JP4604201B2 - タンパク質への外来分子の部位特異的な連結及びその利用 - Google Patents
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Description
本発明は、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、ペプチド又はタンパク質へ部位特異的に外来分子を連結する方法であって:分子が、アニオン性であり、かつTGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を有し;そして、ペプチド又はタンパク質が、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基又は第1級アミンを有するものである、前記方法を提供する。また、本発明は、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、ペプチド又はタンパク質へ部位特異的に外来分子を連結する方法であって:
ペプチド又はタンパク質が、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基又は第1級アミンを有するものであり、そして
分子が、アニオン性であり、かつTGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を有するものである、前記方法を提供する。
。
本発明者らの検討によると、タンパク質濃度に対し15倍以上のZ-QG-DNA濃度とした場合においても、反応率(ペプチド又はタンパク質−核酸複合体に転化した、TGaseが認識可能なLys残基又は1級アミンを有するペプチド又はタンパク質の割合。例えば、AP-DNA複合体に転化したNK6-APの割合。)は50〜60%にまでしか到達しないことから、この反応の律速段階は2段階目であると予想された。そこでタンパク質としてNK6-APを用い、NK6-AP過剰の条件下での連結反応による反応効率の向上を試みたところ、充分に高い(例えば80%以上、好ましくは95%以上の)反応率を得るには、Z-QG-DNAに対するNK6-APの濃度比が2以上であることが好ましいことが分かった(実施例7参照)。また、Z-QG-DNAの濃度は、おそらく1μM以上であることが好ましいと思われた。
(3)TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られる、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体。
・対象タンパク質は、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有する天然タンパク質、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを導入することができるあらゆるタンパク質を包含する。また、インテインのような大きなタンパク質性タグを必要としない。
・タンパク質の修飾部位は、C末端に限定されない。TGase活性なLys残基が存在するか、そのようなLys残基を有するタグを導入することができる部位であれば、修飾可能である
。C末端、N末端に加え、loop領域のようなタンパク質構造中の揺らぎの大きな部位も修飾対象となりうる。
・外来分子として核酸を選択する場合、その塩基配列及び長さには、特に制限がない。
本発明はまた、以下のものも提供する:
(4)ペプチド又はタンパク質の基材表面への固定化方法であって、
a) 基材表面に固定化された核酸、
b) ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらに核酸部分が、固定化核酸の有する塩基配列の全部又は一部に相補的な核酸配列を有するものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体
を用い、
固定化核酸と、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体の核酸部分とを、ハイブリダイズさせて固定化物を形成する工程を含むものである、前記固定化方法。
(5)ペプチド又はタンパク質の基材表面への固定化物の製造方法であって:
基材表面に予め固定化されている核酸と、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体の核酸部分とを、ハイブリダイズさせて固定化物を形成する工程を含み、
ペプチド又はタンパク質−核酸複合体が、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるペプチド又はタンパク質−核酸複合体である、前記製造方法。
(6)標的分子の検出方法であって:
ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらにペプチド又はタンパク質
部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分が標的分子に特異的に結合可能な塩基配列を有するものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体を準備し;そして
対象物中に存在する標的分子と複合体とを核酸部分により特異的に結合させ;そして
