JP4600299B2 - はんだクラッド材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、はんだ材と基材を積層して接合したはんだクラッド材を製造する方法に関する。
電子部品の接点材や封止材として、クラッド材が用いられている。クラッド材は、2種類以上の金属部材を張り合わせた複合材である。クラッド材の製造方法としては、2種類以上の金属部材を重ね合わせ、冷間圧延ないしは熱間圧延を行って圧接する手法が一般的に用いられている。電子部品の接点材や封止材としては、例えば、はんだと導電性金属とのクラッド材が使用されている。
電子部品の分野においては、デバイスの軽薄短小化に伴い、より薄く、より軽いクラッド材が求められており、従来製品においては、圧延後の基材の厚さが0.3〜0.5mm程度の厚さとなるように設計されている。例えば、特許文献1には、このような従来のはんだクラッドに関する技術が開示されている。特に、デバイス封止用のクラッド材としては、さらに薄い基材の使用が求められている。
はんだには、基材および接合対象部品のそれぞれの表面が平坦でない場合であっても、接合したい部品の隙間を埋めて、信頼性の高い接合を達成することが求められている。この要求を満たすためには、クラッド材におけるはんだは、溶融前に一定の厚さを有する必要がある。しかし、従来のクラッド材においては、溶融前のはんだの厚さは基材の厚さの2〜3割程度であった。
しかしながら、特許文献1に示されているように、薄い基材は、変形しやすく、平坦度を維持しづらい。従って、従来の製法において、基材の厚さを0.1mm程度以下とすることは困難である。
また、2種類の部材を組み合わせて圧接するクラッディングにおいては、硬度の低い部材が優先的に圧延されるため、従来のクラッド材の厚みを維持しつつ、基材に対するはんだの厚さを上げようとすると、クラッディング時の圧下力と摩擦力に負けて、基材とはんだフォイルとの位置関係にズレが生じやすくなる。また、波打ち状変形や蛇行によって基材が破断を起こしやすくなる。
このように、基材に対してはんだを厚くしようとすると、安定したクラッディングを行うことができないという問題がある。また、基材の厚さをさらに薄くしようとすると、基材の変形を招き、同様に安定したクラッディングを行うことができないという問題がある。したがって、圧延後のはんだの厚さが圧延後の基材の厚さよりも厚くなるに圧延を行うことは不可能であった。
特開2005−007412号公報
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、基材に対してはんだを厚く積層したはんだクラッド材を、安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明に係るはんだクラッド材の製造方法は、鉄系合金または銅もしくは銅合金からなる基材の一方の面にはんだを積層し、他方の面に鉄系合金または銅もしくは銅合金からなるダミー材を積層してなる積層体を圧延した後、ダミー材を分離して、基材とはんだからなるクラッド材を得ることを特徴とする。ここで、基材に用いることができる金属としては、鉄系合金または銅もしくは銅合金以外にも、封止対象となるデバイスを構成するセラミックス等と線膨張係数が近似し、はんだの濡れ性の良い材料を使用することができる。また、本明細書におけるはんだとは、低融点のろう材のことであり、有鉛半田および無鉛半田のいずれも含む。
圧延後のはんだの厚さが圧延後の基材の厚さよりも厚くなるように、圧延前の基材に対するはんだの厚さを制御することが好ましい。また、基材よりも剛性の高いダミー材を用いることが好ましく、圧延前の前記積層体において、はんだの厚さが基材の厚さの3倍以上となるように積層することが好ましい。さらに、基材の厚さを0.1mm以下とすることが好ましい。さらにまた、ダミー材の厚さを0.2〜0.5mmの範囲内とすることが好ましい。
本発明の製造方法により、薄い基材を用いても、圧延時のロールの圧下力と摩擦力による変形および破断を抑制して、安定した品質のクラッド材を安定的に供給することが可能となる。具体的には、圧延後のはんだの厚さがクラッド後の基材の厚さよりも厚くなるように圧延を行うことが可能となり、これにより、従来よりも薄い基材を用いること、かつ、該基材に対して適切な厚みのはんだをクラッドすることができ、極薄かつ軽量なデバイスの構成を可能とするとともに、高い接合信頼性を得ることができる。
