JP4595180B2 - 光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な光学素子の作成に係るもので、異方性散乱性フィルムに光の持つ偏光性を制御する機能を付与した光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置や透過型液晶表示装置のなどの光を利用する表示装置では、観察の際の視野角を確保する(すなわち、表示装置の前面には、明るく表示画像を見せる)ことや、表示画面の全面にわたって均一な明るさで表示画面を見えるようにする目的で、装置の前面に光拡散フィルムを配置することが行われている。従来の光散乱フィルムとしては、表面をマット状に加工した樹脂フィルムや、内部に拡散材を包含した樹脂フィルムなどが用いられている。
【0003】
従来のマット状に加工した樹脂フィルムや内部に拡散材を含有するフィルムの場合、入射光の入射角度に依存した散乱性の変化といった機能を持たせることは原理上困難であり、現実的にそのような機能は持ち合わせていない。
【0004】
表面をマット状に加工した光散乱フィルムの場合、フィルム表面をサンドブラスター処理のように物理的にマット面を形成したり、或いは酸性又はアルカリ性の溶液による溶解処理により化学的にマット面を形成する。従って光の散乱性を制御する事が難しく、また縦と横の散乱性を変えるといったことも出来ないため散乱異方性を持たせることもできない。
【0005】
また、内部に拡散材を包含した光散乱フィルムにおいても、散乱性を制御するために拡散材の屈折率や大きさ、形状等を制御する試みも為されているが、技術的に難易度が高く、実用上十分であるとは言えないのが現状である。
【0006】
従って、上記の光散乱フィルムでは、散乱性の入射角度依存性がなく、光散乱の異方性も無いかもしくは少ないため、表示装置に使用した際に、不必要な散乱光が生じ、結果として表示の明るさやコントラストの低下或いは表示画像のぼけをまねくという問題点がある。
【0007】
また、上記液晶を用いた表示素子においては、電界による液晶分子の配向方向によって生じる偏光を利用するため、360度全ての方向に振動している自然光のうち、一定方向の振動を持つ光のみを選択的に通過させる機能を持つ偏光板が必要な部材となる。従来の偏光板には光透過率、染着性、配向性が高いポリビニルアルコール(PVA)に偏光機能を付与した、PVAフィルムが偏光子として主に用いられている。
【0008】
偏光板は、普通2枚の基板の裏側に1枚づつ貼り付けて使用される。この2枚の偏光板の偏光の方向を直行あるいは平行にしておくと、電界印加によって旋光性を示す液晶化合物との組み合わせにより、光を通過あるいは遮断する機能が生じ、文字表示が可能となる。
【0009】
このような形態を有する表示素子においては、入射光が偏光板を計4回通過することになり、大幅な輝度の低下がもたらされ、かつ反射面が一番外側に配置されるので視差が生じるという本質的な欠点を有する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記液晶表示素子に必要な光散乱フィルムに偏光性を持たせ、異方性光散乱性を有し、且つ偏光を制御する機能を付与したことを特徴とする光学素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光学素子は、フィルム内部に屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、屈折率の異なる部分の大きさ、形、分布を、フィルム表面での縦横方向及びフィルムの厚さ方向に沿って最適化することにより、入射角度に依存した散乱特性に変化を持たせると共に、不必要な方向への光散乱を無くし、必要な方向(範囲)のみに光を散乱させるもので、それぞれの屈折率に差があり、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物からなり、且つ光学的異方性を有する化合物、例えば液晶化合物を用いることにより、異方性散乱フィルムに偏光を制御する機能を付与したことを特徴とするものである。
【0012】
即ち、少なくとも重合性の異なる2種類の樹脂(A)カチオン重合性を有する化合物と(B)ラジカル重合性を有する化合物と、(C)化学放射線によってラジカル種を発生する重合開始剤と(D)化学放射線、あるいは熱によってカチオン種を発生する重合開始剤と、液晶化合物、が、前記(A)100重量部に対し、前記(B)が20〜200重量部、前記(C)が0.1〜20重量部、前記(D)が0.1〜20重量部、前記液晶化合物が0.1〜50重量部の量比とする前記材料から製造されたフィルム内部に、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、かつ、その屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の前記カチオン重合性を有する化合物(A)がエポキシ当量400〜5000であるビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。
【0020】
図1は、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布して、光学的異方性を有する領域を含む屈折率の高低(同図では、白と黒で表現する)からなる濃淡模様が形成された異方性光散乱フィルムに偏光を制御する機能を付与した光学素子(以下、単に光学フィルムともいう)1を示す説明図であり、左が平面図、右が断面図である。
【0021】
平面図から分かるように、屈折率の異なる部分の形状は横長である。また、断面図から分かるように、屈折率の異なる部分は、フィルムの厚さ方向に対して傾斜した層状に分布した構造である。図1では、屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布は一様(傾斜方向では、色が変化していない)である。
【0022】