結合している複合体を、ペプチド又はタンパク質部分により検出する工程を含む、前記検出方法。
本発明のこの方法においては、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体として、本発明の複合体が用いられるが、また、核酸部分は、標的分子に特異的に結合可能な核酸配列を有するものとする。ペプチド又はタンパク質部分は、容易に検出可能な性質を有するものであり、好ましい例は、アルカリホスファターゼ(AP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、抗体エピトープ配列を含むペプチド及びビオチン等である。ペプチドタグが容易に導入可能との観点からは、遺伝子工学的に製造可能なタンパク質が好ましい。この方法において、標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物(ATP)、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルス等でありうる。検出対象は、DNA転写膜、又は細胞若しくは個体組織切片等である。
(7)標的分子の検出方法であって:
標的分子の検出方法であって:
a) 基材表面に固定化された核酸、
b) 固定化核酸の全部又は一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、及び標的分子に特異性的に結合可能な配列(標的分子特異的配列)を有するアプタマー核酸、並びに
c) ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらにペプチド又はタンパク質部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分がアプタマー核酸の標的分子特異的配列の全部又は一部に相補的な配列を有するものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体
を用い、
1) 固定化核酸に、アプタマー核酸を供し、固定化核酸とアプタマー核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマー核酸を固定化し;
2) 固定化アプタマー核酸に、標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的分子とアプタマー核酸の標的分子特異的配列を有する部分とを結合させ、かつタンパク質−核酸複合体を供し、標的分子が存在しない場合にはタンパク質−核酸複合体の核酸部分とアプタマー核酸とをハイブリダイズさせることにより、タンパク質を固定化し;
3) 固定化タンパク質の有無又はその量をタンパク質の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出する
工程を含む、前記検出方法。
この方法ではさらに、固定化核酸の全部又は一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、及び標的分子に特異性的に結合可能な配列(標的分子特異的配列)を有する核酸(アプタマー核酸)が用いられる。標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルス等でありうる。標的分子特異的配列を有する部分は、従来技術、例えばSELEX(試験管内人工進化法)工程を用いることにより産生することができ、また標的分子に対して非常に高い標的親和性及び特異性を有するものとすることができる。標的分子特異的配列を有する部分は、修飾ヌクレオチドで構成されていてもよい。
アプタマー核酸においては、固定化核酸相補的配列を有する部分と、標的分子特異的配列を有する部分とは、重複してもよく、連続してもよく、また適当なスペーサーを介して両者が存在するように設計することができる。標的分子特異的配列を有する部分(アプタマー領域)が分子認識のためにある立体構造をとることを考慮すると、該部分は、固定化核酸相補的配列を有する部分とは少なくとも重複しないようにするのがよい。
(1) Z-QG-DNAの合成
MTGの良基質として知られるジペプチドZ-Gln-Gly(Z-QG)のカルボキシル基を活性エステル(NHS)化し、これをアミノ化DNAと縮合することで、TGase活性なGln残基を有するDNA(Z-QG-DNA)を合成した(図1)。
DMSO溶液)1mLを滴下し、室温で24時間攪拌した。
TGase活性なLys残基を有するNK6-AP(MKHKGS配列をN末端に有するアルカリホスファターゼ)及びCK6-AP(MKHKGS配列をC末端に有するアルカリホスファターゼ)を合成した。
2.1) NK6-AP発現ベクターの構築
pET22b(+)(Novagen)からPCRによりpET22b(+)のApaIサイト上流からpel B leaderの終りまでを増幅した。この時、pelB leader側にK6-tag(MKHKGS)をコードするDNAとBamHIサイトが導入されるようにプライマーを設計した。増幅後、生成したDNAをApaI/BamHIで処理した。pET22-APを同じくApaI/BamHIで処理した後、脱リン酸化反応を行いその後、増幅したDNAを挿入することでNK6-AP発現ベクター:pET22-NK6-APを調製した。
