JP4593504B2 - 延性に優れた高強度極細鋼線 - Google Patents

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本発明は、自動車用タイヤのスチールコード等に使用される高強度鋼線に関し、詳しくは、ダイスを用いてパーライト組織を有する線材を冷間で伸線加工して強化された線径0.04〜0.4mm、強度4000MPa級以上の高強度極細鋼線に関するものである。
自動車用タイヤのスチールコードなどに用いられる高強度鋼線は、タイヤの耐久性向上や軽量化の要求から、鋼線の高張力化に対するニーズが益々高まっている。
一般に、スチールコードワイヤーなどの高強度極細鋼線は、炭素鋼を約1000℃に加熱してオーステナイト化した後、450〜600℃の鉛浴中で急冷するパテンティング処理をした後、ダイス等を用いて冷間で伸線加工を行うことによって、線径0.04〜0.4mmの強化した極細鋼線とすることで製造される。
前記パテンティングを施した炭素鋼(以下、パテンティング材ともいう)の組織は、微細なパーライト組織となり、一つの粒界内に存在するセメンタイト(Fe3C)とフェライトが一方向に層状になった結晶粒からなる。このパテンティング材を伸線加工すると、鋼中のパーライト組織におけるパーライトラメラ間隔が小さくなり、また、フェライト中に多量の転位が導入されることで、加工硬化により、その引張強さが増大する。
高強度極細鋼線の引張強度を向上させるためには、素材の化学組成やパテンティング処理条件により最終パテンティング処理後の鋼線(パテンティング材)の引張強度を向上するか、或いは、伸線加工における歪量を増加させるなどが考えられる。
しかし、素材の化学組成やパテンティング処理条件、さらに、伸線加工における歪増加による極細鋼線の強化方法だけでは、引張強度の増加強度の増加にともなって、延性の低下が著しく、引張強度と延性との両者を満足することは限界であった。特に、引張強度が4000MPaを超えると延性低下が著しく、実用化することが極めて困難となる。
なお、スチールコードワイヤーなどの高強度極細鋼線においては、二次加工処理により極細鋼線を数本から数十本撚り合わせてスチールコードワイヤーとして使用されることもあるため、このような二次加工処理において、断線や割れなどの欠陥が発生しないだけの延性が必要とされる。
このため、極細鋼線に要求される延性の具体的指標としては、例えば、引張試験による絞り、ねじり試験による捻回数、デラミネーション発生(試験中に鋼線の長手方向に生ずる割れ)の有無等が挙げられる。
このような背景を踏まえて、従来から、極細鋼線の高強度化とともに延性の向上を図ることを目的とした技術が多数提案されている。
例えば、高強度化における延性低下を抑制するために、C、Si、Mn、Cr等の化学成分を規定した高強度で高延性の極細線用高炭素鋼線材が提案されている(例えば、特許文献1、2、参照)。しかし、これらの極細鋼線の引張強さは最大でも3500〜3600MPaであり、極細鋼線の高強度化には限界があった。
また、鋼中の化学成分組成を規定するとともに非金属介在物組織を制限し、かつ、初析セメンタイトの面積分率を10%以下に制限して鋼材を伸線加工する際の破断の抑制、さらには、撚り線加工する際の割れ発生を減少する、高強度鋼高靱・延性鋼線材が提案されている(例えば、特許文献3、参照)。
さらには、鋼材の化学成分組成と最終ダイスでの減面率を2〜8%に制御することにより高強度鋼高靭性極細線鋼の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4、参照)。
しかし、これらの方法は、いずれも引張強度が4000MPaの高強度と絞り値が40%以上の延性の両方を満足する高強度高延性を有する極細鋼線を安定して得ることは難しかった。
一方、パテンティング処理により得られる伸線用線材(パテンティング材)のパーライト組織に着目し、粒界内のセメンタイト(Fe3C)とフェライトの層状組織の配列方向を線材の長手方向に対して45°以内の角度範囲に方向性を揃えることにより、伸線加工の際に、配列方向の回転、座曲を抑制し、強度と延性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献5、6、参照)。
しかしながら、最終的な鋼線の特性は、単にパテンティング材によって決まるものではなく、強度と延性を共に良好にするための極細鋼線の構造を明確に規定する必要がある。
