JP4593825B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)、特に青色発光機能を備えた有機EL素子,及び,その青色発光機能を用いた白色発光機能を備えた素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、省電力に有利であり、高視野角かつ高輝度発光が可能であるという特性を備えており、次世代平面ディスプレイ素子や、その平面光源として注目されている。
【0003】
このような有機EL素子において、白色発光を実現することは、表示パネルの多色化、フルカラー化の要求に加えて、白色発光そのものを表示光としたり、液晶ディスプレイ等のバックライトへのニーズもあり、その波及効果は大きい。しかし,従来技術において,白色発光機能を実現するための青色発光が低輝度でしかも駆動寿命が短いといった問題があった。
【0004】
白色発光を達成するためには、まず,高効率長寿命の青色発光を実現し,
1)RGB3波長からの発光を用いる方法、
2)青+黄色〜橙色、または、青緑+赤の2波長の補色関係を用いる方法
があり、また、1)の3波長方式の場合、RGB各色の発光層を積層する方法(1-a)とRGB各蛍光色素を発光層中に同時にドープする方法(1-b)とがある。
【0005】
(1-a)の方法では、駆動によって青色ELの成分の強度が低下し,それに伴い白色ELスペクトルが変化することによる色ずれや再結合ゾーンが複数の層にまたがるために発光効率が低いという問題があった。(1-b)の方法では、さらに高分子系と低分子系とに分けられる。高分子系の場合、塗布液調整の段階で各色の蛍光色素を混合することにより白色を得るが、色素混合の制御が困難なため発光効率および駆動安定性が実用には遠い。低分子系では、真空蒸着法により各色の蛍光色素を同一発光層中にドープすることは可能であるが、同時に多数の蒸着源の蒸着速度を制御して各色素のドープ量を調整するので、実際の生産を考えると非常に困難である。
【0006】
2)の2波長の補色を用いる方法にも、2色の発光層を積層する方法(特許2991450号、特開平4−284395号公報、特開平6−158038号公報、WO98/08360)と、一つの発光層で2色の発光を得る方法(特開平9−208946号公報、特開平9−219289号公報、特開平11−329734号公報)がある。
【0007】
2つの発光層を積層する方法においては、電子及び正孔の注入・再結合・発光の機会が増加するなどの効率向上効果も期待できる。また、1つの発光層で2色の発光を得る方法では、構造が簡略化され、かつ、駆動に伴う色ずれが起きにくいと予想される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、2色の補色を用いる場合、青緑と赤色の組み合わせにおいては、現在提案されている多くの赤色色素では、正孔輸送層中にドープして用いる場合に、その蛍光ピークが短波長側にシフトしてしまう。従って、赤色発光が得られなくなり、結果として白色の色ずれが発生するという問題がある。また、今日現在において、緑色色素に匹敵するような耐久性を有する赤色色素は開発されていない。黄色で安定な発光を示すことが知られているルブレンを用いることで実用的な耐久性を有する素子を得ることができる。しかし、この場合には、白色発光を得る上で純度の高い青色発光が要求されることから、高輝度で長寿命の青色発光材料を選択することが必須条件となる。
【0009】
本発明の目的は、色純度が高く,しかも高効率長寿命の青色発光を実現する事である。また他の目的は、さらに上記青色発光を利用し、純度の高い白色光を効率良くかつ安定に得ることの可能な有機EL素子を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る有機EL素子は、まず、良好な特性を有する青色素子を構成し、その青色発光と黄、橙色発光の補色を利用して白色発光を実現しており、青色発光に関して具体的には、第1及び第2電極間に有機化合物層を備える有機EL素子であって、前記有機化合物層は、下記化学式(i)
【化6】
(但し式中のR21〜R26は任意の置換基、q21〜q23は、0〜9の整数)で表される有機化合物を含む発光層を有し、該発光層中に、少なくとも1種以上の蛍光色素を0.1mol%から10mol%含有する。
【0011】
化学式(i)で表される有機化合物は,蛍光色素をドープすることなく,それ自体を発光層に用いても高効率な青発光を得ることができるが,蛍光色素をドープすることで,さらに,高輝度化と長寿命化が図られる。
【0012】
ここで、上記蛍光色素として、発光波長ピークが480nm以下であり、化学式(i)の蛍光波長領域に吸収をもつ蛍光色素を用いれば、より効率よく蛍光色素に化学式(i)からのエネルギーを伝達することができ、高効率の青色発光を実現できる。さらに、蛍光色素をドープすることで、励起エネルギーが蛍光色素に伝達するので、化学式(i)が励起状態になる時間が短くなり、化学式(i)の有機材料が電気化学的に劣化するのを防ぐこともでき、長寿命化にも役立つ。このような条件を満たす蛍光色素としてスチリルベンゼン誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、スチリルアミン誘導体などが代表され、一般式としては、下記化学式(2)
【化7】
で表される色素を用いることができる。
【0013】
駆動時の電流によるジュール熱による有機化合物層のモルフォロジーの変化や結晶化が膜(素子)寿命を短くするが,ドープした蛍光色素による構造の安定化による効果で劣化を緩和する効果もある。このような効果が高い有機色素は,ガラス転移温度や融点が高いことが要求され,比較的分子量が大きいスチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、スチリルアミン誘導体などが好適である。
