JP4592128B2 - ポリマーの変性方法及び変性ポリマー - Google Patents

ポリマーの変性方法及び変性ポリマー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリマーの変性方法、特に極性基を導入して帯電防止性などの特性を付与できるポリマーの変性方法と、該方法により得られる変性ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用的に用いられているポリマーの多くは、分子内にフリーの極性基や反応性官能基を有しておらず、疎水的な性質が強いため、一般に帯電しやすい。そのため、通常、これらのポリマーに帯電防止剤を添加して使用に供される。しかし、この方法では、しばしば、帯電防止剤のブリードアウトという問題を引き起こす。この問題を回避するためには、ポリマーそのものに極性基を持たせることが必要である。
【0003】
一般に、極性基を有するポリマーの製造法として、(i)重合の段階で、極性基を有するモノマーと共重合させる方法、(ii)酢酸セルロースに代表されるように、元々親水性のポリマーをエステル化により疎水化した後、脱エステル化(鹸化)によって、そのエステル化度をコントロールする方法、(iii)ベンゼン環等の芳香環を有するポリマーの該芳香環を官能基化する方法、(iv)ジシクロペンタジエンなどの不飽和結合部を有する脂肪族環状炭化水素のポリマーの該不飽和部にカルボキシル基等の親水性基を結合させる方法などが知られている。
【0004】
しかし、これらの方法では、官能基化のための特殊なモノマーが必要であったり、水酸基や不飽和部などの官能基を予め有している特定のポリマーにしか適用できないなど、適用範囲が極めて狭い。
また、ポリプロピレンなどを酸化処理して主鎖に極性基を導入する方法も考えられるが、通常の酸化方法では主鎖が切断されて低分子量化しやすい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ポリマー、特に疎水性ポリマーに、極性基を簡易に導入できる汎用性の高いポリマーの変性方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、主鎖を切断することなく極性基を導入できるポリマーの変性方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、所望する極性基を所望する割合で導入できるポリマーの変性方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、帯電防止性に優れたポリマーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、ポリマーを、特定の触媒の存在下、酸素原子含有ガスで処理すると、該ポリマーに効率よく極性基を導入できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリマーを、下記式(1)
【化2】
Figure 0004592128
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)で表されるイミド化合物の存在下、酸素原子含有ガスで処理することを特徴とするポリマーの変性方法を提供する。
前記酸素原子含有ガスとして、酸素、一酸化炭素、窒素酸化物及び硫黄酸化物から選択された少なくとも1種のガスを使用できる。
本発明は、また、ポリマーを上記の方法により処理して得られる変性ポリマーを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、被処理物であるポリマーには、主鎖又は側鎖に第1級、第2級又は第3級炭素原子を有する各種ポリマーが含まれる。
前記ポリマーとして、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン系ポリエチレンなど)、エチレンコポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマーなど)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−1−ブテン、ポリ(4−メチルペンテン)(TPX)、ポリイソブチレンなどのオレフィン系樹脂;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−プロピレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソプレン−スチレン共重合体などのジエン系樹脂;シクロオレフィン類(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、3−メチルシクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロデセン、3−メチルシクロデセン、シクロドデセン、シクロドデカトリエン等)、ノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエンと(メタ)アクリル酸エステルとのディールスアルダー反応生成物などの環状オレフィン類の開環重合体又はその水添物;前記環状オレフィン類とエチレンなどのオレフィン類との共重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)などの芳香族ビニル化合物を単量体成分とするポリマー;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ビニルアダマンタン、ビニルノルボルナン、ビニルノルボルネンなどの脂環式ビニル化合物を単量体成分とするポリマー;塩化ビニル系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;酢酸ビニル系樹脂;セルロース系樹脂;ポリエーテル;二塩基酸とグリコールの重縮合により生成する種々のポリエステル;ポリアミド;(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系化合物を単量体成分とするアクリル系樹脂などが含まれる。なお、上記環状オレフィン類の開環重合体は、メタセシス重合により得ることができる。
【0009】
これらのポリマーのうち、(A)主鎖が飽和炭素鎖である炭化水素系ポリマー、例えば、(A1)ポリエチレン(低密度ポリエチレン、メタロセン系ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)などのオレフィン系樹脂、(A2)下記式(2)
【化3】
Figure 0004592128
(式中、A環は1又は2以上の環が縮合していてもよい脂環式炭化水素環を示す)
