JP4593065B2 - 主軸回転運動の位相合わせ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動旋盤に搭載した一対の主軸の間で両者の回転運動の位相を合わせる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
数値制御(NC)旋盤等の、種々の自動旋削加工を実施できる工作機械(本明細書で自動旋盤と総称する)においては、加工時間の短縮を図るべく、1つの旋盤機台に、それぞれが互いに異なる制御軸に沿って動作可能な1つ以上の主軸及び1つ以上の刃物台を集約的に搭載し、同一の被加工素材に対する異種(例えば外径削りと中ぐり)同時加工や、異なる被加工素材に対する同時加工を実施できるようにした多機能型の自動旋盤が、種々提案されている。例えばこの種の自動旋盤において、同軸状に対向配置した一対の主軸の間で被加工素材を受け渡すことができるとともに、それら主軸の各々が、主機能である旋削加工用の高速回転運動(速度制御)に加えて、補足機能であるフライス加工等の切削加工用の回転割出運動(位置制御)を遂行できるように構成されたものが知られている。
【0003】
上記自動旋盤において、1つの工作品の加工プログラム中に、一対の主軸の間での被加工素材の受け渡し工程(素材の突切り及び掴み換え工程を含む)が含まれている場合には、両主軸の回転運動の位相を互いに合致させることが必要になる。例えば、自動旋盤で角柱状の被加工素材(以下、角材と称する)を加工する場合、一般に、角材外周面の多角形輪郭に対応する輪郭の把持面を有したチャックを各主軸に装備する。そして、加工プログラム中の角材の受け渡し工程は、通常、サイクル時間短縮のために一対の主軸を両方とも回転させた状態で実施するので、それら主軸に装備したチャックの異形輪郭(すなわち角筒状)把持面の回転方向位相を予め相互に合致させておくことにより、角材を第1の主軸から第2の主軸へと障害無く円滑に受け渡すことが可能になる。
【0004】
また、第1の主軸に把持した円柱状の被加工素材(以下、丸材と称する)の所望外周面部分に多面切削加工を施した後、その加工済み外周面部分を、第2の主軸に装備した対応の異形輪郭把持面を有するチャックに把持させることにより、両主軸間で丸材を受け渡すうようにした加工プログラムが組まれる場合がある。このような加工プログラムにおいても、丸材受け渡し工程は通常、両主軸を回転させた状態で実施するので、受け渡しに先立ち、第1主軸上での丸材の加工済み外周面部分の回転方向位相と、第2主軸上でのチャックの把持面の回転方向位相とを合致させておくことが要求される。
【0005】
上記した主軸回転運動の位相合わせを実現する従来技術として、被加工素材の受け渡し工程に際し、受け取り側の第2主軸を機械構造上の工夫により強制的に回転させて、第2主軸に装備したチャックの把持面の回転方向位相を、第1主軸に把持した被加工素材の外周面の回転方向位相に合致させる位相合わせ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この位相合わせ装置によれば、比較的単純かつ安価な構造的工夫で、主軸回転運動の位相合わせ作業を実施できる。しかし、1つの工作品に対する1サイクルの加工プログラムを実行する都度、素材受け渡し工程の直前に第2主軸を強制的に回転操作しなければならないので、サイクル時間が増加する傾向があり、また位相合わせ作業の繰り返しにより、強制的回転操作を行なう構造部品の物理的損耗が生じる懸念がある。
【特許文献1】
特公平6−43005号公報
【0006】
これに対し、自動旋盤の制御プログラムにおけるソフト上の処理により、上記した主軸回転運動の位相合わせを実現する方法が、従来実施されている。この位相合わせ方法は、自動旋盤の各主軸に予め設定した固有の回転基準点(例えば主軸駆動モータのエンコーダ上に設定)に基づいて、両主軸の高速回転運動(速度制御)の位相を同期運転(すなわち同一速度)状態で相互に合致させるものである。具体的には、加工対象の1つの被加工素材を両主軸に把持した状態でそれら主軸を同期回転させ、その間の適当な回転位置を両主軸のそれぞれの回転基準点に対する変位角度で記憶するとともに、記憶した両主軸の回転位置を、加工プログラムにおける各主軸の同期回転運動の基準位置(以下、同期基準位置と称する)としてソフト上で設定する。そして、被加工素材の受け渡し工程に際しては、両主軸でそれぞれに設定した同期基準位置が互いに同一位相となるように、両主軸を同期回転させる。それにより両主軸は、それらに1つの被加工素材を把持していたときと同じ状態(すなわち両主軸の回転運動の位相が相互に合致した状態)で、同期回転する。
【0007】
このような位相合わせ方法によれば、加工プログラムの実行に先立つ段取り作業中に、ソフト上で主軸回転運動の位相合わせを予備的に実施することができるので、サイクル時間の増加や位相合わせ用構造部品の損耗の危惧が排除される。しかも、角材又は多面切削外周面部分を有する丸材を把持する異形把持面を有するチャックが、主軸に対し不特定の回転方向相対位置関係で装着されている場合にも、主軸の固有の回転基準点に対する変位角度で同期基準位置を設定するから、正確な位相合わせを実現できる。そして、このような位相合わせを完了した両主軸間では、加工プログラム中に高速で同期回転しながら被加工素材の受け渡し工程を実施できるので、サイクル時間が著しく削減される。
