JP4594532B2 - 記憶遺伝子を決定するための遺伝子チップ技術 - Google Patents

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Description

【0001】
背景技術
ヒトを含む多くの生物が持っている1つの特性は、過去の出来事の記憶である。この特性は、その枝分かれ(ramification)の多くを説明する現在手に入る多くの情報を用いて、数十年間にわたり研究されてきた。例えば、短期記憶を含む転写非依存性記憶(transcription−independent memory)および長期記憶を含む転写依存性記憶(transcription−dependent memory)という2つの基本的な記憶タイプが同定されている。
【0002】
これまで比較的知られていなかった記憶の1つの態様は、記憶の発現に貢献する遺伝子の正体である。記憶形成に貢献する遺伝子の正体についての調査はまだ始まったばかりである。記憶形成に関係する遺伝子の同定は、(a)認知機能障害の遺伝的疫学、(b)これらの遺伝子の異なる対立遺伝子形態(特定の形態の認識に対する異なるパフォーマンスレベルに関係している)を保持する個体の診断手段および(c)様々な形態の認識機能障害を最終的に改善するための薬物を発見するための新しい標的(および特定の薬物は診断テストによって特定の形態の認識機能障害にマッチし得る)を提供する。このように、記憶形成に関係する遺伝子を同定するために利用できる技術があれば有益であろう。
【0003】
発明の概要
本発明は、所定の実験プロトコルによって生じさせた記憶形成に対する差次的な影響を用いて、転写依存性記憶形成(特に長期記憶形成)に関与する遺伝子を同定することができるという出願人の知見に関する。任意の2つの実験的プロトコル間の有意差は、転写依存性記憶の誘導にある。比較しようとする任意の具体的な2つのプロトコル間の有意差は、その実験グループにおける転写依存性記憶の誘導および対照グループにおける転写依存性記憶の不在である。
【0004】
転写非依存性記憶には、短期記憶、中間(中)期記憶および(ハエにおいては)感覚消失抵抗性記憶(anesthesia−resistant memory)などの様々な「記憶相」が含まれる。これらの形態に共通していることは、RNA転写の薬理学的インヒビターがこれらの記憶を妨げない、ということである。転写依存性記憶は通常は長期記憶と呼ばれ、RNA合成のインヒビターはその出現を遮断する。
【0005】
よって、本発明は、転写依存性記憶(特に長期記憶)に関与する遺伝子を同定する方法であって、(a)非ヒト動物(特に非ヒト哺乳動物、他の脊椎動物および無脊椎動物)を、その動物において転写依存性記憶形成を誘導するのに充分な条件下で訓練する工程;(b)工程(a)で訓練した動物の脳組織からRNAを抽出する工程;(c)工程(b)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;(d)工程(c)で合成したDNAプローブを、その動物のゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含むマイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下で、該マイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程;(e)工程(d)で生成されたシグナルを検出する工程;ならびに(f)工程(e)で検出されたシグナルと対照において検出されたシグナルとの統計的比較を実施する工程を含む方法に関する。
【0006】
1つの態様において、対照は、(i)適切な条件下において非ヒト対照動物(特に非ヒト哺乳動物、他の脊椎動物および無脊椎動物)を訓練する工程であって、該適切な条件とはその対照動物内で転写依存性記憶形成を誘導するのに不充分な条件である工程;(ii)工程(i)で訓練した対照動物の脳組織からRNAを抽出する工程;(iii)工程(ii)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および(iv)工程(iii)で合成したDNAプローブを、その動物のゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含むマイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下で該マイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程を含む方法により得られる。工程(a)および工程(i)の実験条件は、(実験)処理ペアを構成する。実験条件における工程(a)と工程(i)との有意差は、転写依存性記憶の誘導にある。
【0007】
第2の態様において、対照は、(i)非ヒト対照動物の脳組織からRNAを抽出する工程;(ii)工程(i)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および(iii)工程(ii)で合成したDNAプローブを、その動物のゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含むマイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下で該マイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程を含む方法により得られる。この対照の態様において、対照動物は未処理の(訓練されていない)動物である。
【0008】
本明細書中で使用される対照動物とは、その動物において転写依存性記憶形成を誘導するのに充分な条件下で訓練される動物と同じ種であって且つ他の全ての点でその動物と同等な(例えば同じ年齢および性別の)動物である。
【0009】
特定の態様において、RNAは、訓練された動物または対照動物の扁桃から抽出する。他の態様において、RNAは、訓練された動物または対照動物の海馬から抽出する。更に他の態様において、ハイブリダイズしたプローブからのシグナルは、検出前に増幅される。他の態様では、工程(e)で検出されたシグナルと、転写依存性記憶ではなく転写非依存性記憶を誘導するのに充分な条件下で対照動物を訓練することによって得られる対照において検出されたシグナルとの統計的比較を実施する。
【0010】
転写依存性記憶は、特定の実験条件を用いて誘導することができる。1つの態様において、転写依存性記憶は、恐怖増強驚愕応答(fear−potentiated startle response)の間隔訓練プロトコル(spaced training protocol)を用いて、非ヒト動物において誘導される。第2の態様において、転写依存性記憶は、シャトル−ボックス回避プロトコル(shuttle−box avoidance protocol)を用いて非ヒト動物において誘導される。第3の態様において、転写依存性記憶は、恐怖条件付け文脈プロトコル(contextual fear conditioning protocol)を用いて非ヒト動物において誘導される。
【0011】
また本発明は、ショウジョウバエ属において転写依存性記憶に関与する1つまたは複数の遺伝子を同定する方法であって、(a)ショウジョウバエを、該ショウジョウバエにおいて転写依存性記憶形成を誘導するのに適した条件下で訓練する工程;(b)工程(a)で訓練したショウジョウバエの頭部組織からRNAを抽出する工程;(c)工程(b)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;(d)工程(c)で合成したDNAプローブを、該ショウジョウバエのゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含む該マイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下でマイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程;(e)工程(d)で生成されたシグナルを検出する工程;ならびに(f)工程(e)で検出されたシグナルと対照において検出されたシグナルとの統計的比較を実施する工程を含む方法にも関する。
【0012】
特定の態様において、対照は、(i)適切な条件下において対照ショウジョウバエを訓練する工程であって、該適切な条件とはその対照ショウジョウバエにおいて転写依存性記憶形成を誘導するのに不充分な条件である工程;(ii)工程(i)で訓練した対照ショウジョウバエの頭部組織からRNAを抽出する工程;(iii)工程(ii)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および(iv)工程(iii)で合成したDNAプローブを、その対照ショウジョウバエのゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含むマイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下で該マイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程を含む方法に従って得られる。工程(a)および工程(i)の実験条件は、(実験)処理ペアを構成する。実験条件における工程(a)と工程(i)との有意差は、転写依存性記憶の誘導にある。
【0013】
第2の態様において、対照は、(i)対照ショウジョウバエの頭部組織からRNAを抽出する工程;(ii)工程(i)で抽出したRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および(iii)工程(ii)で合成したDNAプローブを、そのショウジョウバエのゲノム遺伝子に由来するDNA配列を含むマイクロアレイチップ上の相補的なDNA配列に該DNAプローブをハイブリダイズさせるのに適した条件下で該マイクロアレイチップに曝露する工程であって、該プローブが相補的なDNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成される工程を含む方法に従って得られる。対照のこの態様において、対照ショウジョウバエは未処理の(訓練されていない)ハエである。
【0014】
本明細書中に使用される「対照ショウジョウバエ」とは、そのショウジョウバエにおいて転写依存性記憶を誘導するのに充分な条件下で訓練されるショウジョウバエと同じ種であって且つ他の全ての点でそれと同等なショウジョウバエである。
【0015】
ショウジョウバエにおける転写依存性記憶に関与する1つまたは複数の遺伝子の同定方法の1つの態様では、DNAプローブを蛍光マーカーで標識し、蛍光アッセイを用いてシグナルを検出する。特定の態様では、ハイブリダイズしたプローブからのシグナルを検出前に増幅する。他の態様では、工程(e)で検出されたシグナルと、転写依存性記憶ではなく転写非依存性記憶を誘導するのに充分な条件下で対照ショウジョウバエを訓練することによって得られた対照において検出されたシグナルとの統計的比較を行う。