【0014】
これらの蛍光色素のドープ量としては,十分にホストからエネルギー移動されるために,ホスト材料の0.1mol%以上,蛍光色素同士の会合などによる濃度消光を避けるために10mol%以下が適量である。このような条件を考慮して蛍光色素材料とドープ量を選択することで,蛍光色素をドープすることなく良好な青発光が得られている化学式(i)の特性をさらに向上させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る有機EL素子は、上記のような青色発光と、これと補色関係にある発光とを利用して白色発光を実現しており、具体的には、第1及び第2電極間に有機化合物層を備える有機EL素子であって、前記有機化合物層は、上記化学式(i)(但し式中のR21〜R26は任意の置換基、q21〜q23は、0〜9の整数)で表される有機化合物を含む第1発光層と、下記化学式(3)
【化8】
で表され、式中のR1〜R7の少なくとも2以上が化学式(4)で示される置換基(但し式中のRnとR’nは任意の置換基、nは1以上の整数、Qは例えば後述する化学式(5)などで表される芳香族基)より構成され、残りのR1〜R7は互いに独立して、水素原子、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキサム酸基、またはシリル基を表す有機化合物を含む第2発光層と、を有する。
【0016】
化学式(i)で表される有機化合物は、色素をドープすることなく、それ自体を発光層に用いても高効率な青色発光を得ることができる。また、この化合物は160℃以上のTgを有し、化学的にも安定である。
【0017】
また、化学式(3)で表される有機化合物は、電子輸送性発光層のホストとして広く用いられているAlq(キノリノールアルミ錯体)中にドープしても、正孔輸送層として用いられる芳香族三級アミン中にドープしても550〜600nm付近にピーク波長を有する橙色発光を高効率で示す。特に、正孔輸送層中にドープした場合に安定な黄色発光を示すことで知られているルブレンをドープした場合と比較して、より長波長側にピーク波長を有し、かつ、同等の高耐久性(輝度半減寿命)を示す。
【0018】
上記化学式(i)の有機化合物及び化学式(3)の有機化合物をそれぞれ用いることで、同一素子からの青色発光と橙色発光の混色により色純度の優れた白色光が得られ、かつ高効率発光が可能で、さらに高耐久性を有する有機電界発光素子を実現できる。
【0019】
本発明の他の態様は、第1及び第2電極間に複数の有機化合物層を備える有機EL素子であり、前記有機化合物層は、上記化学式(i)で表される有機化合物を含む発光層を有し、この発光層はその少なくとも一部の領域又は層内全域に、上記化学式(3)で表され、式中のR1〜R7の少なくとも2以上が化学式(4)で示される置換基より構成される有機化合物を含有することである。
【0020】
また以上において、化学式(4)の末端基Qとしては、下記化学式(5)
【化9】
で示される構成を採用することができる。
【0021】
化学式(i)に示す有機化合物と化学式(3)に示す有機化合物とは同一層中に存在した場合にも共に発光する。従って、同一発光層中で、化学式(i)の有機化合物に起因した青色の光と、化学式(3)の有機化合物に起因した橙色の光を得ることができる。この2種類の有機化合物のうち、化学式(i)に示す化合物はホスト材料として用いることができ、また化学式(3)に示す化合物は、上記ホスト材料中にドープされるゲスト材料として用いることができる。
【0022】
特に、発光層全域において、化学式(i)に示す有機化合物と、化学式(3)に示す有機化合物とを含む構成の場合、発光層全域で青色と橙色の発光が得られる。よって二つの発光色の発光位置が異なる積層型の素子と比較すると、色度の視野角依存性を著しく改善することができる。また、積層型では輝度を変化させたときに印加される電界が変化することにより再結合領域が変動し、そのため、色度が輝度依存性を示す可能性がある。しかし、発光層全域で異なる2色が発光する構成とすれば、二つの発光色の発光位置が相対的にみて変化しないので、色度の輝度依存性を示さない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いてこの発明の好適な実施の形態(以下実施形態という)について説明する。
【0024】
図1は本発明に係る青色あるいは白色発光を示す有機EL素子の概略断面構成を示している。図1において、ガラスなどの透明基板10の上に透明電極としてITO(Indium Tin Oxide)等を用いた陽極12が形成され、その上に多層構造の有機化合物層200が形成され、この有機化合物層200の上に金属材料として、例えばLiFとAlを用いて陰極14が形成されている。各層は、基板側から順に、例えば真空蒸着によって積層される。有機化合物層200は、少なくとも発光層30を備え、発光層の単層構造の他、正孔輸送層と発光層との積層構造、発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層及び発光層及び電子輸送層の積層構造などを取りうることができる。図1の例では、この有機化合物層200は、陽極12側から順に正孔注入層20、正孔輸送層22、発光層30及び電子輸送層28が積層されている。
【0025】
[実施形態1]
実施形態1に係る有機EL素子では、上記発光層30が下記化学式(i)
【化10】
(但し式中のR21〜R26は任意の置換基、q21〜q23は、0〜9の整数)に示す有機化合物を含み、青色蛍光色素がゲスト材料としてドープされている。この発光層30に対し、陰極14から電子が注入され、陽極12から正孔が注入されると正孔と電子が上記化合物(i)中で再結合し励起子が生成され、そのエネルギーがゲストの蛍光色素に移動し、蛍光材料に起因した青色発光が得られる。