特開昭60−204865号公報 特開昭63−24046号公報 特開平6−145895号公報 特開平7−113119号公報 特開平4−289148号公報 特開平7−76727号公報
伸線加工時に伸線加工量を非常に大きくすることによって、従来技術によっても高強度化は図れるものの、延性が低下する問題を避けることができなかった。本発明は、以上の従来技術の現状を背景にして、引張強度が4000MPa以上の高強度で、かつ、絞り値が40%以上の延性に優れた延性が優れた高強度極細線鋼線を提供することを目的とする。
本発明は、上記の新知見に基づきなされたものであり、その要旨とするところは、
(1) 引張強さが4000MPa以上のパーライト組織からなる高強度極細鋼線において、前記パーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔が、該平均間隔の最大値と最小値の比率で、4〜1の範囲にあることを特徴とする延性に優れた高強度極細鋼線。
(2) 前記平均間隔が、該平均間隔の最大値と最小値の比率で、2〜1の範囲にあることを特徴とする上記(1)記載の延性に優れた高強度極細鋼線。
本発明の適用により、自動車タイヤ用をはじめとする十分な延性を有する高強度鋼線の製造が可能となり、これによりタイヤの軽量化が可能となり、産業上に与える貢献は非常に多大なものである。
本発明の詳細について、以下に説明する。
一般に、高強度極細鋼線の製造方法は、概略、次のように行なわれる。先ず、炭素鋼を約1000℃に加熱してオーステナイト組織とし、その後、450〜650℃の鉛浴中で急冷する、パテンティング処理をする。
パテンティング処理を施した炭素鋼(以下、パテンティング材とうい)の組織は、板状結晶のセメンタイト(Fe3C)(以下、ラメラセメンタイトという)と板状結晶のフェライト(以下、ラメラフェライトという)が、それぞれ交互に層状に配置されたラメラ構造を有する微細パーライト組織となる。
パテンティング材は、ダイス等を用いて冷間で、所定の減面率で伸線加工を行うことによって、線径0.04〜0.4mmの極細鋼線に製造される。
図1に、極細鋼線の軸方向(伸線方向)に垂直な断面(C断面)における組織を模式的に示した。
極細鋼線の断面における組織は、ほぼ旧オーステナイト粒に対応すると考えられる複数のブロック(モジュール)5で構成される。また、それぞれのブロック5は、ほぼ同じ結晶方位を有する複数のパーライトコロニー4からなり、パーライトコロニー4は、ラメラフェライト(図中、白色部)1とラメラセメンタイト(図中、黒色部)2が層状に交互に重なり合ったパーライトラメラ構造となっている。
本発明では、パーライトコロニー4内における、ラメラフェライト1とラメラセメンタイト2との間隔をパーライトラメラ間隔3とし、ラメラフェライト1の幅とラメラセメンタイト2の幅とを足し合わせた幅に対応する。
一般に、パテンティング材では、それぞれのパーライトコロニー4で異なったラメラ方位(板状結晶方位)を有している。このパテンティング材を伸線加工すると、各パーライトコロニー4のラメラ方位の伸線方向に対する傾きに応じて、結晶に回転が生じ、この結果、各パーライトコロニー4のラメラ方位が伸線方向に揃い、伸長されることにより、各パーライトコロニー4内におけるパーライトラメラ間隔は小さくなる。
本発明者は、多くのパテンティング材を伸線して得られた極細鋼線について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、そのミクロ組織構造を観察した。この結果、パテンティング材のパーライト組織構造のばらつきに起因して、伸線して得られた極細鋼線のパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ間隔が、局所的に大きくばらつくことを見出した。
また、3次元アトムプローブを用いて、上記極細鋼線のパーライトコロニー内におけるラメラフェライト中に固溶する炭素量を系統的に調べた。この結果、同じ極細鋼線であっても、上記パーライトラメラ間隔の局所的なばらつきに依存して、ラメラフェライト中に固溶する炭素量も局所的に大きく異なり、パーライトラメラ間隔が小さくなるほど、ラメラフェライト中に固溶する炭素量が高くなることを知見した。
本発明者は、上記の知見を基に、特に引張強さが4000MPa以上の高強度極細鋼線における延性の支配因子について、組織構造の観点から詳細に解析した結果、高強度極細鋼線のパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ間隔およびラメラフェライト中の固溶炭素量の局所的なばらつきが、その延性に著しく影響を及ぼしていることを確認した。
