JP4592162B2 - 金属管の段差部の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属管の段差部とその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用プロペラシャフトにおいては、安全性の要求から、衝突時に軸方向へ過大荷重が作用した場合に座屈するか折れ曲がるように、図5に示すように、プロペラシャフト101に予め段差部102を設けておく場合がある。このような段差部102を設けたものとして、例えば特開平7―4423号公報に記載のものがある。このような段差部102は、中空の金属管からなる原管103の端部を縮径し、該縮径部104と原管103部との間にテーパ部105を設けて、該テーパ部105により形成されている。
【0003】
また、前記のプロペラシャフト以外の金属製の中空管においても、その金属管の端部に前記のようなテーパ部と該テーパ部の先に原管部より小径の直管部(縮管部)を形成する場合がある。
【0004】
前記のように、金属管の端部を縮径してテーパ部とその先に直管状の縮径部を塑性加工する方法として、一般に金型による口絞り工法が用いられている。
【0005】
この加工方法は、図6に示すように、入口部が加工管201の直径と略同等径で内側が縮径するテーパ面(円錐面)202からなる加工孔203を有するダイス204を使用し、加工孔203内へ加工管201が押し込まれるようにダイス204と加工管201を軸方向へ相対移動させて、加工管201の端部を絞って縮径する冷間塑性加工方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の縮径加工方法によると、縮管率(絞り率)が20〜28%まで可能とされているが、実際にその縮管率を実現するには、複数回に分けて少しずつ縮径工程を繰り返さなければならず、場合によってはその複数の縮径工程の間において熱処理を施して材料の加工硬化を緩和させなければならない。
【0007】
また、テーパ部の軸芯に対するテーパ角も30度ほどが形成できる限度であり、これ以上の急な角度を望むと座屈等の変形を招き、その成形が困難になる。
【0008】
そのため、例えば一般的な鋼管(STKM材、直径75mm、板厚1.6mm)の端部にテーパ角30度のテーパ部と、そのテーパ部の先に原管に対する縮管率が25%の直管状の縮径部を形成したい場合には、先ず第1工程として図6に示すようなテーパ面202の角度θ1 が約15度に形成されているとともに縮管率が約13%に設定された第1のダイス204を使用して縮管を行い、次で第2工程としてテーパ面202の角度が約30度に形成されているとともに、前記第1工程で形成された縮径部に対して約12%の縮管率に設定された第2のダイスを使用して縮管を行い、所期の形状の管を得るようにしている。
【0009】
前記の各工程での縮管率の設定およびテーパ角の設定は、各工程における管での成形荷重が素材の座屈荷重より小さくなるようにして座屈を防ぐためであり、この工法を踏襲する限り、実際の成形においては、この程度の縮管率(25%)とテーパ角(30度)の両立が限界であるという問題があった。
【0010】
したがって、大きな(急な)テーパ角、例えば60度のテーパ角を望めば、縮管率をせいぜい5〜6%に設定するのが限界であった。
【0011】
また、無理な成形、すなわち過大な軸押し荷重によって、テーパ部に隣接する原管部が部分的に外側へ膨出されてしまい、製品の機能を阻害する問題もあった。
【0012】
以上のことから、冷間塑性加工により成形される段差部において、工程の中間に熱処理を行わずに、縮管率が30%程度で、かつテーパ角が30度以上の縮径が容易に実現できる金属管の段差部の成形方法が待たれていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の課題を解決するために、請求項1記載の第1の発明は、金属管にテーパ部とそれに連続する縮径部とを、複数回の絞り工程にて形成する金属管の段差部の成形方法であって、
各絞り工程で形成される各テーパ部の管軸方向への実長を略一定に設定するとともに、
各絞り工程で形成される各テーパ部のテーパ角を漸増し、かつ、各絞り工程で形成される各縮径部の径を漸減していくことを特徴とする金属管の段差部の成形方法である。
【0015】