【0026】
ここでこの蛍光色素としては下記化学式(2)
【化11】
で表されるような有機化合物を用いることができる。
【0027】
また正孔輸送層としては、特にこれに限られるものではないが、下記化学式(1)
【化12】
(但し式中のAr31〜Ar33は任意のアリール基または芳香族へテロ環基を示す。)
で表される有機化合物を採用することができる。具体的には、後述する化学式(8)などに表されるTPTEなどが挙げられる。
【0028】
[実施形態2]
実施形態2に係る有機EL素子は、上記発光層30が第1発光層と第2発光層とからなる2層構造を備える。この発光層30のうち第1発光層(ここでは電子輸送層28側に形成)は、上記化学式(i)(但し式中のR21〜R26は任意の置換基、q21〜q23は、0〜9の整数)に示す有機化合物を含む。また、第2発光層(正孔輸送層22側に形成)は、下記化学式(3)
【化13】
で表される有機化合物(式中のR1〜R7の少なくとも2以上は化学式(4)で示される置換基)を含む。
【0029】
このような2層構造の発光層30に対し、陰極14から電子が注入され、陽極12から正孔が注入されると上記化学式(i)に示される有機化合物に起因した青色発光が第1発光層(青色発光層)で得られ、かつ上記化学式(3)で示される有機化合物に起因した橙色発光が第2発光層(橙色発光層)で得られる。両発光層で得られる青色と橙色とは補色関係にあるため、この2色が対応する第1及び第2発光層で得られることで本実施形態2に係る有機EL素子は、白色発光が実現される。
【0030】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る有機EL素子について説明する。実施形態2と相違する点は、発光層30の構成である。実施形態2では、発光層は、青色発光層(第1発光層)と橙色発光層(第2発光層)の2層構造であったが、実施形態3に係る有機EL素子において、発光層30は、上記化学式(i)に示される有機化合物をホスト材料として含有し、この発光層の一部の領域(ドーピング発光層)に上記化学式(3)に示される有機化合物をゲスト材料として含有した構成である。
【0031】
ここで、発光層30の一部領域に含むとは、特に、積層方向の特定位置の面内において化学式(3)の有機化合物が含まれていることを意味している。このような発光層30のドーピング発光層は、例えば図1において正孔輸送層22の形成後、ホスト材料である化学式(i)の有機化合物の蒸着と同時に、ゲスト材料として化学式(3)の有機化合物を蒸着することで得ることができる。正孔輸送層22上に所定の厚さのドーピング発光層を堆積した後、化学式(3)の有機化合物の蒸着を止め、連続して化学式(i)の有機化合物の単独発光層を堆積する。
【0032】
このような構成によっても、発光層30に陰極14から電子を注入し、陽極12から正孔を注入すると発光層30中の単独発光層中で青色の光が得られ、ドーピング発光層では橙色と青色の光が得られる。このため、本実施形態3の有機EL素子においても、補色関係にある青色と橙色の光が得られ、白色の発光を実現できる。実施形態2と比較して、発光層30全体の厚さは薄く、その中で2色の光が得られるため、単独発光層領域とドーピング発光層領域とが非常に近接して形成され、色度の視野角依存性を向上することができる。また、発光層30の形成時、単独発光層及びドーピング発光層のいずれでも化学式(i)の有機化合物を用い、ドーピング発光層を形成するときには、さらに化学式(3)の有機化合物材料を蒸着雰囲気中に加えればよい。
【0033】
[実施形態4]
上記実施形態3では、発光層30が単独発光層領域とドーピング発光層領域とを備えているが、本実施形態3に係る有機EL素子は、発光層30全体が上記化学式(i)の有機化合物と化学式(3)の有機化合物を含む。具体的には、化学式(i)の化合物をホスト材料として用い、この材料中にゲスト材料としての化学式(3)に示す有機化合物を分散させている。素子の他の構成は上記実施形態3と同一である。このような単層の発光層30を採用することで、色純度の高い白色発光素子が実現できると共に、発光層30内の各領域において青色発光と橙色発光が均一に起こるため、色度の視野角依存性を非常に小さくすることができる。また、印加する電界を変化させても再結合領域の位置が変わらないので、発光層30内での青色と橙色の発光位置は変化せず色度の輝度依存性を非常に小さくすることができる。
【0034】
[本発明の有機化合物]
次に、上記各実施形態において用いる化学式(i)に示す有機化合物及び化学式(3)に示す有機化合物について詳しく説明する。
【0035】
(化学式(i)に示す有機化合物)
この化合物は上述のように青色発光を示し、そのガラス転移温度Tgは160℃以上で、化学的に安定である。式(i)中のR21、R22、R23は、それぞれ置換基である。この置換基R21,R22,R23は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基等が好適であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、さらに好ましくは、アリール基である。
【0036】
また、式中のq21、q22,q23は、0〜9の整数を表す。q21,q22,q23は、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0,1である。q21,q22,q23が2〜9の場合、R21,R22,R23は同一または互いに異なってもよい。
【0037】