で表される繰り返し単位を有する脂環式炭化水素系樹脂(環状オレフィン類の開環重合体の水添物、環状オレフィン類とエチレンとの共重合体など)、(A3)ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などの芳香族炭化水素系樹脂(芳香族ビニル化合物を単量体成分とするポリマー)、(A4)ビニルシクロヘキサン、ビニルアダマンタンなどの脂環式ビニル化合物を単量体成分とするポリマーなどが好ましい。
【0010】
前記A環としては、例えば、シクロペンタン環、ノルボルナン環、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。A環は置換基を有していてもよい。前記置換基として、例えば、メチル、エチル、イソプロピル基などのアルキル基(例えば、C1-4アルキル基);シアノ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのエステル基(置換オキシカルボニル基)などが挙げられる。
【0011】
前記脂環式炭化水素系樹脂(A2)の代表的な例として、商品名「アートン」(日本合成ゴム(株)製)、商品名「ゼオネックス」(日本ゼオン(株)製)、商品名「アペル」(三井化学(株)製)、商品名「アポ」(三井化学(株)製)などが例示される。
【0012】
また、前記ポリマーとして、(B)ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、下記式(3)
【化4】
Figure 0004592128
(Rは水素原子又はメチル基を示し、B環は単環又は多環の脂環式炭素環を示す)
で表される繰り返し単位を有するアクリル系樹脂(分子内に脂環式炭素環を有するアクリル系樹脂)も好ましい。このようなアクリル系樹脂は、例えばポリメチルメタクリレートと比較して疎水性が高く、吸湿に起因する光学的特性や寸法の変動が小さい。
【0013】
前記B環は、メチル、エチル、イソプロピル基などのアルキル基(例えば、C1-4アルキル基)等の置換基を有していてもよい。B環の代表的な例として、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、ノルボルネン環、デカリン環、パーヒドロアントラセン環などが挙げられる。前記脂環式炭素環を有するアクリル系樹脂は、式(3)で表される繰り返し単位に対応する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であってもよく、該(メタ)アクリル酸エステルとメタクリル酸メチルなどの他の共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。
前記被処理物としてのポリマーは、酸素原子含有ガスに対する反応性の点から、第2級又は第3級炭素原子、特に第3級炭素原子を有しているのが好ましい。
【0014】
本発明では、触媒として、前記式(1)で表されるイミド化合物を用いる。このイミド化合物において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0015】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0016】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0017】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
前記式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。
【0018】
前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。例えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0019】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化5】
Figure 0004592128
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2は前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
【0020】
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。
置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0021】
好ましいイミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。
前記イミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。
【0022】
前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0023】
特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
式(1)で表されるイミド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
本発明の方法において、触媒として用いる式(1)で表されるイミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、前記ポリマーを処理する際に用いる処理液中の濃度として、0.001〜1mol/l程度、好ましくは0.01〜0.5mol/l程度である。
【0025】
本発明では、前記イミド化合物とともに助触媒を用いることもできる。助触媒として、金属化合物が挙げられる。助触媒として金属化合物を用いることにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0026】
金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表2〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に5族〜9族元素が好ましく、とりわけV、Mo、Mn、Coなどが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0027】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0028】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記金属化合物の使用量は、例えば、前記イミド化合物1モルに対して、0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0029】