【0008】
他方、上記した自動旋盤において、被加工素材が角材である場合や、丸材からなる被加工素材に第1主軸上で回転割出機能を用いて多面切削加工等のフライス加工を実施した場合には、それら被加工素材を第2主軸に受け渡す際に、受け渡しの前後で加工プログラム上の諸指令データ(工具移動位置、切削条件等)の整合を図るために、両主軸の回転割出運動の位相も合致させる必要が生じる。回転割出運動の位相合わせは、それぞれの主軸における回転割出制御軸(通称C軸)上の原点(すなわち0°)と各主軸に把持される被加工素材の外周面上の特定位置との相対位置関係を、両主軸の間で同一にする作業である。それにより、第1主軸におけるC軸上の任意角度位置に割り出して配置される被加工素材の外周面上の特定部位(例えば角材の1つの平面領域や丸材のフライス加工面)が、第2主軸においてもC軸上の同一角度位置に割り出して配置されるようになる。この位相合わせ方法としては従来、以下の方法が実施されている。
【0009】
フライス加工面を有する丸材に対しては、まず、前述した高速回転運動の位相合わせが完了した状態で、第1主軸のC軸上の任意割出位置(P)でフライス加工を施した丸材を、突切り及び掴み換え工程を経て第2主軸に受け渡した後、第2主軸に同じ割出位置(P)を指令する。このとき、両主軸の回転割出運動の位相がずれている場合には、第2主軸上の丸材のフライス加工面は第1主軸上での位置から回転方向へ、位相ずれに相当する角度だけ相対的に変位して配置される。そこで、第2主軸上でのフライス加工面の相対変位角度を目視等の手作業で測定し、その変位角度を、加工プログラムにおける第2主軸の回転割出位置指令の補正量として、例えば自動旋盤の制御装置に記憶させる。そして、第2主軸に関する加工プログラムを実行する際には、記憶した補正量を用いて補正した回転割出位置指令に基づき、第2主軸を割出運動させる。このようにすれば、第2主軸におけるC軸上の原点と丸材のフライス加工面との相対位置関係が、第1主軸におけるそれらの相対位置関係と同一になり、両主軸の回転割出運動の位相が相互に合致した状態となる。なお、位相合わせの精度をさらに向上させる場合は、第2主軸を補正後の割出位置(P)に再配置した状態で、フライス加工面の、第1主軸上での位置に対する微小な角度誤差を、ダイヤルゲージ等により精確に測定して補正量を修正する。この補正量修正手順は、目標精度が達成されるまで繰り返して行なわれる。
【0010】
また、角材に対しては、角材を把持する異形輪郭把持面を有するチャックが、主軸に対し通常は不特定の回転方向相対位置関係で装着されているので、上記したフライス加工面の変位角度実測作業と同様の手作業を、第1及び第2主軸の双方で、角材外周面の特定の平面領域に対して実施することになる。それにより、加工プログラムにおける両主軸の回転割出位置指令の補正量がそれぞれ設定、記憶される。そして、各主軸に関する加工プログラムを実行する際にそれら補正量を用いることにより、両主軸におけるC軸上の原点と角材外周面との相対位置関係が互いに同一になり、両主軸の回転割出運動の位相が相互に合致した状態となる。なお、角材に対しては、第1主軸上でフライス加工を実施したか否かに関わらず、このような位相合わせ方法を実施する必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
自動旋盤における前述した従来の主軸回転割出運動の位相合わせ方法では、目視やダイヤルゲージ等による位相ずれの実測作業を要するので、作業工数が多くなり、作業者の負担が増すだけでなく、段取りに要する時間が増加して生産効率が悪化する危惧があった。特にこの位相合わせ方法は、前述した高速回転運動の位相合わせを完了させてから、加工プログラムにおける被加工素材の受け渡し工程(素材の突切り及び掴み換え工程を含む)を行なった後に、第2主軸での位相ずれの実測作業を必須工程として行なうものであるから、作業手順が著しく煩雑になる傾向があった。しかも、手作業による位相合わせの精度は、作業者の熟練度に依存する傾向があり、完成した工作品の寸法精度にばらつきが生じる要因となることが懸念された。また、位相ずれの実測作業は、工具の近傍での手作業になるので、事故が生じる懸念を排除することができなかった。
【0012】
