコロナ帯電器には、定着前のコロナ帯電器と異なる極性を付与するため+6.5kVを印加するようにしている。
このように、熱回収ベルトが定着前と定着後で逆の極性の帯電を受けるので、熱回収ベルトの電位が片方の極性にチャージアップしてしまうのを防ぐことができ、別途ベルトの除電手段を設ける必要がない。また、コロナ帯電器の電圧は、熱回収ベルトが駆動される時間内に限って印加しているため、熱回収ベルトの一部が不要にチャージアップすることもない。
尚、本実施例では、実施例1同様、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層を被覆した構造とした。また、熱伝達部及び熱回収部の入口に位置する張架ロールでは、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ約0.5mmの断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被覆した。
したがって、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着器での加熱エネルギーが低減できることが確認された。また、このとき、定着されたトナー像には乱れやオフセットによる欠落もなく、良好な定着像が得られることが確認された。
本実施例は、実施の形態4の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前の熱伝達部入口の張架ロールとして、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプに、約0.5mm厚の断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被せたものを使用し、トナーと逆極性の電圧+4.0kVを印加した。
一方、定着後は、フッ素系樹脂をコートした0.2mm厚のSUS製板状帯電器に+4.0kVの電圧を印加した。尚、この板状帯電器と対向配置されている張架ロールは、熱伝達部入口の張架ロールと同様の構成とし、接地するようにしている。
尚、本実施例では、板状帯電器として0.2mm厚のSUS板を使用したが、これに限らず、板状帯電器としては、金属板の他、導電性又は半導電性の樹脂板やフィルム材を用いることができる。
本比較例は、実施例1の比較のために確認したもので、図15に示すように、実施例1のコロナ帯電器の位置にて、代わりに熱回収ベルトへ接触するロール151,152を配設した構成となっている。
このロール151,152は、トナーの付着防止のために、高離型性のPFA(フッ素系樹脂)が表面にコートされた外径20mmの金属ロールとなっており、定着前のロールには−3.0kVを、定着後のロール152には+3.0kVを印加している。
このような構成にて、実施例1と同様、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙し、連続プリントを行ったところ、熱回収ベルト91への用紙の吸着は特に問題なく行われたが、定着前の用紙上の未定着トナーがロール151の表面にオフセットし、画像の欠落や乱れが生じ、正常な画像が殆ど得られなかった。
したがって、本比較例から、定着前の静電吸着部材は、用紙のトナー面から離すことによる効果が大きいことが判明した。
Claims (18)
- 記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、
熱回収伝達ユニットは、複数の張架部材に張架されて前記定着ユニットを迂回した状態で循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、
このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収が行われる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達が行われる熱伝達部を設けることを特徴とする定着装置。 - 記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、
熱回収伝達ユニットは、複数の張架部材に張架されて循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、
このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収が行われる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達が行われる熱伝達部を設け、
ベルト部材は、熱回収部及び熱伝達部では記録材の片面、かつ、トナー像面とは逆の面のみで接触することを特徴とする定着装置。 - 請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材の熱回収部及び熱伝達部は、記録材の片面のみと接触することを特徴とする定着装置。 - 請求項2記載の定着装置において、
ベルト部材は、定着ユニットの加熱部位を通過配置されていることを特徴とする定着装置。 - 請求項1又は2に記載の定着装置において、
張架部材は、断熱層を備えることを特徴とする定着装置。 - 請求項5記載の定着装置において、
張架部材は、中空状の金属製ロール表面に断熱層を備えるものであることを特徴とする定着装置。 - 請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、弾性発泡体によって構成されることを特徴とする定着装置。 - 請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、ベルト部材との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えることを特徴とする定着装置。 - 請求項1又は2に記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部には、静電気力にてベルト部材に記録材を吸着させる静電吸着装置を設けることを特徴とする定着装置。 - 請求項9記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部に配設される二つの静電吸着装置は、ベルト部材の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることを特徴とする定着装置。 - 請求項9記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面と非接触配置されることを特徴とする定着装置。 - 請求項11記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、コロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。 - 請求項11記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、ベルト部材の張架部材にトナーの帯電極性と異なる極性のバイアスを印加するものであることを特徴とする定着装置。 - 請求項9記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材に対し非接触配置されるコロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。 - 請求項9記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材であることを特徴とする定着装置。 - 請求項15記載の定着装置において、
前記帯電部材の表面は、離型層が施されていることを特徴とする定着装置。 - 請求項9記載の定着装置において、
静電吸着装置の駆動は、少なくともベルト部材が駆動されている間に行われるものであることを特徴とする定着装置。 - 記録材上にトナー像を形成する作像エンジンと、
この記録材上に形成されたトナー像を定着する請求項1又は2に記載の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
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