本発明では、また、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を用いることもできる。助触媒として前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0030】
前記有機塩において、周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。
【0031】
前記元素の原子に結合する有機基には、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換オキシ基などが含まれる。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリルなどの炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などが例示できる。好ましい炭化水素基には、炭素数1〜30程度のアルキル基、炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(特に、フェニル基又はナフチル基)などが含まれる。前記置換オキシ基には、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが含まれる。
【0032】
前記有機塩の代表的な例として、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルフェニルアンモニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)アンモニウムクロリド、ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウムクロリド、及び対応する第4級アンモニウムブロミドなどの、窒素原子に4つの炭化水素基が結合した第4級アンモニウム塩;ジメチルピペリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、メチルキノリニウムクロリドなどの環状第4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、有機ホスホニウム塩の具体例としては、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)ホスホニウムクロリド、トリエチルフェニルホスホニウムクロリドなどの第4級ホスホニウムクロリド、及び対応する第4級ホスホニウムブロミドなどの、リン原子に4つの炭化水素基が結合した第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。有機スルホニウム塩の具体例としては、トリエチルスルホニウムイオジド、エチルジフェニルスルホニウムイオジドなどの、イオウ原子に3つの炭化水素基が結合したスルホニウム塩などが挙げられる。
【0033】
また、前記有機塩には、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキル−アリールスルホン酸塩);スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)なども含まれる。
前記有機塩の使用量は、例えば、前記イミド化合物1モルに対して、0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0034】
本発明では、前記イミド化合物とともに強酸を用いることもできる。前記イミド化合物と強酸を併用すると、酸素原子含有ガスとして酸素を用いることにより、プラスチック成形品を構成するポリマーのメチレン炭素原子(第2級炭素原子)などにオキソ基を効率よく導入することができる。
【0035】
前記強酸には、例えばpKa2以下(25℃)の化合物が含まれる。強酸のpKaは、好ましくは−15〜2程度、さらに好ましくは−10〜0程度である。強酸としては、例えば、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素)、ハロゲン化水素酸(フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸)、オキソ酸(硫酸、硝酸、リン酸、クロム酸などの金属酸、塩素酸などのハロゲン酸など)、超強酸(ClSO3H、H2SO4−SO3、FSO3H、FSO3H−SO3 FSO3H−SbF5、HF−SbF5など)、ヘテロポリ酸(ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンバナドモリブデン酸、リンバナドタングステン酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸など)等が挙げられる。好ましい強酸には、無機酸、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸などが含まれる。強酸は単独で又は2種以上混合して使用できる。強酸の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、例えば0.001〜3モル程度、好ましくは0.1〜1モル程度である。
【0036】
また、本発明の方法では、系内に、ラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)などが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。前記成分の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.1モル程度である。
【0037】
さらに、本発明では、反応系内に共反応剤(前記イミド化合物の存在下で酸素原子含有ガスと反応可能な化合物;特開平8−38909号公報、特開平9−327626号公報など参照)を共存させてもよい。反応系内に前記共反応剤を共存させると、該共反応剤がラジカル発生剤的な機能を果たすためか、反応が促進され、プラスチック成形品表面が短時間内に親水性化される場合が多い。
【0038】
このような共反応剤として、例えば、(a)第1級又は第2級アルコール、(b)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、(c)メチン炭素原子を有する化合物、(d)シクロアルカン類、(e)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物、(f)共役化合物、(g)芳香族炭化水素、(h)チオール類、(i)エーテル類、(j)スルフィド類、(k)アルデヒド若しくはチオアルデヒド類、及び(l)アミン類から選択された少なくとも1種の化合物を使用できる。これらの化合物は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。