本発明の目的は、自動旋盤に搭載した一対の主軸の間で両者の回転割出運動の位相を合致させる方法であって、作業工数の削減及び作業手順の簡素化により作業者負担の軽減及び生産効率の向上を達成でき、また作業者の熟練によらずに高精度の位相合わせを実現でき、しかも事故の発生機会を低減することができる位相合わせ方向を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、各々が回転割出機能を有するとともに固有の回転基準点を有する第1及び第2主軸を、両主軸間での被加工素材の受け渡しが可能なように設置した自動旋盤で、段取り作業中に、加工プログラムにおけるそれら第1及び第2主軸の回転運動の位相を相互に合致させるために予備的に実施する位相合わせ方法であって、第1主軸及び第2主軸のそれぞれの回転割出原点位置である第1主軸原点及び第2主軸原点を設定し、少なくとも一部に多角形輪郭の外周面部分を有する被加工素材を第1主軸に把持し、外周面部分の多角形輪郭に少なくとも部分的に対応する輪郭の把持面を有するチャックを第2主軸に装備し、被加工素材を把持した第1主軸を第1主軸原点に割り出して配置し、第1主軸を第1主軸原点に保持した状態で、チャックを開放した第2主軸を第1主軸に把持した被加工素材に向けて送り運動させることにより、第1主軸原点に配置した第1主軸に把持されている被加工素材の多角形輪郭の外周面部分の回転方向位相と第2主軸のチャックの把持面の回転方向位相とがずれていた場合には第2主軸を受動的に回転させて、外周面部分をチャックに把持させ、外周面部分を把持した状態での第2主軸の現在割出位置の、回転基準点に対する角度と、回転基準点に対する第2主軸原点の角度との差を、回転角偏差として求め、この回転角偏差を、加工プログラムにおける第1及び第2主軸の回転割出運動の位相を相互に合致させるための、第2主軸の回転割出位置指令の補正量として記憶すること、を特徴とする位相合わせ方法を提供する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の位相合わせ方法において、第2主軸原点の設定に関連して第2主軸の回転割出位置指令の初期補正量を設定している場合には、回転角偏差を補正量として記憶する際に、初期補正量を回転角偏差の補正量に更新する位相合わせ方法を提供する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の位相合わせ方法において、回転角偏差を補正量として記憶した後に、第1主軸及び第2主軸の双方に被加工素材を把持した状態で第1主軸と第2主軸とを同期回転させ、同期回転中の第1主軸及び第2主軸の任意の回転位置を、加工プログラムにおける第1及び第2主軸の同期回転運動の位相を相互に合致させるための同期基準位置として記憶する位相合わせ方法を提供する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、第1主軸に把持した被加工素材が角材であり、外周面部分が、被加工素材が本来有する角筒状外周面の一部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相合わせ方法であって、第1主軸原点を設定する際に、第1主軸に被加工素材を把持した状態で、被加工素材の外周面部分における1つの平面領域が第1主軸原点に割り出して位置決めされるように、第1主軸原点を補正する位相合わせ方法を提供する。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の位相合わせ方法において、第1主軸は、被加工素材の角筒状外周面の輪郭に対応する輪郭の把持面を有するチャックを備え、チャックを開放した第2主軸を第1主軸に把持した被加工素材に向けて送り運動させる代わりに、第1主軸のチャックの把持作用を解除して被加工素材を第2主軸に向けて送り出すことにより、外周面部分を第2主軸のチャックに把持させる位相合わせ方法を提供する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、第1主軸に把持した被加工素材が丸材であり、外周面部分が、被加工素材を第1主軸に把持した状態で被加工素材の円筒状外周面の一部に多面切削加工を施すことにより形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相合わせ方法であって、多面切削加工が終了した被加工素材を把持したままの第1主軸を第1主軸原点に配置する位相合わせ方法を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明に係る主軸回転運動の位相合わせ方法を適用可能な自動旋盤10の構成を概略で示す。自動旋盤10は、旋盤外部から供給された被加工素材Wを把持して回転する主要な(又は正面側の)第1主軸12と、第1主軸12に軸線方向へ同軸状に対向して配置でき、第1主軸12から受け渡された一部加工済みの被加工素材W´を把持して回転する補助的な(又は背面側の)第2主軸14と、複数の工具16、18をそれぞれに装備して独立動作する第1及び第2刃物台20、22とを備える。
【0021】
第1主軸12は、それ自体の回転軸線12aに平行な送り制御軸(Z1軸)に沿って直線移動するように構成される。さらに第1主軸12は、主機能である旋削加工用の高速回転運動(速度制御)に加えて、補足機能であるフライス加工等の切削加工用の回転割出運動(位置制御)を、回転割出制御軸(C1軸)に関して遂行できるように構成されている。したがって第1主軸12は、C1軸制御下での回転割出運動により、チャック24に把持した被加工素材Wの端面や外周面の所望位置に、第1又は第2刃物台20、22に装備した回転工具18を用いた多様な加工を施すことを可能にする。また、第1主軸12の軸線方向前方の所定位置には、第1主軸12に把持された被加工素材Wをその先端の被加工部位の近傍で支持する補助支持装置としてのガイドブッシュ26が、第1主軸12に対し同軸状に設置される。なお、上記したZ1軸移動構造を有しない固定型の第1主軸を備えた自動旋盤や、上記したガイドブッシュ26を備えない自動旋盤にも、本発明の位相合わせ方法を適用できることは言うまでもない。