また、式(i)中のR24,R25,R26 は置換基を表し、置換基としては、前記R21で説明した基が挙げられる。R24,R25,R26 は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0038】
上記置換基R21〜R23のより具体的な例としては以下があげられる。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。以上説明した化学式(i)に示される有機化合物としては、例えば下記化学式(ii)〜(viii)
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
に示されるような有機化合物があげられる。
【0039】
(化学式(3)に示す有機化合物)
この有機化合物は、キノリン誘導体化合物であり、化学式(3)中の置換基R1〜R7の内,少なくとも2以上は、化学式(4)で表されるn個(n:1以上の整数)の二重結合を備える置換基で置換された構造を備える。
【0040】
また、化学式(4)の末端基Qは特に芳香族基(芳香族炭化水素または芳香族複素環基)とすることが好適である。一例としては下記化学式(5)
【化21】
に示すようなフェニル基が採用可能である。
【0041】
化学式(4)で置換されていないR1〜R7の残りの基は,互いに独立していて、水素原子、または水素原子以外の任意の置換基が採用可能である。例えば、水素原子、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、エステル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基)、カルボキシル基(アシルオキシ基)、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキサム酸基、シリル基などを採用することができる。また、上記化学式(4)で示される置換基以外の基において、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7のいずれかは、互いに結合して芳香族環あるいは脂肪族環を形成する構造でもよく、また芳香族環、またはヘテロ芳香族環、脂肪族環、脂肪族環の置換基として採用可能な置換基は上記に列挙した特性基と同様である。
【0042】
化学式(4)において置換基RnとR’nは任意の特性基が採用可能であり、互いに独立していて、例えば水素原子、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、エステル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基)、カルボキシル基(アシルオキシ基)、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキサム酸基、シリル基などを採用することができる。化学式(4)のnの数が2以上の場合、二重結合の置換基RnとR’nは全て同じ、または全て相違、或いは一部同一のいずれでもよい。
【0043】
末端基Qは上記化学式(5)で示すようなフェニル基に代表される芳香族基(芳香族炭化水素または芳香族複素環基)が好適である。末端基Qの置換基RQ(置換基R18〜R12)は特に限定されないが、互いに独立していて、例えば水素原子、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、エステル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基)、カルボキシル基(アシルオキシ基)、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキサム酸基、シリル基などを採用することができる。また、隣接する置換基RQ同士(例えばR8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12)が互いに結合して芳香族環あるいは脂肪族環を形成する構造でもよく、また芳香族環、またはヘテロ芳香族環、脂肪族環、脂肪族環の置換基として採用可能な置換基はR1〜R7に採用可能であるとして以上に列挙した特性基と同様である。
【0044】
化学式(3)の置換基R1〜R7のうち、少なくとも2つが化学式(4)で表される置換基である。残りの置換基は特に限定されないが、少なくとも1つに電子吸引性の置換基を導入することが好ましい。
【0045】
化学式(5)の置換基RQは特別に限定されるものではないが、電子供与性の置換基であることが好ましい。電子供与性の置換基としては、例えば、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、またはアルキル基で置換されたアミノ基などが挙げられる。
【0046】
以上説明した化学式(3)に示される有機化合物としては、例えば下記化学式(6)
【化22】
に示されるような有機化合物があげられる。
【0047】
この化学式(6)などのように一般式(3)で表される有機化合物は、電子輸送性発光層のホストとして用いられるAlq中にドープしても、正孔輸送層として用いられる芳香族三級アミン中にドープしても550nm〜600nm付近にピーク波長を有する橙色の光を高効率で発光する。また、融点も高く(221℃)、化学的にも安定である。
【0048】
【実施例】
[実施例1]
(実施例1−1:化学式(ii)の有機化合物に下記化学式(7)の蛍光色素をドープした青色発光素子)
発光層に化学式(i)で表され有機化合物として、下記化学式(ii)
【化23】
に示す有機化合物を用い、上述の一般式(2)で表されるゲストの蛍光色素として下記化学式(7)
【化24】
に示す有機化合物を3.8%ドープした図2に示す断面構造を有する有機EL素子を作製した。
【0049】