前記第1の発明においては、各絞り工程においてテーパ部の管軸方向への実長を略等しくして順次絞り加工するため、すなわちテーパ部の実長を略変化させることなく絞り加工するため、テーパ部と、テーパ部の原管部及び縮径部との境界部の座屈が防止される。したがって、各絞り工程におけるテーパ部のテーパ角とその実長を規定するだけで、容易に高テーパ角と高縮径率を高形状精度で実現できる。
【0016】
請求項2記載の第2の発明は、前記第1の発明において、マンドレルを内装するダイスの加工孔内へ金属管の端部を挿入し、これらを相対的に押し込むことで前記各絞り工程を行う金属管の段差部の成形方法である。
【0017】
本発明においては、従来のダイスによる絞り加工方法を用いて、そのダイスの加工孔の形状を変更するのみで前記第1の発明の絞り加工を実現できる。
【0018】
請求項3記載の第3の発明は、前記第1の発明において、金属管の端部あるいは端部以外の部分において、スピニング加工により前記の各絞り工程を行う金属管の段差部の成形方法である。
【0019】
本発明においては、スピニング加工により、金属管の端部あるいは端部以外の金属管の途中において、テーパ部と縮径部を形成する場合に、そのテーパ部と縮径部をスピニング加工で前記の各絞り工程を行うことにより、金属管の端部のみならず途中の縮径加工においても、容易に高テーパ角と高縮径率を高形状精度で実現できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1乃至図4に示す実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は本発明の段差部の成形方法により形成された金属管の1例を示す側断面図で、該金属管1は中空管で、原管部2の両端部に絞り加工されたテーパ部3a,3bを有し、更に該テーパ部3a,3bの軸方向における外側に絞り加工された縮径部4a,4bを有する。この絞り加工された部分が段差部30である。
【0022】
なお、実施例として図1に示す完成形状の金属管は、その原管2の直径が75mmで、その縮径部4a,4bの原管部2に対する縮管率が約20%で、テーパ部3a,3bの管軸に対するテーパ角度θ3 が60度のものである。
【0023】
このような原管径が75mmで、縮管率が約20%で、テーパ角度が60度の完成形状を例として本発明の金属管の段差部とその成形方法を図2及び図3により説明する。なお、図2及び図3は、前記図1に示す金属管1の左側のテーパ部3aと縮径部4aの成形工程を示す。
【0024】
先ず、第1の工程として、図2(a)に示すように、ダイス軸芯Xに対するテーパ角θ4 が30度で、かつダイス軸芯Xを含む平面上での軸芯方向への所定の長さLを有するテーパ加工面11と、該テーパ加工面11の奥部に形成した縮管率約12%程度の縮径加工面12とからなる加工孔13aを有する第1のダイス13を使用して、直径が75mmの金属管(原管)1の端部を前記第1のダイス13の加工孔13a内に押し込んで金属管1の端部を絞り加工する。この押し込みは、図2(a)において、金属管1を固定しておいて第1のダイス13をプレス機などの適宜駆動手段で図の右側へ移動してもよく、また、逆に第1のダイス13を固定しておいて金属管1をプレス機などの適宜駆動手段により図の左側へ移動してもよく、更に、金属管1と第1のダイス13の前記の動きを、双方同時に行ってもよい。要は第1のダイス13と金属管1が相対的に押し込み方向へ移動して絞り加工を行うようにすればよい。
【0025】
前記の第1の工程により、金属管1の端部は図3の右側に示すように、金属管1の管軸Xを含む平面上での断面において、原管部2の点αから、管軸Xに対して30度のテーパ角θ4 で漸次縮径する実長Lを有するテーパ部Aと、該テーパ部Aの先部の点β1 から縮管率約12%程度の直管状の縮径部aが一連に絞り形成され、図2(b)の右側に示すような金属管1aに形成される。
【0026】
この第1の工程は、テーパ角が30度で、縮管率が約12%程度であるため、従来通り無理のない絞り加工が行える。
【0027】
なお、前記ダイス13内には、図2(a)に示すようにマンドレル40aが定位置に内装されており、前記の絞り加工が正確に行えるようになっている。このマンドレル40aは定位置に固定してもよく、また、周知の可動式マンドレル(ダブルアクション式)を適宜用いてもよい。
【0028】
次に、第2の工程として、前記第1の工程で絞り加工された金属管1aの端部を更に絞り加工する。
【0029】
この第2の工程で使用するダイスは、図2(b)に示すように、ダイス軸芯Xに対するテーパ角θ5 を45度に設定し、かつダイス軸芯Xを含む平面上での軸芯方向の長さLを前記第1のダイス13のテーパ加工面11の長さLと略等しい長さに設定したテーパ加工面14と、該テーパ加工面14の奥部に形成された縮管率(原管径に対する縮管率)約16%の縮径加工面15とからなる加工孔16aを有する第2のダイス16を使用する。