図1の光学フィルムの光学特性について、まず、断面図で考える。屈折率の異なる部分が層状に分布した上記傾斜方向に沿った角度(フィルムの垂線から角度θをなす、図1の矢印2の方向)で入射する光に対しては、光散乱が生じることになる。
【0023】
上記傾斜方向とは垂直な角度(図の矢印3の方向)で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能し、入射光は散乱されずに出射する。
【0024】
次に、平面図で考えると、屈折率の異なる部分の形状が縦長(或いは横長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分から出射光の光散乱特性が、横長( 或いは縦長) となるような異方性を持つ。図1では形状が横長であるから出射光は縦長に散乱することになる。
【0025】
図2は、本発明の組成物を用いて作製した光学フィルム1の持つ入射角度依存性の一例を示すグラフである。図中実線で示すように、ある特定入射角度範囲(図では0度から60度)の光に対してはヘイズ値が80%以上あり、逆にそれとは対称な入射角度(図では−60度から0度)の光に対してのヘイズ値は20%以下になっており、これが本明細書中で言う散乱性の入射角度依存性を示す。
【0026】
このとき、光学的異方性を有する化合物、例えば液晶化合物が屈折率の異なる領域のどちらか一方、あるいは樹脂全体に存在することにより、この分子配列に依存して光の偏光性を制御することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の光学素子の組成物について詳細に説明する。光学的異方性を有する化合物としては、複屈折性を示す化合物であればよく、例えばネマチック、コレステリック、スメクッチック液晶のいずれでもよく、例えばアゾ化合物、アゾキシ化合物、アゾメチン化合物、シッフ塩基化合物、ビフェニル化合物、ターフェニル化合物、シクロヘキサン化合物、安息香酸エステル化合物、シクロヘキサンシクロヘキシル化合物、フェニルシクロヘキサン化合物、ビフェニルシクロヘキサン化合物、ビスシクロヘキサンビフェニル化合物、ピリミジン化合物、ジオキサン化合物、シクロヘキシルエタン化合物、フェニルシクロヘキシルエタン化合物、トラン化合物などが挙げられる。上記液晶化合物を単独で用いてもよいし、必要に応じて混合したものを用いてもよい。また、市販されているものを用いてもよく、例えば、MerckJapanのEシリーズ、ZLIシリーズが挙げられ、さらに比較的複屈折性が大きいもの、例えばMerckJapanのBLシリーズ、TLシリーズが挙げられるが、この限りではない。
【0028】
また、上述したように、本発明の組成物で作製した光学素子の内部は、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されている。
【0029】
この屈折率の差異を数値で言えば、0.005以上、0.25以下、更に好ましくは0.01以上、0.25以下である。この値より小さすぎると散乱性が悪くなり、逆に大きすぎるとどのような角度で光が入射しても光散乱が生じてしまうことになり、散乱性の入射角度依存性を持たせることが困難となる。
【0030】
本発明の組成物において用いられる(A)カチオン重合性を有する化合物とは、化学放射線、或いは熱によりカチオンを発生する開始剤の存在下、化学放射線照射、或いは熱により高分子化または架橋反応するカチオン重合性を有する化合物で、例えばエポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物などの1 種または2種以上の混合物からなるものである。かかるカチオン重合性を有する化合物の中でも1分子中に少なくとも1 個以上のエポキシ基を有する化合物は好ましいものであり、例えば従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0031】
芳香族エポキシ樹脂として好ましいものは、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルであって、例えばビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールB、ビスフェノールAF、ビスフェノールS、ブロム化ビスフェノールA、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック、の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物を挙げることができる。なお、ブロム化ビスフェノールAエポキシ化合物は、エポキシ当量が上がると溶剤に溶けなくなるため単独では用いずに混合系での使用が有効である。
【0032】
脂環式エポキシ樹脂の代表例は、上記ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテルの水素添加物、特に、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAD、水添ビスフェノールB、水添ビスフェノールAF、水添ビスフェノールS、水添ブロム化ビスフェノールA等などが挙げられる。
【0033】
該カチオン重合性を有する化合物のうちノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック、の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物以外は、分子量は400から1000が好ましく、これよりも小さいと液体となってしまい、前処理による硬化処理を行わない限り膜としては得られず、均一な塗布ができない。また、この範囲よりも大きな分子量では特性が得られない。
【0034】
本発明の組成物において用いられる(B)ラジカル重合性を有する化合物とは、化学放射線によりラジカルを発生する開始剤の存在下、化学放射線照射により高分子化または架橋反応するラジカル重合性を有する化合物で、例えば、構造単位中にエチレン性の不飽和結合を少なくとも1個以上含むものであり、1官能であるビニルモノマーの他に多官能ビニルモノマーを含むものであり、またこれらの混合物であってもよい。