まず、ITOの透明電極(陽極)が予め形成されているガラス基板上に、真空蒸着(7×10−5Pa)により、正孔注入層(CuPc:銅フタロシアニン)を15nm、続いて、正孔輸送層を35nm堆積した。正孔輸送層としては一般式(1)で示される化合物として、下記化学式(8)
【化25】
に示すようなTPTEを材料に用いた。
【0050】
次いで、青色発光層の材料として上記化学式(ii)に示す有機化合物を用い20nmの発光層を化学式(7)の化合物と同時蒸着により堆積し、さらに、電子輸送層の材料として下記化学式(9)
【化26】
で表される有機化合物を40nm蒸着した。
【0051】
さらにこの後、LiFを0.5nm、Alを150nm蒸着し積層構造の金属電極(陰極)を形成し、素子部を作製した。この素子部が形成されたものを、高真空排気したチャンバーに搬送し、チャンバー内を窒素置換した後、エポキシ樹脂を用いて金属製の封止キャップの端部を透明電極の表面に接着し密封した。
【0052】
この素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、863cd/m2の発光を得た。発光色は、CIE色度座標においてX=0.181,Y=0.338であった。ELスペクトルを図3に示す。470nm付近のピークが化学式(7)に示した有機化合物からの発光ピークである。NTSC標準の青色発光色の色度座標X=0.14,Y=0.08に比べてY方向のずれが大きいものの、青色発光を呈する。
【0053】
(実施例1−2:化学式(ii)の有機化合物に下記化学式(10)の蛍光色素をドープした青色発光素子)
発光層に化学式(i)で表され有機化合物として、化学式(ii)に示す有機化合物を用い、化学式(2)で表されるゲストの蛍光色素として下記化学式(10)
【化27】
に示す有機化合物を2.3%ドープした有機EL素子を作製した。図4はこの素子の断面構造を示す。実施例1−1と異なる点は、ドープする蛍光色素材料であり、他は共通するので説明を省略する。
【0054】
この素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、669cd/m2の発光を得た。発光色は、CIE色度座標においてX=0.155,Y=0.213であった。ELスペクトルを図5に示す。475nm付近のピークが化学式(10)に示した有機化合物からの発光ピークであり,色純度に優れた青色発光を呈した。
【0055】
(実施例1−3:化学式(ii)の有機化合物に化学式(11)の蛍光色素ペリレンをドープした青色発光素子)
発光層に化学式(i)で表される有機化合物として、上記化学式(ii)に示す有機化合物を用い、ゲストの蛍光色素として下記化学式(11)
【化28】
に示す有機化合物を0.2%ドープした有機EL素子を作製した。図6はこの素子の断面構造を示す。実施例1−1と異なる点は、ドープする蛍光色素材料と電子輸送層材料であり、電子輸送層としてAlq(アルミキノリノール錯体)の下記化合物(12)
【化29】
を用いた他は、共通するので説明を省略する。
【0056】
この素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、505cd/m2の発光を得た。発光色は、CIE色度座標においてX=0.155,Y=0.234であった。ELスペクトルを図7に示す。460nmと490nm付近のピークが化学式(11)に示した有機化合物からの特徴的な発光ピークであり,色純度に優れた青色発光を呈した。
【0057】
[比較例]
(比較例1:化学式(i)の有機化合物を用いた青色発光素子)
発光層に化学式(i)で表される有機化合物として、下記化学式(ii)に示す有機化合物を用い、図8に示すような断面構造を有する有機EL素子を作製した。実施例1−1〜1−3と異なる点は,化学式(ii)で表される有機化合物の発光層A中に蛍光色素をドープ材料として含有しないことであり,電子輸送材料として化学式(9)を用いたことであり,他は共通するので説明を省略する。
【0058】
以上のようにして作製した有機EL素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、545cd/m2の発光を得た。発光色は、CIE色度座標においてX=0.179,Y=0.303であった。図9は、この比較例1に係る素子のELスペクトルを示す。図9において、475nm付近のピークが上記化学式(ii)に示した有機化合物からの発光ピークである。NTSC標準の青色発光色の色度座標X=0.14,Y=0.08に比べてY方向のずれが大きいものの、青色発光を呈する。しかしながら,ELピークの半値幅が広いために,青色発光素子として使用するためには,青色のフィルターを用いるなどの対策が必要である。
【0059】
実施例1−1〜1−3と比較例1の有機EL素子において,11mA/cm2のDC電流を流したときの素子の発光輝度,視感効率,色度座標を表1に示す。
【0060】
【表1】
青色蛍光色素のドープの効果で,高輝度化している。また,蛍光色素のドープすることによる駆動電圧も上昇も少ないことから電圧を考慮した視感効率も比較例1と比べて実施例1−1〜1−3は,1.2から1.8倍に向上した。ホスト材料である化合物式(ii)から蛍光色素へエネルギーが効率よく伝達したためである。
【0061】
また、実施例1−1〜1−3と比較例1の素子の初期輝度が2400cd/m2になるように電流駆動して耐久試験を実施した。その結果を図10に示す。実施例の素子では,比較例1のノンドープ素子に比べて,輝度が半減するときの時間(半減寿命)が大幅に改善した。また,2400cd/m2と高輝度どの寿命測定では,電流による素子の温度も上昇しているので,蛍光色素をドープすることで,高温での安定性も増していると判断できる。
【0062】
[実施例2]
(実施例2−1:化学式(3)の有機化合物を用いた橙色発光素子)