【0016】
転写依存性記憶は、間隔訓練プロトコル(例えば嗅覚的パヴロフの条件付けの一定間隔訓練)を用いてショウジョウバエにおいて誘導することができる。転写非依存性記憶は、集中訓練プロトコル(massed training protocol(嗅覚的パヴロフの条件付けの集中的訓練)を用いてショウジョウバエにおいて誘導することができる。
【0017】
転写依存性記憶を誘導するのに充分な条件下で訓練した動物と、転写依存性記憶を誘導するのに不充分な適切な条件下で訓練した対照動物とで、特定の遺伝子の転写レベルにおいて統計的に有意な差があれば、その遺伝子を候補記憶遺伝子(CMG)として同定する。特定の態様において、一定間隔で訓練されたグループと集中的に訓練されたグループとの間で、特定の遺伝子の転写レベルにおいて統計的に有意な差があれば、その遺伝子を候補記憶遺伝子として同定する。
【0018】
転写依存性記憶を誘導するのに充分な条件下で訓練した動物と未処理の(訓練されていない)対照動物との間で、特定の遺伝子の転写レベルに統計的に有意な差があれば、その遺伝子を候補可塑性(plasticity)遺伝子(CPG)として同定する。特定の態様において、一定間隔で訓練されたグループと訓練されていないグループとの間で、特定の遺伝子の転写レベルに統計的に有意な差があれば、その遺伝子を候補可塑性遺伝子として同定する。
【0019】
発明の詳細な説明
特定の「長期記憶」を生じさせるために、動物を、制御された実験条件下で特定の訓練プロトコルに付す。たとえばパヴロフの条件付け手順では、2つの特定の刺激を時間的に連続して提示して、「連想的学習および記憶」を生じさせる。2つの刺激の一方は「条件刺激」(CS)と呼ばれ、他方は「非条件刺激」(US)と呼ばれる。USは通常、「反射的な」様式による訓練を行う前に「非条件付け応答」(UR)を惹起する自然強化因子である。CSとUSが対になると、USが提示される前に(またはUSの非存在下で)、CSに対して「条件付け応答」(CR)が出現し始める。特定のCS−US対合に対するCRが「学習」された後で、記憶形成が始まる。
【0020】
この特定の実験的経験の記憶形成は2つの一般的形態で存在しうる。すなわち、転写非依存性と転写依存性である。前者としては、短期記憶、中(または中間)期記憶、および(ハエにおける)感覚晶質抵抗性記憶(anesthesia−resistant memory)など様々な「記憶相」が挙げられる。これらの型に共通するのは、RNA転写を薬理学的に阻害する物質がこれらの記憶を破壊しないということである。後者の型は通常、長期記憶と呼ばれ、RNA合成の阻害物質はその出現を遮断する。
【0021】
動物モデルにおいては、遺伝子突然変異、薬理学的遮断、解剖学的病変、または特定の訓練プロトコルなど様々な実験処理がこれらのタイプの記憶の1つ以上に対して影響を及ぼしうる。とくに、一部の実験処理は、正常量の転写非依存性記憶を引き起こすが、転写依存性記憶は引き起こさない。このような知見は、有益なDNAチップ比較の根拠を成すものである。一般に、2つの実験プロトコルの比較を行う。すなわち、転写非依存性記憶と転写依存性記憶の両者を誘発するのに十分なプロトコル(実験群)と、転写非依存性記憶のみを引き起こすプロトコル(対照群)である。次いで、これらの2つのプロトコルの転写物レベル差が検出可能であれば、実験的に誘発させた学習の転写依存性記憶に特異的に起因するものであると考えられうる。本明細書中では、これらの転写物を「候補記憶遺伝子」(CMG)と呼ぶ。
【0022】
実験条件を制御して特定タイプの学習を誘発させるのであるが、他の実験的非制御型の学習も起こりうる。すなわち、対照群は特定の実験課題の転写依存性記憶を示さない場合もあるが、それにもかかわらず非制御型学習経験の転写依存性記憶を示すことがある。このような経験の1つのタイプとして、CSまたはUS(単独)のみに対して、または時間的に対合されない(これは「連想学習」のカギとなる重要要件である)CS−US提示に対して起こる潜在的「非連想」型の学習がある。すなわち、転写依存性の「非特異的」記憶が上記定義の対照群中に存在しうる。この知見は、「非特異的」学習に関与するより広範なクラスの転写物を生じさせるが、これを我々は候補可塑性遺伝子(CPG)と呼ぶ。上記定義の実験群とナイーブ(未訓練)動物のDNAチップ比較を行うと、CPGがCMGとともに得られる。
【0023】
ショウジョウバエにおける行動−遺伝学的研究により、パヴロフの臭気(odor)−刺激(shock)学習パラダイム後の記憶形成に様々な影響を及ぼす1対の訓練プロトコルが確立されている。つないで「集中させた」(すなわち、セッション間に休憩間隔を設けない)10個の訓練セッションは、最大の学習(獲得)と転写非依存性記憶(タンパク質合成に依存しない)(早期記憶、短期記憶)を引き起こす。一方、「間を置いた」(すなわち、セッション間に15分間の休憩間隔を設ける)10個の訓練セッションは、同等レベルの学習と転写非依存性記憶(早期記憶)、ならびに最大レベルの転写依存性記憶(タンパク質合成依存型長期記憶(LTM)を含む)を引き起こす。LTMは間隔訓練を必要とする。すなわち、48個の訓練セッションを集中させたものでもLTMを誘発することができない[テュリーら(Tully et al.)、Cell, 79:35-47 (1994) ]。間隔訓練によって誘発されるタンパク質合成依存型LTMは、CREBリプレッサーの過剰発現により完全に遮断される(図1)[ユィンら(Yin et al.)、Cell, 79:49-58 (1994) ]。タンパク質合成依存型かつCREB依存型のLTMが遮断される間隔訓練の後に生じる記憶曲線は、正常なハエにおける集中訓練によって生じるものと同様である。一方、CREBアクチベーターが過剰発現されると、より少ない訓練(1つの訓練セッション)または集中訓練でLTMが誘発される(図2)[ユィンら(Yin et al.)、Cell, 81:107-115 (1995) ]。すなわち、LTMの誘発はタンパク質合成とCREBの両者に依存する。これらの結果から、間隔訓練プロトコルと集中訓練プロトコルの間に見られる機能差は、前者の後に転写依存性記憶が出現することだけであることがわかる。
【0024】
この知見は、転写依存性記憶形成の際に転写的に調節される付加的な「下流」遺伝子を同定するための識別スクリーニングの根拠を成すものである。当該分野において公知の方法[たとえばサムブルークら(Sambrook et al. )編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor University Press, New York (1989) ;およびアウスベルら(Ausubel et al.)編、Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1997)参照]に従い、間隔訓練または集中訓練を受けたハエの頭部から抽出したRNAを用いて、DNAプローブを合成した。RNAは、既報[たとえばドラインら(Drain et al.)、Neuron. 6:71-82 (1991)参照;この文献の開示内容は引用により本明細書に取り込まれる]に従い、ハエの頭部から抽出した。ハエに対する間隔訓練および集中訓練は、既報[たとえばトゥリーら(Tully et al.)、Cell, 79:35-47 (1994) ;およびトゥリーとクイン(Tully and Quinn )、J. Comp. Physiol., 157:263-277 (1985) 参照;これらの文献の開示内容は引用により本明細書に取り込まれる]に従い行った。当該分野において公知の方法[たとえばサムブルークら(Sambrook et al. )編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor University Press, New York (1989) ;およびアウスベルら(Ausubel et al.)編、Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1997)参照]に従い、相補的DNA(cDNA)プローブを抽出RNAから合成した。次いで、複合cDNAプローブ混合物を、1542ショウジョウバエ遺伝子のDNA配列(標的DNA配列)を含むマイクロアレイチップ(Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA ;たとえば米国特許第5,445,934号;およびラムセイ(Ramsay)、Nature Biotechnology, 16:40-44 (1998) も参照されたい;これらの文献の開示内容は引用により本明細書に取り込まれる)にハイブリダイズさせた。特定の態様においては、DNAプローブを検出可能マーカー(たとえば蛍光マーカー)で標識する。ハイブリダイズしたDNAプローブからのシグナルを、当該分野において公知の方法[たとえばサムブルークら(Sambrook et al. )編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor University Press, New York (1989) ;およびアウスベルら(Ausubel et al.)編、Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1997)参照]に従い、増幅および検出した。特定の態様においては、蛍光アッセイを用いてハイブリダイゼーションを検出した。間隔訓練群と集中訓練群の間で検出されたシグナルを比較することによって、統計的比較(DNAチップ比較)を行った。
【0025】
間隔訓練群と集中訓練群の転写物レベルのわずかな差を検出する統計的信頼性を向上させる標本数とシグナル変換アルゴリズムが決定されている。好ましい態様においては、各処理プロトコルについて、処理群1つあたり10個のチップという標本数(各遺伝子について、間隔訓練群では10個のチップ、集中訓練群でも10個のチップ)が、間隔訓練群と集中訓練群の転写物レベルのわずかな差を検出する統計的信頼性を向上させる。好ましい態様においては、下記のシグナル変換アルゴリズムを用いて、統計的比較(DNAチップ比較)を行う。
【0026】
1.特定の遺伝子に対して1組のプライマー対について検出されるシグナル間の「平均差」を求める。完全にマッチした(PM)シグナルとミスマッチ(MM)のシグナルの平均差を、アフィメトリックス社デザイン・ソフトウエア解析法 (Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA )によって求める。
【0027】
2.ボックス・コックス変換:
10未満(below)の平均差値があれば排除する。次いで、各チップ上の各遺伝子についての残余平均差値を、当該チップ全体の全体平均差(全ての遺伝子に対する)によって正規化する。
【0028】
総平均=全てのチップおよび全ての遺伝子/チップについての全体平均差(Avg.Diff.)