【0022】
第1刃物台20は、第1主軸12の軸線方向前方でガイドブッシュ26の側方に近接して配置され、第1主軸12のZ1軸に直交する送り制御軸(X1軸)並びにZ1軸及びX1軸の両者に直交する送り制御軸(Y1軸)に沿って直線移動するように構成される。第1刃物台20は、複数の工具16、18を並列配置で保持するいわゆるくし歯刃物台であり、バイト、ドリル等の旋削工具16やフライス等の回転工具18を、第1主軸12の回転軸線12aに対し直交して又は平行に位置決め可能な配置で装備できる。第1刃物台20は基本的に、それ自体のY1軸移動で割出選択した所望の工具16、18の刃先を、それ自体のX1軸移動と第1主軸12のZ1軸移動との協働により、NCプログラムに従い補間動作させることができ、それによって、第1主軸12に把持された被加工素材に所望の切削加工が施される。なお、第1刃物台20のY1軸移動は、工具選択動作であるだけでなく、例えば回転工具18を選択した場合には被加工素材外周面の切削加工(Dカット)動作としても機能する。
【0023】
第2刃物台22は、ガイドブッシュ26を挟んで第1刃物台20の略反対側に配置され、第1主軸12のZ1軸に直交する送り制御軸(X2軸)及びZ1軸に平行な送り制御軸(Z2軸)に沿って直線移動するように構成される。第2刃物台22は、複数の工具16、18を周方向等間隔配置で保持するいわゆるタレット刃物台であり、Z2軸に平行な回転割出制御軸(TI軸)を有するとともに、バイト、ドリル等の旋削工具16やフライス等の回転工具18を、第1主軸12の回転軸線12aに対し直交して又は平行に位置決め可能な配置で装備できる。第2刃物台22は基本的に、それ自体のTI軸回転で割出選択した所望の工具16、18の刃先を、それ自体のX2軸移動とZ2軸移動との協働により、NCプログラムに従い補間動作させることができ、それによって、第1主軸12又は第2主軸14に把持された被加工素材W、W´に所望の切削加工が施される。
【0024】
第2主軸14は、第1主軸12の回転軸線12aに平行な回転軸線14aを有して、第1主軸12の軸線方向前方にガイドブッシュ26を挟んで対向可能に配置され、第1主軸12のZ1軸に直交する送り制御軸(X3軸)及びZ1軸に平行な送り制御軸(Z3軸)に沿って直線移動するように構成される。さらに第2主軸14は、主機能である旋削加工用の高速回転運動(速度制御)に加えて、補足機能であるフライス加工等の切削加工用の回転割出運動(位置制御)を、回転割出制御軸(C2軸)に関して遂行できるように構成されている。したがって第2主軸14は、C2軸制御下での回転割出運動により、チャック28に把持した被加工素材W´の端面や外周面の所望位置に、第1又は第2刃物台20、22に装備した回転工具18を用いた多様な加工を施すことを可能にする。
【0025】
上記構成を有する自動旋盤10において、実行される1つの工作品の加工プログラム中に、第1及び第2主軸12、14の間での被加工素材Wの受け渡し工程(素材の突切り及び掴み換え工程を含む)が含まれている場合には、それら第1及び第2主軸12、14の回転運動の位相を互いに合致させることが必要になる。そのような位相合わせを実現するための本発明の一実施形態による主軸回転運動の位相合わせ方法を、図2及び図3を参照して以下に説明する。
【0026】
なお、本実施形態に係る位相合わせ方法は、自動旋盤10における加工プログラムの実行に先立つ段取り作業中に、ソフト上で、加工プログラムにおける第1及び第2主軸12、14の回転運動の位相を相互に合致させるべく予備的に実施するものである。そのようなソフト上の処理は、自動旋盤10に付設される後述する制御装置の処理部(CPU)によって実行される。制御装置の処理部は、予め作業者が制御装置の入力部を介して入力した加工プログラムや諸データを参照して、多様な処理を実行することができる。また、本実施形態の構成上の前提として、自動旋盤10の第1及び第2主軸12、14はそれぞれ、予め設定した固有の回転基準点(例えば主軸駆動モータのエンコーダ上に設定)R1、R2(図3(d)、(f))を有する。これら回転基準点R1、R2は、制御装置の記憶部に予め格納されている。
【0027】
まず、第1主軸12及び第2主軸14のそれぞれに対し、C1軸及びC2軸上の回転割出原点位置である第1主軸原点P0及び第2主軸原点Q0を設定する(ステップ101)。これら第1主軸原点P0及び第2主軸原点Q0(図3(d)、(f))は、第1主軸12及び第2主軸14のそれぞれの回転基準点R1、R2に対する回転角度で表記して、自動旋盤に付設した制御装置の記憶部に格納される。
【0028】
