JP4596559B2 - 超精密歯車機構並びにマイクロギヤードモータ - Google Patents

超精密歯車機構並びにマイクロギヤードモータ Download PDF

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本発明は、歯車の噛合せ回転状態において、動力伝達効率が改善され、長時間安定した動作が可能なモジュール0.2以下の精密歯車による超精密歯車機構並びにマイクロギヤードモータに関するものである。
ウォッチやマイクロギヤードモータなどの高精度を必要とする精密機器に用いられる精密歯車において、モジュール0.2を超える金属製精密歯車は放電加工や切削加工をはじめ、プレス加工や転造成形など、様々な手法によって優れた特性や精度を有するものが作製されている。
しかしながら、モジュール0.2以下の金属製歯車に関しては精度上の問題や製造コスト等の問題が絡むことから、放電加工や切削加工またはプレス加工や転造成形は実用的な適用が難しい。このため、成型加工によって複雑で微小な構造を容易に作製することが可能な樹脂製の精密歯車が一般に広く用いられている。
その樹脂製の精密歯車は安価で大量生産が可能であるが、樹脂成型一体加工品は金属材料に比べて機械的強度や硬度が格段に低いこと、温度変化に対して寸法および形状が変化しやすいこと、クリープ特性を有していることなどから、モジュール0.2以下で信頼性の高い超精密歯車を作製する上で決して満足いくものではなかった。また、金属材料と比較して表面硬度や引張強度が非常に小さい上、耐熱性に乏しく耐久寿命に大きく影響する。
近年、様々な強化添加材の開発が進み、樹脂材料の機械的強度についても優れたものが多く商品化されているが、工具鋼をはじめとする実用的な金属材料のレベルには遠く及ばないのが現状である。このことから、高負荷用途であるほど精密歯車は金属材料であることが望ましい。
金属材料でも、成型加工が可能なダイカスト用合金であるアルミニウム合金・マグネシウム合金および銅合金が存在するが、その破断強度は750MPa程度と樹脂同様に弱く、また得られる製品の表面粗さ精度も5μmRy程度で結晶粒による不均一収縮および表面の鋭凸部も存在し、モジュール0.2以下の精密歯車としては不適当であり、工具鋼と同等もしくはそれ以上の機械的性質を持った精密歯車の誕生が望まれる。
従来の本発明の関連技術のうちで、ガラス質金属による歯車の関連技術としては、高強度を有する焼結バルク体の製造方法に基づいた歯車形状の部品が作製可能であることが示されている(特許文献1)。しかし、焼結時に粉末間の隙間分の体積収縮が起こるために寸法精度が得られにくく、また、焼結成形された部材には空孔が存在し、その空孔に起因すると見られるクラックが発生しやすく、充填率を高めたとしても金属本来の強度と比較した強度低下は否めない。高負荷・高信頼性を必要とする精密歯車の用途としては空孔の存在しない均一な組織をなしていることが望ましい。
以上の背景を基に、本発明者らは、先に体積比50%以上のガラス質金属組織から形成されたモジュール0.2以下の歯車でなることを特徴とする精密歯車、あるいはガラス質金属組織中に、100nm以下のナノ結晶を有する金属組織から形成されたモジュール0.2以下の歯車でなることを特徴とする精密歯車について、特許出願した(特許文献2)。この発明はガラス質金属の組成に関連した超精密微小歯車、それを用いた歯車機構およびその製造方法を提案し、組立工程の簡略化、表面平滑性、優れた強度を有する超精密微小歯車およびそれを用いた歯車機構を提案している。
この中でも、表面粗さは歯車機構の安定した動作を得るためにも重要なファクターである。この表面粗さに関しても、前に示したとおり、本発明者らが先に出願した特許文献2によって表面平滑性に優れた歯車およびそれを用いた歯車機構が得られることをすでに述べている。
しかしながら、今後さらに高負荷が加わる歯車動力伝達機構のような技術要求を有する歯車機構においては、複数の歯車相互が噛合う際の条件が非常に大きなファクターを占めるようになることが想定される。
そして効率的で信頼性の高い歯車機構を得るためには、歯車相互の噛合いによって生じる不安定要素を極力排除する必要がある。
特開平11−71602号公報 特願2003−310153号明細書
上記の問題点から、この発明における課題は、歯車の噛合せ回転状態において、動力伝達効率が改善され、長時間安定した特性推移で動作させることが可能なモジュール0.2以下の精密歯車による超精密歯車機構並びにマイクロギヤードモータを得ることにある。