pET22-APから、PCRによりAPをコードするDNAを増幅した。この時APのN末端側に制限酵素BamHIサイトとHis-tagをコードするDNAが、またC末端側にK6-tag(MKHKGS)をコードするDNAとHindIIIサイトが導入されるようにプライマーを設計した。増幅後、生成したDNAをBamHI/HindIIIで処理した。pET22b(+)を同じくBamHI/HindIIIで処理した後、脱リン酸化反応を行いその後、増幅したDNAを挿入することでCK6-AP発現ベクター:pET22-CK6-APを調製した。
各組換えAPは大腸菌BL21株(Novagen)を用いて発現させた。まずそれぞれの発現ベクターを大腸菌BL21株に導入し形質転換体を得た。形質転換体はアンピシリン(100mg/L)を含むLB培地にて前培養を3時間程度行った(37℃、250rpm)。その後アンピシリン(100mg/L)を含むLB培地中(1L)にてOD600 = 0.6に達するまで培養を行い(37℃、250rpm)、IPTGを終濃度0.1mMになるように添加した。IPTG添加後、27℃、200rpmにて24時間培養を行った。
得られた菌体は遠心分離により集菌し、ショ糖緩衝液 (50 mM Tris-HCl, pH 7.4, にEDTA 1 mM、ショ糖20wt%を溶解させたもの)により2回洗浄を行い、浸透圧衝撃法用緩衝液 (5 mM MgCl2溶液) を用い細胞を再懸濁させた後、超音波処理により細胞を粉砕した。その後遠心分離により無細胞抽出液を回収し、これをHis-tagおよびゲル濾過カラムを用いて精
製することで、各組換えAPを得た。各組換えAPのアミノ酸配列の確認は、当該組換えAPをコードするプラスミドベクターのDNA配列の確認をDNAシーケンサーにて行い、精製の確認はSDS-PAGE で行った。
次に、NK6-AP又はCK6-APとZ-QG-DNAを混合し、TGase反応に供した。
具体的には、以下の条件で、反応した。
・CK6-AP又はNK6-AP : 2.8 μM
・Z-QG-DNA : 44 μM
・MTG(分子量38,000、Ca2+イオン非依存性、pH5〜8で活性) : 1.1 U/ml
・Buffer : 50 mM Tris-HCl pH 7.0
・Temp 25℃
・Time 24 hour
(4) AP活性の測定
TGase反応の前及び後のAP活性を、以下のように確認した。
・反応後の溶液(NK-6AP(pH7.0)): 5μl/ml
・p-ニトロフェニルリン酸 : 1mM
・pH 8.0
・Temp 25℃
一分間当たりに1μmolのp-ニトロフェノールを生成するAPの量を1Uと定義した。
CK6-AP又はNK6-APとZ-QG-DNAの連結が可能なことが明らかとなった(図2)。また、連結後のAPの酵素活性は、連結前の酵素活性と同等であったことから(図3)、目的タンパク質の機能損失を伴わないタンパク質とDNAの連結が可能なことが明らかとなった。これは、DNAが目的タンパク質(NK6-AP)のペプチドタグ選択的に導入されていることも示している。
MKHKGS配列をN末端に有する緑色蛍光タンパク質(EGFP)及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)についても、実施例1の実験操作でDNAとの連結が可能なことが確認された(図4)。
異なる長さのDNAとの連結を試みた。
Z-QG-DNAの合成:
実施例1のZ-QG-DNAの合成において、アミノ化DNAの長さを20、30又は40 merとした。それ以外の点は、実施例1と同様の実験操作を行った。
結果:
DNAの鎖長に依存せず連結が可能であった(図5,3、4及び5レーンはそれぞれ20、30及び40mer Z-QG-DNAとNK6-APとの連結の結果)。高分子同士を連結する際の酵素反応の優位性を示している。
得られたタンパク質-DNA複合体を核酸部位の相補性(DNA hybridization)を介して固定化することを試みた。核酸部位選択的な固定化の達成は、DNAチップをベースとしたproteinチップや、in situ hybridizationへの応用を可能にする。
アビジンでコートされた96穴マイクロプレート(Nunc immobilizer, Streptavidin plates)上に、NK6-APとの連結に用いたDNAの相補的配列を有するビオチン化DNAを固定化し
た。ここに実施例1で得られたNK6-AP-Z-QG-DNAを、まず His-tagを使ってNiキレートカラムにより未反応 DNA とタンパク質成分を分離し、その後、PD10ゲル濾過カラムで溶出時に用いられたイミダゾールを徐去した後に添加し、洗浄操作の後、NK6-AP-Z-QG-DNAの酵素活性を指標として固定化挙動を検討した。概念図を図6に示す。
1) アビジンコートされた96-wellプレートを、TBST (25mM Tris, 2.7mM KCl, 0.137M NaCl, 0.05 vol% Tween20)でprewashした。
2) 100 μLの500 nM biotin-cDNA(TBSに溶解)を加え、1時間インキュベートした後、TBSTで洗浄した。
3) 100 μLの NK6-AP-Z-QG-DNA(0.3U/L、TBSに溶解)を加え、1時間インキュベートした後、TBSTで洗浄した。
4) ECF基質(アマシャム バイオサイエンス株式会社)を加えた。
5) AP活性を、FX-Pro molecular imager (Bio-Rad)で検出した(Ex 430 nm/Em 560 nm)。