【0030】
また、ダイス16内には、前記と同様にマンドレル40bが定位置に設けられ、絞り加工が正確に行われるようになっている。このマンドレル40bは前記のように固定式でも可動式でもよい。
【0031】
そして、この第2のダイス16およびマンドレル40bと前記第1の工程で絞り加工された金属管1aとを、前記第1の工程と同様に相対的に押し込み、第2の工程を行う。
【0032】
この第2の工程により、前記の金属管1aにおけるテーパ部Aは、図2(c)の右側及び図3の右側に示すように、金属管1bの管軸Xを含む平面上での断面において、前記第1の工程で加工されたテーパ部Aにおける原管部2との境界点αから、管軸Xに対して45度のテーパ角θ5で漸次縮径し、かつ前記テーパ部Aの管軸方向の実長(境界点αからβ1までの最端距離)Lと略等しい長さLを有するテーパ部Bに絞り加工され、また、前記縮径部aは、テーパ部Bの先部の点β2から縮管率(原管径に対する縮管率)約16%の縮径部bに絞り加工される。
【0033】
つまり、第1の工程で形成されたテーパ部Aと縮径部aとの境界点β1が、図3の右側で示すように、テーパ部Aと原管2との境界点αを中心とする円γ上に乗りながらβ2まで絞り加工され、テーパ部Aの実長Lが略変化することなく縮径される。このように、縮管に伴うテーパ部長さの変化がないことにより、テーパ部B及びその境界点α、β2における座屈の発生が防止される。
【0034】
この第2の工程におけるテーパ部の絞り工程をそのテーパ部の全周面でみると、テーパ部の面積が変化するため、テーパ部自体の肉流れ(塑性流動)が生じる。しかし、軸押し荷重の影響を受けて最も座屈する原因となるテーパ部の実長Lの変化をなくしたことにより、座屈を阻止することができる。
【0035】
この第2の工程により、図2(c)の右側に示すような金属管1bが形成される。
【0036】
次に、第3の工程として、前記第2の工程で絞り加工された金属管1bの端部を更に絞り加工する。
【0037】
この第3の工程で使用するダイスは、図2(c)に示すように、ダイス軸芯Xに対するテーパ角θ6 が60度で、かつダイス軸芯を含む平面上での軸芯方向への長さLが前記第1及び第2のダイス13,16のテーパ加工面11,14の長さLと略等しい長さLを有するテーパ加工面17と、該テーパ加工面17の奥部に形成された縮管率(原管径に対する縮管率)が約20%程度の縮径加工面18とからなる加工孔19aを有する第3のダイス19を使用する。
【0038】
また、ダイス19内には、前記と同様にマンドレル40cが定位置に設けられ、絞り加工が正確に行われるようになっている。このマンドレル40cは前記のように固定式でも可動式でもよい。
【0039】
そして、この第3のダイス19およびマンドレル40cと前記第2の工程で絞り加工された金属管1bとを、前記第1の工程と同様に相対的に押し込み、第3の工程を行う。
【0040】
この第3の工程により、前記金属管1cにおけるテーパ部Bは、図2(d)及び図3の右側に示すように、金属管1cの管軸Xを含む平面上での断面において、前記第2の工程で加工されたテーパ部Bにおける原管2との境界点αから、管軸Xに対して60度のテーパ角θ6で漸次縮径し、かつ前記テーパ部Bの管軸 方向の実長(境界点αからβ2 までの最端距離)Lと略等しい長さLを有するテーパ部Cに絞り加工され、また、前記縮径部bは、テーパ部Cの先部の点β3 から縮管率(原管径に対する縮管率)約20%の縮径部cに絞り加工される。
【0041】
つまり、第2の工程で形成されたテーパ部Bと縮径部bとの境界点β2 が、図3の右側で示すように、テーパ部Bと原管2との境界点αを中心とする円γ上に乗りながらβ3まで絞られ、テーパ部Bの実長Lが略変化することなく縮径される。このように縮管に伴うテーパ部長さの変化がないことにより、前記第2の工程と同様にテーパ部C及びその境界点α、β3 における座屈の発生が防止される。
【0042】
この第3の工程により、図2(d)に示すような段差部30を有する金属管1cが形成される。
【0043】
前記のような複数回の絞り工程を設定することにより、従来加工法では不可能であった約20%の縮管率でかつ、約60度のテーパ角を有する金属管を、熱処理をすることなく容易に得ることができる。
【0044】