以前より、極細鋼線のミクロ組織構造をTEMなどで観察した報告例は多数あるが、パーライト組織における組織構造や固溶炭素量のばらつきと延性との関係について言及したものは殆んどない。
上記パーライトコロニー内におけるパーライトラメラ間隔およびラメラフェライト中の固溶炭素量の局所的なばらつきによる延性劣化機構については、次のように考えられる。
一般に、伸線加工により鋼中のパーライト組成に多量の歪みが導入されると、パーライトコロニー内のラメラセメンタイトが分解して炭素原子がラメラフェライト中に拡散する現象が生じることが知られている。また、冷延鋼板において、フェライト中の炭素濃度が増加した場合、引張試験中にフェライト中の転位が炭素によって固着される動的歪み時効が生じ、顕著な延性低下を引き起こすことが知られている(例えば、日本金属学会誌 第45巻 第9号 (1981)942〜947、参照)。
パテンティング材のパーライト組織の不均一性、伸線加工時の局所な歪量および歪の種類の違い、また、パテンティング材のパーライト組織の違いに起因した伸線歪量に対する変形挙動の違い等によって、パテンティング材を伸線加工して得られる極細鋼線のパーライト組織構造を代表するパーライトコロニーのパーライトラメラ間隔はばらつくものと考えられる。
また、伸線加工時の局所な歪量の違い、パテンティング材のパーライト組織の違いに起因した伸線歪量に対する変形挙動の違い等によって、パーライトコロニー内のラメラセメンタイトが分解し、炭素原子が拡散する程度が異なるため、ラメラフェライト中に固溶する炭素量に違いが生じることになる。
これらの結果、極細鋼線中に強度、延性の異なる部位が現れ、特に強度に小さい部分に歪みが集中し、絞りの低下やデラミネーション発生の原因となるものと考えられる。
特に強度が高くなるほど、パテンティング材のパーライト組織や伸線加工時の局所な歪量などの条件により、伸線加工後の極細鋼線中のパーライト組織構造およびラメラフェライト中の炭素固溶量の局所的なばらつきに対する影響は大きくなるため、絞りなどの延性低下が問題となるものと考えられる。
また、延性を向上する観点からは、極細鋼線中のラメラフェライト中の固溶炭素量を減少するために、炭素含有量を減少することが好ましいが、必要強度が安定して得られなくなるため限界がある。
本発明は、以上の技術思想に基づきなされたものであり、引張強度が4000MPa以上の高強度で、かつ絞り値が40%以上の延性に優れた高強度極細鋼線を安定して得るために、高強度極細鋼線のパーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ平均間隔を、該平均間隔の最大値と最小値の比率で4〜1の範囲、好ましくは、2〜1の範囲にすることを特徴とするものである。
以下に、本発明の限定理由を詳細に述べる。
図2に、高強度極細鋼線のパーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率(最大値/最小値)と絞りとの関係を示す。
引張強さが約4200MPaで、成分、製法、伸線加工条件等が異なる多数の高強度極細鋼線の試料を準備し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、そのミクロ組織構造を観察してパーライトラメラ平均間隔を測定した。なお、パーライトラメラ間隔は、それぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ間隔を5点以上測定し、その平均値を求めて、パーライトラメラ平均間隔とした。
図2から、それぞれのパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率が4を超えるような、それぞれのパーライトコロニー間でパーライトラメラ平均間隔が著しくばらついた高強度極細鋼線では、絞りが著しく低下する。
この引張強さにおいて、絞り値が40%以上の十分な延性を確保するためには、それぞれのパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率を4以下とする必要がある。また、絞り値が45%以上の非常に高い延性を確保するためには、さらに前記比率を2以下とすることが好ましい。