(2−1a)化学式(13)の有機化合物を使用
この実施例2−1aでは、発光材料(ここではゲスト材料)として、上記一般式(3)で表される有機化合物として下記化学式(13)
【化30】
に示す有機化合物を用いた。図11はこの実施例2−2aに係る有機EL素子の断面構造を示している。上記実施例1−1〜1−3と相違する点は、正孔輸送層、発光層および電子輸送層の厚さと、発光層および電子輸送層の材料であり、他は共通するので説明を省略する。正孔輸送層は、上記化学式(8)に示すTPTEを材料として用い35nmの厚さに蒸着によって形成し、電子輸送層は、化学式(12)のキノリノールアルミ錯体(Alq3)を材料とし、以下の発光層の上に60nmの厚さに蒸着によって形成した。発光層は、正孔輸送層と同じ材料であるTPTEをホスト材料として用い、このホスト材料中に上記化学式(13)に示す有機化合物を0.8%ドープして形成されている。すなわち、上記正孔輸送層の電子輸送層との界面から10nmの領域に化学式(13)に示す有機化合物が0.8%ドープされ、この10nmの厚さの領域が発光層Bを構成している。
【0063】
得られた実施例2−1aに係る有機EL素子に、11mA/cm2の直流電流を流したところ、600cd/m2の発光を得た。発光色は、橙色の発光を呈し、CIE色度座標においてX=0.468,Y=0.487であった。図12は、この素子のELスペクトルを示す。図12からもわかるように580nm付近に発光ピークを有する橙色の発光が得られている。
【0064】
(2−1b)化学式(14)の有機化合物を使用
この実施例2−1bでは、発光層の発光材料(ここではゲスト材料)として、上記一般式(3)で表される有機化合物として下記化学式(14)
【化31】
に示す有機化合物を用いた。上記実施例2−1aと同様に正孔輸送層の電子輸送層との界面から10nmの領域に、ホスト材料であるTPTEに対して化学式(14)の有機化合物を1.0%ドープして発光層Bを形成した。この実施例2−1bに係る有機EL素子は、発光材料として化学式(13)で表される有機化合物の代わりに上記のような化学式(14)で表される有機化合物をドープした以外は、実施例2−1aの有機EL素子と同じ構成である(断面構造は図11参照)。
【0065】
実施例2−1bに係る有機EL素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、676cd/m2の発光を得た。発光色は、黄橙色の発光を呈し、CIE色度座標においてX=0.433,Y=0.516であった。図13は、この素子のELスペクトルを示しており、560nm付近に発光ピークが得られている。
【0066】
図14は、比較例1の有機EL素子および実施例2−1aおよび2−1bの有機EL素子でそれぞれ得られた発光色の色度座標を示している。比較例1のように化学式(ii)に示す有機化合物に起因した発光(青色発光)と、実施例2−1aのように化学式(13)に起因した発光あるいは実施例2−1bのように化学式(14)に示す有機化合物に起因した発光とで2色の補色を利用する場合、それらの組合せから得られる発光は、図14に示した、比較例1の素子の発光色の色度座標と、実施例2−1a又は1bの素子の発光色の色度座標とを結んだ直線上のいずれか色度を示すものと考えられる。
【0067】
ここで、図14の中央領域に記載した曲線に囲まれた領域は、CIE色度座標中、「およそ白色を示す領域」である。青色発光層として化学式(ii)で表される有機化合物を青色発光材料として用い、かつ青色発光を呈する他の色素をこの材料中にドープしない場合には、橙色発光材料として化学式(13)の有機化合物を用いた方(実施例2−1a)が、実施例2−1bよりも、上記図14に示す白色を示す領域と重なる部分が多いことがわかる。従って、実施例2−1aのように橙色発光材料としては、化学式(13)の有機化合物の方が化学式(14)の有機化合物よりも、容易に白色に近い発光を得ることが可能であることがわかる。
【0068】
なお、図14に示した「およそ白色を示す領域」は、JIS Z 8110に記載されている参考付図1「系統色名の一般的な色度区分」に示された黄みの白、緑みの白、青みの白および紫みの白を含んだ白色の領域である。
【0069】
また、青色発光層として、化学式(ii)の有機化合物をホスト材料として用い、実施例1−1,1−2,又は1−3に示すように,ここに青色発光を呈する他の色素をゲストとしてドープした場合には、青色の色純度をより向上させることも可能となる(NTSC標準に近づく)。そして、このような場合には、橙色発光材料として、化学式(14)の有機化合物を用いても白色発光を得ることが可能となる。
【0070】
(実施例2−2:化学式(ii)の有機化合物と化学式(13)の有機化合物とを用いた白色発光)
図15は、実施例2−2に係る有機EL素子の断面構造を示している。本実施例2−2では、青色発光層(発光層A)に,上記比較例1と同じ化学式(ii)の有機化合物を用いている。また橙色発光層(発光層B)には、正孔輸送層(TPTE)と同一材料であるTPTEをホスト材料とし、ゲスト材料として上記実施例2−1aで用いた化学式(13)の有機化合物を採用した。この発光層Bは、正孔輸送層の青色発光層Aとの界面から5nmの領域に化学式(13)の有機化合物を1.0%ドープして形成した。電子輸送層には、上記比較例1と同様、上記化学式(9)で表される有機化合物を用いた。
【0071】
【表2】