正規化係数(チップXの場合)=チップXの全体平均差/総平均
正規化(平均差)=(チップXの正規化係数)×(チップX上の遺伝子Y)
変換後平均差={ln[正規化(平均差)]}×2720.75
【0029】
3.平均と標準誤差を求める。標準t検定(アルファ=0.05)を用いて、各遺伝子Yについて、間隔訓練を受けたハエと集中訓練を受けたハエの平均を比較する。p≦0.05の場合には、間隔訓練を受けたハエにおける特定の遺伝子の平均シグナル変換値は、集中訓練を受けたハエにおける当該遺伝子の平均シグナル変換値と統計的に差があるものとみなされる。
【0030】
あるいは、下記のシグナル変換アルゴリズムを用いて、統計的比較(DNAチップ比較)を行うこともできる:
【0031】
1.特定の遺伝子に対して1組のプライマー対で検出されるシグナル間の「平均差」を求める。完全にマッチした(PM)シグナルとミスマッチ(MM)のシグナルの平均差を、アフィメトリックス社デザイン・ソフトウエア解析法(Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA )によって求める。
【0032】
2.ボックス・コックス変換
特定の遺伝子について負の平均差があればゼロ化する。各チップ上の各遺伝子について「ゼロ化された平均差」(Avg.Diff.0)を、当該チップ全体の全体「平均差」によって正規化する。
【0033】
a)Avg.Diff.≧0の場合には、Avg.Diff.0=Avg.Diff.となり、Avg.Diff.<0の場合には、Avg.Diff.0=0となる。
【0034】
b)正規化:
総平均=全てのチップおよび全ての遺伝子/チップについての全体Avg.Diff.
正規化係数(チップXの場合)=チップXの全体Avg.Diff./総平均
正規化(Avg.Diff.0)=正規化係数(チップXの場合)×(チップX上の遺伝子Y)(各遺伝子について)
【0035】
c)変換後Avg.Diff.={ln[正規化(Avg.Diff.0)]}×2720.75136
【0036】
3.平均と標準誤差を求める。t検定比較により、間隔訓練群の平均と集中訓練群の平均を比較する。p≦0.05の場合には、間隔訓練を受けたハエにおける特定の遺伝子についての平均シグナル変換値は、集中訓練を受けたハエにおける当該遺伝子についての平均シグナル変換値と統計的に差があるものとみなされる。
【0037】
間隔訓練群で検出されるシグナルと集中訓練群で検出されるシグナルとの統計的比較(DNAチップ比較)を行う際、他のシグナル変換アルゴリズムを用いることができる。
【0038】
これらの専用的な方法を用いて、キイロショウジョウバエについて、1542の統計的な間隔訓練対集中的訓練の比較(Student t−検定)を決定した。転写依存型記憶形成中にその転写が調節される候補記憶遺伝子(CMG)(転位成分やミトコンドリア遺伝子を含まない)を、間隔訓練群と集中訓練群との間のDNAチップ比較(統計的比較)から同定した。別々に調節される転写産物は、パヴロフの臭気−刺激学習パラダイムによって誘導される「連想的」LTMに特異的に関与するものを表す。
【0039】
所定の遺伝子に対して10未満の平均差を間隔対集中比較(24時間記憶)から削除した、シグナル変換アルゴリズムを用いて統計的分析から決定されたキイロショウジョウバエに由来するCMGを、表1に示す。所定の遺伝子に対する負の平均差を間隔対集中比較(24時間記憶)からゼロにしたシグナル変換アルゴリズムを用いて統計的分析から決定したキイロショウジョウバエに由来するCMGを、表2に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004594532
Figure 0004594532
【0041】
【表2】
Figure 0004594532
【0042】
上記の統計手法は「統計的候補」を示唆するに過ぎない。使用される統計的方法(および他の同様の方法)の基本的特徴は「真の陽性」と共に「偽陽性」および「偽陰性」候補が得られることである。したがって「統計的候補」には経験依存的な遺伝子転写の変化を検出する独立した方法を適用しなければならない。そのような独立した方法には例えばノーザンブロット解析、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)およびRNアーゼ保護アッセイなどが含まれ、同定された統計的候補を裏付けるために使用できる。これらのデータの定量的解析も、偽陽性および偽陰性結果に供される。
【0043】
本明細書において統計的方法のわずかな変更が「統計的候補」の異なる集合を生じる可能性がある。正規化された差スコアの分布を得るには、多くの場合、1 種類以上の型のデータ変換を行なえば十分である。しかし使用される各データ変換は統計的候補の異なる集合を与えるだろう。またどのシグナル検出法でも、正確に検出するには低すぎる「ベースライン値」を解明しなければならない。そのような値を「ゼロ」に設定するというのがこの問題点に対処する一つの方法である。もう一つの方法はそのような値をデータセットから排除する(例えば10未満の値を排除する)ことである。
【0044】
チップデータはどの転写物が記憶に関与するかに関して遺伝子ごとに確証的な情報を与える。チップデータは全遺伝子転写物にわたって様々な刺激に対する正確な協調的転写応答も与える。特にチップデータは遺伝子転写物が記憶に対して持つ協調的効果に関する情報を与える。
【0045】
ショウジョウバエのほとんどの遺伝子は哺乳類ホモログを持つことが明らかになっており、このことは記憶形成に関与するショウジョウバエ遺伝子の大部分にあてはまる(DubnauおよびTully,Ann.Rev.Neurosci21:407−444(1998))。ショウジョウバエでは哺乳類ホモログによってそのハエホモログを機能的に置換できるという知見が増えつつあるので、この発見は対応する哺乳類ホモログに直結する。
【0046】
長期記憶に対して間隔訓練と集中訓練がもたらす効果に差があることは、動物界に広く観察される現象である。特に、長期記憶に対する間隔−集中間の効果の差は、最近、条件付け恐怖増強驚愕効果(conditioned fear-potentiated startle effect) に関してラット(哺乳類モデル系)で確立されている。この恐怖増強驚愕パラダイムでは、予めフットショックと組み合わせておいた条件刺激(CS)の存在下での驚愕の大きさの増大から記憶が推論される。ラットの集中訓練 (10秒の試行間間隔で4回のCS−ショックの組み合わせ)は転写依存性の記憶を本質的に生成しないが、間隔訓練(8分の試行間隔で4回の組み合わせ)は有意な転写依存性記憶を生じる(図6)(Josselynら,Society for Neurosci.24,926,Abstract 365.10(1998))。さらに、ウイルスベクター技術によって扁桃(amygdala)に送達されたCREB活性化因子の過剰発現は、ショウジョウバエで観察されたものとまさに類似する形で、集中訓練による記憶を強化する(図7)(Josselynら,Society for Neurosci.24:926,Abstract 365.10(1998))。これらのデータは、哺乳類CMGの同定に利用されるCREB依存性の間隔−集中間の差を実証している。
【0047】
したがってこれらの特定の訓練プロトコルにより、ショウジョウバエで同定されたCMGと類似するCMGが哺乳動物などの動物で得られると予想される。本明細書で使用する「動物」という用語には哺乳動物ならびに他の動物、脊椎動物および無脊椎動物(例えば鳥類、魚類、爬虫類、昆虫(例えばショウジョウバエ属)、アメフラシなど)が包含される。本明細書で使用する「哺乳動物」および「哺乳類」という用語は、子供に授乳し、かつ生児を出産する(真獣類または有胎盤哺乳類)か、産卵する(後獣類または非胎盤哺乳類)、任意の脊椎動物(単孔類、有袋類および有胎盤類を含む)を指す。哺乳類種の例にはヒトおよび他の霊長類(例えばサル、チンパンジーなど)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)および反芻動物(例えばウシ、ブタ、ウマ)などが挙げられる。
【0048】