本発明に係るはんだクラッド材の製造方法においては、まず、鉄系合金または銅もしくは銅合金からなる基材の一方の面にはんだを積層し、他方の面にダミー材を積層して積層体を得る。そして、前記積層体を圧延して3層からなるクラッド材を得る。図1に圧延前後の積層体の断面の模式図を示す。図1(a)は圧延前の積層体の断面の模式図であり、図1(b)は圧延後の積層体の断面の模式図である。
次に、前記3層からなるクラッド材からダミー材を分離して、基材とはんだからなるクラッド材を得る。
基材としては、鉄系合金や銅あるいは銅合金などを、厚さが0.1mm以下の帯状に加工して用いる。なお、本発明は、圧延前の厚さが0.1mm以下の基材に限定されることはないが、かかる基材を用いることにより、はんだの厚さを厚くしつつ、クラッド材の厚さを従来のものと同程度以下とすることができる。基材の圧下率は、その組成により異なるが、30〜50%程度である。
また、ダミー材としては、鉄系合金や銅あるいは銅合金などを、基材の厚さより厚く帯状に加工したものを用いる。ダミー材の厚さは、基材の厚さに対して5〜10倍程度にすることが好ましい。具体的には圧延前におけるダミー材の厚さは、圧延前の基材の厚さが0.1mm以下の場合、0.2〜0.5mm程度が好ましい。これにより、基材の剛性を上回る剛性を有するダミー材が得られる。ダミー材の板厚が0.2mm未満であると強度が不足し、薄い基材の変形を矯正しきれない。一方、0.5mmを超えるとロールの圧力が広範に分散してしまい、所要の圧接圧力を得にくくなる。
はんだについては、はんだの組成、および、圧延による圧下率と圧延後の厚さを考慮して定められる。すなわち、圧延後の基材の厚さより厚くなるように、圧延前のはんだの厚さをはんだの組成およびその圧下率を考慮して定める。なお、一般的なはんだ(Pb/5Sn、Sn/3.5Sb)については、圧延前のはんだの厚さの設定値は、圧延前の基材の厚さの3倍以上とすればよい。なお、はんだの形状も帯状となるように加工する。
なお、各部材の圧下率は、下記数式1により求める。
Figure 0004600299
帯の幅に関しては、ダミー材の幅をクラッド材の仕上がり幅に設定する。基材とはんだの帯材の幅はダミー材の幅を上回るようにする。
以上のようにして作製した帯状の各材料を積層する。ダミー材、基材、はんだの順に載置する。
つぎに、3層に積層した材料を圧延ロールによって圧延する。はんだは圧延時に容易に塑性変形するため、基材、はんだ、ダミー材の合計板厚に対して50%程度の圧下率となるように圧延ロールを調整する。圧延を行うと、基材とはんだの帯は、ダミー材の幅方向端部の圧接により、ダミー材の幅を超える部分がせん断される。このため、圧延後、クラッド材の幅はダミー材の幅に仕上がる。
積層材を圧延した後、ダミー材を基材から分離し、基材とはんだからなるクラッド材を得る。基材とダミー材はともに硬質材料であるため、50%程度の圧下率では相互にクラッドされることはなく、クラッドロール装置の出口において得られる、はんだがクラッドされた基材とダミー材とは、特別な分離工程や器具を用いなくとも、人の手で容易に分離することができる。ダミー材をはんだと接触させない順序で積層したのは、この剥離性を得るためである。
このように、本発明に係るはんだクラッド材の製造方法を用いることにより、クラッド材の厚さを薄く維持しつつ、はんだの厚さが基材の厚さを上回るはんだクラッド材を容易に得ることができる。
[実施例1]
基材としてワイヤブラシで表面を荒らした板厚0.060mm、板幅55mm、長さ10mのコバール材を用い、はんだとして板厚0.300mm、板幅55mm、長さ10mのPb/5質量%Snを用い、ダミー材として板厚0.5mm、板幅40mm、長さ10mの42合金(Fe−42%Ni)材を用い、それらを重ね合わせた。表1に、用いた基材、はんだ、ダミー材の材質および寸法を記す。
重ね合わせた後の合計の厚さ0.860mmに対して45%の圧下率となるように圧延をし、クラッディングを行った。圧延には、バックアップロール径8インチ、ワークロール径3インチの4段ロールを使用した。