【0039】
(a)第1級又は第2級アルコール
第1級又は第2級アルコール(a)には、広範囲のアルコールが含まれる。アルコールは、1価、2価又は多価アルコールの何れであってもよい。第1級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−デカノール、エチレングリコールなどの飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、シクロヘキシルメチルアルコールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式アルコールが挙げられる。第2級アルコールとしては、2−プロパノール、s−ブチルアルコールなどの飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール;1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが含まれる。好ましい第1級又は第2級アルコール(a)には、第2級アルコール(例えば、s−ブチルアルコールなどの脂肪族第2級アルコール、シクロヘキサノールなどの脂環式第2級アルコール、1−フェニルエタノールなどの芳香族第2級アルコール)が含まれる。前記アルコール(a)は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0040】
(b)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物
不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物(b)としては、(b1)芳香族性環の隣接位(いわゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物、(b2)不飽和結合(例えば、炭素−炭素三重結合、炭素−酸素二重結合など)の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物などが挙げられる。前記芳香族性化合物(b1)において、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。なお、芳香族性環の隣接位のメチレン基は、前記芳香族性環に縮合した非芳香族性環を構成するメチレン基であってもよい。芳香族性環の隣接位にメチル基を有する芳香族化合物としては、例えば、芳香環に1〜6個程度のメチル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、メチルナフタレンなど)、複素環に1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例えば、4−メチルピリジンなど)などが例示できる。芳香族性環の隣接位にメチレン基を有する芳香族化合物としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジフェニルメタンなど)、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性複素環化合物(例えば、4−エチルピリジンなど)、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物であって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部位にメチレン基を有する化合物(ジヒドロナフタレン、インデン、インダン、テトラリン、フルオレン、アセナフテン、フェナレン、キサンテン等)などが例示できる。
【0041】
不飽和結合の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物(b2)には、例えば、(b2-1)炭素−炭素三重結合の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する鎖状不飽和炭化水素類、(b2-2)カルボニル基の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する化合物が例示できる。前記鎖状不飽和炭化水素類(b2-1)としては、例えば、メチルアセチレンなどの炭素数3〜20程度のアルキン類が例示できる。前記化合物(b2-2)には、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、カルボン酸又はその誘導体(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びこれらのエステルなど)などが含まれる。
【0042】
(c)メチン炭素原子を有する化合物
メチン炭素原子(又は第3級炭素原子)を有する化合物(c)には、(c1)環の構成単位としてメチン基(すなわち、メチン炭素−水素結合)を含む環状化合物、(c2)メチン炭素原子を有する鎖状化合物が含まれる。環状化合物(c1)には、(c1-1)少なくとも1つのメチン基を有する橋かけ環式化合物、(c1-2)環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(脂環式炭化水素など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環式化合物には、2つの環が2個の炭素原子を共有している化合物、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類の水素添加生成物なども含まれる。
【0043】
橋かけ環式化合物(c1-1)としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン、1−アダマンタノール、ペルヒドロアントラセンなどの2〜4環式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(c1-2)としては、1−メチルシクロペンタン、1−メチルシクロヘキサンなどの炭化水素基(例えば、アルキル基など)が環に結合した脂環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(b1-2)は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子を有する。
【0044】
メチン炭素原子を有する鎖状化合物(c2)としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタンなどの脂肪族炭化水素類およびその誘導体などが例示できる。
【0045】
(d)シクロアルカン類