非ヒト動物(特に非ヒト哺乳類、他の脊椎動物および無脊椎動物)でのCMGを同定するには、当技術分野で一般に知られている方法に従って間隔訓練または集中訓練を受けた非ヒト動物の脳組織から抽出したRNAを使ってDNAプローブを合成する(例えばSambrookら編,Molecular Cloni ng: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor University Press、ニューヨーク(1989)や、Ausubelら編,Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1997)を参照されたい)。これらのプローブは検出可能なマーカーで標識することができる。ある態様では、間隔訓練または集中訓練を受けた動物の扁桃から抽出したRNAを使ってDNAプローブを合成し、必要であれば検出可能なマーカーで標識する。当技術分野では蛍光マーカー、化学発光マーカー、ビオチンマーカー、放射性マーカー、酵素的に検出されるマーカーおよび免疫学的に検出されるマーカーなどを含む種々の検出可能なマーカーと標識方法が知られている(例えばSambrookら編,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版,Cold Spring Harbor University Press,ニューヨーク(1989)や、Ausubelら編,Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1997)を参照されたい)。RNAは当技術分野で利用できる方法によって扁桃などの脳組織から抽出される。動物の間隔訓練と集中訓練は当技術分野で広く知られている方法を使って行なわれる(例えばJosselynら,Society for Neurosci.24:926,Abstract 365.10(1998)、CassellaおよびDavis,Physiol.Behav.36:377−383(1986)、Guzowskiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:2693−2698(1997)、Lamprechtら,J.Neuroscience17(21):6443−6450(1997)、Bourtchuladzeら,Cell79:59−68(1994)、およびKoganら,Curr.Biol.:1−11(1996)を参照されたい、これらは参照によって本明細書に組み込まれる)。次にこの複合プローブ混合物を、その動物のゲノムの遺伝子のDNA配列(標的DNA配列)を含有するマイクロアレイチップにハイブリダイズさせる(例えば米国特許第5,445,934号や、Ramsay,Nature Biotechnology16:40−44(1998)を参照されたい、これらは参照によって本明細書に組み込まれる)。ハイブリダイズしたDNAプローブからのシグナルは当技術分野で広く知られている方法によって増幅され、検出される(例えばSambrookら編,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版,Cold Spring Harbor University Press,ニューヨーク(1989)や、Ausubelら編,Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1997)を参照されたい)。例えばハイブリダイゼーション(ハイブリダイズしたプローブからのシグナル)は蛍光アッセイまたは質量分析法を使って検出することができる。光ファイバー、ダイオードアレイ検出、化学発光/発光、ラテックスビーズ凝集、直接電荷変化検出(CCD)および圧電読出し装置を使った方法も使用できる。上記のシグナル変換アルゴリズムを使って、間隔訓練群および集中訓練群間の遺伝子発現レベルを計算する。特定の遺伝子に関する間隔訓練群と集中訓練群の間の転写レベルの統計的な有意差によって候補記憶遺伝子が同定される。間隔訓練群と集中訓練群の間の統計的比較(DNAチップ比較)は、上記のシグナル変換アルゴリズムを使って行なうことができる。
【0049】
間隔訓練群と集中訓練群の間の統計的比較の他に、他の実験プロトコル対を使って訓練を施した動物間のDNAチップ比較(統計的比較)からCMGを同定することができる。実験群は転写依存性記憶を誘導するのに充分な条件で訓練し、対照群は転写依存性記憶を誘導するには不充分な条件で訓練する。任意の2実験プロトコル間の有意な相違は転写依存性記憶の誘導にある。比較対象の任意の2実験プロトコル間の有意な相違は、実験群での転写依存性記憶の誘導と、対照群での転写依存性記憶の欠如である。
【0050】
当技術分野では、転写依存性記憶の誘導を主な相違点とする実験プロトコルの対が知られている。例えば転写依存性記憶の誘導を主な相違点とする一対の実験プロトコルは間隔訓練プロトコルと集中訓練プロトコルとからなることができる。この態様では、間隔訓練プロトコルを使った動物の訓練は、その動物に転写依存性記憶を誘導するのに十分である。集中訓練プロトコルを使った動物の訓練は、転写依存性記憶を誘導するには不十分である。もう一つの例として、転写依存性記憶の誘導を主な相違点とする一対の実験プロトコルは、シャトル−ボックス回避プロトコル(特に一試行シャトル−ボックス回避プロトコル)を使った正常(野生型)動物の訓練と、脳弓を外科的に損傷させた動物のシャトル−ボックス回避プロトコルを使った訓練とからなることができる(Taubenfeldら,Nat.Neurosci.,2(4):309−310(1999))。この態様では、正常(野生型)動物に転写依存性記憶が誘導される。脳弓が外科的に損傷された動物では転写依存性記憶は誘導されない。さらなる一例として、転写依存性記憶の誘導を主な相違点とする一対の実験プロトコルは、状況判断的恐怖条件付けプロトコル(特に一試行状況判断的恐怖条件付けプロトコル)を使った動物の訓練と、状況判断的恐怖条件付けプロトコルを使った状況判断的恐怖条件付けする前に訓練チャンバーに慣らせた動物の訓練とからなることができる(Impreyら,Nat.Neurosci.,1(7):595−601(1998))。この態様では、状況判断的恐怖条件付けに先立って訓練チャンバーに慣らせていない動物に転写依存性記憶が誘導される。状況判断的恐怖条件付け前に訓練チャンバーに慣らせた動物では転写依存性記憶が誘導されない。当業者は他の実験プロトコル対を容易に見極めることができる。
【0051】
DNAプローブは、本明細書に記載するような実験プロトコル対を使って訓練した動物の扁桃や海馬などといった脳組織から抽出したRNAを使って合成され、必要であれば検出可能なマーカーで標識される。次にそのDNAプローブ混合物を、その動物のゲノムの遺伝子のDNA配列(標的DNA配列)を含有するマイクロアレイチップ上にハイブリダイズさせる。上述したシグナル変換アルゴリズムを使って上記2つの実験プロトコル間でDNAチップデータを比較することにより、統計的比較を行なう。
【0052】
本明細書中の統計的手法は、訓練群と非訓練(未処置)群の間の転写レベルの差を検出するために使用できる。したがって訓練を受けた動物と訓練を受けていない(未処置)動物との間のDNAチップ比較(統計的比較)から候補可塑性(plasticity)遺伝子(CPG)を同定することができる。区別的に調節されるこのクラスの転写物にはCMGと、一般的訓練条件(例えば臭気、電気ショックまたは訓練プロトコルの他の任意の経験的性状(aspects )の呈示)に対して「非連想的(nonassociative)」な様式で転写的に応答する他の任意の遺伝子とが包含される。単に動物を新しい環境に置くか、動物を刺激のみまたは時間的に対呈示されない刺激にさらすだけで、多少の非特異的転写応答が起こる。これらの転写変化はニューロン活性の一般的(非特異的)増加によって生じるか、一般的訓練条件に関係しない他の形態の学習/記憶形成を反映するのだろう。
【0053】
所定の遺伝子に関して10未満の平均差値を削除するシグナル変換アルゴリズムを使った統計的解析によって間隔訓練群と未処置(naive )群との比較(24時間記憶)から決定されたショウジョウバエのCPGを表3に示す。所定の遺伝子に関して負の平均差値をゼロとするシグナル変換アルゴリズムを使った統計的解析によって間隔訓練群と未処置群との比較(24時間記憶)から決定されたショウジョウバエのCPGを表4に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0004594532
Figure 0004594532
Figure 0004594532
【0055】
【表4】
Figure 0004594532
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【0056】
本発明は、転写依存性記憶(特に長期記憶)に関与する1つまたは複数の遺伝子を同定する方法であって、(a)非ヒト動物(特に非ヒト哺乳動物、他の脊椎動物および無脊椎動物)を、その動物に転写依存性記憶(特に長期記憶)を誘導するのに充分な条件で訓練し;(b)工程(a)で訓練した動物の脳組織(例えば扁桃、海馬など)からRNAを抽出し;(c)工程(b)で抽出したRNAを使ってDNAプローブを合成し;(d)工程(c)で合成したDNAプローブを、そのDNAプローブがマイクロアレイチップ上の相補的DNA配列にハイブリダイズするのに適する条件で上記動物のゲノムの遺伝子に由来するDNA配列を含有するマイクロアレイチップにばく露し、ここで、プローブが相補的DNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成する;(e)工程(d)で生成したシグナルを検出し;ならびに(f)工程(e)で検出したシグナルと、対照で検出されるシグナルとの統計的比較を行なうことからなる方法を提供する。