なお、それぞれのパーライトコロニー内におけるパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率の下限は、延性の確保の点から限定する必要はなく、最大値と最小値が同じ値の場合の比率に相当する1とする。
これらの知見を基に、本発明では、高強度極細鋼線の強度とともに延性を十分に向上するために、パーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔をこの平均間隔の最大値と最小値の比率で4〜1の範囲に規定する。また、好ましくは、この平均間隔の最大値と最小値の比率を2〜1の範囲にする。
本発明によれば、引張強さが4000MPa以上のパーライト組織からなる高強度極細鋼線において、前記のように、それぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔を規定することで、絞り値が40%以上の十分な延性を確保することができる。
なお、引張強さが4000MPa以上で、かつ、絞り値が40%以上の延性を有する高強度極細鋼線を安定して得るためには、上記規定に加えて、鋼中の成分組成を以下のように限定することが好ましい。以下に示す「%」は特に説明がない限り、「質量%」を意味する。
C:Cは、0.7〜1.1%とする。Cは、パテンティング処理後の引張強さの増加および伸線加工硬化率を高める効果があり、より少ない伸線加工歪で引張強さを高めることが可能となる。Cが0.7%未満では、本発明で目的とする高強度の鋼線を実現することが困難となり、一方、1.1%を超えると、パテンティング処理時に初析セメンタイトがオーステナイト粒界に析出して伸線加工性が劣化し、伸線加工中に断線の原因になるので、0.7〜1.1%が好ましい。
Si:Siは、Siはパーライト中のフェライトを強化させるためと鋼の脱酸のために有効な元素である。0.05%未満では上記の効果が期待できず、一方、2.0%を超えると伸線加工性に対して有害は硬質のSiO2系介在物が発生しやすくなるため、0.05〜2.0%が好ましい。
Mn:Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、鋼の焼入性を向上させパテンティング処理後の引張り強さを高めるために有効な元素であるが、0.2%未満では上記の効果が得られず、一方、2.0%を越えると上記効果が飽和し、さらに、パテンティング処理時のパーライト変態を完了するまでの処理時間が長くなりすぎて、生産性が低下するので、0.2〜2.0%が好ましい。
以上の成分組成に加え、本発明では、以下の理由によって、Cr、Ni、V、および、Nbのうちの1種または2種以上を含んでもよい。
Cr:Crは、パーライトラメラ間隔を微細化し、パテンティング処理後の引張強さを高めるとともに、特に、伸線加工硬化率を向上させる有効な元素であるが、0.05%未満では前記作用の効果が少なく、一方、1.0%を超えるとパテンティング処理時のパーライト変態終了時間が長くなり生産性が低下するため、0.05〜1.0%が好ましい。
Ni:Niは、パテンティング処理時に変態生成するパーライトを伸線加工性の良好なものにする作用を有するが、0.1%未満では上記効果が得られず、一方、1.0%を超えても、添加量に見合うだけの効果が少ないため、0.1〜1.0%が好ましい。
V:Vは、パーライトラメラ間隔を微細化しパテンティング処理時の引張強さを高める効果があるが、この効果は0.01%未満では不十分であり、一方、0.5%を超えると、効果が飽和するので、0.01〜0.5%が好ましい。
Nb:Nbは、Vと同様、パーライトラメラ間隔を微細化し、パテンティング処理時の引張強さを高める効果があるが、0.001%未満では不十分であり、一方、0.1%を超えると、効果が飽和するため、0.001〜0.1%が好ましい。
他の元素は特に限定しないが、不純物として含有される元素は、P:0.015%以下、S:0.015%以下、N:0.007%以下が好ましい。また、Alは、0.005%を超えると、鋼中の介在物の中で最も硬質なAl23系介在物が生成しやすくなり、伸線加工あるいは撚り線加工の際の断線原因となるので、0.005%以下が好ましい。
次に上記極細鋼線を製造するための好ましい実施形態について説明する。
上述したような所定の成分を有する熱間圧延材を所定の線径にした後、パテンティング処理を行い、パーライト組織からなる伸線用パテンティング材を製造する。さらに、パテンティング材を所定の線径になるまで伸線加工を施す。