その結果、ロール出口において、板幅40mm、長さ15mの3層クラッド材を得ることができた。ダミー材は、3層クラッド材の先端の圧延されていない部分から剥離を始めることにより、作業員の手の力で容易に分離することができ、これによりはんだクラッド材を得ることができた。
得られたはんだクラッド材について、表面性状の評価、厚さの評価、溶融接合における接合の良否の評価を行った。
表面性状の評価については、長尺材となっているはんだクラッド材の先端部、中央部、後端部のそれぞれの部分において10箇所を選んで行った。具体的には、実体顕微鏡で観察し、変色や剥がれ、著しいキズがないかどうかで評価を行い、ない場合を良、ある場合を不良と評価した。
厚さの評価、溶融接合における接合の良否の評価については、はんだクラッド材の先端部、中央部、後端部のそれぞれから10×10mmの寸法のものを10枚切り出し、評価を行った。
基材とはんだの厚さは、電気マイクロメータ(ミツトヨ株式会社製、スプラインマイクロメータSPM型)で測定した。具体的には、はんだクラッド材サンプルの総厚と、このサンプルからはんだ部分を機械的に取り除いた後の基材部分の厚さを測定した。ダミー材分離後のクラッド材は、はんだの厚さが0.035〜0.040mm、基材の厚さが0.030〜0.035mmとなっており、はんだの厚さの方が基材の厚さよりも厚いクラッド材となっていた。
溶融接合における接合の良否の評価については、サンプルを接合材としての銅材に溶融接合し、接合不良が生じているかどうかを透過X線による陰影像で判定し、接合不良が生じていない場合を良、接合不良が生じている場合を不良と評価した。溶融接合は窒素雰囲気中で行い、はんだの融点よりも40℃高い温度まで加熱して行った。
ダミー材分離後のクラッド材についての評価結果を表2に示す。
[実施例2]
基材としてワイヤブラシで表面を荒らした板厚0.050mm、板幅55mm、長さ10mのコバール材を用い、はんだとして板厚0.200mm、板幅55mm、長さ10mのSn/3.5質量%Sbを用い、ダミー材として板厚0.5mm、板幅40mm、長さ10mの42合金材を用い、それらを重ね合わせた。表1に、用いた基材、はんだ、ダミー材の材質および寸法を記す。
重ね合わせた後の合計の厚さ0.750mmに対して50%の圧下率となるように圧延をし、クラッディングを行った。圧延には、バックアップロール径8インチ、ワークロール径3インチの4段ロールを使用した。
その結果、ロール出口において、板幅40mm、長さ15mの3層クラッド材を得ることができた。ダミー材は、3層クラッド材の先端の圧延されていない部分から剥離を始めることにより、作業員の手の力で容易に分離することができ、これによりはんだクラッド材を得ることができた。
ダミー材分離後のクラッド材から、実施例1と同様にサンプルを10個採取し、実施例1と同様にして、基材とはんだの厚さの測定、表面性状および接合の良否の評価を行った。ダミー材分離後のクラッド材は、はんだの厚さが0.040〜0.050mm、基材の厚さが0.030〜0.035mmとなっており、はんだの厚さの方が基材の厚さよりも厚いクラッド材となっていた。ダミー材分離後のクラッド材についての評価結果を表2に示す。
[実施例3]
基材としてワイヤブラシで表面を荒らした板厚0.050mm、板幅55mm、長さ10mの無酸素銅材を用い、はんだとして板厚0.200mm、板幅55mm、長さ10mのPb/5質量%Snを用い、ダミー材として板厚0.5mm、板幅40mm、長さ10mの194合金(Cu−2.4%Fe)材を用い、それらを重ね合わせた。表1に、用いた基材、はんだ、ダミー材の材質および寸法を記す。
重ね合わせた後の合計の厚さ0.750mmに対して50%の圧下率となるように圧延をし、クラッディングを行った。圧延には、バックアップロール径8インチ、ワークロール径3インチの4段ロールを使用した。
その結果、ロール出口において、板幅40mm、長さ15mの3層クラッド材を得ることができた。ダミー材は、3層クラッド材の先端の圧延されていない部分から剥離を始めることにより、作業員の手の力で容易に分離することができ、これによりはんだクラッド材を得ることができた。