シクロアルカン類(d)としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロドデカン、シクロテトラデカン、及びこれらの誘導体などが例示できる。
【0046】
(e)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物(e)における非芳香族性複素環には、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する複素環などが含まれる。前記複素環には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環などの芳香族性又は非芳香族性の環が1又は2以上縮合していてもよい。前記複素環としては、例えば、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、クロマン、イソクロマンなどが例示される。
【0047】
(f)共役化合物
共役化合物(f)には、共役ジエン類(f1)、α,β−不飽和ニトリル(f2)、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル、アミド、酸無水物等)(f3)などが挙げられる。共役ジエン類(f1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。なお、共役ジエン類(f1)には、二重結合と三重結合とが共役している化合物、例えば、ビニルアセチレンなども含めるものとする。α,β−不飽和ニトリル(f2)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(f3)としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド又はその誘導体などが挙げられる。
【0048】
(g)芳香族炭化水素
芳香族炭化水素(g)としては、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセンなどの、少なくともベンゼン環を1つ有する芳香族化合物、好ましくは少なくともベンゼン環が複数個(例えば、2〜10個)縮合している縮合多環式芳香族化合物などが挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基を有する芳香族炭化水素の具体例として、例えば、2−クロロナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、2−メチルアントラセン、2−t−ブチルアントラセン、2−カルボキシアントラセン、2−エトキシカルボニルアントラセン、2−シアノアントラセン、2−ニトロアントラセン、2−メチルペンタレンなどが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、非芳香族性炭素環、芳香族性複素環、又は非芳香族性複素環が縮合していてもよい。
【0049】
(h)チオール類
チオール類(h)としては、メタンチオール、エタンチオールなどの脂肪族チオール;シクロペンタンチオールなどの脂環式チオール;フェニルメタンチオールなどの芳香族チオールなどが挙げられる。
【0050】
(i)エーテル類
エーテル類(i)としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどの脂肪族エーテル類;アニソール、ジベンジルエーテル等の芳香族エーテルなどが挙げられる。
【0051】
(j)スルフィド類
スルフィド類(j)としては、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドなどの脂肪族スルフィド類;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィドなどの芳香族スルフィド類などが挙げられる。
【0052】
(k)アルデヒド若しくはチオアルデヒド類
アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ヘキサナール、デカナール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサンなどの脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;フルフラール、ニコチンアルデヒドなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。チオアルデヒド類としては、前記アルデヒド類に対応するチオアルデヒド類が挙げられる。
【0053】
(l)アミン類
アミン類(l)としては、第1級または第2級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの脂肪族アミン;シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン;ベンジルアミン、トルイジンなどの芳香族アミンなどが例示される。
【0054】
これらの共反応剤の中でも、(a)第1級又は第2級アルコール、(b)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、(c)メチン炭素原子を有する化合物、(d)シクロアルカン類などが好ましく、特に、第2級アルコール、及び(b1)芳香族性環の隣接位(いわゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する芳香族化合物(例えば、トルエンやエチルベンゼンなどのように芳香環の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する芳香族炭化水素類;フルオレンやテトラリンなどのように、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物であって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部位にメチレン基を有する化合物など)、アダマンタンなどのメチン炭素原子を有する橋かけ環式化合物などが好ましい。
【0055】
前記共反応剤は単独で又は2種以上混合して使用できる。共反応剤の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、前記ポリマーを処理する際に用いる処理液中の濃度として、0.001〜10mol/l、好ましくは0.01〜5mol/l(特に、0.1〜3mol/l)程度である。前記共反応剤を反応溶媒として用いることもできる。
【0056】
本発明では、また、系内に1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体を存在させてもよい。1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体を系内に存在させ、且つ酸素含有ガスとして酸素を用いると、ポリマー分子を構成する炭素原子(特に、メチン炭素原子)にアシル基が導入される。