結果を図7に示した。APに連結したDNAの相補鎖を固定化したウェルにのみAP活性が検出されたことから、NK6-APとZ-QG-DNAとの複合体(NK6-AP-Z-QG-DNA)は、DNA部位を介してタンパク質機能を保持したまま固定化されたことが明らかであった。この結果は、DNA hybridizationを介したタンパク質の固定化が可能なことを示すとともに、DNAが有する多様な機能(分子認識能:DNA aptamerや触媒能:DNAzyme)を、目的タンパク質の機能に影響をあたえることなく容易に付与することが可能なことも示している。
AP-DNA conjugateの応用例として、ATPに特異性を有するDNAアプタマーを用いる小分子(ATP)検出系の構築を試みた。その概念を図8に示す。
アビジン被覆ブラックマイクロプレート(Nunc イモビライザー)はNunc社から購入した。アルカリフォスファターゼ(AP)の基質ECFはアマシャム バイオサイエンス株式会社から購入した。 ATP (adenosine triphosphate)、ADP、AMP、GTP (guanosine triphosphate)はSigma社から購入した。
1) 5×SSCT緩衝液(クエン酸ナトリウム500 mM、NaCl 750 mM、tween 0.05 v/v%、pH 7)でアビジン被覆ブラックマイクロプレートの各wellをprewashした。
2) 5×SSC緩衝液を用いてビオチン化DNA溶液 0.5 μMを調製し 、各wellに100 μlロードして一時間室温で放置した。
3) 5×SSCT緩衝液で、フリーのビオチン化DNAを洗い流した。
4) DNAアプタマー溶液 0.1 mM、0.5 μlと5×SSC緩衝液99.5 μlを加えて調製した100 μlの水溶液 を各wellにロードして一時間室温で放置した。
5) 5×SSCT緩衝液で、フリーのDNAアプタマーを洗い流した。
6) 5×SSC緩衝液を用いて各小分子溶液を1 mM、48 μl調製したのち、各wellにロードして一時間室温で放置した。
7) 洗浄操作を行わずに、調製したAP-DNA複合体溶液 2 μlを各wellにロードして一時間室温で放置した。
8) 5×SSCT緩衝液で、フリーのAP-DNA複合体を洗い流した。
9) ECFの原液をTris-HCl緩衝液(pH 8、1 M)で10倍希釈し、この調製した溶液を各wellに100 μlロードし、一時間室温で反応を行った。
10) 蛍光イメージャーで各wellの蛍光測定を行った。
結果を図9に示した。ATPに応答したAPシグナルの変化が観察された。AP-DNA複合体が図7に示す概念に基づき、小分子検出のための分子素子として利用可能なことが明らかとなった。また、この系においては、検出限界が1mMであることが明らかとなった。
NK6-AP又はCK6-APとZ-QG-DNAの複合体の形成を、種々のpHにおいて行った。
方法:
以下の条件で、反応した。
・CK6-AP又はNK6-AP : 2.8 μM
・Z-QG-DNA : 44 μM
・MTG : 1.1 U/ml
・Buffer : 50 mM MES pH 5.5-7.0
・Buffer : 50 mM Tris-HCl pH 7.0-8.0
・Temp 25℃
・Time 24 hour
反応産物は、そのままSDS-PAGEに供した。
結果を下表及び図10に示した。CK6-AP、NK6-APとも、pH5.5〜8.0においてZ-QG-DNAとの反応が十分に進み、AP-DNA複合体を得ることができた。
APはダイマーであり、SDS-PAGEから上記に示すように、約50%以上の収率で複合体が得られていることから、少なくともダイマーあたり1つのDNAが連結しているものと予想された。
予想されているMTGの触媒反応から、ここでの連結反応はMTG活性中心であるシステイン(Cys)残基の、Z-QG-DNAのGlnへの求核置換反応によるアシル−酵素複合体の形成と、続いて起こるタンパク質のLysによるアシル−酵素複合体への求核置換反応によるMTGの脱離、の2段階で進行すると予想される。
以下の条件で反応した。
・NK6-AP(実施例1で調製したもの) : 0〜16 μM
・Z-QG-DNA(実施例1で調製したもの DNAは24 mer) : 1.6 μM
・MTG : 1.1 U/ml
・Buffer : 50 mM Tris-HCl pH 7.0
・Temp 25℃
・Time 0〜12 hour
結果を図11に示した。Z-QG-DNA濃度に対し5倍以上のNK6-AP濃度にすることにより、12時間後において反応率(AP-DNA複合体に転化したZ-QG-DNAの割合)は95%以上に達した。またZ-QG-DNA濃度に対し、5倍のNK6-AP濃度の条件下において、連結反応率の時間変化測定を行ったところ、3時間でほぼ反応が完結することが明らかとなった(図12)。
この実施例で得られたNK6-AP-DNA複合体反応溶液には、遊離のZ-QG-DNAがほとんど存在せず、競合的なハイブリダイゼーションがないため、実施例4のように反応後に溶液をHis-tag精製することなく、直接核酸部位選択的な固定化へと利用できると考えられる。
複合体を精製せずに、核酸部位選択的なタンパク質固定化に用いた。また、新たなコントロール実験として、非相補鎖DNAを提示したプレートへのNK6-AP-DNA複合体の固定化も試みた。