ダミー材分離後のクラッド材から、実施例1と同様にサンプルを10個採取し、実施例1と同様にして、基材とはんだの厚さの測定、表面性状および接合の良否の評価を行った。ダミー材分離後のクラッド材は、はんだの厚さが0.035〜0.040mm、基材の厚さが0.025〜0.030mmとなっており、はんだの厚さの方が基材の厚さよりも厚いクラッド材となっていた。ダミー材分離後のクラッド材についての評価結果を表2に示す。
[実施例4]
基材としてワイヤブラシで表面を荒らした板厚0.060mm、板幅55mm、長さ10mの真鍮材を用い、はんだとして板厚0.200mm、板幅55mm、長さ10mのPb/5質量%Snを用い、ダミー材として板厚0.5mm、板幅40mm、長さ10mの194合金材を用い、それらを重ね合わせた。表1に、用いた基材、はんだ、ダミー材の材質および寸法を記す。
重ね合わせた後の合計の厚さ0.760mmに対して50%の圧下率となるように圧延をし、クラッディングを行った。圧延には、バックアップロール径8インチ、ワークロール径3インチの4段ロールを使用した。
その結果、ロール出口において、板幅40mm、長さ15mの3層クラッド材を得ることができた。ダミー材は、3層クラッド材の先端の圧延されていない部分から剥離を始めることにより作業員の手の力で容易に分離することができ、これによりはんだクラッド材を得ることができた。
ダミー材分離後のクラッド材から、実施例1と同様にサンプルを10個採取し、実施例1と同様にして、基材とはんだの厚さの測定、表面性状および接合の良否の評価を行った。ダミー材分離後のクラッド材は、はんだの厚さが0.040〜0.045mm、基材の厚さが0.030〜0.035mmとなっており、はんだの厚さの方が基材の厚さよりも厚いクラッド材となっていた。ダミー材分離後のクラッド材についての評価結果を表2に示す。
なお、比較例として、ダミー材を用いなかったことを除けば、各実施例と同じはんだおよび基材を用いて、クラッド材の製造を試みたが、基材やはんだの強度不足に起因して、いずれのクラッド材においても、一様に接合したクラッド材を得ることができず、その評価を行うためのサンプル自体が得られなかった。
Figure 0004600299
Figure 0004600299
実施例1〜4は、はんだの厚さが基材の厚さの3倍以上あり、基材の厚さは0.1mm以下であり、ダミー材の厚さは0.2〜0.5mmの範囲に入っており、さらに、ダミー材の厚さは基材の厚さに対して5〜10倍の範囲に入っており、本発明に係るはんだクラッド材の製造方法の条件の中でも好ましいものの例である。このため、実施例1〜4のいずれも、サンプル数10個において、表面性状の不良数は0であり、溶融接合における接合の不良数も0であった。
圧延前後の積層体の断面の模式図であり、(a)は圧延前の積層体の断面の模式図であり、(b)は圧延後の積層体の断面の模式図である。
符号の説明
1 ダミー材
2 基材
3 はんだ

Claims (6)

  1. 鉄系合金または銅もしくは銅合金からなる基材の一方の面にはんだを積層し、他方の面に鉄系合金または銅もしくは銅合金からなるダミー材を積層してなる積層体を圧延した後、ダミー材を分離して、基材とはんだからなるクラッド材を得ることを特徴とするはんだクラッド材の製造方法。
  2. 圧延後のはんだの厚さが圧延後の基材の厚さよりも厚くなるように、圧延前の基材に対するはんだの厚さを制御することを特徴とする請求項1に記載のはんだクラッド材の製造方法。
  3. 基材よりも剛性の高いダミー材を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のはんだクラッド材の製造方法。
  4. 圧延前の前記積層体において、はんだの厚さが基材の厚さの3倍以上となるように積層することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のはんだクラッド材の製造方法。
  5. 基材の厚さを0.1mm以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のはんだクラッド材の製造方法。
  6. ダミー材の厚さを0.2〜0.5mmの範囲内とする請求項5に記載のはんだクラッド材の製造方法。
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