【0057】
一態様として、対照は、(i)非ヒト対照動物(特に非ヒト哺乳動物、他の脊椎動物および無脊椎動物)を、その対照動物に転写依存性記憶を誘導するには不十分である適当な条件で訓練し;(ii)工程(i)で訓練した対照動物の脳組織からRNAを抽出し;(iii)工程(ii)で抽出したRNAを使ってDNAプローブを合成し;ならびに(iv)工程(iii)で合成したDNAプローブを、そのDNAプローブがマイクロアレイチップ上の相補的DNA配列にハイブリダイズするのに適する条件で上記動物のゲノムの遺伝子に由来するDNA配列を含有するマイクロアレイチップにばく露する、ここで、プローブが相補的DNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成する、ことからなる方法によって得られる。工程(a)と工程(i)の実験条件は一対の(実験的)処置を構成する。工程(a)と工程(i)の実験条件間の有意な相違は転写依存性記憶の誘導にある。
【0058】
第2の態様として、対照は、(i)非ヒト対照動物の脳組織からRNAを抽出し;(ii)工程(i)で抽出したRNAを使ってDNAを合成し;ならびに(iii)工程(ii)で合成したDNAプローブを、そのDNAプローブがマイクロアレイチップ上の相補的DNA配列にハイブリダイズするのに適する条件で上記動物のゲノムの遺伝子に由来するDNA配列を含有するマイクロアレイチップにばく露する、ここで、プローブが相補的DNA配列にハイブリダイズするとシグナルが生成する、ことからなる方法によって得られる。この対照の態様では、対照動物は未処置(訓練されていない)動物である。
【0059】
本明細書にいう対照動物とは、その動物に転写依存性記憶形成を誘導するのに充分な条件で訓練を受ける動物と同じ種に属し他の点では同等な(例えば年齢、性別などが同等な)動物である。
【0060】
転写依存性記憶は特定の実験条件を使って誘導することができる。ある態様では恐怖増強驚愕応答の間隔訓練プロトコルを使って非ヒト動物に転写依存性記憶が誘導される。第2の態様ではシャトル−ボックス回避プロトコルを使って非ヒト動物に転写依存性記憶が誘導される。第3の態様では状況判断的恐怖条件付けプロトコルを使って非ヒト動物に転写依存性記憶が誘導される。
【0061】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明が以下の実施例により何らかの形で限定されるとみなしてはならない。
【0062】
実施例
実施例1 nalyot P1 の単離
X連鎖PlacWトランスポゾン(Bierら,Science,240(4854):913−916(1988))を可動化して、第2および第3染色体に個別の挿入物を持つ2,182株のトランスポザント(transposant)株を生成した(BoyntonおよびTully,Genetics,131:655−672(1992);Duraら,J.Neurogent.,9:1−14(1993)参照)。1回のパヴロフ嗅覚学習セッション訓練後の3時間記憶を、これらのトランスポザント株のそれぞれについて1パフォーマンスインデックス(PI)で定量した。次にスコアが野生型親株[w1118(CS10)]の70%以下だった株についてN=4 PIを作製した。スクリーニングのこの段階で93株の突然変異株が野生型親株の70%以下の平均3時間記憶スコアを与えた。次にこれらの候補突然変異体株のそれぞれを5世代にわたって親株に異系交配してそれらの(不均質な)遺伝的背景を平衡化した。これらの異系交配株で再び3時間記憶を定量(N=4 PI)したところ、93株の候補突然変異体のうち8株だけがなお野生型の70%未満の平均スコアを与えた。最後にこれらの8つの突然変異体株で「課題関連(task relevant )」感覚運動課題をアッセイした。8株全てが正常なショック反応性を示し、GB 335とEJ 51、EJ 220とES 152の4株は嗅覚の鋭さの有意な低下を示した(BoyntonおよびTully,Genetics,131:655−672(1992)、Duraら,J.Neurogent.,9:1−14(1993)[GB 335は現在dareと呼ばれており、さらなる研究が行なわれた。これは触角での選択的発現を示す(Freemanら,Development,126:4591−4602(1999))])。残り4株の突然変異株は正常な感覚運動応答を示し、latheo(BoyntonおよびTully,Genetics,131:655−672(1992)、Pintoら,Neuron,23:45−54(1999)、Rohrboughら,Neuron,23:55−70(1999))、linotte(Duraら,J.Neurogent.,9:1−14(1993)、Bolwigら,Neuron,15:829−842(1995)、Simonら,Mech.Dev.,76:42−55 (1998))、golovanおよびnalyotと名付けられた。
【0063】
実施例2 nalyotゲノム領域のクローニングと特徴づけ
PlacWトランスポゾンはユニークなSacII制限部位を含み、その後ろに細菌の複製起点とアンピシリン耐性遺伝子が続いている(図8)。SacIIによるnalyotnal)ゲノムDNAの消化、希薄条件でのライゲーションおよび細菌形質転換により、ゲノム領域に由来する隣接DNAを伴なった9.4kbのSacII制限断片のプラスミドレスキューを行なうことができた。染色体インサイチューおよびサザンブロッティング実験により、この断片がP−挿入部位と同位置にマッピングされることを確認した。放射標識したレスキュー断片を使って100万プラークのラムダ−DashIIショウジョウバエCan−Sゲノムライブラリー(Stratagene)をスクリーニングした。10個の独立したゲノムクローンを単離し、サブクリーニングし、制限酵素解析することにより、P−エレメント挿入部位付近のゲノム領域をまたぐ35kbの地図を構築した(図8)。
【0064】
adf1およびcn20転写単位のイントロン/エキソン地図を図8に示す。nal P1 因子(矢印)はadf1転写単位のイントロン内、スプライス供与部位の147bp下流に挿入される。adf1遺伝子はmybファミリーと遠い類縁関係にある転写因子をコードし(Englandら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:683−687(1992))、(少なくとも)2種類のmRNAに択一的にスプライスされる。i1とi2は2つの潜在的翻訳開始部位に相当する。さらに2つの約3.5kbと59bpのイントロンが構成的にスプライスされ、adf1転写単位の残りの部分を274bpと1013bpのエキソンに分離しているようである。cn20遺伝子は新規であり、395アミノ酸タンパク質コードできる一本のスプライスされない転写物を産生する。nal ie60 中のゲノム欠失の程度を示す。制限部位:B、BamHI;E、EcoRI;H、HindIII;S、SacII。
【0065】
実施例3 突然変異体nal P1 と野生型のハエにおけるadf1およびcn20のノーザンブロット解析ならびにcDNA単離
ハエ成虫全身、成虫頭部または成虫胴体(body)の全RNAをTriZOL試薬(BRL)を使って単離した。次にオリゴ(dT)セルロース(Collaborative Research)または磁化オリゴ(dT)ビーズ(Dynal)を使ってポリ(A)画分を精製した。精製ポリ(A)RNAをホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動で分画し、10×SSC中でZetaProbeナイロン膜(BioRad)に転写した。乾燥した膜上のRNAを2,500マイクロジュール(ujoules )でUV架橋することによって固定した(Stratalinker)。転写物クラスの一次同定のために、ChurchとGilbertの高ストリンジェンシー緩衝液中で膜ストリップを放射標識ゲノムDNA断片で終夜プローブし、Kodak BioMaxフィルムに露光した。
【0066】
選択したプローブを2つのショウジョウバエ成虫頭部cDNAライブラリー、すなわちラムダgt11バクテリオファージ成虫頭部ライブラリー(Salvaterra)とpJG4−5プラスミドライブラリー(Roshbash)にハイブリダイズさせた。これらの2つのライブラリーから2つの独立した転写単位に対応する合計11個のクローンを単離し、制限酵素解析によって評価した。10個のクローンがadf1転写単位に対応した。これらのサブセットを制限酵素マッピングし配列解析することにより、共通する3’末端プロセシング部位と5’末端の不均一性が明らかになった。5’不均一性はイントロン1(114bp)の部分的スプライシングと、おそらくは不完全な第1鎖合成とを反映したものである。1つのクローン(cn20)は独立した隣接する転写単位に対応した。