従来、モジュール0.2以下の精密歯車で構成された遊星歯車減速機は、構成される太陽歯車、遊星歯車、内歯車の全てが樹脂製であるが、樹脂は強度や剛性が低く、またクリープ現象を持つことなどにより、主目的である高トルク化を著しく妨げてしまう。本発明者らは、これらの歯車のうち太陽歯車と遊星歯車を金属に置き換えた遊星歯車減速機をすでに実用化している。その詳細としては、図1に示すように、太陽歯車を有するキャリア(太陽キャリア)、遊星歯車、出力軸キャリアが工具鋼、内歯車は樹脂で形成されている。
高負荷が加わる主要な歯車を工具鋼に置き換えたことによって、例えば、モジュール0.04という超精密微小歯車を用いた直径2.4mmの遊星歯車減速機が、0.1mN・mの外部負荷を印加した状態で1000時間以上の寿命を維持することができるという知見を得ている。
ここで、歯車機構に用いられている歯車は、長時間における動力伝達作用によりそれぞれが相互いに摩耗することはいうまでもない。歯車面の表面粗さに呼応して摩耗粉は増加し、結晶粒の欠損など複合的な要因が加わり、摩耗はますます促進される。理想的には、摩耗がある段階まで進むと歯車面自身の表面粗さは研磨を行った状態に比較的近い段階まで改善されるが、摩耗粉が絡むことにより新たな摩耗粉の発生を助長させてしまう。
さらに、その摩耗により発生した摩耗粉は歯底部分に蓄積する。歯車機構が動作を停止した際に、分解、洗浄して摩耗粉の除去を行い再組立を行うと、再び動作するケースが度々みられた。このことから、汎用サイズの歯車機構とは異なり、モジュール0.2以下の歯車を用いた小型の歯車機構にとって、微小な摩耗粉さえも蓄積することにより動力伝達を妨げる大きな原因となるとの知見を得た。すなわち、歯車自身の摩耗と同様に摩耗粉の蓄積が歯車機構の寿命を律速する主要因となることが分かった。
また、モジュール0.2以下の歯車を用いた小型の歯車機構では、歯車機構ごとに定められる一定の動作規格を満たしていても、汎用サイズの歯車機構よりも歯車機構自身の動作揺らぎが顕著に見られた。これは歯車機構内部において、摩耗粉が歯車面で付着、剥離を繰り返しているためと考えられる。すなわち、モジュール0.2以下の歯車を用いた小型の歯車機構にとって、摩耗粉は寿命を律速するだけでなく、存在するだけでも動作時の特性に大きな悪影響を与えることが明らかになってきた。そこで、本発明においては、以下の手段を以て先に述べた優れた超精密歯車機構を得た。
本発明の請求項1は、モジュール0.2以下の精密歯車を含む超精密歯車機構でなり、ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車と結晶質金属精密歯車との噛合により超精密歯車機構を構成したことを特徴とする。
本発明の請求項2は、モジュール0.2以下の精密歯車を含む超精密歯車機構でなり、ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車同士との噛合により超精密歯車機構を構成したことを特徴とする。
本発明の請求項3は、昇温速度0.67K/sで30K以上の過冷却液体領域を有するガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる超精密歯車が少なくとも1つ噛合う超精密歯車機構を構成としたことを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1〜3のいずれかに記載の超精密歯車機構として圧縮方向に対して明瞭な非弾性領域が現れ、非弾性領域の開始点から破断に至るまでに少なくとも0.5%以上の塑性伸びを示し、圧縮降伏応力もしくは圧縮耐力が少なくとも1000MPa以上を示すガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車が少なくとも1つ噛合する構成としたことを特徴とする。
本発明の請求項5は、請求項1〜4のいずれかに記載の超精密歯車機構としてTi、Zr、Hf、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、Ptのいずれかを主成分とするガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車が少なくとも1つ噛合する構成としたことを特徴とする。
本発明の請求項6は、遊星歯車減速機構として太陽キャリア、遊星歯車、内歯、の少なくとも1つがガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車によって構成したことを特徴とする。
本発明の請求項7は、請求項1〜6のいずれかに記載の超精密歯車機構とマイクロモータとからマイクロギヤードモータを構成したことを特徴とする。
ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属は、マクロ的な方位性を持たない無秩序構造で、あらゆる方向からの外部応力に対して強く、かつ表面平滑性を呈する組織構造を持つ。このことから、歯車機構を構成する噛合う相互いの歯車の粒子欠損がなく、滑らかな歯車伝達が可能で、噛合い摩擦に起因する表面状態の変化が生じにくいため、ガラス質金属からの摩耗粉の発生を抑制でき、超精密歯車機構の寿命に好影響を及ぼす。一方、結晶質金属は界面を有する結晶粒の集合体であることから、特に結晶質金属同士であると摩耗や粒子欠損が起こりやすい。
このガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる歯車を用いた歯車機構の寿命に対する効果は、歯車機構中にガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる歯車と結晶質金属からなる精密歯車との間、あるいはガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる歯車からなる精密歯車同士の噛合いが生じる条件下で発現する。ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる歯車からなる精密歯車同士の方が、上記の理由から噛合いによる摩耗粉の発生を抑制できるためより好ましい。
そのガラス質金属は、溶融液体から過冷却液体領域,ガラス固体に至るまで安定した温度変化特性を示す。特に、昇温速度0.67K/sで30K以上の過冷却温度領域を有するガラス質金属はガラス固体としての安定性が高いため、粘性流動による射出成形、押出し成形、加圧転造成形等の安価で形状再現性の高い成形加工を用いて極めて容易に精度の高いガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる歯車が形成され、製造ばらつきに起因する歯車機構の不安定要素をより確実に取り除くことができる。
また、ガラス質金属は無秩序構造に起因する粘性流動特性を持ち、特有の変形機構(偽塑性変形)を有する。このため、ガラス質金属を有する歯車は非常に強靭であるにもかかわらず、馴染みやすい性質を有し、多少の凹凸を有する表面であっても、凹凸部のみが局部応力により効率よく変形し、平滑化されて摺動段階でナノオーダーからサブミクロンオーダーに至る表面平滑性が得られ、駆動効率の良い理想的な駆動状態が得られるよう構成できる。
特に、本発明によると、圧縮方向に対して明瞭な非弾性領域が現れ、非弾性領域の開始点から破断に至るまでに少なくとも0.5%以上の塑性伸びを示すものにおいてこの効果が顕著に現れるとの知見が得られ、さらにその場合においては降伏応力(もしくは耐力)が1000MPaあれば、特許文献2に示した引張強度の下限値である1500MPa未満の強度であってもチッピングや欠けの問題を確実に改善でき、下限値が低下しても製品寿命を維持あるいは向上できる。つまり、本発明により、歯車材料選定のバリエーションもより豊富になり、用途や産業分野によって様々な対応が可能となる。但し、降伏曲げ強度も降伏圧縮強度と同等である1000MPa以上であることがより好ましい。特に、降伏応力もしくは降伏耐力から破断応力までの強度比が1/2以下であると極めて好ましい。
本発明に係る超精密歯車機構の精密歯車としては、加工性および機械的性質・動的特性に優れた機械部品の一例として、遊星歯車減速機の複雑な形状を有する精密歯車構造体であるモジュール0.04の太陽キャリアを選定した。
図1に示す符号1はギヤハウジングであり、内周面には内歯車が形成されている。符号2はベアリングで、ギヤハウジング1に固定され、出力軸キャリア3を回転可能に軸支するよう組み付けられている。符号4はピニオンであり、図示しないモータの駆動軸に固定されている。
その遊星歯車減速機構においては、図示しないモータの駆動により、ピニオン4が回転し、太陽キャリア5aの軸に回転可能に組み込まれた3個の遊星歯車6aが回転する。この遊星歯車6aはギヤハウジング1の内歯車とも同時に噛合っていることから、太陽キャリア5aはピニオン4と同方向に減速されながら回転する。
次に、太陽キャリア5aの太陽歯車の回転により、太陽キャリア5bの軸に回転可能に組み込まれた3個の遊星歯車6bが回転する。この遊星歯車6bはギヤハウジング1の内歯車とも同時に噛合っているため、太陽キャリア5bはさらに減速されながら回転する。同様に、動力を順次伝えながら、最終的に出力軸キャリア3が回転するよう構成されている。
その遊星歯車減速機構おいては、太陽キャリア5a,5b、遊星歯車6a,6b、ギヤハウジング1の内歯車、出力軸キャリア3の少なくとも1つがガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車あるいは超精密部材によって構成されている。ここで、上記遊星歯車減速機構は、精密歯車の一方をガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属から形成する場合、結晶質金属精密歯車との噛合せによって構成する。または全てをガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属から形成した精密歯車同士の噛合せによって構成する。
ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含む金属ガラスは、Ti、Zr、Hf、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、Ptのいずれかを主成分とする。昇温速度0.67K/sで30K以上の過冷却液体領域を有し、且つ、圧縮方向に対して非弾性領域が現れ、非弾性領域の開始点から破断に至るまでに少なくとも0.5%以上の塑性伸びを示すと共に、降伏応力(もしくは耐力)が少なくとも1000MPa以上を示すものが選択されている。その代表例として、ガラス質金属歯車にNi53Nb20Ti10ZrCoCuを、結晶質金属歯車に工具鋼を適用した遊星歯車減速機構の実機試験結果を示す。
上記ガラス質金属によって形成された太陽キャリアと、結晶質合金(現状品)による遊星歯車とを作製し、これらを実装した3段型遊星歯車減速機構を電圧0.1〜3.0V仕様の2mm径のマイクロモータと連結してマイクロギヤードモータを作製した。寿命試験モード:CW1sec→停止1sec→CCW1sec→停止1sec、負荷:0.1mN・mとし、最も高負荷の加わる太陽歯車の回転数:586rpm、トルク:0.029mN・m(損失分含めない)、歯車応力:7.05MPa(損失分含めない)、初期歯車表面粗さ:2μmの条件設定により、遊星歯車機構における起動電圧の計時的な推移を測定した結果を図2および表1に示す。
Figure 0004596559
測定の結果、発明品は0時間から2000時間までの平均起動電圧が1.5Vであり、最小二乗法より算出した起動電圧の経時変化推移直線からの変動は最大で0.7Vであった。一方、現状品は0時間から故障直前(1600時間)までの平均起動電圧が1.9Vであり、起動電圧の経時変化推移直線からの変動は最大で1.4Vであった。この結果から、起動電圧は現状品よりも低く、電圧変動に至っては約1/2と発明品が極めて優れていることが判り、歯車機構の伝達損失が現状品と比べて発明品の方が格段に小さいことを示している。
また、本発明により、従来の結晶質金属を使用した遊星歯車で作成した遊星歯車減速機構は、1700時間で寿命に至ったのに対して、Ni基ガラス質金属製の太陽キャリアに採用した遊星歯車で作成した遊星歯車減速機構は、2500時間経過後も異常なく動作し、従来品の1.5倍以上の寿命であることが判明した。
この特性の優位性が現れる主な要因となる、経過時間に伴う夫々の摩耗(体積)率を、この摩耗状況を走査型電子顕微鏡による反射電子像を用いて測定した。結果を図3、図4および表2に示す。
Figure 0004596559
各撮影像中、摩耗部分が白色で表わされている。その結果を基に定量解析を行ったところ、発明品では2000時間経過時の摩耗率:4.0%であるに対し、現状品では1700時間経過時の摩耗率:16.0%であり、その歯車としての摩耗率に関しても、歯車機構としての本発明品が極めて有効であること分かった。
以上の結果を基に、特性推移および寿命に対して影響が大きい摩耗率に着目し、より大きな負荷を加えた追加試験を行った。具体的には、ガラス質金属による太陽キャリアと、結晶質合金による遊星歯車とを作製し、これらを実装した3段型遊星歯車減速機構を2mm径のマイクロモータと連結してマイクロギヤードモータを作製し、寿命試験モード:CW1sec→停止1sec→CCW1sec→停止1sec並びにCW連続(正方向のみ連続)、高負荷:0.5mN・m、最も高負荷の加わる太陽歯車の回転数:321rpm、トルク:0.146mN・m(損失分含めない)、歯車応力:35.23MPa(損失分含めない)、初期歯車表面粗さ:2μmの条件設定により、経過時間に伴う夫々の摩耗(体積)率を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0004596559
寿命試験モード:CW1sec→停止1sec→CCW1sec→停止1secに設定した場合、発明品では500時間経過時の摩耗率:6.0%であったのに対し、現状品では500時間経過時の摩耗率:12.1%であった。
また、寿命試験モード:CW連続(正方向のみ連続)に設定した場合、発明品では70時間経過時の摩耗率:5.0%であったのに対し、現状品では49時間経過時の摩耗率:22.1%であり、この時点で寿命に至って停止した。この結果から、いずれの寿命試験モードにおいても、発明品では現状品に比べて著しい摩耗低減を図れ、かつ長時間の稼動に対して極めて有利であることが確認できた。