更に、テーパ部のテーパ形状が正確に成形されるため、該テーパ部に隣接する原管部と縮径部も正確に成形される。更に、マンドレルを内装したダイスで絞り成形するので、より正確な成形が行える。
【0045】
なお、図2及び図3において、実際には金属管における前記α部とβ部にそれぞれ図1に示すようなアールがつくが、特にβ部はダイスの加工孔のβ部のアールがそのまま転写される。この転写性も、前記のような工法によってテーパ部の実長が変化しないため、正確に行われる。
【0046】
なお、前記の第1工程および第2工程のテーパ角および縮管率は前記の値に限るものではなく、第3工程でのテーパ角および縮径率が得やすい値に夫々所望に設定するものである。
【0047】
また、前記の第3工程で形成された金属管1cを、更にテーパ加工面のテーパ角が大きく、かつ縮径加工面の直径が小さいダイスとマンドレルで順次絞り加工し、すなわち4工程以上で絞り加工することにより、75度あるいは究極的には90度のテーパ角で、かつ縮径部の縮管率も大きい金属管を得ることができる。
【0048】
更に、金属管の材料やダイスおよびマンドレルと金属管の相対移動技術によっては、前記の工程を2工程に減らすことも可能であるし、テーパ角が60度であっても4工程以上必要な場合もあるが、それは適宜最適条件を選択すればよい。
【0049】
また、前記実施例は、ダイスとマンドレルを使用して金属管の端部に段差部30を成形する例を示したが、ダイスとマンドレルを使用することなくスピニング加工で金属管の端部を前記の工程によって縮管加工して段差部30を成形してもよい。
【0050】
すなわち、前記金属管のテーパ部A,B,Cを、そのα点を中心として軸方向の実長Lを略等しく保ちつつスピニングローラで絞り、かつ縮径部a,b,cもスピニングローラで同時に縮径してもよい。
【0051】
このようなスピニング加工による縮管によっても前記と同様の作用、効果が得られる。
【0052】
なお、このスピニング加工においては、周方向に等間隔に複数個配置されたスピニングローラが、加工部位の周囲を、加工部位の軸芯を中心として公転圧接する方式にするとよい。
【0053】
前記実施例は金属管の端部にテーパ部と縮径部を形成する例であるが、図4に示すように、スピニングローラ20によって金属管1の中間部(一般部)にテーパ部3a,3bと縮径部4aを形成する場合に、これを前記本発明による複数の絞り工程を用いて形成してもよい。
【0054】
なお、本発明の段差部およびその成形方法は、前記のような自動車用プロペラシャフトに適用できるは勿論、その他の自動車用マフラー、触媒コンバータ、容器など、あらゆる中空状の金属管にも適用できるものである。
【0055】
【発明の効果】
以上のようであるから、本発明によれば、各絞り工程におけるテーパ部のテーパ角とその実長を規定するだけで、容易に高テーパ角と高縮径率で、高形状精度の段差部が得られる。
【0056】
請求項3記載の発明によれば、従来のダイスによる絞り加工の型設定を変更するだけで、前記の効果を実現できる。
【0057】
請求項4記載の発明によれば、金属管の端部のみならず途中においても前記と同様の効果を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により成形された金属管の例を示す側断面図。
【図2】(a)〜(d)は本発明の絞り工程を示す各側断面図。
【図3】本発明の絞り工程を示す説明図。
【図4】本発明をスピニング加工で行う場合の例を示す金属管の側断面図。
【図5】テーパ部と縮径部を有するプロペラシャフトを示す図。
【図6】従来のダイスによる絞り工程を示す側断面図。
【符号の説明】
1,1a〜1c 金属管
2 原管部
A,B,C テーパ部
a,b,c 縮径部
L テーパ部の実長
Claims (3)
- 金属管にテーパ部とそれに連続する縮径部とを、複数回の絞り工程にて形成する金属管の段差部の成形方法であって、
各絞り工程で形成される各テーパ部の管軸方向への実長を略一定に設定するとともに、
各絞り工程で形成される各テーパ部のテーパ角を漸増し、かつ、各絞り工程で形成される各縮径部の径を漸減していくことを特徴とする金属管の段差部の成形方法。 - マンドレルを内装するダイスの加工孔内へ金属管の端部を挿入し、これらを相対的に押し込むことで前記各絞り工程を行う請求項1記載の金属管の段差部の成形方法。
- 金属管の端部あるいは端部以外の部分において、スピニング加工により前記の各絞り工程を行う請求項1記載の金属管の段差部の成形方法。
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