上記表2には、得られた実施例2−2に係る有機EL素子に0.11mA/cm2、1.1mA/cm2、11mA/cm2の直流電流を流したときの輝度と発光色のCIE色度座標を示している。また、図16は、この実施例2−2に係る素子のCIE色度座標を示している。図16より、得られた発光色の色度座標は、いずれの電流条件においても、比較例1で得られた素子の青色発光の色度座標と実施例2−1aで得られた素子の橙色発光の色度座標とを結んだ直線上に位置することがわかる。また、本実施例2−2では、電流が小さく輝度が低いときには青色成分が強く、電流を増し輝度が高くなるにつれて橙色成分が強くなり、色度の輝度(電流)依存性があるが、およそ白色を示す領域に収まっている。このような色度の輝度依存性は、陽極と陰極との間に供給する電流(電圧)を変化させることにより発光領域が変化することに起因すると考えられる。以上のことから、色度の輝度依存性がやや大きいものの本実施例2−2で用いた材料の組合せにより良好な白色発光を高効率で得られることがわかる。また、発光層B、つまりゲスト材料として用いる化学式(13)の有機化合物をドープする層の厚さやドープ量を最適化することにより、色度の輝度依存性を小さくすることが可能であると考えられる。
【0072】
[比較例]
(比較例2−1:ルブレンを正孔輸送層中にドープした素子の作製および素子の発光特性)
比較例2−1として、正孔輸送層の電子輸送層との界面から5nmの領域にルブレンを4.7%ドープした有機EL素子を作製した。この素子は、実施例2−1a,1bに示した素子と同構造を有し発光層Bにドープした化合物のみが異なる素子である。
【0073】
得られた素子に11mA/cm2の直流電流を流したところ、965cd/m2の発光を得た。発光色は、黄橙色の発光を呈し、CIE色度座標においてX=0.451,Y=0.528であった。
【0074】
図17では、この比較例2−1に係る有機EL素子の発光色の色度座標と、比較例1に係る素子の青色の色度座標とをプロットしている。比較例2−1で発光材料として用いたルブレンに起因した発光(橙色光)と、化学式(ii)に示す有機化合物からの発光(青色光)との2色の補色を利用して白色を得ようとする場合、図17の中央付近に示した両素子の色度座標を結んだ直線上のいずれかの位置に、この2種類の材料を用いた白色発光素子による発光色度が存在すると考えられる。
【0075】
図17からわかるように、この2点を結んだ直線は「およそ白色を示す領域」とほとんど交わらない。従って、比較例2−1で採用したルブレンと、比較例1で採用した化学式(ii)の有機化合物との組合せでは良好な白色を得ることは期待できない。
【0076】
(比較例2−2:化学式(ii)の有機化合物とルブレンとを用いた素子の作製および素子の発光特性)
次に比較例2−2では、青色発光層(発光層A)に上記化学式(ii)の有機化合物を用いた層を用い、橙色発光層(発光層B)は、正孔輸送層の青色発光層との界面から5nmの領域にルブレンを5.0%ドープして形成した有機EL素子を作製した。素子構造は、発光層Bとして化学式(13)の有機化合物の代わりにルブレンをドープした以外は、上記図15に示した実施例2−2に係る素子構造と同じである。
【0077】
【表3】
上記表3は、得られた比較例2−2に係る有機EL素子に0.11mA/cm2、1.1mA/cm2、11mA/cm2の直流電流を流したときの輝度と発光色のCIE色度座標を示す。また、図18は、表3のように印加直流電流を変化させたときの比較例2−2の有機EL素子のCIE色度座標をプロットしている。比較例2−1で説明したように比較例2−2で得られた発光色の色度座標は、図18に示した2点を結んだ直線上にある。そしてこの比較例2−2の素子は、実施例2−2同様、色度の輝度依存性がある(図16参照)。低輝度では青白色を示し、高輝度では黄白色を示すが、実施例2−2と相違する点は、比較例2−2では輝度を変化させても良好な白色発光を得ることができないことである。
【0078】
【表4】
上記表4は、実施例2−2の素子、および、比較例2−2の素子について、0.11mA/cm2から11mA/cm2まで電流を変化させた時の発光色の変化をCIE色度座標における座標の変化量で表している。表4より、いずれの素子も輝度(電流)による色度の変化が大きいが、比較例2−2の素子に比して実施例2−2の素子の方が変化が小さいことがわかる。
【0079】
[実施例3]
実施例3として、一般式(i)で表される有機化合物を含む発光層の一部に化学式(13)で表される有機化合物をドープした白色発光有機EL素子を作製した。図19は、この実施例3に係る有機EL素子の構成を表している。図示するように、青色発光層(発光層A)は、化学式(ii)で表される有機化合物を蒸着形成し、この青色発光層の正孔輸送層との界面から5nmの領域には、発光層Cとして、化学式(13)で表される有機化合物を1.0%ドープした素子を作製した。電子輸送層には上記実施例2−2と同様化学式(9)で表される有機化合物を用いた。素子構成としては、実施例2−2の素子と発光層の構成以外は同一である。
【0080】
【表5】
上記表5は、得られた実施例3に係る有機EL素子に0.11mA/cm2、1.1mA/cm2、11mA/cm2の直流電流を流したときの輝度と発光色のCIE色度座標を示す。また、図20はCIE色度座標を示す。実施例3に係る有機EL素子の場合、各電流条件で得られる発光色の色度座標は、比較例1の素子の色度座標(青色)と実施例2−1aの素子(橙色)の色度座標とを結んだ直線上にのっていない。これは、本実施例3に係る素子は、化学式(13)の有機化合物を、正孔輸送層ではなく青色発光層にドープしており、化学式(13)の有機化合物の発光スペクトルがホスト材料依存性を有するためであると考えられる。
【0081】
本実施例3に係る素子は、図20からもわかるように低輝度では青色を呈したが、数十cd/m2以上の輝度では、青みを帯びた白色発光を呈した。化学式(13)の有機化合物のドープ量の調整や、あるいは、ドープした層の厚さを変えることで発光色の最適化を図ることが可能である。
【0082】
[実施例4]