なお、パテンティング処理条件は、特に限定されるものではないが、一旦900℃以上に加熱してオーステナイト化し、450℃〜650℃の温度域に冷却しパーライト変態させるのが好ましい。また、伸線加工中に、中間パテンティング、最終パテンティング、また、めっき処理を必要に応じ施してもよい。
上記の極細鋼線の製造方法において、上述した本発明が規定するパーライト組織構造、つまり、それぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔が、その最大値と最小値の比率で4〜1、好ましくは2〜1である高強度極細鋼線を製造するためには、かかる製造方法において、下記A〜Dの条件を採用することが有効である。
また、これらの条件のうち、少なくとも、種以上の条件を実施することがより好ましい。
A:パーライトラメラ間隔が等しいパテンティング材を用いる。
伸線用パテンティング材のパーライトラメラ間隔が場所によって異なっている場合は、伸線加工後のパーライト組織を構成するそれぞれパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率は大きくなってしまう。そのため、パーライトラメラ間隔が等しいパテンティング材を用いることが好ましい。
例えば、このようなパテンティング材は、オーステナイト化温度からパーライト変態を行う浴炉への冷却速度を高めると共に、パテンティング時の浴温度をより均一にすることで得られる。
B:伸線加工の真歪量を5未満にする。
一般には、パーライトラメラ平均間隔は伸線加工歪量が大きくなるほど、そのばらつきが大きくなる可能性を有する。したがって、伸線用パテンティング材の引張強さを増加させ、同じ引張強さであっても、より伸線加工歪量が小さな鋼線が好ましい。伸線加工の真歪量が5以上の場合は、特に、この効果が顕著になるため、伸線加工歪量を真歪で最大でも5未満にする。
C:伸線加工において、ダイスによる減面率を30%以上、より好ましくは40%以上とする加工を複数回実施する。
減面率を大きく取ることで、表面と内部の伸線加工歪の種類及び量を均一にし、パーライトラメラ間隔の鋼線中の場所による違いをより小さくする。
D:パーライト組織の方位に配向性を有するパテンティング材を用いる。
パーライト組織方位を特定方向に配向性を有するパテンティング材を用いることによって、伸線加工時に各パーライトコロニーに加わる伸線加工歪量を均一とし、伸線加工後のパーライトラメラ間隔の場所による違いをより小さくする。
パテンティング材としては必ずしも伸線方向に配向性を有する必要はなく、任意の一方向に配向性を有すればよい。例えば、このようなパテンティング材は、任意の一方向の環境場(温度、圧力、磁場等)を設けた浴炉においてパテンティング処理することによって得られる。
次に、本発明において述べているパーライト組織を構成する、それぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔の評価法について説明する。
パーライトラメラ間隔の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって行うことが好ましい。これは、高強度鋼線の伸線パーライト組織は組織微細化による強化を利用しているため、パーライトラメラ間隔は数10nm以下と非常に小さく、他の鋼材でよく用いられるナイタールエッチング表面の光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察では、精度および空間分解能の点で難しいからである。
Arイオンミリング等によって、鋼線試料のC断面(鋼線の軸方向に垂直)を薄膜化し、パーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ間隔を5点以上測定し、平均値を求める。これをパーライトラメラ平均間隔とする。ここで、パーライトラメラ間隔とは、ラメラフェライト幅とラメラセメンタイト幅を足し合わせた幅に対応する。
このような測定を、鋼線のパーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニーについて行い、その鋼線におけるパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値を調べる。パーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率は、(最大値/最小値)によって求めることができる。
