JP4601220B2

JP4601220B2 - 固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物

Info

Publication number: JP4601220B2
Application number: JP2001270654A
Authority: JP
Inventors: 健三横山; 茂樹上森; 培雄五藤; 秀樹小川; 正徳仲井
Original assignee: Yushiro Chemical Industry Co Ltd; ALMT Corp
Current assignee: Yushiro Chemical Industry Co Ltd; ALMT Corp
Priority date: 2001-09-06
Filing date: 2001-09-06
Publication date: 2010-12-22
Anticipated expiration: 2021-09-06
Also published as: JP2003073687A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物に関し、更に詳しくは、希土類磁石以外の加工材料の切断に用いられる固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
シリコン、水晶、ガラス、セラミックス等の脆性材料、鋳鉄、銅、アルミニウム等の金属材料、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等のプラスチック材料等の加工材料の切断には、従来より外周刃砥石、内周刃砥石、遊離砥粒を用いたバンドソーまたはワイヤソー、固定砥粒バンドソーが使用されてきた。外周刃砥石および内周刃砥石による切断では加工材料の大型化への対応が難しく、また作業効率の面からも満足のいくものではなかった。また、遊離砥粒を用いたバンドソーやワイヤソーによる切断では、スラッジが加工材料や工作機械に付着し作業効率を低下させる問題や、付着したスラッジを洗浄する工程が必要になる等の問題点があった。
これらの問題に対し、金属線や非金属線に電着やレジンボンドを用いて砥粒を固定させた固定砥粒ワイヤソーが開発され（特開２００１−５４８５０号公報参照）、作業環境の改善や洗浄工程の簡略化等の効果が見られている。しかしながら、これまで固定砥粒ワイヤソーに使用される加工油剤は軽油（砥粒加工学会誌，Ｖｏｌ．４３，Ｎｏ．１０，１９９９年、砥粒加工学会学術講演会講演論文集，１９９６年，ｐ３８９、砥粒加工学会学術講演会講演論文集，２０００年，ｐ２８５）あるいは水道水（砥粒加工学会誌，Ｖｏｌ４３，Ｎｏ．８，１９９９年、砥粒加工学会学術講演会講演論文集，１９９７年，ｐ３６９）であり、固定砥粒ワイヤソーによる切断加工に適した油剤は開発されていない。また、遊離砥粒を分散させるためのベースを使用した報告もあるが（砥粒加工学会学術講演会講演論文集，１９９７年，ｐ３６９）、十分な効果を上げるには至っていない。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点に鑑みてなされたものであり、固定砥粒ワイヤソーによる希土類磁石を除く加工材料の切断加工に適した不水溶性加工物組成物を提供することを目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、固定砥粒ワイヤソーによる切断加工用の加工油剤組成物に要求される因子について鋭意研究を重ねた結果、加工油剤の粘度が加工性能に大きく影響することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物は、希土類磁石以外の加工材料の切断に用いられる固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物であって、不水溶性の基油を主成分として含有し、４０℃における動粘度が２．５〜７０．０ｍｍ^２／ｓであり、上記基油は、鉱物油と、アルコール化合物、又は、炭素数６〜２０のモノカルボン酸と多価アルコールとから得られたエステル化合物とを含有することを特徴とする。
上記基油は、炭化水素系溶剤を含有することができる。
また、上記基油が鉱物油、炭化水素系溶剤及びエステル化合物から構成され、これらの合計を１００重量％とした場合、該鉱物油の含有量が２０〜８０重量％、該炭化水素系溶剤の含有量が１０〜６０重量％、該エステル化合物の含有量が１〜４０重量％であり、上記加工材料がシリコンであるものとすることができる。
そして、本組成物は、更に含硫黄化合物を含有し、その含有量が本組成物のうちの０．０１〜４０重量％であるものとすることができる。
尚、本発明が対象とする加工材料としては、シリコン、水晶、ガラス及びセラミックス等の脆性材料、鋳鉄、銅、アルミニウム等の金属材料、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等のプラスチック材料等の、希土類磁石を除く一般的な加工材料である。希土類磁石は、本発明の加工油剤の加工対象からは除外する。