次に、少なくとも一部に多角形輪郭の外周面部分Sを有する被加工素材Wを第1主軸12のチャック24に把持する(ステップ102)。ここで、図3(a)〜(d)に示すように、第1主軸12に把持した被加工素材Wは丸材であり、多角形輪郭の外周面部分Sは、丸材Wを第1主軸12に把持した状態で、第1又は第2刃物台20、22に装着した回転工具18を用いて、丸材Wが本質的に有する円筒状外周面の一部に多面切削加工を施すことにより、素材受け渡し工程の前に形成されたものである。さらに具体的には、この多面切削加工は、第1主軸12を第1主軸原点P0(すなわち0°)に割り出した状態で、丸材Wに外周面部分Sの1つの平面領域(すなわちフライス加工面)S0を形成する工程を含み、最終的には、C1軸制御による第1主軸12の90°間隔の回転割出運動により、略長方形断面の角筒状輪郭を有する外周面部分Sが形成されている(図3(d))。
【0029】
他方、第2主軸14には、丸材Wの加工済み外周面部分Sの多角形輪郭に少なくとも部分的に対応する異形輪郭の把持面28aを有するチャック28を装備する(ステップ103)。なお、チャック28の把持面28aは、丸材Wの外周面部分Sの輪郭に実質的に一致する略長方形断面の輪郭を有することが望ましいが、例えば図3(f)に示す略正方形断面の輪郭のように、丸材Wの外周面部分Sを強固に把持できることを条件に多様な異形輪郭を有することができる。
【0030】
次に、丸材Wを把持した第1主軸12を、C1軸制御下で第1主軸原点P0に割り出して配置する(ステップ104)。この実施形態では、多面切削加工が終了した状態の丸材Wを把持したままの第1主軸12を、第1主軸原点P0に割り出す。したがって、第1主軸12を第1主軸原点P0に割り出して形成した丸材Wの外周面部分Sのフライス加工面S0が、再度、第1主軸原点P0に割り出して配置されることになる(図3(d))。換言すれば、このとき丸材Wのフライス加工面S0は、第1主軸12を第1主軸原点P0に割り出した状態で第1又は第2刃物台20、22上の所望の回転工具18によってフライス加工面S0に更なる所望切削加工を施すことができる位置に配置される。
【0031】
続いて、第1主軸12を第1主軸原点P0に保持した状態で、第1主軸12に把持されている丸材Wの外周面部分Sを、第2主軸14のチャック28に把持させる(ステップ105)。ここで、図示実施形態では、第1主軸12のチャック24を閉じたままで、チャック28を開放した第2主軸14を、第1主軸12に把持した丸材Wに向けて、例えば自動旋盤10に装備した手動送り装置によって送り運動させることにより、丸材Wの外周面部分Sを第2主軸14のチャック28に把持させる(図3(e))。このようにすれば、第1主軸12のチャック24を開放することにより生じ得る第1主軸12上での丸材Wのフライス加工面S0と第1主軸原点P0との相対的位置ずれを、未然に回避できる。なお、第2主軸14が丸材Wを把持するときに、第1主軸12上での外周面部分Sの回転方向位相と第2主軸14上でのチャック把持面28aの回転方向位相とがずれていたとしても、この段階では第2主軸14を受動的に(すなわち主軸駆動源の作動によらずに)回転させることができるので、チャック28に外周面部分Sを容易に把持できる。
【0032】
次に、丸材Wの外周面部分Sを把持した状態での第2主軸14の回転基準点R2と、第2主軸14を第2主軸原点Q0に割り出した(とソフト上で仮定した)ときの回転基準点R2との間の、回転角偏差Δを求める(ステップ106)。この演算は、外周面部分Sを把持した状態での第2主軸14の現在割出位置(フィードバック値)Fの、回転基準点R2に対する角度αと、回転基準点R2に対する第2主軸原点Q0の角度βとの差[Δ=α−β]を求める(図3(f))ものであって、制御装置の処理部によって実行される。
【0033】
最後に、算出した回転角偏差Δを、加工プログラムにおける第1及び第2主軸12、14の回転割出運動の位相を相互に合致させるための、第2主軸14の回転割出位置指令の補正量Δとして、制御装置の記憶部に記憶する(ステップ107)。記憶した補正量Δは、制御装置の処理部が、第2主軸14に関する加工プログラムを実行する際に回転割出位置指令を補正するために使用し、それにより第2主軸14は、補正量Δを含む回転割出位置指令に従って割出運動する。すなわち、図3(f)に示す割出位置Fは、補正後には第2主軸原点Q0となる。このようにすれば、第2主軸14における第2主軸原点Q0と丸材Wのフライス加工面S0との相対位置関係が、第1主軸12における第1主軸原点P0とフライス加工面S0との相対位置関係と同一になり、両主軸12、14の回転割出運動の位相が相互に合致した状態となる。したがって、第2主軸14に関する加工プログラムの実行時に、第2主軸14をC2軸制御下で例えば第2主軸原点Q0に割り出せば、第2主軸14に把持した丸材Wのフライス加工面S0が第2主軸原点Q0に割り出して位置決めされる。
【0034】
なお、ステップ101における第1主軸原点P0及び第2主軸原点Q0の設定に関連して、第2主軸14の回転割出位置指令の初期補正量Δ0(例えば他の加工プログラムの実行に際し上記位相合わせ方法によって得られた補正量Δ)が既に設定されている場合がある。このような場合には、ステップ107で回転角偏差Δを補正量として記憶する際に、制御装置の処理部は、初期補正量Δ0を、新たに求めた回転角偏差Δの補正量に更新する処理を行なう。