【0035】
具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の高沸点ビニルモノマー、さらには、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、例えば、エチレングルコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどのモノ、ジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられるがこの限りではない。
【0036】
本発明の組成物において用いられる(C)化学放射線によってラジカル種を発生する光重合開始剤系としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルメチルケタール類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1等のα−アミノケトン類、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、2,2' −ビス(o−クロロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニル−1,1' −ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール等のビスイミダゾール類、N−フェニルグリシン等のN−アリールグリシン類、4,4' −ジアジドカルコン等の有機アジド類、3,3' ,4,4' −テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボキシル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物類を挙げることができる。
【0037】
さらに、(C)化学放射線によってラジカル種を発生するとともに、(D)化学放射線によってカチオン種を発生する開始剤としては、J.Photochem.Sci.Technol.,2,283(1987).に記載される化合物、具体的には鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換s−トリアジン、スルフォニウム塩、ジアゾニウム塩、フォスフォニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。また、ヨードニウム塩としては、Macromolecules、10、1307(1977).に記載の化合物、例えば、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p−アニシル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p −tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p −クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはホウフッ化塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩、芳香族スルホン酸塩等や、ジフェニルフェナシルスルホニウム(n−ブチル)トリフェニルボレート等のスルホニウム有機ホウ素錯体類を挙げることが出来る。
【0038】
一方、本発明の熱によってカチオン種を発生する熱重合開始剤(D)としては、常温、常圧の通常条件で活性を示さず、外部刺激である熱により開始種を発生するいわゆる潜在性熱重合開始剤であり、カチオン重合が可能な化合物であれば異類のエポキシ化合物同士や、エポキシとビニルエーテル化合物等の異種の重合も可能となる。具体的には、ジアルキルアリルスルホニウム類、シクロアルキルアリルスルホニウム類、アルキルジアリールスルフォニウム塩、ジアルキルアリールスルホニウム類、トリアリールスルホニウム類、ベンジルピリジニウム類、ベンジルアンモニウム類、ベンジルトリアリールホスホニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルホロアルセネート塩、テトラフルオロアンチモネート塩等、以下に示す化合物を挙げることが出来るが、この限りではない。
【0039】
【化1】
【0040】
(式中R1 、R2 は同一または異なる置換または非置換の脂肪族基でR1 、R2 は環を形成してもよい。Aは一般式[I]、[II]表される基である。
【0041】
【化2】
【0042】
(Ra〜Rdは、水素原子または、置換または非置換の脂肪族基であり、Ra〜Rdのうち少なくとも1個は非置換の脂肪族基である。また、Re〜Rgは置換または非置換の脂肪族基である。)R3は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブチトキシ基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンジルオキシ基、ベンゾイル基、ジメチルアミノ基から選ばれたひとつである。R4、R5は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基のいずれかを示す。R6、R8は、水素原子、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかであり、R7はC1〜C4のアルキル基のいずれかを示す。R9は、水素原子、シアノ基、ニトロ基のいずれかである。R10〜R12は、アルキル基、アルケニル基(水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルカノイルオキシ基で置換されていてもよい)、またはフェニル基(アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基で置換ざれていてもよい)で表される基である。
【0043】