【0057】
前記1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体には、下記式(4)で表される化合物が含まれる。
【化6】
Figure 0004592128
(式中、Ra及びRbは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示すか、又は、Ra及びRbは、互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成してもよい。Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
【0058】
a、Rbにおける炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、特に1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基及びシクロアルケニル基);フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(アリール基)が含まれる。
【0059】
前記複素環基における複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、フラン、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリンなどの窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を1〜3個程度含む3〜15員(好ましくは5〜12員、さらに好ましくは5又は6員)程度の複素環(縮合環を含む)などが含まれる。
【0060】
前記炭化水素基及び複素環基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などを有していてもよい。RaとRbは同一の基である場合が多い。
【0061】
a及びRbが互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に形成する環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの3〜15員(好ましくは5〜6員)程度のシクロアルカン環が挙げられる。前記環は、例えば上記のような置換基を有していてもよい。
1及びZ2は、酸素原子又はヒドロキシル基を示し、炭素原子とZ1、Z2との結合は単結合又は二重結合である。
【0062】
式(4)で表される化合物のうち、好ましい化合物には、下記式(4a)で表される化合物が含まれる。
【化7】
Figure 0004592128
(式中、Ra1及びRb1は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示すか、又は、Ra1及びRb1は、互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成してもよい。Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
特に好ましいRa1及びRb1は、メチル基又はエチル基、特にメチル基である。Ra1及びRb1は同一の基である場合が多い。
【0063】
前記1,2−ジカルボニル化合物の好ましい具体例として、ビアセチル(2,3−ブタンジオン)、2,3−ペンタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、ビベンゾイル(ベンジル)、アセチルベンゾイル、シクロペンタン−1,2−ジオン、シクロヘキサン−1,2−ジオンなどのα−ジケトン類が挙げられる。なかでも、ビアセチルなどが好ましい。前記1,2−ジカルボニル化合物のヒドロキシ還元体の好ましい例としては、アセトイン、ベンゾインなどのα−ケトアルコール類;2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類が含まれる。なかでも、アセトイン、2,3−ブタンジオールなどが好ましい。
【0064】
前記1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体の使用量は、例えば、前記イミド化合物1モルに対して、2〜1000モル程度、好ましくは5〜500モル程度である。なお、1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体を用いる場合、前記イミド化合物の代わりに、又は、前記イミド化合物と共に前記金属化合物を用いてもよい。
【0065】
本発明において、酸素原子含有ガス(以下、「反応ガス」と称する場合がある)には、例えば、酸素、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などが含まれる。これらのガスは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
酸素は、分子状酸素、活性酸素の何れであってもよい。分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気を使用してもよい。酸素として分子状酸素を用いる場合が多い。
【0067】
窒素酸化物としては、例えば、N23、N2O、NO、NO2などが挙げられる。これら(例えば、N2O、NO、NO2など)は酸素と共に用いることができる。また、硫黄酸化物としては、SO2、SO3などが例示できる。これら(例えば、SO2など)は酸素と共に用いることができる。
【0068】
反応ガスとして酸素を用いる場合には、ポリマー分子の第1級炭素原子(例えば、ベンジル位又はアリル位のメチル炭素原子)、第2級炭素原子(例えば、ベンジル位又はアリル位のメチレン炭素原子、非芳香族性炭素環を形成するメチレン炭素原子など)又は第3級炭素原子(分岐状アルキル基又はアルキレン基におけるメチン炭素原子、多環式基の接合位や橋頭位のメチン炭素原子など)にヒドロキシル基、オキソ基又はカルボキシル基が導入される。
【0069】
反応ガスとして一酸化炭素と酸素とを用いると、ポリマー分子を構成する炭素原子にカルボキシル基を導入できる。この場合、一酸化炭素と酸素の割合は、一酸化炭素/酸素(モル比)=1/99〜99/1、好ましくは10/90〜99/1程度である。
【0070】
また、反応ガスとして酸素を用い、且つ反応系内に前記1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体を存在させると、前記のように、ポリマー分子を構成する炭素原子(特に、メチン炭素原子)にアシル基[式(4)で表される化合物を用いる場合には、RaC(=O)−又はRbC(=O)−]が導入される。