【0035】
このようにして一対の主軸12、14の回転割出運動の位相合わせが完了した状態でも、それら主軸12、14の高速(同期)回転運動の位相を合致させない限り、加工プログラム中に両主軸12、14が高速で同期回転しながら丸材Wの受け渡し工程を実施することは困難である。そこで、回転角偏差Δを補正量として記憶した後に、制御装置の処理部は、第1主軸12及び第2主軸14の双方に丸材Wを把持したままの状態で両主軸12、14を同期回転させ、同期回転中のそれら主軸12、14の任意の回転位置Iを、加工プログラムにおける両主軸12、14の同期回転運動の位相を相互に合致させるための同期基準位置I(図3(d)、(f))として、制御装置の記憶部に記憶する(ステップ108)。ここで、それら同期基準位置Iは、第1及び第2主軸12、14のそれぞれの回転基準点R1、R2に対する変位角度で記憶される。
【0036】
そして、加工プログラム中の素材受け渡し工程に際しては、制御装置の処理部は、両主軸12、14でそれぞれに設定した同期基準位置Iが互いに同一位相となるように、両主軸を同期回転させる。それにより両主軸12、14は、それらに1つの丸材Wを把持していたときと同じ状態(すなわち両主軸12、14の回転運動の位相が相互に合致した状態)で、同期回転する。その結果、加工プログラム中に両主軸12、14が高速で同期回転しながら丸材Wの受け渡し工程を実施することが可能になる。
【0037】
なお、制御装置による上記した位相合わせ処理(ステップ106〜108)は、制御装置が数値制御(NC)装置からなる場合には、予め定めた1つの指令コード(例えばGコード)を用いたブロックを段取り作業のプログラムに記述しておくことで、その指令コードのブロック記述に従い、回転割出運動の位相合わせと高速回転運動の位相合わせとを順次自動的に実行できるように構成することが有利である。
【0038】
このように、上記した主軸回転運動の位相合わせ方法においては、従来行なわれていた位相合わせ方法における目視やダイヤルゲージ等による位相ずれの実測作業が不要となるから、作業工数の削減及び作業手順の簡素化により作業者負担の軽減及び生産効率の向上を達成でき、また作業者の熟練によらずに高精度の位相合わせを実現でき、しかも事故の発生機会を低減することができる。特に、上記実施形態による位相合わせ方法では、自動旋盤10の制御装置が、例えば単一の指令コードのブロック記述に従い、回転割出運動の位相合わせと高速回転運動の位相合わせとを順次自動的に実行できるように構成できるので、作業手順を著しく簡素化することができる。
【0039】
図4は、自動旋盤10で角材Wを加工する場合の、本発明の他の実施形態による主軸回転運動の位相合わせ方法を示す。すなわちこの実施形態では、第1主軸12に把持した被加工素材Wは角材であり、その多角形(六角形)輪郭の外周面部分Sは、角材Wが本来有する角筒状外周面の一部である。また、角材Wの外周面の六角形輪郭に対応する輪郭の把持面24a、28aを有したチャック24、28が、第1及び第2主軸12、14にそれぞれ装備されている。ここで、第1主軸12のチャック24が、通常は第1主軸12に対し不特定の回転方向相対位置関係で装着されるので、下記のように、従来行なわれていた変位角度実測作業を実施しなければならない場合が生じる。
【0040】
まず、段取り作業において、チャック24に角材Wを把持した第1主軸12を、予め設定した第1主軸原点P0に割り出して配置する。このとき、角材外周面Sにおける1つの平面領域S0が、第1主軸原点P0に正確に割り出して位置決めされていれば、この平面領域S0を基準として、図2に示すフローチャートに従い、前述した丸材Wに対する手順と同様にして位相合わせ作業を実施することができる。しかし、図4(b)に示すように、平面領域S0が、第1主軸原点P0に正確に割り出して位置決めされない(すなわちチャック24の回転方向位相がずれている)場合には、自動旋盤10の構成部品(例えば第1刃物台20)上に、第1主軸原点P0に正確に割り出したときの平面領域S0に平行に配置される適当な参照面30(図4(c))を設定し、この参照面30に対する第1主軸12上での角材平面領域S0の相対変位角度を、目視等の手作業で測定する。測定した相対変位角度は、加工プログラムにおける第1主軸12の回転割出位置指令の補正量γ(図4(b))として、自動旋盤10の制御装置に記憶させる。
【0041】
上記した第1主軸12におけるチャック24の位相合わせの精度をさらに向上させる場合は、図4(d)に示すように、補正量γを含む補正後の第1主軸原点P0´に第1主軸12を再配置した状態で、参照面30に対する角材平面領域S0の微小な角度誤差を、ダイヤルゲージ32により精確に測定して補正量γを修正する。ここでダイヤルゲージ32は、第1刃物台20上に装着することが有利である。そのようにすれば、第1主軸12を第1主軸原点P0´に割り出した状態で第1刃物台20上の回転工具18が角材Wに平面領域S0をフライス加工で形成する場合と同じ第1刃物台20のY軸送り運動の下で、ダイヤルゲージ32が角材平面領域S0の微小な角度誤差を精確に測定できる。なお、この補正量修正手順は、位相合わせの目標精度が達成されるまで繰り返して行なわれる。