さらに、記録する化学放射線の波長に応じて、本発明の化学放射線によってラジカル種を発生する光重合開始剤(C)を増感せしめる増感色素(E)を加えても良い。光重合開始剤(C)を増感せしめる増感色素(E)としては、シアニンまたはメロシアニン誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体などの有機染料化合物が使用でき、その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編 シーエムシー 1986年)に記載されている色素及び増感剤が用いられる。なお、これらに限定されるものではなく、その他の可視域の光に対して吸収を示す色素及び増感剤であり、使用する光重合開始剤を分光増感出来れば用いることが出来る。
これらは必要に応じて任意の比率で二種以上で用いてもかまわない。
【0044】
本発明の組成物に含有される光学的異方性を有する化合物の量は成分(A)100重量部に対して0.1から50重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは1から25重量部である。成分(B)の量は、成分(A)100重量部に対して20から200重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは30から100重量部である。成分(C)の光重合開始剤の量は、成分(A)100重量部に対し、0.1から20重量部、好ましくは1から10重量部である。さらに、成分(D)の光或いは熱重合開始剤は、成分(A)100重量部に対して0.1から20重量部、好ましくは0.5から10までの範囲をとることが可能である。成分(E)を使用する場合の量は、(A)100重量部に対して0.1から5重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは0.2から0.5重量部である。使用量は、感光層膜厚と該膜厚の光学濃度によって制限を受ける。すなわち、光学濃度が2を越えない範囲で使用することが好ましい。
【0045】
この様にこれらの各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た感光液をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマーコーター等の公知の塗工手段を用いてガラス板等の基材に塗布する。
【0046】
なお、感光液を塗布する際は、必要に応じて適当な溶剤で希釈してもよいが、その場合には基材上に塗布した後に、乾燥を要する。上記溶剤としては、ジクロルメタン、クロロホルム、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0047】
さらに、記録可能な屈折率差は作製方法や記録材料などにより制限を受けるため、大きな屈折率差を持つ場合はフィルム膜厚を薄く、小さな屈折率差を持つ場合はフィルム膜厚を厚くすることで、本発明の組成物を用いて光学フィルムを実現することが可能である。
【0048】
屈折率の異なる部分の大きさは、光散乱を生じるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持つために、その平均の大きさは直径で0.1 μmから300 μmの範囲内でそれぞれの用途に必要な散乱性に応じて適宜選択する。
【0049】
また、前記屈折率の異なる部分のフィルム表面上での分布は、光散乱を生じるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持たせるために、フィルム全体の平均屈折率を<n>とすると、その確率分布は<n>を中心とする正規分布を呈する。或いは、屈折率nの最小値nmin で最大値をとり指数関数的に屈折率の最大値nmax まで単調減少するような確率分布、或いは単調増加する確率分布に従って分布していてもよい。
【0050】
以下、本発明の光学素子を作製する手段について述べる。本発明の光学フィルムは光学的な露光手段により作製することができる。図3はランダムマスクパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。UV光源6から出た紫外光はコリメート光学系7により平行光8とし、マスク原版9を照射する。
【0051】
マスク原版9のUV照射側とは反対の面には感光材料5を密着して配置しており、マスク原版9のパターンを感光材料5に露光照射する。この際、図示のようにUV平行光8とマスク原版9は所定角度αだけ傾いて配置されているため、パターン露光は感光材料5中で、所定角度傾いてなされることになる。この角度が、光学素子中の屈折率の異なる部分の傾斜角度(すなわち、入射角度依存性の散乱角度θ)に相当することになるので、前記角度は用途に応じて0から60度程度の範囲内で適宜選択する。
【0052】
また、ここで使用する感光材料5は、UV光の露光部と未露光部を屈折率の変化形態で記録できる感光材料であり、記録しようとする濃淡模様より高い解像力を持ち、その厚みの方向にもパターンを記録できるような材料である必要がある。
【0053】
図3で用いている所定のランダムパターンを持つマスク原版9は、計算機を用いた乱数計算から作製した白黒パターンデータを、所謂フォトリソグラフィーの手法によりガラス基板10上の金属クロムパターン11としてエッチングしたものを用いてもよい。もちろんマスク原版の作成方法としては、上記方式に限定されるものではなく、リス乾板を使った写真手法などにより作製しても同様なマスクを作製できる事は周知である。
【0054】
以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例を挙げて説明する。調製した感光液は光に対して極めて敏感であるため、自然光など不要な光による感光を防ぐため、全ての作業を黄色灯下で行うことは言うまでもない。
【0055】
【実施例】
<実施例1>
ビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1004(エポキシ当量:875−975、油化シェルエポキシ(株)製商品名)100重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(VISCOAT−310HP、大阪有機化学(株)製商品名)50重量部および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製商品名)3.0重量部、アルキルジアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(SI−100L、溶液タイプ、三新化学工業(株)製商品名)3.0重量部、液晶化合物としてネマチック液晶(ZLI−1132、MerckJapan社製)10重量部に混合溶解したものを感光液とした。該感光液を青板ガラス(1.1mm厚、5インチ角)に、膜厚が約20ミクロンになるようにドクターブレードで塗布、乾燥し記録用媒体とした。
【0056】
該記録用媒体を、図3に示した光学系で、UV光源から出た紫外光をコリメート光学系により平行光とし、マスク原版を介して、記録材料面から露光した( α=22゜、20mJ/cm2 ) 後、80℃で10分加熱後、高圧水銀灯で全面照射することで定着した。し、さらに該記録用媒体を130℃で30分加熱し、硬化物をガラス基板から剥離することによって光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは20ミクロンであった。
【0057】
上記の様にして得られたフィルムについて、島津製作所(株)製の分光光度計で各角度で透過率(波長範囲;400〜600nm)を測定した。結果(全波長平均透過率)を表1に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0058】
[表1]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 89 88 88 76 35 14 15
【0059】
<実施例2>
ネマチック液晶(ZLI−1132、MerckJapan社製)の代わりにネマチック液晶(E−205、MerckJapan社製)5.0重量部を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは20ミクロンであった。結果を表2に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0060】
[表2]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 89 88 88 80 55 23 21
【0061】
<実施例3>
ビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1004(エポキシ当量:875−975、油化シェルエポキシ株)製商品名)の代わりに水添ビスフェノール系エポキシ樹脂サントート5100(エポキシ当量:900−1100、東都化成(株)製商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは17ミクロンであった。結果を表3に示す。
また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0062】
[表3]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 90 88 90 80 65 35 28
【0063】
<実施例4>
ビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1004(エポキシ当量:875−975、油化シェルエポキシ(株)製商品名)の代わりにビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1007(エポキシ当量:1750−2200、油化シェルエポキシ(株)製商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは18ミクロンであった。結果を表4に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0064】
[表4]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 89 88 85 65 31 20 19
【0065】
<実施例5>
ビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1004(エポキシ当量:875−975、油化シェルエポキシ(株)製商品名)の代わりにビスフェノール系エポキシ樹脂エピコート1100L(エポキシ当量:3000−5000、油化シェルエポキシ(株)製商品名)100重量部とグリシジルフェニルエーテル30重量部を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは18ミクロンであった。結果を表5に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0066】
[表5]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 80 81 78 70 28 21 19
【0067】
<実施例6>
グリシジルフェニルエーテルの代わりにジブロモトリルグリシジルエーテル(BROC、日本化薬(株)社製)を使う以外は実施例5と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは15ミクロンであった。結果を表6に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0068】
[表6]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 80 78 78 61 24 19 15
【0069】
<実施例7>