反応ガスとして窒素酸化物(又は、窒素酸化物と酸素)を用いると、ポリマー分子を構成する炭素原子にニトロ基が導入される。また、反応ガスとして硫黄酸化物(又は、硫黄酸化物と酸素)を用いた場合には、ポリマー分子を構成する炭素原子に、SO3H基、SO2H基などが導入される。
反応ガスの使用量は、反応速度、所望する親水性基導入量、操作性などを考慮して適宜選択できる。
【0071】
前記ポリマーの処理は、通常、該ポリマーを溶解可能で且つ前記イミド化合物を含む溶媒中に前記ポリマーを溶解させ、これに反応ガスを導入することにより行われる。反応ガスは液化して導入することも可能である。
【0072】
溶媒としては、前記ポリマーの種類に応じて、適宜選択でき、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;及びこれらの混合溶媒などを使用できる。溶媒中に水を適量添加してもよい。
溶媒として、酢酸などの有機酸、ベンゾニトリルなどのニトリル類、クロロベンゼンやトリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等を用いる場合が多い。
【0073】
処理温度(反応温度)は、ポリマーの種類や反応ガスの種類などに応じて適当に選択できる。例えば、反応ガスとして酸素を用いてポリマーの炭素原子にヒドロキシル基やオキソ基などを導入する場合には、処理温度は0〜300℃程度、好ましくは30〜250℃程度である。また、反応ガスとして一酸化炭素と酸素とを用い、ポリマーの炭素原子にカルボキシル基を導入する場合の処理温度は、例えば0〜200℃程度、好ましくは10〜150℃程度である。さらに、反応ガスとして窒素酸化物又は硫黄酸化物を用いる場合の処理温度は、例えば0〜150℃程度、好ましくは10〜125℃程度である。前記処理は、常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で行う場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm程度である。処理時間は、処理温度及び処理圧力に応じて、例えば、30分〜48時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0074】
反応ガス濃度や、処理温度、処理時間などの反応条件を調整することにより、ポリマーに導入する極性基の量(官能基導入率)をコントロールすることができる。
前記処理は、反応ガスの存在下又は反応ガスの流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0075】
反応ガスによる処理後、反応混合物を、慣用の分離精製操作、例えば、再沈殿、晶析、再結晶、濾過などに付すことにより分離できる。こうして得られた変性ポリマーは、ポリマーを構成する炭素原子にヒドロキシル基などの極性基が導入されているため、元のポリマーと比べて高い帯電防止性を有する。
【0076】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、酸素原子含有ガスと特定構造を有するイミド化合物の触媒作用とにより、ポリマーを構成する炭素原子にヒドロキシル基等の極性基を簡単な操作で導入することができ、ポリマーの帯電性などの特性を大きく向上させたり、ポリマーに特殊機能を付与することができる。
また、本発明の方法では、特殊なモノマーを用いる必要が無く、しかも原料が特定のポリマーに限定されないので適用範囲が極めて広い。特に、疎水性ポリマー(非極性ポリマー)に共通の非芳香族性基を構成する炭素原子、例えば、主鎖のメチレン又はメチン炭素原子などに、直接極性基を導入できるという利点を有する。さらに、ポリスチレンやポリプロピレンなどの汎用のポリマーを利用して、必要な時に必要量製造できるので効率的である。また、主鎖を切断することなく極性基を導入することができる。さらに、反応ガスの種類や濃度及び反応条件(例えば、温度、時間など)を調整することにより、所望の官能基(極性基)を所望の割合で導入できる。
本発明の変性ポリマーは、上記方法により得られるため、帯電性などの特性に優れる。
【0077】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0078】
実施例1
ポリスチレン[商品名:31N、ダイセル化学工業(株)製]3g、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、及びクロロベンゼン30mlの混合溶液を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で3時間攪拌した。
反応混合液をメタノール中に滴下、再沈することにより変性ポリスチレンを得た。これをクロロホルム10mlに溶解した後、メタノール中への滴下、再沈により精製を行った。この精製操作を3回繰り返し、最終的な精製変性ポリスチレンを約3g得た。
得られた変性ポリスチレンを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。なお、図1に変性前のポリスチレンの赤外線吸収スペクトルを、図2に変性ポリスチレンの赤外線吸収スペクトルを示す。
また、変性前後の試料を、それぞれ熱プレスにより、30mm×50mm×1mmのシートとし、このシートの表面に0.006ccの純水を滴下し、自動接触角計[CA−Z型、協和界面科学(株)製]で水滴の接触角(deg)を測定した。この接触角は親水性の指標となる。結果を表1に示す。
【0079】
実施例2
ポリスチレンに代えて、シクロペンタジエン系ポリマー[商品名:ZEONEX450、日本ゼオン(株)製]を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、変性ポリマーを得た。
得られた変性ポリマーを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。なお、図3に変性前のシクロペンタジエン系ポリマーの赤外線吸収スペクトルを、図4に変性シクロペンタジエン系ポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す。
また、変性前後の試料をクロロホルムに溶解し、溶液キャストを行うことにより、30mm×50mm×0.1mmのシートとし、このシートの表面に0.006ccの純水を滴下し、自動接触角計[CA−Z型、協和界面科学(株)製]で水滴の接触角(deg)を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
実施例3