【0067】
adf1およびcn20 RNAレベルに対するP−挿入の影響を定量するために、adf1cn20および対照RNA rp49に対応する放射標識プローブを使って、nal P1 および野生型の頭部または胴体から得たノーザンブロットを上述のように解析した。
【0068】
rp49 RNAの対照レベルと比較して、cn20 mRNA発現レベルは頭部でも胴体でも野生型のハエと突然変異型のハエでほぼ同等だった。これに対し、adf1 mRNA発現レベルは突然変異体の頭部および胴体では少なくとも2倍減少していた。
【0069】
実施例4 抗体産生
ADF1オープンリーディングフレームをpET30(a)発現ベクター(Novagen)にC末端融合物として挿入した。ADF1融合タンパク質の強いIPTG誘導を形質転換したBL21細菌で得た。誘導タンパク質の大部分は不溶性の封入体画分にあり、この画分(誘導の3時間後に単離)はADF1融合タンパク質が85%近くに濃縮されていた。この画分をPBSで十分に洗浄し、抗原として直接使用した。マウスのポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を標準的方法で得た(HarlowおよびLane,Antibodies. A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州プレーンビュー(1998))。3匹のマウスに50μgの封入体画分を(完全フロイントアジュバントと混合して)接種した後、2週間毎に50μgの封入体画分を不完全フロイントアジュバントと混合して追加免疫した。3匹のマウスはすべて強い免疫応答を示し、1匹をハイブリドーマ融合のために屠殺した。800個の候補ハイブリドーマ株のうち、17株がADF1ドットブロット検定で応答を示した。次にその17株をウェスタンブロットおよび免疫化学アッセイで評価することにより、MAb ADF1−8とMAb ADF1−17を含む10株のモノクローナル株を単離した。
【0070】
実施例5 変異体nalP1および野生型ハエにおけるADF−1タンパク質レベルのウェスタンブロット解析
上記のように(Yinら、Cell、79、49〜58、(1994))凍結頭部または胴部を単離し、500μlのRIPA緩衝液中での100μlの凍結頭部粉末のホモゲナイズによって抽出物を調製した。タンパク質濃縮物を、Bio−Radタンパク質アッセイによって測定した。タンパク質サンプルを、標準的なローディング色素中で変性させ、SDS−PAGEで分離して、100mAで2時間電気泳動によってニトロセルロースメンブレン(Bio−Rad)に移した。各メンブレンを、PBST+5%ミルク中で4℃で一晩ブロックし、PBST+5%ミルク中で1〜2時間一次抗体とインキュベートした。使用した一次抗体は、adf1に対するマウスポリクローナル血清(1:1000)、adf1に対するマウスモノクローナル上清(Mab Adf1−17)(1:20)、TBPに対するマウスモノクローナル上清(1:5)、およびa−チューブリンに対するマウスモノクローナル腹水(1:50,000)(Sigma)であった。メンブレンをPBST中で充分に洗浄し、HRP結合抗IgG二次抗体(Bio−Rad、1:500)と1〜2時間インキュベートした。PBST中での充分な洗浄後、結合産物を、強化化学発光(Pierce SuperSignal ULTRA基質)およびオートラジオグラフィーによって視覚化した。
【0071】
他の2つのタンパク質(TATA結合タンパク質およびα−TUBULIN)の対照レベルと比較して、ADF1発現は、変異体ハエにおいて少なくとも2倍減少した。
【0072】
実施例6 野生型ハエと遺伝子変異体nalyotとの間のDNAチップデータセットの比較
正常な(野生型)ハエと1遺伝子変異体nalyotとの間のDNAデータセットを比較した。nalyot変異体は、集中訓練後に正常な記憶を有することが認められるが、間隔をおいた訓練によってLTMは誘導されなかった。さらに、nalyot変異は、Adf1遺伝子中のトランスポゾン挿入物として同定され、その効果は、変異体ハエ頭部中のAdf1転写物およびタンパク質の量の減少である。
【0073】
全てのベースライン値を0に設定し、次いでデータを解析した場合、Adf1遺伝子についての野生型ハエとnalyot変異体との間に有意な相違は検出されなかった。しかし、(0に設定した場合より)10以下のベースライン値を分析から削除した場合、Adf1転写に対する有意な効果が検出され、これは、実施例3に記載のノーザン分析によって得られた結果を確証するものである。この結果は、データセットから10未満の平均差を削除する統計学的アプローチの有意な証拠である。
【0074】
実施例7 定量的ポリメラーゼ連鎖反応
所与のハエ群を、特定の訓練プロトコル(間隔をあけるまたは集中)に供し、訓練後通常の食品バイアルに保存する。訓練から24時間後、所与の訓練プロトコル(間隔をあけるまたは集中)の異なる群由来のハエを1つの50ml Falconチューブに回収し、液体窒素中で急速冷凍する。凍結ハエの頭部を、強い機械的震盪によって胴部から分離する。次いで、凍結して分離した胴部を、一連のふるいにかけて最終的にハエ頭部の均一な集団を得る。
【0075】
訓練群(間隔または集中)由来の頭部を合わせ、8つの群に分ける。各頭部群を、次いで乳鉢および乳棒で粉末に磨砕する。粉末を5mlのTrizol溶液(Gibco)に移し、−70℃で一晩保存する。
【0076】
ついで、凍結Trizol/ハエ粉末溶液を解凍する。2mlのクロロホルムを添加する。混合物を、4℃、3,500rpmで10分間遠心分離する。抽出RNA(水層中)を、新しいチューブにデキャントし、1.4mlのイソプロパノールを添加する。
【0077】
QPCRのために、上記溶液のアリコートを、4℃、8000rpmで20分間スピンする。イソプロパノールをデキャントし、ペレットを70%エタノールで1回洗浄する。ペレットを、100μlのH2 O中に再懸濁し、同体積のフェノール/クロロホルム(Gibco)を添加する。溶液を、4℃、14,000rpmで5分間遠心分離する。上部の水層を新しいチューブにデキャントする。6μlの3M酢酸ナトリウムと共に200μlの氷冷エタノールを添加する。溶液を、−20℃で少なくとも20分間インキュベートする。
【0078】
次いで、溶液を、4℃、14,000rpmで20分間遠心分離する。ペレットを、20μlのH2 O中に再懸濁し、RQI Rnase無含有DNAse(Promega)に供する。RNA濃度を測定する。
【0079】
ついで、1μgの無DNAse RNAサンプルから第1鎖cDNAを合成し、「CYBR」サイバーグリーン蛍光検出器を具備した7700 ABI Prismを用いてPerkin Elmer Biosystemsプロトコルにしたがって、QPCRアッセイを行う。
【0080】
実施例8 統計学的候補記憶遺伝子C/EBP
221bpの予想フラグメントが得られる、Quantagene(Paris、France)によって設計された以下のC/EBPプライマーを、QPCR実験に使用し、221bpの大きさの予想した断片を得た:5’−AGACTACCGATGCGAACAAC−3’(配列番号:1)および3’−GTCCCTGAACTGGTCGTCTA−5’(配列番号:2)。
【0081】
C/EBPデータのために、ハエを間隔訓練または集中訓練に供した24時間後に約10,000個のハエの頭部から8つの複製RNA抽出物を得た。各RNA抽出部についてのQPCR反応を、実施例7に概説の方法にしたがって三連で行った。
【0082】
各C/EBP反応の結果を、TBPββ(これらの状況で転写の変化が認められない対照遺伝子)についての一対のQPCR反応に対するRNA量について規準化した。
【0083】
この方法で分析して、臨界値に達するのに必要な平均C/EBP増幅サイクル数は、間隔をあけた群では21.86±0.56であり、集中群では23.78±0.56であった。間隔をあけた群のほうが臨界値に達するための増幅サイクル数が少ないことから、これは、PCR増幅の初期段階でC/EBP濃度がより高いことを示す。
【0084】