トリプロピレングリコールジアクリレート(VISCOAT−310HP、大阪有機化学製(株)商品名)の代わりにネオペンチルグリコールジアクリレート(VISCOAT−215、大阪有機化学製(株)商品名)を使う以外は実施例6と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは15ミクロンであった。結果を表7に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0070】
[表7]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 83 83 81 76 50 23 22
【0071】
<実施例8>
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製商品名)3.0重量部の代わりに2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン(DAROCURE1173、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製商品名)3.0重量部を使う以外は実施例6と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは16ミクロンであった。結果を表8に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0072】
[表8]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 89 88 85 67 31 19 20
【0073】
<実施例9>
アルキルジアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(SI−100L)の代わりに、プレニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(アデカオプトンCP−77、旭電化工業(株)商品名)に変える以外は実施例6と同様にして操作し、作製した光学素子を得た。得られた該フィルムの厚みは16ミクロンであった。結果を表9に示す。また、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところp偏光の光が優勢であった。
【0074】
[表9]
測定角度(°) 0 10 20 22 25 30 40
透過率(%) 89 88 90 68 35 17 15
【0075】
<比較例1>
実施例1において、液晶化合物としてネマチック液晶(ZLI−1132、MerckJapan社製)を用いないこと以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは70ミクロンであり、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところ、どちらの偏光に対しても差は認められなかった。
【0076】
<比較例2>
実施例6において、液晶化合物としてネマチック液晶(ZLI−1132、MerckJapan社製)を用いないこと以外は実施例6と同様にして操作し、作製した光散乱フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは65ミクロンであり、p及びsそれぞれの偏光に対しての回折効率を測定したところ、どちらの偏光に対しても差は認められなかった。
【0077】
【発明の効果】
本発明に係る組成物を用いれば、任意の入射光のうち、一定方向の振動を持つ光を優先的に通過させる機能、即ち光の持つ偏光性を制御することが可能であり、且つ所定角度で入射する光に対しては光散乱が生じ、逆にそれとは垂直な光に対しては透明フィルムとして機能することにより、光散乱性に入射角度選択性を持ち、そのため、散乱性を要する光と散乱性が不要な光とを、そのフィルムへの入射角度により分離することができ、表示装置などに用いた場合に、不必要な散乱を生じることなく表示の明るさや細かさ、コントラストを向上し、且つ表示像のぼけを軽減させる等の効果がある光学素子を作製することができ、さらに当該光学素子は薄膜化しても効果があるため、結果として装置の小型化、薄型化、軽量化を図ることが可能となる。
【0078】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子を示す説明図であり、左が平面図、右が断面図である。
【図2】本発明の光学素子の持つ入射角度依存性の一例を示すグラフ。
【図3】図1に示す構造の光学素子を、マスクパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…光学素子
2…散乱方向から入射する照明光
3…透過方向から入射する照明光
4…実測したヘイズ値のプロット
5…感光材料
6…UV光源
7…コリーメート光学系
8…平行光
9…マスク原版
10…ガラス基板
11…クロムパターン
12…光ファイバー
Claims (2)
- 少なくとも重合性の異なる2種類の樹脂(A)カチオン重合性を有する化合物と(B)ラジカル重合性を有する化合物と、(C)化学放射線によってラジカル種を発生する重合開始剤と(D)化学放射線、あるいは熱によってカチオン種を発生する重合開始剤と、液晶化合物が、前記(A)100重量部に対し、前記(B)が20〜200重量部、前記(C)が0.1〜20重量部、前記(D)が0.1〜20重量部、前記液晶化合物が0.1〜50重量部の量比とする前記材料から製造されたフィルム内部に、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、かつ、その屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造である
ことを特徴とする光学素子。 - 前記カチオン重合性を有する化合物(A)がエポキシ当量400〜5000であるビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
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