図3に、極細線鋼のC断面を薄膜化し鋼線の軸方向(伸線方向)から観察したTEM明視野像のを示す。パーライトコロニー単位毎に、パーライトラメラ間隔が大きく異なっていることが示されている。ラメラ間隔を正確に求めるためには、このようなTEM写真を広い領域から多数撮影し、写真上で精度よく調べることが好ましい。
伸線方向に平行なL断面からの観察の場合、層状のパーライト組織の界面に平行方向からの観察がなされているとは限らないため、パーライトラメラ間隔の見積もりに誤りが生じる可能性があり、注意が必要となる。
本発明においては、鋼線のパーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値を、精度よく調べる必要がある。厳密には、鋼線全体について調べる必要があるが、実際には、狭い領域でもパーライトラメラ間隔のばらつきは大きいため、異なる場所の複数領域(例えば、表面部、中心部、異なるブロックなど)において、パーライトラメラ間隔の特に大きい領域と小さい領域に注目し観察することで、最大値と最小値を精度よく求めることが可能となる。
以下、実施例により、本発明の効果を更に具体的に説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1に示す化学組成を有する供試材を熱間圧延で所定の線径にした後、パテンティング処理、伸線加工を行い、線径が0.04〜0.40mmのブラスめっきを有する極細線鋼を試作した。
表2に、極細鋼線試料の製造方法および引張強さ、パーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔における最大値と最小値、および、それらの比率、絞り、デラミネーション発生の有無を示す。
ねじり試験は、試験片の両端線径の100倍のつかみの間隔で固定して行い、破断の形態や応力歪み曲線からデラミネーション発生の有無を決定した。
パーライトラメラ平均間隔における最大値と最小値は、各鋼線のC断面の表面部と中心部の薄膜試料を作製し、TEMによって、特にパーライトラメラ間隔の大きい特にパーライトコロニーを含む領域5箇所、また、特にパーライトラメラ間隔の小さいパーライトコロニーを含む領域を5箇所、2万〜20万倍で観察撮影した写真から調べた。
表2において、試験No.1〜10が本発明であり、No.11〜20は比較例である。同表に見られるように、本発明例は、いずれも引張強さが4000MPa以上で、パーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率が4以下となっている。
この結果、絞りの大きい十分な延性を有する極細鋼線が実現できている。特に、パーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率が2以下の場合は、絞りがさらに大きくなっており、デラミネーションの発生も観察されなかった。
これに対して、比較例であるNo.11〜20は、パーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率が4より大きく、この場合、絞りが低下しており、本発明の範囲外のものとなる。また、4000MPa以上の引張強さの試料においてデラミネーションの発生が観察された。
鋼線を構成する伸線パーライト組織の構成要素を模式的に示す図である。 ほぼ4200MPaの引張強さを有する製法の異なる試料において、パーライト組織を構成する、それぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔の最大値と最小値の比率と絞りの関係を示す図である。 TEMによって極細線鋼のC断面を鋼線の軸方向から観察した明視野像を示す図である。
符号の説明
1 ラメラフェライト
2 ラメラセメンタイト
3 パーライトラメラ間隔
4 パーライトコロニー
5 ブロック

Claims (2)

  1. 引張強さが4000MPa以上のパーライト組織からなる高強度極細鋼線において、前記パーライト組織を構成するそれぞれのパーライトコロニー内のパーライトラメラ平均間隔が、該平均間隔の最大値と最小値の比率で、4〜1の範囲にあることを特徴とする延性に優れた高強度極細鋼線。
  2. 前記平均間隔が、該平均間隔の最大値と最小値の比率で、2〜1の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の延性に優れた高強度極細鋼線。
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