これらのデータは、C/EBPレベルが集中訓練群より間隔をあけた訓練群の方が3.78倍高いことを示す(図5)。実験結果により、間隔をあけた訓練ハエと集中訓練ハエから単離したC/EBP(緩徐境界(slow border )細胞と呼ばれる、ショウジョウバエにおけるslobo)転写物が有意に異なることが確認された。マウスにおけるC/EBPの遺伝子操作により、長期記憶が促進され(Sterneckら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95(18)、10908〜10913、(1998))、AplysiaにおけるC/EBPの分子操作によって長期促進(facilitation)(感作の長期記憶用の細胞基質)がブロックされる(Alberiniら、Cell、76、1099〜1114、(1994))。したがって、本明細書中でCMGとしてのC/EBPの確認は、記憶に関する転写物の同定にこのDNAチップアプローチを使用することができる有意な確認法である。
【0085】
実施例9 訓練装置
実験を経験していないの雄性Sprague−Dawleyラット(300〜350g)を、減音チャンバー中に設置した5つの同一のプレキシガラスおよびワイヤーメッシュケージ(8×15×15cm)中で訓練および試験した(CassellaとDavis、Physio.Behav.、36、377〜383、(1986))。驚愕惹起刺激は、55dBの背景ホワイトノイズに対して105dBであった(50msのホワイトノイズの群発(上昇−減衰時間は5ms))。8Wの蛍光電球によって、3.7秒の光CSを得た(上昇−減衰時間100μs、BCOフットランベルト(footlamberts)強度)。各ケージの床は、0.5sで0.6sまたは0.3mAの周波数帯変換(scrambled )フットショックを供給することができる4つのステンレススチールバーからなった。
【0086】
実施例10 行動訓練法
全ての訓練の2日前の各日に、ラットを、驚愕チャンバー中に入れ、15分後に15回の驚愕刺激を与えた。Exp.1の単回訓練日に、動物を驚愕チャンバーに入れ、5分後に以下の試行間隔(ITI)の1つで4回の光−ショック対を与えた:3秒間、5秒間、10秒間、15秒間、2分間、または8分間。最後の光−ショック対から5分後、動物を元のケージに戻した。4回のショック対間のITIがそれぞれ10秒間および8分間である以外は対の集中訓練および間隔をあけた訓練を同様に行った。明らかに対ではない集中訓練試験は、光の集中投与(4回、10秒間のITI)およびその4分後のショックの集中投与(4回、10秒間のITI)とした。
【0087】
実施例11 長期記憶試験
訓練から48時間後、ラットを驚愕装置に置き、30回の驚愕惹起刺激のみおよびその後に60回の驚愕惹起刺激(半分は3.7秒の発光後3.2秒間行い(光−ノイズ試験)、半分は暗所に置いた(ノイズのみの試験))を与えた。2つの試験型の順番は不規則であった。30秒の刺激間隔ですべての驚愕刺激を与えた。LTNの指標として使用する恐怖増強驚愕の差スコアを、30回の光−ノイズ試験で得られた平均驚愕振幅(amplitudes)から30回のノイズのみの試験から得られた平均驚愕振幅を引くことによって計算した。
【0088】
実施例12 短期記憶試験
短期記憶(STM)試験は、訓練後15〜40分間で行われる以外はLTM試験と類似していた。20回のノイズのみの刺激後、15回の光−ノイズ刺激および15回のノイズみの刺激を混合して与えた。恐怖増強驚愕の差スコアを、平均光−ノイズスコアからノイズのみのスコアを引くことによって計算し、これをSTMの指標として使用した。
【0089】
実施例13 手術
ラットを硫酸アトロピン(0.4mg/kg、腹腔内)で前処理し、ペントバルビタールナトリウム(60mg/kg、腹腔内)で麻酔し、標準的な定位固定装置に置いた。薬物注入ポンプに取り付けたハミルトンマイクロシリンジ(10μl)を、注入に使用した。PaxinosとWatson(「定位調整でのラット脳(The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates)」、Academic、Syndney、Australia、1986)にしたがって、扁桃の外側核(頭蓋骨表面下でAP=−2.8、L=±5.2、DV=−8.5に調整(coordinates ))または尾状核(AP=+0.2、L=±3.0、DV=−6.0に調整)を対象として、30ゲージのカニューレを介した両側微量注入(2μl)により10分間送達させた。拡散を確実にするために、注入カニューレをさらに10分間放置した。
【0090】
実施例14 ウイルスの調製
CREBおよびmCREB cDNA(M.E.Greenberg、Harvard Universityから得た)およびLacZを、HSVアンプリコンHSV−PrpUCに挿入し、ヘルパー5dl 1.2を用いて封入した(Limら、Biotechniques、20、460〜469(1996)、Keveら、Neuroscience、79、435〜447(1997))。ウイルスを、スクロース勾配で精製し、ペレット化し、10%スクロース中に再懸濁した。組換えウイルスストックの平均力価は、4.0×107 感染単位/mlであり、HSV−CREBおよびHSV−mCREBと類似した。導入遺伝子発現を、HSV即時型遺伝子IE−4/5の構成プロモーターによって制御した。
【0091】
実施例15 免疫化学
ラットに抱水クロラールを過剰投与し、50mlのPBSおよび250mlの4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液で灌流した。脳を凍結防止して、ミクロトーム上で切断し(40μm切片)、浮動性切片に免疫細胞化学法を行った。HSV−LacZを感染させた脳は、β−ガラクトシダーゼに反応し、ニュートラルレッドで対比染色した(Limら、Biotechniques、20、460〜469(1996)、Keveら、Neuroscience、79、435〜447(1997)に従う)。簡単に述べれば、β−ガラクトシダーゼ活性を検出するために、脳のスライスを3.1mMフェロシアン化カリウム、3.1mMフェリシアン化カリウム、20mM MgCl2 、0.1M PBS、および0.2mg/ml X−galから構成される溶液(Boehringer−Mannheim)中で2時間反応させた。
【0092】
HSV−CREB感染脳における導入遺伝子発現の分析を行った。簡単に述べれば、切片を、1%H2 2 および0.3%Triton−Xと20分間インキュベートし、1%ウシ血清アルブミン、2%ヤギ正常血清、および0.3%Triton−Xで30分間ブロックし、一次抗体CREB(1:1000、Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)と4℃で一定で撹拌しながら一晩インキュベートした。切片を、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG二次抗血清(1:200希釈、Vector Laboratories、Burlingame、CA)と室温で2時間インキュベートした。切片をリンスし、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(ABC)試薬(Vector Laboratories)とインキュベートした。免疫反応性を、ジアミノベンジジン(DAB)反応を用いて視覚化した。
【0093】
実施例16 その後の長期記憶レベルに対する恐怖条件付け試行間の試行間隔の影響
3秒間、5秒間、10秒間、15秒間、2分間、および8分間(それぞれn=10、10、10、5、5、15)のITIでの4回の光−ショック対からなる訓練から48時間後に評価した平均LTM(±SEM、恐怖増強驚愕差スコアとして評価)は、ITIによって変化した(F1.49=3.04、p<0.05)。有意な線形トレンド(F1.49=7.99、p<0.05)によって示されるように、LTMレベルは、ITIとより強いLTMが得られるより長いITIとの一次関数である。集中訓練(3秒間、5秒間、10秒間)により、非常に弱いLTM(約50ユニット)が得られた。その後のダンカン比較によって8分間のITI(間隔をあけた群)は、10秒間、5秒間、および3秒間(集中群)よりも有意に強いLTMが得られることが明らかとなったことから、10秒間から8分間に休憩時間が増加するとLTMは増加する。結果を、図6に示す。
【0094】
実施例17 基底外側扁桃および扁桃外領域へのHSVベクターの注入効果
基底外側扁桃にHSV−CREBを注入したラット(n=17)は、PBS(n=7)、HSV−LacZ(n=10)、もしくはHSV−mCREB(n=11)を同様に注入したラット、または扁桃の基底外側複合体周囲の脳領域(n=8)もしくは対照領域(尾状核、n=5)にHSV−CREBを注入したラットよりも有意に高いLTMを示した(F5.52=4,99、p<0.001)。分析後、基底外側扁桃にHSV−CREB注入を受けたラットのLTMレベルは、全ての他の群よりも有意に高いことが明らかとなった。
【0095】
フットショックに対する反応性は、集中訓練前に基底外側扁桃にHSV−CREB(n=17)、HSV−mCREB(n=11)、HSV−LacZ(n=10)、またはPBS(n=7)を注入した動物で異ならなかった(F3.41=1.41、p>0.05)。平均刺激反応性を、それぞれ4回のフットショック後200msの間、ケージを置換することによって評価した。