【0042】
このようにして補正した第1主軸12の第1主軸原点P0´を、図2のフローチャートのステップ101で設定する第1主軸12の第1主軸原点として取り扱えば、その後のステップ102〜108は、前述した丸材Wに対する作業と実質的に同じ作業になる。例えばステップ104では、角材Wを把持した第1主軸12を、C1軸制御下で第1主軸原点P0´に割り出して配置する。それにより、角材Wの外周面部分Sの特定平面領域S0が、第1主軸原点P0´に割り出して配置されることになる。換言すれば、このとき角材Wの平面領域S0は、第1主軸12を第1主軸原点P0´に割り出した状態で第1又は第2刃物台20、22上の所望の回転工具18によって平面領域S0に所望切削加工を施すことができる位置に配置される。
【0043】
また、ステップ105では、前述したように、第2主軸14を第1主軸12に把持した角材Wに向けて手動送り運動させることにより、角材Wの外周面部分Sを第2主軸14のチャック28に把持させても良いが、その代わりに、第1主軸12のチャック24を開放して角材Wを第2主軸14に向けて送り出すことにより、外周面部分Sをチャック28に把持させることもできる。これは、第1主軸12のチャック24を開放しても、第1主軸12上での角材Wの平面領域S0と第1主軸原点P0´との相対的位置ずれが生じ得ないからである。
【0044】
その後、制御装置の処理部がステップ106〜108の処理を行なうことにより、加工プログラムにおける第1及び第2主軸12、14の回転割出運動の位相を相互に合致させるための、第2主軸14の回転割出位置指令の補正量Δが、制御装置の記憶部に記憶され(ステップ107)、また加工プログラムにおける両主軸12、14の同期回転運動の位相を相互に合致させるための同期基準位置Iが、制御装置の記憶部に記憶される(ステップ108)。このようにして、角材Wの加工プログラムの段取り作業で、当該加工プログラムにおける第1及び第2主軸12、14の回転割出運動並びに高速(同期)回転運動の位相合わせが完了する。なお、角材Wに対しては、第1主軸12上でフライス加工を実施したか否かに関わらず、上記位相合わせ方法を実施する。
【0045】
次に図5を参照して、上記した主軸回転運動の位相合わせ方法を実施するための制御装置の一例として、自動旋盤10に装備されるNC装置40の構成を説明する。NC装置40は、入力部42、表示部44、処理部(CPU)46、記憶部(ROM48及びRAM50)並びに駆動制御部52を備える。入力部42は、例えば数値キー付きのキーボード(図示せず)を有し、NC旋盤に装備した第1及び第2主軸12、14並びに第1及び第2刃物台20、22(以下、可動構造体54と総称する)の動作を制御するために必要なデータ(工具の選択、工作物の形状寸法、主軸回転数、工具の送り速度等)や、それらデータを含む各工具に関する加工プログラム(すなわちブロック列)が、入力部42で入力される。表示部44は、CRT(ブラウン管)やLCD(液晶ディスプレイ)等の表示装置(図示せず)を有し、入力部42で入力されたデータや加工プログラムを表示装置に表示したり、対話方式として表示装置上でシミュレーションしながらの自動プログラミングを可能にしたりする。
【0046】
記憶部を構成するROM48には、可動構造体54を駆動するための制御プログラムが予め格納されている。またRAM50には、第1及び第2主軸12、14の回転基準点R1、R2、第1主軸原点P0、第2主軸原点Q0や、第2主軸14の現在割出位置F等を格納する設定値・測定値記憶領域56、第2主軸14の補正量Δを格納する補正量記憶領域58、両主軸12、14の同期基準位置Iを格納する同期基準位置記憶領域60等の、位相合わせ機能に関連する各種データの記憶領域が設けられている。さらに、入力部42で入力された複数の工具に関連するデータやそれらを含む加工プログラムは、CPU46の指示によりROM48又はRAM50に格納される。CPU46は、ROM48又はRAM50に記憶した各種データや加工プログラム並びにROM48に格納された制御プログラムに基づいて、駆動制御部52に作動指令を出力する。駆動制御部52は、CPU46からの作動指令に従い、第1主軸12の第1主軸駆動源(サーボモータ)62及び第2主軸14の第2主軸駆動源(サーボモータ)64を含む種々の駆動機構66をそれぞれに制御して、自動旋盤10に設置した種々の可動構造体54をそれぞれに作動させる。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、自動旋盤に搭載した一対の主軸の間で両者の回転割出運動の位相を合致させる位相合わせ方法において、作業工数の削減及び作業手順の簡素化により作業者負担の軽減及び生産効率の向上を達成し、作業者の熟練によらずに高精度の位相合わせを実現し、かつ事故の発生機会を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る主軸回転運動の位相合わせ方法を適用可能な自動旋盤の構成を概略で示す図である。