3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート10gを40mlのトルエンに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.1g加え、60℃で5時間攪拌し重合した。重合溶液をメタノールに滴下、再沈することにより、ポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)が得られた。これをトルエン20mlに溶解し、メタノールでの再沈を行うことで精製した。この精製操作を2回繰り返すことにより、精製ポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)を約9g得た。得られたポリマーの分子量は、Mn=21000、Mw/Mn=1.8であった。
ポリスチレンに代えて、上記ポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、変性ポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)を得た。
得られた変性ポリマーを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。なお、図5に変性前のポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)の赤外線吸収スペクトルを、図6に変性後のポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)の赤外線吸収スペクトルを示す。
また、変性前後の試料について、実施例2と同様にして、水滴の接触角(deg)を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
実施例4
3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレートに代えて、1−アダマンチルアクリレートを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、精製ポリ(1−アダマンチルアクリレート)及び変性ポリ(1−アダマンチルアクリレート)を得た。
得られた変性ポリマーを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。なお、図7に変性前のポリ(1−アダマンチルアクリレート)の赤外線吸収スペクトルを、図8に変性後のポリ(1−アダマンチルアクリレート)の赤外線吸収スペクトルを示す。
また、変性前後の試料について、実施例2と同様にして、水滴の接触角(deg)を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例5
ポリスチレン[商品名:31N、ダイセル化学工業(株)製]3g、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、アダマンタン20ミリモル、及びクロロベンゼン30mlの混合溶液を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で1時間攪拌した。
反応混合液をメタノール中に滴下、再沈することにより変性ポリスチレンを得た。これをクロロホルム10mlに溶解した後、メタノール中への滴下、再沈により精製を行った。この精製操作を3回繰り返し、最終的な精製変性ポリスチレンを約3g得た。
得られた変性ポリスチレンを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。
また、変性前後の試料について、実施例1と同様にして、水滴の接触角(deg)を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例6
ポリスチレン[商品名:31N、ダイセル化学工業(株)製]3g、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、アダマンタン20ミリモル、クロロベンゼン25ml、及び酢酸5mlの混合溶液を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で0.5時間攪拌した。なお、酢酸の添加と共に樹脂が析出したが、反応の進行に伴って均一溶液となった。
反応混合液をメタノール中に滴下、再沈することにより変性ポリスチレンを得た。これをクロロホルム10mlに溶解した後、メタノール中への滴下、再沈により精製を行った。この精製操作を3回繰り返し、最終的な精製変性ポリスチレンを約3g得た。
得られた変性ポリスチレンを赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR)したところ、3500cm-1付近にヒドロキシル基の特性吸収が認められ、ポリマーにヒドロキシル基が導入されたことが分かった。
また、変性前後の試料について、実施例1と同様にして、水滴の接触角(deg)を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
Figure 0004592128
表1より、実施例において変性されたポリマーでは、変性前と比較し、水の接触角が大幅に低下して、親水性が向上したことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における変性前のポリマー(ポリスチレン)の赤外線吸収スペクトルである。
【図2】実施例1における変性後のポリマーの赤外線吸収スペクトルである。
【図3】実施例2における変性前のポリマー(シクロペンタジエン系ポリマー)の赤外線吸収スペクトルである。
【図4】実施例2における変性後のポリマーの赤外線吸収スペクトルである。
【図5】実施例3における変性前のポリマー[ポリ(3,5−ジメチルアダマンタン−1−イルメタクリレート)]の赤外線吸収スペクトルである。
【図6】実施例3における変性後のポリマーの赤外線吸収スペクトルである。
【図7】実施例4における変性前のポリマー[ポリ(1−アダマンチルアクリレート)]の赤外線吸収スペクトルである。
【図8】実施例4における変性後のポリマーの赤外線吸収スペクトルである。

Claims (3)

  1. ポリマーを、下記式(1)
    Figure 0004592128
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)で表されるイミド化合物の存在下、酸素原子含有ガスで処理することを特徴とするポリマーの変性方法。
  2. 酸素原子含有ガスが、酸素、一酸化炭素、窒素酸化物及び硫黄酸化物から選択された少なくとも1種である請求項1記載のポリマーの変性方法。
  3. ポリマーを請求項1又は2記載の方法により処理して得られる変性ポリマー。
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