【０００５】
【発明の実施の形態】
本発明を更に詳しく説明する。
上記「基油」は不水溶性のものであり、鉱物油と、アルコール化合物、又は、炭素数６〜２０のモノカルボン酸と多価アルコールとから得られたエステル化合物とを含有する。
上記「鉱物油」としては、原油を常圧あるいは減圧下で蒸留して得られた潤滑油留分を、脱ろう、水素化、酸洗、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したものが挙げられる。この例としては、スピンドル油、マシン油及びニュートラル油等が挙げられる。これらのうち、スピンドル油及びニュートラル油が好ましい。また、これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
【０００６】
上記「エステル化合物」は、炭素数６〜２０のモノカルボン酸と多価アルコールとのエステルである。炭素数６〜２０のモノカルボン酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸及びステアリン酸等の直鎖飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等の直鎖不飽和脂肪酸、イソノナン酸及びイソステアリン酸等の分岐脂肪酸、１２−ヒドロキシステアリン酸及びリシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸、シクロヘキサン酸及び４−メチルシクロヘキサン酸等の環状脂肪酸、安息香酸及びｔ−ブチル安息香酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール及びソルビトール等が挙げられる。これらのエステル化合物のうち、トリメチロールプロパンのトリオレイン酸エステル、ペンタエリスリトールのテトラオレイン酸エステルが好ましい。また、これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
【０００７】
上記「アルコール化合物」としては、炭素数６〜３０の１価あるいは２価アルコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー等の油溶性グリコール類、炭素数１〜３０の１価あるいは２価アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイドを付加させた油溶性のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を用いることができる。これらのうち、炭素数が１４〜１８の１価アルコールが好ましい。また、これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
上記基油は、炭化水素系溶剤、α−オレフィン化合物等を含有することができる。
上記「炭化水素系溶剤」としては、上記潤滑油留分を熱分解あるいは接触分解により軽質化したものや、ブテン、ヘキサン等の低級不飽和化合物をオリゴマー化して液状にしたものが挙げられる。また、合成により得られる炭素数６以上の炭化水素あるいはそれらの混合物であってもよい。これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
上記「α−オレフィン化合物」としては、１−ドデセン、１−ヘキサデセン及び１−オクタデセン等の炭素数６〜５０の直鎖または分岐のα−オレフィンを用いることができる。これらのうち、１−オクタデセン及び１−ヘキサデセンが好ましい。また、これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
【０００８】
上記例示した鉱物油、炭化水素系溶剤、エステル化合物、アルコール化合物及びα−オレフィン化合物は、１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。２種以上を組み合わせて用いる場合の好ましい組み合わせとしては、例えば鉱物油、炭化水素系溶剤及びエステル化合物であり、これらの合計を１００重量％とした場合、それぞれ２０〜８０重量％（より好ましくは３０〜７０重量％、更に好ましくは４０〜６０重量％）、１０〜６０重量％（より好ましくは１５〜５０重量％、更に好ましくは２０〜４０重量％）及び１〜４０重量％（より好ましくは２〜３０重量％、更に好ましくは２．５〜２０重量％）である。
【０００９】
また、本組成物の主成分としての上記基油の含有量は、本組成物に対して好ましくは６０重量％以上、より好ましくは７０重量％以上、更に好ましくは８５重量％以上である。但し、上限は１００重量％である。上記基油の含有量が少なすぎると必要な加工性能が得られなくなり好ましくない。