【図2】本発明に係る主軸回転運動の位相合わせ方法のフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートに従う本発明の一実施形態による位相合わせ方法の手順を示す図で、(a)丸材を第1主軸に把持した状態の側面図、(b)矢印bから見た端面図、(c)丸材に多面切削加工を施した後の側面図、(d)矢印dから見た端面図、(e)丸材を両主軸に把持した状態の側面図、及び(f)線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図2のフローチャートに従う本発明の他の実施形態による位相合わせ方法の手順を示す図で、(a)角材を第1主軸に把持した状態の側面図、(b)矢印bから見た端面図、(c)第1主軸のチャックの位相合わせ段階を示す側面図、(d)矢印dから見た端面図、(e)角材を両主軸に把持した状態の側面図、及び(f)線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明の位相合わせ方法を実行可能な一例としての制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10…自動旋盤
12…第1主軸
14…第2主軸
18…回転工具
24、28…チャック
Claims (6)
- 各々が回転割出機能を有するとともに固有の回転基準点を有する第1及び第2主軸を、両主軸間での被加工素材の受け渡しが可能なように設置した自動旋盤で、段取り作業中に、加工プログラムにおけるそれら第1及び第2主軸の回転運動の位相を相互に合致させるために予備的に実施する位相合わせ方法であって、
前記第1主軸及び前記第2主軸のそれぞれの回転割出原点位置である第1主軸原点及び第2主軸原点を設定し、
少なくとも一部に多角形輪郭の外周面部分を有する被加工素材を前記第1主軸に把持し、
前記外周面部分の前記多角形輪郭に少なくとも部分的に対応する輪郭の把持面を有するチャックを前記第2主軸に装備し、
前記被加工素材を把持した前記第1主軸を前記第1主軸原点に割り出して配置し、
前記第1主軸を前記第1主軸原点に保持した状態で、前記チャックを開放した前記第2主軸を前記第1主軸に把持した前記被加工素材に向けて送り運動させることにより、前記第1主軸原点に配置した前記第1主軸に把持されている前記被加工素材の前記多角形輪郭の前記外周面部分の回転方向位相と前記第2主軸の前記チャックの前記把持面の回転方向位相とがずれていた場合には前記第2主軸を受動的に回転させて、前記外周面部分を前記チャックに把持させ、
前記外周面部分を把持した状態での前記第2主軸の現在割出位置の、前記回転基準点に対する角度と、前記回転基準点に対する前記第2主軸原点の角度との差を、回転角偏差として求め、
前記回転角偏差を、加工プログラムにおける前記第1及び第2主軸の回転割出運動の位相を相互に合致させるための、前記第2主軸の回転割出位置指令の補正量として記憶すること、
を特徴とする位相合わせ方法。 - 前記第2主軸原点の設定に関連して前記第2主軸の回転割出位置指令の初期補正量を設定している場合には、前記回転角偏差を前記補正量として記憶する際に、該初期補正量を該回転角偏差の該補正量に更新する請求項1記載の位相合わせ方法。
- 前記回転角偏差を前記補正量として記憶した後に、前記第1主軸及び前記第2主軸の双方に前記被加工素材を把持した状態で該第1主軸と該第2主軸とを同期回転させ、同期回転中の該第1主軸及び該第2主軸の任意の回転位置を、加工プログラムにおける前記第1及び第2主軸の同期回転運動の位相を相互に合致させるための同期基準位置として記憶する、請求項1又は2に記載の位相合わせ方法。
- 前記第1主軸に把持した前記被加工素材が角材であり、前記外周面部分が、該被加工素材が本来有する角筒状外周面の一部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相合わせ方法であって、前記第1主軸原点を設定する際に、該第1主軸に該被加工素材を把持した状態で、該被加工素材の該外周面部分における1つの平面領域が該第1主軸原点に割り出して位置決めされるように、該第1主軸原点を補正する位相合わせ方法。
- 前記第1主軸は、前記被加工素材の前記角筒状外周面の輪郭に対応する輪郭の把持面を有するチャックを備え、前記チャックを開放した前記第2主軸を前記第1主軸に把持した前記被加工素材に向けて送り運動させる代わりに、該第1主軸の該チャックの把持作用を解除して前記被加工素材を前記第2主軸に向けて送り出すことにより、前記外周面部分を該第2主軸の前記チャックに把持させる請求項4に記載の位相合わせ方法。
- 前記第1主軸に把持した前記被加工素材が丸材であり、前記外周面部分が、該被加工素材を該第1主軸に把持した状態で該被加工素材の円筒状外周面の一部に多面切削加工を施すことにより形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相合わせ方法であって、該多面切削加工が終了した該被加工素材を把持したままの該第1主軸を前記第1主軸原点に配置する位相合わせ方法。
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