【0096】
明らかに対ではない条件付け(CS(条件刺激)およびUS(無条件刺激)が関連しない)では対照ラット(n=10)に関連するLTMは得られず、PBS(n=5)またはHSV−CREB(n=5)の扁桃内注入によってLTMは変化しなかった(F2.17=0.44、p>0.05)。
【0097】
注入から14日後に再試験した場合、集中訓練の3日前にHSV−CREBを投与した動物(3d HSV−CREB、n=10)は、HSV−LacZで同様に処理した動物(3d HSV−LacZ、n=3)または集中訓練の14日前にHSV−CREBを投与して48時間後に試験した動物(14d HSV−CREB、n=4)より高いLTMを示した(F2.14=6.05、p<0.05)。
【0098】
本明細書中で引用した全ての論文、特許、および特許出願の教示は、その全体が参考として援用される。
【0099】
本発明は、好ましい態様について特に表示および記載しているが、添付の特許請求の範囲に定義の本発明の精神および範囲を逸脱することなく形態および内容について種々の変更を行うことができることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ハエにおいてパヴロフの嗅覚学習を行う、Tullyら,Cell,79:35−47(1994)に記載された訓練プロトコルの模式図である。
【図2】 図2は、CREBリプレッサーの発現を誘導した後に、正常な(野生型)ハエにおいて一定間隔でまたは集中的に訓練を行った後、またはトランスジェニックhs−CREB2−rハエにおいて一定間隔訓練を行った後の、記憶保持を示す結果のグラフ図である(Yinら,Cell,79;49−58(1994)を参照されたい)。学習および早期記憶(シクロヘキシミド非感受性)は、トランスジェニックハエにおいては正常である。一定間隔訓練によって通常生じる追加的な(タンパク質合成依存性LTM)記憶は、トランスジェニックハエにおいてブロックされる。この比較により、一定間隔訓練と集中訓練との唯一の差は、前者の後の転写依存性記憶の出現であることが明らかになる。
【図3】 図3は、特定の遺伝子の特定のセクションに完全にマッチする(PM)(相補的な)特異的DNAオリゴヌクレオチドプローブについて検出されたシグナルと、その遺伝子のそのセクションにヌクレオチド配列エラー(変異)が導入された結果、その遺伝子のそのセクションにミスマッチする(MM)該プローブについて検出されたシグナルとの平均差を示す模式図である。PMペアとMMペアと間の平均差(および遺伝子1つにつき通常は20対)は、Affymetrixデザイン・ソフトウェア解析(Affymetrix,Inc.,Santa Clara,CA)によって測定する。四角はマイクロアレイチップ上のミクロ配列を表す。
【図4】 図4Aは、各々が一定間隔もしくは集中訓練の24時間前に曝露した正常ショウジョウバエの頭部から抽出したRNAから作製したDNAプローブとハイブリダイズしているN=10チップから得た平均シグナル(変換され平均化された平均差)の散布図(間隔対集中)である。四角はそれぞれ特定のショウジョウバエ遺伝子を表し、そのうち1542個が各チップ上に含まれる。候補記憶遺伝子は、薄い影を付した四角によって同定される。そのプロット中のC/EBP遺伝子の位置を図中に示す。
図4Bは、図4Aから得た統計的に有意な値を示す散布図表示(間隔対集中)である。四角はそれぞれ特定のショウジョウバエ遺伝子を表し、そのうち1542個が各チップ上に含まれる。そのプロット中のC/EBP遺伝子の位置を図中に示す。
【図5】 図5は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)実験から得た結果を表す棒グラフを示す。これらの結果は、C/EBP遺伝子に対して間隔訓練および集中訓練が及ぼす影響の差を確認するものである。
【図6】 図6は、ラットにおける恐怖条件付け訓練試行間の試行間隔(ITI)が後の長期記憶に対して及ぼす影響を表す棒グラフを示す。これらの結果は、集中的および一定間隔で訓練されたプロトコルの違いを明らかにし、恐怖増強驚愕の記憶が集中訓練よりも間隔訓練後の方が良いことを示す。
【図7】 図7は、ラットの扁桃におけるCREBアクチベーターの過剰発現が長期記憶に対して及ぼす影響を表す棒グラフを示す。これらの結果は、扁桃におけるCREBアクチベーターの過剰発現が、集中訓練後のラットにおいて恐怖増強驚愕の記憶を強化(増強)することを示す。
【図8】 図8は、adf1ゲノム領域の分子マップを示す。

Claims (4)

  1. (a)非ヒト動物において転写依存性記憶形成を誘導するために非ヒト動物を訓練する工程;
    (b)工程(a)で訓練された前記非ヒト動物の脳組織からRNAを抽出する工程;
    (c)工程(b)で抽出されたRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;
    (d)工程(c)で合成されたDNAプローブを、前記動物のゲノムの遺伝子由来のDNA配列を含むマイクロアレイチップに対し、マイクロアレイチップ上の相補的DNA配列への前記DNAプローブのハイブリダイゼーションに適する条件下で曝露する工程、ここで、相補的DNA配列への前記プローブのハイブリダイゼーションの際にシグナルが生ずる;
    (e)工程(d)で生じたシグナルを検出する工程;ならびに
    (f)工程(e)で検出されたシグナルと対照において検出されたシグナルとの間で、各遺伝子についてシグナル変換アルゴリズムを用いて統計的比較を実施する工程、ここで、前記対照は以下の工程:
    (i)記憶形成を誘導するための訓練を受けていない非ヒト対照動物の脳組織からRNAを抽出する工程;
    (ii)工程(f)(i)で抽出されたRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および
    (iii)工程(f)(ii)で合成されたDNAプローブを、対照動物のゲノムの遺伝子由来のDNA配列を含むマイクロアレイチップに対し、マイクロアレイチップ上の相補的DNA配列への前記DNAプローブのハイブリダイゼーションに適する条件下で曝露する工程、ここで、相補的DNA配列への前記プローブのハイブリダイゼーションの際にシグナルが生ずる、
    を含む方法により得られる、
    を含む、転写依存性記憶に係わる1つまたは複数の遺伝子の同定方法であって、前記工程(a)の訓練が、間隔訓練プロトコル、シャトル−ボックス回避訓練プロトコル、または恐怖条件付け文脈訓練プロトコルである、方法
  2. 前記転写依存性記憶形成が長期記憶形成である請求項記載の方法。
  3. (a)ショウジョウバエにおいて転写依存性記憶形成を誘導するためにショウジョウバエを訓練する工程;
    (b)工程(a)で訓練されたショウジョウバエの頭部組織から全RNAを抽出する工程;
    (c)工程(b)で抽出されたRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;
    (d)工程(c)で合成されたDNAプローブを、ショウジョウバエゲノムの遺伝子由来のDNA配列を含むマイクロアレイチップに対し、マイクロアレイチップ上の相補的DNA配列への前記DNAプローブのハイブリダイゼーションに適する条件下で曝露する工程、ここで、相補的DNA配列への前記プローブのハイブリダイゼーションの際にシグナルが生ずる;
    (e)工程(d)で生じたシグナルを検出する工程;ならびに
    (f)工程(e)で検出されたシグナルと対照において検出されたシグナルとの間で、各遺伝子についてシグナル変換アルゴリズムを用いて統計的比較を実施する工程、ここで、前記対照は以下の工程:
    (i)記憶形成を誘導するための訓練を受けていない対照ショウジョウバエの頭部組織からRNAを抽出する工程;
    (ii)工程(f)(i)で抽出されたRNAを用いてDNAプローブを合成する工程;および
    (iii)工程(f)(ii)で合成されたDNAプローブを、ショウジョウバエゲノムの遺伝子由来のDNA配列を含むマイクロアレイチップに対し、マイクロアレイチップ上の相補的DNA配列への前記DNAプローブのハイブリダイゼーションに適する条件下で曝露する工程、ここで、相補的DNA配列への前記プローブのハイブリダイゼーションの際にシグナルが生ずる、
    を含む方法により得られる、
    を含む、転写依存性記憶に係わる1つまたは複数の遺伝子の同定方法であって、前記工程(a)の訓練が、間隔訓練プロトコルである、方法
  4. 前記転写依存性記憶形成が長期記憶形成である請求項記載の方法。
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