【００１０】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物は、更に「含硫黄化合物」を含有するものとすることができる。この含硫黄化合物を添加することにより、より優れた加工性能を得ることができる。上記含硫黄化合物としては特に限定されないが、一般に極圧添加剤として用いられているものが好ましい。例えば、硫化鉱油、あるいは硫化豚油、硫化牛脂及び硫化ナタネ油等の硫化脂肪油、硫化オレイン酸及び硫化リノール酸等の硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル及び硫化リノール酸メチル等の硫化エステル、アルキルジスルフィド及びアルキルトリスルフィド等のポリスルフィド等が挙げられる。また、これら以外にも、アルキルスルホネート及びアルキルフェニルスルホネート等のスルホネート類、並びにそれらの塩、ＺｎＤＴＰ及びＺｎＤＴＣ等のジチオ化合物等が挙げられる。これらのうち、ポリスルフィド及び硫化エステルが好ましい。また、これらは１種単独であるいは２種以上を組み合わせて用いることができる。
【００１１】
上記含硫黄化合物の含有量は、本組成物を１００重量％とした場合、好ましくは０．０１〜４０重量％であり、より好ましくは０．０５〜３０重量％である。０．０１重量％未満では含硫黄化合物の効果が現れず、４０重量％を超えると加工材料あるいは工作機械に腐食等が発生する恐れがある。
【００１２】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物の４０℃における動粘度は、２．５〜７０．０ｍｍ^２／ｓであり、好ましくは３．０〜７０．０ｍｍ^２／ｓ、より好ましくは３．０〜６０．０ｍｍ^２／ｓ、更に好ましくは３．０〜５５．０ｍｍ^２／ｓである。７０．０ｍｍ^２／ｓを超えると加工油剤の温度上昇が大きく、加工材料の熱変形の寸法形状の制御が困難であり、２．５ｍｍ^２／ｓ未満では切断抵抗が大きく、ワイヤーが断線する恐れがある。
上記動粘度は、組成物としての動粘度が上記範囲内にあればよく、本組成物が複数の成分から構成される場合、各構成成分の動粘度すべてが上記範囲内であってもそうでなくてもいずれでもよい。
【００１３】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物には、上記基油及び含硫黄化合物以外に、対象とする加工材料に対して腐食、変色等の悪影響を及ぼさないもの、あるいは、混合後の系の安定性に影響を及ぼさないものであれば、加工性能を低下させない範囲でそのような添加剤を添加・混合することができる。例えば、消泡剤及び酸化防止剤等が挙げられる。
【００１４】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物を用いてシリコンを以下の実施例において示す条件で切断加工すると、その切断速度を好ましくは０．４５〜０．９ｍｍ／ｍｉｎ、より好ましくは０．５〜０．８ｍｍ／ｍｉｎ、更に好ましくは０．５５〜０．８ｍｍ／ｍｉｎとすることができる。
【００１５】
また、本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物を用いて炭素鋼を以下の実施例において示す条件で切断加工すると、その切断速度を好ましくは０．５５〜０．８５ｍｍ／ｍｉｎ、より好ましくは０．６〜０．８ｍｍ／ｍｉｎ、更に好ましくは０．６５〜０．８ｍｍ／ｍｉｎとすることができる。
【００１６】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物を用いてベークライトを以下の実施例において示す条件で切断加工すると、その切断速度を好ましくは１．１〜１．８ｍｍ／ｍｉｎ、より好ましくは１．２〜１．７ｍｍ／ｍｉｎ、更に好ましくは１．３〜１．７ｍｍ／ｍｉｎとすることができる。
【００１７】
【実施例】
以下に、本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物について、実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明する。
１．固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物の調製
表１〜６に示す配合割合の加工油剤組成物を調製した（実施例１〜６、比較例１〜３０）。単位は重量部である。尚、表１〜６において用いた成分は以下の通りである。
（１）鉱物油Ａ；コスモ石油ルブリカンツ社製、工業用スピンドル油
（２）鉱物油Ｂ；日石三菱社製、商品名「ニュートラルオイル３０」
（３）炭化水素系溶剤Ａ；日本油脂社製、商品名「ＮＡＳ４」
（４）炭化水素系溶剤Ｂ；日石三菱社製、商品名「０号ソルベント」
【００１８】
４０℃における動粘度をＪＩＳ−Ｋ２２８３に準じて、キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定した。
【００１９】
【表１】