実施例4として、一般式(i)で表される有機化合物を含む発光層の全域に化学式(3)で表される有機化合物をドープした白色発光有機EL素子を作製した。図21は、この実施例4に係る素子の構成を示している。図19に示した上記実施例3の素子とは発光層の構成を以外は同一である。本実施例4では、発光層Dは単層であり、この発光層Dは、化学式(ii)で表される有機化合物をホスト材料として用い、また、化学式(13)で表される有機化合物をゲスト材料として用いホスト中に0.2%ドープして作製している。発光層D内で、このゲスト材料のドープ(分散)割合は一定である。
【0083】
【表6】
上記表6は、実施例4に係る有機EL素子に0.11mA/cm2、1.1mA/cm2、11mA/cm2の直流電流を流したときの輝度と発光色のCIE色度座標を示す。また、図22は、この実施例4に係る素子のCIE色度座標を示す。この実施例4に係る素子においても、化学式(13)で表される有機化合物を化学式(ii)で表される有機化合物中にドープしていることから、図22に示すように発光色の色度座標は図中の直線上にはのらず、一層「およそ白色を示す領域」、即ち一層目的とする高純度の白色に近づいている。さらに、表6及び図22に示されるように、電流条件を変化させても、色度の変化が非常に小さく、色度の輝度依存性が極めて小さいことがわかる。このように、本実施例4の素子は、色度変化が少なくかつ白色としても極めて良好な白色を呈することができる。
【0084】
また、本実施例4に係る有機EL素子をDC低電流駆動にて初期輝度2400cd/m2で輝度が半減するまで駆動した後、11mA/cm2の電流を流し、発光色の色度座標を測定した。輝度半減前後での色度座標を図23に示す。図23には、比較のため、実施例2−2の素子に対して同様の測定をした結果も示した。この図から、本実施例4の場合には、輝度半減後の色度ずれも極めて小さいことがわかる。
【0085】
以上のことから、実施例4の青色発光層全層に化学式(13)で表される有機化合物をドープする方法が、色度の輝度依存性や駆動時間依存性を最も小さくでき、本発明形態の中で最も好ましい方法であることがわかる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明においては、化学式(i)で表される化合物に蛍光色素を0.1mol%〜10mol%含有させることで高効率長寿命の青色有機EL素子が実現できる。また,化学式(i)で表される化合物と化学式(3)で表される化合物とを組み合わせて用いることで、青色発光と橙色発光を同時に同一発光面内で得ることができ、色純度に優れた白色発光が達成でき、かつ、高効率で高耐久性を有する白色発光素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機EL素子の概略断面構成を示す図である。
【図2】実施例1−1に係る青色発光素子の断面構成を示す図である。
【図3】実施例1−1に係る青色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1−2に係る青色発光素子の断面構成を示す図である。
【図5】実施例1−2に係る青色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図6】実施例1−3に係る青色発光素子の断面構成を示す図である。
【図7】実施例1−3に係る青色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図8】比較例1に係る青色発光素子の断面構成を示す図である。
【図9】比較例1に係る青色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図10】実施例1−1,1−2及び1−3と比較例1に係る青色発光素子の動作寿命を示す図である。
【図11】実施例2−1aに係る橙色発光素子の断面構造を示す図である。
【図12】実施例2−1aに係る橙色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図13】実施例2−1bに係る橙色発光素子のELスペクトルを示す図である。
【図14】比較例1,実施例2−1a及び2−1bの各素子の発光色のCIE色度座標である。
【図15】実施例2−2に係る白色発光素子の断面構造を示す図である。
【図16】実施例2−2の素子の白色光のCIE色度座標である。
【図17】比較例1及び比較例2−1の各素子の発光色のCIE色度座標である。
【図18】比較例2−2の素子の発光色のCIE色度座標である。
【図19】実施例3の白色発光素子の断面構造を示す図である。
【図20】実施例3の素子の発光色のCIE色度座標である。
【図21】実施例4の白色発光素子の断面構造を示す図である。
【図22】実施例4の素子の発光色のCIE色度座標である。
【図23】実施例4と実施例2−2の各素子の輝度半減前後におけるCIE色度座標である。
【符号の説明】
10 基板、12 陽極(透明電極)、14 陰極(金属電極)、20 正孔注入層、22 正孔輸送層、28 電子輸送層、30 発光層、200 有機化合物層。
Claims (4)
- 第1及び第2電極間に有機化合物層を備える有機電界発光素子であって、
前記有機化合物層は、下記化学式(i)
下記化学式(3)
を有することを特徴とする有機電界発光素子。 - 第1及び第2電極間に少なくとも1つの有機化合物層を備える有機電界発光素子であり、
前記有機化合物層は、下記化学式(i)
- 請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機電界発光素子において、前記化学式(4)中のnが、2以上であることを特徴とする有機電界発光素子。
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