実験は、下記の手順にしたがって行った。
1)アビジンコートされた96-wellプレートを、TBST (25mM Tris, 2.7mM KCl, 0.137M NaCl, 0.05 vol% Tween20)でprewashした。
2)100 μLの500 nM biotin-cDNA(実施例4で用いたものと同じ。)、またはbiotin-non-cDNA(DNA部分の配列は 5'-biotin-(CH2)6-ACC CTT CCT C-3'(配列番号:27))それぞれをTBSに溶解して加え、1時間インキュベートした後、TBSTで洗浄した。
3)実施例7における反応溶液(5倍のNK6-AP濃度の条件下において、3時間反応を行ったもの)を2000倍希釈したものを100 μL加え、1時間インキュベートした後、TBSTで洗浄した。
4)ECF基質(アマシャム バイオサイエンス株式会社)を加えた。
5)AP活性を、FX-Pro molecular imager(Bio-Rad)で検出した(Ex 430 nm/Em 560 nm)。
結果を図13に示した。相補鎖を固定化したウェルにのみAP活性が検出されたことから、反応溶液を精製することなく、NK6-AP-Z-QG-DNAを固定化可能であることが明らかであった。また非相補鎖には固定化されないことが明らかとなった。
Claims (14)
- トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、ペプチド又はタンパク質へ部位特異的に外来分子を連結する方法であって:
ペプチド又はタンパク質が、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基又は第1級アミンを有するものであり、そして
外来分子が、核酸であり、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を有し、かつ標的分子に特異的に結合可能な配列を有するものであり、
連結が、標的分子に特異的に結合可能にされるものであり、
連結反応の際、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸に対する、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質のモル濃度比が、2以上である、前記方法。 - TGaseが微生物由来のものであり、かつTGaseが認識可能なGln残基(Q)が、カルボベンゾイル-L-グルタミルグリシン(Z-QG)、又はLLQG、LAQG、LGQG、PLAQSH、FERQHMDS、若しくはTEQKLISEEDLのアミノ酸配列からなるペプチド、又はGLGQGGG、GFGQGGG、GVGQGGG、若しくはGGLQGGGのアミノ酸配列からなる、N末端保護ペプチドとして存在するか、又は
TGaseがほ乳類由来のものであり、かつTGaseが認識可能なGln残基(Q)が、Z-QG、カルボベンゾイル-L-グルタミルフェニルアラニン(Z-QF)、又はEAQQIVMのアミノ酸配列からなるペプチド、又はGGGQLGG、GGGQVGG、GGGQRGG、GQQQLG、PNPQLPF若しくはPKPQQFMのアミノ酸配列からなる、N末端保護ペプチドとして存在する、請求項1に記載の方法。 - 該モル濃度比が、5以上である、請求項1又は2に記載の方法。
- TGaseを用いて、ペプチド又はタンパク質と外来分子とが連結された複合体を製造する方法であって:
外来分子が、核酸であり、TGaseが認識可能なGln残基を有し、かつ標的分子に特異的に結合可能な配列を有するものであり;そして
ペプチド又はタンパク質が、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するものであり、
連結が、標的分子に特異的に結合可能にされるものであり、
連結反応の際、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸に対する、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質のモル濃度比が、2以上である、前記方法。 - TGaseが微生物由来のものであり、かつTGaseが認識可能なGln残基(Q)が、カルボベンゾイル-L-グルタミルグリシン(Z-QG)、又はLLQG、LAQG、LGQG、PLAQSH、FERQHMDS、若しくはTEQKLISEEDLのアミノ酸配列からなるペプチド、又はGLGQGGG、GFGQGGG、GVGQGGG、若しくはGGLQGGGのアミノ酸配列からなる、N末端保護ペプチドとして存在するか、又は
TGaseがほ乳類由来のものであり、かつTGaseが認識可能なGln残基(Q)が、Z-QG、カルボベンゾイル-L-グルタミルフェニルアラニン(Z-QF)、又はEAQQIVMのアミノ酸配列からなるペプチド、又はGGGQLGG、GGGQVGG、GGGQRGG、GQQQLG、PNPQLPF若しくはPKPQQFMのアミノ酸配列からなる、N末端保護ペプチドとして存在する、請求項4に記載の方法。 - 該モル濃度比が、5以上である、請求項4又は5に記載の方法。
- TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有し、かつ標的分子に特異的に結合可能な配列を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られる、標的分子に特異的に結合可能な、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、タンパク質が、アルカリホスファターゼ、緑色蛍光タンパク質又はグルタチオン-S-トランスフェラーゼである、複合体。
- TGaseが認識可能なLys残基を有するペプチド又はタンパク質と、Z-QG、又はLLQG、LAQG、LGQG、PLAQSH、FERQHMDS、若しくはTEQKLISEEDLのアミノ酸配列からなるペプチド、又はGLGQGGG、GFGQGGG、GVGQGGG、若しくはGGLQGGGのアミノ酸配列からなる、N末端保護ペプチドを有する核酸とが、ε(γ-グルタミル)リシン結合で連結している、請求項7に記載の複合体。
- ペプチド又はタンパク質の基材表面への固定化方法であって:
a) 基材表面に固定化された核酸、
b) ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらに核酸部分が、固定化核酸の有する塩基配列の全部又は一部に相補的な核酸配列を有し、連結が、固定化核酸とハイブリダイズ可能にされているものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体
を用い、
固定化核酸と、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体の核酸部分とを、ハイブリダイズさせて固定化物を形成する工程を含むものである、前記固定化方法。 - ペプチド又はタンパク質の基材表面固定化物の製造方法であって:
a) 基材表面に固定化された核酸、
b) ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらに核酸部分が、固定化核酸の有する塩基配列の全部又は一部に相補的な核酸配列を有し、連結が固定化核酸とハイブリダイズ可能にされているものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体
を用い、
固定化核酸と、ペプチド又はタンパク質−核酸複合体の核酸部分とを、ハイブリダイズさせて固定化物を形成する工程を含むものである、前記固定化物の製造方法。 - 標的分子の検出方法であって:
ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらにペプチド又はタンパク質部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分が標的分子に特異的に結合可能な塩基配列を有し、連結が標的分子に特異的に結合可能にされているものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体を準備し;そして
対象物中に存在する標的分子と複合体とを核酸部分により特異的に結合させ;そして
結合している複合体を、ペプチド又はタンパク質部分により検出する工程を含む、前記検出方法。 - 標的分子が核酸であり、複合体の核酸部分が標的核酸分子の配列の全部又は一部と相補的な配列を有するものであり、
標的核酸分子と複合体の核酸部分とをハイブリダイズさせることにより特異的に結合させる工程を含む、請求項11に記載の検出方法。 - 標的分子の検出方法であって:
a) 基材表面に固定化された核酸、
b) 固定化核酸の全部又は一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、及び標的分子に特異性的に結合可能な配列(標的分子特異的配列)を有するアプタマー核酸、並びに
c) ペプチド又はタンパク質−核酸複合体であって、TGaseが認識可能なLys残基又は第1級アミンを有するペプチド又はタンパク質と、TGaseが認識可能なGln残基を有する核酸とを、TGaseにより連結することにより得られるものであり;さらにペプチド又はタンパク質部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分がアプタマー核酸の標的分子特異的配列の全部又は一部に相補的な配列を有するものである、前記ペプチド又はタンパク質−核酸複合体
を用い、
1) 固定化核酸に、アプタマー核酸を供し、固定化核酸とアプタマー核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマー核酸を固定化し;
2) 固定化アプタマー核酸に、標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的分子とアプタマー核酸の標的分子特異的配列を有する部分とを結合させ、かつタンパク質−核酸複合体を供し、標的分子が存在しない場合にはタンパク質−核酸複合体の核酸部分とアプタマー核酸とをハイブリダイズさせることにより、タンパク質を固定化し;
3) 固定化タンパク質の有無又はその量をタンパク質の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出する
工程を含む、前記検出方法。 - 核酸が、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を、末端に有するものである、請求項1に記載の方法。
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