【００２０】
【表２】

【００２１】
【表３】

【００２２】
【表４】

【００２３】
【表５】

【００２４】
【表６】

【００２５】
２．性能評価
（１）単結晶シリコンの切断（実施例１〜２、比較例１〜１０）
幅２００ｍｍ、高さ５０ｍｍ、長さ３０ｍｍの単結晶シリコンを加工材料とし、マルチ切断機（東綱機械製作所製）を用いて、ワイヤ線速６００ｍ／ｍｉｎ、ワークフィード速度１ｍｍ／ｍｉｎで単結晶シリコンを高さ方向に切断した。この時の切断時間及び切断速度を表１及び２に併記した。
（２）炭素鋼の切断（実施例３〜４、比較例１１〜２０）
幅２０ｍｍ、高さ５０ｍｍ、長さ１００ｍｍの炭素鋼を加工材料とし、マルチ切断機（東綱機械製作所製）を用いて、ワイヤ線速３００ｍ／ｍｉｎ、ワークフィード速度２ｍｍ／ｍｉｎで炭素鋼を高さ方向に切断した。この時の切断時間及び切断速度を表３及び４に併記した。
（３）ベークライトの切断（実施例５〜６、比較例２１〜３０）
幅５０ｍｍ、高さ５０ｍｍ、長さ５０ｍｍのベークライトを加工材料とし、マルチ切断機（東綱機械製作所製）を用いて、ワイヤ線速３００ｍ／ｍｉｎ、ワークフィード速度２ｍｍ／ｍｉｎでベークライトを高さ方向に切断した。この時の切断時間及び切断速度を表５及び６に併記した。
【００２６】
３．実施例の効果
表２より、比較例１及び２は動粘度が本発明の範囲外であり、切断速度が遅く、加工性に劣る。また、比較例３は含硫黄化合物を多量に含有する例であり、単結晶シリコンを切断中にワイヤーが破損したためにデータが得られなかった。
一方、表１より、実施例１〜２は、鉱物油と、炭化水素系溶剤と、エステル又はアルコールとを用いた例であり、いずれも優れた加工性を示した。
【００２７】
表３及び表４、表５及び表６は、表１及び表２と同じ組成の加工液であり、これらを用いた炭素鋼及びベークライトの切断加工の評価は、上記表１及び表２に示した結果とほぼ同じような傾向を示した。
【００２８】
【発明の効果】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物は、固定砥粒ワイヤソーによる希土類磁石以外の加工材料の切断加工において切断速度が良好であり、加工油剤組成物として優れた性能を示す。また、含硫黄化合物を更に含有することにより、より一層優れた加工性能を示す。

Claims

希土類磁石以外の加工材料の切断に用いられる固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物であって、
不水溶性の基油を主成分として含有し、４０℃における動粘度が２．５〜７０．０ｍｍ^２／ｓであり、
上記基油は、鉱物油と、アルコール化合物、又は、炭素数６〜２０のモノカルボン酸と多価アルコールとから得られたエステル化合物とを含有することを特徴とする固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物。
上記アルコール化合物が、炭素数１４〜１８の１価アルコールである請求項１に記載の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物。
上記基油が炭化水素系溶剤を含む請求項１又は２に記載の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物。
上記基油が、鉱物油、炭化水素系溶剤及びエステル化合物から構成され、これらの合計を１００重量％とした場合、該鉱物油の含有量が２０〜８０重量％、該炭化水素系溶剤の含有量が１０〜６０重量％、該エステル化合物の含有量が１〜４０重量％であり、上記加工材料がシリコンである請求項３に記載の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物。
更に含硫黄化合物を含有し、その含有量が本組成物のうちの０．０１〜４０重量％である請求項１乃至４のいずれかに記載の固定砥粒ワイヤソー用不水溶性加工油剤組成物。