ここまでの試験結果から、太陽キャリアだけでなく遊星歯車、さらには内歯車もガラス質金属で形成すれば、摩耗量が小さく摩耗粉の発生が少ない、極めて理想的で安定した動作が保障できる遊星歯車減速機構が形成できることが想定される。そこで、遊星歯車減速機構全体をガラス質金属に置き換え、寿命試験モード:CW連続(正方向のみ連続)、高負荷:0.5mN・m、最も高負荷の加わる太陽歯車の回転数:321rpm、トルク:0.146mN・m(損失分含めない)、歯車応力:35.23MPa(損失分含めない)、初期歯車表面粗さ:2μmの条件設定により、経過時間に伴う夫々の摩耗(体積)率を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0004596559
その結果、70時間経過時の摩耗率:2.5%、78時間経過時の摩耗率:2.9%であり、先に示した結晶質金属との摩接条件下での試験結果である70時間経過時の摩耗率:5.0%、78時間経過時の摩耗率:5.8%よりも小さい。この結果から、ガラス質金属同士の噛合い条件下では、更なる摩耗低減を図れることが確認できた、すなわち、より効率的な動力伝達が可能な超精密歯車機構が得られた。
以上のとおり、本発明によると、歯車自体からの摩耗粉の発生が抑制されることによって、理想的な歯車相互の噛合状態が長時間持続され、これに伴い動力伝達効率も改善され、長時間安定した特性推移で動作させることが可能なモジュール0.2以下の精密歯車による超精密歯車機構並びにマイクロギヤードモータが得られる。
本発明の一例に係る超精密歯車機構として太陽キャリアを実装した遊星歯車減速機構を分解状態で示す説明図である。 本発明品と現行品における起動電圧の試験経過時間推移を示すグラフである。 本発明品の太陽キャリアにおける太陽歯車のCW・CCW耐久試験による2000時間経過時の摩耗状況を示す走査型電子顕微鏡反射電子像の解析図である。 現行品の太陽キャリアにおける太陽歯車のCW・CCW耐久試験による1700時間経過時の摩耗状況を示す走査型電子顕微鏡反射電子像の解析図である。
1 ギヤハウジング
2 ベアリング
3 出力軸キャリア
4 ピニオン
5a、5b 太陽キャリア
6a、6b 遊星歯車

Claims (7)

  1. モジュール0.2以下の精密歯車を含む超精密歯車機構において、ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車と結晶質金属精密歯車との噛合により構成されたことを特徴とする超精密歯車機構。
  2. モジュール0.2以下の精密歯車を含む超精密歯車機構において、ガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車同士との噛合により構成されたことを特徴とする超精密歯車機構。
  3. 昇温速度0.67K/sで30K以上の過冷却液体領域を有するガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車が少なくとも1つ噛合うことにより構成されたことを特徴とする超精密歯車機構。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の超精密歯車機構において、圧縮方向に対して明瞭な非弾性領域が現れ、非弾性領域の開始点から少なくとも0.5%以上の塑性伸びを示し、降伏応力もしくは耐力が少なくとも1000MPa以上を示すガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車によって構成されたことを特徴とする超精密歯車機構。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の超精密歯車機構において、Ti、Zr、Hf、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、Ptのいずれかを主成分とするガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車によって構成されたことを特徴とする超精密歯車機構。
  6. 遊星歯車減速機構において、太陽歯車、遊星歯車、内歯車の少なくとも1つがガラス質金属単相あるいは100nm以下の粒径を有するナノ結晶を含むガラス質金属からなる精密歯車によって構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超精密歯車機構。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の超精密歯車機構とマイクロモータとからなることを特徴とするマイクロギヤードモータ。
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